説明

電圧監視システム

【課題】燃料電池の電圧監視システムにおいて、簡単な構成によって構成部材の温度依存性に起因する電圧検出精度の悪化を抑制する。
【解決手段】複数の燃料電池FC1〜FC4を積層した燃料電池スタックFCの電圧監視システム20は、燃料電池FC1〜FC4のそれぞれに対して設けられ、燃料電池FC1〜FC4の各々の電圧を、燃料電池FC1〜FC4から個別に取り出して出力する電圧伝達回路30と、電圧伝達回路30が出力する燃料電池FC1〜FC4の電圧を集合して、出力された電圧のうちの最小値を、ダイオードD51〜D54を介して検出する最小値検出回路50と、最小値検出回路50の検出結果を、ダイオードD51〜D54と反対の方向に設けられたダイオードD72を介して出力する出力回路70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池を積層した燃料電池スタックの電圧監視技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、単セルでは実際の出力が1Vにも満たないため、一般的には、複数の単セルを直列接続した燃料電池スタックとして構成し、全体として必要な高電圧を確保する。かかる燃料電池スタックでは、単セル1つにでも異常が発生すると、スタック全体に対して出力制限を行うか、運転を停止する必要がある。こうしたことから、燃料電池スタックの制御を好適に行うために、燃料電池スタックを構成する単セルの電圧を監視する電圧監視システムが提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
こうした電圧監視システムでは、構成部材の温度依存性に起因して、検出する電圧値が環境温度の影響を受け、検出精度が悪化することがある。そのため、温度センサを設けて、検出温度に応じた温度補償を行う技術が提案されている。例えば、下記特許文献3では、温度センサによる検出温度に応じて、電界効果トランジスタのオン抵抗の温度補償を行っている。しかしながら、温度センサを用いる方法では、温度センサの設置はもとより、検出温度に応じた温度補償演算が必要となり、装置の複雑化、高コスト化を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−103201号公報
【特許文献2】特開2002−184443号公報
【特許文献3】特開2002−151163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、燃料電池の電圧監視システムにおいて、簡単な構成によって構成部材の温度依存性に起因する電圧検出精度の悪化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]複数の燃料電池を積層した燃料電池スタックの電圧監視システムであって、
前記複数の燃料電池のそれぞれに対して設けられ、該燃料電池の各々の電圧を、該燃料電池から個別に取り出して出力する電圧伝達手段と、
前記電圧伝達手段が出力する前記複数の燃料電池の電圧を集合して、該出力された電圧のうちの最小値と最大値の少なくとも一方を、第1のダイオードを介して検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果を、前記第1のダイオードと反対の方向に設けられた第2のダイオードを介して出力する出力手段と
を備えた電圧監視システム。
【0008】
かかる構成の電圧監視システムは、燃料電池の各々の電圧を個別に取り出して集合し、それらの最小値と最大値の少なくとも一方を、第1のダイオードを介して検出し、第1のダイオードと反対の方向に設けられた第2のダイオードを介して出力する。ここで、第1のダイオード及び第2のダイオードでは、順電圧の分だけ電圧降下が生じる。この順電圧は、温度が高くなるほど小さくなる温度依存性を有しているが、第1のダイオードと第2のダイオードとは反対方向に設けられ、第1のダイオードと第2のダイオードとでは順電圧が逆向きに生じるので、温度依存性に起因する順電圧の変動の少なくとも一部を、第1のダイオードと第2のダイオードとの間で相互に打ち消し合うことができる。したがって、ダイオードの温度依存性に起因する電圧検出精度の悪化を抑制することができる。しかも、検出手段が備える第1のダイオードと反対の方向に設けられた第2のダイオードを介して検出結果を出力するだけであるから、構成が簡単である。
【0009】
[適用例2]前記第1のダイオードと前記第2のダイオードとは、順電圧の温度依存特性が略等しい適用例1記載の電圧監視システム。
【0010】
かかる構成の電圧監視システムは、順電圧の温度依存特性が、第1のダイオードと第2のダイオードとで略等しいので、温度依存性に起因する順電圧の変動を、第1のダイオードと第2のダイオードとの間でほとんど相互に打ち消し合うことができる。したがって、ダイオードの温度依存性を、システム全体として、ほぼ解消することができ、精度の高い電圧検出を行うことができる。
【0011】
[適用例3]前記出力手段は、前記検出手段と前記第2のダイオードとの間に介装され、該検出手段の出力段側から該検出手段への影響を抑制するバッファ回路を備えた適用例1または適用例2記載の電圧監視システム。
【0012】
かかる構成の電圧監視システムは、検出手段と第2のダイオードとの間にバッファ回路が介装されるので、検出手段の出力段側から検出手段への影響を抑制することができ、精度の高い電圧検出を行うことができる。
【0013】
