説明

電圧印加回路およびそれを用いた半導体検査装置

【課題】帰還ループを有する出力アンプを用いて対象物に電圧を供給する電圧印加回路では、出力アンプの出力電流をクランプする電流クランプ部とは独立に動作する出力制御部を用いて電流がクランプされたことを検出し、帰還ループを無効にしていた。このため、電流クランプ部と出力制御部の動作点がずれて、クランプの切り替え点で動作が不安定になるという課題があった。本発明はこの課題を解決することを目的にする。
【解決手段】電流クランプ部で出力アンプの出力電流をクランプ電流以下にクランプすると共に、帰還ループを無効にする信号を出力するようにした。また、電流クランプ部内の増幅器の帰還経路に配置されているダイオードとしてフォトカプラあるいはフォトMOSリレーを用い、帰還ループを無効にする信号を生成するようにした。電流クランプと帰還ループの無効を1つの回路で行うので、切り替え点がずれて動作が不安定になることがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電流をクランプする機能を有する電圧印加回路およびそれを用いた半導体検査装置に関し、特に電流クランプ動作を安定して切り替えることができる電圧印加回路およびそれを用いた半導体検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に、半導体検査装置や直流電圧測定器などに用いられる、電流クランプ機能を有する電圧印加回路の構成を示す。図6において、DA変換器10の出力電圧は抵抗R1を介して出力アンプ11に入力され、この出力アンプ11の出力電圧は被試験半導体12に印加される。半導体検査装置は、被試験半導体12に印加する電圧を変化させ、そのときの被試験半導体12の出力から、当該被試験半導体12の良否を判定する。
【0003】
被試験半導体12に印加された電圧は、増幅器13、抵抗R2を介して出力アンプ11に帰還される。この電圧印加回路は、出力アンプ11、増幅器13、抵抗R1、R2で反転増幅器を構成しており、電圧印加回路と被試験半導体12を接続するケーブルの電圧降下等を補償し、安定した電圧を被試験半導体12に印加することができる。
【0004】
14は電流測定部であり、抵抗R3および増幅器14aで構成される。出力アンプ11の出力電流、すなわち被試験半導体12に供給する電流は抵抗R3で検出され、この検出電圧は増幅器14aで増幅される。このため、電流測定部14の出力電圧は被試験半導体12に供給する電流に比例する。この電流測定部14の出力電圧は、出力アンプ11が電流を吐き出すときに負の値になる。また、電流測定部14の出力は、電流信号として外部に出力される。
【0005】
電流クランプ部15は、被試験半導体12に流れる電流値を一定値以下に制限する機能を有し、抵抗R4およびR5、ダイオードD1およびD3、ツェナダイオードD2、基準電圧源Ref1、増幅器15aで構成される。
【0006】
増幅器15aの反転入力端子には、抵抗R4を介して電流測定部14の出力電圧が、抵抗R5を介して基準電圧源Ref1の出力電圧が入力される。この増幅器15aの反転入力端子と出力端子の間には、互いに逆極性に直列接続されたダイオードD1とツェナダイオードD2が接続される。また、増幅器15aの出力端子と出力アンプ11の反転入力端子との間には、増幅器15aの出力端子をアノード側にして、ダイオードD3が接続される。
【0007】
電流クランプ部16は、被試験半導体12に印加する電流値を一定値以下に制限する機能を有し、電流クランプ部15とほぼ同じ構成を有している。但し、ダイオードD1およびD3、ツェナダイオードD2、基準電圧源Ref1は、電流クランプ部15とは逆極性に接続される。増幅器16aは同15aに、ダイオードD4は同D3に相当する。
【0008】
次に、電流クランプ部15の動作を説明する。なお、基準電圧源Ref1の出力電圧および抵抗R4、R5で決定されるクランプ電流をIoとする。
【0009】
出力アンプ11が電流を吸い込むとき、あるいは電流を吐き出すときでクランプ電流Ioより小さいときは、電流測定部14の出力電圧、基準電圧源Ref1の出力電圧、および抵抗R4、R5で決まる増幅器15aの反転入力端子の電位は正になる。このため、増幅器15aはその反転入力端子の電位を0にすべく、出力電圧を負にする。出力アンプ11の反転入力端子の電位はほぼ0なのでダイオードD3は逆バイアスになり、電流クランプ部15は切り離される。
