説明

電子ペーパーの製造方法および製造装置

【課題】簡便なプロセスでありながら隔壁の接着を確実に実施できるような電子ペーパーの製造方法を提供すること。
【解決手段】一方の基板上に所定のパターンで隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記隔壁上に接着層を形成する接着層形成工程と、前記接着層が形成された後に、前記隔壁で区画された領域に前記表示媒体を充填する表示媒体充填工程と、前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を平行に載置することによって、前記表示媒体を仮封止する仮封止工程と、前記隔壁上の前記接着層上に前記他方の基板を接着することによって、仮封止されていた前記表示媒体を封止する他方基板接着工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーを製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパーは、空気中または溶媒中の粒子移動を利用して情報を表示する装置である。通常、2枚の基板間の粒子の移動状態が制御され、それによって所望の表示が実現されるように構成される。
【0003】
電子ペーパーは、印刷物レベルの視認性(目にやさしい)、情報書き換えの容易性、低消費電力、軽量といった利点を享受でき、省エネルギーならびに省資源化へとつながる。
【0004】
電子ペーパーでは、しかし、粒子の沈降や偏在に起因して、表示の不良、特にコントラストの低下が生じることがある。この現象を防止するべく、上下の電極基板間に隔壁を形成して、粒子の移動空間を微小な空間に分割することが採用されている。この微小な空間は、セルあるいは画素と呼ばれている。各セルの中に、移動粒子、あるいは移動粒子を含むインクが封入されている。
【0005】
ここで、基板となる素材がフィルムである場合には、当該フィルムが比較的容易に変形してしまうため、隔壁と電極基板との間に空隙が生じやすいという問題がある。従って、隔壁と電極基板との間を確実に接着して、隔壁と電極基板との間をインクが通過移動することを防止することが重要である。
【0006】
特開2006−184893号公報(特許文献1)には、基板上に形成した隔壁の上面に高精度かつ安価に接着剤層を形成して、電子ペーパーを製造する方法が開示されている。具体的には、接着剤(紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂)が塗工されたロールを回転させることで、常温下で、当該接着剤を隔壁上に転写させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−184893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件発明者は、特開2006−184893号公報(特許文献1)に開示された技術について、接着剤の溶媒が揮発することに伴う問題点が存在することを知見した。すなわち、接着剤の溶媒の揮発によって、当該接着剤塗布後の表面が凹凸状態となる場合があり、その際には接着が不完全となってしまう。さらに、接着剤の溶媒の揮発によって、当該接着剤が所望の塗布場所以外のセル内領域、あるいは画素領域に入り込んで表示品質を低下させてしまうという問題も知見された。
【0009】
本発明は、このような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、簡便なプロセスでありながら接着剤を隔壁上にのみ塗工し、隔壁の電極基板との接着を確実に実施できるような、電子ペーパーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも一方が透明である対向する2枚の基板間に表示媒体が封入されていて、前記表示媒体が所定の情報を表示する、電子ペーパー、を製造する方法であって、一方の基板上に所定のパターンで隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記隔壁上に接着層を形成する接着層形成工程と、前記接着層が形成された後に、前記隔壁で区画された領域に前記表示媒体を配置する表示媒体配置工程と、前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を平行に載置することによって、前記表示媒体を仮封止する仮封止工程と、前記隔壁上の前記接着層上に前記他方の基板を接着することによって、仮封止されていた前記表示媒体を封止する他方基板接着工程と、を備え、前記接着層形成工程は、ヒートシール剤が形成された転写フィルムを用いて当該ヒートシール剤を熱転写させることによって実施され、前記他方基板接着工程は、接着層として転写された前記ヒートシール剤を軟化させて接着力を得る加熱工程を含むことを特徴とする電子ペーパーの製造方法である。
【0011】
本発明によれば、ヒートシール剤を接着剤として用いることにより、簡便なプロセスでありながら隔壁と他方の基板との接着を確実に実施できる。また、ヒートシール剤を熱転写する際に転写フィルムを用いることにより、隔壁上への高精度のアライメントが不要である一方、隔壁上面のみに確実にヒートシール剤を熱転写できる。そして、隔壁上の接着層上に他方の基板を平行に載置してから、当該他方の基板の接着を行うことにより、他方基板接着工程において表示媒体内に気泡が混入するおそれを顕著に低減することができる。
【0012】
本件発明者は、本願発明による仮封止工程の有効性を知見する前は、表示媒体を多めに充填しておくことによって、他方基板接着工程における当該表示媒体への気泡の混入を防止するという対策を取っていたが、そのような対策は、表示媒体の損失(ロス)の問題及び表示媒体による汚染の問題を生じさせていた。本願発明による仮封止工程は、これらの問題を解消するという顕著な作用効果をもたらし、表示媒体の損失(ロス)を低減させることにより省資源化につながる。
