説明

電子ペーパー

【課題】屋内外の大型看板で使われている従来の印刷シートにかわる新しい表示媒体として利用することができる、優れた電子ペーパーを提供する。
【解決手段】基材上に配置された複数の画素において色表示をそれぞれ行う電子ペーパー201であって、各画素が、電気配線上独立した画素ユニット202をそれぞれ有しており、各画素ユニット202が、独自の識別情報と、ICチップ301に集積化された無線通信手段及び画素駆動手段を備える。そして各画素ユニット202において、無線通信手段が、外部の画像情報無線伝送装置から自己の画素ユニット202に対して送信された色情報を受信し、画素駆動手段が、無線通信手段が受信した色情報に対応した色表示を電子ペーパー画素208に行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給時に表示させた画像を電力供給停止後においても保持可能なシート状の画像表示メディアである電子ペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術として、紙のように薄くフレキシブルである電子ペーパーが知られている。この電子ペーパーは、表示させる画像を何度も書き換えることができ、表示中に消費電力が不要であり、紙と同じように反射光を利用して表示を行うため視野角が広く、直射日光に当たっても見易く目に対する負担が少ない、という利点を有している。また、デジタルサイネージ、所謂電子看板が映像情報サービスとしてよりビジネスの視点で現実味を増してきており(例えば、非特許文献1を参照のこと)、公共空間のデジタルサイネージ媒体として電子ペーパーの利用も始まっている(例えば、非特許文献2を参照のこと)。
【0003】
以下、従来の電子ペーパーの技術を図1に基づいて説明する。図1(a),(b)は、従来の電子ペーパーの上面図及び側面図である。従来の電子ペーパーでは、電子ペーパー駆動手段102から配線層103に配線104を格子状に縦横に伸ばし(マトリックス配線)、その交点で電子ペーパー画素101の発色を制御している。所謂マトリックス配線方式である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】月刊ディスプレイ、2009年4月号 Vol.15 No.4、「デジタルサイネージの市場動向」、足立吉弘著、第37項から第47項
【非特許文献2】月刊ディスプレイ、2010年7月号 Vol.16 No.7、「電子ペーパーのデジタルサイネージにおけるデザイン心理学からのアプローチ」、日比野治雄著、第20項から第24項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子ペーパーを屋内外の大型看板で使われている従来の印刷シートにかわる新しい表示媒体として利用するためには、電子ペーパーを大面積化する必要がある。しかし、従来の電子ペーパーでは電子ペーパーの大面積化により配線層103のマトリックス配線104の引き回しが長くなることで配線104の抵抗値が高くなり、電子ペーパー画素101を駆動できなくなるという問題が発生する。また、従来の電子ペーパーでは、配線層103の大面積化にともない電子ペーパーの製造が困難になるという問題が発生する。
【0006】
また、電子ペーパーを屋内外の大型看板で使われている従来の印刷シートにかわる新しい表示媒体として利用するためには、従来の印刷シート同様に裁断しその形状を自在に切り出せる必要がある。しかし、従来の電子ペーパーでは、裁断することで配線層103のマトリックス配線104により構成された回路を破壊することになるため、印刷シート同様に裁断しその形状を自在に切り出すことが出来ないという問題が発生する。
【0007】
また、大型看板は風雨に直接さらされるため、電子ペーパーを屋外の大型看板で使われている従来の印刷シートにかわる新しい表示媒体として利用するためには、電子ペーパーも印刷シート同様に高い耐久性をもつ必要がある。しかし、従来の電子ペーパーでは、電力供給や画像情報伝送のために外部と電気的接続をもつための接触式電気コネクターが必要であり耐久性が落ちるという問題が発生する。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋内外の大型看板で使われている従来の印刷シートにかわる新しい表示媒体として利用することができる、優れた電子ペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明は、請求項1に記載したように、
同一の基材上に配置された複数の画素において色表示をそれぞれ行う電子ペーパーであって、
