説明

電圧調整システム

【課題】3つ以上の複数の電池セルを直列接続した場合でも、部品点数の増加及び装置の大型化を抑制しつつ、全ての電池セルを対象として電圧調整を実行する。
【解決手段】電圧調整システム1は、調整セルCxとスイッチSW1〜SW5と制御ユニット10とを有する。制御ユニット10の検出部21は、直列接続されたセルCa〜Cdの電圧値を検出する。判定部22は、電圧値が最大である電池セルと最小である電池セルとを処理対象セルとして抽出する。制御部23は、第1の調整処理と第2の調整処理とを、スイッチSW1〜SW5を制御することによって連続して実行する。第1の調整処理では、処理対象セルの一方と調整セルCxとが並列接続され、第2の調整処理では、処理対象セルの他方と調整セルCxとが並列接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された3つ以上の複数の電池セル間における電圧値の差を調整する電圧調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3829441号公報には、2つの2次電池セルが直列接続された電池パックにおいて、これら2つの2次電池セルの電圧値を平均化するための制御装置が記載されている。この制御装置は、2つのスイッチ素子と蓄電部とバランス検出部とを有する。2つのスイッチ素子は、各2次電池セルにそれぞれ並列に接続され、蓄電部は、これら2つのスイッチ素子間に設けられる。バランス検出部は、各スイッチ素子のスイッチ動作を制御することによって、電圧値の高い方の2次電池と蓄電部とを並列に接続し、続いて電圧値の低い方の2次電池と蓄電部とを並列に接続するバランス検出部とを有する。また、同公報には、蓄電部として2次電池を使用してもよいこと、及び3つ以上の2次電池セルが直列接続された電池パックにおいてもこの制御装置を用いることが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3829441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許第3829441号公報に記載された制御装置では、2つの2次電池セルにそれぞれスイッチ素子を並列接続し、これら2つのスイッチ素子間に蓄電部を設けている。このため、3つの2次電池セル(第1〜第3の2次電池セル)間の調整を行う場合には、第1の2次電池セルに並列接続される第1のスイッチ素子と、第2の2次電池セルに並列接続される第2のスイッチ素子と、第3の2次電池セルに並列接続される第3のスイッチ素子と、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子との間に設けられた第1の蓄電部と、第2のスイッチ素子と第3のスイッチ素子との間に設けられた第2の蓄電部と、第3のスイッチ素子と第1のスイッチ素子との間に設けられた第3の蓄電部とが必要となる。従って、直列接続される2次電池セルの数の増大に伴って必要な蓄電部の数も増加し、部品点数の増加及び装置の大型化を招く。
【0005】
そこで、本発明は、3つ以上の電池セルを直列接続した場合であっても、部品点数の増加及び装置の大型化を抑制しつつ、全ての電池セルを対象として電圧調整が可能な電圧調整システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様は、直列接続された3つ以上の複数の電池セル間における電圧値の差を調整する電圧調整システムであって、調整セルと複数の調整回路と複数のスイッチと検出手段と判定手段と制御手段とを備える。
【0007】
複数の調整回路は、調整セルと複数の電池セルのそれぞれとを、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続する。複数のスイッチは、複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、調整位置と非調整位置とに選択的に設定される。調整位置のスイッチは、対応する調整回路を機能させ、非調整位置のスイッチは、対応する調整回路を機能させない。
【0008】
検出手段は、複数の電池セルの各電圧値を検出する。判定手段は、複数の電池セルの中から、検出手段が検出した電圧値が最大である電池セルと最小である電池セルとを処理対象セルとして抽出し、これら2つの処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えているか否かを判定する。上記2つの処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えていると判定手段が判定したとき、制御手段は、複数のスイッチのうち上記2つの処理対象セルの一方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第1の調整処理と、上記2つの処理対象セルの他方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第2の調整処理とを連続して実行する。
【0009】
なお、調整セルとして電池セルと同じ構成(同一規格)のセルを使用することが好ましい。
【0010】
上記構成では、判定手段は、複数の電池セルのうち電圧値が最大である電池セル(最大電圧セル)と最小である電池セル(最小電圧セル)とを処理対象セルとして抽出し、これら2つの処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えているか否かを判定する。2つの処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えると、制御手段は、一方の処理対象セルに対して第1の調整処理を実行し、続いて他方の処理対象セルに対して第2の調整処理を実行する。第1の調整処理では、一方の処理対象セルに対応するスイッチのみが調整位置に設定され、他のスイッチは非調整位置に設定される。また、第2の調整処理では、他方の処理対象セルに対応するスイッチのみが調整位置に設定され、他のスイッチは非調整位置に設定される。例えば、一方の処理対象セルが最大電圧セルであり、他方の処理対象セルが最小電圧セルの場合、第1の調整処理によって最大電圧セルと調整セルとを並列接続する調整回路が機能し、最大電圧セルから調整セルへの放電が行われ、最大電圧セルの電圧値が低下し、調整セルの電圧値が上昇する。続いて、第2の調整処理によって最小電圧セルと調整セルとを並列接続する調整回路が機能し、最小電圧セルに対して調整セルからの充電が行われ、最小電圧セルの電圧値が上昇し、調整セルの電圧値が低下する。その結果、最大電圧セルと最小電圧セルとの間の電圧値の差が減少し、両セル間での電圧調整が効率よく行われる。
【0011】
また、3つ以上の複数の電池セルのそれぞれと調整セルとをそれぞれ並列状態で接続する複数の調整回路を設け、これら複数の調整回路をそれぞれスイッチによって断接するので、1つの調整セルを全ての電池セルの調整のために共通して使用することができる。従って、3つ以上の電池セルを直列接続した場合であっても、部品点数の増加及び装置の大型化を抑制しつつ、全ての電池セルを対象として電圧調整を行うことができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様に記載の電圧調整システムであって、第2の調整セルと第2の複数の調整回路と第2の複数のスイッチとを備える。また、直列接続される電池セルは、4つ以上である。
【0013】
複数の第2の調整回路は、第2の調整セルと複数の電池セルのそれぞれとを、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続する。複数の第2のスイッチは、複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、調整位置と非調整位置とに選択的に設定される。調整位置の第2のスイッチは、対応する第2の調整回路を機能させ、非調整位置の第2のスイッチは、対応する第2の調整回路を機能させない。
【0014】
判定手段は、制御手段が上記第1又は第2の調整処理を実行しているときに、複数の電池セルから上記2つの処理対象セルを除いた複数の電池セルの中から、検出手段が検出した電圧値が最大である電池セルと最小である電池セルとを第2の処理対象セルとして抽出し、これら2つの第2の処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えているか否かを判定する。
【0015】
