説明

電子ビーム装置

【課題】電子ビーム光学鏡筒のオゾン分子ガスによるクリーニングを効果的に行う。
【解決手段】電子銃102により発生された電子ビームを電子光学鏡筒内部を通過させ、電子ビームを整形してターゲット107に向けて照射する。オゾン供給手段114は、電子鏡筒内部にオゾン分子ガスを供給する。記電子鏡筒の電子ビーム通過経路の周辺面に付着する有機物付着量を電気的に計測する付着量計測手段を設ける。付着量計測手段で計測した有機物付着量に応じてオゾン供給手段によるオゾン分子ガスの供給量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体(LSI)製造工程の回路パターンを描画するリソグラフィ分野などで活用される電子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィ技術は従来、光による写真製版技術によって微細化、高集積化、コスト低減を果たしてきた。光の波長が短くなることで解像性が向上する原理から、光の波長は微細化の進展とともに短波長化が進み、g線(波長436nm)からi線(波長365nm)と変遷し、現在は波長が193nmのエキシマレーザー光が使われている。今後さらに短波長の13.5nmの極短紫外線(EUV)を用いたリソグラフィ技術が精力的に開発されている。
【0003】
しかし、光による写真製版ではネガに相当するマスクが必ず必要になる。半導体の微細化の進展に伴ってマスク開発コストが増大の一途をたどり、1品種のLSI当り数億円にまでなって来ている。一方、電子ビーム描画装置はパターン発生機能を有する特徴からマスク開発に使われてきた。しかし、光リソグラフィ技術の進展により、光の波長以下の転写性を実現する超解像技術の導入や、高集積化に伴うマスクデータの肥大によって処理時間が増大し、マスク描画処理時間は、マスク1層当り数十時間を要するようになってきている。
【0004】
そこで、マスク描画処理時間の短縮を通じて、マスク価格の高騰を抑える目的や、高価なマスクを介さない電子ビーム描画装置による直接描画を実現する目的で、電子ビーム描画装置の単位時間当たりの処理能力向上を目指し、複数の電子ビームを用いるマルチビーム型の装置が提案され、処理能力を数十倍以上にすることが期待されている。
【0005】
電子銃、アパーチャ、レンズ、偏向器を電子ビーム軸に沿って配設したものを単独のコラム要素とし、電子銃から射出された電子ビームを試料に照射する。
【0006】
マルチビーム型の装置とは、上記コラム要素を複数個並列に配列したものである。従ってマルチビーム型の装置では複数の電子ビームが並列に試料に照射されることになる。
【0007】
さて、電子ビームコラムでは、残留有機分子に電子ビームが当たると有機物が重合して有機物膜が出来る。有機物膜はコラム内部のレンズ部品の表面および静電偏偏向器の電極面、およびアパーチャの上面に付着する。有機物膜はコンタミネーション膜とも呼ばれる。
【0008】
有機物膜には、電荷がたまりチャージアップと呼ばれる現象が起こる。チャージアップが起こると、ビームの位置ドリフトが発生するために描画精度が悪くなる。そこで電子ビーム描画装置では、有機物膜を除去するためにオゾンガスを流すことが行われる。有機物膜がなくなれば、チャージアップとビーム位置ドリフトがなくなるので高精度の描画が可能となる。
【0009】
今後の記載においてはコラムを鏡筒と呼ぶこともあるが全く同じ意味である。同じ意味であるものを2つの言葉でよぶ理由は以下のとおりである。マルチコラムと呼ぶことはあっても、マルチ鏡筒と呼ぶことはない。すなわち英語と組み合わされるときにはコラムと呼び、日本語では鏡筒と呼ぶのが自然であるから、そうするものである。また従来の文献で呼ばれていた呼び方にならう意味もある。
【0010】
さて従来から有機物膜を、オゾン分子ガスを鏡筒内に導入して除去することは一般的に知られている。例えば、特許文献1には、反応性ガスによる電子ビーム光学鏡筒のクリーニングについて記載されている。特許文献2には、オゾンガスによる電子ビーム光学鏡筒のクリーニングについて記載されている。特許文献3には、オゾン分子のセルフクリーニング作用を利用して、部品の汚染を防止する方法が開示されている。
【0011】
しかしながら電子ビーム光学鏡筒内部にオゾン分子ガスを必要以上に大量に流入させると、以下のような弊害が発生する。
(1)電子銃先端の消耗が激しい。
(2)真空排気用イオンポンプの消耗、発塵や故障が発生しやすい。
(3)導入されたオゾン分子ガスを排気するためターボモレキュラポンプに負荷がかかり、輻射熱による描画位置精度が劣化する。
(4)真空ゲージの消耗や発塵が多い。
(5)電子ビーム光学鏡筒内部でオゾン分子が足りずにクリーニングできない箇所が残る。特に真空のコンダクタンスが小さい部分にはオゾン分子が導入されず、クリーニング効果を上げることができない。これに対処するために、過剰なオゾン分子ガスを流入せしめ、真空内の場所によっては大量のオゾン分子が流れ、真空部品を酸化する副作用がある。
(6)特にマルチコラムではビーム軸が多数あり、コンダクタンスが小さい部分を有するコラム要素には、オゾン分子が導入されずクリーニング効果がない箇所がある。前記コラム要素ではチャージアップによるビーム位置ドリフトが残り、描画精度が悪くなる。クリーニング効果を上げるために、さらに過剰なオゾン分子ガスを流入せしめると、真空内の箇所によっては大量のオゾン分子が流れ、真空部品を酸化する副作用がある。
(7)大量のオゾン分子を流すことによって、ビーム照射時にレジスト層表面に酸素ラジカルによるレジスト断面形状の異常が発生することもある。
【0012】
また従来は非特許文献1にも記載があるごとく、電子ビーム量が多いと有機物重合膜が厚く成長するので、オゾン分子流入量も多くする必要があると考えられてきた。これによって過剰なオゾン分子の導入が行われて真空ポンプ・電子銃にダメージが与えられて、本来の有機物重合膜除去に必要な分量以上の過剰なオゾン分子の流入が行われていた。
【0013】
本発明者は、残留有機物分子が重合反応を起こして、有機物重合膜が厚くなる比率とオゾン分子の分解による有機物重合膜が除去される効果の間には、電子ビーム照射量に依存しない関係があることを発見した。すなわち電子ビーム量に依存せず、電子光学鏡筒内部の特定の箇所に存在する残留有機物分子の量に対して、前記有機物重合膜の形成を抑制し、前記有機物膜を除去することが可能なオゾン分子流入量の制御を正しく行えば、電子ビームの量と無関係に有機物重合膜の除去が出来ることを発見した。
【0014】
そこで、この知見を有効に活用して本技術の幾多の課題解決に用いるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭63−308856号公報
【特許文献2】特開平4−94524号公報
【特許文献3】特許第3827359号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】電子・イオンビームハンドブック 第3版 日本学術振興会第132委員会編 日刊工業新聞社 104頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
電子ビーム光学鏡筒内の部品をクリーニングするオゾン分子量を必要以上に導入すると、以下のような弊害が発生する。
【0018】
課題(1)電子銃先端の消耗が激しい。