【0013】
なお、本願発明の電子ペーパーの表示方式としては、公知のものを適用することができ、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、粉体移動方式(電子粉流体方式、帯電トナー型方式)、液晶表示方式、サーマル方式(発色方式、光散乱方式)、エレクトロクロミック方式、エレクトロウェッティング方式、磁気泳動方式などが適用可能である。
【0014】
前記仮封止工程は、減圧雰囲気下で行われることが好ましい。そのような場合、表示媒体内に気泡が混入するおそれを、より一層低減することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記他方基板接着工程は、さらに両基板の周辺部を熱圧着する熱圧着工程を含む。この場合、他方の基板がより確実に接着される。
【0016】
その他、好ましくは、前記接着層形成工程は、さらに前記転写フィルムを加熱しながら剥離する加熱剥離工程を含む。そのような加熱剥離工程によれば、隔壁パターンについて所望の形状精度を得ることが容易となる。
【0017】
また、好ましくは、前記接着層形成工程においては、前記ヒートシール剤が熱可塑性材料からなる。接着層として熱転写されたヒートシール剤は、熱可塑性材料からなる場合においては、常温においてはタック(ねばつき)が無いため、取り扱いの便宜が極めて良い。また、タック(ねばつき)が無いことによって、その後の表示媒体配置工程が容易である。例えば、スキージ等を用いて表示媒体を配置しても、表示媒体がヒートシール剤と接着してしまうことがない。
【0018】
そして、ヒートシール剤が熱可塑性材料からなる場合においては、ヒートシール剤が加熱されることで他方の基板が確実に接着されるので、他方の基板が変形しても接着部分が剥離することがなく、すなわち、表示媒体が不所望に移動してしまうような空隙は生じない。また、他方の基板の接着時に区画領域(例えばセル)内に不純物が入り込むおそれもないため、表示品質の低下のおそれがない。そして、他方の基板の接着後のヒートシール剤は、常温においてはタック(ねばつき)が無いため、やはり表示媒体がヒートシール剤と接着してしまうことがなく、この点でも表示品質の低下のおそれがない。
【0019】
また、好ましくは、前記他方基板接着工程は、さらに所定の加圧力を付与して接着力を得る加熱加圧工程である。この場合、他方の基板がより確実に接着される。
【0020】
また、好ましくは、前記ヒートシール剤の厚みは、1〜100μmである。さらに好ましくは、1〜50μm、特に好ましくは、1〜10μmである。
【0021】
また、好ましくは、前記隔壁の厚みは、5〜100μmである。さらに好ましくは、10〜50μmである。
【0022】
また、本発明は、少なくとも一方が透明である対向する2枚の基板間に表示媒体が封入されていて、前記表示媒体が所定の情報を表示する、電子ペーパー、を製造する装置であって、一方の基板上に所定のパターンで隔壁を形成する隔壁形成装置と、前記隔壁上に接着層を形成する接着層形成装置と、前記接着層が形成された後に、前記隔壁で区画された領域に前記表示媒体を配置する表示媒体配置装置と、前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を平行に載置することによって、前記表示媒体を仮封止する仮封止装置と、前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を接着することによって、仮封止されていた前記表示媒体を封止する他方基板接着装置と、を備え、前記接着層形成装置は、ヒートシール剤が形成された転写フィルムを用いて当該ヒートシール剤を熱転写する構成を有しており、前記他方基板接着装置は、接着層として転写された前記ヒートシール剤を軟化させる構成を有していることを特徴とする電子ペーパーの製造装置である。
【0023】
前記仮封止装置は、減圧雰囲気下で稼働することが好ましい。そのような場合、表示媒体内に気泡が混入するおそれを、より一層低減することができる。
【0024】
また、好ましくは、前記他方基板接着装置は、さらに両基板の周辺部を熱圧着する熱圧着装置を含む。この場合、他方の基板をより確実に接着できる。
【0025】
好ましくは、前記接着層形成装置は、さらに転写フィルムを加熱しながら剥離するように構成されている。そのような加熱剥離工程によれば、隔壁パターンについて所望の形状精度を得ることが容易となる。
【0026】
また、好ましくは、前記接着層形成装置においては、前記ヒートシール剤が熱可塑性材料からなる。接着層として熱転写されたヒートシール剤は、熱可塑性材料からなる場合においては、常温においてはタック(ねばつき)が無いため、取り扱いの便宜が極めて良い。また、タック(ねばつき)が無いことによって、その後の表示媒体配置工程が容易である。例えば、スキージ等を用いて表示媒体を配置しても、表示媒体がヒートシール剤と接着してしまうことがない。
【0027】
そして、ヒートシール剤が熱可塑性材料からなる場合においては、ヒートシール剤が加熱されることで他方の基板が確実に接着されるので、他方の基板が変形しても接着部分が剥離することがなく、すなわち、表示媒体が不所望に移動してしまうような空隙は生じない。また、他方の基板の接着時に区画領域(例えばセル)内に不純物が入り込むおそれもないため、表示品質の低下のおそれがない。そして、他方の基板の接着後のヒートシール剤は、常温においてはタック(ねばつき)が無いため、やはり表示媒体がヒートシール剤と接着してしまうことがなく、この点でも表示品質の低下のおそれがない。
【0028】