[適用例4]適用例3記載の電圧監視システムであって、前記出力手段は、前記バッファ回路と前記第2のダイオードとの間に介装され、該バッファ回路を介して、前記検出結果を入力するトランスと、前記トランスの入力側の巻線に接続され、前記検出結果を交流電圧として該トランスに出力させるスイッチ回路とを備えた電圧監視システム。
【0014】
かかる構成の電圧監視システムは、スイッチ回路をON/OFFすることで、検出結果を、トランスを介して、交流電圧として第2のダイオードに出力することができるので、高圧の燃料電池側と絶縁した状態で、検出結果を低圧側に出力できるので、安全性を高めることができる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか記載の電圧監視システムであって、前記電圧伝達手段は、前記複数の燃料電池のアノード側とカソード側とに接続された差動アンプであり、前記検出手段は、前記差動アンプの出力ごとに同一方向に設けられた前記第1のダイオードと、該第1のダイオードとグランドとの間に介装されるコンデンサとを備えた電圧監視システム。
【0016】
かかる構成の電圧監視システムは、検出手段が差動アンプとダイオードとコンデンサとで構成されるので、電圧監視システムの構成を簡略化することができる。また、汎用部品を用いて構成できるので、製造が容易であり、低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例としての電圧監視システム20の概略構成を示す説明図である。
【図2】第2実施例としての電圧監視システム120の概略構成を示す説明図である。
【図3】第3実施例としての電圧伝達回路230の概略構成を示す説明図である。
【図4】第4実施例としての電圧監視システム320の概略構成を示す説明図である。
【図5】第5実施例としての電圧監視システム420の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施例:
本発明の実施例としての電圧監視システム20の概略構成を図1に示す。電圧監視システム20は、複数の燃料電池を積層した燃料電池スタックFCの電圧を監視するシステムである。ここでの燃料電池とは、発電の最小単位である、いわゆる単セルである。本実施例における燃料電池は、固体高分子形の燃料電池であり、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す固体高分子材料の薄膜である電解質膜の表面上にカソード電極とアノード電極とを備える電解質膜・電極接合体の両面に、ガス拡散層、流路部材、セパレータが積層されて構成される(図示せず)。燃料電池スタックFCは、積層方向の両端に配置したターミナル、インシュレータ、エンドプレートで挟持されると共に、燃料ガス、酸化ガス及び冷却水の給排システムが接続されている(図示せず)。燃料電池スタックFCの定格出力は、本実施例では300Vである。ただし、定格出力は、適宜設定すればよく、燃料電池スタックFCを構成する燃料電池の数は、2つ以上であればよい。
【0019】
電圧監視システム20は、図1に示すように、電圧伝達回路30と最小値検出回路50と出力回路70とを備えている。電圧伝達回路30は、燃料電池スタックFCを構成する燃料電池FC1〜FC4のそれぞれに接続される同一の回路で構成される。電圧伝達回路30は、燃料電池FC1〜FC4から見ると、オペアンプ31〜34の両入力端子に接続されている。オペアンプ31〜34は、差動増幅器であり、両入力端子に接続された燃料電池FC1〜FC4の電圧を、予め定めたゲインで増幅した電圧(ここではゲインを1としたので、燃料電池FC1〜FC4の電圧そのもの)を実電位とは絶縁して出力する。
【0020】
燃料電池FC1〜FC4は、積層され、電気的には直列接続されているから、グランドレベルに対して、各燃料電池のカソードの電圧は、その燃料電池までに積層された燃料電池の数に対応した電位までかさ上げされている。オペアンプ31〜34として差動増幅器を用いていることにより、各オペアンプ31〜34の出力電圧はいずれも、燃料電池FC1〜FC4の電圧をグランドレベルに対して表した値となっている。本実施例においては、オペアンプ31〜34の電源として、燃料電池スタックFCとは独立して設けられた電源36を用いる構成としている。
【0021】
最小値検出回路50は、燃料電池FC1〜FC4の出力電圧のうちの最小値を検出する回路であり、図1に示すように、ダイオードD51〜D54とコンデンサC56と電源57と抵抗R58とを備えている。上述した各オペアンプ31〜34の出力は全て、逆方向のダイオードD51〜D54に接続されている。このため、各オペアンプ31〜34の出力は、いわゆるワイヤードオア接続となっている。つまり、各オペアンプ31〜34の出力は、他のオペアンプ31〜34の出力に対しては何ら影響を与えない。ワイヤードオア接続されたオペアンプ31〜34の出力には、一端がグランドに接続されたコンデンサC56が接続されており、更に、プルアップ抵抗器R58を介して所定の正の電源57が接続されている。この電圧は、オペアンプ31〜34の想定される出力に対して十分に大きな値で設定されている。
【0022】
かかる最小値検出回路50の最小値検出動作について説明する。最小値検出動作とは、燃料電池FC1〜FC4の各々の電圧のうちの最小値を検出する動作である。なお、説明を簡略化するため、以下の動作では、ダイオードD51〜D54の降下電圧を0ボルトであるとして説明する。
(1)オペアンプ31〜34が動作しておらず、各オペアンプ31〜34の出力がハイインピーダンス状態となっていれば、オペアンプ31〜34の出力への電流の流れ込みはないので、コンデンサC56は充電された状態となり、端子TE1の電圧は、プルアップ抵抗器R58を介して接続された正の電源57の電圧と等しくなる。
