説明

電圧制御発振回路

【課題】従来のノイズ除去手段にはノイズ原因となる一定の高調波成分を有するパルス信号を一旦生成してから、ノイズ除去のための変調をかける為、ノイズ除去のための変調をかける前の信号がノイズの原因となる。
【解決手段】電圧制御発振回路10を、車両に設置された電子機器に供給する交流電圧を出力する電圧制御発振回路10であって、電圧制御発振回路10は入力信号の電圧に応じた周波数の交流電圧を出力し入力信号は三角波かまたは正弦波であることを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電圧制御発振回路に関する。詳しくは、車両に設置された電子機器に供給する交流電圧を出力する電圧制御発振回路であって、周囲へのノイズの影響が少ない電圧制御発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車を代表する車両には多くの電子機器が搭載されている。しかし、車両内外には精密機器、アンテナなどの妨害ノイズの影響を受けやすい機器も搭載されているため、電子機器のノイズ対策が重要な課題となっている。
【0003】
図1は車両内での電子機器の代表的な設置状態を表す模式図である。車両1内には、ラジオやカーナビゲーション機能を有する電子機器2、後方座席用ディスプレイ3、ラジオアンテナ4、ラジオ配線5、ヘッドユニット2と後方座席用ディスプレイ3を繋ぐハーネス6が設置されている。
【0004】
後方座席用ディスプレイ3の内部の液晶駆動回路は、出力信号の周波数がFMラジオ周波数と同じく数十MHzオーダーである。その為、出力信号の周波数の高調波成分が、FMラジオ周波数と共振を起こし、ノイズの原因となる。
【0005】
ここで、出力信号を微小に変調することによって、高調波成分を一定とさせない技術が開示されている。
【0006】
このようにすれば、変調された出力信号はノイズを全く起こさないか、または起こしても、共振周波数帯にかかる高調波を出力するのは一瞬であるので、ノイズを軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−133767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら前記従来の技術のようにしても、依然として変調前の出力信号が周囲に及ぼすノイズの影響は除去できない。
【0009】
つまり、従来のノイズ除去手段にはノイズ原因となる信号を一旦生成してから、変調をかける為、周波数変調前の信号がノイズの原因となるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両に設置された電子機器に供給する交流電圧を出力する電圧制御発振回路であって、周囲へのノイズの影響が少ない電圧制御発振回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決する為に、本発明の電圧制御発振回路は車両に設置された電子機器に供給する交流電圧を出力する電圧制御発振回路であって、前記電圧制御発振回路は入力信号の電圧に応じた周波数の交流電圧を出力し、前記入力信号は三角波かまたは正弦波であることを特徴とする、電圧制御発振回路とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電圧制御発振回路では入力信号の基本周波数は低周波であり、出力する交流電圧は高周波であるが周波数変調をされているので、ノイズの原因となりやすい一定の高調波成分を含む信号の生成プロセスが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両内での電子機器の代表的な設置状態を表す模式図
【図2】実施の形態1にかかる電圧制御発振回路の使用状態を表す回路ブロック図
【図3】実施の形態1にかかる電圧制御発振回路の環境における電圧信号の変化について示した図
【図4】実施の形態2にかかる電圧制御発振回路の使用状態を表す回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図2は、実施の形態1にかかる電圧制御発振回路の使用状態を表す回路ブロック図である。