【0010】
出力アンプ11が電流を吐き出すときで、その出力電流がクランプ電流Ioより大きくなると、増幅器15aの反転入力端子の電位は負になる。増幅器15aはその反転入力端子の電位を0にすべく、その出力電圧を正にする。ダイオードD3は順バイアスになるので、出力アンプ11の反転入力端子には正の電圧が引加され、出力電流は低下する。
【0011】
電流クランプ部16は、極性は逆になるが、電流クランプ部15とほぼ同じように動作する。出力アンプ11が電流を吐き出すとき、および吸い込むときでクランプ電流Ioより小さいときは、増幅器16aの出力電圧は正になる。ダイオードD4は逆バイアスになるので、電流クランプ部16は切り離される。
【0012】
出力アンプ11が電流を吸い込むときで、その電流値がクランプ電流Ioより大きくなると、増幅器16aの反転入力端子の電位が正になり、その出力電圧は負になる。ダイオードD4は順バイアスになるので、出力アンプ11の反転入力端子の電位は電流クランプ部16の出力電圧で規制され、その出力電流は低下する。
【0013】
このようにして、出力アンプ11の出力電流の極性に関わらず、その出力電流はクランプ電流Io以下に規制される。
【0014】
この電圧印加回路には、出力電流がクランプされたとき、および外部の信号によって、出力アンプ11のゲインを1にして、増幅器13による帰還ループを無効にする回路が組み込まれている。以下、この回路を説明する。
【0015】
17は出力制御部であり、コンパレータ17aおよび17b、基準電源17cおよび17d、抵抗R6で構成される。コンパレータ17aの非反転入力端子およびコンパレータ17bの反転入力端子には電流測定部14の出力電圧が入力される。基準電源17c、17dは逆極性で直列接続され、その両端はそれぞれコンパレータ17aの反転入力端子、コンパレータ17bの非反転入力端子に接続される。コンパレータ17a、17bの出力はオープンドレイン構成を有し、抵抗R6でプルアップされる。
【0016】
出力アンプ11の出力電流の絶対値が、基準電源17c、17dで決まるクランプ電流より大きくなると、コンパレータ17a、17bのいずれかの出力はオンになり、出力制御部17の出力は低レベルになる。出力アンプ11の出力電流の絶対値がクランプ電流より小さいとコンパレータ17a、17bの出力はいずれもオフになり、出力制御部17の出力は高レベルになる。
【0017】
18はANDゲートであり、信号S1および出力制御部17の出力が入力される。19はスイッチであり、ANDゲート18の出力が低レベルになるとオンになる。
【0018】
信号S1が低レベルになるか、出力アンプ11の出力電流が出力制御部17が検出するクランプ電流より大きくなると、スイッチ19はオンになる。出力アンプ11の出力端子と反転入力端子は抵抗R7で短絡されるので出力アンプ11のゲインが1になり、出力アンプ11、13で構成される帰還ループが無効になる。このため、その出力は実質的にオフになる。
【0019】
信号S1は、外部から電圧印加回路の出力をオフにさせるための信号であり、FPGA(Field Programable Gate Array)で構成される制御回路で生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008−135827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、このような電圧印加回路は、出力電流のクランプは電流クランプ部15および16で行い、出力アンプ11のゲインを1にして帰還ループを無効にする動作は出力制御部17で行う構成になっている。電流クランプ部15および16と、出力制御部17は互いに独立して動作するので、電流クランプがかかり始めるときや、電流クランプから復帰するときに電流クランプ部15および16と、出力制御部17の動作点がずれて、切り替わりのときに動作が不安定になるという課題があった。
【0022】
本発明の目的は、電流クランプと帰還ループの無効を連動して行うことにより、切り替え時に動作が不安定になることがない電圧印加回路およびそれを用いた半導体試験装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
出力アンプから対象物に電圧を印加し、前記対象物に印加された電圧を前記出力アンプに帰還する帰還ループを有する電圧印加回路において、