【0023】
(2)次に、所定のタイミングでオペアンプ31〜34を動作させ、各燃料電池FC1〜FC4の各出力電圧を差動増幅器であるオペアンプ31〜34で検出し、出力させると、ダイオードD51〜D54を介して電流が流れ込み、コンデンサC56の端子TE1の電圧は低下する。この動作は、端子TE1の電圧が、接続されたオペアンプ31〜34の出力のうち、最も低い電圧Vmin1となるまで継続する。端子TE1の電圧が電圧Vmin1と一致したとき、他のオペアンプ31〜34(電圧Vmin1を出力したオペアンプ以外のオペアンプ)は、この端子TE1の電圧より高いから、ダイオードD51〜D54を介して電流が流れ込むことはない。
【0024】
(3)仮に、いずれかの燃料電池の電圧が更に低下し、接続されたオペアンプ31〜34の出力のうち、最も低い電圧がVmin2(Vmin1>Vmin2)となると、コンデンサC56の端子TE1の電圧よりも低い電圧を出力したオペアンプ31〜34にダイオードD51〜D54を介して電流が流れ込み、コンデンサC56の端子TE1の電圧は低下する。この動作は、端子TE1の電圧が電圧Vmin2となるまで継続する。端子TE1の電圧が電圧Vmin2と一致したとき、他のオペアンプ31〜34は、この端子TE1の電圧より高いから、ダイオードD51〜D54を介して電流が流れ込むことはない。
【0025】
(4)逆に、それまで最小の電圧であった燃料電池の電圧が高くなり、接続されたオペアンプ31〜34の出力のうち、最も低い電圧がVmin3(Vmin1<Vmin3)となると、オペアンプ31〜34は、端子TE1の電圧より高いから、ダイオードD51〜D54を介して電流が流れ込むことはない。したがって、電源57によって、コンデンサC56が徐々に充電される。この充電は、コンデンサC56の端子TE1の電圧が電圧Vmin3になるまで継続される。端子TE1の電圧が電圧Vmin3を超えると、ダイオードD51〜D54を介して電流が流れ込み、コンデンサC56の端子TE1の電圧は低下する。
【0026】
実際には、上述した(2)〜(4)のいずれの場合でも、ダイオードには順電圧Vf(Forword Voltage)が存在するから(シリコンダイオードの場合、通常0.7ボルト程度)、端子TE1の電圧は、オペアンプ31〜34の出力電圧の最小値より、この順電圧Vf分だけ高くなるが、各ダイオードの順電圧Vfは、既知のものなので、端子TE1の電圧を検出することにより、各燃料電池FC1〜FC4の最小電圧を検出することは容易である。このようにして、コンデンサC56には、オペアンプ31〜34の最小出力、すなわち、燃料電池FC1〜FC4の最小電圧に対応する電圧がホールドされる。
【0027】
上述した順電圧Vfには、温度依存性がある。環境温度が1℃上昇すると、順電圧Vfは、例えば、2.0mV低下する。この場合、環境温度が0℃〜50℃まで変化し得るとすると、その際の順電圧Vfの変動幅は、0.1V(=2.0mV/℃×50℃)にもなる。このようなことから、本実施例では、ダイオードD51〜D54には、順電圧Vfの温度依存特性が略等しいものを用いている。ここで、温度依存特性が略等しいとは、個体間のばらつきを許容する意味であり、設計上、温度依存特性が等しいとして扱われるものであれば、これに該当する。例えば、環境温度の変化に応じた個体間の順電圧Vfの変動のばらつきが10%以内であれば、温度依存特性が略等しいということができる。このように温度依存特性が等しいダイオードは、電圧監視システム20の製造時に、各々のダイオードの温度依存特性の測定を行い、変動幅が所定の範囲に収まるものを選定すればよい。あるいは、同一の半導体ロットから製造されたダイオードを選定してもよい。こうすれば、同一の半導体ロットから製造されたダイオードは、特性が近似するので、変動幅が所定の範囲に収まる可能性が高く、測定を省略したり、測定するダイオードの数を減らすことができ、製造工程を簡略化できる。
【0028】
このようにして最小値検出回路50のコンデンサC56でホールドされた最小値は、出力回路70に出力される。出力回路70は、図1に示すように、バッファ回路71とダイオードD72とを備えている。出力回路70は、最小値検出回路50から見ると、最小値検出回路50の出力に対して、バッファ回路71と、ダイオードD72とが、バッファ回路71、ダイオードD72の順に直列に接続されている。バッファ回路71は、バッファ回路71の出力段側から入力段側への影響を抑制する。本実施例においては、バッファ回路71は、ボルテージフォロアであり、最小値検出回路50からの入力電圧値そのものをダイオードD72側に出力する。このように、バッファ回路71を介して、最小値検出回路50の出力をダイオードD72側に出力すれば、コンデンサC56にホールドされた電圧値が、ダイオードD72側の影響を受けないので、最小値検出回路50における最小値の検出精度を向上させることができる。ただし、バッファ回路71は、必須ではない。
【0029】
ダイオードD72は、バッファ回路71の出力に対して順方向に設けられている。つまり、ダイオードD72は、最小値検出回路50を構成するダイオードD51〜D54と比べると、電圧伝達回路30側から見た場合の電流の流れ方向が逆になるように、反対の方向に設けられている。本実施例においては、このダイオードD72には、順電圧Vfの温度依存特性がダイオードD51〜D54と略等しいものを用いている。
【0030】