上記2つの第2の処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えていると判定手段が判定したとき、制御手段は、複数の第2のスイッチのうち上記2つの第2の処理対象セルの一方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第3の調整処理と、上記2つの第2の処理対象セルの他方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第4の調整処理とを連続して実行する。
【0016】
なお、上記調整セルと同様に、第2の調整セルとして電池セルと同じ構成(同一規格)のセルを使用することが好ましい。
【0017】
上記構成では、判定手段は、制御手段が上記第1又は第2の調整処理を実行しているときに、複数の電池セルから上記2つの処理対象セルを除いた複数の電池セルのうち電圧値が最大である電池セル(第2の最大電圧セル)と最小である電池セル(第2の最小電圧セル)とを第2の処理対象セルとして抽出し、これら2つの第2の処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えているか否かを判定する。2つの第2の処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えると、制御手段は、一方の第2の処理対象セルに対して第3の調整処理を実行し、続いて他方の第2の処理対象セルに対して第4の調整処理を実行する。第3の調整処理では、一方の第2の処理対象セルに対応する第2のスイッチのみが調整位置に設定され、他の第2のスイッチは非調整位置に設定される。また、第4の調整処理では、他方の第2の処理対象セルに対応する第2のスイッチのみが調整位置に設定され、他の第2のスイッチは非調整位置に設定される。例えば、一方の第2の処理対象セルが第2の最大電圧セルであり、他方の第2の処理対象セルが第2の最小電圧セルの場合、第3の調整処理によって第2の最大電圧セルと第2の調整セルとを並列接続する第2の調整回路が機能し、第2の最大電圧セルから第2の調整セルへの放電が行われ、第2の最大電圧セルと第2の調整セルとの電圧値は平均化される。続いて、第4の調整処理によって第2の最小電圧セルと第2の調整セルとを並列接続する第2の調整回路が機能し、第2の最小電圧セルに対して第2の調整セルからの充電が行われ、第2の最小電圧セルと第2の調整セルとの電圧値は平均化される。その結果、第2の処理対象セル間の電圧値の差が減少する。
【0018】
このように、調整セル及び第2の調整セルは、調整回路及び第2の調整回路によってそれぞれ独立して機能する。従って、第1又は第2の調整処理と第3又は第4の調整処理とを並行して実行することができ、複数の電池セル全体を調整するための時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、上記第1又は第2の態様に記載の電圧調整システムであって、制御手段は、調整処理の対象となる2つのセルの電圧値が平均化されたか否かを判断し、これら2つのセルの電圧値が平均化されたと判断したときに調整処理を終了して調整位置に設定したスイッチを非調整位置に戻す。
【0020】
上記構成では、制御手段は、各調整処理において、調整処理の対象となる2つのセル(第1の調整処理では2つの処理対象セルの一方と調整セル、第2の調整処理では2つの処理対象セルの他方と調整セル、第3の調整処理では2つの第2の調整セルの一方と第2の調整セル、第4の調整処理では2つの第2の処理対象セルの他方と第2の調整セル)の電圧値が平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、対応するスイッチを調整位置から非調整位置に戻す。従って、各調整処理において2つのセルの電圧値を確実に平均化することができ、また各調整処理に要する時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、3つ以上の複数の電池セルを直列接続した場合であっても、部品点数の増加及び装置の大型化を抑制しつつ、全ての電池セルを対象として電圧調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の電圧調整システムの構成図である。
【図2】第1実施形態の電圧調整処理を示すフローチャートである。
【図3】セルCaとセルCbとに対する調整処理を連続して実行した場合のセルCa,Cb及び調整セルCxの電圧値Va,Vb,Vxの変遷を示す図である。
【図4】第2実施形態の電圧調整システムの構成図であり、セルCaに対する調整処理とセルCdに対する調整処理とを並行して実行している状態を示す。
【図5】第2実施形態の電圧調整処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の変形例の電圧調整システムの構成図であり、セルCbに対する調整処理とセルCdに対する調整処理とを並行して実行している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態の電圧調整システムについて図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、電圧調整システム1は、複数の電池セル(二次電池セル)Ca〜Cd間の電圧値の差を調整するものであり、電池セルCa〜Cdとともに車両に搭載される。電池セルCa〜Cdは、直列接続され、二次電池として車両の駆動用のモータや車載電装品などの負荷回路2に電力を供給する。なお、電池セルCa〜Cdは、発電機などの充電回路3に接続されてもよく、また、モータは、発電機能を併有するモータジェネレータであってもよい。
【0025】
図1に示すように、本実施形態では4つの電池セルCa〜Cdが車両に搭載され、電圧調整システムは、1つの調整セルCxと、5つのスイッチSW1〜SW5と、制御ユニット10とを有する。4つの電池セルCa〜Cdと調整セルCxとは、同種のセル(構成及び設定容量が同じに設定された同一規格のセル)が使用される。なお、以下において、電池セルを単にセルと略称して説明する。
【0026】
各スイッチSW1〜SW5は、基本接点と第1接点と第2接点とを有し、基本接点を第1接点に接続する第1接続位置と、基本接点を第2接点に接続する第2接続位置と、基本接点を第1接点及び第2接点の何れにも接続しない中立位置とのうち何れかの位置に設定可能な3路スイッチである。セルCa〜Cdに対する放充電が行われ、後述する電圧調整処理が実行されていない通常状態のスイッチSW1〜SW5は、制御ユニット10によって全て中立位置(非調整位置)に設定され維持される。なお、図1では、全てのスイッチSW1〜SW5が中立位置に設定された状態を示している。
【0027】
スイッチSW1の基本接点1aは、セルCaの陽極側に接続され、スイッチSW2の基本接点2aは、セルCaの陰極側とセルCbの陽極側との間に接続され、スイッチSW3の基本接点3aは、セルCbの陰極側とセルCcの陽極側との間に接続され、スイッチSW4の基本接点4aは、セルCcの陰極側とセルCdの陽極側との間に接続され、スイッチSW5の基本接点5aは、セルCdの陰極側に接続される。スイッチSW1〜SW5の第1接点1b〜5bは、それぞれ調整セルCxの陽極側に接続される。また、スイッチSW1〜SW5の第2接点1c〜5cは、それぞれ調整セルCxの陰極側に接続される。
【0028】
スイッチSW1が第1接続位置に設定され(基本接点1aと第1接点1bとが接続され)、スイッチSW2が第2接続位置に設定される(基本接点2aと第2接点2cとが接続される)と、セルCaと調整セルCxとは、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続される。セルCaと調整セルCxとの間に電圧値の差がある場合、2つのセルを並列状態に接続すると、電圧値が大きいセルは放電し小さいセルは充電されて、2つのセルの電圧値が両者の平均値に近付くように調整される。すなわち、スイッチSW1が第1接続位置に設定され、且つスイッチSW2が第2接続位置に設定されることによって形成される回路は、セルCaに対応する調整回路として機能し、スイッチSW1とスイッチSW2とは、セルCaに対応する調整用のスイッチとして機能する。また、この場合、スイッチSW1の第1接続位置とスイッチSW2の第2接続位置とが、セルCaに対応した調整回路を機能させるために非調整位置から変更される調整位置である。
【0029】