通常使用されるオゾン発生源では酸素ガスをオゾン化した場合に、重量比で10%程度がオゾン分子となり、残りの90%は酸素ガスのままである。従って、オゾン分子を真空チャンバ内に直接導入することは大量の酸素ガスを導入することになる。
【0019】
電子銃は電子ビーム装置においては多くの場合に熱電界放出電子銃(TFE)が使用される。陰極を高温に保ったまま、強電界を印加すると起きる熱電界放出現象を利用した電子銃である。電子銃は通常LaB6チップが使用されることが多いが、酸素による酸化によって表面が消耗するのが問題となっている。
【0020】
前記の問題を避けるために差動排気により電子銃チャンバの圧力は高真空に維持できるが、この場合でも真空度の差を発生させることができるのであって、まったく影響がないわけではない。特に電子銃先端に向かって一直線にビーム下流からやってくるオゾン分子やイオンについては、微小孔を有するオリフィスが制限する立体角以下のものをさえぎることはできない。このイオン衝撃による消耗はオゾン分子とオゾン分子に付随して多量の酸素を入れる圧力に比例するので、この消耗を低減するためにはオゾン分子とオゾン分子に付随した酸素導入量を必要量以上入れないよう削減する他に方法がない。特許文献3では前記電子銃の消耗は小さいように書かれてあるが、前記の方法でもオゾン分子とオゾン分子に付随する酸素量は、電子銃に対する許容量を遙かに越えていると考えられる。
【0021】
課題(2)真空排気用イオンポンプの消耗、発塵や故障が発生しやすい。
オゾン分子とオゾン分子に付随する酸素量を電子光学鏡筒上部で差動排気するためにイオンポンプを用いることが多い。イオンポンプでは、スパッタ現象を利用しガス分子を吸着するため、可動部が無く機械的な振動がないからである。
【0022】
ところが、オゾン分子とオゾン分子に付随する酸素量を差動排気すると、溜め込み式のポンプであるため、寿命を短くしてしまう。1×10-5Paで10%オゾン(90%酸素)を排気すると0.5年〜1年で排気速度が低下したり、スパッタされた材料が電子光学鏡筒内に飛散し、塵問題を発生したりする。
【0023】
最悪の場合、イオンポンプ内でスパッタした材料でポンプ内の高圧印加部に絶縁不良を発生し、排気速度がゼロになる。すなわち、ポンプが破壊することもある。差動排気が適切にできなくなると、電子銃の消耗はさらに加速することになり、電子銃寿命を縮めたりする。
【0024】
このような問題を無くすためには、オゾン分子とオゾン分子に付随する酸素量を必要量以上入れないように減らす以外に方法はない。
【0025】
課題(3)導入されたオゾン分子とオゾン分子に付随する酸素ガスを排気するため前記ターボモレキュラポンプに負荷がかかり、輻射熱による描画位置精度が劣化する。
前記ターボモレキュラポンプは、一秒間に数万回転という超高速で回転するローターの羽根で、ガス分子を物理的に叩き落とすことにより排気する原理である。したがって、高真空で稼働している前記ターボモレキュラポンプの負荷は小さく、消費電力は小さくなる。ところがオゾン分子とオゾン分子に付随する酸素量を導入することにより圧力が上昇するとローターの負荷は大きくなり、消費電力も大きくなるため、ローターやローターの羽根の温度が上昇してしまう。前記ターボモレキュラポンプはチャンバの真空排気装置であるから、チャンバへ大きなコンダクタンスで接続されている。つまり、ローターとチャンバは大きな開口で接続されている。したがって、ローターの温度上昇は真空チャンバ内へ熱輻射することにより熱平衡状態を維持していることになる。真空チャンバ内にはウエハを搭載し描画時に移動させるためのXYステージがある。したがって、ステージが移動するとステージが受ける輻射熱が変化するため、ステージ温度やウエハ温度が変化してしまう。この温度変化は熱膨張を生じ、ステージミラーとウエハ間距離を変化させたり、ウエハ自体の熱膨張を生じさせたりする。前記熱膨張はレーザー干渉計で測定することができないため、パターン描画位置精度を劣化させることになる。前記の問題を無くすためには、オゾン分子とオゾン分子に付随する酸素量を必要量以上入れないことにより、真空度を向上させる以外に方法はない。
【0026】
ターボモレキュラポンプのローターの羽根の加熱と酸化によるローターの羽根の破断による故障も起こり、ポンプの交換が必要になる。
【0027】
課題(4)真空ゲージの消耗や発塵が多い。
フィラメント方式のイオンゲージの場合、酸素による酸化によって表面が消耗する。また、フィラメント切れにより破壊する。特にオゾン分子とオゾン分子に付随する酸素圧力の高い部分を測定している真空ゲージは、ダメージが多く、ゲージフィラメントやカソードの昇華物が発塵源となり、チャンバや電子ビーム光学鏡筒を汚染することもある。
【0028】
上記の問題に対策するためには、オゾン分子とオゾン分子に付随する酸素を必要量以上流入させないことにより、真空度を向上させる以外に方法はない。
【0029】
課題(5)
オゾン分子が足りずにクリーニングできない箇所が残る。特に真空のコンダクタンスが小さい部分にはオゾン分子が導入されず、クリーニング効果を上げることができない。これに対処するために、過剰なオゾンガスを流入せしめ、真空内の場所によっては大量のオゾンが流れ、真空部品を酸化する副作用がある。
【0030】
課題(6)
特にマルチコラムではビーム軸が多数あり、コンダクタンスが小さい部分を有するコラム要素には、オゾン分子が導入されずクリーニング効果がない場合がある。前記コラム要素ではチャージアップによるビーム位置ドリフトが残り、描画精度が悪い。クリーニング効果を上げるために、さらに過剰なオゾン分子ガスを流入せしめ、真空内の場所によっては大量のオゾン分子が流れ、真空部品を酸化する副作用がある。
【0031】
課題(7)
大量のオゾン分子を流すことによって、ビーム照射時にレジスト層表面に酸素ラジカルによるレジスト断面形状の異常が発生することもある。
【0032】
ビーム通過軸の内壁にチャージアップの元となる有機物重合物膜が形成されるのを、電子ビームによるオゾン分子の分解による酸素ラジカルによって分解するのは、数十時間をかけて行えば事足りることが分かった。オゾン分子は一旦チャンバ内に入った場合に、大量にオゾン分子が流入した真空チャンバの箇所においては、非常に長時間に渡ってオゾン分子の形で壁面に吸着しているので、前記大量にオゾン分子が流入した真空チャンバの箇所においては、その効果は最長数十時間程度継続することを本発明者等は発見した。従って、有機物を数秒から数十分の短時間で早急に分解しようとするために、必要以上の大量のオゾン分子とオゾン分子に付随する酸素分子をチャンバ内に導入することは不必要であり、百害あって一利なしであることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、電子銃により発生された電子ビームを電子光学鏡筒内部を通過させ、電子ビームを成形してターゲットに向けて照射する電子ビーム装置であって、前記電子鏡筒内部にオゾン分子ガスを供給するオゾン供給手段と、前記電子鏡筒の電子ビーム通過経路の周辺面に付着する有機物付着量を電気的に計測する付着量計測手段と、付着量計測手段で計測した有機物付着量に応じてオゾン供給手段によるオゾン分子ガスの供給量を制御する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0034】
また、前記付着量計測手段は、電子ビームの偏向方向を切り換えた際に、電子ビームの偏向方向が付着した有機物のチャージアップによりドリフトすることに基づき計測することが好適である。
