説明

電子メディエーター、酵素固定化電極、燃料電池、電子機器、移動体、発電システム、コージェネレーションシステムおよび電極反応利用装置

【課題】大きな電流値を取りながら同時に電位も上げることができる電子メディエーターの適用により出力の飛躍的な向上を図ることができる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料極1と空気極3とがプロトン伝導体である電解質層5を介して対向した構造を有し、燃料極1に少なくとも燃料分解酵素および電子メディエーターが固定化された酵素固定化電極を用いる燃料電池において、電子メディエーターの具体的な化学構造を特定する。電子メディエーターは、2−アミノ−1, 4−ナフトキノン(ANQ)、2−メトキシ−1,4−ナフトキノン(MNQ)などである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子メディエーター、酵素固定化電極、燃料電池、電子機器、移動体、発電システム、コージェネレーションシステムおよび電極反応利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、基本的に燃料極(負極)と酸化剤極あるいは空気極(正極)と電解質(プロトン伝導体)とを備えるものであり、その動作原理は水の電気分解の逆動作で、水素と酸素とにより水(H2 O)を生成するとともに電気を発生する。すなわち、燃料極に供給された燃料(水素)が酸化されて電子とプロトン(H+ )とに分離し、電子は燃料極に渡され、H+ は電解質を通って酸化剤極まで移動する。酸化剤極では、このH+ が、外部から供給された酸素および燃料極から外部回路を通って送られた電子と反応してH2 Oを生成する。
【0003】
このように、燃料電池は、燃料の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する高効率な発電装置であり、天然ガス、石油、石炭などの化石エネルギーが持つ化学エネルギーを使用場所や使用時によらずに、しかも高い変換効率で電気エネルギーとして取り出すことができる。このため、従来から大規模発電用途などとしての燃料電池の開発研究が活発に行われている。例えば、スペースシャトルに燃料電池が搭載され、電力と同時に乗組員用の水を供給できることや、クリーンな発電装置であることを証明した実績がある。
【0004】
また、近年においては、電解質にイオン交換膜を用いた固体高分子型燃料電池など、室温から90℃程度の比較的低温の温度域で作動が可能な燃料電池が開発されており、注目を集めている。
上述した各種利点から、固体高分子型燃料電池は、大規模発電用途のみならず、自動車の駆動用電源、パーソナルコンピュータやモバイル機器などのポータブル電源などの小型システムへの応用が模索されつつある。
【0005】
しかしながら、固体高分子型燃料電池は、上述したように、比較的低温で作動が可能であるという利点があるものの、多くの課題を有している。例えば、燃料としてメタノールを用い、かつ室温付近で動作させた場合の一酸化炭素(CO)による触媒被毒、クロスオーバーによるエネルギーロスの発生、白金(Pt)などの高価な貴金属の触媒が必要であること、燃料に水素を用いる場合の取り扱いが困難であることなどである。
【0006】
そこで、生物内で行われている生体代謝が高効率なエネルギー変換機構であることに着目し、これを燃料電池に適用する提案がなされている。ここでいう生体代謝には、微生物や細胞内で行われる呼吸、光合成などが含まれる。生体代謝は、発電効率が極めて高く、また、室温程度の穏やかな条件で反応が進行するという特長を兼ね備えている。
【0007】
例えば、呼吸は、糖類、脂肪、タンパク質などの栄養素を微生物または細胞内に取り込み、これらの化学エネルギーを、数々の酵素反応ステップを有する解糖系およびトリカルボン酸(TCA)回路を介して二酸化炭素(CO2 )を生成する過程でニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+ )を還元して還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とすることで酸化還元エネルギー、すなわち電気エネルギーに変換し、さらに電子伝達系においてこれらのNADHの電気エネルギーをプロトン勾配の電気エネルギーに直接変換するとともに酸素を還元し、水を生成する機構である。ここで得られた電気エネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)合成酵素を介して、アデノシン二リン酸(ADP)からATPを生成し、このATPは微生物や細胞が生育するために必要な反応に利用される。このようなエネルギー変換は、細胞質ゾルおよびミトコンドリアで行われている。
【0008】
また、光合成は、光エネルギーを取り込み、電子伝達系を介してニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+ )を還元して還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)とすることで電気エネルギーに変換する過程で、水を酸化し酸素を生成する機構である。この電気エネルギーは、CO2 を取り込み炭素固定化反応に利用され、炭水化物の合成に利用される。
【0009】
上述したような生体代謝を燃料電池に利用する技術としては、微生物中で発生した電気エネルギーを電子メディエーターを介して微生物外に取り出し、この電子を電極に渡すことで電流を得る微生物電池が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
しかしながら、微生物および細胞には、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換といった目的の反応以外にも不要な機能が多く存在することから、上述した方法では、本来目的としない反応に電気エネルギーが消費されてしまうためエネルギー変換効率が低く、その分、ロスが多くなるという問題があった。
【0011】
そこで、最近においては、生体代謝のうち、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換反応に関与する酵素や電子メディエーターを利用して高いエネルギー変換効率を実現した燃料電池が開発され、比較的大きな電気エネルギーを得ることができるようになっている(例えば、特許文献2および非特許文献1参照。)。
【0012】
【特許文献1】特開2000−133297号公報
【特許文献2】特開2004−71559号公報
【非特許文献1】Chem. Lett. 32(10)880-881(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献2および非特許文献1に記載されている従来公知の燃料電池においては、電子メディエーターと酵素との組み合わせにより、燃料から取り出せる電気エネルギーの量が制限されてしまうという問題があった。以下このことについて説明する。
【0014】
図1に、燃料電池における電位−電流曲線の一般的な状態図を示す。図1中、曲線1101〜1103は負極側の電位−電流曲線を示し、曲線1104は正極側の電位−電流曲線を示す。
電流値を大きくするためには、電子メディエーターの酸化還元電位を酵素の酸化還元電位に近づけて、電子メディエーターと酵素との反応速度を上げればよいが、その分、標準状態(曲線1102)よりも、電位が小さくなってしまう(図中、曲線1103)。
一方、電位が大きくなるようにすると、酵素の酸化還元電位と電子メディエーターの酸化還元電位とが離れてしまい、一般的に標準状態(曲線1102)よりも電流値は減少してしまう(図中、曲線1101)。
このように、酵素−電子メディエーター型の燃料電池においては、上記のように電流値と電位とはトレードオフの関係が一般的であるため、大きな電流値を取りながら同時に電位も上げる電子メディエーターを利用することは非常に困難であり、これが、酵素−電子メディエーター型燃料電池で出力を向上させる上での大きな障害となっていた。
【0015】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、大きな電流値を取りながら同時に電位も上げることができる電子メディエーターの適用により出力の飛躍的な向上を図ることができる燃料電池ならびにこの燃料電池に適用して好適な酵素固定化電極および電子メディエーターを提供することである。
この発明が解決しようとする課題は、より一般的には、大きな電流値を取りながら同時に電位も上げることができる電子メディエーターの適用により出力の飛躍的な向上を図ることができる燃料電池などの電極反応利用装置を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記のような優れた燃料電池を用いる電子機器、移動体、発電システムおよびコージェネレーションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、燃料電池などの電極反応利用装置に適用して好適な電子メディエーターの具体的な化学構造を特定し、この電子メディエーターを実際に燃料電池に適用して出力の飛躍的な向上を図ることができることを実証し、この発明を案出するに至ったものである。
【0017】
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
一般式
【化25】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電子メディエーターである。
【0018】
第2の発明は、
一般式
【化26】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電子メディエーターである。
【0019】
第3の発明は、
酵素および電子メディエーターが固定化された酵素固定化電極において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化27】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化28】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とするものである。
この酵素固定化電極においては、好適には、多孔質カーボンからなる電極材に、少なくとも、酵素および電子メディエーターが固定化される。酵素は例えば分解酵素、特に燃料分解酵素であり、必要に応じてこれに加えて他の一種または二種以上の酵素を含む。
【0020】
第4の発明は、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化29】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化30】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とするものである。
この負極においては、好適には、多孔質カーボンからなる電極材に、少なくとも、酵素および電子メディエーターが固定化される。酵素は少なくとも燃料分解酵素を含み、必要に応じてこれに加えて他の一種または二種以上の酵素を含む。
燃料としては、各種のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、代表的なものを挙げると、メタノール、エタノール、単糖類、多糖類などである。
例えば、燃料としてグルコースのような単糖類を用いる場合には、好適には、酵素として、単糖類の酸化を促進し分解する酸化酵素と、酸化酵素によって還元される補酵素を酸化体に戻す補酵素酸化酵素とが固定化される。この補酵素酸化酵素の作用により、補酵素が酸化体に戻るときに電子が生成され、補酵素酸化酵素から電子メディエーターを介して電極に電子が渡される。酸化酵素としては例えばグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が、補酵素としては例えばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+ )あるいはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+ )が、補酵素酸化酵素としては例えばジアホラーゼ(DI)が用いられる。
負極に上記の電子メディエーター、補酵素としての還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、酸化酵素としてのグルコースデヒドロゲナーゼおよび補酵素酸化酵素としてのジアホラーゼを固定化する場合、最も好適には、これらを1.0(mol):0.33〜1.0(mol):(1.8〜3.6)×106 (U):(0.85〜1.7)×107 (U)の比で固定化する。ただし、U(ユニット)とは、酵素活性を示す一つの指標であり、ある温度およびpHにおいて1分間当たり1μmolの基質が反応する度合いを示す。
【0021】
