説明

電圧検出方法及び電圧検出装置

【課題】各段の電池電圧を同時に検出することが可能な電圧検出方法、及び電圧検出装置を提供する。
【解決手段】各単位電池に対応して設けられるホールドコンデンサCH1〜CH3と、単位電池E1〜E3と各ホールドコンデンサの両端子との間に設けられたサンプルホールドスイッチS1〜S3と、前記単位電池に対応した入力ポートA/D1〜A/D3を有し、前記各入力ポートに印加された電圧レベルを検出する電圧検出手段(CPU30)と、直列的に接続された一対のスイッチからなるスイッチ対を、初段以外のホールドコンデンサに1対1の対応関係で並列的に接続してなるスイッチ回路50と、前記各スイッチ対の中間接続点と各入力ラインM2、M3に介挿される各電圧記憶用コンデンサC2、C3と、前記各電圧記憶用コンデンサと前記入力ポートA/D2、A/D3との接続点をアース接地するアース切替スイッチS4、S5と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出方法及び電圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車の動力用バッテリは多数の単位電池を直列接続して所要の高電圧を確保した組電池により構成されている。このような電池システムでは、各単位電池の電圧にばらつきが生ずると、電池システムの信頼性が低下するおそれがあるため、各単位電池の電圧を検出して、各単位電池が同じ電圧値であるか否かを監視するようにしている。下記特許文献1には、この種の電圧検出装置として、CPU、電圧記憶用コンデンサ、スイッチを備えたものが開示されている。この電圧検出装置は、スイッチを所定手順に従って開閉することで、以下の様に、電池電圧を検出することとしている。
【0003】
例えば、2段目の電池電圧を検出する場合には、スイッチを開閉操作して、まず、一段目の電池電圧を電圧記憶用コンデンサに記憶させてやる。そして、電圧記憶用コンデンサに一段目の電池電圧が記憶されたら、再び、スイッチを開閉して、今度は、一段目の電池と二段目の電池の合計電圧から電圧記憶用コンデンサの電圧を差し引いた電圧がCPUのA/D端子に印加されるように回路の結線を組み替えるようにしている。これにより、A/D端子に2段目の電池電圧が印加され、CPUにて2段目の電池電圧を検出することが出来る。
【0004】
【特許文献1】特開2002−286766公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成のものは、電圧記憶コンデンサを単一個のみ備えた構成であり、一時期に記憶できる電圧値は一種である。そのため、上述した検出手順を各段について順に行いつつ各段の電池電圧を検出することとしている。すなわち、まず一段の電池電圧を検出してから、次いで二段目の電池電圧を検出し、その後、二段目の電池電圧の検出に続いて三段目の電池電圧を検出している。このように上記特許文献1に開示の技術は、各段の電池電圧の検出タイミングに同時性がなく、この点において改善の余地があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、各段の電池電圧を同時に検出することが可能な電圧検出方法、及び電圧検出装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数個の単位電池を直列接続してなる組電池に関し、前記各単位電池の電池電圧を検出する電圧検出装置であって、
(1)各単位電池に対応して設けられる各ホールドコンデンサを直列的に接続してなるホールドコンデンサ群と、
(2)各単位電池の両極と各ホールドコンデンサの両端子を接続する並列ラインに設けられ、これら並列ラインを開閉する各サンプルホールドスイッチと、
(3)前記単位電池の直列接続段数に応じた段数の電圧入力部を有し、前記各電圧入力部に印加された電圧の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、
(4)直列的に接続された一対のスイッチからなるスイッチ対を、初段のホールドコンデンサを除く、他のホールドコンデンサに1対1の対応関係でそれぞれ並列的に接続してなるスイッチ回路と、
(5)前記各スイッチ対の中間接続点とそれに対応する前記電圧入力部とを1対1の対応関係で接続する各入力ラインと、
(6)前記各入力ラインに介挿される各電圧記憶用コンデンサよりなる電圧記憶用コンデンサ群と、
(7)前記各電圧記憶用コンデンサと前記電圧入力部との接続点をアース接地する各アースラインに挿入され前記各アースラインを開閉する各アース切替スイッチと、