前記他方基板接着装置は、さらに所定の加圧力を付与するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡便なプロセスでありながら接着剤を隔壁上にのみ塗工し、隔壁の電極基板との接着を確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による電子ペーパーの製造方法を概略的に示すフロー図である。
【図2】図2は、隔壁形成工程の一例を概略的に示す図である。
【図3】図3は、接着層形成工程の一例を概略的に示す図である。
【図4】図4は、表示媒体配置工程の一例を概略的に示す図である。
【図5】図5は、導電性ペーストの機能を説明するための概略図である。
【図6】図6は、上下基材貼合工程の仮封止工程を概略的に示す図である。
【図7】図7は、上下基材貼合工程の他方基板(上側基板)接着工程を概略的に示す図である。
【図8】図8は、転写フィルムの剥離工程の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施の形態による電子ペーパーの製造方法を概略的に示すフロー図である。図2は、隔壁形成工程の一例を概略的に示す図である。図2に示すように、まず、一般には水平方向に載置される下側基板11(一方の基板:バックプレーン基材(BP))の上面に、例えばフォトリソグラフィ法にて、紫外線(UV)照射による露光→現像→焼成によって、所定のパターンに隔壁12が形成される。隔壁12は、後述する複数のセルの下面と側面とを規定する部材である。隔壁の厚みは、5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0032】
次に、隔壁12上に接着層が形成される(接着層形成工程)。図3は、接着層形成工程の一例を概略的に示す図である。図3に示す接着層形成工程では、まず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる転写フィルム基材21にヒートシール剤22(以下、「接着層」とも言う。)が塗工されることによって、転写フィルム20が作成される。ヒートシール剤22は、1〜100μmの厚みで塗工される。好ましくは、1〜50μmの厚みで塗工され、特に好ましくは、1〜10μmの厚みで塗工される。ヒートシール剤22は、後述するように、熱可塑性樹脂によって構成されている。
【0033】
そして、そのような転写フィルム20のヒートシール剤側の面が、隔壁12上に載せられ、転写フィルム20の自重のみがかかる状態で、あるいは、さらに所定の押圧力を受けながら、その軟化温度を超える温度にまで加熱される(加熱貼合:熱転写)。その後、転写フィルム20を剥離すると、ヒートシール剤22が隔壁12上に熱転写された状態で残る。
【0034】
ここでの押圧力としては、0.01〜0.7MPaが好ましく、特には0.1〜0.4MPaが好ましい。押圧力が小さいと、転写フィルムからのヒートシール剤の転写が不十分である。一方、押圧力が大き過ぎると、ヒートシール剤が潰れてセル内に入り込んでしまったり、隔壁パターン以外のヒートシール剤をも転写されてしまう可能性がある。
【0035】
なお、本発明の効果を奏する限りにおいては、すべての隔壁12上にヒートシール剤22を熱転写してもよいし、一部の隔壁12上にのみヒートシール剤22を熱転写してもよい。例えば、周縁部の隔壁12上にのみヒートシール剤22を熱転写してもよい。
【0036】
図1に戻って、接着層(ヒートシール剤)22が形成された後に、隔壁12または隔壁12及び接着層22で区画された各領域に、表示媒体としてのインキ13が配置される(表示媒体配置工程)。図4は、表示媒体配置工程の一例を概略的に示す図である。ここでは、(1)ディスペンサ31あるいはインクジェット、ダイコートからインキ13が滴下され、(2)中央スキージ32あるいはドクターブレード、ドクターナイフによって面内均一となるようにインキ13が塗工され、(3)更に両端スキージ33a、33bあるいはドクターブレード、ドクターナイフ、材質はウレタンゴム、シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等によって、はみ出た余剰インキが掻き取られ、(4)最後にワイパ34によって、一辺側に集まった余剰インキが拭き取られる。
【0037】
図1に戻って、表示媒体配置工程の後で、導電性ペースト塗布工程が実施される。図5は、導電性ペーストの機能を説明するための概略図である。導電性ペースト14は、例えば銀ペーストのような金属ペーストであり、例えばディスペンサ41あるいはインクジェット、タンポ印刷、パット印刷、スタッピング印刷によって所定位置に塗布される。導電性ペースト14は、図5に示すように、後述する上側基板16(他方の基板:フロントプレーン基材(FP))に電圧をかけるための配線として機能する。
【0038】
その後、隔壁12上の接着層22上に、下側基板11に対して対向する上側基板16が接着される(上下基板貼合工程)。これにより、複数のセルの各上面が規定されて、表示媒体(インキ13)が各セル内に封止される。
【0039】
ここで、図6及び図7を用いて、本実施の形態の上下基板貼合工程について詳しく説明する。図6及び図7に示すように、上下基板貼合工程は、仮封止工程(図6)と他方基板接着工程(図7)とを含んでいる。他方基板とは、本実施の形態では、上側基板16である。
【0040】
仮封止工程では、図6に示すように、上側基板16(他方基板)の上面に上側金属板71を固定し、下側基板11の下面に下側金属板72を固定した状態で、上側金属板71の上方に、バルーン固定金属板73に固定された膨張・収縮可能な下方側に凸状のバルーン75が位置決めされる。バルーン75は、例えば、シリコーンシート製である。
【0041】