燃料として多糖類(広義の多糖類であり、加水分解によって2分子以上の単糖を生じる全ての炭水化物を指し、二糖、三糖、四糖などのオリゴ糖を含む)を用いる場合には、好適には、上記の酸化酵素、補酵素酸化酵素、補酵素および電子メディエーターに加えて、多糖類の加水分解などの分解を促進し、グルコースなどの単糖類を生成する分解酵素も固定化される。多糖類としては、具体的には、例えば、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、マルトース、スクロース、ラクトースなどが挙げられる。これらは単糖類が二つ以上結合したものであり、いずれの多糖類においても結合単位の単糖類としてグルコースが含まれている。なお、アミロースとアミロペクチンとはデンプンに含まれる成分であり、デンプンはアミロースとアミロペクチンとの混合物である。多糖類の分解酵素としてグルコアミラーゼを用い、単糖類を分解する酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを用いた場合には、グルコアミラーゼによりグルコースにまで分解することができる多糖類、例えばデンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、マルトースのいずれかを含むものであれば、これを燃料として発電することが可能となる。なお、グルコアミラーゼはデンプンなどのα−グルカンを加水分解しグルコースを生成する分解酵素であり、グルコースデヒドロゲナーゼはβ−D−グルコースをD−グルコノ−δ−ラクトンに酸化する酸化酵素である。
【0022】
分解酵素としてセルラーゼを用い、酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを用いた燃料電池では、セルラーゼによりグルコースにまで分解することができるセルロースを燃料とすることができる。セルラーゼは、より詳しくはセルラーゼ(EC 3.2.1.4)、エキソセロビオヒドラーゼ(EC 3.2.1.91)、β−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)などのいずれか少なくとも一種である。なお、分解酵素としてグルコアミラーゼとセルラーゼとを混合して用いてもよく、この場合には、自然界で生産される多糖類の大半を分解することができるため、これらを多く含むもの、例えば生ごみなどを燃料とすることが可能となる。
【0023】
また、分解酵素としてα−グルコシダーゼを用い、酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを用いた燃料電池では、α−グルコシダーゼによりグルコースに分解されるマルトースを燃料とすることができる。
また、分解酵素としてスクラーゼを用い、酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを用いた燃料電池では、スクラーゼによりグルコースとフルクトースとに分解されるスクロースを燃料とすることができる。スクラーゼは、より詳しくはα−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)、スクロース−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.48)、β−フルクトフラノシダーゼ(EC 3.2.1.26)などの少なくともいずれか一種である。
また、分解酵素としてβ−ガラクトシダーゼを用い、酸化酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを用いた燃料電池では、β−ガラクトシダーゼによりグルコースとガラクトースとに分解されるラクトースを燃料とすることができる。
必要に応じて、これらの燃料となる多糖類も負極上に固定化してもよい。
【0024】
特に、デンプンを燃料とする燃料電池では、デンプンを糊化してゲル状の固形化燃料としたものを用いることもできる。この場合、糊化したデンプンを酵素などが固定化された負極に接触させるか、あるいは負極上に酵素などとともに固定化する方法をとることができる。このような電極を用いると、負極表面のデンプン濃度を、溶液中に溶解したデンプンを用いた場合よりも高い状態に保持することができ、酵素による分解反応がより速くなり、出力が向上するとともに、燃料の取り扱いが溶液の場合よりも容易で、燃料供給システムを簡素化することができ、しかも燃料電池を天地無用とすることができるため、モバイル機器に用いたときに非常に有利である。
正極には、酵素が固定化されても固定されなくてもよい。酵素が固定化される場合、この酵素は、典型的には酸化酵素を含む。この酸化酵素としては、例えば、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼなどを用いることができる。この場合、正極には、好適には、酵素に加えて電子メディエーターも固定化される。電子メディエーターとしては、例えば、ヘキサシアノ鉄酸カリウム、フェリシアン化カリウム、オクタシアノタングステン酸カリウムなどを用いる。電子メディエーターは、好適には、十分に高濃度、例えば、平均値で0.64×10-6mol/mm2 以上固定化する。
正極または負極の電極材としては、カーボン系材料などの従来公知の材料を用いることができるほか、多孔体材料からなる骨格と、この骨格の少なくとも一部の表面を被覆する、カーボン系材料を主成分とする材料とを含む多孔体導電材料を用いることができる。この多孔体導電材料は、多孔体材料からなる骨格の少なくとも一部の表面に、カーボン系材料を主成分とする材料をコーティングすることにより得ることができる。この多孔体導電材料の骨格を構成する多孔体材料は、多孔率が高くても骨格を安定に維持することができるものであれば、基本的にはどのようなものであってもよく、導電性の有無も問わない。多孔体材料としては、好適には、高多孔率および高導電性を有する材料が用いられる。このような高多孔率および高導電性を有する多孔体材料としては、具体的には、金属材料(金属または合金)や、骨格を強固にした(もろさを改善した)カーボン系材料などを用いることができる。多孔体材料として金属材料を用いる場合、金属材料は溶液のpHや電位などの使用環境との兼ね合いにより状態安定性が異なることから様々な選択肢が考えられるが、例えば、ニッケル、銅、銀、金、ニッケル−クロム合金、ステンレス鋼などの発泡金属あるいは発泡合金は入手しやすい材料の一つである。多孔体材料としては、上記の金属材料やカーボン系材料以外に樹脂材料(例えば、スポンジ状のもの)を用いることもできる。この多孔体材料の多孔率および孔径(孔の最小径)は、この多孔体材料からなる骨格の表面にコーティングする、カーボン系材料を主成分とする材料の厚さとの兼ね合いで、多孔体導電材料に要求される多孔率および孔径に応じて決められる。この多孔体材料の孔径は一般的には10nm〜1mm、典型的には10nm〜600μmである。一方、骨格の表面を被覆する材料は、導電性を有し、想定される作動電位において安定なものを用いる必要がある。ここでは、このような材料としてカーボン系材料を主成分とする材料を用いる。カーボン系材料は一般に電位窓が広く、しかも化学的に安定なものが多い。このカーボン系材料を主成分とする材料は、具体的には、カーボン系材料のみからなるものと、カーボン系材料を主成分とし、多孔体導電材料に要求される特性などに応じて選ばれる副材料を微量含む材料とがある。後者の材料の具体例を挙げると、カーボン系材料に金属などの高導電性材料を添加することにより電気伝導性を向上させた材料や、カーボン系材料にポリテトラフルオロエチレン系材料などを添加することにより表面撥水性を付与するなど、導電性以外の機能を付与した材料である。カーボン系材料にも様々な種類が存在するが、いかなるカーボン系材料であってもよく、カーボン単体のほか、カーボンに他の元素を添加したものであってもよい。このカーボン系材料は、特に、高導電性・高表面積を有する微細粉末カーボン材料が好ましい。このカーボン系材料としては、具体的には、例えば、KB(ケッチェンブラック)などの高導電性を付与したものや、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの機能性カーボン材料などを用いることができる。このカーボン系材料を主成分とする材料のコーティング方法は、必要に応じて適当な結着剤を用いるなどして多孔体材料からなる骨格の表面にコーティング可能であれば、いかなるコーティング方法を用いてもよい。この多孔体導電材料の孔径は、その孔を通して基質などを含む溶液が容易に出入り可能な程度の大きさに選ばれ、一般的には9nm〜1mm、より一般的には1μm〜1mm、さらに一般的には1〜600μmである。多孔体材料からなる骨格の少なくとも一部の表面がカーボン系材料を主成分とする材料により被覆された状態、あるいは、多孔質材料からなる骨格の少なくとも一部の表面をカーボン系材料を主成分とする材料によりコーティングした状態では、孔が全て互いに連通し、あるいは、カーボン系材料を主成分とする材料による目詰まりが発生しないようにするのが望ましい。
プロトン伝導体として緩衝物質(緩衝液)を含む電解質を用いる場合には、高出力動作時に十分な緩衝能を得ることができ、酵素が本来持っている能力を十分に発揮することができるようにするために、電解質に含まれる緩衝物質の濃度を0.2M以上2.5M以下にすることが有効であり、好適には0.2M以上2M以下、より好適には0.4M以上2M以下、さらに好適には0.8M以上1.2M以下とする。緩衝物質は、一般的には、pKa が6以上9以下のものであれば、どのようなものを用いてもよいが、具体例を挙げると、リン酸二水素イオン(H2 PO4 - )、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(略称トリス)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジル酸、炭酸(H2 CO3 )、クエン酸水素イオン、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略称トリシン)、グリシルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略称ビシン)などである。リン酸二水素イオン(H2 PO4 - )を生成する物質は、例えば、リン酸二水素ナトリウム(NaH2 PO4 )やリン酸二水素カリウム(KH2 PO4 )などである。緩衝物質を含む電解質のpHは、好適には7付近であるが、一般的には1〜14のいずれであってもよい。
この燃料電池は、およそ電力が必要なもの全てに用いることができ、大きさも問わないが、例えば、電子機器、移動体(自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船など)、動力装置、建設機械、工作機械、発電システム、コージェネレーションシステムなどに用いることができ、用途などによって出力、大きさ、形状、燃料の種類などが決められる。
【0025】
第5の発明は、
一般式
【化31】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電子メディエーターである。
【0026】
第6の発明は、
酵素および電子メディエーターが固定化された酵素固定化電極において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化32】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とするものである。
この酵素固定化電極には、必要に応じて、式(3)で表される化合物またはその誘導体からなる電子メディエーターに加えて、式(1)で表される化合物またはその誘導体からなる電子メディエーター、および/または、式(2)で表される化合物またはその誘導体からなる電子メディエーターを併せて固定化してもよい。
第6の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第3および第4の発明に関連して説明したことが成立する。
【0027】
第7の発明は、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化33】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とするものである。
第7の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第4および第6の発明に関連して説明したことが成立する。
【0028】
第8の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いる電子機器において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化34】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化35】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
【0029】
