説明

電子ペーパーへの画像記録装置及び画像記録方法

【課題】電子ペーパーに記録される画像の画質を向上させる。
【解決手段】着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示する電子ペーパーを、その厚み方向に電界が発生している領域内に供給する。この厚み方向における電界は、静電潜像が担持された潜像担持体と電圧印加部材により形成される。潜像担持体上の最大電圧の絶対値V1、最小電圧の絶対値V2及び電圧印加部材に印加される電圧の絶対値V3の関係において、V1とV3の差の絶対値及びV2とV3の差の絶対値が、前記像担持体と前記対向部材の間の放電開始電圧未満とする。これにより、電子ペーパーに記録される画像の放電斑の発生を防止し良好な画像を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーへの画像記録装置及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電された着色粒子の位置を制御することによって画像を表示する電子ペーパーに、電圧を印加することによって画像を記録する電子ペーパー画像記録装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子ペーパー画像記録装置により、電子ペーパーに画像を記録することができるが、電子ペーパーに記録される画像に黒ポチ又は白ポチ等のいわゆる放電斑が発生する場合がある。また、所定の電界が発生せずに画像記録不良が発生する場合がある。
そこで本発明は、電子ペーパーに記録される画像の放電斑の発生を防止し良好な画像を形成すること、又は電圧降下を防止して良好な画像を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための主たる発明は、
潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示する電子ペーパーを、前記像担持体と前記対向部材との間に供給する供給部と、
前記対向部材に電圧を印加することにより、該間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記電子ペーパーに前記潜像に対応する画像を表示させる電圧印加部と、
前記電圧の値を制御する電圧制御部と、
を有する電子ペーパーへの画像記録装置であって、
前記像担持体に形成された潜像の最大電位の絶対値V1と、
前記像担持体に形成された潜像の最小電位の絶対値V2と、
前記対向部材に印加された対向電圧の電位の絶対値V3と、
の関係は、
V1とV3の差の絶対値とV2とV3の差の絶対値が、前記電子ペーパーを介した状態における前記像担持体と前記対向部材の間の放電開始電圧よりも小さいこと、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置、である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】電子ペーパー100の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】画像部位及び非画像部位における着色帯電粒子の様子を示した模式図である。
【図3】電子ペーパーへの画像記録装置1の構成を示す概略図である。
【図4】電子ペーパーへの画像記録装置1の構成を示すブロック図である。
【図5】図5(a)は、電界発生後に着色帯電粒子が移動開始した状態を説明する図である。図5(b)は、着色帯電粒子の凝集状態を説明する図である。図5(c)は、着色帯電粒子の拡散移動状態を説明する図である。図5(d)は、着色帯電粒子が凝集状態から脱した状態を説明する図である。図5(e)は、着色帯電粒子の理想的な配置を示す図である。
【図6】図6(a)は、画像記録時に、対向ローラー52に印加される電圧を示した図である。図6(b)は、画像記録時に、対向ローラー52に印加される電圧の他の例を示した図である。図6(c)は、画像消去時に、対向ローラー52に印加される電圧を示した図である。
【図7】他の画像記録装置の構成を示す概略図である。
【図8】他の画像記録装置の構成を示す概略図である。
【図9】対向ローラー52に印加される電圧の他の例(正弦波)を示した図である。
【図10】対向ローラー52に印加される電圧の他の例(三角波)を示した図である。
【図11】図11(a)は、画像記録時に、対向ローラー52に印加される電圧の他の例(階段波)を示した図である。図11(b)は、画像記録時に、対向ローラー52に印加される電圧の他の例(階段波)を示した図である。
【図12】画像記録時のV1、V2及びV3の関係の例示を示した図である。
【図13】画像記録時のV1、V2及びV3の関係の例示を示した図である。
【図14】画像記録時のV1、V2及びV3の関係の例示を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
即ち、潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示する電子ペーパーを、前記像担持体と前記対向部材との間に供給する供給部と、
前記対向部材に電圧を印加することにより、該間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記電子ペーパーに前記潜像に対応する画像を表示させる電圧印加部と、
前記電圧の値を制御する電圧制御部と、
を有する電子ペーパーへの画像記録装置であって、
前記像担持体に形成された潜像の最大電位の絶対値V1と、
前記像担持体に形成された潜像の最小電位の絶対値V2と、
前記対向部材に印加された対向電圧の電位の絶対値V3と、
の関係は、
V1とV3の差の絶対値とV2とV3の差の絶対値が、前記電子ペーパーを介した状態における前記像担持体と前記対向部材の間の放電開始電圧よりも小さいこと、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置、である。
このような電子ペーパーへの画像記録装置によれば、電子ペーパーに記録される画像の放電斑の発生を防止し良好な画像を形成することができる。
【0008】
また、かかる電子ペーパーへの画像記録装置であって、
前記V1、前記V2及び前記V3は、関係式1の関係を有し、
前記V3は、所定の直流電圧に所定の交流電圧を重畳するように前記電圧制御部により制御されること、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置(関係式1:前記V1の絶対値>前記V2の絶対値>前記V3の絶対値)、としてもよい。
このような電子ペーパーへの画像記録装置によれば、電子ペーパーに記録される画像の画質をより向上させることができる。
【0009】
また、かかる電子ペーパーへの画像記録装置の制御方法であって、
潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示する電子ペーパーを、前記像担持体と前記対向部材との間に供給する供給部と、
前記対向部材に電圧を印加することにより、該間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記電子ペーパーに前記潜像に対応する画像を表示させる電圧印加部と、
前記電圧の値を制御する電圧制御部と、
を有する電子ペーパーへの画像記録装置の制御方法であって、
前記電圧制御部により、