そして、バルーン75が膨張することによって、上側金属板71が下側金属板72及びバルーン固定金属板73に対する平行を維持したままで、下側金属板72に向けて下降するようになっている。このような平行関係維持のために、上側金属板71の四隅には、鉛直方向に延びる案内レール機構(不図示)が設けられている。
【0042】
上側金属板71、下側金属板72、バルーン固定金属板73、バルーン75、及び、不図示の案内レール機構が、仮封止装置の構成要素である。そして、これらの構成要素は、本実施の形態では、真空チャンバ80内に設置されていて、減圧雰囲気(好ましくは真空雰囲気)にて稼働するようになっている。
【0043】
仮封止工程は、以下のように行われる。すなわち、上側基板16(他方基板)の上面に上側金属板71が固定され、下側基板11の下面に下側金属板72が固定され、上側金属板71の上方に、バルーン固定金属板73に固定された膨張・収縮可能なバルーン75が位置決めされる。そして、これらの環境雰囲気が、真空チャンバ80の真空引きによって減圧雰囲気とされる。そのような減圧雰囲気下で、バルーン75が膨張を開始する。バルーン75が上側金属板71を下方に押しつけることによって、上側金属板71が下降を始める。この時、不図示の案内レール機構によって、上側金属板71は、下側金属板72及びバルーン固定金属板73に対する平行を維持した状態で下降する。これにより、隔壁12上の接着層22上に上側基板16(他方基板)が平行に載置され、インキ13内に気泡を混入させることなく、インキ13を仮封止することができる。
【0044】
その後、バルーン75が収縮することによって上側金属板71の押圧力は解放される。その後、上側金属板71及び下側金属板72が各基板から取り外される。
【0045】
本実施の形態では、上側金属板71及び下側金属板72の2枚の金属板間で貼合わせることにより、隔壁12上の接着層22と上側基板16の貼合面の平行度を高精度に維持でき、反りなく貼合することができる。また、本実施の形態では、接着層であるヒートシール剤が熱可塑性樹脂によって構成されているため、常温においてはタック(ねばつき)が無く弱い接着性なので、常温で上側金属板71を下方に押しつけた時に気泡の逃げ道があるため、気泡混入が軽減できる。
【0046】
なお、仮封止工程は、隔壁12上の接着層22上に上側基板16が平行に載置することができる機構であれば、本実施の形態のバルーン固定金属板73に固定された膨張・収縮可能なバルーン75に限られず、一般的に汎用されるプレス装置により、上側金属板71を下側金属板72に押しつけることでもよい。
【0047】
続いて、他方基板接着工程は、図7に示すように、接着層として転写されたヒートシール剤22を加熱させて接着力を得るようになっている。具体的には、ラミネータ91によって所定のラミネート圧力を付与しながら、ヒートシール剤22を周辺からその軟化温度を超える温度にまで加熱して軟化させることによって、インキ13を仮封止している隔壁12と上側基板16とを強固に接着する。結果から見れば、隔壁12に対してヒートシール22を介して接着された基板が上側基板16と称され、隔壁12が直接に形成された基板が下側基板11と称されていたことになる。
【0048】
本実施の形態では、ラミネータ91による接着の後で、さらに両基板11、16の四辺(周辺部)を熱圧着する熱圧着工程が実施される。具体的には、両基板11、16の四辺(周辺部)の下方にホットプレート92を敷いておいて、両基板11、16の四辺部を内側から外側に金属片93でラミネート圧を加えることで実施される。このような熱圧着工程が実施される場合、両基板11、16はより強固に接着される。
【0049】
その後、図1に示すように、ギロチン、上刃スライド装置、レーザカット装置、レーザーカッター等の断裁装置51によって所定のサイズに断裁され、さらにその後、外周封止処理が施されて、所望の電子ペーパーの製造が完了する。
【0050】
本実施の形態によれば、ヒートシール剤22を接着剤として用いることにより、簡便なプロセスでありながらセル形成のための隔壁12と上側基板16との接着を確実に実施できる。また、ヒートシール剤22を熱転写する際に転写フィルム20を用いることにより、隔壁12上への高精度のアライメントが不要である一方、隔壁12上面のみに確実にヒートシール剤22を熱転写できる。
【0051】
また、接着層として熱転写されたヒートシール剤22は、熱可塑性材料からなる場合においては、常温においてはタック(ねばつき)が無いため、取り扱いの便宜が極めて良い。また、タック(ねばつき)が無いことによって、その後の表示媒体配置工程が容易である。具体的には、スキージあるいはドクターブレード、ドクターナイフ等を用いて表示媒体を配置しても、表示媒体(インキ13)がヒートシール剤22と接着してしまうことがない。
【0052】
そして、ヒートシール剤22が熱可塑性材料からなる場合においては、ヒートシール剤22が加熱されることで上側基板16が確実に隔壁12と接着されるので、上側基板16が変形しても接着部分が剥離することがなく、すなわち、表示媒体が不所望に移動してしまうような空隙は生じない。また、上側基板16の接着時にセル内に不純物が入り込むおそれもないため、表示品質の低下のおそれがない。そして、上側基板16の接着後のヒートシール剤22は、常温においてはタック(ねばつき)が無いため、やはり表示媒体がヒートシール剤22と接着してしまうことがなく、この点でも表示品質の低下のおそれがない。
【0053】
そして、隔壁12上の接着層22上に上側基板(他方基板)16を平行に載置してから、当該上側基板16の接着を行っているため、他方基板接着工程(図7)において表示媒体(インキ13)内に気泡が混入するおそれを顕著に低減することができる。従って、インキ13を多めに充填しておくというような従来の対策が不要であり、インキ13の損失(ロス)の問題や、インキ13による汚染の問題を顕著に改善することができる。
【0054】