【0035】
また、前記付着量計測手段は、電子ビームを照射した試料の画像に基づき電子ビームのドリフトを検出することが好適である。
【0036】
また、前記制御手段は、電子ビームを電子光学鏡筒内部を介し一定時間照射した前後の前記有機物付着量の変化量に応じて、前記オゾン分子ガスの流量を制御することが好適である。
【0037】
また、前記電子ビームの電子ビーム軸に直交する面内に配置された第1の円板状真空壁とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第2の円板状真空壁で囲まれ、内部が真空に保持され、前記電子ビームを取り囲む第1の中空真空部と、前記第1の中空真空室に連続し前記電子ビーム軸に沿って配置され、比較的細い径であって、前記電子ビーム軸の周囲に電子ビームを制御するレンズユニットまたは偏向器ユニットを有する第1の円筒状真空部と、前記第1の円筒状真空部に連続し、前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第3の円板状真空壁とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第4の円板状真空壁で囲まれ、内部が真空に保持され、前記電子ビームを取り囲む第2の中空真空部と、前記第1の中空真空室に連続し前記電子ビーム軸に沿って配置され、比較的細い径であって、前記電子ビーム軸の周囲に電子ビームを制御するレンズユニットまたは偏向器ユニットを有する第2の円筒状真空部と、前記第2の円筒状真空部に連続し、前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第5の円板状真空壁とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第6の円板状真空壁で囲まれ、内部が真空に保持され、前記電子ビームを取り囲む第3の中空真空部と、を有し、前記第2の中空真空部にオゾン分子ガスを流入せしめ、前記第1の中空真空部と前記第3の中空真空部から真空排気をせしめ、前記第1の円筒状真空部および第2の円筒状真空部にオゾン分子ガスを流通することが好適である。
【0038】
また、前記第1の中空真空部は、前記電子ビームを発生する電子銃が配置される電子銃室に隣接し、この電子銃室と第1の中空真空部を区画する前記第1の円板状真空壁との間に、2重オリフィス層が形成されていることが好適である。
【0039】
また、導入するオゾン分子ガスは、純度90%以上の高純度オゾン分子ガスであることが好適である。
【0040】
また、前記電子光学鏡筒内には電子ビーム整形用のアパーチャが設けられ、このアパーチャとして、薄いシリコンアパーチャを用い、シリコンアパーチャを透過する散乱電子の個数を多くし、これによって、オゾンによるクリーニング効果を大きくしたことが好適である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によって、次のような効果が得られる。
(1)電子銃先端の消耗が激減し、長寿命化する。
(2)真空排気用イオンポンプの消耗、発塵や故障が激減し、長寿命化する。
(3)導入されたオゾン分子ガスを排気するためターボモレキュラポンプ(TMP)に負荷が激減し、輻射熱による描画位置精度が圧倒的に改善される。
(4)真空ゲージの消耗や発塵が激減し、長寿命化する。
(5)必要最小限のオゾン分子によりクリーニングが効果的にでき、また部品の酸化の副作用はない。
(6)マルチビームにおいても全ての電子ビームのコラム要素が常にクリーンに保てるので、チャージアップによるビーム位置ドリフトが激減し描画精度が良くなる。
(7)ビーム照射時にレジスト断面形状の異常が発生しない。
【0042】
以上本発明によれば、従来の課題であった問題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電子ビームを電子光学鏡筒内部に一定時間照射した後の有機物付着膜厚の分量を電気的に計測する手段を説明する図である。
【図2】有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものの関係を説明する図である。
【図3】有機物重合膜の増減量とオゾン分子流量の関係を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施例を説明する図である。
【図5】第2の実施例の拡大図である。
【図6】従来技術を説明する図である。
【図7】従来技術の電子ビーム露光装置の鏡筒のコラム内の各領域と電流値及びオゾン濃度(分圧値)の関係を説明する図である。
【図8】第2の実施例の電子光学鏡筒内の各領域とビーム電流値及びオゾン分子ガス濃度の関係を説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施例を説明する図である。
【図10】第3の実施例のオゾン分子ガス流路を説明する図である。
【図11】オゾン分子と電子による有機物重合膜のクリーニングを説明する図である。
【図12】高エネルギ電子照射によるオゾン分子の剥離、脱離を説明する図である。
【図13】オゾン分子が反応し、有機物重合膜のクリーニングを説明する図である。
【図14】電子ビームの散乱型アパーチャの透過および多重反射による二次電子化、低エネルギ化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
まず、本実施形態に係る電子ビーム装置では、描画技術において、電子ビームに対向する電子光学鏡筒内部部品であるレンズのビーム対向面および静電偏向器の電極上およびアパーチャ上に、電子ビームによって形成される有機物重合膜を電子ビームにより分解し、クリーニングに寄与するためのオゾン分子ガスを電子ビームチャンバーに導入してビーム偏向器や試料面上の汚れを取り除くことを可能にする。
【0045】
従来は、非特許文献1にも記載があるように、電子ビーム量が多いと有機物重合膜が厚く成長するので、オゾン分子流入量も多くする必要があると考えられてきた。これによって、過剰なオゾン分子の導入が行われて真空ポンプ・電子銃にダメージが与えられて本来の有機物重合膜除去に必要な分量以上の過剰なオゾン分子の流入が行われていた。
【0046】
本発明者は、残留有機物分子が重合反応を起こして、有機物重合膜が厚くなる比率とオゾンの分解による有機物重合膜が除去される効果の間には、電子ビーム照射量に依存しない関係があることを発見した。すなわち、電子ビーム量に依存せず、電子光学鏡筒内部の特定の箇所に存在する残留有機物分子の量に対して、前記有機物重合膜の形成を抑制し、除去可能なオゾン分子流入量の制御を正しく行えば、電子ビームの量と無関係に有機物重合膜の除去が出来ることを発見した。
【0047】
単位個数の電子が50kVで入射する場合に、入射電子、反射電子、散乱電子、二次電子の個数とエネルギによって、特定の箇所の有機物重合膜が厚くなるか薄くなるかは、特定の箇所に付着するかまたは浮遊している残留有機物分子個数と、同じ箇所に付着するかまたは浮遊しているオゾン分子個数の比のみに依存し、特定の箇所に飛来する入射電子の個数には依存しないことが分かった。
【0048】