前記像担持体に形成された潜像の最大電位の絶対値V1と、
前記像担持体に形成された潜像の最小電位の絶対値V2と、
前記対向部材に印加された対向電圧の電位の絶対値V3と、
の関係が、
V1とV3の差の絶対値とV2とV3の差の絶対値が、前記電子ペーパーを介した状態における前記像担持体と前記対向部材の間の放電開始電圧よりも小さくなるように制御されること、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置の制御方法としてもよい。
このような電子ペーパーへの画像記録方法によれば、電子ペーパーに記録される画像の画質を向上させることができる。
【0010】
===第1実施形態===
以下の第1実施形態では、電子ペーパー100に画像を記録する画像記録装置1の構成例について説明する。
なお、本実施の形態に係る画像記録装置1は、電子ペーパー100へ画像を記録する機能を備えた画像記録専用の装置として用いることができる。
まず、画像記録装置1の説明に先立って、電子ペーパー100の構成について説明する。そして、これに引き続いて、画像記録装置1の構成について説明する。
【0011】
<<<電子ペーパー100の構成例について>>>
電子ペーパー100の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、電子ペーパー100の構成を模式的に示す断面図である。図2は、画像部位及び非画像部位における着色帯電粒子の様子を示した模式図である。
【0012】
電子ペーパー100は、着色帯電粒子を有し、該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示するものである。換言すれば、電子ペーパー100は、着色された電気泳動粒子の電気泳動を利用して画像の表示を行う。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る電子ペーパー100は、表示層103と、表示層103の上面に設けられた上側絶縁層141と、表示層103の下面に設けられた下側絶縁層142と、封止部107と、を備えている。
【0014】
電子ペーパー100では、上側絶縁層141が表示面121を構成しており、上側絶縁層141を介して表示層103が視認されることにより、画像を認識することができるようになっている。また、電子ペーパー100は、可撓性を有するもの、有さないもののいずれであってもよいが、本実施の形態に係る電子ペーパー100は、可撓性を有している。
【0015】
表示層103は、着色帯電粒子の一例としての正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の収容部であるマイクロカプセル131とバインダー132とを有しており、複数のマイクロカプセル131がバインダー132で固定(保持)されることにより構成されている。また、複数のマイクロカプセル131は、上側絶縁層141と下側絶縁層142との間に、縦横に並列するように単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)配設されている。
【0016】
各マイクロカプセル131は、殻体であるカプセル本体133を有しており、その内部(内部空間)には、電気泳動分散液が充填(封入)されている。カプセル本体133内に充填された電気泳動分散液は、正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子とを液相分散媒に分散(懸濁)してなるものである。正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の液相分散媒への分散については、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、攪拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行なうことができる。
【0017】
正帯電白色粒子は、正に帯電する白色の電気泳動粒子であり、負帯電黒色粒子は、負に帯電する黒色の電気泳動粒子である。このように、正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子とを用いることにより、電子ペーパー100における白黒表示が可能となる。
なお、本実施の形態においては、負帯電黒色粒子の帯電量と比べて、正帯電白色粒子の帯電量が小さくなっている(正帯電白色粒子は微帯電している)。
【0018】
正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子には、それぞれ、電荷を有するものであれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。
【0019】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、チタンブラックが負帯電黒色粒子として、酸化チタンが正帯電白色粒子として、好適に用いられる(本実施の形態においても、これらが用いられている)。
【0020】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができる。
【0022】
正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子については、液相分散媒中での分散性を考慮した場合、より小さいものが好適に用いられる。具体的には、その平均粒径が、10〜500nm程度であるのが好ましく、20〜300nm程度であるのがより好ましい。正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の平均粒径を前記範囲とすることにより、正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子の凝集や、正帯電白色粒子や負帯電黒色粒子の沈降を防止することができ、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子を液相分散媒中に分散させた状態を維持することができる。
【0023】
そして、このような正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子がマイクロカプセル131内で電子ペーパー100の厚み方向に移動することにより、画像が表示されることとなる。
すなわち、詳細については後述するが、当該電子ペーパー100における画像を表示させたい部位(つまり、黒画像部)においては、負帯電黒色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動し(図2の左図参照)、画像を表示させたくない部位(つまり、白画像部(白背景部))においては、正帯電白色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するように(図2の右図参照)、粒子の移動が制御されることにより、電子ペーパー100における白黒表示が成される。そして、この粒子の移動制御は、前記画像記録装置1が、前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前者の部位においては電界の向きが下向き(上側絶縁層141から下側絶縁層142へ向かう向き)となり(図2の左図参照)、後者の部位においては電界の向きが上向き(下側絶縁層142から上側絶縁層141へ向かう向き)となるように(図2の右図参照)、電界の向きを制御することによって実現されることとなる。