前記帰還ループを無効にするスイッチと、
前記出力アンプの出力電流を測定する電流測定部と、
前記電流測定部の出力が入力され、この電流測定部の出力と基準電圧を比較して前記出力アンプの出力電流を所定の値以下にクランプすると共に、クランプしたときに前記スイッチを制御して前記帰還ループを無効にする電流クランプ部と、
を具備したものである。クランプ動作の切り替え点で、動作が不安定になることがない。
【0024】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記電流クランプ部は、
前記電流測定部の出力および基準電圧が入力され、これら入力された信号に基づいてその出力の極性が変化する増幅器と、
前記増幅器の帰還経路に挿入され、その出力に基づいて前記スイッチを制御するフォトカプラと、
前記増幅器の出力端子と前記出力アンプの入力端子との間に接続されたダイオードと、
を具備したものである。電流クランプ部の構成を簡単にすることができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記フォトカプラの代わりに、フォトMOSリレーを用いたものである。電流クランプ部の構成を簡単にすることができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3いずれかに記載の発明において、
前記電流クランプ部を2個具備し、正負の電流をクランプするようにしたものである。正負の電流をクランプできる。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4いずれかに記載の発明において
前記電流クランプ部は、基準電圧を出力するDA変換器を具備したものである。クランプする電流値を簡単に可変できる。
【0028】
請求項6記載の発明は、請求項4若しくは請求項5に記載の発明において、
出力電圧を可変できる電圧源と、この電圧源の出力電圧が入力され、入力された電圧の極性を反転する反転増幅器とで構成された基準電源を具備し、
この基準電源の出力を、基準電圧として前記2つの電流クランプ部に入力するようにしたものである。基準電源の構成を簡単にすることができる。
【0029】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の発明において、
前記出力電圧を可変できる電圧源として、DA変換器を用いたものである。簡単に出力電圧を可変できる。
【0030】
請求項8記載の発明は、
請求項1乃至請求項4いずれかに記載の電圧印加回路と同じ構成を有する、少なくとも2つの電圧印加部と、
前記電圧印加部に基準電圧を供給する基準電源と、
を具備したものである。1つの基準電源で複数の電圧印加部に基準電圧を供給できる。
【0031】
請求項9記載の発明は、
半導体検査装置において、請求項1乃至請求項8いずれかに記載の電圧印加回路を具備したものである。クランプ動作の切り替え点で、動作が不安定になることがない。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の発明によれば、帰還ループを有する出力アンプによって対象物に所定の電圧を印加する電圧印加回路において、この出力アンプの出力電流を電流測定部で測定して、前記出力電流がクランプ電流以上になったときにクランプ電流の値にクランプすると共に、電流をクランプしたときに前記帰還ループを無効にする電流クランプ部を具備した。
【0033】
従来は、電流がクランプされたことを出力制御部が検出して帰還ループを無効にしていたので、電流クランプ部と出力制御部の動作点にずれが発生して、クランプ動作の切り替え点で動作が不安定になることがあった。この発明では、電流クランプ部が電流をクランプすると共に、帰還ループを無効にするようにしたので、動作点がずれることがない。このため、動作が不安定になることがなくなるという効果がある。
【0034】
また、電流クランプ部内の増幅器の帰還ループに配置されていたダイオードをフォトカプラ、あるいはフォトMOSリレーに置き換えることにより、帰還ループを無効にする信号得ることができる。このため、従来の回路を大幅に変更することなく、本発明を実施することができるという効果もある。
【0035】