第9の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いる電子機器において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化36】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
第8および第9の発明による電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器(携帯情報端末機(PDA)など)、ロボット、パーソナルコンピュータ(デスクトップ型、ノート型の双方を含む)、ゲーム機器、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ)、車載機器、家庭電気製品、工業製品などである。
第8および第9の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第4および第6の発明に関連して説明したことが成立する。
【0030】
第10の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いる移動体において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化37】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化38】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
【0031】
第11の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いる移動体において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化39】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
第10および第11の発明による移動体は、基本的にはどのようなものであってもよく、具体例を挙げると、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船などである。
第10および第11の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第4および第6の発明に関連して説明したことが成立する。
【0032】
第12の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いる発電システムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化40】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化41】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
【0033】
第13の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いる発電システムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化42】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
第12および第13の発明による発電システムは、基本的にはどのようなものであってもよく、その規模も問わない。
第12および第13の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第4および第6の発明に関連して説明したことが成立する。
【0034】
第14の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いるコージェネレーションシステムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化43】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化44】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
【0035】
第15の発明は、
一つまたは複数の燃料電池を用いるコージェネレーションシステムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化45】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするものである。
第14および第15の発明によるコージェネレーションシステムは、基本的にはどのようなものであってもよく、その規模も問わない。
第14および第15の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第4および第6の発明に関連して説明したことが成立する。
【0036】
第16の発明は、
酵素および電子メディエーターが固定化された電極を有する電極反応利用装置において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化46】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化47】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とするものである。
【0037】
第17の発明は、
酵素および電子メディエーターが固定化された電極を有する電極反応利用装置において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化48】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とするものである。
【0038】
第16および第17の発明において、電極反応利用装置には、上記の燃料電池、すなわちバイオ燃料電池のほか、バイオセンサー(グルコースセンサーなど)、バイオリアクターなどが含まれ、酵素としては個々の目的に応じたものが用いられる。
第16および第17の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第3、第4および第6の発明に関連して説明したことが成立する。
【0039】
上述のように構成されたこの発明においては、上記の式(1)、(2)または(3)で表される化学構造を有する化合物またはその誘導体からなる電子メディエーターは、最低空軌道(LUMO)のエネルギーが安定であり、かつ酵素との構造親和性向上効果を有する。また、特に式(3)で表される化学構造を有する電子メディエーターはX1 、X3 、X4 の存在によりそれ自身の疎水性が特に高く、液中に溶出しにくい。
上記の式(2)または(3)で表される化学構造を有する化合物においてNX2 3 基がアミノ基(NH2 )であるものからなる電子メディエーターにおける上記の酵素との構造親和性向上効果および疎水性についてより詳細に説明する。
一般に、電子メディエーターの酸化還元電位が下がると、酵素反応における酸化還元反応を行うには電位が低すぎるため、エネルギー的には必然的に反応速度は落ちるはずである。しかしながら、本発明者らが検討を重ねた結果、上記の式(2)または(3)で表される化学構造におけるようにアミノ基が存在すると、酸化還元電位が低くても酵素反応速度が大きく、酵素/電子メディエーター固定化電極ではさらにその効果が高まることが分かった。これより、アミノ基が酵素(例えば、ジアホラーゼなど)との酵素反応に非常に重要な役割を果たしていることが示唆される。化学反応速度は、上記のエネルギー的な側面と反応確率(頻度因子)との両者の積により支配される。エネルギー的にはアミノ基は不利であるため、本来、酵素反応速度は下がるはずであるが実際には上がっていることから、アミノ基が頻度因子に対して何らかの役割を果たしていると考えられる。このようにアミノ基を有する電子メディエーターは弱塩基性であり、酵素と反応する際はH+ 付加体で反応していると考えるのが妥当である。これを仮定した場合、中性で負に帯電している酵素(例えば、ジアホラーゼの等電点は4であり、中性で負に帯電している)は上記の電子メディエーターのH+ 付加体と静電的に引き付け合うと考えられ、これが頻度因子を上げる大きな要因になっていると考えられる。さらに、上記の電子メディエーターのH+ 付加体のLUMOの電子密度分布(電荷分布と酸化還元反応に大きく寄与する)を見てみると、正に帯電したアミノ基側にLUMOの電子密度が局在化している。これは、電子メディエーターが酵素に接近する部分がそのまま反応サイトになっていることを意味しており、これもこの電子メディエーターを用いた場合に酵素反応速度が速い理由の一つになっていると考えられる。電子メディエーターとして従来用いられているACNQ(2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン)もアミノ基を持っているため、酵素反応速度が速くなってもよいはずであるが、この場合は隣のカルボン酸がアミノ基と相互作用するため、アミノ基が本来持っている酵素反応における優位性を打ち消してしまっているために、実際の酵素反応は低いと考えられる。実際に、例えばAMNQ(2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン)の場合は、隣のメチル基と相互作用することはないので、速い酵素反応速度が維持されていることからも説明できる。
次に、上記の式(2)または(3)で表される化学構造におけるX1 がメチル基などのアルキル基である場合におけるこのアルキル基の効果については、アルキル基は電子供与性基であるため、電子メディエーターの疎水性の飛躍的な向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、酵素固定化電極あるいは燃料電池を構成する電極、具体的には負極に酵素とともに固定化される電子メディエーターとして、上記の式(1)、(2)または(3)で表わされる化学構造を有する化合物を適用したことにより、電子メディエーターの最低空軌道(LUMO)のエネルギーが安定化し、かつ酵素との構造親和性向上効果を得ることができるため、既存の電子メディエーター(ACNQ、VK3)を用いた場合と異なり、大きな電流値を取りながら同時に電位も上げることができる。このため、従来提案されている燃料電池に比べて出力の飛躍的な向上を図ることができる。これに加えて、特に式(3)で表わされる化学構造を有する化合物を電子メディエーターとして適用した場合には、電子メディエーター自身の疎水性が高いため、酵素固定化電極あるいは燃料電池の負極に電圧を印加した状態においても、電子メディエーターの固定化膜からの溶け出しを極めて有効に抑えることができる。これによって、燃料電池の出力の安定性および寿命の向上を図ることができる。そして、このように優れた燃料電池を用いることにより、高性能の電子機器、移動体、発電システム、コージェネレーションシステムなどを実現することができる。
【0041】
また、この発明による電極反応利用装置によれば、電極に酵素とともに固定化される電子メディエーターとして、上記の式(1)、(2)または(3)で表わされる化学構造を有する化合物を適用したことにより、上記と同様な理由により、出力の飛躍的な向上を図ることができ、特に式(3)で表わされる化学構造を有する化合物を電子メディエーターとして適用した場合には、出力の安定性および寿命の向上を図ることができる。例えば、グルコースセンサーなどのバイオセンサーでは、感度の大幅な向上を図ることができ、特に式(3)で表わされる化学構造を有する化合物を電子メディエーターとして適用した場合には、センサー自身の寿命の向上を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2に、この発明の第1の実施形態による燃料電池の概略構成図を示す。
図2に示すように、この燃料電池10は、燃料極(負極:アノード)1と、空気極( 正極:カソード) 3と、これらの燃料極1と空気極3とを隔離する電解質層5とにより構成されている。言い換えれば、この燃料電池10は、燃料極1と空気極3とが電解質層5を介して対向した構造を有し、あるいは、電解質層5が燃料極1と空気極3とによりなる一対の電極によって挟持されてなる。電解質層5はイオン透過性を有するものであり、具体的にはプロトン伝導体である。
燃料極1は、電極材に、少なくとも酵素および電子メディエーターが担持されたものであり、グルコースなどの燃料7から電子を取り出すとともにプロトン(H+ )9を発生する。
一方、空気極3では、燃料極1から電解質層5を介して移動してきたH+ が例えば空気中の酸素(O2 )と反応することによって水(H2 O)を生成する。
【0043】
燃料極1を構成する電極材は、後述する酵素や電子メディエーターを多く担持できるように、多孔質材料とすることが好適である。