(8)前記各スイッチを開閉操作するスイッチ制御手段と、を備えてなるところに特徴を有する。
【0007】
(1)各単位電池に対応して設けられる各ホールドコンデンサを直列的に接続してなるホールドコンデンサ群と、
(2)各単位電池の両極と各ホールドコンデンサの両端子を接続する並列ラインに設けられ、これら並列ラインを開閉する各サンプルホールドスイッチと、
(3)前記単位電池の直列接続段数に応じた段数の電圧入力部を有し、前記各電圧入力部に印加された電圧の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、
(4)直列的に接続された一対のスイッチからなるスイッチ対を、初段のホールドコンデンサを除く、他のホールドコンデンサに1対1の対応関係でそれぞれ並列的に接続してなるスイッチ回路と、
(5)前記各スイッチ対の中間接続点とそれに対応する前記電圧入力部とを1対1の対応関係で接続する各入力ラインと、
(6)前記各入力ラインに介挿される各電圧記憶用コンデンサよりなる電圧記憶用コンデンサ群と、
(7)前記各電圧記憶用コンデンサと前記電圧入力部との接続点をアース接地する各アースラインに挿入され前記各アースラインを開閉する各アース切替スイッチと、
(8)前記各スイッチを開閉操作するスイッチ制御手段と、を備えてなる電圧検出装置を用いて、組電池を構成する各単位電池の電池電圧を検出する電圧検出方法であって、以下の第一ステップから第三ステップの各ステップを経て前記電池電圧を検出するところに特徴を有する。
前記スイッチ対を構成する両スイッチのうち、並列接続されたホールドコンデンサの正極側に連なる側のスイッチを正極側スイッチ、負極側に連なる側のスイッチを負極側スイッチと定義したときに、
(a)第一ステップ
前記スイッチ制御手段により各サンプルホールドスイッチをオンさせて、各ホールドコンデンサを、コンデンサ両端電圧が各単位電池の電池電圧になるように、それぞれ充電或いは放電させるサンプル動作を実行すると共に、
前記スイッチ制御手段により前記アース切替スイッチをオンさせ、前記スイッチ回路を構成する各スイッチ対のうちの負極側スイッチをオンさせ、正極側スイッチをオフさせることで、N段目(Nは2以上の整数)の入力ラインに介挿された各電圧記憶用コンデンサを、コンデンサの正極側の電位がN−1段目の単位電池の正極電位になるように充電或いは放電させる電圧記憶動作を実行させるステップ。
(b)第二ステップ
前記第一ステップに続いて行われ、前記スイッチ制御手段により各サンプルホールドスイッチをオフさせて、前記電圧検出装置から前記単位電池を電気的に切り離し各コンデンサにて各電圧、各電位を保持するホールド動作を実行するステップ。
(c)第三ステップ
前記第二ステップに続いて行われ、前記スイッチ制御手段により前記アース切替スイッチをオフさせ、前記スイッチ回路を構成する各スイッチ対のうちの負極側スイッチをオフさせ、正極側スイッチをオンさせることで、N段目のホールドコンデンサの正極の電位(V1+V2+・・・Vn)から、N段目の入力ラインに介挿された電圧記憶用コンデンサにてホールドされたN−1段目の単位電池の正極の電位(V1+V2+・・・Vn-1)を、差し引いた各差分電圧Vnを各入力ラインを通じて各電圧入力部に同時的に印加させ、印加された各差分電圧Vnの電圧レベルを前記電圧検出手段にて検出するステップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも、2段目以上の各単位電池については各電池電圧をほぼ同時的に検出できる。このような構成であれば、各単位電池間の電池電圧のばらつきを、誤差なく正確に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本実施形態は、本発明の電圧検出装置Uを用いて、バッテリBを構成する各単位電池の電池電圧を検出するようにしたものである。尚、バッテリBは本発明の組電池に相当するものであり、本実施形態では三つの単位電池E1〜E3を直列的に接続してなる。また、本明細書を通じて電位とはアース(グランド)を基準としたときの電位レベルを意味するものとする。
【0010】
本電圧検出装置Uは図1を参照して以下詳しく説明するように、ホールドコンデンサ群10と、サンプルホールドスイッチ群20と、電圧検出手段としての電圧検出機能及び、スイッチ制御手段としての制御機能を担うCPU30と、電圧記憶用コンデンサ群40と、スイッチ回路50と、入力ラインM1〜M3と、アース切替スイッチS4、S5とを主体に構成されている。
【0011】