さらに、この電圧印加回路を半導体検査装置に適用すると、動作が不安定になることがなくなるので、検査時間を短縮でき、かつより正確な検査を行うことができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示した構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示した構成図である。
【図4】本発明の他の実施例を示した構成図である。
【図5】本発明の他の実施例を示した構成図である。
【図6】従来の電圧印加回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る電圧印加回路の一実施例を示した構成図である。この電圧印加回路は、半導体試験装置に用いたものである。なお、図6と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。また、被試験半導体12は対象物に相当する。
【0038】
図1において、DA変換器10の出力電圧は抵抗R1を介して出力アンプ11に入力される。出力アンプ11の出力電圧は、電流測定部14を介して被試験半導体12に印加される。この被試験半導体12に印加された電圧は増幅器13、抵抗R2を介して、出力アンプ11に帰還される。出力アンプ11、増幅器13、抵抗R1、R2で反転増幅器が構成されるので、電流測定部14や電圧印加回路と被試験半導体12間のケーブルによる電圧降下を補償して、正確な電圧を被試験半導体12に印加することができる。
【0039】
20は電流クランプ部であり、基本的には電流クランプ部15と同じ構成を有している。増幅器15aの反転入力端子には、抵抗R4を介して電流測定部14の出力が、抵抗R5を介して基準電圧源Ref1の出力電圧が印加される。また、非反転入力端子は共通電位点に接続される。
【0040】
21はフォトカプラであり、発光ダイオード21aとフォトトランジスタ21bで構成される。フォトカプラ21内の発光ダイオード21aとツェナダイオードD2はそのアノードが相互に接続され、発光ダイオード21aのカソードは増幅器15aの出力端子に、ツェナダイオードD2のカソードは反転入力端子に接続される。ダイオードD3のアノードは増幅器15aの出力端子に、カソードは出力アンプ11の反転入力端子に接続される。また、フォトトランジスタ21bのコレクタは、正電源Vccに接続される。
【0041】
この電流クランプ部20は、図6の電流クランプ部15において、ダイオードD1の代わりに発光ダイオード21aを用いたものである。
【0042】
22は電流クランプ部である。基本的な構成は電流クランプ部20と同じであるので、電流クランプ部20と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。なお、ダイオードD3、ツェナダイオードD2、基準電圧源Ref1は、電流クランプ部20とは逆極性に接続されている。
【0043】
23は発光ダイオード23aとフォトトランジスタ23bで構成されるフォトカプラであり、フォトカプラ21の代わりに用いられる。発光ダイオード23aのアノードは電流クランプ部22内の増幅器15aの出力端子に、カソードはツェナダイオードD2のカソードに接続される。また、フォトダイオード23bのコレクタはフォトダイオード21bのエミッタに、エミッタはANDゲート18の一方の入力端子に接続される。
【0044】
24は抵抗であり、その一端はフォトダイオード23bのエミッタに、他端は共通電位点に接続される。
【0045】
次に、この実施例の動作を説明する。なお、図6と同様に基準電圧源Ref1の出力電圧および抵抗R4、R5で決定されるクランプ電流をIoとする。また、出力アンプ11が電流を吐き出すときの電流を正、吸い込むときの電流を負とする。
【0046】
最初に電流クランプ部20の動作を説明する。出力アンプ11が電流を吸い込むとき、あるいは電流を吐き出すときでクランプ電流Ioより小さいときは、電流測定部14の出力電圧、基準電圧源Ref1の出力電圧、および抵抗R4、R5で決まる増幅器15aの反転入力端子の電位は正になる。このため、増幅器15aはその反転入力端子の電位を0にすべく、出力電圧を負にする。出力アンプ11の反転入力端子の電位はほぼ0なので、ダイオードD3は逆バイアスになり、電流クランプ部20は切り離される。また、発光ダイオード21aは順バイアスになるので発光し、フォトトランジスタ21bはオンになる。
【0047】