具体的には、燃料極1は、例えば、カーボンペーパーのような多孔質の電極材上に、燃料の分解に関与する酵素と、燃料の酸化反応に伴って還元体が生成される補酵素(例えば、NAD+ 、NADP+ など)と、補酵素の還元体(例えば、NADH、NADPHなど)を酸化する補酵素酸化酵素(例えば、ジアホラーゼ:DI)と、補酵素酸化酵素から補酵素の酸化に伴って生じる電子を受け取って電極に渡す電子メディエーター(例えば、2−アミノ−1, 4−ナフトキノン:ANQ、2−メトキシ−1,4−ナフトキノン:MNQなど)とが、固定化材(例えば、ポリマーなど)によって固定化されることにより作製される。
【0044】
燃料の分解に関与する酵素としては、例えば燃料がメタノールの場合、メタノールからホルムアルデヒドへ酸化するアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、ホルムアルデヒドから蟻酸へ酸化するホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FalDH)、および蟻酸からCO2 へ酸化する蟻酸デヒドロゲナーゼ(FateDH)が挙げられる。これらの酸化酵素によって、メタノールは室温で最終的にCO2 まで分解される。
【0045】
また、燃料がエタノールの場合、燃料の分解に関与する酵素は、エタノールをアセトアルデヒドに酸化するアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、およびアセトアルデヒドを酢酸に酸化するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AlDH)が挙げられる。これらの酸化酵素によって、エタノールは室温で酢酸まで酸化される。
【0046】
また、燃料がグルコースの場合は、燃料の分解に関与する酵素としては、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が挙げられる。
この酸化酵素の作用によって、β−D−グルコースが、D−グルコノ−δ−ラクトンに酸化される。
なお、D−グルコノ−δ−ラクトンは加水分解によりD−グルコネートになる。
【0047】
また、燃料が多糖類のデンプンである場合、燃料の分解に関与する酵素としては、グルコアミラーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が挙げられる。グルコアミラーゼの作用によってデンプンがβ−D−グルコースに分解され、グルコースデヒドロゲナーゼの作用によってβ−D−グルコースがD−グルコノ−δ−ラクトンに酸化される。
【0048】
燃料の分解に関与する酵素は、上記酸化酵素に限らないが、これらはNAD+ 依存型デヒドロゲナーゼであり、これらの酸化酵素を用いた場合には、補酵素にはNAD+ が用いられる。NAD+ 依存型デヒドロゲナーゼは、燃料を酸化(脱水素)することによって、補酵素NAD+ を還元し、NADHとH+ とを生成する。この反応は下記式(4)で表される。
燃料+NAD+ →燃料の酸化体+NADH+H+ ・・・(4)
【0049】
生成されたNADHは、DIによりNAD+ に酸化され、下記式(5)に示すように、二つの電子とH+ とを発生する。
NADH→NAD+ +H+ +2e- ・・・(5)
【0050】
したがって、燃料1分子につき1回の酸化反応で、二つの電子と二つのH+ とが生成されることになる。
上記プロセスで生成された電子はDIから電子メディエーターを介して電極に渡され、H+ は電解質層5を通って空気極3へ輸送される。
【0051】
次に、電子メディエーターについて説明する。
この第1の実施形態においては、燃料極1を構成する酵素固定化電極に担持させる電子メディエーターを、下記式(1)および/または下記式(2)の構造を有する化合物に特定した。
【0052】
すなわち、酵素固定化電極に担持させる電子メディエーターは、
一般式
【化49】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化50】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものである。
【0053】
上記式(1)において、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかであるが、アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、これらのうち特にメチル基が好適である。
【0054】
上記式(2)において、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかであるが、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、これらのうち特に水素が好適である。
【0055】
電子メディエーターは電極との電子の受け渡しを行うものであり、燃料電池の電圧は、電子メディエーターの酸化還元電位に依存する。
電子メディエーターとして、上記式(1)および/または式(2)で表わされる化合物を用いることにより、電子メディエーターの最低空軌道(LUMO)のエネルギーが安定化されること、および、酵素との構造親和性向上により既存の電子メディエーター(ACNQ、VK3)を用いた場合よりも飛躍的に高い出力を得ることが確かめられた。
【0056】
上記の酵素、補酵素および電子メディエーターは、電極反応が効率よく定常的に行われるようにするために、トリス緩衝液、リン酸緩衝液などの緩衝液によって、酵素にとって最適なpH、例えばpH7付近に維持されていることが好ましい。さらに、イオン強度(I.S.)は、あまり大きすぎても小さすぎても酵素活性に悪影響を与えるが、電気化学応答性も考慮すると、適度なイオン強度、例えば0.3程度であることが好ましい。ただし、pHおよびイオン強度は、用いる酵素それぞれに最適値が存在し、上述した値に限定されない。
【0057】
上記の酵素、補酵素および電子メディエーターは、緩衝液に溶解した状態で用いてもよいが、この第1の実施形態においては、固定化材を用いて電極上に固定化されている。これにより、電極近傍で起こっている酵素反応現象を効率良く電気信号として捉えることが可能となる。このような固定化材としては、例えば、グルタルアルデヒド(GA)とポリ−L−リシン(PLL)とを組み合わせたものやポリアクリル酸ナトリウム(PAAcNa)とポリ−L−リシン(PLL)とを組み合わせたものを用いてもよいし、これらを単独で用いてもよいし、さらには他のポリマーを用いてもよい。
燃料極1が、上述したような構成を有することにより、室温付近でグルコースなどの燃料と接触することにより、直接H+ を発生させることができる。
【0058】
次に、空気極3について説明する。
空気極3は、触媒が担持された炭素粉末あるいは炭素に保持されない触媒粒子を主な構成要素としている。この触媒には、例えば、白金(Pt)の微粒子、または鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)あるいはルテニウム(Ru)などの遷移金属と白金との合金、あるいは酸化物などの微粒子を適用することができる。この空気極3は、具体的には、例えば、上記触媒あるいは触媒を含む炭素粉末よりなる触媒層と、ガス拡散層とが電解質層5の側から順に積層された構成を有している。ガス拡散層は、多孔質の炭素材料により構成されているものとする。
【0059】
また、空気極3は、絶縁性でプロトン透過性を有し、かつ電解質層5の溶液を透過しない材料よりなる所定のフィルム(例えばセロハン:メチルセルロースフィルム)により形成されたセパレータにより、燃料極1側と分離された構成とすることが好ましい。このセパレータにより、電解質層5を構成する溶液が空気極3側に染み出さないようにすることにより、空気極3は、気相中に存在する状態となる。このような構成とすると、空気極3においては、気相中から直接酸素(O2 )の供給が受けられるようになり、気相中の酸素を効率よく還元できるため、従来のように、電解質溶液中の溶存酸素を、攪拌やバブリングによって供給する機構を別途設けることなく、極めて高い電流密度が得られるようになる。
【0060】
次に、電解質層5について説明する。
電解質層5は、燃料極1において発生したH+ を空気極3に輸送するプロトン伝導膜であり、電子伝導性を持たず、H+ を輸送することが可能な材料により構成されている。この電解質層5としては、具体的には、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸(PFS)系の樹脂膜、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜、PSSA−PVA(ポリスチレンスルホン酸ポリビニルアルコール共重合体)や、PSSA−EVOH(ポリスチレンスルホン酸エチレンビニルアルコール共重合体)などからなるものが挙げられる。これらの中でも特に、含フッ素カーボンスルホン酸基を有するイオン交換樹脂からなるものが好適であり、具体的には、ナフィオン(デュポン社製商品名)が用いられる。
【0061】
上述したような構成を有する燃料電池10においては、燃料極1側で1種類以上のNAD+ 依存型デヒドロゲナーゼが燃料を酸化する際に、補酵素NAD+ からNADHが生成される。こうして生成されたNADHは、DIにより電子メディエーターを介して燃料極1へ二つの電子を受け渡し、NAD+ に戻る。燃料極1に渡された電子は、外部回路を通って空気極3に到達することで、電流が発生する。
また、上述したような過程で発生するH+ は、電解質層5を介して空気極3まで移動する。そして空気極3では、到達したH+ と、外部回路から供給された二つの電子と、酸素とから水が生成される。
【0062】
メタノールを燃料とした場合、触媒としてメタノールに作用してホルムアルデヒドに酸化するアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)と、ホルムアルデヒドに作用して蟻酸に酸化するホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FalDH)と、蟻酸に作用してCO2 に酸化する蟻酸デヒドロゲナーゼ(FateDH)とにより三段階の酸化プロセスを経て、CO2 まで分解される。すなわち、メタノール1分子当たり三つのNADHが生成されることになり、六つの電子が生成される。
【0063】
エタノールを燃料とした場合、触媒としてエタノールに作用してアセトアルデヒドに酸化するアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)と、アセトアルデヒドに作用して酢酸に酸化するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AlDH)とにより、二段階の酸化プロセスを経て、酢酸まで分解される。すなわち、エタノール1分子につき二段階の酸化反応により合計4電子が生成されることになる。
なお、エタノールは、メタノールと同様にCO2 まで分解する方法をとることもできる。この場合は、アセトアルデヒドに対してアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AalDH)を作用させてアセチルCoAとした後、TCA回路に渡される。TCA回路でさらに電子が生成される。
【0064】
グルコースを燃料とした場合、触媒としてグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を用いることができる。
これにより、β−D−グルコースがD−グルコノ−δ−ラクトンに分解され、この酸化反応を経て、グルコース1分子につき2電子が生成されることになる。
【0065】
なお、D−グルコノ−δ−ラクトンは、水中で加水分解されてD−グルコネートになる。グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)に加えて、グルコノキナーゼおよびフォスフォグルコネートデヒドロゲナーゼ(PhGDH)の触媒を用いた場合には、D−グルコネートはグルコノキナーゼの存在下でアデノシン三リン酸(ATP)をアデノシン二リン酸(ADP)とリン酸とに加水分解することでリン酸化されて、6−フォスフォ−D−グルコネートになり、さらにフォスフォグルコネートデヒドロゲナーゼ(PhGDH)の作用により、2−ケト−6−フォスフォ−D−グルコネートに酸化される。
従って、この場合、グルコースは2−ケト−6−フォスフォ−D−グルコネートに分解され、グルコース1分子につき二段階の酸化反応により合計4電子が生成されることになる。
【0066】
また、グルコースをCO2 まで分解する方法をとることも可能である。この場合には、糖代謝を利用する必要がある。糖代謝を利用した複合酵素反応は、解糖系によるグルコースの分解およびピルビン酸の生成ならびにTCA回路に大別される。解糖系およびTCA回路は広く知られる反応系であり、その説明は省略するが、これを利用した場合、さらに多くの電気エネルギーを取り出すことが可能である。
【0067】