また、本実施の形態の仮封止工程(図6)は、減圧雰囲気下で行われている。この場合、表示媒体(インキ13)内に気泡が混入するおそれを、より一層低減することができる。
【0055】
なお、本発明に用いられる表示媒体は、電子ペーパーの表示方式に応じて適宜選択されるものである。電子ペーパーの表示方式としては、公知のものを適用することができ、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、粉体移動方式(電子粉流体方式、帯電トナー型方式)、液晶表示方式、サーマル方式(発色方式、光散乱方式)、エレクトロクロミック方式、エレクトロウェッティング方式、磁気泳動方式などが挙げられる。以下、本発明の形態では電気泳動方式の電子ペーパーに用いられる場合の表示媒体を例に挙げて説明する。
【0056】
次に、表示品質の低下がないことを確認するために実際に行われた実施例について説明する。
【0057】
当該実施例の下側基板11は、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人・デュポン社製)にCu電極が設けられた電極基板であった。
【0058】
当該下側基板11に、ネガ型感光性樹脂材料(デュポンMRCドライフィルムレジスト(株)製のドライフィルムレジスト)を30μmの厚さにラミネートして100℃、1分間の条件でプリベークし、次いで露光マスクを使用して露光(露光量500mJ/cm)し、その後、1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を30秒行い、200℃、60分間の条件でポストベークすることで、隔壁12が形成された。形成された隔壁12は、ピッチ600μm、開口90%の格子形状であった。
【0059】
そして、転写フィルム基材21として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人・デュポン社製)が用いられ、これにヒートシール剤22(バイロンUR1400、東洋紡製)がダイコータにて塗布され、乾燥された。これにより、10μmの接着層22を有するロール状の転写フィルム20が作製された。
【0060】
そして、隔壁12の上面に転写フィルム20が載せられた状態で、所定の押圧力をさらに付与しつつ、ヒートシール剤22の周辺がその軟化温度を超える温度、例えば100度程度にまで加温され、その結果、ヒートシール剤22が隔壁12上に熱転写された。
【0061】
ヒートシール剤22の厚さは、10μmであった。また隔壁12の厚さは、29μmであった。
【0062】
続いて、表示媒体として、以下の成分を有するインキ13が用いられ、ディスペンサ31から滴下されて、中央スキージ32(ニューロング製のスキージ1:ウレタン樹脂製)にてスキージ処理されて、各セル内に充填された。基板幅方向にはみ出した余剰インキは、別の両端スキージ33a、33b(ニューロング製のスキージ2:ウレタン樹脂製)にて掻き取られ、さらにロールワイパ34にて拭き取られた。
【0063】
<インキ成分>
・電気泳動粒子(二酸化チタン)・・・60重量部
・分散液 ・・・40重量部
続いて、パターン外周の一部(2mm×2mmの正方形領域)に、銀ペースト(藤倉化成製)がディスペンサ41によって点塗布された。
【0064】
次いで、上側基板16として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人・デュポン社製)の一方の面に透明電極として酸化インジウムスズ(ITO)蒸着膜(厚さ0.2μm)が設けられた電極基板が用いられて、接着層22上に載せられた。具体的には、図6に示すような仮封止工程が減圧雰囲気下で実施された後、図7に示すような他方基板接着工程が100度程度の大気圧下(常圧雰囲気下)で実施された。その結果、接着層22が隔壁12と上側基板16とを強固に接着した。なお、上下基板の透明電極としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等が、スパッタリング、真空蒸着法、CVD法などの一般的な成膜方法によって形成される。
【0065】
他方基板接着工程におけるラミネータ91による押圧力としては、0.01〜0.7MPaが好ましく、特には0.1〜0.4MPaが好ましい。押圧力が小さいと、上下基板が十分に接着しない。一方、押圧力が大き過ぎると、接着剤が潰れてセル内に入り込んで粒子が付着してしまったり、インキが流出するなどしてコントラストが低下したりして、表示性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0066】
その後、所定のサイズに断裁され、上下両方の電極基板11,16の周辺にディスペンサ(不図示)を用いて紫外線硬化樹脂(イー・エッチ・シー(株)製:LCB−610)を塗工して封止し、紫外線を露光(露光量700mJ/cm)して硬化させた(外周封止処理)。
【0067】
以上のようにして得られた電子ペーパーについて、上下電極間に80Vの直流電圧を印加した後のコントラストを観察したが、極めて良好であった。
【0068】
以上の実施例においては、ヒートシール剤22として、バイロンUR1400(東洋紡製)が転写フィルム20に塗布されていたが、バイロンUR1400に代えて、バイロンUR3200(東洋紡製)が用いられてもよい。バイロンUR3200を用いる場合でも、加熱貼合の温度としては、100度程度が採用される。本件発明者によれば、加熱貼合の温度について、あまり高温にし過ぎると材料収縮によって「うねり」が生じて、基板との密着性が損なわれることが知見された。本件発明者によれば、150度以下が好ましく、120度以下がより好ましく、80度以下が更に好ましい。
【0069】
しかしながら、バイロンUR3200を用いる場合には、常温環境下で転写フィルム20を剥離すると、隔壁パターンについて所望の形状精度が得られないことが知見された。