出力アンプ11が電流を吐き出すときで、その出力電流がクランプ電流Ioより大きくなると、増幅器15aの反転入力端子の電位は負になる。増幅器15aはその反転入力端子の電位を0にすべく、その出力電圧を正にする。ダイオードD3は順バイアスになるので、出力アンプ11の反転入力端子には正の電圧が引加され、出力電流は低下する。また、発光ダイオード21aは逆バイアスになるので発光せず、フォトトランジスタ21bはオフになる。
【0048】
次に、電流クランプ部22の動作を説明する。発光ダイオード23a、ツェナダイオードD2、ダイオードD3、基準電圧源Ref1は、電流クランプ部20と逆に接続されているので、動作は電流クランプ部20とは逆になる。
【0049】
出力アンプ11が電流を吐き出すとき、および吸い込むときでクランプ電流Ioより小さいときは、電流測定部14の出力電圧、基準電圧源Ref1の出力電圧、および抵抗R4、R5で決まる増幅器15aの反転入力端子の電位は負になる。このため、増幅器15aはその反転入力端子の電位を0にすべく、出力電圧を正にする。出力アンプ11の反転入力端子の電位はほぼ0なので、ダイオードD3は逆バイアスになり、電流クランプ部22は切り離される。また、発光ダイオード23aは順バイアスになるので発光し、フォトトランジスタ23bはオンになる。
【0050】
出力アンプ11が電流を吸い込むときで、その電流値がクランプ電流Ioより大きくなると、増幅器15aの反転入力端子の電位が正になり、その出力電圧は負になる。ダイオードD3は順バイアスになり、出力アンプ11の反転入力端子の電位は電流クランプ部22の出力電圧で規制され、その出力電流は低下する。また、発光ダイオード23aは逆バイアスになるので発光せず、フォトトランジスタ23bはオフになる。
【0051】
以上整理すると、電流クランプ部20、22が電流をクランプしているときは内蔵されているフォトカプラの出力はオフになり、電流をクランプしていないときはオンになる。
【0052】
フォトカプラ21、23の出力は直列接続されており、この直列回路の一方は正電源Vccに接続され、他方は抵抗24でプルダウンされているので、電流がクランプされていないときはANDゲートには高レベルが入力され、クランプされると低レベルが入力される。
【0053】
前述したように、ANDゲートに低レベルが入力されるとスイッチ19がオンになる。スイッチ19がオンになると出力アンプ11のゲインが1になり、出力アンプ11と増幅器13、抵抗R1およびR2で構成される帰還ループが無効になる。このため、出力アンプ11は実質的にオフになる。
【0054】
図6従来例では、出力制御部17で電流がクランプされているかどうかを判定し、スイッチ19を制御するようにしていた。このため、電流クランプ部15、16と出力制御部17の動作点がずれて、切り替え時に動作が不安定になるという課題があった。
【0055】
この実施例では電流クランプ部20、22が動作しているか否かによってフォトカプラ21、23をオンオフし、このフォトカプラ21、23の出力でスイッチ19を制御するようにした。このため、動作点がずれて不安定になることがなくなる。また、出力制御部が不要になるので、構成を簡単にすることができる。
【0056】
なお、電流クランプ部の構成は図1の構成に限られることはない。電流測定部の出力と基準電圧を比較し、この比較結果によって電流をクランプし、かつスイッチ19を制御する信号を出力する構成であればよい。
【0057】
図2に本発明の他の実施例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図2において、30、32は電流クランプ部であり、それぞれ電流クランプ部20、22と同じ動作を行う。31、33はフォトMOSリレーであり、それぞれフォトカプラ21、23の代わりに用いられる。
【0059】
フォトMOSリレーは発光ダイオードとMOSFETを内蔵した素子であり、フォトカプラと同様に発光ダイオードに電流が流れるとMOSFETがオンになり、発光ダイオードに電流が流れないとMOSFETがオフになる。従って、フォトカプラをフォトMOSリレーに置き換えることができる。
【0060】
図3に他の実施例を示す。この実施例は、クランプする電流の値を簡単に変更できるものである。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0061】