燃料電池に適用する燃料としては、上記において挙げたメタノール、エタノール、グルコース、デンプンのほか、他のアルコール類、他の糖類、脂肪類、タンパク質、糖代謝の中間生成物などの有機酸(グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、フルクトース−1,6−ビスリン酸、トリオースリン酸イソメラーゼ、1,3−ビスホスホグリセリン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸、アセチル−CoA、クエン酸、cis−アコニット酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、2−オキソグルタル酸、スクシニル−CoA、コハク酸、フマル酸、L−リンゴ酸、オキサロ酢酸など)、これらの混合物などを用いることができる。これらの燃料についても、酵素を用いて分解することにより、電気エネルギーを取り出すことができる。
【0068】
この場合、燃料の分解に関与する酵素は、使用する燃料に応じて最適なものを選択することが好ましい。例えば、燃料極1に固定化させる燃料分解用の酵素としては、グルコースデヒドロゲナーゼ、電子伝達系の一連の酵素、ATP合成酵素、糖代謝に関与する酵素(例えば、ヘキソキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、フルクトース二リン酸アルドラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグリセロムターゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、ピルビン酸キナーゼ、L−乳酸デヒドロゲナーゼ、D−乳酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ、スクシニル−CoAシンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、マロン酸デヒドロゲナーゼなど)などの公知の酵素を挙げることができる。
【0069】
なお、上記においては、酵素固定化電極を特に燃料極1(負極またはアノード電極)として適用した場合を例に挙げて説明したが、この発明は上述した例に限定されるものではなく、空気極3(正極またはカソード電極)として酵素固定化電極を適用してもよく、燃料極1と空気極3との両極を酵素固定化電極としてもよい。具体的には、例えば、空気極3として、触媒としての酸素還元酵素が固定化された酵素固定化電極を適用してもよい。この酸素還元酵素としては、例えば、ビリルビンオキシダーゼを用いることができる。この場合、好適には、この酸素還元酵素は、電極との間で電子の受け渡しを行う電子メディエーターと組み合わせて用いられる。この電子メディエーターとしては、例えば、ヘキサシアノ鉄酸イオンなどを用いることができる。
【0070】
実施例について説明する。
燃料電池について具体的なサンプルを作製した。
下記においては、電子メディエーターを変更した各種サンプルを作製し、これらの特性についての評価を行った。
【0071】
〔比較例1〕
上記特許文献2に記載されているビタミンK3(VK3)を電子メディエーターとして用い、図3に示すような構成の酵素固定化電極20を作製した。この酵素固定化電極20は、グラッシーカーボン電極21上に、酵素−電子メディエーター−PLL膜22とポリアクリル酸膜23とが積層された構成を有している。
この酵素固定化電極20の作製方法を下記に示す。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1M リン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=39000)溶液10μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。次に、0.29M VK3溶液(アセトン中(in Acetone))4μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。さらに0.066%(w/v)ポリアクリル酸ナトリウム(PAAcNa)(M=8000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0072】
上記ビタミンK3(VK3)を電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値が43μA、立ち上がりの電圧が−0.10Vを示した。CVのデータを図4中の実線で示す。
【0073】
〔比較例2〕
上記特許文献1に記載されている2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)を電子メディエーターとして用い、図3に示すような構成の酵素固定化電極20を作製した。
この酵素固定化電極20の作製方法を以下に示す。
10mMのACNQ溶液(アセトン中)10μLをグラッシーカーボン電極に添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作をまず12回繰り返し行った。その後、2%(w/w)PLL(M=39000)溶液10μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。
次に、GDH/DI/NADH=2.1U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、640μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。さらに、0.033%(w/v)PAAcNa(M=8000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液20μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0074】
上記のようにして作製したACNQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が23μA、立ち上がりの電圧が−0.28Vを示した。CVのデータを、図4中の破線に示す。
【0075】
〔実施例1〕
2−メトキシ−1,4−ナフトキノン(MNQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=39000)溶液10μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。次に、70mMのMNQ溶液(アセトン中)8μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=8000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0076】
上記のMNQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が32μA、立ち上がりの電圧が−0.27Vを示した。CVのデータを図4中の一点鎖線に示す。
【0077】
〔実施例2〕
2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=135000)溶液10μLを添加し、40℃で25分間乾燥させた。次に、60mMのANQ溶液(アセトン中)9.35μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=30000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0078】
上記のANQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が67μA、立ち上がりの電圧が−0.34Vを示した。CVのデータを図4中の二点鎖線に示す。
上述した実施例1、2と比較例1、2の酵素固定化電極20における、それぞれの立ち上がり電位(mV)および定常電流値(μA)の測定結果を下記表1に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
図4および表1に示した結果から、上記式(1)および/または式(2)で表わされる化学構造を有する電子メディエーターを適用した実施例1、2においては、従来の電子メディエーターを適用した比較例1、2に比べると、立ち上がり電位と定常電流値とのバランスがよく、比較的低い立ち上がり電位をもって高い電流値が得られることが分った。
次に、上記のようにして作製した酵素固定化電極20を用いて燃料電池を組み立て、それぞれの特性評価を行った。
【0081】
〔比較例3〕
上記比較例1と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で3mW/cm2 の出力を確認した。
【0082】
〔比較例4〕
上記比較例2と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で2mW/cm2 の出力を確認した。
【0083】
〔実施例3〕
上記実施例1と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で7mW/cm2 の出力を確認した。
【0084】
〔実施例4〕
上記実施例2と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で20mW/cm2 の出力を確認した。
比較例3、4および実施例3、4の燃料電池における出力の測定結果を下記表2に示した。
【0085】
【表2】

【0086】
上記表2に示す結果から、上記式(1)および/または式(2)で表わされる化学構造を有する電子メディエーターを酵素固定化電極20に担持させた実施例3、4においては、従来の電子メディエーターを適用した比較例3、4に比べると、極めて高い出力が得られ、これにより、上記式(1)および/または式(2)で表わされる化学構造を有する電子メディエーターを用いることにより、燃料電池の性能が飛躍的に向上することが確かめられた。
【0087】
次に、この発明の第2の実施形態による燃料電池について説明する。
この第2の実施形態においては、燃料極1として用いる酵素固定化電極20に適用する電子メディエーターを、下記式(3)で表される化学構造を有する化合物に特定した。
すなわち、酵素固定化電極20に担持させる電子メディエーターは、
一般式
【化51】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものである。
【0088】
上記式(3)において、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X1 のアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられるが、これらの中でも特にメチル基が好適である。X4 のアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられるが、これらの中でも特に水素が好適である。X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表し、アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられるが、これらの中でも特に水素とイソプロピル基あるいはs−ブチル基との組み合わせが好適である。
【0089】
電子メディエーターとして、上記式(3)で表わされる化合物を用いることにより、電子メディエーターの最低空軌道(LUMO)のエネルギーが安定化されること、および、酵素との構造親和性向上により上記式(1)、(2)で示された電子メディエーターと同等、あるいはそれ以上の出力向上を確認することができた。また、電子メディエーターの疎水性を向上させる分子設計を行ったことにより、式(1)や式(2)で表される電子メディエーターと比較して、酵素固定化電極20を飛躍的に長寿命化することができた。
上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0090】
実施例について説明する。
燃料電池について具体的なサンプルを作製した。
下記においては、電子メディエータを変更した各種サンプルを作製し、これらの特性についての評価を行った。
【0091】
〔実施例5〕
2−メトキシ−1,4−ナフトキノン(MNQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1M リン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温( シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=39000)溶液10μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。次に、70mMのMNQ溶液(アセトン中)8μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=8000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0092】