図2に図示された回路ブロックは、基準電圧生成回路11と、PWM(Pulse Width Modulation)信号生成回路12と、PWM信号生成回路12で生成されたPWM信号を波形整形する第一のLPF(Low Pass Filter)13と、基準電圧生成回路11とタイミングコントローラ17から出力される位相差信号を位相補正する位相比較器14と、位相比較器14から出力される電圧によってクロック信号を生成する発振回路15と、発振回路15から出力されるクロック信号で表示する入力映像信号の同期信号20を基準にアナログパネルを動作させるためのソースドライバ,ゲートドライバを制御するタイミング信号をつくり出すタイミングコントローラ17と、タイミングコントローラ17から出力される位相差信号を波形整形する第二のLPF16と、タイミングコントローラ17から制御する信号を受けて映像信号や画像信号を表示する電子機器である表示パネル18と、前記第一のLPF13で出力された信号を基準電圧生成回路11で生成された信号に重畳させるためのカップリングコンデンサ19とで構成される。ここで、車両に設置された電子機器に供給する交流電圧を出力する電圧制御発振回路10は、位相比較器14と発振回路15と第二のLPF16とからなり、表示する入力映像信号の同期信号20とタイミングコントローラ17内部で生成する水平同期信号の位相差を比較,補正して、電圧制御発振回路10から出力するクロック周波数を常に一定させるものである。
【0015】
図3は、実施の形態1にかかる電圧制御発振回路の環境における電圧信号の変化について示した図である。
【0016】
PWM信号生成回路12の出力はパルス信号、すなわち矩形波であり、周波数の一例としては16kHz程度である。
【0017】
第一のLPF13はPWM信号生成回路12の出力を入力とし、その低周波成分を出力するから、略三角波を出力する。この出力の波高値は変調される周波数の範囲の変動遷移であり、また三角波の角度(波形の鈍り)は周波数の変動遷移となる。一般的に第一のLPF13は抵抗器とコンデンサによって構成され、抵抗器とコンデンサの定数設定によって波形を調整することができる。第一のLPF13は電圧制御発振回路10の発振周波数を滑らかに変動させることを目的とする。つまり、急激な周波数変動を抑えることを目的とする。第一のLPF13の定数設定により周波数偏移の揺らぎを変えることができ、取り扱う信号や製品仕様によって自由に調整が可能となる。
【0018】
基準電圧生成回路11の出力する電圧の値は、その値が電圧制御発振回路10によって発振される際の出力周波数が、タイミングコントローラ17の入力となることを計算して、適宜表示パネル18の動作可能周波数との関係を考慮しつつ適宜定めればよい。本実施の
形態では、タイミングコントローラ17への入力電圧の中心周波数が21.6MHzであるから、基準電圧は電圧制御発振回路10に入力された際に21.6MHzとなるように定めた。
【0019】
電圧制御発振回路10の入力は、第一のLPF13の出力(カップリングコンデンサで定格化される)と、基準電圧生成回路11の出力とが重畳された信号であり、本実施の形態では略三角波である。ここで入力信号は電圧制御発振回路10の出力の周波数変調が急嵯なものとならなければ任意の交流波形を選ぶことができる、例えば正弦波などでも本発明の電圧制御発振回路の入力信号とすることができる。
【0020】
電圧制御発振回路10の出力は、電圧制御発振回路10の入力の電圧に応じた周波数の交流電圧である。ここで入力電圧が略三角波であることから、出力周波数はある中心周波数の下、一定の帯域幅をもって変調されている。このように、出力電圧が周波数変調されていると液晶表示装置を制御するタイミングコントローラへの入力信号が変調され、高周波成分が一定とならず、違和感のあるノイズを低減,解消することが可能となる。なお、本実施の形態では出力周波数は21.6±0.3MHzである。
【0021】
このような電圧制御発振回路10が配置される車両で使用されるアンテナの受信周波数は、電圧制御発振回路10の出力の中心周波数の整数倍を含むようにすることができる。例えば本実施の形態ではFMラジオ用アンテナ(受信周波数76MHz〜90MHz)なども設置することができる。
【0022】
本実施の形態において生成された信号特性に注目すると、高周波かつ一定の高調波成分を周囲にノイズとして及ぼす信号が存在しないことがわかる。PWM生成回路12の出力信号と、第一のLPF13の出力信号と、電圧制御発振回路10の入力信号は比較的低周波である。基準電圧生成回路11の出力は直流電圧である。電圧制御発振回路10の出力は高周波ではあるが周波数変調をされているので一定の高調波成分を有さない。
【0023】
よって本実施の形態にかかる電圧制御発振回路10は、ノイズの原因となりやすい一定の高調波成分を含む信号の生成プロセスが生じないという利点を有するものである。すなわち、本実施例では、高調波成分を含むパルス信号を生成してから周波数変調をかけるのではなく、電圧値に比例した周波数の信号を生成する電圧制御発振回路に三角波を入力することによって、一定の高調波成分を含まないパルス信号を生成するから、ノイズを抑制することができるのである。
【0024】