図3において、40、42は電流クランプ部、41、43はそれぞれ電流クランプ部40、42に内蔵されているDA変換器である。DA変換器41、43は基準電圧源Ref1の代わりに用いられる。
【0062】
DA変換器は、入力デジタル値を変化させることによって、出力電圧を可変することができる素子である。DA変換器の入力デジタル値を変えることにより、クランプ電流Ioを変えることができる。なお、DA変換器でなく、出力電圧が可変できる電圧源であってもよい。また、他の構成の電流クランプ部に適用することもできる。
【0063】
図4に他の実施例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図4において、50、51は電流クランプ部である。電流クランプ部50、51は、それぞれ電流クランプ部20、22とほぼ同じ構成を有しているが、基準電圧源Ref1を内蔵していない。
【0064】
52はクランプ電流Ioを決める基準電源であり、DA変換器52aおよび反転増幅部52bを具備している。DA変換器52aの出力電圧は基準電圧として電流クランプ部50に入力され、また反転増幅部52bにも入力される。反転増幅部52bは入力された電圧の極性を反転する。この反転増幅部52bの出力電圧は、基準電圧として電流クランプ部51に入力される。
【0065】
前述したように、電流クランプ部50は被試験半導体12に流入する電流をクランプし、電流クランプ部51は被試験半導体12から流出する電流をクランプする。これらのクランプ電流値Ioは通常等しいので、DA変換器52aの出力を反転して電流クランプ部51に入力するようにすると、DA変換器を1つにすることができる。
【0066】
なお、基準電源52は図4の構成に限られることはない。要は、絶対値が同じで極性が反対の電圧を出力でき、かつ出力電圧を可変できる構成であればよい。また、DA変換器52aの代わりに、出力電圧を可変できる電源を用いてもよい。さらに、他の構成の電流クランプ部を用いてもよい。
【0067】
図5に他の実施例を示す。この実施例は、1つの基準電源から複数の電圧印加部にクランプ電流Ioを決定する基準電圧を供給するようにしたものである。なお、図4と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0068】
図6において、60は電圧印加部であり、被試験半導体12に電圧を印加する。電圧印加部60は、DA変換器10、出力アンプ11、増幅器13、電流測定部14、ANDゲート18、スイッチ19、電流クランプ部50および51、抵抗R1、R2、R7、24で構成され、図4の電圧印加回路から基準電源52を除いた構成と同じ構成を有している。
【0069】
61は電圧印加部であり、電圧印加部60と同じ構成を有している。電圧印加部61は、被試験半導体12、あるいは図示しない被試験半導体に電圧を印加する。
【0070】
62は基準電源であり、互いに極性が逆の基準電圧源62aおよび62b、この基準電圧源62aおよび62bの出力電圧が入力されるバッファ62cおよび62dで構成される。
【0071】
バッファ62c、62dの出力電圧は、クランプ電流Ioを決定する基準電圧として、電圧印加部60、61の電流クランプ部50、51に入力される。
【0072】
他の動作は図4と同じなので、説明を省略する。なお、電圧印加部は3つ以上あってもよい。この実施例は、1つの基準電源で複数の電圧印加部に基準電圧を供給することができるので、構成を簡単にすることができる。なお、基準電源62は、図4の基準電源52のような構成であってもよい。
【0073】
なお、これらの実施例では、増幅器の帰還路に配置されているダイオードをフォトカプラあるいはフォトMOSリレーに内蔵されている発光ダイオードに置き換えるようにしたが、これに限られることはない。電流クランプ部が動作しているかどうかを検出し、どちらかの電流クランプ部が動作していると、スイッチ19をオンにする構成であればよい。
【0074】
例えば、電流クランプ部20内の増幅器15aの出力電圧は、電流クランプ部20が動作していないときに負になり、動作すると正になる。電流クランプ部22内の増幅器15aの出力電圧は、電流クランプ部22が動作していないときに正になり、動作すると負になる。
【0075】