従って、電子ビーム光学鏡筒内部の様々な場所で、時間的に任意に異なる電子数が飛散した場合にあっても、その箇所の有機物重合膜が厚くなるか薄くなるかは、その箇所に付着するかまたは浮遊している残留有機物分子個数とその箇所に付着するかまたは浮遊するかしているオゾン分子個数の比のみによっているのであるから、有機物重合膜除去するための、必要最小限のオゾン分子流量を決定し、流路を適切に設置し、流量を制御しさえすればよいことが分かった。
【0049】
従来は、オゾン分子ガスの使用でクリーニングするということは知られていたが、正しい知見に基づいたものでなく必要最小限の流量制御を行うという緻密なものではなかったために、広く産業的に利用されるに至っていなかった。
【0050】
また、一般的に使われている可変整形ビームでは、電流値を多く使用して描画することが多い。可変整形ビームとは、第一の固定矩形アパーチャを通過する矩形ビームを第二の固定矩形アパーチャ上に結像せしめ、第一と第二の固定矩形アパーチャの間に可変整形用偏向器を設置し、第二の固定矩形アパーチャ上で結像ビームを偏向移動せしめ、第二の固定矩形アパーチャを通過する電子ビームの縦横の寸法を可変とするものである。前記寸法可変ビームを用いてLSIパターンを描画する。
【0051】
前記可変矩形ビームでは、電流値を多く使用して描画するので、オゾン分子流量を必要以上に増加させやすい。また、流路が静定していないと滞留することがあって、必要箇所にオゾン分子が流入出来ない。
【0052】
前記のオゾン分子が流入出来ない箇所では有機物重合膜が厚く形成されるために、有機物重合膜を除去する目的で、さらにオゾン分子流量を増加させるという悪循環が繰り返されて、前記に述べた数々の課題があった。
【0053】
本発明を実施する形態について図を参照しながら説明する。
【0054】
図1は電子ビームを電子光学鏡筒内部の有機物付着量の膜厚を電気的に計測する手段を説明する図である。
【0055】
この例では、電子光学鏡筒内部に設置されている、偏向器(偏向電極)に印加する電圧を変更して、電子ビームの偏向方向(進行方向)を変更する。そして、この際の電子ビームの偏向方向の変更形態に基づき有機物重合膜が付着しているかを検出する。
【0056】
ここで、有機物の付着膜厚量の評価は、偏向器に印加する電圧が変化してから、ビームが位置ドリフトを引き起こすドリフトの絶対値と方向を持って計測する。ビームの位置ずれはSEM画面上の十字マークの位置ずれの絶対値を符号反転したものである。十字マークはステージ上の所定の位置に設置されており、必要な時期にステージを所定の位置に移動せしめてビーム照射エリア内に設置される。
【0057】
ドリフト位置ずれ量の計測はSEM画像の自動的パターン認識計測から十字マークの中心位置のXY座標値を算出することで行う。自動的パターン認識とは、あるべき十字マークのパターン情報を格納した記憶素子から読み出したデータと2次電子あるいは反射電子像との2次元的な重なりデータを取得し、位置ずれベクトルデータを抽出する方法である。
【0058】
なお、図4に示すように、電子ビーム装置は、電子光学鏡筒の下方の試料107に電子ビームを照射するが、この試料107として、例えば、シリコン基板上にタングステン、チタン、タンタルなどの金属で十字マークをフィデューシャルマークとして形成したものを用い、位置検出を行うことができる。すなわち、電子光学鏡筒の下端には、試料107からの反射ビームや、2次電子などを検出する検出器151が設けられており、この検出器151の検出結果が処理部152を介し、モニタ153にSEM画像が映し出されるようになっている。また、処理部152は、反射ビームなどから、電子ビーム照射位置を特定し、これが中心になるようにステージの位置を移動せしめることと合わせて、所定範囲内の画像をモニタ153に表示する。従って、図1に示す偏向器の偏向電極10a、10bに印加する電圧を変更することで、電子ビームの照射位置を変更すると、モニタ153には、電子ビーム照射位置を中心とした画像が得られる。このため、偏向電極10a、10bが+5V,−5Vの場合の電子ビームの照射位置、および偏向電極10a、10bが−5V,+5Vの場合の電子ビームの照射位置のいずれの場合においても十字マークはSEM画像の中心付近に位置することになる。
【0059】
図4の処理部152において、パターン認識による十字マークの中心位置を検出することで、ドリフト位置ずれ量を検出する。
【0060】
図1(a)は偏向器に有機物重合膜が付着していない場合を示している。まず、偏向電極に+5V,−5Vを印加した場合、電子ビームは陽極側に曲がり、SEM画面上の一定位置に照射される。この状態で、電子ビームを一定時間照射しつつ偏向した後に、偏向電極に−5V,+5Vの逆電圧を印加すると、電子ビームは逆方向に曲がり、SEM画面上のずれた位置に照射される。このような偏向器への電圧印加の変更を一定時間毎に行うと、電子ビームは電圧印加に応じて、2つの定位置に交互に照射されるため、電子ビームは階段状関数で高速に静定する。
【0061】
しかるに、偏向器に有機物重合膜が付着している場合は、有機物重合膜に対するチャージアップが発生するため、電子ビームの照射位置の移動が、有機物重合膜がない場合とは異なる挙動を示す。まず、偏向電極に+5V,−5Vを印加して電子ビームを一定時間照射しつつ偏向した後に、偏向電極に−5V,+5Vの逆電圧を印加して逆方向に電子ビームを照射しつつ偏向した時に、有機物重合膜上に電子が蓄積されるチャージアップが発生する。これによって、逆電圧によって逆方向に偏向された電子ビームは一旦マイナス方向(静止すべき位置よりも先)にまで大きく偏向された後、数秒から数十秒かかって本来静止すべき位置に偏向し戻される。
【0062】
電子ビーム自身の動きが前記のようであるので、SEM画面上での十字マークの位置は図1(b)左側のSEM画面に示されるように、例えば偏向電極に−5V,+5Vの逆電圧印加直後に画面右よりにあったものが、数秒から数十秒かかって左方向に移動して定位置に落ち着く。
【0063】
さらに、偏向器に有機物重合膜が付着している場合において、偏向電極に+5V,−5Vに逆転して印加し電子ビームを一定時間照射しつつ偏向した時に、逆方向に電子がチャージアップされるので、偏向された電子ビームは一旦プラス方向により大きく偏向された後、数秒から数十秒かかって本来静止すべき位置に偏向し戻される。電子ビーム自身の動きが前記のようであるので、SEM画面上での十字マークの位置は図1(b)右側のSEM画面に示されるように、例えば偏向電極に+5V,−5Vの逆電圧印加直後に画面左よりにあったものが、数秒から数十秒かかって右方向に移動し定位置に落ち付く。
【0064】
このように、有機物重合膜へのチャージアップ量を、電子ビーム(SEM画像)の時間的な位置ドリフト量によって電気的に計測できる。
【0065】
なお、同様の位置ドリフトはナイフエッジに有限の大きさのビームを停止させて偏向するときの反射電子または二次電子検出信号からも得ることができる。
【0066】
ここで、ナイフエッジとは2次元ではなくXY方向に独立した金属部と、シリコン部などとの境界であり、X方向またはY方向に伸びるエッジである。X方向の位置ドリフトを検出するときにはX方向のナイフエッジを用い、Y方向の位置ドリフトを検出するときにはY方向のナイフエッジを用いる。ナイフエッジ法を適用する場合にはビームを走査せず、ナイフエッジに対して静止させることで、信号量の変化を時間的に観察することでビームの位置ドリフト量が計測出来る。それはビームに幾ばくかの大きさがあるために、ビームがナイフエッジの上に乗った面積に比例した2次電子信号または反射電子信号がえられる。ビームがわずかに位置ずれを起こせばナイフエッジ上の面積変化に比例した信号変化が認められるためである。このように信号量と位置ドリフト量の間には完全な一対一の対応関係がある。