同様に、スイッチSW2が第1接続位置に設定され、且つスイッチSW3が第2接続位置に設定されることによって形成される回路は、セルCbに対応する調整回路として機能し、スイッチSW2とスイッチSW3とは、セルCbに対応する調整用のスイッチとして機能する。また、この場合、スイッチSW2の第1接続位置とスイッチSW3の第2接続位置とが、セルCbに対応した調整回路を機能させる調整位置であり、スイッチSW2及びスイッチSW3の各中立位置が、セルCbに対応した調整回路を機能させない非調整位置である。なお、セルCc及びセルCdにそれぞれ対応する調整回路及び調整用のスイッチは、セルCa及びセルCbの場合と同様であり、スイッチSW3とスイッチSW4とがセルCcに対応する調整用のスイッチとして機能し、スイッチSW4とスイッチSW5とがセルCdに対応する調整用のスイッチとして機能する。
【0030】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)20と記憶部30とを有する。記憶部30は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記録媒体によって構成される。
【0031】
記憶部30には、電圧調整処理実行プログラムが記憶されている。CPU20は、電圧調整処理実行プログラムに従って電圧調整処理を実行することにより、検出部21、判定部22及び制御部23として機能する。また、記憶部30には、各セルCa〜Cdの電圧値が逐次更新して記憶される電圧値記憶テーブルと、処理対象セルに対する調整用のスイッチ及び調整位置が設定された調整スイッチ設定テーブルとが記憶されている。
【0032】
検出部21は、各セルCa〜Cdの電圧値Va〜Vdを検出し、検出した電圧値Va〜Vdを記憶部30の電圧値記憶テーブルに逐次更新して記憶する。
【0033】
判定部22は、制御部23が後述する第1又は第2の調整処理を実行しているか否かを判定する。第1及び第2の調整処理を実行していないと判定した場合、判定部22は、全てのセルCa〜Cdの中から電圧値Va〜Vdが最大であるセル(最大電圧セル)と最小であるセル(最小電圧セル)とを処理対象セルとして抽出し、2つの処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する。具体的には、記憶部30から各電圧値Va〜Vdを読み出し、全ての電圧値Va〜Vdの中から最大電圧値と最小電圧値とを特定する。そして、判定部22は、最大電圧値と最小電圧値との差(処理対象セル間の電圧値の差ΔV)を算出し、算出した電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する。
【0034】
制御部23は、処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えていると判定部22が判定したとき、最大電圧セルを調整対象とする第1の調整処理と最小電圧セルを調整対象とする第2の調整処理とを連続して実行する。第1の調整処理において、制御部23は、調整スイッチ設定テーブルを参照して最大電圧セルに対応する調整用のスイッチを決定し、そのスイッチを調整位置に設定して最大電圧セルと調整セルとを並列接続する調整回路を機能させ、最大電圧セルの電圧値と調整セルCxの電圧値とが平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、最大電圧セルに対応する調整用のスイッチを調整位置から非調整位置に戻す。また、第2の調整処理において、制御部23は、調整スイッチ設定テーブルを参照して最小電圧セルに対応する調整用のスイッチを決定し、そのスイッチを調整位置に設定して最小電圧セルと調整セルとを並列接続する調整回路を機能させ、最小電圧セルの電圧値と調整セルCxの電圧値とが平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、最小電圧セルに対応する調整用のスイッチを調整位置から非調整位置に戻す。なお、第1の調整処理の調整対象を最小電圧セルとし、第2の調整処理の調整対象を最大電圧セルとしてもよい。
【0035】
処理対象セルの電圧値と調整セルCxの電圧値とが平均化されたか否かを判断する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、処理対象セルの電圧値と調整セルCxの電圧値とを逐次検出し、2つの電圧値の差が所定の基準電圧値以下のときに平均化されたと判定する方法や、接続された調整回路の電流値を計測し、計測した電流値が所定の基準電流値以下のときに平均化されたと判定する方法や、電圧値の平均化に要する時間を基準時間として求めて設定し、調整処理の経過時間を計時し、計時した経過時間が基準時間に達したときに平均化されたと判定する方法など、様々な方法が適用可能である。
【0036】
以下、図2のフローチャートを用いて、CPU20が実行する電圧調整処理について説明する。
【0037】
本処理は、車両の停止時などセルCa〜Cdに対する放充電が行われていないことを条件に開始され、所定時間毎に実行される。なお、以下では、全てのセルCa〜Cdの中で、セルCaの電圧値が最大であり、セルCbの電圧値が最小である場合を想定して説明する。
【0038】
本処理が開始されると、検出部21は、セルCa〜Cdの各電圧値V1〜V4を検出し、検出した各セルの電圧値Va〜Vdを記憶部30に記憶する(ステップS1)。
【0039】
次に、判定部22は、制御部23が第1又は第2の調整処理を実行しているか否かを判定する(ステップS2)。
【0040】
制御部23が第1及び第2の調整処理を実行していないと判定された場合(ステップ2:NO)、判定部22は、記憶部30から各電圧値Va〜Vdを読み出し、全ての電圧値Va〜Vdの中から最大電圧値Vaと最小電圧値Vbとを特定し(処理対象セルCa,Cbを抽出し)、最大電圧値Vaと最小電圧値Vbとの差(処理対象セルCa,Cb間の電圧値の差ΔV=Va−Vb)を算出する(ステップS3)。
【0041】
次に、判定部22は、処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する(ステップS4)。
【0042】
処理対象セルCa,Cb間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えている(ΔV>Vs)と判定された場合(ステップS4:YES)、制御部23は、最大電圧セルCaを調整対象とした第1の調整処理を実行する(ステップS5)。第1の調整処理において、制御部23は、最大電圧セルCaに対応するスイッチSW1,SW2をそれぞれ調整位置に設定する。セルCaに対応するスイッチSW1の調整位置は第1接続位置であり、基本接点1aと第1接点1bとが接続される。また、セルCaに対応するスイッチSW2の調整位置は第2接続位置であり、基本接点2aと第2接点2cとが接続される。これにより、最大電圧セルCaと調整セルCxとは、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続される。最大電圧セルCaと調整セルCxとを並列状態で接続した制御部23は、セルCaの電圧値と調整セルCxの電圧値とが平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、セルCaに対応するスイッチSW1,SW2を調整位置から非調整位置(中立位置)に戻す。
【0043】
続いて、制御部23は、最小電圧セルCbを調整対象とした第2の調整処理を実行する(ステップS6)。第2の調整処理において、制御部23は、最小電圧セルCbに対応するスイッチSW2,SW3をそれぞれ調整位置に設定する。セルCbに対応するスイッチSW2の調整位置は第1接続位置であり、基本接点2aと第1接点2bとが接続される。また、セルCbに対応するスイッチSW3の調整位置は第2接続位置であり、基本接点3aと第2接点3cとが接続される。これにより、最小電圧セルCbと調整セルCxとは、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続される。最小電圧セルCbと調整セルCxとを並列状態で接続した制御部23は、セルCbの電圧値と調整セルCxの電圧値とが平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、セルCbに対応するスイッチSW2,SW3を調整位置から非調整位置(中立位置)に戻して、本処理を終了する。
【0044】
また、制御部23が第1又は第2の調整処理を実行していると判定された場合(ステップS2:YES)、及び処理対象セルCa,Cb間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vs以下である(ΔV≦Vs)と判定された場合(ステップS4:NO)、CPU20は本処理を終了する。
【0045】