従って、これらの増幅器の出力電圧をコンパレータで比較すると、動作しているか否かの信号を得ることができる。この信号を加工して、どちらかの電流クランプ部が動作しているときに低レベルになる信号を生成し、ANDゲート18に入力するようにすればよい。但し、図1〜図5のようにフォトカプラまたはフォトMOSリレーを用いると、ダイオードをフォトカプラまたはフォトMOSリレーで置き換えるだけでよいので、構成を簡単にすることができる。
【0076】
また、図3〜図5実施例では、図1の電流クランプ部を用いたが、図2の電流クランプ部、あるいは他の構成の電流クランプ部を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10、41、43、52a DA変換器
11 出力アンプ
12 被試験半導体
13、15a 増幅器
14 電流測定部
18 ANDゲート
19 スイッチ
20、22、30、32、40、42、50、51 電流クランプ部
21、23 フォトカプラ
21a、23a 発光ダイオード
21b、23b フォトトランジスタ
24、R1、R2、R4、R5、R7 抵抗
31、33 フォトMOSリレー
52、62 基準電源
52b 反転増幅器
60、61 電圧印加部
62a、62b、Ref1 基準電圧源
62c、62d バッファ
D3 ダイオード
D2 ツェナダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力アンプから対象物に電圧を印加し、前記対象物に印加された電圧を前記出力アンプに帰還する帰還ループを有する電圧印加回路において、
前記帰還ループを無効にするスイッチと、
前記出力アンプの出力電流を測定する電流測定部と、
前記電流測定部の出力が入力され、この電流測定部の出力と基準電圧を比較して前記出力アンプの出力電流を所定の値以下にクランプすると共に、クランプしたときに前記スイッチを制御して前記帰還ループを無効にする電流クランプ部と、
を具備したことを特徴とする電圧印加回路。
【請求項2】
前記電流クランプ部は、
前記電流測定部の出力および基準電圧が入力され、これら入力された信号に基づいてその出力の極性が変化する増幅器と、
前記増幅器の帰還経路に挿入され、その出力に基づいて前記スイッチを制御するフォトカプラと、
前記増幅器の出力端子と前記出力アンプの入力端子との間に接続されたダイオードと、
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の電圧印加回路。
【請求項3】
前記フォトカプラの代わりに、フォトMOSリレーを用いたことを特徴とする請求項2に記載の電圧印加回路。
【請求項4】
前記電流クランプ部を2個具備し、正負の電流をクランプするようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の電圧印加回路。
【請求項5】
前記電流クランプ部は、基準電圧を出力するDA変換器を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の電圧印加回路。
【請求項6】
出力電圧を可変できる電圧源と、この電圧源の出力電圧が入力され、入力された電圧の極性を反転する反転増幅器とで構成された基準電源を具備し、
この基準電源の出力を、基準電圧として前記2つの電流クランプ部に入力するようにしたことを特徴とする請求項4若しくは請求項5に記載の電圧印加回路。
【請求項7】
前記出力電圧を可変できる電圧源は、DA変換器であることを特徴とする請求項6に記載の電圧印加回路。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4いずれかに記載の電圧印加回路と同じ構成を有する、少なくとも2つの電圧印加部と、
前記電圧印加部に基準電圧を供給する基準電源と、
を具備したことを特徴とする電圧印加回路。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8いずれかに記載の電圧印加回路を具備したことを特徴とする半導体検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−258866(P2010−258866A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107648(P2009−107648)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】