かかるダイオードD72の出力は、本実施例では、MCU(図示せず)に出力される。MCUは、本実施例では、AD変換に特化したマイクロコンピュータである。MCUは、入力された最小値をAD変換して、燃料電池スタックFCの運転制御を司るCPU(図示せず)に出力され、燃料電池FC1〜FC4の最小電圧に基づいた燃料電池スタックFCの発電状態の監視に用いられる。なお、MCUを介することなく、最小値を直接的にCPUに入力する構成としてもよい。
【0031】
かかる構成の電圧監視システム20は、燃料電池FC1〜FC4の各々の電圧を個別に取り出して集合し、それらの最小値を、ダイオードD51〜D54を介して検出し、ダイオードD51〜D54と反対の方向に設けられたダイオードD72を介して出力する。ここで、ダイオードD51〜D54及びダイオードD72の順電圧Vfは、温度依存性を有しているが、ダイオードD51〜D54及びダイオードD72とは反対方向に設けられ、ダイオードD51〜D54とダイオードD72とでは順電圧Vfが逆向きに生じるので、温度依存性に起因する順電圧Vfの変動を、ダイオードD51〜D54とダイオードD72との間で相互に打ち消し合うことができる。したがって、ダイオードの温度依存性に起因する電圧検出精度の悪化を抑制することができる。しかも、ダイオードD51〜D54と反対の方向に設けられたダイオードD72を介して、最小値検出回路50の検出結果を出力するだけであるから、構成が簡単である。
【0032】
しかも、電圧監視システム20は、順電圧Vfの温度依存特性が、ダイオードD51〜D54とダイオードD72とで略等しいので、温度依存性に起因する順電圧Vfの変動を、ダイオードD51〜D54とダイオードD72との間でほとんど相互に打ち消し合うことができる。したがって、ダイオードの温度依存性を、電圧監視システム20全体として、ほぼ解消することができ、精度の高い電圧検出を行うことができる。
【0033】
また、電圧監視システム20は、反対方向に設けられたダイオードD51〜D54とダイオードD72とにより、順電圧Vfを相互に打ち消し合うので、電圧監視システム20から出力される最小値は、燃料電池FC1〜FC4の最小値に等しくなり、順電圧Vf分を補正する必要がなく、構成を簡略化できる。
【0034】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例としての電圧監視システム120について図2を用いて説明する。図2では、第1実施例と同様の構成については、図1と同様の符号を付している。以下、電圧監視システム120について、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、共通する点については、説明を省略する。電圧監視システム120は、図示するように、電圧伝達回路30と最小値検出回路50と出力回路170とを備えている。電圧伝達回路30及び最小値検出回路50の構成は、第1実施例と同様である。出力回路170は、バッファ回路71と、トランス173と、スイッチSW174と、ダイオードD72とを備えている。出力回路170は、バッファ回路71とダイオードD72との間に、トランス173及びスイッチSW174が介装されている点が、第1実施例と異なる。
【0035】
トランス173は、入力側巻線が最小値検出回路50とグランドとに接続され、出力側巻線がダイオードD72とグランドとに接続されている。このグランドは、ダイオードD72の出力電圧を出力するMCUのグランドである。また、入力側巻線とグランドとの間には、スイッチSW174が介装されている。スイッチSW174は、トランス173の入力側巻線と、グランドとの導通状態のON/OFFを切り替えるリレーである。
【0036】
スイッチSW174をONにすると、最小値検出回路50の出力に応じた電力がバッファ回路71を介して、トランス173の入力巻線に流れ込む。その電流の変化は極めて大きいので、トランス173の出力側巻線の両端には、トランス173の入出力間の相互インダクタンスに応じて、入力電圧に対応した正の出力電圧が現れる。そして、スイッチSW174をOFFにすると、入力巻線への電流の流れ込みがなくなる。この電流の変化は極めて大きいので、トランス173の出力側巻線の両端には、逆起電力によって、入力電圧に対応した負の出力電圧が現れる。つまり、スイッチSW174のON/OFFを繰り返すことにより、トランス173は、最小値検出回路50からの入力電圧を交流電圧化して出力する。本実施例においては、入力側巻線と出力側巻線の巻数は、等しく構成した。したがって、交流電圧化された交流信号の最大振幅は、最小値検出回路50の出力と等しくなる。
【0037】
このように交流電圧化されたトランス173の出力は、順方向のダイオードD72によって半波整流され、図示しないMCUに出力される。したがって、その最大振幅を検出すれば、MCUは、燃料電池FC1〜FC4の出力電圧の最小値を知ることができる。
【0038】
かかる構成の電圧監視システム20は、スイッチSW174のON/OFFを繰り返すことによって、バッファ回路71の出力を、トランス173によって交流電圧化して、ダイオードD72に出力するので、燃料電池FC1〜FC4の最小電圧を出力することができる。トランス173の入力段と出力段とは絶縁されるので、トランス173によって、高圧の燃料電池スタックFC側と絶縁した状態で、最小値検出回路50の検出結果を低圧側に出力でき、安全性を高めることができる。