【0024】
なお、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の比重は、それぞれ、液相分散媒の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子は、電界の作用を受けた後においても、液相分散媒中において一定の位置に長時間滞留することができる。
【0025】
バインダー132は、例えば、上側絶縁層141と下側絶縁層142とを接合する目的、上側絶縁層141と下側絶縁層142との間に各マイクロカプセル131を固定する目的等により供給される。このバインダー132には、上側絶縁層141、下側絶縁層142およびカプセル本体133との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料が好適に使用される。
【0026】
表示層103を間に挟むように対向配置された上側絶縁層141及び下側絶縁層142は、それぞれ、絶縁性を有するシート状(平板状)の部材で構成されている。このような上側絶縁層141及び下側絶縁層142は、表示層103(マイクロカプセル131)を保護する機能を有している。
【0027】
上側絶縁層141は、表示面121を構成するために光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、表示面121側から、表示層103の状態(各マイクロカプセル131中の正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の状態)、すなわち電子ペーパー100に表示された画像(情報)を目視により認識することができる。一方、下側絶縁層142については、上側絶縁層141のような光透過性の有無は問わない(本実施の形態においては、下側絶縁層142は実質的に不透明となっている)。
【0028】
封止部107は、電子ペーパー100内への水分の浸入を防止して、電子ペーパー100の表示性能の劣化を抑えるためのものである。封止部107は、上側絶縁層141と下側絶縁層142との間に、それらの縁部に沿うようにして設けられている。そして、この封止部107により、表示層103が気密的に封止されている。なお、この封止部107は必須の構成要素ではない。
【0029】
<<<画像記録装置1の構成例について>>>
次に、画像記録装置1の構成例について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、画像記録装置1の概略断面図である。図4は、画像記録装置1のブロック図である。
【0030】
本実施の形態に係る画像記録装置1は、図3に示すように、潜像を担持する像担持体の一例としての感光体20の回転方向に沿って、帯電ユニット30、露光ユニット40、電界生成ユニット50(対向部材の一例としての対向ローラー52)、を有し、さらに、供給部の一例としての搬送ユニット60、及び、これらのユニット等を制御し画像記録装置1としての動作を司るコントローラー80(図4参照)、を有している。
【0031】
感光体20は、金属製の円筒状の導電性基材と、その外周面に形成され静電気を保持するための樹脂製の感光層とを有している。この感光体20は、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図3中の矢印で示すように時計回りに回転する。
【0032】
帯電ユニット30は、感光体20を帯電させるためのものである。この帯電ユニット30は、帯電ローラー31を有しており、本実施の形態においては、当該帯電ローラー31が、感光体20を、例えば、V1=−500ボルトに帯電させるようになっている。
【0033】
露光ユニット40は、レーザーを照射することによって帯電された感光体20上に潜像を形成するものである。この露光ユニット40は、半導体レーザー、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー等の不図示のホストコンピューターから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザーを帯電された感光体20上に照射する。本実施の形態においては、潜像の画像部及び非画像部(背景部)のうちの前者に相当する部分にレーザーが照射され(本項においては、電子ペーパー100における前記黒画像部に対応する感光体20上の部分を画像部と、前記白画像部(白背景部)に対応する感光体20上の部分を非画像部(背景部)と、それぞれ呼んでいる)、当該部分の電位がV1=−500ボルトからV2=−50ボルトとなる(V2=−50ボルトの画像部とV1=−500ボルトの非画像部(背景部)とを有する潜像が得られる)。
【0034】
電界生成ユニット50は、電子ペーパー100の厚み方向に電界を発生させて、当該電子ペーパー100の正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子を厚み方向に移動させるためのものである。この電界生成ユニット50は、対向ローラー52と電圧印加部54(図4参照)とを備えている。
【0035】
対向ローラー52は、感光体20と対向する回転可能なローラーである。この対向ローラー52は、電子ペーパー100が感光体20と当該対向ローラー52との間に位置する際に、感光体20と協働して電子ペーパー100を挟んで圧接させつつ(換言すれば、感光体20と対向ローラー52とはニップ部にて電子ペーパー100を挟んで圧接している)、感光体20の回転に伴ってその回転方向(時計回り)とは反対方向(反時計回り)に回転する。対向ローラー52の、電子ペーパー100を介して感光体20と接触する接触部分は、ゴム製である。
【0036】
電圧印加部54は、電子ペーパー100が前記間に位置する際に、前記対向ローラー52に電圧を印加する(すなわち、対向ローラー52は、被電圧印加部としての機能を有する)。そして、このことにより、感光体20と対向ローラー52との間に電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界を発生させて、電子ペーパー100の正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子を厚み方向に移動させる。
【0037】
電圧印加部54は、画像を記録するときと画像を消去するときとで互いに異なる電圧を印加する。すなわち、画像記録時には、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子が移動して、前記潜像に対応する画像が電子ペーパー100に表示されるように、また、画像消去時には、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子が移動して、画像を表示した電子ペーパー100の該画像が消去されるように、電圧を印加するが、具体的にどのような電圧を印加するかについては、後に詳述する。
【0038】
搬送ユニット60は、電子ペーパー100を搬送するためのものである。この搬送ユニット60は、ペーパーカセット62と、ペーパーカセット62の上部に位置する給紙ローラー64と、給紙ローラー64から見て、感光体20側に位置する搬送ローラー66と、不図示の排紙ローラーと、を有している。給紙ローラー64は、ペーパーカセット62に収容されている電子ペーパー100を給紙するローラーである。搬送ローラー66は、給紙ローラー64によって給紙された電子ペーパー100を感光体20と対向ローラー52との間に搬送するローラーである。排紙ローラーは、画像が表示又は消去された電子ペーパー100を画像記録装置1から排出するローラーである。これらのローラーは、不図示のモーターにより駆動される。