次に、第1の調整処理及び第2の調整処理における各セルの電圧値の状態について、図3を参照して説明する。図3は、処理対象セルCaを調整対象とした第1の調整処理と処理対象セルCbを調整対象とした第2の調整処理とを連続して実行した場合のセルCa,Cb及び調整セルCxの電圧値Va,Vb,Vxの変遷を示す図である。なお、第1の調整処理実行前は、Va>Vx>Vbであり、且つVa−Vb>Vs(所定電圧値)である。また、各調整処理は、2つのセルの電圧値が完全に平均化されて等しくなるまで継続して実行される。
【0046】
セルCaを調整対象とした第1の調整処理を実行すると、セルCaは調整セルCxへ放電し、調整セルCxは充電される。すなわち、セルCaの電圧値は低下し調整セルCxの電圧値は上昇して、これら2つのセルCa,Cxの電圧値は、平均化されてともに(Va+Vx)/2となる。続いて、セルCbを調整対象とした第2の調整処理を実行すると、調整セルCxはセルCbへ放電し、セルCbは充電され、2つのセルCb,Cxの電圧値は、平均化されてともに(Va+2Vb+Vx)/4となる。
【0047】
第1の調整処理前及び第2の調整処理後のセルCaとセルCbとの電圧値の差ΔV1,ΔV2は、次式(1)及び(2)となり、ΔV1−ΔV2は、次式(3)によって表される。
【0048】
ΔV1=Va−Vb・・・(1)
ΔV2=(Va−2Vb+Vx)/4・・・(2)
ΔV1−ΔV2=(3Va−2Vb−Vx)/4・・・(3)
【0049】
Va>Vx>Vbであることから、上式(3)において、3Va−2Vb−Vx>0であり、ΔV1−ΔV2>0となる。従って、第1及び第2の調整処理の結果、セルCa,Cb間の電圧値の差が減少する。
【0050】
このように、本実施形態の電圧調整システムによれば、最大電圧セルと最小電圧セルとに対して調整処理を実行するので、効率よく電圧調整ができる。
【0051】
また、1つの調整セルを全ての電池セルの調整のために共通して使用することができるため、3つ以上の複数の電池セルを直列接続した場合であっても、部品点数の増加及び装置の大型化を抑制することができる。
【0052】
なお、直列接続される電池セルは、4つに限定されるものではなく、3つであっても5つ以上であってもよい。
【0053】
また、各セルCa〜Cdと調整セルCxとを並列接続する回路やスイッチの形態及び配置は、上記に限定されるものではない。例えば、スイッチの形態を、上記3路スイッチに代えて、接点が2つである2路スイッチ(オン/オフの切り替え機能のみを有するスイッチ)に代えてもよい。この場合、各セルの陽極側と調整セルの陽極側とをそれぞれ陽極側接続線によって接続し、各セルの陰極側と調整セルの陰極側とをそれぞれ陰極側接続線によって接続し、これら8つの接続線にそれぞれ2路スイッチを設ける。すなわち、1つのセルに対して2つの2路スイッチ(陽極側接続線を断接する2路スイッチと陰極側接続線を断接する2路スイッチ)が、各セル毎に個別に設定される。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態の電圧調整システムについて図面を参照して説明する。
【0055】
本実施形態は、それぞれが独立して調整処理を実行可能な2つの調整セルを設けたものである。なお、上記第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、第1の調整セルを用いた調整回路を第1の調整回路と称し、第2の調整セルを用いた調整回路を第2の調整回路と称し、第1の調整回路を機能させるスイッチを第1の調整用のスイッチと称し、第2の調整回路を機能させるスイッチを第2の調整用のスイッチと称する。
【0056】
図4に示すように、本実施形態の電圧調整システムは、セルCa〜Cdと、第1の調整セルCxと、第2の調整セルCyと、電池側スイッチ群50と、調整側スイッチ群51とを有する。電池側スイッチ群50は、5つのスイッチSW31〜SW35を有し、調整側スイッチ群51は、5つのスイッチSW11〜SW15を有する。第1及び第2の調整セルCx,Cyは、第1実施形態と同様に4つの電池セルCa〜Cdと同種のセルが使用される。
【0057】
セルCa〜Cdと調整側スイッチ群51とは、5本の接続線52(第1接続線52a〜第5接続線52e)を介して接続される。第1接続線52aは、セルCaの陽極側に接続される。第2接続線52bは、スイッチSW31を介してセルCaの陰極側に接続されるとともに、スイッチSW32を介してセルCbの陽極側に接続される。第3接続線52cは、セルCbの陰極側に接続されるとともに、スイッチSW33を介してセルCcの陽極側に接続される。第4接続線52dは、セルCcの陰極側に接続されるとともにスイッチSW34を介してセルCdの陽極側に接続され、さらにスイッチSW35を介してセルCaの陽極側に接続される。第5接続線52eは、セルCdの陰極側に接続される。
【0058】
調整側スイッチ群51の各スイッチ(スイッチSW11〜SW15)は、基本接点と第1接点と第2接点と第3接点とを有し、基本接点を第1接点に接続する第1接続位置と、基本接点を第2接点に接続する第2接続位置と、基本接点を第3接点に接続する第3接続位置と、基本接点を第1〜第3接点の何れにも接続しない中立位置との何れかの位置に設定可能な4路スイッチである。
【0059】
スイッチSW11〜SW15の基本接点11a〜15aは、接続線52a〜52eにそれぞれ接続され、第1接点11b〜15bは、それぞれ第1の調整セルCxの陽極側に接続され、第2接点11c〜15cは、それぞれ第2の調整セルCyの陽極側に接続され、第3接点11d〜15dは、第1の調整セルCxの陰極側と第2の調整セルCyの陰極側とにそれぞれ接続される。後述する電圧調整処理が実行されていない通常状態において、スイッチSW11〜SW15は、制御ユニット10によって、中立位置(非調整位置)に設定され維持される。
【0060】
セル側スイッチ群50のスイッチSW31,SW35は、2つの接点同士を接続する接続位置(第1接続位置)と、2つの接点間を遮断する中立位置との何れかの位置に設定可能な2路スイッチである。スイッチSW32〜SW34は、基本接点と第1接点と第2接点とを有し、基本接点を第1接点に接続する第1接続位置と、基本接点を第2接点に接続する第2接続位置と、基本接点を第1接点及び第2接点の何れにも接続しない中立位置との何れかの位置に設定可能な3路スイッチである。
【0061】
スイッチSW31の一方の接点31aは、第2接続線52bに接続され、他方の接点31bは、セルCaの陰極側に接続される。スイッチSW32の基本接点32aは、セルCbの陽極側に接続され、第1接点32bは、第2接続線52bに接続され、第2接点32cは、第1接続線52aに接続される。スイッチSW33の基本接点33aは、セルCcの陽極側に接続され、第1接点33bは、第3接続線52cに接続され、第2接点33cは、第1接続線52aに接続される。スイッチSW34の基本接点34aは、セルCdの陽極側に接続され、第1接点34bは、第4接続線52dに接続され、第2接点34cは、第1接続線52aに接続される。スイッチSW35は、第4接続線52dの途中に設けられ、セルCaの陽極側とスイッチSW14の基本接点14aとを断接する。
【0062】
スイッチSW31〜SW34が全て第1接続位置に設定される(接点31a〜34aと接点31b〜34bとがそれぞれ接続される)と、セルCa〜Cd間は直列接続される。反対に、スイッチSW31〜SW34の何れか一つが第1接続位置以外の位置に設定されると、セルCa〜Cd間の直列接続は遮断される。従って、モータや発電機等との間でセルCa〜Cdに対する放充電が行われており、且つ後述する電圧調整処理が実行されない通常状態のスイッチSW31〜SW34は、制御ユニット10によって、第1接続位置に設定され維持される。また、電圧調整処理の実行中において、スイッチSW31〜SW35のうち調整対象のセルに対応しないスイッチは、制御ユニット10によって、中立位置(非調整位置)に設定され維持される。
【0063】
各セルCa〜Cdの陽極側と調整側スイッチ群51とは、2本の接続線52によってそれぞれ接続可能であり、各セルCa〜Cdの陰極側と調整側スイッチ群51とは、1本の接続線52のみによって接続可能である。例えば、セルCaの陽極側は、第1及び第4の接続線52a,52dによってスイッチSW11,SW14とそれぞれ接続可能であり、セルCaの陰極側は、第2の接続線52bのみによってスイッチSW12と接続可能である。
【0064】
従って、セルCa〜Cdと第1の調整セルCxとを並列接続させる第1の調整回路は、各セルCa〜Cdに対してそれぞれ2つの異なる経路で形成することができる。
【0065】