【0070】
そして、本件発明者は、転写フィルム20の剥離の際についても、加熱によって温度を高めることが有効であることを知見した。
【0071】
具体的には、図8に示すように、転写フィルム20の剥離の際に、転写フィルム基材21と下側基板11を介して上下の加熱ロール61にてヒートシール剤22を加熱することが有効であった。この場合の加熱温度に関する実験結果について、以下に表として示す。
【0072】
転写性に関する項目として、隔壁パターンの形状精度(×:転写しない、△:部分転写、○:全転写)、隔壁内への液ダレの有無(×:液ダレ有、○:液ダレ無)、糸引きの有無(×:糸引き有、△;部分的に糸引き有、○:糸引き無)、膜厚のばらつきの有無(×:ばらつき有、○:ばらつき無)、の4項目が評価された。また、接着性についても評価された(×:接着しない、△:容易に剥がれる、○:接着性良好)。
【0073】
隔壁パターンの形状精度、隔壁内への液ダレの有無、糸引きの有無、の3項目については、光学顕微鏡を用いての外観観察によって評価された。膜厚ばらつきは、デクタック触針式段差計を用いた測定結果から評価された。接着性は、テンシロンを用いたJIS規格K6854−3に従うT字剥離試験に基づいて評価された。
【表1】

【0074】
表に示された実験結果から、転写フィルム20の剥離の際に加熱することは、転写性ないし接着性の向上に有効であることが分かる。特に、100度程度に加熱することが好ましいことが分かる。
【0075】
なお、図8では、転写フィルム基材21の方が水平方向軌道から上方に浮き上がるような軌道上を案内されている(角度にして略90度)が、下側基板11の方を水平方向軌道から下方に沈み込むような軌道上に案内させる(角度にして略90度)ことによっても、剥離は実現され得る。その場合、重力による影響に相違があるが、剥離に好適な温度に関する前記実験結果には相違は生じなかった。
【0076】
さらに、前記の態様では、一旦ヒートシール剤を加熱貼合してから、再度加熱して剥離するというステップを踏んでいるが、加熱貼合と加熱剥離との間で好適な加熱温度が略等しいという結果から、加熱貼合と加熱剥離とを同時に融合的に実施することも可能であることが確認された。具体的には、貼合のために加熱された直後に、転写フィルム基材21を水平方向軌道から上方に浮き上がるように案内する、あるいは、下側基板11を水平方向軌道から下方に沈み込むように案内することで、加熱貼合と加熱剥離とを同時に融合的に実施することが可能である。
【0077】
次に、本発明の製造対象としての電子ペーパーの各部材の材料ないし特性等について、さらに詳しく説明する。
【0078】
下側基板11としては、樹脂フィルム、樹脂板、ガラス、エポキシガラス(ガラエポ)、セラミックス等の表面に金属等の導電性材料によって電極が形成されたものが用いられ得る。あるいは、金属板や、光透過性の基材が用いられてもよい。不透明な基材としては、電極面とは異なるもう一方の面を粗面下した不透明なガラス基材、電極面とは異なるもう一方の面に金属膜を蒸着した不透明な基材、染料や顔料を練り込んだ不透明樹脂基材、等が用いられ得る。
【0079】
下側基板11の厚みは、10μm〜1mmが好適である。10μmよりも薄いと、パネルとしての強度を得ることができず、破損に至る危険度が増す一方、1mmよりも厚いと、パネル重量が重くなり過ぎて取り扱いが不便になるし、コストも高くなるからである。破損しにくく取り扱いが容易である好適な厚みの範囲は、50μm〜300μm程度である。
【0080】
下側基板11の表面には、メッキ処理による酸化防止処理が施されてもよい。また、下側基板11の裏面(外側)には、バリア層が設けられてもよい。バリア層の機能は、インキが水分を吸着することによる表示劣化を防止することである。バリア層は、 上側基板は透明、下側基板は透明でも不透明でも良く、無機膜を蒸着することで得られる。あるいは、予めバリア層が形成されたフィルムが貼り合わせられてもよい。下側基板11の電極パターンの形成は、フォトリソ法、レーザ描画法、インクジェット法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、等によって行われ得る。下側基板11として、TFT基板が用いられてもよい。
【0081】
下側基板11は、ロール状でもシート状でもどちらでも適用可能である。
【0082】
隔壁12は、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂等によって構成可能であり、前述のように、5〜100μmの厚みに形成されることが好適である。5μm以下では、充填するインキ量が少なく、十分な表示特性、特にコントラストが得られない一方、100μm以上では、パネルの厚みが厚すぎて、駆動電圧が上昇し過ぎてしまう。低駆動電圧で良好な表示特性が得られるという観点から、10〜50μmの範囲の厚みが好適である。
【0083】
隔壁12のパターン形状は、円、格子、多角形など、基本的に任意である。開口率は、70%以上が好ましく、特に90%以上が好ましい。高開口率であるほど、表示可能エリアが広くなるため、高コントラストを得ることができる。
【0084】
隔壁12の形成方法は、フォトリソグラフィ法の他、エンボス加工などの型転写方法も採用され得る。さらに、メッシュ加工の構造物を隔壁として製造しておいて、それを下側基板11に貼り付けるという方法も採用され得る。
【0085】