まず、ホールドコンデンサ群10について説明する。図1に示すように、ホールドコンデンサ群10は、三つのホールドコンデンサCH1〜CH3より構成されている。これら各ホールドコンデンサCH1〜CH3は直列接続されており、更に、各ホールドコンデンサCH1〜CH3の両端子と各単位電池E1〜E3の両極とが並列ラインL0〜L3で接続されている。
【0012】
具体的には、バッテリBの正極を構成する三段目の単位電池E3の正極と、ホールドコンデンサCH3の一端子とが並列ラインL3によって相互に接続され、また、バッテリBの負極を構成する初段の単位電池E1の負極とホールドコンデンサCH1の一端子とが並列ラインL0によって相互に接続されている。そしてさらに、各単位電池同士の共通接続点とホールドコンデンサ同士の共通接続点とが並列ラインL2、L1によって相互に接続されている。
【0013】
サンプルホールドスイッチ群20は、サンプルホールドスイッチS1〜S3より構成されている。各サンプルホールドスイッチS1〜S3は上記並列ラインL1〜L3にそれぞれ介挿されており、上記並列ラインL1〜L3を開閉する機能を担っている。
【0014】
CPU30は、A/D変換用の入力ポートをA/D1〜A/D3の三組備えると共に、GNDポートを備えている。そして、ホールドコンデンサCH1とホールドコンデンサCH2の中間接続点P1と上記CPU30の入力ポートA/D1との間が入力ラインM1によって相互に接続されている。
【0015】
また、図1に示すように、ホールドコンデンサCH2には、スイッチS21とスイッチS22を直列的に接続してなるスイッチ対が並列的に接続されている。そして、係るスイッチ対S21、S22の中間接続点P4と上記CPU30の入力ポートA/D2との間が入力ラインM2によって相互に接続されている。
【0016】
また、ホールドコンデンサCH3には、スイッチS31とスイッチS32を直列的に接続してなるスイッチ対が並列的に接続されている。そして、係るスイッチ対S31、S32の中間接続点P5と、上記CPU30の入力ポートA/D3との間が入力ラインM3によって相互に接続されている。
【0017】
尚、スイッチ対S31、S32は上記スイッチS21、S22と共に、上記スイッチ回路50を構成している。また、以下の説明において、各ホールドコンデンサCH2、CH3の正極側(充電時正極側)に連なるスイッチS21、S31を正極側スイッチと呼び、負極側(充電時負極側)に連なる各スイッチS22、S32を負極側スイッチと呼ぶものとする。
【0018】
上記した入力ラインM2には電圧記憶用コンデンサC2が介挿され、入力ラインM3には電圧記憶用コンデンサC3が介挿入されている。これら両電圧記憶用コンデンサC2、C3は電圧記憶用コンデンサ群40を構成するものであり、その容量はホールドコンデンサに比べて容量が小さく設定してある。
【0019】
また、図1における符号S4、S5はアース切替スイッチである。アース切替スイッチS4は、電圧記憶用コンデンサC2と、CPU30の入力ポートA/D2との接続点P6をアース接地するアースラインL4上に介挿され同アースラインL4を開閉する機能を担っている。また、アース切替スイッチS5は、電圧記憶用コンデンサC3と、CPU30の入力ポートA/D3との接続点P7をアース接地するアースラインL5上に介挿され、同アースラインL5を開閉する機能を担っている。
【0020】
そして、上記CPU30と上記各スイッチS1、S2、S21、S22、S3、S31、S32、S4、S5との間が不図示の信号ラインを通じて電気的に接続されており、CPU30から各スイッチS1、S2、S21、S22、S31、S32、S4、S5に対して制御信号を与えることで各スイッチS1、S2、S21、S22、S31、S32、S4、S5を開閉操作できるようになっている。
【0021】
以上のことから、上記各スイッチS1、S2、S21、S22、S31、S32、S4、S5をCPU30により開閉操作しつつ、続いて説明を行う第一ステップ〜第四ステップからなる電圧検出ルーチンを実行させることで、バッテリBを構成する各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3を検出できるようになっている。
【0022】
尚、初期の状態においては、図1にあるように、各スイッチS1、S2、S21、S22、S31、S32、S4、S5はいずれもオフした状態にあり、また各ホールドコンデンサCH1〜CH3は、電荷が蓄えられていない状態にある。
【0023】
(a)第一ステップ