【0039】
コントローラー80は、画像記録装置1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。図4に示すように、コントローラー80は、インターフェイス部(I/F)81と、CPU82と、メモリー83と、ユニット制御回路84と、を有する。なお、コントローラー80は、対向ローラー52に印加される電圧を制御する電圧制御部としても機能する。
【0040】
インターフェイス部81は、外部装置である前記ホストコンピューターと画像記録装置1との間でデータの送受信を行う。CPU82は、画像記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー83は、CPU82のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU82は、メモリー83に格納されるプログラムに従って、ユニット制御回路84を介して各ユニットを制御する。
【0041】
<<<正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の凝集について>>>
上述したように、電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界が発生すると、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子がマイクロカプセル131内で移動することにより、画像が表示される。
その厚み方向に沿う電界を発生させるために、所定の直流電圧、又は所定の直流電圧に所定の交流電圧を重畳した電圧を対向ローラー52に印加する。
【0042】
ここで、電子ペーパー100に黒画像が表示されているときに、対向ローラー52に直流電圧を印加して、その電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界が上向きに発生した場合、当該電界の作用により、正帯電白色粒子が上方向に移動し、負帯電黒色粒子が下方向へ移動することによって(図5(a)参照)、白画像が表示される(図5(e)参照)。この場合、感光体20上の電位V1及びV2、対向ローラー52に印加される電圧V3、とした場合、V3は所定の直流電圧のみか、又は所定の直流電圧に所定の交流電圧を印加した電圧とすることができる。
【0043】
また、従来のように、単に所定の直流電圧のみを印加して画像記録を行った場合、対向ローラー52の、電子ペーパー100を介して感光体20と接触する接触部分は、回転方向に対して連続的に距離が短くなる。そうすると、電子ペーパー100を介した状態であっても、感光体20の表面と対向ローラー52の間の電位差、距離、温度、湿度、又は、電子ペーパーの材質若しくは厚み等の条件に応じて、コロナ放電現象又は火花放電現象が生じる場合がある。
【0044】
仮に、コロナ放電現象が生じると、電子ペーパー100が接触部分に搬送される前工程において、放電現象による過帯電現象が生じ、非画像部(背景部)に黒ポチが生じるという問題が生じる。
【0045】
また、火花放電現象が生じると、電子ペーパー100が接触部分に搬送される前工程において、放電現象による一時的な電圧降下が生じ、接触部分に存在し、画像記録が行われるべき部分で所定の電界が発生しないこととなるため、その部分(接触部分)に所定の画像が形成されないという問題が生じる。
【0046】
これに対して、本発明のように、V1とV3との絶対値での電位差と、V2とV3との絶対値での電位差と、がそれぞれ電子ペーパー100と対向ローラー52の間の放電開始電圧よりも小さい場合は、上記2つの問題が全く生じないため、良好な画像記録を実現することができる。
【0047】
なお、良好な画像記録が実現できる理由は、感光体20の表面と対向ローラー52の間の電位差、距離、温度、湿度、又は、電子ペーパーの材質若しくは厚み等の条件に応じて、放電開始電圧が一義的に決まるからである。この放電開始電圧は、いわゆるパッシェンの経験則(又はパッシェンの法則)に従うものである。
以下、この画像記録時の動作例を具体的に説明する。
【0048】
<<<画像記録時の動作例について>>>
画像記録装置1の画像記録時の動作例について、図2及び図6(a)を用いて説明する。図6(a)は、画像を記録する際に対向ローラー52に印加される電圧を示した図である。この対向ローラー52に印加される電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧であり、この重畳した電圧の値は時間とともに変動する。
【0049】
ここで、交流電圧とは、時間とともに周期的に大きさと向きが変化する電圧の意であり、波形の形状は問わない(例えば、正弦波、矩形波、三角波、鋸歯状波等のいずれをも含む概念である)。なお、本実施の形態においては、図6に示すような矩形波の重畳した電圧が印加される。また、重畳した電圧(矩形波)の周期は10msecである。
なお、画像記録時の画像記録装置1の各種動作は、主としてコントローラー80により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリー83に格納されたプログラムをCPU82が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0050】
ホストコンピューターからの画像信号及び制御信号がインターフェイス部81を介してコントローラー80に入力されると、ユニット制御回路84の制御により、感光体20が回転する。なお、ペーパーカセット62には、画像が未表示の電子ペーパー100が収容されている。
【0051】
感光体20は、回転しながら、帯電位置において帯電ユニット30により、順次V1=−500ボルトに帯電される。
感光体20の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット40によって、潜像が該領域に形成される。すなわち、該領域が潜像の画像部に相当する部分であれば当該領域にレーザーが照射される。この結果、V2=−50ボルトの画像部とV1=−500ボルトの非画像部(背景部)とを有する潜像が感光体20上に形成される。
【0052】
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って、対向ローラー52と対向する対向位置に至る。一方で、電子ペーパー100が、搬送ユニット60により、感光体20(換言すれば、潜像)と対向ローラー52との間に搬送され、該間に位置することとなる。そして、電子ペーパー100が該間に位置する状態で、電圧印加部54によって対向ローラー52に電圧が印加され、該間に電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界が発生する。そして、このことにより、潜像に対応する画像が電子ペーパーに表示される。
【0053】