ここで、電圧制御発振回路10に入力する信号は、出力パルスが一定の高調波成分を含まないものとなることを目的とするものであればよく、正弦波など、電圧値が一定でない交流信号などを適宜適用することができる。
【0025】
また、このような入力信号を生成するための手段としては、本実施の形態のようにパルス信号をローパスフィルターに入力することによって得られる出力信号とすると良い。なぜなら、回路構成が単純であり、またローパスフルターの時定数特性や、入力パルス信号の特性を変化させることによって、適宜出力波形を変化させることができるからである。
【0026】
さらに、本発明にかかる電圧制御発振回路が設置される車両には、種々のアンテナが搭載されることになるが、その際に本実施の形態のように電圧制御発振回路10から出力される交流電圧が、その中心周波数の整数倍が、アンテナの受信周波数に含まれるようにすると良い。このようにすると、従来の技術では共振を起こしていたアンテナに共振が起き難くなるばかりか、従来から存在する液晶パネルをそのまま本発明の電圧制御発振回路の出力先として利用することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図4は実施の形態2にかかる電圧制御発振回路の使用状態を表す回路ブロック図である。
【0028】
実施の形態2では実施の形態1におけるPWM信号生成回路12が、PWM信号を出力するマイコン出力端子32と、外部入力の映像信号の信号入力判別をするマイコン入力端子33とからなる、PWM信号を生成するマイコン31となった点が異なる。
【0029】
このようにすると、マイコン31への入力信号の有無などによって、信号を出力する、しないを容易に設定でき、PWM信号の出力周波数やDutyも容易に設定できる。つまり、液晶表示装置に表示する信号によって、変調動作を有無の設定や変調度合いの制御が後席ディスプレイの制御プログラムで容易に対応することが可能になる。例えば、外部入力の映像信号の場合、入力される映像信号は適度に信号が揺れている(一定周波数で無い)ため、変調動作と同等な効果があり変調動作を適応しない。場合によっては、強い変調動作を掛けると、出画される映像信号が揺れてしまうという副作用があるが、微小な変調動作であれば、出画映像が揺れることなく、変調動作を導入することも可能である。全面オンスクリーン信号の場合、液晶表示装置と同期したクロック信号で制御しており出画映像に影響が無いため、変調を動作させる。外部入力仕様で映像信号が未入力の場合、液晶表示装置を制御するタイミングコントローラがフリーランで動作するため、基準周波数が一定となり、高調波成分も一定となるため、同期信号の有無をマイコン入力端子33で監視し入力状態を判断し、映像信号未入力と判断した時に変調動作を適応する、ということが可能となり、前記実施の形態1同様に、出力された信号22は第一のLPF13とカップリングコンデンサ19を通して、基準電圧23に重畳することで、前記実施の形態1と同等の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の電圧制御発振回路は自動車に搭載される液晶ディスプレイを制御する液晶駆動回路への入力電圧を生成する回路として有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 車両
2 ヘッドユニット
3 後方座席用ディスプレイ
4 ラジオアンテナ
5 ラジオ配線
6 ハーネス
10 電圧制御発振回路
11 基準電圧生成回路
12 PWM信号生成回路
13 第一のLPF
14 位相比較器
15 発振回路
16 第二のLPF
17 タイミングコントローラ
18 表示パネル
19 カップリングコンデンサ
20 同期信号
31 マイコン
32 マイコン出力端子
33 マイコン入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された電子機器に供給する交流電圧を出力する電圧制御発振回路であって、
前記電圧制御発振回路は入力信号の電圧に応じた周波数の交流電圧を出力し、
前記入力信号は三角波かまたは正弦波であることを特徴とする、
電圧制御発振回路。
【請求項2】
前記入力信号はパルス信号をローパスフィルターに入力することによって得られる出力信号である、
請求項1記載の電圧制御発振回路。
【請求項3】
前記車両にはアンテナが設置され、
前記電圧制御発振回路から出力される交流電圧は、その中心周波数の整数倍が、前記アンテナの受信周波数に含まれる、
請求項1または2記載の電圧制御発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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