例えば、スイッチSW11が第1接続位置に設定され(基本接点11aと第1接点11bとが接続され)、スイッチSW12が第3接続位置に設定され(基本接点12aと第3接点12dとが接続され)、スイッチSW31が第1接続位置に設定され(接点31aと接点31bとが接続され)、スイッチSW32,SW35が中立位置に設定(維持)されると、セルCaと第1の調整セルCxとは、第1及び第2の接続線52a,52bを介して並列状態で接続される。すなわち、スイッチSW11が第1接続位置に、スイッチSW12が第3接続位置に、スイッチSW31が第1接続位置にそれぞれ設定され、スイッチSW32,SW35が中立位置(非調整位置)にそれぞれ維持されることによって形成される回路は、セルCaの第1の調整回路として機能し、スイッチSW11とスイッチSW12とスイッチSW31とは、セルCaに対応する第1の調整用のスイッチとして機能する。また、この場合、スイッチSW11の第1接続位置と、スイッチSW12の第3接続位置と、スイッチSW31の第1接続位置とが、セルCaに対応した第1の調整回路を機能させるために非調整位置から変更される調整位置である。
【0066】
また、スイッチSW12が第3接続位置に設定され(基本接点12aと第3接点12dとが接続され)、スイッチSW14が第1接続位置に設定され(基本接点14aと第1接点14bとが接続され)、スイッチSW31が第1接続位置に設定され(接点31aと接点31bとが接続され)、スイッチSW32が中立位置に設定(維持)され、スイッチSW35が第1接続位置に設定されると、セルCaと第1の調整セルCxとは、第2及び第4の接続線52b,52dを介して並列状態で接続される。すなわち、スイッチSW12が第3接続位置に、スイッチSW14が第1接続位置に、スイッチSW31が第1接続位置に、スイッチSW35が第1接続位置にそれぞれ設定され、スイッチSW32が中立位置(非調整位置)に維持されることによって形成される回路は、セルCaの第1の調整回路として機能し、スイッチSW12とスイッチSW14とスイッチSW31とスイッチSW35とは、セルCaに対応する第1の調整用のスイッチとして機能する。また、この場合、スイッチSW12の第3接続位置と、スイッチSW14の第1接続位置と、スイッチSW31の第1接続位置と、スイッチSW35の第1の接続位置とが、セルCaに対応した第1の調整回路を機能させるために非調整位置から変更される調整位置である。
【0067】
第1の調整回路の場合と同様に、セルCa〜Cdと第2の調整セルCyとを並列接続させる第2の調整回路も、各セルCa〜Cdに対して2つの異なる経路で形成することができる。
【0068】
例えば、上記第1及び第2の接続線52a,52bを介した第1の調整回路において、スイッチSW11が第1接続位置から第2接続位置に切り替わると(基本接点11aと第2接点11cとが接続されると)、セルCaと第2の調整セルCyとは、第1及び第2の接続線52a,52bを介して並列状態で接続される。すなわち、スイッチSW11が第2接続位置に、スイッチSW12が第3接続位置に、スイッチSW31が第1接続位置にそれぞれ設定され、スイッチSW32,SW35がそれぞれ中立位置に維持されることによって形成される回路は、セルCaの第2の調整回路として機能する。
【0069】
また、上記第2及び第4の接続線52b,52dを介した第1の調整回路において、スイッチSW14が第1接続位置から第2接続位置に切り替わると(基本接点14aと第2接点14cとが接続されると)、セルCaと第2の調整セルCyとは、第2及び第4の接続線52b,52dを介して並列状態で接続される。すなわち、スイッチSW12が第3接続位置に、スイッチSW14が第2接続位置に、スイッチSW31が第1接続位置に、スイッチSW35が第1接続位置にそれぞれ設定され、スイッチSW32が中立位置に維持されることによって形成される回路は、セルCaの第2の調整回路として機能する。
【0070】
このように、セルCaの第1及び第2の調整回路として、第1及び第2の接続線52a,52bを含む経路と、第2及び第4の接続線52b,52dを含む経路とがそれぞれ設定可能である。第1及び第2の接続線52a,52bを含む経路の場合、スイッチSW11,SW12,SW31が第1及び第2の調整用のスイッチとして機能し、第2及び第4の接続線52b,52dを含む経路の場合、スイッチSW12,SW14,SW31,SW35が第1及び第2の調整用のスイッチとして機能する。
【0071】
なお、他のセルCb〜Cdについての詳細な説明は省略するが、セルCb〜Cdの第1及び第2の調整回路も、セルCaの場合と同様に2つの経路がそれぞれ設定可能である。
【0072】
また、各セルCa〜Cdのうち1つのセルに対応する第1の調整回路を形成する期間と、他の1つのセルに対応する第2の調整回路を形成する期間とが重複しない場合には、2つの経路のうち何れを選択しても第1又は第2の調整回路を形成することが可能であるが、両期間が重複する場合には、調整対象となるセルの組み合わせに応じた経路を選択する必要がある。
【0073】
例えば、セルCaの第1の調整回路の場合、上述のように、第1及び第2の接続線52a,52bを含む経路(R11)と、第2及び第4の接続線52b,52dを含む経路(R12)とが形成可能であり、セルCbの第2の調整回路の場合、第1及び第3の接続線52a,52cを含む経路(R21)と、第2及び第3の接続線52b,52cを含む経路(R22)とが形成可能である。従って、セルCaの第1の調整回路とセルCbの第2の調整回路とを成立させる経路の組み合わせは、R11とR21、R11とR22、R12とR21、及びR12とR22という4通りの組み合わせが理論上可能である。しかし、R11とR21との組み合わせでは第1の接続線52aが重複し、R11とR22との組み合わせでは第2の接続線52bが重複し、R12とR22との組み合わせでは第2の接続線52bが重複する。従って、これらの組み合わせでは、2つの調整回路を同時に形成することはできない。これに対し、R12とR21の組み合わせでは、接続線52の重複は発生せず、2つの調整回路を同時に形成することができる。この場合、セルCaの陰極側とセルCbの陽極側とは、第2接続位置に設定されるスイッチSW32によって遮断され、セルCaの陽極側とセルCbの陰極側とは、中立位置に維持されるスイッチS33によって遮断されるため、2つの調整回路が独立して形成される。
【0074】
このように、各セルCa〜Cdのうち1つのセルに対応する第1の調整回路を形成する期間と、他の1つのセルに対応する第2の調整回路を形成する期間とが重複する場合には、2つの調整回路を同時に成立させるように、調整対象となるセル(処理対象セル)の組み合わせに応じた経路を選択する必要があり、選択される経路に応じて調整用のスイッチが決まる。
【0075】
記憶部30には、第1の調整セルCx用の調整スイッチ設定テーブルと第2の調整セルCy用の調整スイッチ設定テーブルとが記憶されている。各調整スイッチ設定テーブルには、各セルCa〜Cdに対応する調整用のスイッチ及び調整位置が予め設定される。第1の調整セルCx用の調整スイッチ設定テーブルは、第2の調整回路が形成されていない場合に使用する単独用のテーブル(単独用Cxテーブル)と、第2の調整回路が形成されている場合に使用する並立用のテーブル(並立用Cxテーブル)とを含む。また、第2の調整セルCy用の調整スイッチ設定テーブルは、第1の調整回路が形成されていない場合に使用する単独用のテーブル(単独用Cyテーブル)と、第1の調整回路が形成されている場合に使用する並立用のテーブル(並立用Cyテーブル)とを含む。
【0076】
単独用Cxテーブルでは、上記2つの経路のうち任意の一方の経路を機能させる第1の調整用のスイッチ及び調整位置が、各セルCa〜Cdに対して設定される。並立用Cxテーブルでは、上記2つの経路のうち、第2の調整回路と同時に成立可能な経路を機能させる第1の調整用のスイッチ及び調整位置が、各セルCa〜Cd毎に設定される。すなわち、並立用Cxテーブルでは、処理対象セルと他のセル(第2の調整回路によって調整されるセル)との各組み合わせに対して、第1の調整用のスイッチ及び調整位置がそれぞれ設定される。例えば、処理対象セルがセルCaであり、第2の調整回路によって調整されるセルがセルCbの場合、第1の調整用のスイッチとして、スイッチSW12(調整位置:第1接続位置)、スイッチSW14(調整位置:第3接続位置)、スイッチSW31(調整位置:第1接続位置)及びスイッチSW35(調整位置:第1接続位置)が設定される。
【0077】