【0039】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例について説明する。第3実施例としての電圧監視システムは、上述した第1実施例としての電圧監視システム20に対して、電圧伝達回路の構成のみが異なる。以下、第3実施例としての電圧監視システムについて、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、共通する点については、説明を省略する。図3は、第3実施例としての電圧伝達回路230の構成を示す説明図である。電圧伝達回路230は、抵抗R231〜R234と、電流センサ241〜244とを備えている。つまり、電圧伝達回路230は、第1実施例としての電圧伝達回路30のオペアンプ31〜34に代えて、抵抗R231〜R234と、電流センサ241〜244とを備えている点が第1実施例と異なる。
【0040】
燃料電池FC1のアノード、カソード間には、抵抗R231と電流センサ241とが直列に接続されている。同様に、燃料電池FC2〜FC4についても、抵抗R232〜R234と電流センサ242〜244とが直列に接続されている。
【0041】
電流センサ241〜244は、非接触式の直流電流センサであり、燃料電池FC1〜FC4と絶縁した状態で、抵抗R231〜234を流れる電流に応じて、燃料電池FC1〜FC4の出力電圧と同一値の電圧を出力する。本実施例では、電流センサ241〜244には、ホール素子型の磁気センサを用いた。かかる構成の電圧伝達回路230は、第1実施例と同様の原理により、最小値検出動作を行うことができる。その結果、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0042】
上述の電流センサ241〜244は、上述の機能を備えたものであればよく、例えば、マグアンプ式、磁気マルチバイブレータ式など種々の磁気センサ、電流センサを用いることができる。なお、燃料電池FC1〜FC4に急激な出力変化があった場合にのみ出力すればよい構成とするのであれば、電流センサ241〜244として、カレントトランスを用いることもできる。
【0043】
D.第4実施例:
本発明の第4実施例としての電圧監視システム320について、図4を用いて説明する。図4では、第1実施例と同様の構成については、図1と同一の符号を付している。以下、電圧監視システム320について、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、共通する点については、説明を省略する。図示するように、第4実施例としての電圧監視システム320は、スイッチ回路311〜314と、トランス330と、最小値検出回路350と、出力回路70とを備えている。
【0044】
各スイッチ回路311〜314は、基本的には同一の回路であり、燃料電池FC1〜FC4から見ると、アノード、カソード間にコンデンサC301〜C304が介装され、かつ、これと平行にスイッチSW321〜SW324、巻線341〜344が直列に接続されている。このように、スイッチ回路311〜314は、燃料電池スタックFCを構成する燃料電池FC1〜FC4のそれぞれに対して1つずつ設けられている。
【0045】
スイッチSW321〜SW324は、CPU(図示せず)からの信号を受けて燃料電池FC1〜FC4のアノード側とカソード側との導通状態のON/OFFを切り替えるリレーである。トランス330は、巻線341〜344を入力側巻線、巻線346を出力側巻線とするトランスである。スイッチSW321〜SW324がいずれもOFFとなっていると、燃料電池FC1〜FC4により、コンデンサC301〜C304は充電される。コンデンサC301〜C304は、一端充電されれば、電力を消費しない。この状態で、スイッチSW321〜SW324のいずれか1つをONにした場合、コンデンサC301〜C304のうち、ONとなったスイッチに対応するコンデンサに蓄えられた電力は、トランス330の入力側巻線に流れ込む。その電流の変化は極めて大きいので、トランス330の出力側巻線である巻線346の両端には、トランス330の入出力間の相互インダクタンスに応じて、入力電圧に対応した出力電圧が現れる。なお、スイッチSW321〜SW324のいずれか1つがONとなれば、対応する燃料電池FC1〜FC4からも電流は流れるが、燃料電池FC1〜FC4には内部抵抗があるため、短時間のうちに大きな突入電流を流すことはできない。このため、コンデンサC301〜C304を用いて、トランス330の入力側巻線である巻線341〜344に突入電流を流すのである。かかるコンデンサC301〜C304は、いわゆるスピードアップコンデンサと呼ばれるものである。なお、スイッチ回路311〜314及びトランス330は、第1実施例の電圧伝達回路30に相当するものである。
【0046】
最小値検出回路350は、燃料電池FC1〜FC4に共通する回路であり、コンデンサC351,C352と、ダイオードD353と、スイッチSW354とを備えている。巻線346の一端は、出力回路70を構成するバッファ回路71の入力端子に接続され、他端は、グランドに接続され、かつ、この巻線346の両端には、コンデンサC351とコンデンサC352とがそれぞれ並列に介装されている。また、コンデンサC351とコンデンサC352との間には、ダイオードD353とスイッチSW354とが介装されている。ダイオードD353は、トランス330側から見ると、逆方向に設けられている。
【0047】
かかる最小値検出回路350の動作について説明する。まず、コンデンサC352に、スイッチSW354をOFFにした状態で、予め、所定の初期電圧V0を印加する。ここで、初期電圧V0とは、燃料電池FC1〜FC4の電圧の最小値よりも確実に大きいと想定される電圧である。本実施例では、図示しない正の電源から印加する構成とした。