【0067】
上記の段落では位置ドリフト量の大きさから有機物重合膜の膜厚が電気的に計測できる。有機物重合膜の膜厚が大きいほどチャージアップ量が大きく位置ドリフト量が大きい。図1(a)の有機物重合膜のない状態から、図1(b)のような有機物重合膜が形成される状態との間の時間経過は短くとも数時間から数十時間かかる。
【0068】
そして、図1(a)と図1(b)との差にみられるように、前記ビーム位置ドリフト量の違いから有機物重合膜の厚みの差が電気的に計測されることがわかる。
【0069】
すなわち、偏向器における電圧印加を変更し、その状態を保った状態におけるSEM画像における十字マークが定位置に落ち着くまでの時間を計測することで、有機物重合膜の厚みが検出できる。
【0070】
従って、一旦有機物重合膜の膜厚を電気的に計測し、その後一定時間オゾン分子を流入させビーム照射を行いつつ、有機物重合膜の膜厚変化を生じせしめたのち、電気的な計測を実施して実際の有機物の膜厚変化量を検出し、検出された変化量に応じて、その使用状態における有機物重合膜の形成状態を検出することができる。
【0071】
本実施形態について図2、図3を使って説明する。白丸51〜白丸63は図2に示されており、白四角69〜70,黒四角71〜73は図3に示されている。
【0072】
まず、最初の状態で、オゾン分子流量が黒四角72に設定されている。このとき、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが、白丸51であった。そして、この状態で、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸52になった。さらに、次の一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸53になった。一定時間とは、数時間から数十時間以上を指す。
【0073】
前項では、このままではオゾン分子流量が過剰で将来的に有機物重合膜の膜厚はゼロとなり、クリーニング過剰の状態になっていくことが予想される。そこで、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸53となった時点で、オゾン分子流量を黒四角71に減少させる。一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸54である。さらに、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚が白丸55となり、ここで有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものはゼロとなる。さらに、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸56となり、オゾン分子流量を黒四角71の流量で有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものはゼロのままである。
【0074】
有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸57の状態で、オゾン分子流量を白四角69に切り替えると、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸58、さらに、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸59となる。ここで、オゾン分子流量を白四角70に切り替えた。一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸60となった。
【0075】
膜厚をゼロにするために、オゾン分子流量を黒四角71に戻した。一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸61となり、さらに、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸62でゼロとなる。さらに、一定時間のオゾン分子の流入とビーム照射の後、有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフト量で表したものが白丸63でゼロを保持する。
【0076】
以上によって、オゾン分子流量は黒四角71が必要最小量であることが分かる。従って、このオゾン分子ガスの供給流量を黒四角71に設定するとよいことがわかった。
【0077】
図4は本発明の実施形態に係る電子ビーム装置の断面図であって、電子銃102から電子ビーム103を射出して電子レンズおよび偏向器およびアパーチャを通過せしめて、整形ビームを形成し、試料107に照射する電子ビーム装置である。図4の一部分を拡大して図5に示す。図5は図4のA−A’とB−B’面で挟まれた部分を拡大した図である。密閉状の本体の内部の最上部に電子銃室101に電子銃102が配置され、電子銃102から放出されたれた電子ビームが最下部の試料室106内に配置された試料107に照射される。本体内の中間部分には、複数の部屋が仕切り形成されており、これらが真空室、偏向器などとして利用される。
【0078】
電子銃室101は、電子銃室用真空ポンプ111により真空引きされており、所定の真空状態に維持される。電子銃室101には、電子銃102が配置され、ここから電子ビームが図における下方に向けて射出される。電子ビームの中心位置が電子ビーム軸103である。
【0079】
電子銃室101の下方には、オリフィス109aとオリフィス109bに囲まれた二重オリフィスによる中空真空部110が形成してあり、ここが真空排気されている。電子ビームはここを通過して、下方に向けて照射される。
【0080】
中空真空部110の下方には、偏向器が設けられ、ここで電子ビームの方向が所定のものに設定される。この偏向器の上部空間も真空排気されている。
【0081】
偏向器の下方には、第1矩形アパーチャ131が配置される、真空室が設けられている。この真空室は試料室106とバルブを介し接続されている。
【0082】
真空室の下方には、例えば電子レンズが配置されており、その下方に、第1の中空真空室211が設けられている。この第1の中空真空室211は、電子ビーム軸103に直交する面内で真空を保つ第1の円板状真空壁201とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内で真空を保つ第2の円板状真空壁202で囲まれて形成されている。
【0083】
前記第2の円板状真空壁202に繋がる前記電子ビーム軸に沿った第1の細い径の円筒状真空壁212aを有し、さらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内で真空を保つ第3の円板状真空壁203で囲まれた第1のレンズユニットまたは偏向器ユニット212を具備している。
【0084】
その下方には、前記第3の円板状真空壁203とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内で真空を保つ第4の円板状真空壁204で囲まれた第2の中空真空部213が設けられている。
【0085】