上記のMNQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が32μA、立ち上がりの電圧が−0.27Vを示した。CVのデータを図5中の一点鎖線に示す。
【0093】
〔実施例6〕
2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=135000)溶液10μLを添加し、40℃で25分間乾燥させた。次に、60mMのANQ溶液(アセトン中)9.35μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=30000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0094】
上記のANQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が67μA、立ち上がりの電圧が−0.34Vを示した。CVのデータを図5中の二点鎖線に示す。
【0095】
〔実施例7〕
2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=135000)溶液10μLを添加し、40℃で25分間乾燥させた。次に、60mMのAMNQ溶液(アセトン中)9.35μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=30000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0096】
上記のAMNQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が64μA、立ち上がりの電圧が−0.40Vを示した。CVのデータを図5中の点線に示す。
【0097】
〔実施例8〕
2−N−イソプロピルアミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(A(iPr) MNQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=135000)溶液10μLを添加し、40℃で25分間乾燥させた。次に、60mMのA(iPr)MNQ溶液(アセトン中)9.35μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=30000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0098】
上記のA(iPr) MNQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が138μA、立ち上がりの電圧が−0.33Vを示した。CVのデータを図5中の実線に示す。
【0099】
〔実施例9〕
2−N−セカンダリーブチルアミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(A(sBu) MNQ)を電子メディエーターとして適用し、酵素固定化電極20を作製した。
GDH/DI/NADH=1.05U/5U/μL in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液8μLに、160μg/μL NADH in 0.1Mリン酸バッファー(pH8.0) 溶液2μLを混合した後、これをグラッシーカーボン電極に添加し、室温(シリカゲル入り乾燥保管庫中) で60分間乾燥させた。その後、2%(w/w)PLL(M=135000)溶液10μLを添加し、40℃で25分間乾燥させた。次に、60mMのA(sBu)MNQ溶液(アセトン中)9.35μLを添加し、40℃で10分間乾燥させた。この操作を2回繰り返して行った。さらに0.066%(w/v)PAAcNa(M=30000)溶液4μLを添加し、40℃で15分間乾燥させた。最後に、0.1Mリン酸バッファー (pH7.0) 溶液10μLを添加し、40℃で30分間乾燥させた。この操作を3回繰り返して行った。
【0100】
上記のA(sBu) MNQを電子メディエーターに適用した酵素固定化電極20を用い、燃料であるグルコースを400mMに調整した0.1Mリン酸バッファー溶液でサイクリックボルタメトリー(CV)を測定したところ(10mV/sec、参照電極:Ag/AgCl)、定常電流値(0.6V)が58μA、立ち上がりの電圧が−0.36Vを示した。CVのデータを図5中の破線に示す。
上述した実施例7、8、9と実施例5、6の酵素固定化電極20における、それぞれの立ち上がり電位(mV)および定常電流値(μA)の測定結果を下記表3に示した。
【0101】
【表3】

【0102】
図5および表3に示した結果から、上記式(3)で表される化学構造を有する電子メディエーターを適用した実施例7、8、9においては、上記式(1)または(2)で表される化学構造を有する電子メディエーターを適用した実施例5、6に比べると、立ち上がり電位と定常電流値とのバランスがよく、比較的低い立ち上がり電位をもって高い電流値が得られることが分った。
次に、上記のようにして作製した酵素固定化電極20を用いて燃料電池を組み立て、それぞれの特性評価を行った。
【0103】
〔実施例10〕
上記実施例5と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で7mW/ cm2 の出力を確認した。
【0104】
〔実施例11〕
上記実施例6と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で20mW/
cm2 の出力を確認した。
【0105】
〔実施例12〕
上記実施例7と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で18mW/
cm2 の出力を確認した。
【0106】
〔実施例13〕
上記実施例8と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で22mW/
cm2 の出力を確認した。
【0107】
〔実施例14〕
上記実施例9と同様の方法により、1cm2 のカーボンペーパーをカーボン電極として適用して、図2に示すような構成の、燃料極1として酵素固定化電極20を具備する燃料電池を作製した。
この燃料極1側に400mMのグルコース水溶液を導入した結果、25℃で14mW/
cm2 の出力を確認した。
実施例10、11および実施例12、13、14の燃料電池における出力の測定結果を下記表4に示した。
【0108】
【表4】

【0109】
上記表4に示す結果から、上記式(3)で表される化学構造を有する電子メディエーターを酵素固定化電極20に担持させた実施例12、13、14においては、上記式(1)または(2)で表される化学構造を有する電子メディエーターを適用した実施例10、11に比べると、同等以上の出力が得られ、これにより、上記式(3)で表される化学構造を有する電子メディエータを用いた場合、燃料電池の性能としては十分なものであることが明らかとなった。
〔実施例15〕
上記実施例6と同様の方法によりグラッシーカーボン電極21上に作製した酵素固定化電極20を用いて、クロノアンペロメトリー測定を0.1V(vs Ag/AgCl)、1時間行った。1時間後の電流値は29μA/cm2 であった。図6にこのクロノアンペロメトリーの結果を実線で示す。
【0110】
〔実施例16〕
上記実施例7と同様の方法によりグラッシーカーボン電極21上に作製した酵素固定化電極20を用いて、クロノアンペロメトリー測定を0.1V(vs Ag/AgCl)、1時間行った。1時間後の電流値は31μA/cm2 であった。図6にこのクロノアンペロメトリーの結果を点線で示す。
【0111】
〔実施例17〕
上記実施例8と同様の方法によりグラッシーカーボン電極21上に作製した酵素固定化電極20を用いて、クロノアンペロメトリー測定を0.1V(vs Ag/AgCl)、1時間行った。1時間後の電流値は44μA/cm2 であった。図6にこのクロノアンペロメトリーの結果を一点鎖線で示す。
【0112】
〔実施例18〕
上記実施例9と同様の方法によりグラッシーカーボン電極21上に作成した酵素固定化電極20を用いて、クロノアンペロメトリー測定を0.1V(vs Ag/AgCl)、1時間行った。1時間後の電流値は44μA/cm2 であった。図6にこのクロノアンペロメトリーの結果を破線で示す。
【0113】
実施例15および実施例16、17、18における0.1V、1時間後のクロノアンペロメトリーの測定結果を下記表5に示した。
【表5】

【0114】
上記表5に示す結果から、上記式(3)で表される化学構造を有する電子メディエーターを酵素固定化電極20に担持させた実施例16、17、18においては、上記式(1)または(2)で表される化学構造を有する電子メディエーターを適用した実施例15に比べると、電流値の減少が大幅に抑えられ、酵素固定化電極20の耐久性が大幅に向上したことが明らかとなった。
【0115】
次に、この発明の第3の実施形態による燃料電池について説明する。
この第3の実施形態においては、燃料電池の具体的な構造例について説明する。
図7AおよびBに示すように、この燃料電池は、例えばカーボン電極に酵素、補酵素および電子メディエーターを固定化材で固定化した酵素/補酵素/電子メディエーター固定化カーボン電極からなる燃料極1と、例えばカーボン電極上に酵素や電子メディエーターを固定化材で固定化した酵素/電子メディエーター固定化カーボン電極からなる空気極3とが、電解質層5を介して対向した構成を有している。この場合、空気極3および燃料極1にはそれぞれTi集電体31、32が設けられ、集電を容易に行うことができるようになっている。符号33、34は固定板を示す。これらの固定板33、34はねじ35により相互に締結され、それらの間に、空気極3、燃料極1、電解質層5およびTi集電体31、32の全体が挟み込まれている。固定板33の一方の面(外側の面)には空気取り込み用の円形の凹部33aが設けられ、この凹部33aの底面に他方の面まで貫通した多数の穴33bが設けられている。これらの穴33bは空気極3への空気の供給路となる。一方、固定板34の一方の面(外側の面)には燃料装填用の円形の凹部34aが設けられ、この凹部34aの底面に他方の面まで貫通した多数の穴34bが設けられている。これらの穴34bは燃料極1への燃料の供給路となる。この固定板34の他方の面の周辺部にはスペーサー36が設けられており、固定板33、34をねじ35により相互に締結したときにそれらの間隔が所定の間隔になるようになっている。
図7Bに示すように、Ti集電体31、32の間に負荷37を接続し、固定板34の凹部34aに燃料として例えばグルコース溶液を入れて発電を行う。
上記以外のことは第1または第2の実施形態と同様である。
【0116】
次に、この発明の第4の実施形態による燃料電池について説明する。
この第4の実施形態による燃料電池は、燃料極1の電極材に図8に示すような多孔体導電材料を用いることを除いて、第1の実施形態による燃料電池と同様な構成を有する。
図8Aはこの多孔体導電材料の構造を模式的に示し、図8Bはこの多孔体導電材料の骨格部の断面図である。図8AおよびBに示すように、この多孔体導電材料は、三次元網目状構造の多孔体材料からなる骨格41と、この骨格41の表面を被覆するカーボン系材料42とからなる。この多孔体導電材料は、カーボン系材料42に囲まれた多数の孔43が網目に相当する三次元網目状構造を有する。この場合、これらの孔43同士は互いに連通している。カーボン系材料42の形態は問わず、繊維状(針状)、粒状などのいずれであってもよい。
【0117】
多孔体材料からなる骨格41としては、発泡金属あるいは発泡合金、例えば発泡ニッケルが用いられる。この骨格41の多孔率は一般的には85%以上、より一般的には90%以上であり、その孔径は、一般的には例えば10nm〜1mm、より一般的には10nm〜600μm、さらに一般的には1〜600μm、典型的には50〜300μm、より典型的には100〜250μmである。カーボン系材料42としては、例えばケッチェンブラックなどの高導電性のものが好ましいが、カーボンナノチューブやフラーレンなどの機能性カーボン材料を用いてもよい。
この多孔体導電材料の多孔率は一般的には80%以上、より一般的には90%以上であり、孔43の径は、一般的には例えば9nm〜1mm、より一般的には9nm〜600μm、さらに一般的には1〜600μm、典型的には30〜400μm、より典型的には80〜230μmである。
【0118】
次に、この多孔体導電材料の製造方法について説明する。
図9Aに示すように、まず、発泡金属あるいは発泡合金(例えば、発泡ニッケル)からなる骨格41を用意する。
次に、図9Bに示すように、この発泡金属あるいは発泡合金からなる骨格41の表面にカーボン系材料42をコーティングする。このコーティング方法としては従来公知の方法を用いることができる。一例を挙げると、カーボン粉末や適当な結着剤などを含むエマルションをスプレーにより骨格41の表面に噴射することによりカーボン系材料42をコーティングする。このカーボン系材料42のコーティング厚さは、発泡金属あるいは発泡合金からなる骨格41の多孔率および孔径との兼ね合いで、多孔体導電材料に要求される多孔率および孔径に応じて決められる。このコーティングの際には、カーボン系材料42に囲まれた多数の孔23同士が互いに連通するようにする。