CPU30の制御の下、各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3が一斉にオン状態に制御される(図2参照)。これにより、各単位電池E1〜E3から各ホールドコンデンサCH1〜CH3に充電電流が流れて各ホールドコンデンサCH1〜CH3は各単位電池E1〜E3の電圧に充電される。具体的には、ホールドコンデンサCH1は、コンデンサの両端電圧が初段の単位電池E1の電池電圧V1に充電される。また、ホールドコンデンサCH2は、コンデンサの両端電圧が二段目の単位電池E2の電池電圧V2に充電され、ホールドコンデンサCH3は、コンデンサの両端電圧が三段目の単位電池E3の電池電圧V3に充電されることとなる(電池電圧のサンプル動作)。
【0024】
また、上記各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3が一斉にオン状態に制御されるのと、ほぼ同じタイミングでスイッチ対を構成する負極側のスイッチS22、S32、及びアース切替スイッチS4、S5がオン状態に制御され、スイッチ対を構成する正極側のスイッチS21、S31がオフ状態に制御される。
【0025】
これにより、電圧記憶用コンデンサC2は、一方側の端子が単位電池E1の正極に接続され、他方側の端子が接地された状態となる。また、電圧記憶用コンデンサC3は、一方側の端子が単位電池E2の正極に接続され、他方側の端子が接地された状態となる。
【0026】
以上のことから、2段目の入力ラインM2に介挿された電圧記憶用コンデンサC2は、コンデンサの正極側の電位が1段目の単位電池E1の正極の電位V1になるように充電される。また、3段目の入力ラインM3に介挿された電圧記憶用コンデンサC3は、コンデンサの正極側の電位が2段目の単位電池E2の正極の電位(V1+V2)になるように充電される。
【0027】
このように、第一ステップにおいては、各ホールドコンデンサCH1〜CH3への充電と並行して、N段目の入力ラインMnに挿入された電圧記憶用コンデンサCnに、N−1段目に位置する単位電池Eの正極の電位(V1+V2+・・Vn-1)を記憶させる電圧記憶動作が行われる構成となっている。
【0028】
(b)第二ステップ
各ホールドコンデンサCH1〜CH3及び、電圧記憶用コンデンサC2、C3が上記各電圧、各電位に充電されると、次にCPU30の制御下のもと、各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3が一斉にオフ状態に制御される(図3参照)。これにより、各ホールドコンデンサCH1〜CH3はスイッチS1〜S3をオフ動作する直前の各単位電池E1〜E3の電圧V1〜V3にそれぞれホールドされる。
【0029】
また、電圧記憶用コンデンサC2は、正極の電位が、スイッチS1〜S3をオフ動作する直前の単位電池E1の正極の電位V1にホールドされ、電圧記憶用コンデンサC3は、正極の電位がスイッチS1〜S3をオフ動作する直前の単位電池E2の正極の電位(V1+V2)にホールドされる。尚、このとき、残る他のスイッチは第一ステップと同じ開閉状態に維持される。
【0030】
(c)第三ステップ
各ホールドコンデンサCH1〜CH3が上記各電圧V1〜V3にホールドされると、次にCPU30の制御下のもと、以下のように各スイッチS1〜S5が開閉操作される。すなわち、第二ステップにおいて一斉オフした各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3についてはオフ状態が維持される。その一方、残る他のスイッチについては開閉状態が全て切り替えられる。具体的には、スイッチ対を構成する負極側のスイッチS22、S32、及びアース切替スイッチS4、S5はオン状態からオフ状態に切り替えられ、スイッチ対を構成する正極側のスイッチS21、S31はオフ状態からオン状態に切り替えられる(図4参照)。
【0031】
これにより、CPU30の各入力ポートA/D1〜A/D3には、それぞれ以下の電圧が同時に印加されることとなる。まず、初段の入力ポートA/D1には点P1の電位、すなわちホールドされた単位電池E1の電池電圧V1が印加されることとなる。
【0032】
一方、二段目の入力ポートA/D2には、点P2の電位(V1+V2)から電圧記憶用コンデンサC2の電圧V1を差し引いた差分電圧、すなわちホールドされた単位電池E2の電池電圧V2が印加される。
【0033】
また、三段目の入力ポートA/D3には、点P3の電位(V1+V2+V3)から電圧記憶用コンデンサC3の電圧(V1+V2)を差し引いた差分電圧、すなわちホールドされた単位電池E3の電池電圧V3が印加される。
【0034】
そして、上記各電圧が印加されると、CPU30は各入力ポートA/D1〜A/D3にアクセスして、印加された電圧を取り込む処理を行う。
【0035】