具体的には、図6(a)に示すように、電圧印加部54は、対向ローラー52に、画像部における電位及び非画像部における電位のうち小さい方(本実施の形態においてはV1(−500)ボルト)以上で、大きい方(本実施の形態においてはV2(−50)ボルト)以下の範囲内でその値が変動する電圧を印加する。つまり、図6(a)に示す電圧を対向ローラー52に印加する場合、対向ローラー52に印加される電圧の値は、時間経過に伴ってV1とV2との間の範囲内で変動する。
【0054】
期間T1において、潜像の画像部が前記対向位置に位置する際に、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV2=−50ボルト(V2ボルト)、対向ローラー52側(下側)がV3=−400ボルトとなるため、図2の左図に示したように、下向き(電子ペーパー100の上側絶縁層141から下側絶縁層142へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の負帯電黒色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動する。
【0055】
次に、期間T2では、潜像の当該画像部が前記対向位置に引き続き存在し、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV2=−50ボルト(V2ボルト)、対向ローラー52側(下側)がV3=−150ボルトとなるため、図2の左図に示したように、下向き(電子ペーパー100の上側絶縁層141から下側絶縁層142へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の負帯電黒色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動する。
【0056】
ここで、潜像の当該画像部について、期間T1における電界と期間T2における電界とを比較すると、電界の方向は共に同一方向であり、期間T1における電界の大きさは期間T2よりも大きい。つまり、期間T2は期間T1に比べて電界が弱まることになる。そうすると、期間T2では、期間T1で上方向へ移動していた負帯電黒色粒子の動きが鈍くなり、負帯電黒色粒子は他の粒子との粒子間斥力の影響を受けるようになる。同様に、正帯電白色粒子も粒子間斥力の影響も受けながら下側へ移動するようになる。このため、各粒子は拡散しながら移動することになる。したがって、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の凝集状態が緩和されることになる。
【0057】
このように、潜像の当該画像部が前記対向位置に存在する短時間に、電界の強弱が周期的に繰り返されることにより、本来なら下方向へ移動するはずの正帯電白色粒子が上方向へ移動してきた負帯電黒色粒子群に取り囲まれて抜け出せなくなってしまう状態が解消される。その結果、正帯電白色粒子のみが下方向へ移動し、負帯電黒色粒子のみが上方向へ移動することになるため、電子ペーパー100の前記間に位置する部位には、白部分が混在しない鮮明な黒画像が表示されることになる(当該部位が、黒画像部となる)。
【0058】
一方、期間T1において、潜像の非画像部が前記対向位置に位置する際に、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV0=−500ボルト(V1ボルト)、対向ローラー52側(下側)がV3=−400ボルトとなるため、図2の右図に示したように、上向き(電子ペーパー100の下側絶縁層142から上側絶縁層141へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の正帯電白色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動する。
【0059】
次に、期間T2では、潜像の当該非画像部が前記対向位置に引き続き存在し、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV0=−500ボルト(V1ボルト)、対向ローラー52側(下側)がV3=−150ボルトとなるため、図2の右図に示したように、上向き(電子ペーパー100の下側絶縁層142から上側絶縁層141へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の正帯電白色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動する。
【0060】
ここで、潜像の当該非画像部について、期間T1における電界と期間T2における電界とを比較すると、電界の方向は共に同一方向であるが、期間T1における電界の大きさは期間T2よりも小さい。つまり、期間T2では期間T1に比べて電界が強くなる。そうすると、期間T2において、期間T1では電界が弱いために凝集状態から抜け出すことができた負帯電黒色粒子が、他の粒子との粒子間斥力の影響を受けることなく下方向へ移動するようになる。同様に、正帯電白色粒子群も負帯電黒色粒子を取り囲むことなく上方向へ移動するようになる。
【0061】
このように、潜像の当該非画像部が前記対向位置に存在する短時間に、電界の強弱が周期的に繰り返されることにより、本来なら下方向へ移動するはずの負帯電黒色粒子が上方向へ移動してきた正帯電白色粒子群に取り囲まれて抜け出せなくなってしまう状態が解消される。その結果、負帯電黒色粒子のみが下方向へ移動し、正帯電白色粒子のみが上方向へ移動することになるため、電子ペーパー100の前記間に位置する部位には、黒部分が混在しない鮮明な白画像が表示されることになる(当該部位が、白画像部(白背景部)となる)。
【0062】
従って、潜像の画像部が前記対向位置に位置する際には電子ペーパー100に黒画像が表示され、非画像部が前記対向位置に位置する際には、電子ペーパー100に白画像が表示されることとなるため、画像部及び非画像部を有する潜像が電子ペーパー100に転写(コピー)されることとなる。
【0063】
以上のとおり、本実施の形態においては、電圧印加部54が、対向ローラー52に電圧を印加することにより、感光体20と対向ローラー52との間に厚み方向に沿う電界を発生させ、着色帯電粒子を厚み方向に移動させることにより電子ペーパー100に潜像に対応する画像を表示させる。すなわち、コントローラー80(電圧制御部)は、対向ローラー52に印加される電圧の値が時間とともに変動するように前記電圧を制御する。そして、このことにより、コントローラー80は、感光体20の画像部と対向ローラー52との間に発生する電界の大きさを制御することにより、電子ペーパー100に潜像に対応する白黒画像を表示させる。
【0064】
そして、上述した画像を表示させるための動作は継続して実行される。すなわち、電子ペーパー100は搬送ユニット60により搬送されて、電子ペーパー100の互いに異なる部位が、前記間(ニップ部)に順次送り込まれる。その一方で、潜像が形成された感光体20の互いに異なる部位が、感光体20の回転により、前記間(前記対向位置)に順次送り込まれる。そして、当該間において、電子ペーパー100の前記部位に、潜像に対応する画像が順次表示される(電子ペーパー100に潜像が順次転写される)。
画像表示(転写)が完了した電子ペーパー100は、排紙ローラーによって、画像記録装置1から排出される。
【0065】
===第2実施形態===
以下の第2実施形態では、すでに詳述した構成の電子ペーパー100に画像を記録する画像記録装置1の他の形態について説明する。
なお、本実施の形態に係る画像記録装置1の構成は、第1実施形態にて詳述した画像記録装置1の構成と同様である。