こうして、目的とする多孔体導電材料が製造される。
上記以外のことは第1または第2の実施形態と同様である。
【0119】
この第4の実施形態によれば、発泡金属あるいは発泡合金からなる骨格41の表面をカーボン系材料42により被覆した多孔体導電材料は、孔43の径が十分に大きく、粗な三次元網目状構造を有しながら、高強度でしかも高い導電性を有し、必要十分な表面積を得ることもできる。このため、この多孔体導電材料を電極材に用い、これに酵素、補酵素および電子メディエーターを固定化することで得られる酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極からなる燃料極1は、その上での酵素代謝反応を高効率に行わせることができ、あるいは、電極の近傍で起こっている酵素反応現象を効率よく電気信号として捉えることが可能であり、しかも使用環境によらずに安定であり、高性能の燃料電池を実現することが可能である。
【0120】
次に、この発明の第5の実施形態による燃料電池について説明する。
この燃料電池は、電解質層5がリン酸緩衝液やトリス緩衝液などの緩衝液を含み、少なくとも、燃料極1および空気極3に固定化された酵素の周囲の電解質層5には緩衝液が0.2M以上2.5M以下、好適には0.2M以上2M以下、より好適には0.4M以上2M以下、さらに好適には0.8M以上1.2M以下の濃度含まれている。こうすることで高い緩衝能を得ることができ、燃料電池の高出力動作時においても、酵素にとって最適なpH、例えばpH7付近に維持することができるので、酵素本来の能力を十分に発揮することができる。リン酸緩衝液としては、例えばNaH2 PO4 やKH2 PO4 が用いられる。
上記以外のことは第1または第2の実施形態と同様である。
【0121】
この第5の実施形態によれば、電解質層5に含まれる緩衝物質(緩衝液)の濃度が0.2M以上2.5M以下であることにより、十分な緩衝能を得ることができ、このため燃料電池の高出力動作時においても、燃料極1および空気極3に固定化された酵素の周囲の電解質層5のpHを至適pH付近に維持することができ、酵素が本来持っている能力を十分に発揮させることができる。これによって、高出力動作が可能な高性能の燃料電池を実現することができる。
【0122】
次に、この発明の第6の実施形態による燃料電池について説明する。
この燃料電池においては、燃料として、多糖類であるデンプンを用いる。また、デンプンを燃料に用いることに伴い、燃料極1にデンプンをグルコースに分解する分解酵素であるグルコアミラーゼも固定化する。
このバイオ燃料電池においては、燃料極1側に燃料としてデンプンが供給されると、このデンプンがグルコアミラーゼによりグルコースに加水分解され、さらにこのグルコースがグルコースデヒドロゲナーゼにより分解され、この分解プロセスにおける酸化反応に伴ってNAD+ が還元されてNADHが生成され、このNADHがジアホラーゼにより酸化されて2個の電子とNAD+ とH+ とに分離する。したがって、グルコース1分子につき1段階の酸化反応で2個の電子と2個のH+ とが生成される。2段階の酸化反応では合計4個の電子と4個のH+ とが生成される。こうして発生する電子は燃料極1の電極に渡され、H+ は電解質層5を通って空気極3まで移動する。空気極3では、このH+ が、外部から供給された酸素および燃料極1から外部回路を通って送られた電子と反応してH2 Oを生成する。
上記以外のことは第1または第2の実施形態による燃料電池と同様である。
この第6の実施形態によれば、第1または第2の実施形態と同様な利点を得ることができるほか、デンプンを燃料に用いていることにより、グルコースを燃料に用いる場合に比べて発電量を増加させることができるという利点を得ることができる。
【0123】
次に、この発明の第7の実施形態について説明する。この第7の実施形態においては、燃料電池搭載装置の一例としてノート型パソコンについて説明する。
図10に示すように、このノート型パソコン51は、上面にキーボード操作部52が配置されたパソコン本体53と、下面に液晶ディスプレイ54が装着された蓋体55とから構成されている。パソコン本体53および蓋体55は、背面側においてヒンジで回動自在且つ任意の位置で固定可能とされている。蓋体55を閉じてパソコン本体53に重ね合わせることにより、キーボード操作部52の上に液晶ディスプレイ54が重ねられて互いに覆われることになる。このパソコン本体53の側面に電池収納部56が設けられており、この電池収納部56に携帯用電源装置である燃料電池57が着脱自在に装着されて使用される。この燃料電池57として、第1〜第6の実施形態による燃料電池のいずれかを用いる。
【0124】
燃料電池57は、燃料(例えば、グルコース)と空気(酸素)とを用いて発電を行う発電部58と、燃料を発電部58に供給する燃料カートリッジ59と、空気を発電部58に供給する空気供給手段60と、発電部58の発電動作を制御する制御部61と、これらを一体的に収納する電池ケース62などを備えて構成されている。電池ケース62には、空気の吸気口63および排気口64と、パソコン本体53および燃料電池57を電気的に接続するための接続部65とが設けられている。
【0125】
次に、この発明の第8の実施形態について説明する。この第8の実施形態においては、燃料電池搭載装置の一例として犬型ロボットについて説明する。
図11に示すように、電子ペットの犬型ロボット71に燃料電池システム72が搭載されている。この燃料電池システム72においては、第1〜第6の実施形態による燃料電池のいずれかを用いる。犬型ロボット71は、ほぼドラム状をした胴体部73と、この胴体部73の前側上部に取り付けられた頭部74と、胴体部73の前側両側部に取り付けられた2本の前足部75と、胴体部73の後側両側部に取り付けられた2本の後足部76と、胴体部73の後側上部に取り付けられた尻尾部77とから構成されている。
【0126】
犬型ロボット71の頭部74には下方に突出された首部78が設けられており、この首部78が首関節により胴体部73に対してある所定の範囲内で上下方向および左右方向に回動自在および俯仰自在に取り付けられている。さらに、首部78の下部には、顎関節によって顎部79が上下方向に俯仰自在に取り付けられている。そして、首部78の後側上部には、それぞれ耳関節によって一対の耳部80がほぼ左右対称に、且つ回動自在に取り付けられている。
【0127】
また、一対の前足部75と一対の後足部76と尻尾部77とは、それぞれ一対の前足関節と一対の後足関節と尻尾関節とによってそれぞれ回動自在且つ俯仰自在に連結されている。さらに、一対の前足部75は、それぞれ足上部82と足下部83とからなり、両者は前膝関節84によって回動自在且つ俯仰自在に連結されている。そして、足下部83の先端部に、足首関節によって前足部85が俯仰自在に取り付けられている。
【0128】
同様に、一対の後足部76は、それぞれ足上部86と足下部87とからなり、両者は後膝関節88によって回動自在且つ俯仰自在に連結されている。そして、足下部87の先端部に、足首関節によって後足部89が俯仰自在に取り付けられている。さらに、尻尾部77は、尻尾関節によって胴体部73に対して回動自在に取り付けられている。
【0129】
上記の各関節部が、犬型ロボット71の駆動部の一具体例を示している。これら各関節部には、それぞれの関節部を回動動作または俯仰動作させるための1個または2個の駆動モータがそれぞれ個別に取り付けられている。また、胴体部73内には、すべての駆動モータおよび各種の検出センサー、音声認識装置その他の機構を駆動制御するためのマイクロコンピュータや記憶装置(RAM、ROMなど)などからなる電子機器用制御部が内蔵されている。この電子機器用制御部で全ての駆動モータを駆動制御することにより、犬型ロボット71に歩行運動をさせ、あるいは「お手」「お座り」などの各種の動作を行わせることができる。
【0130】
燃料電池システム72は、上記の関節毎に設けられた関節の数と同数の発電部90と、すべての発電部60の発電動作を制御する燃料電池用制御部91と、すべての発電部90に対して燃料である燃料(メタノール、エタノール、グルコースなど)を供給する燃料供給手段92と、各発電部90に対して空気(酸素)を供給する空気供給手段93とから構成されている。また、発電反応に使用される燃料は、グルコース水溶液のような液体だけでなく、メタノールのような液体を気化させた気体を使用してもよいことは勿論である。なお、発電部90や制御部その他の発熱源を冷却するための冷却ファンなどの補助機器などを設ける構成としてもよい。また、燃料電池システム72と犬型ロボット71とで共用される共用部としては、燃料電池システム72の構成要素および犬型ロボット71の構成要素であり、これら構成要素を共用することによってこれらの犬型ロボット71および燃料電池システム72からなる燃料電池搭載装置の部品を低減することができる。また、共用部としては、例えば、上述した制御部その他の発熱源を冷却するための冷却ファン、ポンプもしくはエアコンなどの補助機器など、発電部90に燃料を供給する燃料供給手段、発電部90に空気を供給する空気供給手段などの加熱に用いられるヒーター、電熱器などの補助機器、温度センサー、湿度センサー、ラジエータ、DC/DCコンバータ、その他共用可能なものであればいかなるものでもよい。また、電子機器や燃料電池を収納する筐体のような燃料電池搭載装置の構造部材を共用部としてもよく、この筐体の壁面部を利用して燃料電池の発電部90を挟持する場合には、この壁面部を共用部とすることもできる。さらにまた、スタック構造を有する発電部の締結部材を共用部としてもよい。
【0131】
発電部である関節毎に設けられた関節の数と同数の発電部90(90a〜90j)は、対応する関節の近傍にそれぞれ配設されている。すなわち、頭部74には、耳部80用の発電部90aと顎部79用の発電部90bとが配設されている。また、胴体部73には、首部78用の発電部90cと、前足部75用の発電部90dと、後足部76用の発電部90eと、尻尾部77用の発電部90fとが配設されている。
【0132】
さらに、前足部75の足上部82には前膝関節84用の発電部90gが配設され、足下部83には前足部85用の発電部90hが配設されている。そして、後足部76の足上部86には後膝関節88用の発電部90iが配設され、足下部87には後足部89用の発電部90jが配設されている。これらの発電部90a〜90jは、燃料配管94によって燃料供給手段92に接続され、燃料が供給可能とされている。
【0133】
また、各発電部90a〜90jに対応して、胴体部73、頭部74および前後の足部75、76におけるそれぞれの近傍には、空気供給手段93の一具体例を示す空気取入穴が設けられている。これらの空気取入穴から導入された空気が、各発電部90a〜90jにおいて水素とともに発電に供される。燃料供給手段92の一具体例としては、例えば、1Mのグルコース水溶液を貯蔵することができるグルコース水溶液貯蔵タンクなどを用いることができる。
【0134】
燃料電池システム72の一般的な構成の概略を図12に示す。図12において、符号100は燃料が充填された燃料カートリッジを示し、四角形をなす扁平の箱体によって構成されている。この燃料カートリッジ100の上面にベース基板101が載置され、その上面に発電部90と、冷却ファン102と、発電部90で生成された水を乾燥させる2個の乾燥ファン103と、燃料カートリッジ100から発電部90に向かう燃料の流量を調整して燃料供給口を開閉する2個の開閉弁104と、発電部90から取り出す電流値および電圧値の変動を補整するレギュレーター105などが搭載されている。
【0135】
また、発電部90の上面には、発電部90の熱を外部に放出して冷却するための冷却フィン106が載置されている。そして、冷却フィン106には、制御部91を構成する複数の大規模半導体集積回路(LSI)およびその他の制御用部品と、温度センサー107と、湿度センサー108とが搭載されている。
【0136】
この第8の実施形態によれば、発電部90が、電力を必要としている各関節部の近傍にそれぞれ設けられており、その関節部毎に必要に応じて電力が発生される。従って、1個の発電部で電気を発生し、その電力をすべての関節部に供給する従来の方式に比べて、一つ一つの発電セルの出力を小さく抑えることができるため、発電効率を高めることができる。
【0137】
しかも、1個の発電セルの出力が小さいために、各発電セルの熱管理や水管理を容易にすることができ、システム構成をよりシンプルなものとすることができる。さらに、燃料電池システム72の構成要素の一部と犬型ロボット71の構成要素の一部、例えば、制御部を共用させることにより、犬型ロボット71および燃料電池システム72からなる燃料電池搭載装置の全体の構成要素の無駄をなくして、構成の簡略化を図ることができる。
【0138】