同様に、単独用Cyテーブルでは、上記2つの経路のうち任意の一方の経路を機能させる第2の調整用のスイッチ及び調整位置が、各セルCa〜Cdに対して設定される。並立用Cyテーブルでは、上記2つの経路のうち、第1の調整回路と同時に成立可能な経路を機能させる第2の調整用のスイッチ及び調整位置が、各セルCa〜Cd毎に設定される。すなわち、並立用Cyテーブルでは、処理対象セルと他のセル(第1の調整回路によって調整されるセル)との各組み合わせに対して、第2の調整用のスイッチ及び調整位置がそれぞれ設定される。例えば、処理対象セルがセルCbであり、第1の調整回路によって調整されるセルがセルCaの場合、第2の調整用のスイッチとしてスイッチSW11(調整位置:第2接続位置)、スイッチSW13(調整位置:第3接続位置)及びスイッチSW32(調整位置:第2接続位置)が設定される。
【0078】
判定部22は、制御部23が調整処理(後述する第1〜第4の調整処理)を現在実行しているか否かを判定する。制御部23が調整処理を現在実行していないと判定した場合、第1実施形態と同様に、全てのセルCa〜Cdの中から電圧値Va〜Vdが最大であるセル(第1の最大電圧セル)と最小であるセル(第1の最小電圧セル)とを処理対象セル(第1の処理対象セル)として抽出し、2つの処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する。
【0079】
また、判定部22は、制御部23が第1の調整セルCxによる調整処理(第1又は第2の調整処理)を実行しており、且つ第2の調整セルCyによる調整処理(後述する第3又は第4の調整処理)を実行しないと判定した場合、全てのセルCa〜Cdから第1の処理対象セル(第1の最大電圧セルと第1の最小電圧セル)を除いたセルの中で、電圧値が最大であるセル(第2の最大電圧セル)と最小であるセル(第2の最小電圧セル)とを処理対象セル(第2の処理対象セル)として抽出し、2つの処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値ΔVsを超えているか否かを判定する。具体的には、記憶部30から各電圧値Va〜Vdを読み出し、全ての電圧値Va〜Vdの中から第1の処理対象セルの電圧値を除外し、残りの全ての電圧値の中から最大電圧値と最小電圧値とを特定し、最大電圧値と最小電圧値との差ΔVを算出し、算出した電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する。
【0080】
さらに、判定部22は、制御部23が第2の調整セルCyによる調整処理を実行しており、且つ第1の調整セルCxによる調整処理を実行していないと判定した場合、全てのセルCa〜Cdから第2の処理対象セル(第2の最大電圧セルと第2の最小電圧セル)を除いたセルの中で、電圧値が最大であるセル(第1の最大電圧セル)と最小であるセル(第1の最小電圧セル)とを処理対象セル(第1の処理対象セル)として抽出し、2つの処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値ΔVsを超えているか否かを判定する。具体的には、記憶部30から各電圧値Va〜Vdを読み出し、全ての電圧値Va〜Vdの中から第2の処理対象セルの電圧値を除外し、残りの全ての電圧値の中から最大電圧値と最小電圧値とを特定し、最大電圧値と最小電圧値との差ΔVを算出し、算出した電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する。
【0081】
制御部23は、第2の処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えていると判定部22が判定したとき、第2の最大電圧セルを調整対象とする第3の調整処理と第2の最小電圧セルを調整対象とする第4の調整処理とを連続して実行する。第3の調整処理において、制御部23は、第2の調整セルCy用の調整スイッチ設定テーブルを参照して、第2の最大電圧セルに対応する第2の調整用のスイッチを決定し、そのスイッチを調整位置に設定して第2の最大電圧セルと第2の調整セルとを並列接続する第2の調整回路を機能させ、第2の最大電圧セルの電圧値と第2の調整セルCyの電圧値とが平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、第2の最大電圧セルに対応する第2の調整用のスイッチを調整位置から非調整位置に戻す。また、第4の調整処理において、制御部23は、第2の調整セルCy用の調整スイッチ設定テーブルを参照して第2の最小電圧セルに対応する第2の調整用のスイッチを決定し、そのスイッチを調整位置に設定して第2の最小電圧セルと調整セルとを並列接続する第2の調整回路を機能させ、第2の最小電圧セルの電圧値と調整セルCxの電圧値とが平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、最小電圧セルに対応する第2の調整用のスイッチを調整位置から非調整位置に戻す。
【0082】
制御部23は、上記第3又は第4の調整処理を実行する際に、第1の調整セルCxによる調整処理(第1又は第2の調整処理)を実行しているか否かを判定し、第1の調整セルCxによる調整処理を実行していない場合には、単独用Cyテーブルを参照して第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定する。
【0083】
一方、第1の調整セルCxによる調整処理を実行している場合、制御部23は、並立用Cyテーブルを参照して、第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定する。例えば、第1の調整処理を実行している場合には、第1の最大電圧セルと第1の調整セルCxとの間に既に形成している第1の調整回路と同時に成立可能な第2の調整回路を形成する調整用スイッチを選択し、第2の調整処理を実行している場合には、第1の最小電圧セルと第1の調整セルCxとの間に既に形成している第1の調整回路と同時に成立可能な第2の調整回路を形成する調整用スイッチを選択する。
【0084】
さらに、制御部23は、並立用Cyテーブルを参照して第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定し、第2の調整用のスイッチを調整位置に設定する場合、その設定に先行して、既に形成している第1の調整回路を、これから形成する第2の調整回路と同時に成立可能な経路に適宜変更する。すなわち、制御部23は、並立用Cyテーブルを参照して第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定する際に、並立用Cxテーブルを参照して第1の調整用スイッチと調整位置とを再決定し、第2の調整用のスイッチの調整位置への設定に先行して、再決定した第1の調整用のスイッチを調整位置に設定し、他のスイッチを中立位置に戻す。これにより、現在の第1の調整回路がこれから形成される第2の調整回路と同時に成立可能な経路で形成されている場合には、現在の第1の調整用のスイッチが調整位置に維持され、現在の第1の調整回路がこれから形成される第2の調整回路と同時に成立不可能な経路で形成されている場合には、2つの調整回路を同時に成立させる第1の調整回路に変更された後に、第2の調整回路の形成される。
【0085】
また、制御部23は、第1の処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えていると判定部22が判定したとき、第1の最大電圧セルを調整対象とする第1の調整処理と第1の最小電圧セルを調整対象とする第2の調整処理とを、第1の調整セルCx用の調整スイッチ設定テーブルを参照して第1実施形態と同様に実行する。また、制御部23は、第1又は第2の調整処理を実行する際に、第2の調整セルCyによる調整処理(第3又は第4の調整処理)を実行しているか否かを判定し、第2の調整セルCyによる調整処理を実行していない場合には、単独用Cxテーブルを参照して第1の調整用のスイッチと調整位置とを決定し、第2の調整セルCyによる調整処理を実行している場合には、並立用Cxテーブルを参照して第1の調整用のスイッチと調整位置とを決定する。例えば、第3の調整処理を実行している場合には、第2の最大電圧セルと第2の調整セルCyとの間に既に形成している第2の調整回路と同時に成立可能な第1の調整回路を形成する第1の調整用スイッチを選択し、後述する第4の調整処理を実行している場合には、第2の最小電圧セルと第2の調整セルCyとの間に既に形成している第2の調整回路と同時に成立可能な第1の調整回路を形成する第1の調整用スイッチを選択する。さらに、制御部23は、並立用Cxテーブルを参照して第1の調整用のスイッチと調整位置とを決定する際に、並立用Cyテーブルを参照して第2の調整用スイッチと調整位置とを再決定し、第1の調整用のスイッチの調整位置への設定に先行して、再決定した第2の調整用のスイッチを調整位置に設定し、他のスイッチを中立位置に戻す。なお、第3の調整処理の調整対象を第2の最小電圧セルとし、第4の調整処理の調整対象を第2の最大電圧セルとしてもよい。