ヒートシール剤22としては、熱可塑性材料を用いたものが好ましく、加熱により軟化して、冷却すると固化する性質を有し、冷却と加熱を繰り返した場合に、塑性が可逆的に保たれる材料である。熱可塑性材料からなるヒートシール剤を接着剤として用いた場合には、転写フィルム基材上の固化しているヒートシール剤をその軟化温度を超える温度にまで加熱することにより軟化させて、隔壁上面のみに確実にヒートシール剤を熱転写できる。また、熱転写後のヒートシール剤は常温まで冷却して再び固化することにより、タック(ねばつき)が無くなるため、取り扱いの便宜が極めて良い。また、タック(ねばつき)が無いことによって、セル内に充填された表示媒体がヒートシール剤と接着してしまうことがない。そして、再び隔壁上面のヒートシール剤をその軟化温度を超える温度にまで加熱して軟化させることにより、タック(ねばつき)を有するようになるため、他方の基板が確実に接着される。他方の基板の接着後のヒートシール剤は、再び常温においてはタック(ねばつき)が無いため、やはり表示媒体がヒートシール剤と接着してしまうことがなく、表示品質の低下のおそれもない。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタンなどの熱可塑性ベースポリマーや、天然ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体などの熱可塑性エラストマーを主成分とし、粘着性付与樹脂や可塑剤を配合した樹脂が主に使用される。
【0086】
ヒートシール剤22の軟化温度とは、ヒートシール剤22の種類により、ヒートシール剤22のガラス転移温度(Tg)または溶融温度(Tm)でもよく、150℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、80℃以下が特に好ましい。特に、基材フィルム11、16のガラス転移温度よりもヒートシール剤22の軟化温度の方が高いと、基材フィルム11、16が収縮して皺が発生するおそれがあるので好ましくない。さらに、ヒートシール剤22の軟化温度が高いと、基材フィルム11、16の収縮によって生じたうねりでリブと基材の密着性が低下し、熱剥離する際にリブが基材から剥がれてしまう。また、インキ13の熱分解温度(ここでいう熱分解とは、インキ13に含まれる溶剤、添加剤、粒子等が加熱によって揮発する等により、インキ13の化学的性質(様相)が変化することを意味する)よりもヒートシール剤22のが軟化する温度の方が高いと、インキ13の熱分解による表示性能の低下のおそれが生じるので好ましくない。
【0087】
ヒートシール剤22は、前述のように、1〜100μmの厚みに形成されることが好適である。1μm以下では、十分な接着性能が得られない。一方、100μm以上では、パネルの厚みが厚すぎて、駆動電圧が上昇し過ぎてしまう。接着性が良好で且つ低駆動電圧で良好な表示特性が得られるという観点から、1〜50μmの範囲の厚みが好適であり、1〜10μmの範囲の厚みが特に好適である。
【0088】
隔壁12とヒートシール剤22との密着性を上げるために、隔壁12に紫外線照射やプラズマ処理などにより表面処理が施されてもよいし、プライマーが形成されてもよい。あるいは、ヒートシール剤22の方にシランカップリング剤が添加されてもよい。
【0089】
表示媒体については、前述のように、電子ペーパーの表示方式に応じて適宜選択されるものである。
【0090】
電気泳動方式は、溶媒中に分散された帯電粒子が、電界によって電極間を移動する電気泳動現象を利用したものである。電気泳動方式には、例えば、マイクロカプセル方式、マイクロカップ方式等がある。
【0091】
マイクロカプセル方式では、帯電した白色粒子および黒色粒子と、これらの粒子を分散する透明分散媒とを透明樹脂からなるマイクロカプセル中に封入し、電界を印加することにより、上記白色粒子および上記黒色粒子を上下させることで白黒表示または階調を表現する。
【0092】
マイクロカップ方式では、カップ状の窪み(マイクロカップ)で仕切られたセルに、染料で着色した分散媒と、帯電した白色粒子とを配置し、電界を印加することにより、上記白色粒子を上下させることで白色または上記分散媒の色を表示させる。
【0093】
このような電気泳動方式の表示媒体の構成、材料および形成方法については、例えば、特開2000−56341号公報等で説明されているものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0094】
電子粉流体方式では、粒子と液体の中間的な特性を備え、浮遊状態に匹敵する高流動性を有し、かつ、電気に敏感に反応する白色および黒色の電子粉流体を空気中に配置し、電界を印加することにより、上記白色および黒色の電子粉流体を上下させることで白黒表示または階調を表現する。このような電子粉粒体方式の表示媒体の構成、材料および形成方法については、例えば、特開2003−322883号公報等で説明されているものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0095】
ツイストボール方式は、2色に塗り分けられた球状体や円柱状体を電界によって回転させて表示する方式である。このようなツイストボール方式の表示媒体の構成、材料および形成方法については、例えば、特開2006−47614号公報等で説明されているものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0096】
エレクトロウェッティング方式は、基板上に反射膜と透明電極、フッ素樹脂層を積層し、その上に着色した油と水を封止した構造を採る。通常はフッ素樹脂層は疎水性であり、油で覆われているが、電極に電圧を印加すると、フッ素樹脂層は親水性に変わり、水が油を電極の端に押しやり、反射膜の色が現れることにより、2色表示を実現するものである。このようなエレクトロウェッティング方式の表示媒体の構成、材料および形成方法については、例えば、特表2005−517993号公報等で説明されているものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0097】