これにより、CPU30に各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3がほぼ同時に取り込まれる。すなわち、初段の入力ポートA/D1を通じて初段の単位電池E1の電圧V1が取り込まれ、二段目の入力ポートA/D2を通じて単位電池E2の電圧V2が取り込まれ、また三段目の入力ポートA/D3を通じて単位電池E3の電圧V3が取り込まれる(電圧の取り込み)。
【0036】
そして、CPU30は取り込んだ各電圧V1〜V3のデータをディジタル化し、その後、各電圧V1〜V3の電圧レベルを算出する。これにて、各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3の電圧レベルが検出される。
【0037】
(d)第四ステップ
上記第三ステップにて各電池電圧V1〜V3の電圧レベルが検出されると、CPU30は、各スイッチS1〜S5に制御信号を与えて、各スイッチS1〜S5を次のように開閉操作する。すなわち、各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3についてはオフ状態が維持される一方、残る他のスイッチについては開閉状態が全て切り替えられる。これにより、スイッチ対を構成する負極側のスイッチS22、S32、及びアース切替スイッチS4、S5はオフ状態からオン状態に切り替えられ、スイッチ対を構成する正極側のスイッチS21、S31はオン状態からオフ状態に切り替えられる。
【0038】
上記の如く各スイッチが開閉操作されることで、回路の結線状態が、図3に示す第二ステップの結線状態に戻される。これにより、電圧記憶用コンデンサC2は、正極側の電位がホールドコンデンサCH1の正極の電位に等しい状態になり、電圧記憶用コンデンサC3は、正極側の電位がホールドコンデンサCH2の正極の電位に等しい状態となる。かくして、電圧検出ルーチンが完了する。
【0039】
そして、あとは、上記第一ステップ〜第四ステップの処理を定期的に行うことで、各単位電池E1〜E3の各電池電圧V1〜V3の電圧レベルを定期的に検出することが出来る。
【0040】
すなわち、2回目の電圧検出ルーチンが開始されると、まず、CPU30の制御の下、各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3が一斉にオン状態に制御される。これにより、回路の結線が図3の状態から図2の状態に切り替り、各単位電池E1〜E3とそれに対応する各ホールドコンデンサCH1〜CH3との間にて充電電流/放電電流が流れる。
【0041】
より具体的に言えば、ホールドコンデンサCH側の電圧が、対応する単位電池Eの電圧Vより低い場合であれば、単位電池EからホールドコンデンサCHに、両間の電圧差に応じた充電電流が流れ、ホールドコンデンサCHは、コンデンサの両端電圧が単位電池Eの電池電圧Vに等しい状態になる。
【0042】
その一方、ホールドコンデンサCHの電圧が、単位電池Eの電池電圧Vより高い場合であれば、ホールドコンデンサCHから単位電池Eに、両間の電圧差に応じた放電電流が流れ、ホールドコンデンサCHは、コンデンサの両端電圧が単位電池Eの電池電圧Vに等しい状態となる。
【0043】
このような充電/放電動作が、各単位電池E1〜E3とそれに対応するホールドコンデンサCH1〜CH3の間にて、それぞれ個別に行われることで、各ホールドコンデンサCH1〜CH3の両端電圧が各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3に等しい状態となる(電池電圧のサンプル動作)。
【0044】
また、上記各単位電池E1〜E3とそれに対応するホールドコンデンサCH1〜CH3の間における充電/放電動作と並行して、各電圧記憶用コンデンサC2、C3も充電/放電動作を行う。すなわち、電圧記憶用コンデンサC2と単位電池E1との間にて、両者の電圧差に応じて充電/放電電流が流れ、また電圧記憶用コンデンサC3と単位電池E1、E2との間にて、両者の電位差に応じて充電/放電電流が流れる。
【0045】
以上のことから、2段目の入力ラインM2に介挿された電圧記憶用コンデンサC2は、コンデンサの正極側の電位が1段目のホールドコンデンサCH1の正極の電位V1になる。そして、3段目の入力ラインM3に介挿された電圧記憶用コンデンサC3は、コンデンサの正極側の電位が2段目のホールドコンデンサCH2の正極の電位(V1+V2)になる(電圧記憶動作)。
【0046】
かくして、二回目の電圧検出ルーチンにおいて、ホールドコンデンサCH1〜CH3による電圧のサンプル動作、電圧記憶用コンデンサC2、C3による電圧記憶動作が完了する。そして、本実施形態のものは、二回目の電圧検出ルーチン、及びそれに続く三回目以降の電圧検出ルーチンにおいては、係るサンプル動作、電圧記憶動作を極短い時間で完了させることが出来るという利点がある。