また、本実施の形態に係る画像記録装置1は、第1実施形態と同様に、画像記録専用装置又は画像記録消去装置として用いることができる。
【0066】
すでに説明したとおり、電子ペーパー100のマイクロカプセル内の粒子が凝集状態になると(図5(b)参照)、白画像が表示されるべき部位に黒部分が混ざり、鮮明な白画像が表示されなくなってしまう。
【0067】
このような画質の低下を解消するため、画像記録時において、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を電圧印加部54が対向ローラー52に印加し、コントローラー80がこの電圧を制御することによって、電子ペーパー100の厚み方向に沿って発生する電界を一時的に消滅させる(図6(b)参照。詳細は後述する)。これにより、図5(b)に示す凝集状態から図5(c)に示すような粒子の凝集が緩和された状態となり、図5(d)に示すように凝集状態から粒子が抜け出した状態となった後、図5(e)に示す理想的な粒子の配置とすることが可能になるため、画像記録時に画質を向上させることができる。
以下、この画像記録時の動作例を具体的に説明する。
【0068】
<<<画像記録時の動作例について>>>
本実施形態における画像記録装置1の画像記録時の動作例について、図2及び図6(b)を用いて説明する。図6(b)は、画像を記録する際に対向ローラー52に印加される電圧を示した図である。この対向ローラー52に印加される電圧は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧であり、この重畳した電圧の値は時間とともに変動する。
【0069】
ここで、交流電圧とは、時間とともに周期的に大きさと向きが変化する電圧の意であり、波形の形状は問わない(例えば、正弦波、矩形波、三角波、鋸歯状波等のいずれをも含む概念である)。なお、本実施の形態においては、図6に示すような矩形波の重畳した電圧が印加される。また、重畳した電圧(矩形波)の周期は10msecである。
【0070】
なお、画像記録時の画像記録装置1の各種動作は、主としてコントローラー80により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリー83に格納されたプログラムをCPU82が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0071】
ホストコンピューターからの画像信号及び制御信号がインターフェイス部81を介してコントローラー80に入力されると、ユニット制御回路84の制御により、感光体20が回転する。なお、ペーパーカセット62には、画像が未表示の電子ペーパー100が収容されている。
【0072】
感光体20は、回転しながら、帯電位置において帯電ユニット30により、順次V1=−500ボルトに帯電される。
感光体20の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット40によって、潜像が該領域に形成される。すなわち、該領域が潜像の画像部に相当する部分であれば当該領域にレーザーが照射される。この結果、V2=−50ボルトの画像部とV1=−500ボルトの非画像部(背景部)とを有する潜像が感光体20上に形成される。
【0073】
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って、対向ローラー52と対向する対向位置に至る。一方で、電子ペーパー100が、搬送ユニット60により、感光体20(換言すれば、潜像)と対向ローラー52との間に搬送され、該間に位置することとなる。そして、電子ペーパー100が該間に位置する状態で、電圧印加部54によって対向ローラー52に電圧が印加され、該間に電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界が発生する。そして、このことにより、潜像に対応する画像が電子ペーパーに表示される。
【0074】
具体的には、図6(b)に示すように、電圧印加部54は、対向ローラー52に、画像部における電位及び非画像部における電位のうち小さい方(本実施の形態においてはV1(−500)ボルト)以上で、大きい方(本実施の形態においてはV2(−50)ボルト)以下の範囲内でその値が変動する電圧であって、その値がV1又はV2となるような電圧を印加する。
つまり、図6(b)に示す電圧を対向ローラー52に印加する場合、対向ローラー52と感光体20との間に発生する電界を周期的にゼロにするような電圧が対向ローラー52に印加される。
【0075】
期間T1において、潜像の画像部が前記対向位置に位置する際に、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV2=−50ボルト(V2ボルト)、対向ローラー52側(下側)がV3=−500ボルトとなるため、図2の左図に示したように、下向き(電子ペーパー100の上側絶縁層141から下側絶縁層142へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の負帯電黒色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動する。
【0076】
次に、期間T2では、潜像の当該画像部が前記対向位置に引き続き存在し、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV2=−50ボルト(V2ボルト)、対向ローラー52側(下側)もV3=−50ボルトとなるため、電界は発生しない(電界ゼロ)。よって、電子ペーパー100内の負帯電黒色粒子も正帯電白色粒子も、当該電界の影響を受けることがないため、各方向への移動が中断される。
【0077】
ここで、潜像の当該画像部について、期間T1における電界と期間T2における電界とを比較すると、期間T1では電界が発生するが、期間T2においては電界が発生しない。つまり、期間T2では期間T1の電界が消滅することになる。そうすると、期間T2において、期間T1で上方向へ移動していた負帯電黒色粒子の動きに勢いがなくなり、負帯電黒色粒子は他の粒子との粒子間斥力の影響を受けるようになる。同様に、正帯電白色粒子も粒子間斥力の影響も受けるようになり、下方向への移動を中断するようになる。このため、各粒子はより拡散しながら移動することになる。したがって、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の凝集状態が緩和されることになる。
【0078】
このように、潜像の当該画像部が前記対向位置に存在する短時間に、電界の有無が周期的に繰り返されることにより、本来なら下方向へ移動するはずの正帯電白色粒子が上方向へ移動してきた負帯電黒色粒子群に取り囲まれて抜け出せなくなってしまう状態が解消される。その結果、正帯電白色粒子のみが下方向へ移動し、負帯電黒色粒子のみが上方向へ移動することになるため、電子ペーパー100の前記間に位置する部位には、白部分が混在しない鮮明な黒画像が表示されることになる(当該部位が、黒画像部となる)。
【0079】
図6(b)に示す電圧を対向ローラー52に印加することは、電界の大きさを小さくすることによって電界を弱めるどころか、電界の大きさをゼロにすることによって電界を完全に消滅させることができるため、取り囲まれていた粒子がより簡単に脱出することができるようになる。したがって、図6(a)に示す電圧を印加することと比べると、取り囲まれて抜け出せなくなってしまう状態を解消させる効果は顕著なものとなる。