上側基板16としては、PE、PET、PES、PEN等の透明フィルムに、ITO、ZnO等の透明電極を付したものが、典型的に用いられ得る。透明電極は、塗工法や蒸着法等によって形成され得る。
【0098】
上側基板16の厚みも、下側基板11の厚みと同様に、10μm〜1mmが好適である。10μmよりも薄いと、パネルとしての強度を得ることができず、破損に至る危険度が増す一方、1mmよりも厚いと、パネル重量が重くなり過ぎて取り扱いが不便になるし、コストも高くなるからである。破損しにくく取り扱いが容易である好適な厚みの範囲は、50μm〜300μm程度である。
【0099】
上側基板16には、更なる機能層が付加され得る。例えば、上側基板16の表面に、バリアフィルムが貼付され得る。予め透明無機膜のバリア層が蒸着等で形成された透明フィルムが上側基板16として採用されても、これと同様の機能を発揮できる。あるいは、上側基板16の表面に、紫外線カットフィルムが貼付され得る。上側基板16の表面に他の紫外線カット処理が施されても、これと同様の機能を発揮できる。その他の表面コート層として、AG層(防眩層)、HC層(傷防止層)、AR層(反射防止層)などが付加され得る。
【0100】
上側基板16も、ロール状でもシート状でもどちらでも適用可能である。
【0101】
外周封止剤は、紫外線硬化樹脂の他に、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、ヒートシール樹脂等によっても構成可能である。それらは、ディスペンサによって、あるいは、各種の印刷法によって、あるいは、熱圧着によって、上下両方の電極基板11,16の周辺に適用される。
【符号の説明】
【0102】
11 下側基板(バックプレーン基材)
12 隔壁
13 インキ(表示媒体)
16 上側基板(フロントプレーン基材)
20 転写フィルム
21 転写フィルム基材
22 ヒートシール剤(接着層)
31 ディスペンサ
32 中央スキージ(スキージ1)
33a、33b 両端スキージ(スキージ2)
34 ロールワイパ
41 ディスペンサ
51 断裁装置
61 加熱ロール
71 上側金属板
72 下側金属板
73 バルーン固定金属板
75 バルーン
80 真空チャンバ
91 ラミネータ
92 ホットプレート
93 金属片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明である対向する2枚の基板間に表示媒体が封入されていて、前記表示媒体が所定の情報を表示する、電子ペーパー、を製造する方法であって、
一方の基板上に所定のパターンで隔壁を形成する隔壁形成工程と、
前記隔壁上に接着層を形成する接着層形成工程と、
前記接着層が形成された後に、前記隔壁で区画された領域に前記表示媒体を配置する表示媒体配置工程と、
前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を平行に載置することによって、前記表示媒体を仮封止する仮封止工程と、
前記隔壁上の前記接着層上に前記他方の基板を接着することによって、仮封止されていた前記表示媒体を封止する他方基板接着工程と、
を備え、
前記接着層形成工程は、ヒートシール剤が形成された転写フィルムを用いて当該ヒートシール剤を熱転写させることによって実施され、
前記他方基板接着工程は、接着層として転写された前記ヒートシール剤を軟化させて接着力を得る加熱工程を含む
ことを特徴とする電子ペーパーの製造方法。
【請求項2】
前記仮封止工程は、減圧雰囲気下で行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペーパーの製造方法。
【請求項3】
前記他方基板接着工程は、さらに両基板の周辺部を熱圧着する熱圧着工程を含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子ペーパーの製造方法。
【請求項4】
少なくとも一方が透明である対向する2枚の基板間に表示媒体が封入されていて、前記表示媒体が所定の情報を表示する、電子ペーパー、を製造する装置であって、
一方の基板上に所定のパターンで隔壁を形成する隔壁形成装置と、
前記隔壁上に接着層を形成する接着層形成装置と、
前記接着層が形成された後に、前記隔壁で区画された領域に前記表示媒体を配置する表示媒体配置装置と、
前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を平行に載置することによって、前記表示媒体を仮封止する仮封止装置と、
前記隔壁上の前記接着層上に他方の基板を接着することによって、仮封止されていた前記表示媒体を封止する他方基板接着装置と、
を備え、
前記接着層形成装置は、ヒートシール剤が形成された転写フィルムを用いて当該ヒートシール剤を熱転写する構成を有しており、
前記他方基板接着装置は、接着層として転写された前記ヒートシール剤を軟化させる構成を有している
ことを特徴とする電子ペーパーの製造装置。
【請求項5】
前記仮封止装置は、減圧雰囲気下で稼働する
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペーパーの製造装置。
【請求項6】
前記他方基板接着装置は、さらに両基板の周辺部を熱圧着する熱圧着装置を含む
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電子ペーパーの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−13790(P2012−13790A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148004(P2010−148004)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】