【0048】
そして、スイッチ回路312〜314のスイッチSW322〜SW324をOFFにした状態で、スイッチ回路311のスイッチSW321をONにする。すると、トランス330に燃料電池FC1の電圧V1が入力され、その出力V1がコンデンサC351にホールドされる。その後、スイッチSW354をONにする。すると、電圧V1が電圧V0以上であれば、ダイオードD353は逆方向バイアスとなるから、コンデンサC352には、V0がホールドされたままである。一方、電圧V1が電圧V0よりも小さければ、ダイオードD353は順方向バイアスとなるから、ダイオードD353を介して、コンデンサC351とコンデンサC352の電荷は平準化される。かかる状態でスイッチSW321のON/OFFを何度も繰り返すことで、電圧V1が電圧V0よりも小さい場合には、最終的に、コンデンサC352には、電圧V1がホールドされる。なお、スイッチSW321をOFFにする際には逆起電力が生じるため、その都度事前に、スイッチSW354を一旦OFFにする必要がある。
【0049】
かかる動作をスイッチ回路312〜314についても行えば、最終的に、燃料電池FC1〜FC4の電圧の最小値である最小電圧VminがコンデンサC352にホールドされる。こうして検出された最小電圧Vminは出力回路70に出力される。出力回路70の構成は、第1実施例と同様である。
【0050】
かかる構成の電圧監視システム320は、最小値検出回路350を構成するダイオードD353と、出力回路70を構成するダイオードD72とが反対の方向に設けられているので、第1実施例と同様の効果を奏することができる。また、トランス330の入力段と出力段とは絶縁されるので、トランス330によって、高圧の燃料電池スタックFC側と絶縁した状態で、最小値検出回路350の検出結果を低圧側に出力でき、安全性を高めることができる。
【0051】
E.第5実施例:
本発明の第5実施例としての電圧監視システム420について図5を用いて説明する。電圧監視システム420は、燃料電池FC1〜FC4の出力電圧の最大値を検出する点が第1実施例と異なる。図5では、第1実施例と同様の構成については、図1と同様の符号を付している。以下、電圧監視システム420について、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、共通する点については、説明を省略する。電圧監視システム420は、図示するように、電圧伝達回路30と最大値検出回路450と出力回路470とを備えている。電圧伝達回路30の構成は、第1実施例と同様である。
【0052】
最大値検出回路450は、燃料電池FC1〜FC4の出力のうちの最大値を検出する回路であり、ダイオードD451〜D454と、コンデンサC456と、抵抗R458とを備えている。電圧伝達回路30の各オペアンプ31〜34の出力は全て、順方向のダイオードD451〜D454に接続されている。オペアンプ31〜34の出力には、一端がグランドに接続されたコンデンサC456が接続されている。抵抗R458は、いわばプルダウン抵抗器であり、コンデンサC456に溜まった電荷を放電し、オペアンプ31〜34側からの出力がなければ、コンデンサC456の端子TE2の電圧をゼロにする。
【0053】
かかる最大値検出回路450の最大値検出動作について説明する。最大値検出動作とは、燃料電池FC1〜FC4の各々の電圧のうちの最大値を検出する動作である。なお、説明を簡略化するため、以下の動作では、ダイオードD451〜D454の降下電圧を0ボルトであるとして説明する。
(1)所定のタイミングでオペアンプ31〜34を動作させ、各燃料電池FC1〜FC4の各出力電圧を差動増幅器であるオペアンプ31〜34で検出し、出力させると、ダイオードD451〜D454を介して電流が流れ込み、コンデンサC456の端子TE2の電圧は上昇する。この動作は、端子TE2の電圧が、接続されたオペアンプ31〜34の出力のうち、最も高い電圧Vmax1となるまで継続する。端子TE2の電圧が電圧Vmax1と一致したとき、他のオペアンプ31〜34(電圧Vmax1を出力したオペアンプ以外のオペアンプ)は、この端子TE2の電圧より低いから、ダイオードD451〜D454を介して電流が流れ込むことはない。
【0054】
(2)仮に、いずれかの燃料電池の電圧が更に上昇し、接続されたオペアンプ31〜34の出力のうち、最も高い電圧がVmax2(Vmax1<Vmax2)となると、コンデンサC456の端子TE2の電圧よりも高い電圧を出力したオペアンプ31〜34からダイオードD451〜D454を介して電流が流れ込み、コンデンサC456の端子TE2の電圧は上昇する。この動作は、端子TE2の電圧が電圧Vmax2となるまで継続する。
【0055】
(3)逆に、それまで最大の電圧であった燃料電池の電圧が低くなり、接続されたオペアンプ31〜34の出力のうち、最も高い電圧がVmax3(Vmax1>Vmax3)となると、コンデンサC456の端子TE2の電圧は、オペアンプ31〜34の出力よりも低いから、オペアンプ31〜34からコンデンサC456への電流の流れ込みがなくなる。その結果、コンデンサC456は、その電圧がVmax1からVmax3になるまで、抵抗R458を介して放電される。
【0056】
実際には、上述した(1)〜(3)のいずれの場合でも、ダイオードには順電圧Vfが存在するから、端子TE2の電圧は、オペアンプ31〜34の出力電圧の最大値より、この順電圧Vf分だけ低くなるが、各ダイオードの順電圧Vfは、既知のものなので、端子TE2の電圧を検出することにより、各燃料電池FC1〜FC4の最大電圧を検出することは容易である。このようにして、コンデンサC456には、オペアンプ31〜34の最大出力、すなわち、燃料電池FC1〜FC4の最大電圧に対応する電圧がホールドされる。ここで、ダイオードD451〜D454には、第1実施例と同様の理由により、順電圧Vfの温度依存特性が略等しいものを用いている。