前記各画素が、電気配線上独立した画素ユニットをそれぞれ有しており、
前記各画素ユニットが、独自の識別情報と、自己の前記識別情報に該当する色情報を受信する独立した無線通信手段と、前記色情報に対応した色表示を表示素子に行わせる独立した画素駆動手段と、を備え、
前記各画素ユニットにおいて、前記無線通信手段が、画像情報無線伝送装置から自己の画素ユニットに対して送信された前記色情報を受信し、前記画素駆動手段が、前記無線通信手段が受信した前記色情報に対応した色表示を前記表示素子に行わせる、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個々の画素が、電気配線上独立した画素ユニットをそれぞれ有しており、各画素ユニットが、自己の画素ユニットに対する色情報を無線通信手段が受信したときに、その色情報に対応した色表示を画素駆動手段によって表示素子に行わせる。したがって、電子ペーパーの画素を駆動・制御する回路は個々の画素毎に独立するため配線層のマトリックス配線が不要となり、電子ペーパーの大面積化により配線層のマトリックス配線の引き回しが長くなることで配線の抵抗値が高くなり、電子ペーパー画素を駆動できなくなるという、従来の問題を解決することができる。
【0011】
また、本発明によれば、電子ペーパーの画素と電子ペーパーの画素を駆動・制御する回路を一つの画素ユニットとして縦横に格子状に並べることによりいくらでも大きく高解像度な画面を構成することが出来るので、配線層の大面積化にともない電子ペーパーの製造が困難になるという問題を解決することができる。
【0012】
また、本発明によれば、電子ペーパーの画素を駆動・制御する回路は、電気配線上独立した画素ユニットとして基材上に存在することになる。したがって、裁断することで配線層のマトリックス配線により構成された回路を破壊することになるため、印刷シート同様に裁断しその形状を自在に切り出すことが出来ないという、従来の問題を解決することができる。
【0013】
また、本発明によれば、個々の画素ユニットが、独立した無線電力受信手段を備え、画像情報無線伝送装置からの色情報の送信信号に重畳した電力信号を受信し、電力信号から得た電力を、無線通信手段、画素駆動手段、及び、表示素子の電源として供給する。これにより、請求項1に記載の無線通信手段と相俟って、各画素ユニットに対する外部からの電力供給と各画素ユニットの外部との通信は無線により行われ、外部と電気的接続をもつための接触式電気コネクターが各画素ユニットに不要となる。したがって、従来の電子ペーパーでは、電力供給や画像情報伝送のために外部と電気的接続をもつための接触式電気コネクターが必要であり耐久性が落ちるという、従来の問題を解決することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a),(b)は従来の電子ペーパーの、画素の制御回路の上面図及び側面図である。
【図2】本発明に係わる電子ペーパーの実施の形態を表す機能ブロック図である。
【図3】(a),(b)は本発明に係わる電子ペーパーの実施の形態を表す上面図及び側面図である。
【図4】本発明に係わる電子ペーパーの実施の形態を表す、大型看板への電子ペーパー貼付方法を示す説明図である。
【図5】本発明に係わる電子ペーパーの実施の形態を表す画像情報データ転送方法を示す説明図である。
【図6】本発明に係わる電子ペーパーの実施の形態を表す画像情報データ転送方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明される発明の実施の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明に係わる電子ペーパーの実施の形態を示す機能ブロック図である。以下に、図2中左の、電子ペーパーを説明する。
【0017】
この電子ペーパー201は、従来の電子ペーパー同様に二次元的に並べられた画素で構成されるが、個々の画素が独立した電子回路と表示素子208を備えており、表示素子208と電子回路で構成させた画素ユニット202が二次元的に並べられている。画素ユニット202を構成する電子回路には、アンテナ203を介して図2中右の画像情報無線伝送装置212と無線通信を行い、画素毎(画素ユニット202毎)に異なる独自の識別情報206を画像情報無線伝送装置212に送信して、画像情報無線伝送装置212から画素毎に異なる色情報210を受信する、無線通信制御手段205が含まれる。また、画像情報無線伝送装置212からアンテナ203を介して受信した無線信号から色情報の送信信号を分離した後の電力信号211を整流し回路全体のDC電力を生成する、無線電力受信手段204が含まれる。これらアンテナ203、無線電力受信手段204、及び、無線通信制御手段205を構成する電子回路には、例えばRFIDの規格であるISO/IEC15693準拠のRFIDタグと同様の仕組みを利用することが出来る。