【0080】
一方、期間T1において、潜像の非画像部が前記対向位置に位置する際に、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV0=−500ボルト(V1ボルト)、対向ローラー52側(下側)もV3=−500ボルトとなるため、電界は発生しない。
【0081】
次に、期間T2では、潜像の当該非画像部が前記対向位置に引き続き存在し、当該印加が成されると、感光体20側(上側)がV0=−500ボルト(V1ボルト)、対向ローラー52側(下側)がV3=−50ボルトとなるため、図2の右図に示したように、上向き(電子ペーパー100の下側絶縁層142から上側絶縁層141へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の正帯電白色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動する。
【0082】
ここで、潜像の当該非画像部について、期間T1における電界と期間T2における電界とを比較すると、期間T1では電界が発生しないが、期間T2においては電界が発生する。つまり、期間T2では期間T1に比べて電界が強くなる。そうすると、期間T2において、期間T1で電界が消滅したことにより凝集状態から抜け出すことのできた負帯電黒色粒子が、他の粒子との粒子間斥力の影響を受けることなく下方向へ移動するようになる。同様に、正帯電白色粒子群も負帯電黒色粒子を取り囲むことなく上方向へ移動するようになる。
【0083】
このように、潜像の当該非画像部が前記対向位置に存在する短時間に、電界の有無が周期的に繰り返されることにより、本来なら下方向へ移動するはずの負帯電黒色粒子が上方向へ移動してきた正帯電白色粒子群に取り囲まれて抜け出せなくなってしまう状態が解消される。その結果、負帯電黒色粒子のみが下方向へ移動し、正帯電白色粒子のみが上方向へ移動することになるため、電子ペーパー100の前記間に位置する部位には、黒部分が混在しない鮮明な白画像が表示されることになる(当該部位が、白画像部(白背景部)となる)。
【0084】
従って、潜像の画像部が前記対向位置に位置する際には、電子ペーパー100は黒画像を表示し、非画像部が前記対向位置に位置する際には、電子ペーパー100は白画像を表示することとなるため、画像部及び非画像部を有する潜像が電子ペーパー100に転写(コピー)されることとなる。
【0085】
以上のとおり、本実施の形態においては、電圧印加部54が、対向ローラー52に電圧を印加することにより、感光体20と対向ローラー52との間に厚み方向に沿う電界を発生させ、着色帯電粒子を厚み方向に移動させることにより電子ペーパー100に潜像に対応する画像を表示させる。すなわち、コントローラー80(電圧制御部)は、対向ローラー52に印加される電圧の値が時間とともに変動するように前記電圧を制御する。そして、このことにより、コントローラー80は、感光体の画像部と対向ローラー52との間に発生する電界の有無を制御することにより、電子ペーパー100に潜像に対応する白黒画像を表示させる。
【0086】
そして、上述した画像を表示させるための動作は継続して実行される。すなわち、電子ペーパー100は搬送ユニット60により搬送されて、電子ペーパー100の互いに異なる部位が、前記間(ニップ部)に順次送り込まれる。その一方で、潜像が形成された感光体20の互いに異なる部位が、感光体20の回転により、前記間(前記対向位置)に順次送り込まれる。そして、当該間において、電子ペーパー100の前記部位に、潜像に対応する画像が順次表示される(電子ペーパー100に潜像が順次転写される)。
画像表示(転写)が完了した電子ペーパー100は、排紙ローラーによって、画像記録装置1から排出される。
【0087】
===第3実施形態===
第1及び第2実施形態にかかる画像記録装置1は、電子ペーパー100へ画像を記録する機能のみならず、電子ペーパー100の画像を消去する機能も備えることができる。以下、具体的に説明する。
【0088】
図12から図14について、表1を用いて説明する。これらはすべて本発明を満たす良好なV1、V2及びV3の関係を示す。なお、VaはV1とV3との絶対値での電位差、VbはV2とV3との絶対値での電位差を示す。Vthは放電開始電圧を示す。表1から分かる通り、下記の6パターンの場合すべて本発明の条件を満たす。
【0089】
【表1】

【0090】
また、表1には記載していないが、表1でいうVaとVbのいずれもがVthを超えた場合は上記2つの問題(コロナ放電又は火花放電による課題)が生じる。
さらに、これらの問題は、いずれも放電現象に起因するものであるから、本発明に係る装置においては、装置内の温度及び湿度の情報を装置内の計測器を用いて測定し、それに基づいてV1、V2及びV3を調整するようにしても良い。具体的には、V1とV3の差が小さくなると、画像濃度が低くなる傾向にある。このような場合は、電子ペーパー100の搬送速度を通常よりも遅くすることで対応することができる。また、図7や図8のように、電子ペーパー100に対して複数回画像記録を行うことで対応してもよい。
【0091】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として電子ペーパーへの画像記録装置について記載されるが、電子ペーパーへの画像記録方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0092】
<電子ペーパー>
上記の実施形態においては、着色帯電粒子として正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、白色粒子が負帯電粒子であり、黒色粒子が正帯電粒子であってもよい。また、色については、白色、黒色に限定されるものではなく、双方の色が異なっていればどのような色であってもよい。例えば、赤色、青色、緑色などの有彩色や、金色、銀色等の金属光沢色から目的に合わせて適宜選択することができる。また、二色の粒子のうちの片方のみが帯電していて他方が帯電していない(無帯電である)場合(例えば、白色粒子が無帯電であるため、着色帯電粒子としては負帯電黒色粒子のみが存在する場合)であってもよく、このような場合にも本発明を適用できる。
【0093】
また、上記実施の形態においては、電子ペーパー100の上側絶縁層141が光透過性を有する(実質的に透明である)一方で、下側絶縁層142は光透過性を有さない(実質的に不透明である)こととしたが、これに限定されるものではない。例えば、上側絶縁層141と下側絶縁層142の双方が光透過性を有する(実質的に透明である)こととしてもよく、この場合には、上側絶縁層141と下側絶縁層142のいずれをも表示面121とすることが可能となる。
【0094】