【0057】
このようにして最大値検出回路450のコンデンサC456でホールドされた最大値は、出力回路470に出力される。出力回路470は、図5に示すように、バッファ回路71とダイオードD472とを備えている。第1実施例の出力回路70との違いは、ダイオードD472の方向が、第1実施例のダイオードD72とは、反対の方向に設けられていることである。つまり、ダイオードD472は、最大値検出回路450を構成するダイオードD451〜D454と比べると、電圧伝達回路30側から見た場合の電流の流れ方向が逆になるように、反対の方向に設けられている。本実施例においては、このダイオードD472には、順電圧Vfの温度依存特性がダイオードD451〜D454と略等しいものを用いている。
【0058】
かかる構成の電圧監視システム420は、最大値検出回路450を構成するダイオードD451〜D454と、出力回路470を構成するダイオードD472とが、反対方向に設けられているので、第1実施例と同様の効果を奏する。また、第5実施例においても、第2実施例の構成を適用することは可能である。
【0059】
このように、本発明の電圧監視システム20は、燃料電池FC1〜FC4の最小値を検出するものに限らず、最大値を検出するものにも適用することができる。最大値を検出する構成としては、上述の例に限らず、例えば、第5実施例の電圧伝達回路30に代えて、第3実施例として示した電圧伝達回路230の構成を適用してもよい。あるいは、また、第4実施例として示した電圧監視システム320において、ダイオードD353及びダイオードD72の向きを、それぞれ反対に設けてもよい。また、電圧監視システム20は、最大値と最小値の両方を検出する構成としてもよい。この場合、例えは、第1実施例に示した電圧監視システム20のオペアンプ31〜34と、ダイオードD51〜D54との間に、第5実施例で示した最大値検出回路450の入力をそれぞれ接続し、この最大値検出回路450の出力段に出力回路470を接続して、最大値と最小値とを同時に、MCUに出力する構成としてもよい。
【0060】
F.変形例:
上述の実施例の変形例について説明する。
F−1.変形例1:
上述の実施形態においては、最小値検出回路または最大値検出回路が備えるダイオード(例えば、第1実施例では、ダイオードD51〜D54)と、出力回路が備えるダイオード(例えば、第1実施例では、ダイオードD72)とは、順電圧Vfの温度依存特性が略等しい構成としたが、必ずしも、温度依存特性が略等しい構成とする必要はない。例えば、第1実施例において、燃料電池FC1〜FC4の最小電圧をVmin、ダイオードD51〜D54及びダイオードD72の環境温度Tにおける順電圧VfをVf0、ダイオードD51〜D54の順電圧VfをVf0+α、ダイオードD72の順電圧VfをVf0+βとすれば(α,βは、環境温度の変化に依存する順電圧Vfの変化量)、ダイオードD72の出力Voutは、次式(1)によって、Vmin+(α−β)となるので、変化量α,βが、−α<α−β<α、すなわち、2α<β<0または0<β<2αを満たす関係にあれば、ダイオードD72を有しない構成と比較して、ダイオードD51〜D54の温度依存性を緩和する効果を奏するからである。なお、通常、ダイオードの温度に依存する順電圧Vfの変化量は、2倍以上の差を生じることは考えにくいので、温度依存特性に配慮せずにダイオードD51〜D54及びダイオードD72を選定したとしても、α,βは、次式(1)の関係を満たす。また、次式(1)では、ダイオードD51〜D54及びダイオードD72の環境温度Tにおける順電圧Vfは、互いに等しいVf0としているが、これらの値に相違があっても、その差は既知であるから、燃料電池FC1〜FC4の最小電圧を検出することは容易である。
Vout=Vmin+(Vf0+α)−(Vf0+β)
=Vmin+(α−β)・・・(1)
【0061】
F−2.変形例2:
上述の実施形態においては、バッファ回路71は、入力電圧そのものを出力する構成、つまり、ゲインが1である構成としたが、必ずしも、かかる構成に限るものではない。例えば、ダイオードD51〜D54とダイオードD72との順電圧Vfの温度依存特性が略等しく、変形例1で上述した変動量α,βが、1.5α=βの関係を満たすときには、バッファ回路71のゲインが1.5であれば、第1実施例と同様に、温度依存性に起因する順電圧Vfの変動を、ダイオードD51〜D54とダイオードD72との間でほとんど相互に打ち消し合うことができる。勿論、このように、変動量α,βの関係とバッファ回路71のゲインとの整合を図らなくても、ダイオードの温度依存性に起因する電圧検出精度の悪化を一定程度抑制することができる。したがって、バッファ回路71は、ボルテージフォロアに限るものではなく、最小値検出回路や最大値出力回路の出力が、その出力段側の影響を受けない程度に入力インピーダンスが高いものであればよく、例えば、コレクタ接地回路などであってもよい。
【0062】
また、上述の第3実施例においては、トランス173は、入力側巻線の巻数と、出力側巻線の巻数とが等しい構成としたが、このような構成に限るものではない。上述したバッファ回路71と同様に、変動量α,βの関係と、巻数比との整合を図れば、温度依存性に起因する順電圧Vfの変動のほとんど全部を、ダイオードD51〜D54とダイオードD72との間で相互に打ち消し合うことが可能であるし、このような整合を図らなくても、ダイオードの温度依存性に起因する電圧検出精度の悪化を一定程度抑制することができるからである。