【0047】
というのも、初期状態において、各ホールドコンデンサCH1〜CH3及び各電圧記憶用コンデンサC2、C3はいずれも、電荷が蓄えられていない状態にあった。従って、初回の電圧検出ルーチンでは、例えば各ホールドコンデンサCH1〜CH3であれば、電圧ゼロの状態から電池電圧V1〜V3の電圧レベルにまで充電せねばならず、サンプル動作に要する時間が必然的に長くなり勝ちとなる。
【0048】
しかし、本実施形態では、初回の電圧検出ルーチンにて、各電池電圧V1〜V3をCPU50にて検出した後、各ホールドコンデンサCH1〜CH3、各電圧記憶用コンデンサC2、C3にチャージされている電荷を放電させておらず、電荷をコンデンサにチャージした状態のまま、二回目の電圧検出ルーチンを開始させている。
【0049】
そのため、二回目の電圧検出ルーチンにおける各電池電圧V1〜V3のサンプル動作(充電動作/放電動作)が、単位電池E1〜E3とコンデンサCH1〜CH3の電圧差に応じた僅かな電気量の充放電で済み、サンプル動作を極短時間で完了出来る。
【0050】
また、同様に電圧記憶用コンデンサC2に単位電池E1の正極の電位を記憶させる電圧記憶動作、電圧記憶用コンデンサC3に単位電池E2の正極の電位を記憶させる電圧記憶動作についても、両者の電圧差に応じた僅かな電気量の充放電で済むので、これを極短い時間で完了出来る。
【0051】
そして、上記サンプル動作、電圧記憶動作が完了すると、その後、各サンプルホールドスイッチS1、S2、S3が一斉にオフ状態に制御される。これにより、各ホールドコンデンサCH1〜CH3は、スイッチS1、S2、S3をオフ動作する直前の各単位電池E1〜E3の電圧値V1〜V3にそれぞれホールドされる。
【0052】
また、電圧記憶用コンデンサC2は、正極の電位が、スイッチS1〜S3をオフ動作する直前の単位電池E1の正極の電位V1にホールドされ、電圧記憶用コンデンサC3は、正極の電位が、スイッチS1、S2、S3をオフ動作する直前の単位電池E2の正極の電位(V1+V2)にホールドされる。
【0053】
それ以降の処理は既に述べた通りであり、第三ステップ〜第四ステップの処理を行うことで、各入力ポートA/D1〜A/D3に各単位電池E1〜E3の各電池電圧V1〜V3がほぼ同時的に取り込まれ、CPU30により各電池電圧V1〜V3の電圧レベルが検出されることとなる。
【0054】
本実施形態の電圧検出原理と効果
各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3を、CPU30により同時的に検出するには、CPU30の各入力ポートA/D1〜A/D3に、各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3を同時的に入力させてやればよい。
【0055】
しかしながら、直列的に接続された各単位電池E1〜E3の正極の電位は、例えば三段目の単位電池E3であれば、V1+V2+V3となり、電池電圧V3に対して、単位電池E3よりも下段に位置する両単位電池E1、E2の電池電圧V1、V2の分だけ高い電位となる。
【0056】
そのため、上記電圧V1〜V3の同時入力を実現させるには、二段目以上の単位電池Enについては、正極の電位(V1+V2+・・・・Vn)から、それよりも下段に位置する単位電池E-1の正極の電位(V1+V2+・・・・Vn-1)を減算する処理を行った上で、各入力ポートA/D2、A/D3に電圧を入力させ、かつ、このような減算処理を各段について一斉に行う必要がある。そこで、本実施形態のものは、係る一斉減算機能を、以下の回路構成及び回路結線の組み替えにより実現させている。
【0057】
すなわち、回路構成の点については、二段目以上の各ホールドコンデンサCH2、CH3にそれぞれスイッチ対S21、S22、S31、S32を設けると共に、二段目以上の各入力ラインM2、M3に電圧記憶用コンデンサC2、C3をそれぞれ設けている。また、二段目以上の各入力ラインM2、M3にアースラインL4、L5を分岐して設け、そこにアース切替スイッチS4、S5を設けている。
【0058】
そして、電圧検出ルーチンが開始されると、まず、ステップ1、ステップ2では、各電圧記憶用コンデンサC2、C3の正極が、それより一段低い段に位置するホールドコンデンサCH1、CH2の正極にそれぞれ接続されるように回路を結線して、各電圧記憶用コンデンサC2、C3に、それより一段低い段に位置する単位電池E1、E2の正極の電位に相当する電圧をそれぞれ記憶させている。そして、ステップ3では、各段の電圧記憶用コンデンサC2、C3の正極側が、対応する段のホールドコンデンサCH2、CH3の正極側に接続され、各段の電圧記憶用コンデンサC2、C3の負極が各段の入力ポートA/D2、A/D3にそれぞれ接続されるように回路の結線を一斉に組み替えている。