【0018】
また、この電子ペーパー201の画素ユニット202を構成する電子回路には電子ペーパー駆動手段207が含まれる。電子ペーパー駆動手段207は、無線電力受信手段204が生成したDC電力を昇圧して電子ペーパーを駆動するのに十分な電圧を生成し、無線通信制御手段205から受け取った色情報210に基づき電子ペーパー画素(表示素子)208を発色駆動させる。
【0019】
以下に、図2中右の、画像情報無線伝送装置212を説明する。
【0020】
画像情報無線伝送装置212を構成する電子回路は、アンテナ213を介して電子ペーパー201の画素ユニット202を構成する無線通信制御手段205と無線通信を行い、画素毎(画素ユニット202毎)に異なる識別情報206を受信して、画素毎(画素ユニット202毎)に異なる色情報210を無線信号により、受信した識別情報206に対応する電子ペーパー201の画素ユニット202に送信する、無線通信制御手段214が含まれる。無線通信制御手段214は、電子ペーパー201上の画素(画素ユニット202)の識別情報206と色情報210とを関連づけた画像情報データテーブル215を内部のメモリ(図示せず)に記憶している。この画像情報データテーブル215は、後述するPC501(図5参照)によって生成されて、無線通信制御手段214に転送される。各画素(画素ユニット202)に対する色情報210を送信する際に無線通信制御手段214は、画素ユニット202から受信した識別情報206をアドレスポインタとして画像情報データテーブル215を参照し、その画素(画素ユニット202)に対応する色情報210を識別情報206と共にアンテナ213から無線信号で送信する。この無線信号には、電子ペーパー201の各画素ユニット202を構成する電子回路に電力を供給するための電力信号211が重畳されている。この無線通信制御手段214を構成する電子回路には、例えばRFIDの規格であるISO/IEC15693準拠のRFIDリーダライタと同様の仕組みを利用することが出来る。
なお、画像情報無線伝送装置212から画素ユニット202の識別情報206と共に色情報210を送信させ、画素ユニット202の無線通信制御手段が自己の識別情報206を受信したときに、その識別情報206と共に受信した色情報210により電子ペーパー駆動手段207が電子ペーパー画素(表示素子)208を発色駆動させるようにしても良い。
【0021】
以下に、図3にて、電子ペーパー201の概略構造を示す。
【0022】
画素ユニット202が格子状に並べられ、透明樹脂シート306と樹脂シート307からなる基材300の間に封入されている。無線電力受信手段204、無線通信制御手段205、及び、電子ペーパー駆動手段207は、ICチップ301に集積化されている。上述のように、電子ペーパー201の画素ユニット202を構成する電子回路は個々の画素毎に電気配線上独立しているため、例えば図中の一点鎖線で示す裁断ライン305において裁断しても電子ペーパー201の機能は損なわれない。また、すべての電子回路が樹脂シート307の間に封入されており、外部と電気的接続をもつための接触式電気コネクターがないため、風雨に対する耐久性を備える。
【0023】
以下に、図4にて、大型看板に電子ペーパーを貼付する手順を説明する。
【0024】
電子ペーパー201を、大型看板401の大きさや形状に従い、1枚もしくは複数貼付したのち、大型看板401の大きさや形状に従い適宜裁断する。電子ペーパー201を任意の大きさや形状に裁断できるので、どのような大きさ及び形状の大型看板401であっても電子ペーパー201によって構成することができる。
【0025】
以下に、図5と図6にて、PC(パーソナルコンピュータ)による画像のデザインから、大型看板401に取り付けられた電子ペーパー201による表示画像を書き換えるまでの、一連の手順を説明する。
【0026】
まず、図5から説明する。PC501にて、大型看板401(図4参照)に取り付けられた電子ペーパー201の画素(画素ユニット202)と同じ画素数を持つ画像502をデザインする。電子ペーパー201の各画素(画素ユニット202)に割り振られた識別情報206(言い換えれば画像502の各画素のアドレス情報)と各画素の色情報210を対応付けた画像情報データテーブル215を、PC501から画像情報無線伝送装置212へ転送する。なお、ここでは、画像情報無線伝送装置212が携帯端末であるものとする。