【0063】
F−3.変形例3:
上述の実施形態においては、燃料電池スタックFCを構成する全ての燃料電池FC1〜FC4を1つの電圧監視システム(ここでは、1組の電圧伝達回路、最小値(または最大値)検出回路及び出力回路の意味)で出力する構成としたが、燃料電池スタックFCを構成する燃料電池が多数である場合には、多数の燃料電池を所定数のグループに区分し、当該グループごとに電圧監視システムを設けて、MCUなどにグループごとの最小値や最大値を出力してもよい。かかる場合、第2実施例で説明したように、トランス173の出力側の巻線をMCUなどのグランドに接続すれば、複数のグループの出力を1つのMCUで受け付けることができる。あるいは、グループごとに設けられた複数の電圧監視システムからの出力を集合して、さらに最小値や最大値を出力する電圧監視システムを設けるなどして、電圧監視システムを多段に設けて、燃料電池スタックFC全体での最小値や最大値をMCUなどに出力してもよい。
【0064】
このように、燃料電池スタックFCを構成する燃料電池の数が多数である場合には、電圧監視システムの回路基盤が大きくなり、回路基盤上の箇所によって環境温度分布が偏ることもあり得る。そのような場合に、温度センサを用いて温度補償を行う構成とすれば、温度センサを複数箇所に設ける必要があり、コストの増加を招くこととなる。一方、本発明の電圧監視システムによれば、上述のグループ単位で、最小値検出回路を構成するダイオードと、出力回路を構成するダイオードとを近接した位置に設ければ、環境温度分布の偏りに対応でき、コストを低減することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、実施例に示した固体高分子形燃料電池に限らず、ダイレクトメタノール形燃料電池、リン酸形燃料電池など種々の燃料電池に適用することができる。あるいは、本発明の電圧監視システムにおける回路の構成は、上述した実施形態に限られるものではなく、同等の機能を有する等価回路などに置換しても実現可能である。また、本発明は、電圧監視システムにおいて、構成部品の温度依存性を起因する電圧検出精度の悪化を抑制する方法としても実現することができる。
【符号の説明】
【0066】
20,120,320,420…電圧監視システム
30,230…電圧伝達回路
31〜34…オペアンプ
36…電源
50,350…最小値検出回路
57…電源
70,170,470…出力回路
71…バッファ回路
173…トランス
241〜244…電流センサ
311〜314…スイッチ回路
330…トランス
341〜344,346…巻線
450…最大値検出回路
D51〜D54,D72,D353,D451〜D454,D472…ダイオード
SW174,SW321〜SW324,SW354…スイッチ
R58,R231〜R234,R458…抵抗
C56,C301〜C304,C351,C352,C456…コンデンサ
FC…燃料電池スタック
FC1〜FC4…燃料電池
TE1,TE2…端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池を積層した燃料電池スタックの電圧監視システムであって、
前記複数の燃料電池のそれぞれに対して設けられ、該燃料電池の各々の電圧を、該燃料電池から個別に取り出して出力する電圧伝達手段と、
前記電圧伝達手段が出力する前記複数の燃料電池の電圧を集合して、該出力された電圧のうちの最小値と最大値の少なくとも一方を、第1のダイオードを介して検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果を、前記第1のダイオードと反対の方向に設けられた第2のダイオードを介して出力する出力手段と
を備えた電圧監視システム。
【請求項2】
前記第1のダイオードと前記第2のダイオードとは、順電圧の温度依存特性が略等しい請求項1記載の電圧監視システム。
【請求項3】
前記出力手段は、前記検出手段と前記第2のダイオードとの間に介装され、該検出手段の出力段側から該検出手段への影響を抑制するバッファ回路を備えた請求項1または請求項2記載の電圧監視システム。
【請求項4】
請求項3記載の電圧監視システムであって、
前記出力手段は、
前記バッファ回路と前記第2のダイオードとの間に介装され、該バッファ回路を介して、前記検出結果を入力するトランスと、
前記トランスの入力側の巻線に接続され、前記検出結果を交流電圧として該トランスに出力させるスイッチ回路と
を備えた電圧監視システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の電圧監視システムであって、
前記電圧伝達手段は、前記複数の燃料電池のアノード側とカソード側とに接続された差動アンプであり、
前記検出手段は、前記差動アンプの出力ごとに同一方向に設けられた前記第1のダイオードと、該第1のダイオードとグランドとの間に介装されるコンデンサとを備えた
電圧監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−170992(P2011−170992A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31127(P2010−31127)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】