さらに、前記第4の円板状真空壁204に繋がる前記電子ビーム軸に沿った第2の細い径の円筒状真空壁214aを有し、さらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内で真空を保つ第5の円板状真空壁205で囲まれた第2のレンズユニットまたは偏向器ユニット214が設けられている。
【0086】
また、前記第5の円板状真空壁205とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内で真空を保つ第6の円板状真空壁206で囲まれた第3の中空真空部215を具備している。
【0087】
そして、前記第2の中空真空部213にオゾン分子ガス231をオゾン分子ガス流入口241より流入せしめ、前記第1の中空真空部211の真空排気口242と前記第3の中空真空部215の真空排気口243から真空排気232せしめ、前記第1のレンズユニットまたは偏向器ユニットの円筒状真空壁212aで囲まれた円筒状真空部212bを前記オゾン分子ガスの流路とする。
【0088】
また、前記第2のレンズユニットまたは偏向器ユニットの円筒状真空壁214aで囲まれた円筒状真空部214bを前記オゾン分子ガスの流路とする。
【0089】
電子ビームに対する円筒状中空真空部の電子ビームに対する内壁に流れるオゾン分子流量については、ビーム位置ドリフト量およびチャージアップ量および有機物重合膜の膜厚が電子ビーム鏡筒内部で最大の箇所に着目し、一定時間のオゾン分子流入とビーム照射を行った後、ビーム位置ドリフト量およびチャージアップ量および有機物重合膜の膜厚を計測し必要最小限のオゾン分子ガス流量を決定し、必要最小値に制御する。
【0090】
図4に戻って説明する。電子銃からビームが出た直後にオリフィス109aとオリフィス109bに囲まれた二重オリフィスによる中空真空部110が形成してあり、真空排気されている。
【0091】
前記中空真空部110のオゾン分子と酸素分子濃度は小さく、電子銃室101の真空度はさらに高く、オゾン分子と酸素分子濃度は計測限界以下に近く、電子銃の寿命に全く影響を与えない真空度10×10-8Paにできる。
【0092】
このため、従来半年以下であった電子銃の寿命を、本発明の電子銃では2年以上とすることが実現できる。
【0093】
ここで、図6は従来技術を説明する図である。また、図7は従来技術の電子ビーム露光装置の鏡筒のコラム内の各領域と電流値及びオゾン濃度(分圧値)の関係を説明する図である。
【0094】
従来技術である特許文献3(特許第3827359号公報)では、第二のチャンバ内において、荷電粒子ビーム量が上流側から下流側に向かって減少する位置で、下流側のオゾン分子ガス濃度が上流側のオゾン分子ガス濃度よりも高くなるよう維持している。
【0095】
図8は本発明の実施形態の電子光学鏡筒内の各領域とビーム電流値及びオゾン分子ガス濃度の関係を説明する図である。
【0096】
オゾン分子流入口から流入したオゾン分子ガスは中空真空部から円筒状の真空部212b,214bを経由して上下に配設された中空真空部211,215の真空排気口から排気される。
【0097】
オゾン分子流入口を持つ中空真空部213のオゾン分子ガス分圧は、円筒状真空部212b,214bのオゾン分子ガス分圧より大きい。さらに、円筒状真空部212b,214bのオゾン分子ガス分圧は、真空排気口を持つ中空真空部211,215のオゾン分子ガス分圧より大きい。そのために、真空の小径の穴を通じて、オゾン分子ガスが中空真空部213から、円筒状真空部212b,214bの内壁に沿って、中空真空部211,215にオゾン分子ガスの流れが生じる。
【0098】
本実施形態では、従来例のようにオゾン分子ガス濃度は電子ビーム上流から下流に向かって単調に増加するのではない。図8のオゾン分子ガス濃度で示すように、オゾンガス導入口を有する中空真空部のオゾン分子ガス濃度は極大部264,265,266を形成する。一方レンズユニットまたは偏向器ユニットの中空真空壁のオゾン分子ガス濃度は中間部256,257,258,259,260,261,262を形成する。そして真空排気口を有する中空真空部のオゾン分子ガス濃度は極小部253,254,255となる。
【0099】
電子銃室は低いオゾン分子濃度であるべきであるので最小部250を形成する。二重オリフィス部110の中空真空部のオゾン分子ガス濃度は最小部250より若干高い値251を示し、さらに下段のオリフィス109の下部では値251よりも高い値252を形成する。試料室106のオゾン分子ガス濃度は極大部263となる。
【0100】
以上説明したように、本発明では、オゾン分子ガスを流入させ上下の流路に分岐させて、排気するために、オゾン分子ガス濃度は極大部、中間部、極小部を複数個持つ。
【0101】
図9は本発明の他の実施形態の断面図である。
【0102】
複数の電子銃102から電子ビーム103を射出して複数の並行して整列した電子レンズおよび複数の並行して整列した偏向器および複数の並行して整列したアパーチャを通過せしめて、整形ビームを形成し、試料107に照射するマルチ電子ビーム装置である。
【0103】
図10は本発明のマルチコラム電子ビーム装置におけるオゾン分子ガスの流路を示す図である。
【0104】
オゾン分子流入口241から流入したオゾン分子ガス231は、矢印のように中空真空部から複数個の円筒状の真空部の内壁212b,214bを経由して、上下に配設された中空真空部の真空排気口242,243から真空排気232される。
【0105】
各段の真空引きとオゾン分子流入に関して全てのマルチコラム形成用の複数のレンズに均一にオゾン分子が流れる保証はないので、これを制御することが必要である。
【0106】
複数個の円筒状真空部があると、そこを通るビーム電流も独立な値を持ち必要オゾン分子流量を決定するプロセスは実験の場合分けの数において膨大であり、容易に決定できず厳密に決めようとすると無限に近い膨大な時間を要する。
【0107】
本発明者らは、ビーム軸を通過するビーム電流値が、有機物重合膜の膜厚の増加または減少の比の値とは独立であることを発見した。マルチビームの全てのビームを同一値として実験を行い、最も有機物堆積の多い円筒状真空部のビームに対する内壁がクリーニングできるオゾン分子流量閾値を越えていれば、ビーム電流値を増加させた場合にも、中空真空部211,215へのオゾン分子流量の総合計値を変化させる必要はないということを発見したので、最小オゾン分子流量の決定が容易にできるようになった。
【0108】
図11は基板602に付着した有機物重合膜601をオゾン分子611が覆い、そこに電子線612が照射されることにより、有機物重合膜が一酸素炭素614および酸素分子613として剥離される。
【0109】
図12にあるように、基板702に付着した有機物重合膜701に高エネルギ電子線712が照射した場合には、化学反応が起こらずオゾン分子が剥離し、脱離することもある。クリーニングが効率的に行えるためには二次電子となって低エネルギ化することが必要である。 図13にあるように、所定電圧における入射電子および散乱電子および反射電子を有機物重合膜701と付着オゾン分子711に照射すると、残留有機物分子の重合反応による有機物重合膜堆積速度よりも、残留有機物分子が分解して一酸化炭素または二酸化炭素715として排気する速度が上回り、有機物重合膜701がクリーニングされる。
【0110】