【0027】
次に、図6を説明する。大型看板401に取り付けられた電子ペーパー201の表示画像を更新する作業者601は、大型看板401に取り付けられた電子ペーパー201の表面を任意の場所から任意の方向へ画像情報無線伝送装置212にてなぞる。画像情報無線伝送装置212は、色情報210の送信信号に重畳して送信する電力信号211により、画像情報無線伝送装置212でなぞった電子ペーパー201の画素ユニット202へ電力を伝送して画素ユニット202の電子回路を起動させる。そして、起動させた電子回路から送信される、その画素ユニット202の識別情報206を受信する。画像情報無線伝送装置212は、受信した識別情報206に対応する画素(画素ユニット202)の色情報210を画像情報データテーブル215から選択し、対象の画素ユニット202へ送信する。画素ユニット202の電子ペーパー駆動手段207は、無線通信制御手段205が受信した色情報210に基づき、電子ペーパー画素208の色を変更する。なお、画像更新作業者601が画像情報無線伝送装置212でなぞって色を変更させた後の画素ユニット202を、図6中の符号603で示し、画像情報無線伝送装置212でなぞる前の、色を変更させる前の画素ユニット202を、図6中の符号604で示す。また、図6中の引用符号606は、画像更新作業者601が画像情報無線伝送装置212により画素ユニット202をなぞった軌跡を示す。
【0028】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0029】
また、本明細書では、画像更新作業者601が画像を更新するために画像情報無線伝送装置212にて電子ペーパー201をなぞる作業を行う例にとって本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。画像更新作業者601に代わって、画像情報無線伝送装置212を保持し電子ペーパー201上を走行する機構部を用いても、本発明を実施できる。
【0030】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0031】
101…電子ペーパー画素
102…電子ペーパー駆動手段
103…配線層
104…配線
201…電子ペーパー
202…画素ユニット
203…アンテナ
204…無線電力受信手段
205…無線通信制御手段
206…識別情報
207…電子ペーパー駆動手段
208…電子ペーパー画素
210…色情報
211…電力信号
212…画像情報無線伝送装置
213…アンテナ
214…無線通信制御手段
215…画像情報データテーブル
300…基材
301…ICチップ
305…裁断ライン
306…透明樹脂シート
307…樹脂シート
401…大型看板
501…PC
502…画像
601…画像更新作業者
603…色を変更させた後の画素ユニット
604…色を変更させる前の画素ユニット
606…画像情報無線伝送装置でなぞった軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の基材上に配置された複数の画素において色表示をそれぞれ行う電子ペーパーであって、
前記各画素が、電気配線上独立した画素ユニットをそれぞれ有しており、
前記各画素ユニットが、独自の識別情報と、自己の画素ユニットに該当する色情報を受信する独立した無線通信手段と、前記色情報に対応した色表示を表示素子に行わせる独立した画素駆動手段と、を備え、
前記各画素ユニットにおいて、前記無線通信手段が、画像情報無線伝送装置から自己の画素ユニットに対して送信された前記色情報を受信し、前記画素駆動手段が、前記無線通信手段が受信した前記色情報に対応した色表示を前記表示素子に行わせる、
ことを特徴とする、電子ペーパー。
【請求項2】
前記各画素ユニットが、独立した無線電力受信手段をさらに備え、該無線電力受信手段が、前記色情報の送信信号に重畳して前記画像情報無線伝送装置が送信する電力信号を受信し、該電力信号から得た電力を、前記無線通信手段、前記画素駆動手段、及び、前記表示素子の電源として供給することを特徴とする、請求項1記載の電子ペーパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−73294(P2012−73294A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216020(P2010−216020)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】