【0086】
以下、図5のフローチャートを用いて、CPU20が実行する電圧調整処理について説明する。
【0087】
第1実施形態と同様に、本処理が開始されると、検出部21は、セルCa〜Cdの各電圧値V1〜V4を検出し、検出した各セルの電圧値Va〜Vdを記憶部30に記憶し(ステップS1)、判定部22は、制御部23が第1又は第2の調整処理を実行しているか否かを判定する(ステップS2)。なお、制御部23は、検出部21による各電圧値V1〜V4の検出時に、スイッチSW31〜SW34のうち中立位置に維持されているスイッチを、第1接続位置に一時的に変更する。このとき、調整処理が実行中であるため調整位置に設定されているスイッチは、第1接続位置に変更されずに調整位置に保持される。このため、電圧値を検出することができない又は電圧値がゼロと検出されるセル(検出不能なセル)が生じる可能性があるが、このような検出不能なセルは、後述するステップS11又はステップS16において処理対象セルの抽出対象から除外されるため、不都合は生じない。
【0088】
制御部23が第1及び第2の調整処理を実行していないと判定された場合(ステップS2:NO)、判定部22は、第1の処理対象セルを抽出し、電圧値の差ΔVを算出する(ステップS11)。
【0089】
ステップS11の処理において、判定部22は、記憶部30から各電圧値Va〜Vdを読み出す。次に、判定部22は、制御部23が第3又は第4の調整処理を実行しているか否かを判定し、制御部23が第3及び第4の調整処理を実行していないと判定した場合には、全ての電圧値Va〜Vdの中から最大電圧値Vaと最小電圧値Vbとを特定し(第1の処理対象セルを抽出し)、最大電圧値V1と最小電圧値V2との差(第1の処理対象セル間の電圧値の差ΔV=V1−V2)を算出する。一方、制御部23が第3又は第4の調整処理を実行していると判定した場合には、全ての電圧値Va〜Vdの中から第2の処理対象セルの電圧値を除外し、残りの全ての電圧値の中から最大電圧値と最小電圧値とを特定し(第1の処理対象セルを抽出し)、最大電圧値と最小電圧値との差(第1の処理対象セル間の電圧値の差ΔV=V1−V2)を算出する。
【0090】
次に、判定部22は、第1の処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する(ステップS12)。
【0091】
第1の処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えている(ΔV>Vs)と判定された場合(ステップS12:YES)、制御部23は、第1の最大電圧セルを調整対象とした第1の調整処理(ステップS13)と、第1の最小電圧セルを調整対象とした第2の調整処理(ステップS14)とを連続して実行した後、本処理を終了する。
【0092】
各調整処理において、制御部23は、第3又は第4の調整処理を実行しているか否かを判定し、第3及び第4の調整処理を実行していない場合には、単独用Cxテーブルを参照して第1の調整用のスイッチと調整位置とを決定し、第3又は第4の調整処理を実行している場合には、並立用Cxテーブルを参照して第1の調整用のスイッチと調整位置とを決定する。
【0093】
第1の調整処理において、制御部23は、第1の最大電圧セルに対応する各スイッチを調整位置に設定することにより、第1の最大電圧セルと調整セルCxとを並列状態で接続し、両セルの電圧値が平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、第1の最大電圧セルに対応するスイッチを調整位置から中立位置に戻す。同様に、第2の調整処理において、制御部23は、第1の最小電圧セルに対応する各スイッチを調整位置に設定することにより、第1の最小電圧セルと調整セルCxとを並列状態で接続し、両セルの電圧値が平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、第1の最小電圧セルに対応するスイッチを調整位置から中立位置に戻す。
【0094】
なお、各調整処理において、制御部23は、並立用Cxテーブルを参照して第1の調整用のスイッチと調整位置とを決定する際に、並立用Cyテーブルを参照して第2の調整用スイッチと調整位置とを再決定し、第1の調整用のスイッチの調整位置への設定に先行して、再決定した第2の調整用のスイッチを調整位置に設定し、他のスイッチを中立位置に戻す。
【0095】
一方、制御部23が第1及び第2の調整処理を実行していると判定された場合(ステップS2:YES)、判定部22は、制御部23が第3及び第4の調整処理を実行しているか否かを判定する(ステップS15)。
【0096】
制御部23が第3及び第4の調整処理を実行していないと判定された場合(ステップS15:NO)、判定部22は、第2の処理対象セルを抽出し、電圧値の差ΔVを算出する(ステップS16)。
【0097】
ステップS16の処理において、判定部22は、全ての電圧値Va〜Vdの中から第1の処理対象セルの電圧値を除外し、残りの全ての電圧値の中から最大電圧値V1と最小電圧値V2とを特定し(第2の処理対象セルを抽出し)、最大電圧値と最小電圧値との差(第2の処理対象セル間の電圧値の差ΔV=V1−V2)を算出する。
【0098】
次に、判定部22は、第2の処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えているか否かを判定する(ステップS17)。
【0099】
第2の処理対象セル間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vsを超えている(ΔV>Vs)と判定された場合(ステップS17:YES)、制御部23は、第2の最大電圧セルを調整対象とした第3の調整処理(ステップS18)と、第2の最小電圧セルを調整対象とした第4の調整処理(ステップS19)とを連続して実行した後、本処理を終了する。
【0100】
各調整処理において、制御部23は、第1又は第2の調整処理を実行しているか否かを判定し、第1及び第2の調整処理を実行していない場合には、単独用Cyテーブルを参照して第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定し、第1又は第2の調整処理を実行している場合には、並立用Cyテーブルを参照して第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定する。
【0101】
第3の調整処理において、制御部23は、第2の最大電圧セルに対応する各スイッチを調整位置に設定することにより、第2の最大電圧セルと調整セルCyとを並列状態で接続し、両セルの電圧値が平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、第2の最大電圧セルに対応するスイッチを調整位置から中立位置に戻す。同様に、第4の調整処理において、制御部23は、第2の最小電圧セルに対応する各スイッチを調整位置に設定することにより、第2の最小電圧セルと調整セルCyとを並列状態で接続し、両セルの電圧値が平均化されたか否かを判断し、平均化されたと判断したときに、第2の最小電圧セルに対応するスイッチを調整位置から中立位置に戻す。
【0102】
なお、各調整処理において、制御部23は、並立用Cyテーブルを参照して第2の調整用のスイッチと調整位置とを決定する際に、並立用Cxテーブルを参照して第1の調整用スイッチと調整位置とを再決定し、第2の調整用のスイッチの調整位置への設定に先行して、再決定した第1の調整用のスイッチを調整位置に設定し、他のスイッチを中立位置に戻す。
【0103】
また、制御部23が第1の調整セルCxによる調整処理と第2の調整セルCyによる調整処理とを双方実行していると判定された場合(ステップ15:YES)、及び処理対象セルCa,Cb間の電圧値の差ΔVが所定電圧値Vs以下である(ΔV≦Vs)と判定された場合(ステップS12:NO、ステップS17:NO)、CPU20は本処理を終了する。
【0104】
このように、本実施形態の電圧調整システムによれば、2つの調整処理を並行して実行することができ、複数の電池セル全体を調整するための時間の短縮化を図ることができる。
【0105】
なお、上記実施形態では、1つの調整回路(一方の調整回路)が形成された状態で他の1つの調整回路(他方の調整回路)を形成する際に、他方の調整回路と同時に成立不可能な経路で一方の調整回路が既に形成されている場合には、他方の調整回路と成立可能な経路に一方の調整回路を変更しているが、これに代えて、一方の調整回路が機能しなくなるまで待って他方の調整回路を形成してもよい。