ほとんど電子を散乱通過させないアパーチャの場合、例えばビーム整形のためのモリブデンの厚み20μm円形穴付きアパーチャの場合には、アパーチャの円形穴のエッジでビームが散乱する。一方ビーム整形のための矩形アパーチャは、エッジが直線部を持つ必要があるのでシリコンで出来ている。
【0111】
図14は、電子ビームの整形用アパーチャによる多重反射による二次電子化、低エネルギ化を説明する図である。図14(a)において厚いシリコンアパーチャ・吸収型アパーチャ811aではアパーチャの膜厚が約10μmと大きいので、多数の電子がアパーチャ内部で吸収されてしまい、エネルギを失った状態でシリコンアパーチャを透過する散乱電子814は個数が少ない。そのために厚いシリコンアパーチャ・吸収型アパーチャ811aの下部では低エネルギ電子の個数が少ないので、この部分では有機物重合もオゾン分子の分解も顕著ではない。しかしアパーチャ上面では反射電子が多く、多重反射による二次電子が大量に発生されて低エネルギ電子が多いために有機物重合もオゾン分子の分解は顕著である。
【0112】
一方図14(b)では厚いシリコンアパーチャ・吸収型アパーチャ811aよりも膜厚を2μmまで薄くしている薄いシリコンアパーチャ・散乱型アパーチャ811bを使用しているので、入射電子のエネルギ50kVに対しては入射電子数の50%以上は散乱しつつ通過する。入射電子がエネルギを失って透過し、真空中へ再度出てくるシリコンアパーチャを透過する散乱電子814が多い。シリコンアパーチャを透過する散乱電子814は低エネルギ化しており個数も多いので、透過型アパーチャのビーム進行方向においては有機物重合もオゾン分子の分解は顕著である。このように入射電子のみならず、反射電子や散乱電子でビーム軸に沿った円柱状の真空領域には多くの散乱ビームを含む低エネルギの電子ビームが常に充満している状態を形成すると、オゾン分子によるクリーニング効果は大きくなるので、オゾン分子の流量を小さくしても、クリーニング効果は衰えない。すなわち入射電子数が同じでも低エネルギ化した散乱電子が多い状態ではクリーニング効果を大きくすることができる。以上説明したように散乱型のアパーチャを使用すると、クリーニング効果を大きくすることができる。
【0113】
オゾンガスとしては高濃度オゾンガス、すなわち90%以上のオゾンガスを流すことが望ましい。90%以上のオゾン分子ガスを使用する方が望ましい理由は、同時に導入される酸素の量が減少し、酸化による電子銃の昇華速度を減少させるためである。願わくは、100%に限りなく近いオゾン分子ガスが望ましい。
【0114】
オゾン発生源として液化オゾン分子を用いれば、100%に近い濃度のオゾン分子ガスを得ることができる。100%に近い濃度のオゾン分子ガスを導入することにより、10%オゾン使用時に比較して、真空度の劣化は少なくとも10分の1以下となる。
【0115】
本発明は、オゾン分子流の流路を必ず確保することによって、一本または複数の電子ビームにおける複数の直径の小さな円筒状真空空間の全ての電子ビームに対向する面の有機物重合膜を除去するために、最小限までオゾン分子量を低減することを達成しつつ、数時間という時間経過の中でクリーニングする方法、及び有機重合膜の厚みに対応する物理量をチャージアップによるビーム位置ドリフトを電気的に計測することによって、必要最小限のオゾン分子量の設定・制御の方法を新規に提案しており、従来例には無かった発明をしている。
【0116】
最小限のオゾン分子流に制御する方法を以下に記す。
【0117】
定期的に各偏向器のチャージアップ量を時間的にデータ取得し、最大の傾斜をもって増加傾向にある偏向器があるならばオゾン分子流量を増加せしめ、有限の量のビーム位置ドリフトが存在してかつ減少する場合には、減少の傾斜が適切な傾斜でゼロに近づきかつ減少傾向にある状態に留まるようにオゾン分子流量を決定・制御せしめる。
【0118】
さらに長時間経過後、再度各偏向器のチャージアップ量を時間的にデータ取得し、ビーム位置ドリフトがゼロである場合には、オゾン分子流量を変化させる必要は無い。
【0119】
万が一、ビーム位置ドリフトがゼロでない場合には、オゾン分子流量を必要最小限量増加せしめる必要がある。一定時間の間に電子ビームを電子光学鏡筒内部に照射することによって、ビーム位置ドリフトがゼロになるまで、オゾン分子流量を増加せしめる。
【0120】
以上の手順により、オゾン分子流量を必要最小量に設定・制御できる。オゾン分子流量決定という作業に対して、この手順は論理的であり、装置を運転するうえで重要な制御性を付与するものである。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上、実施例を挙げて詳述したように、本発明によれば、電子ビーム装置で最小オゾン分子流量の決定が容易にできるようになり、必要最小量のオゾン分子によりクリーニングが効果的にでき、また電子光学鏡筒部品の酸化の副作用はない。さらに、電子ビーム描画装置について説明してきたが、電子ビーム検査装置についても本発明を適用することで同様な効果が期待できる。
【0122】
クリーニングは、オゾン分子流と電子ビームの照射によってなされるが、瞬時にクリーニングするためにオゾン分子流を過大に流す弊害の大きさに鑑み、基本的に数時間以上の一定時間経過の後にクリーニングができる必要最小限のオゾン分子流を制御して流すことが本発明の一つの特徴である。従来はオゾン分子のない時の真空度が1×10-4Paであったものを10万Paで1SCCM流して真空度が3×10-4Paとなっていた。本発明で、オゾン分子流を従来の1/10から1/100に減らすことができた。そのため、真空度はオゾン分子の無い時の真空度と全く変わりがなくできるようになった。
【0123】
前記の効果として、ポンプの劣化の防止、部品の酸化の防止、電子銃の長寿命化、真空ゲージの長寿命化が実現できた。
【0124】
本発明では、一本の電子光学鏡筒またはマルチの電子光学鏡筒の中で、有機物重合膜の膜上への最大のチャージアップ量を発現する電極対による電子ビームの照射位置ドリフト量を電気的に計測し、前記一定時間の間に前記電子ビームを電子光学鏡筒内部に照射することによって、前記チャージアップ量を発現する電極対による電子ビームの照射位置ドリフトの増減を電気的に計測し、前記有機物重合膜の増加量よりも、前記有機物重合膜の除去量の方がより多く、クリーニング機能を果たし、必要十分かつ最小の前記オゾン分子ガスの流量を制御し流入せしめることを特徴とする電子ビーム描画装置および電子ビーム検査装置とすることができる。
【0125】
最大のチャージアップ量を電気的に計測してオゾン分子流量を決定する。従来に比較して、オゾン分子流量を激減させたにも関わらず、オゾン分子のクリーニング効果の行き届かない箇所がなくなる。
【0126】
ビームが当たるアパーチャの上下面とそれに対向する面およびビームに対面する側壁で有機物重合膜が残るところが無くなる。すなわち、ビームが当たるアパーチャ上下面とそれに対向する面およびビームに対面する側壁がチャージアップすることはないので、ビーム位置ドリフトはゼロになる。従って、高安定な電子ビームコラムが実現でき、デバイス露光は0.1nm以下の高精度露光が可能となる。そのため、デバイスを通じて電子産業に対する貢献は多大なものとなる。
【符号の説明】
【0127】
51〜63 ビーム照射時間の推移に対応した有機物重合膜の膜厚をビーム位置ドリフトで表したもの
69〜73 オゾン分子流量
101 電子銃室
102 電子銃
103 電子ビーム光軸
104 円筒状電子光学鏡筒部
105 中空真空部
106 試料室
107 試料