【0059】
これにより、各段の入力ポートA/D2、A/D3には、各段のホールドコンデンサCH2、CH3の正極の電位から、電圧記憶用コンデンサC2、C3の電圧を差し引いた差分電圧が一斉に印加されることとなる(上記一斉減算機能の実現)。
【0060】
以上のことから、各入力ポートA/D1〜A/D3に、各電池電圧V1〜V3が同時的に印加され、CPU30により各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3を同時的に検出できる。これにより、以下の効果を奏することが可能となる。
【0061】
ここで仮に、各電池電圧V1〜V3の検出時が同時的でないとすると(従来例にて説明した検出方法によるものの場合)、各電池電圧V1〜V3の個々の電圧レベル、それ自体については正確に検出できたとしても、電池電圧V1〜V3の時間的な変動分の影響を受けてしまい、各電池電圧V1〜V3の電圧レベルの高低差(ばらつき)を正しく検出出来ない。この点、本実施形態では、各単位電圧E1〜E3の電池電圧V1〜V3をほぼ同時的に検出出来るから、各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3の電圧レベルの高低差(ばらつき)を正確に検出することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、ホールドコンデンサCH1〜CH3を設けており、各単位電池E1〜E3の電池電圧V1〜V3をホールドさせている。このように、各電池電圧V1〜V3をホールドしておけば、第二ステップにて電圧記憶用コンデンサC2、C3に記憶動作を行わせてから、第三ステップにて各入力ポートA/Dに各差分電圧を印加するまでの間、各電池電圧V1〜V3が変動しないので、正確な差分電圧が得られる。よって、個々の電池電圧V1〜V3の電圧レベルを正確に検出できる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)上記実施形態では、組電池として、三つの単位電池E1〜E3を直列接続してなる構成のものを例示したが、単位電池の接続段数は三段に限定されるものでなく四段、五段あるいはそれ以上であってもよい。
【0065】
(2)上記実施形態では、CPU50にて各電池電圧V1〜V3を検出した後、ホールドコンデンサCH1〜CH3にチャージされている電荷、電圧記憶用コンデンサC2、C3にチャージされている電荷をいずれも、放電させない構成としたが、放電回路を専用に設けて、検出完了の都度、各ホールドコンデンサCH1〜CH3にチャージされた電荷、及び各電圧記憶用コンデンサC2、C3にチャージされた電圧をそれぞれ放電させ、初期の状態に戻す構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態に適用された電圧検出装置の回路構成図
【図2】電圧検出装置の回路構成図(サンプル動作を示す)
【図3】電圧検出装置の回路構成図(ホールド動作を示す)
【図4】電圧検出装置の回路構成図(電圧検出動作を示す)
【図5】CPUによる各スイッチの開閉タイミングを示したタイミングチャート図
【符号の説明】
【0067】
10…ホールドコンデンサ群
20…サンプルホールドスイッチ群
30…CPU(本発明の「電圧検出手段」/「スイッチ制御手段」に相当)
40…電圧記憶用コンデンサ群
50…スイッチ回路
CH1〜CH3…ホールドコンデンサ
S1〜S3…サンプルホールドスイッチ
C2、C3…電圧記憶用コンデンサ
A/D1〜A/D3…入力ポート(本発明の「電圧入力部」に相当)
S21…正極側スイッチ(スイッチ対)
S22…負極側スイッチ(スイッチ対)
S31…正極側スイッチ(スイッチ対)
S32…負極側スイッチ(スイッチ対)
S4、S5…アース切替スイッチ
U…電圧検出装置
M1…入力ライン
M2…入力ライン
M3…入力ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の単位電池を直列接続してなる組電池に関し、前記各単位電池の電池電圧を検出する電圧検出装置であって、
各単位電池に対応して設けられる各ホールドコンデンサを直列的に接続してなるホールドコンデンサ群と、
各単位電池の両極と各ホールドコンデンサの両端子を接続する並列ラインに設けられ、これら並列ラインを開閉する各サンプルホールドスイッチと、