また、上側絶縁層141と下側絶縁層142は、絶縁層でなくても用いることができる。具体的には、上側絶縁層141を、光透過性を示す樹脂をバインダーとして導電性微粒子を独立分散させた層とすることができる。光透明性を示す樹脂として、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の単独、もしくは2種以上のポリマーアロイ等が例示される。一方、導電性微粒子としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化チタン、硫化バリウム、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウムのそれぞれにアンチモン、インジウム、カーボン等をドーピングして導電化処理したもの、また、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属粒子や金属繊維、その他、カーボンブラック、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭素繊維、過塩素酸塩等が例示される。これらを混合して、全体として光透明性が担保できればよい。
【0095】
さらに、上側絶縁層141は導電性高分子材料から形成しても良い。導電性高分子材料としては、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアニリンの単独またはこれらの導電性高分子材料にAsF5、I2、BF4等をドーピングしたもの等が例示される。
【0096】
さらに、下側絶縁層142についても上側絶縁層141と同様の構成としてもよい。この場合、後述する画像記録装置1においては、画像記録装置1における感光体20の表面に当接する当接面を上側絶縁層141又は下側絶縁層142のいずれとしても使用することが可能となる。
【0097】
<画像記録装置>
上記の実施形態の画像記録装置1は、感光体20、帯電ユニット30、露光ユニット40、電界生成ユニット50をそれぞれ1つずつ備える構成としたが、これに限定されるものではない。
【0098】
たとえば、図7に示すように、各ユニットをそれぞれ2つずつ備える構成にしてもよい。すなわち、第一の感光体20aと、第一の帯電ユニット30a、第一の露光ユニット40a、第一の電界生成ユニット50aを用いて、画像を表示した(消去対象の画像が表示されている)電子ペーパー100について画像消去を行う。その後、搬送ユニット60により、画像消去後の電子ペーパー100を第二の感光体20bと第二の対向ローラー52bとの間に搬送し、第二の感光体20bと、第二の帯電ユニット30b、第二の露光ユニット40b、第二の電界生成ユニット50bを用いて、画像消去後の電子ペーパー100について新たな画像を記録するようにしてもよい。これにより、画像消去と画像記録の処理を連続して行うことができる。
【0099】
また、図8に示すように、電子ペーパー100が循環するように構成してもよい。すなわち、1回目に、画像を表示した(消去対象の画像が表示されている)電子ペーパー100について画像消去を行う。その後、搬送ユニット60により、画像消去後の電子ペーパー100を矢印Qの方向へ搬送して、感光体20と対向ローラー52との間に再び移動させる。そして、2回目に、画像消去後の電子ペーパー100について新たな画像を記録し、その画像記録後の電子ペーパー100を矢印P方向へ排出するようにしてもよい。
【0100】
さらに、電子ペーパー100に画像を記録する機能と画像を消去する機能との双方を備えた画像記録消去装置として用いる場合、操作部の一例としての液晶パネルを設け、操作者の操作入力に応じて画像記録モードと画像消去モードを切り替える構成にしてもよい。
【0101】
<対向ローラー52に印加される電圧波形>
上記の実施形態に係る画像記録装置1においては、図6に示した矩形波の電圧が対向ローラー52に印加されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図6(a)、図6(b)、図6(c)のそれぞれに代えて、図9(a)、図9(b)、図9(c)に示すような正弦波が印加されることとしてもよい。また、図10(a)、図10(b)、図10(c)に示すような三角波が印加されることとしてもよい。また、図11に示すような階段波の電圧が印加されることとしてもよい。なお、便宜上、図6のうち、図6(a)について、代用可能な階段波の第1例を図11(a)に示し、第2例を図11(b)に示す。
【符号の説明】
【0102】
1 画像記録装置、20 感光体、30 帯電ユニット、30a 帯電ローラー、40 露光ユニット、50 電界生成ユニット、52 対向ローラー、54 電圧印加部、60 搬送ユニット、62 ペーパーカセット、64 給紙ローラー、66 搬送ローラー、80 コントローラー(電圧制御部)、81 インターフェイス部、82 CPU、83 メモリー、84 ユニット制御回路、100 電子ペーパー、103 表示層、107 封止部、121 表示面、131 マイクロカプセル、132 バインダー、133 カプセル本体、141 上側絶縁層、142 下側絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示する電子ペーパーを、前記像担持体と前記対向部材との間に供給する供給部と、
前記対向部材に電圧を印加することにより、該間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記電子ペーパーに前記潜像に対応する画像を表示させる電圧印加部と、
前記電圧の値を制御する電圧制御部と、
を有する電子ペーパーへの画像記録装置であって、
前記像担持体に形成された潜像の最大電位の絶対値V1と、
前記像担持体に形成された潜像の最小電位の絶対値V2と、
前記対向部材に印加された対向電圧の電位の絶対値V3と、
の関係は、
V1とV3の差の絶対値とV2とV3の差の絶対値が、前記電子ペーパーを介した状態における前記像担持体と前記対向部材の間の放電開始電圧よりも小さいこと、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペーパーへの画像記録装置において、
前記V1、前記V2及び前記V3は、関係式1の関係を有し、
前記V3は、所定の直流電圧に所定の交流電圧を重畳するように前記電圧制御部により制御されること、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
関係式1:前記V1の絶対値>前記V2の絶対値>前記V3の絶対値
【請求項3】
潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像を表示する電子ペーパーを、前記像担持体と前記対向部材との間に供給する供給部と、
前記対向部材に電圧を印加することにより、該間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記電子ペーパーに前記潜像に対応する画像を表示させる電圧印加部と、
前記電圧の値を制御する電圧制御部と、
を有する電子ペーパーへの画像記録装置の制御方法であって、
前記電圧制御部により、
前記像担持体に形成された潜像の最大電位の絶対値V1と、
前記像担持体に形成された潜像の最小電位の絶対値V2と、
前記対向部材に印加された対向電圧の電位の絶対値V3と、
の関係が、
V1とV3の差の絶対値とV2とV3の差の絶対値が、前記電子ペーパーを介した状態における前記像担持体と前記対向部材の間の放電開始電圧よりも小さくなるように制御されること、
を特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−215461(P2011−215461A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84918(P2010−84918)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】