108 ステージ
109a,109b 二重オリフィス
110 中空真空部
111 電子銃室用真空ポンプ
112 電子光学鏡筒排気用真空ポンプ
113 試料室用真空ポンプ
114 オゾン分子発生器
121 オゾン分子ガス流量用調整バルブ
122 真空排気口調整バルブ
131 第1矩形アパーチャ
132 第2矩形アパーチャ
133 円形穴付きアパーチャ
151 検出器
152 処理部
153 モニタ
201 第1の円板状真空壁
202 第2の円板状真空壁
203 第3の円板状真空壁
204 第4の円板状真空壁
205 第5の円板状真空壁
206 第6の円板状真空壁
211 第1の中空真空部
212 第1のレンズユニットまたは偏向器ユニット
212a 第1のレンズユニットまたは偏向器ユニットの円筒状真空壁
212b 第1のレンズユニットまたは偏向器ユニットの円筒状真空部
213 第2の中空真空部
214 第2のレンズユニットまたは偏向器ユニット
214a 第2のレンズユニットまたは偏向器ユニットの円筒状真空壁
214b 第2のレンズユニットまたは偏向器ユニットの円筒状真空部
215 第3の中空真空部
231 オゾン分子ガス流入
232 真空排気
241 オゾン分子ガス流入口
242,243 真空排気口
250 オゾン分子ガス濃度 最小部
251 オゾン分子ガス濃度 極小部a
252 オゾン分子ガス濃度 小量部
253,254,255 オゾン分子ガス濃度 極小部b
256,257,258,259 オゾン分子ガス濃度 中間部
260,261,262 オゾン分子ガス濃度 中間部
263 オゾン分子ガス濃度 極大部c
264,265,266 オゾン分子ガス濃度 極大部d
601 有機物重合膜
602 基板
611 オゾン分子
612 電子線
613 O2分子
614 CO分子
701 有機物重合膜
702 基板
711 オゾン分子
712 電子線
713 オゾン分子
714 O2分子
715 CO2分子
811a 厚いシリコンアパーチャ・吸収型アパーチャ
811b 薄いシリコンアパーチャ・散乱型アパーチャ
812 アパーチャに対向する上板
813 入射電子
814 シリコンアパーチャを透過する散乱電子
815 反射電子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃により発生された電子ビームを電子光学鏡筒内部を通過させ、電子ビームを成形してターゲットに向けて照射する電子ビーム装置であって、
前記電子鏡筒内部にオゾン分子ガスを供給するオゾン供給手段と、
前記電子鏡筒の電子ビーム通過経路の周辺面に付着する有機物付着量を電気的に計測する付着量計測手段と、
付着量計測手段で計測した有機物付着量に応じてオゾン供給手段によるオゾン分子ガスの供給量を制御する制御手段と、
を含む電子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ビーム装置において、
前記付着量計測手段は、電子ビームの偏向方向を切り換えた際に、電子ビームの偏向方向が付着した有機物のチャージアップによりドリフトすることに基づき計測する、電子ビーム装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子ビーム装置において、
前記付着量計測手段は、電子ビームを照射した試料の画像に基づき電子ビームのドリフトを検出する、電子ビーム装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子ビーム装置において、
前記制御手段は、電子ビームを電子光学鏡筒内部を介し一定時間照射した前後の前記有機物付着量の変化量に応じて、前記オゾン分子ガスの流量を制御することを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載する電子ビーム装置において、
前記電子ビームの電子ビーム軸に直交する面内に配置された第1の円板状真空壁とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第2の円板状真空壁で囲まれ、内部が真空に保持され、前記電子ビームを取り囲む第1の中空真空部と、
前記第1の中空真空室に連続し前記電子ビーム軸に沿って配置され、比較的細い径であって、前記電子ビーム軸の周囲に電子ビームを制御するレンズユニットまたは偏向器ユニットを有する第1の円筒状真空部と、
前記第1の円筒状真空部に連続し、前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第3の円板状真空壁とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第4の円板状真空壁で囲まれ、内部が真空に保持され、前記電子ビームを取り囲む第2の中空真空部と、
前記第1の中空真空室に連続し前記電子ビーム軸に沿って配置され、比較的細い径であって、前記電子ビーム軸の周囲に電子ビームを制御するレンズユニットまたは偏向器ユニットを有する第2の円筒状真空部と、
前記第2の円筒状真空部に連続し、前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第5の円板状真空壁とさらに前記電子ビーム軸に沿って進んだ位置で前記電子ビーム軸に直交する面内に配置された第6の円板状真空壁で囲まれ、内部が真空に保持され、前記電子ビームを取り囲む第3の中空真空部と、
を有し、
前記第2の中空真空部にオゾン分子ガスを流入せしめ、前記第1の中空真空部と前記第3の中空真空部から真空排気をせしめ、
前記第1の円筒状真空部および第2の円筒状真空部にオゾン分子ガスを流通することを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項6】
請求項5に記載する電子ビーム装置において、
前記第1の中空真空部は、前記電子ビームを発生する電子銃が配置される電子銃室に隣接し、この電子銃室と第1の中空真空部を区画する前記第1の円板状真空壁との間に、2重オリフィス層が形成されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載する電子ビーム装置において、
導入するオゾン分子ガスは、純度90%以上の高純度オゾン分子ガスであることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載する電子ビーム装置において
前記電子光学鏡筒内には電子ビーム整形用のアパーチャが設けられ、
このアパーチャとして、薄いシリコンアパーチャを用い、
シリコンアパーチャを透過する散乱電子の個数を多くし、これによって、オゾンによるクリーニング効果を大きくしたことを特徴とする電子ビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−151102(P2012−151102A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280768(P2011−280768)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【特許番号】特許第4945698号(P4945698)
【特許公報発行日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(311003259)株式会社PARAM (2)
【Fターム(参考)】