前記単位電池の直列接続段数に応じた段数の電圧入力部を有し、前記各電圧入力部に印加された電圧の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、
直列的に接続された一対のスイッチからなるスイッチ対を、初段のホールドコンデンサを除く、他のホールドコンデンサに1対1の対応関係でそれぞれ並列的に接続してなるスイッチ回路と、
前記各スイッチ対の中間接続点とそれに対応する前記電圧入力部とを1対1の対応関係で接続する各入力ラインと、
前記各入力ラインに介挿される各電圧記憶用コンデンサよりなる電圧記憶用コンデンサ群と、
前記各電圧記憶用コンデンサと前記電圧入力部との接続点をアース接地する各アースラインに挿入され前記各アースラインを開閉する各アース切替スイッチと、
前記各スイッチを開閉操作するスイッチ制御手段と、を備えてなる電圧検出装置。
【請求項2】
各単位電池に対応して設けられる各ホールドコンデンサを直列的に接続してなるホールドコンデンサ群と、
各単位電池の両極と各ホールドコンデンサの両端子を接続する並列ラインに設けられ、これら並列ラインを開閉する各サンプルホールドスイッチと、
前記単位電池の直列接続段数に応じた段数の電圧入力部を有し、前記各電圧入力部に印加された電圧の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、
直列的に接続された一対のスイッチからなるスイッチ対を、初段のホールドコンデンサを除く、他のホールドコンデンサに1対1の対応関係でそれぞれ並列的に接続してなるスイッチ回路と、
前記各スイッチ対の中間接続点とそれに対応する前記電圧入力部とを1対1の対応関係で接続する各入力ラインと、
前記各入力ラインに介挿される各電圧記憶用コンデンサよりなる電圧記憶用コンデンサ群と、
前記各電圧記憶用コンデンサと前記電圧入力部との接続点をアース接地する各アースラインに挿入され前記各アースラインを開閉する各アース切替スイッチと、
前記各スイッチを開閉操作するスイッチ制御手段と、を備えてなる電圧検出装置を用いて、複数個の単位電池を直列接続してなる組電池を構成する各単位電池の電池電圧を検出する電圧検出方法であって、以下の第一ステップから第三ステップの各ステップを経て前記電池電圧を検出することを特徴とする電圧検出方法。
前記スイッチ対を構成する両スイッチのうち、並列接続されたホールドコンデンサの正極側に連なる側のスイッチを正極側スイッチ、負極側に連なる側のスイッチを負極側スイッチと定義したときに、
(a)第一ステップ
前記スイッチ制御手段により各サンプルホールドスイッチをオンさせて、各ホールドコンデンサを、コンデンサ両端電圧が各単位電池の電池電圧になるように、それぞれ充電或いは放電させるサンプル動作を実行すると共に、
前記スイッチ制御手段により前記アース切替スイッチをオンさせ、前記スイッチ回路を構成する各スイッチ対のうちの負極側スイッチをオンさせ、正極側スイッチをオフさせることで、N段目(Nは2以上の整数)の入力ラインに介挿された各電圧記憶用コンデンサを、コンデンサの正極側の電位がN−1段目の単位電池の正極電位になるように充電或いは放電させる電圧記憶動作を実行させるステップ。
(b)第二ステップ
前記第一ステップに続いて行われ、前記スイッチ制御手段により各サンプルホールドスイッチをオフさせて、前記電圧検出装置から前記単位電池を電気的に切り離し各コンデンサにて各電圧、各電位を保持するホールド動作を実行するステップ。
(c)第三ステップ
前記第二ステップに続いて行われ、前記スイッチ制御手段により前記アース切替スイッチをオフさせ、前記スイッチ回路を構成する各スイッチ対のうちの負極側スイッチをオフさせ、正極側スイッチをオンさせることで、
N段目のホールドコンデンサの正極の電位(V1+V2+・・・Vn)から、
N段目の入力ラインに介挿された電圧記憶用コンデンサにてホールドされたN−1段目の単位電池の正極の電位(V1+V2+・・・Vn-1)を、差し引いた各差分電圧Vnを各入力ラインを通じて各電圧入力部に同時的に印加させ、印加された各差分電圧Vnの電圧レベルを前記電圧検出手段にて検出するステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121840(P2009−121840A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293356(P2007−293356)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】