【0106】
また、各セルCa〜Cdと各調整セルCx,Cyとを並列接続する回路は、上記に限定されるものではなく、様々な回路を用いることが可能であり、その一例を図6に示す。なお、なお、上記各実施形態と同様の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0107】
図6に示す電圧調整システムは、スイッチSW21〜SW25を有する。各スイッチSW21〜SW25は、基本接点と第1接点と第2接点と第3接点と第4接点とを有し、基本接点を第1接点に接続する第1接続位置と、基本接点を第2接点に接続する第2接続位置と、基本接点を第3接点に接続する第3接続位置と、基本接点を第4接点に接続する第4接続位置と、基本接点を第1〜第4接点の何れにも接続しない中立位置とのうち何れかの位置に設定可能な5路スイッチである。
【0108】
各スイッチSW21〜SW25の基本接点21a〜25aは、第1〜第5の接続線52a〜52eに接続され、第1接点21b〜25bは、第1の調整セルCxの陽極側に接続され、第2接点21c〜25cは、第2の調整セルCyの陽極側に接続され、第3接点21d〜25dは、第1の調整セルCxの陰極側に接続され、第4接点21e〜25eは、第2の調整セルCyの陰極側に接続される。
【0109】
例えば、スイッチSW21が第1接続位置に設定され、スイッチSW22が第3接続位置に設定されると、セルCaと調整セルCxとは並列状態で接続される(セルCaに対応する第1の調整回路が機能する)。また、スイッチSW21が第2接続位置に設定され、スイッチSW22が第4接続位置に設定されると、セルCaと第2の調整セルCyとは並列状態で接続される(セルCaに対応する第2の調整回路が機能する)。すなわち、スイッチSW21とスイッチSW22とは、セルCaに対応する第1及び第2の調整用スイッチとして機能する。スイッチSW21の第1接続位置とスイッチSW22の第3接続位置とは、セルCaに対応する第1の調整回路を機能させる第1の調整位置であり、スイッチSW21の第2接続位置とスイッチSW22の第4接続位置とは、セルCaに対応する第2の調整回路を機能させる第2の調整位置である。
【0110】
図6に示す電圧調整システムでは、既存の直列接続された複数の電池セルに対し、電池セル側のスイッチ群50(図4に示す)を設けることなく、調整セルCx,Cy及びスイッチSW21〜SW25を含む調整装置を付加的に接続することによって、複数の電池セルの電圧値を2つの調整セルCx,Cyを用いて並行して調整することができる。従って、システム全体の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
【0111】
但し、図6に示す電圧調整システムでは、調整対象となる2つのセルが隣接している場合、第1及び第2の調整回路を同時に形成することができない。このため、制御部23は、隣接する2つのセルの調整処理を実行している場合には、その他方の調整処理を禁止する。例えば、セルCaを調整対象とした第1の調整処理を実行しているときには、この第1の調整処理が終了するまでセルCbを調整対象とした第3又は第4の調整処理を開始せずに処理を一時的に中断し、第1の調整処理が終了した後にその調整処理を開始する。なお、中断する処理が第3の調整処理の場合であり、且つ第3の調整処理の後に実行予定の第4の調整処理の対象が第1の調整処理を実行しているセルとは隣接していないセルの場合には、第4の調整処理を第3の調整処理の前に実行してもよい。
【0112】
なお、上記実施形態及び変形例は本発明の一例であり、本発明を逸脱しない範囲において変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載される電源のように、多数の電池セルが直列接続されている場合の電池セル間の電圧調整に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0114】
1:電圧調整システム
2:負荷回路
3:充電回路
10:制御ユニット
20:CPU(Central Processing Unit)
21:検出部(検出手段)
22:判定部(判定手段)
23:制御部(制御手段)
30:記憶部
50:セル側スイッチ群
51:調整側スイッチ群
52,52a〜52e:接続線
Ca〜Cd:電池セル
Cx,Cy:調整セル
SW1〜SW5,SW11〜SW15,SW21〜SW25,SW31〜SW35:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された3つ以上の複数の電池セル間における電圧値の差を調整する電圧調整システムであって、
調整セルと、
前記調整セルと前記複数の電池セルのそれぞれとを、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続する複数の調整回路と、
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、前記複数の調整回路のそれぞれを機能させる調整位置と機能させない非調整位置とに選択的に設定される複数のスイッチと、
前記複数の電池セルの各電圧値を検出する検出手段と、
前記複数の電池セルの中から、前記検出手段が検出した電圧値が最大である電池セルと最小である電池セルとを処理対象セルとして抽出し、これら2つの処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えているか否かを判定する判定手段と、
前記2つの処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えていると前記判定手段が判定したとき、前記複数のスイッチのうち前記2つの処理対象セルの一方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第1の調整処理と、前記複数のスイッチのうち前記2つの処理対象セルの他方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第2の調整処理とを連続して実行する制御手段と、を備えた
ことを特徴とする電圧調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧調整システムであって、
第2の調整セルと、
前記第2の調整セルと前記複数の電池セルのそれぞれとを、両セルの同極同士が通電する並列状態で接続する複数の第2の調整回路と、
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、前記複数の第2の調整回路のそれぞれを機能させる調整位置と機能させない非調整位置とに選択的に設定される複数の第2のスイッチと、を備え、
前記判定手段は、前記制御手段が前記第1又は第2の調整処理を実行しているときに、前記複数の電池セルから前記2つの処理対象セルを除いた複数の電池セルの中から、前記検出手段が検出した電圧値が最大である電池セルと最小である電池セルとを第2の処理対象セルとして抽出し、これら2つの第2の処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えているか否かを判定し、
前記制御手段は、前記2つの第2の処理対象セル間の電圧値の差が所定電圧値を超えていると前記判定手段が判定したとき、前記複数の第2のスイッチのうち前記2つの第2の処理対象セルの一方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第3の調整処理と、前記複数の第2のスイッチのうち前記2つの第2の処理対象セルの他方に対応するスイッチのみを調整位置に設定する第4の調整処理とを連続して実行する
ことを特徴とする電圧調整システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電圧調整システムであって、
前記制御手段は、前記調整処理の対象となる2つのセルの電圧値が平均化されたか否かを判断し、当該2つのセルの電圧値が平均化されたと判断したときに当該調整処理を終了して前記調整位置に設定したスイッチを非調整位置に戻す
ことを特徴とする電圧調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188564(P2011−188564A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48503(P2010−48503)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】