なお、燃料電池システム72の構成要素のうち犬型ロボット71の構成要素として共用可能なものは、上述した制御部に限られるものではなく、例えば、冷却ファン102や乾燥ファン103その他の構成要素において、燃料電池システム72と動物ロボットなどにおいて共用されている同種のものであれば、それを共用させることができる。
【0139】
次に、この発明の第9の実施形態について説明する。この第9の実施形態においては、燃料電池搭載装置の一例として犬型ロボットについて説明する。
図13に示すように、電子ペットの犬型ロボット141に燃料電池システム142が搭載されている。この燃料電池システム142においては、第1〜第6の実施形態による燃料電池のいずれかを用いる。この犬型ロボット141および燃料電池システム142の構造は、第8の実施形態で説明した犬型ロボット71および燃料電池システム72とほぼ同様であることから詳細な説明は省略する。犬型ロボット141の内部には複数の発電部130a〜130jからなる燃料電池システム142と、燃料電池システム142の動作を制御する燃料電池用制御部131に電力を供給する二次電池150とが内蔵されている。なお、この第9の実施形態では、燃料電池システム142の燃料電池用制御部131と犬型ロボット141の制御部とを燃料電池システム142と犬型ロボット141の共用部としている。また、燃料電池システム142および犬型ロボット141の共用部は、制御部その他の発熱源を冷却するための冷却ファン、ポンプもしくはエアコンなどの補助機器など、発電部130に燃料を供給する燃料供給手段、発電部130に空気を供給する空気供給手段などの加熱に用いられるヒーター、電熱器などの補助機器、温度センサー、湿度センサー、ラジエータ、DC/DCコンバータ、その他共用可能なものであればいかなるものでもよい。また、電子機器や燃料電池を収納する筐体のような燃料電池搭載装置の構造部材を共用部としてもよく、この筐体の壁面部を利用して燃料電池の発電部を挟持する場合には、この壁面部を共用部とすることもできる。さらにまた、スタック構造を有する発電部130の締結部材を共用部としてもよいことは勿論である。
【0140】
犬型ロボット141は、第8の実施形態で説明した犬型ロボット71とほぼ同様の構成を有し、主に胴体部143、頭部144、首部148、顎部149、耳部120、2本の前足部145、2本の後足部146、尻尾部147のような可動部およびこれらを自在に動かすための複数の関節部から構成されている。
【0141】
これらの複数の関節部は可動部を動かすための駆動部であり、例えば、駆動用モータによって駆動される。なお、関節部は、この関節部を動かすための駆動用モータも含むものとする。これら駆動用モータが各関節部を介して接続されている可動部を自在に動かす。関節部は、駆動用モータで発生した駆動力によって回転または俯仰され、この関節に接続されている可動部を自在に回転または俯仰させることができる。例えば、可動部とされる一対の前足部145を一対の前足関節によって回動且つ俯仰自在に動かすことができる。また、駆動用モータは各関節部に所要の個数設けることができる。
【0142】
発電部130a〜130jは、犬型ロボット141の各関節の近傍にそれぞれ配置されており、各発電部130a〜130jがそれぞれの発電部の近傍に位置する駆動用モータに電力を供給する。例えば、前膝関節124の近傍に配置される発電部130hは前膝関節124が備える駆動用モータに電力を供給する。前膝関節124の近傍に設けられる発電部130hと同様に、各関節の近傍に配置される発電部はそれぞれの関節が備える駆動用モータに電力を供給する。このように、犬型ロボット141に燃料電池を構成する発電部130a〜130jを分散して配置し、一つの発電部130から一つの関節が備える駆動用モータに電力を供給することによって、各発電部130a〜130jの出力の負担を軽減することができる。なお、犬型ロボット141は各関節の近傍に個別に発電部130が配置されているが、発電部130の個数が関節の個数と同数でなくても勿論よい。また、複数の駆動用モータへの電力供給を複数の発電部で分担していればよく、例えば、複数の発電部のうち一つの発電部から複数の駆動用モータに電力を供給してもよい。さらに、犬型ロボット141の内部に発電部を内蔵する構造に限定されず、駆動部に供給される電力の不足を補うために外部から別途発電部を取り付けてもよい。
【0143】
犬型ロボット141と、複数の発電部130a〜130jから構成される燃料電池システム142で構成される燃料電池搭載装置によれば、犬型ロボットが備える全ての駆動用モータに一つの発電部から電力を供給する場合に比べ、発電部1個当たりに必要とされる出力を軽減することが可能となる。発電部130a〜130jの出力が軽減されることによって各発電部の発電反応によって生じる熱量や水分量も低減することができる。したがって、発電反応によって生じる熱や水の管理が容易となり、発電部の温度やこの発電部の発電セルに含まれる水分量を管理しながら最適な環境で発電部に発電を行わせることができ、犬型ロボット141を安定して動作させることが可能となる。
【0144】
さらに、犬型ロボット141は発電部130a〜130jが分散して配置されていることから、各発電部を個別に交換することが可能となり、不具合が生じた発電部を交換するだけで簡便に犬型ロボット141のメンテナンスを行うことができる。また、一つの発電部から全ての駆動用モータの電力を供給する場合には、この発電部に不具合が生じた際に全ての駆動用モータの駆動に不具合が生じることがあるが、犬型ロボット141の内部に分散して配置された複数の発電部103a〜130jによれば、一つの発電部に不具合が生じた場合でもこの一つの発電部から電力の供給を受けていた駆動用モータの駆動のみに不具合が生じ、他の駆動用モータは支障なく駆動されることになる。さらにまた、特定の発電部に不具合が生じた際にはこの発電部のみを交換することができ、犬型ロボット141のメンテナンスを簡便に行うことができる。また、犬型ロボット141の可動部のうち不具合が生じた発電部を内蔵する可動部を交換することによるメンテナンスを行うことも可能である。
【0145】
胴体部143内には、すべての駆動用モータおよび各種の検出センサー、音声認識装置その他の機構の駆動を制御するためのマイクロコンピュータや記憶装置(RAM、ROMなど)などからなる電子機器用制御部が内蔵されている。この電子機器用制御部は、上述した駆動用モータと同様に犬型ロボット141に内蔵され、データや命令の処理を行うように駆動されることによって犬型ロボット141の動作を制御する制御部である。なお、この犬型ロボット141は、燃料電池システム142の動作を制御する制御部131と電子機器用制御部を共用しているため、電子機器用制御部は図示していない。また、燃料電池の制御部と電子機器用制御部とを共用しない場合には、この燃料電池の制御部を燃料電池から供給される電力で駆動することができる。
【0146】
電子機器用制御部と共用される制御部131は、犬型ロボット141の制御部であるとともに上述した関節部に含まれる駆動用モータと同様に電力によって駆動される駆動部である。制御部131は、制御部131の近傍に設けられたリチウムイオン二次電池のような二次電池150から電力が供給されて駆動される。この犬型ロボット141が有する駆動部は、駆動用モータによって動かされる関節部のような駆動部と、制御部131と共用される電子機器用制御部のような駆動部とに分類される。駆動用モータと制御部131との負荷変動を比較すると、通常、マイクロコンピュータを含む制御部131の負荷変動は駆動用モータの負荷変動に比べて大きい傾向にある。具体的には、駆動用モータのような駆動部は、駆動を開始するために必要な電力が供給されればそれ以後の負荷変動は殆どない。つまり、駆動用モータが駆動される時間を横軸にとり、縦軸に負荷の大きさを示した場合には、この負荷の大きさは時間軸に対してほぼ矩形状で推移することになる。
【0147】
一方、制御部131の負荷の大きさは、駆動される時間に対してパルス的に変動する傾向にある。具体的には、制御部131の負荷は変動幅が大きいだけでなく、時間軸に対して負荷が急峻に立ち上がり、且つ急峻に立ち下がる。このパルス的な負荷変動によって制御部131の駆動に必要とされる電力も大きく変動する。燃料電池を構成する発電部130は急激な負荷変動に追従して所要の電力を供給することは困難である場合が多く、制御部131が安定して駆動されないことによって犬型ロボット141を安定して駆動できないことがある。また、制御部131と別個に電子機器用制御部を設ける場合でも、この電子機器用制御部を安定して駆動することが困難となる。
【0148】
そこで、この犬型ロボット141は、複数の発電部で電力供給を分担するだけでなく、電力を供給する電力源を駆動部の負荷変動に応じて使い分けている。特に、駆動用モータのような駆動部には発電部130から電力を供給し、負荷変動が大きい傾向にある制御部131には急峻な負荷変動に追従して電力を供給することができる二次電池150から電力を供給している。二次電池150は繰り返し充電することによって電気エネルギーを蓄電することができる電力供給手段であり、発電部130d、130eから供給された電気エネルギーを蓄電し、この電気エネルギーを電力として制御部131に供給する。このように電力を供給する電力源を負荷変動に応じて使い分けることによって、犬型ロボット141の安定した駆動を可能とする。なお、電力供給手段は二次電池150に限定されず、キャパシター、マイクロタービン、一次電池や太陽電池のような電池でもよく、これら電力供給手段を組み合わせたものでもよい。また、一つの発電部と、複数の電力供給手段とによって電力の供給を分担してもよい。
【0149】
次に、この発明の第10の実施形態について説明する。この第10の実施形態においては、電力供給システムについて説明する。
図14に示すように、この電力供給システム160は、複数の駆動部163に電力を供給する燃料電池161と、燃料電池161から電力が供給される駆動部163a、163bに比べて負荷変動が大きい駆動部163cに対して電力を供給する二次電池162とから構成されている。燃料電池161としては、第1〜第6の実施形態による燃料電池のいずれかを用いる。家庭で用いられる各種電気器具に電力を供給する際には、燃料電池161から電力が供給される電気器具に比べて負荷変動が大きい電気器具に対しては二次電池162から電力を供給する。例えば、照明器具のような点灯時に高い電圧を必要とする電気器具には二次電池162から電力を供給して点灯させ、その他の負荷変動が小さい電気器具に対しては燃料電池161から電力を供給する。すなわち、駆動部163cが照明器具に相当し、その他の電気器具が駆動部163a、163bに相当する。また、各種電気機器が駆動されていない場合には、燃料電池161から二次電池162を充電することもできることから、二次電池162は、電気エネルギーを蓄電した後所要の駆動部に電力を供給する電力供給手段とされる。このような電力供給システム160によれば、燃料電池と電力供給手段とを駆動部の負荷変動に応じて使い分けることによって、負荷変動が異なる様々な駆動部からなるシステムに対して安定して電力を供給することができる。
【0150】
また、この電力供給システム160は、家庭内で用いられる各種電気器具に電力を供給する場合に限定されず、負荷変動が異なる駆動部を有するシステムに対して電力を供給する場合に応用可能である。例えば、燃料電池を搭載した電気自動車のような輸送装置において、この輸送装置を動かすための駆動用モータに比べて負荷変動が大きい各種装置に二次電池のような電力供給手段から電力を供給することによって、輸送装置全体を安定して動作させることも可能である。また、電力供給手段としては、二次電池に限定されず、キャパシターを用いることもできる。また、電力供給手段は、二次電池に限定されず、マイクロタービン、一次電池や太陽電池のような電池、一次電池でもよく、さらにこれら電力供給手段を組み合わせたものであってもよい。
【0151】
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】燃料電池における一般的な酸化還元電位と電流値に関する曲線を示す略線図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による燃料電池を示す略線図である。
【図3】この発明の第1の実施形態による燃料電池に適用する酵素固定化電極を示す略線図である。
【図4】この発明の第1の実施形態において各種電子メディエーターを適用した酵素固定化電極のCV曲線を示す略線図である。
【図5】この発明の第2の実施形態において各種電子メディエーターを適用した酵素固定化電極のCV曲線を示す略線図である。
【図6】この発明の第2の実施形態において各種電子メディエーターを適用した酵素固定化電極のクロノアンペロメトリー測定曲線を示す略線図である。
【図7】この発明の第3の実施形態による燃料電池を示す断面図および略線図である。
【図8】この発明の第4の実施形態による燃料電池において電極材に用いる多孔体導電材料の構造を説明するための略線図および断面図である。
【図9】この発明の第4の実施形態による燃料電池において電極材に用いる多孔体導電材料の製造方法を説明するための略線図である。
【図10】この発明の第7の実施形態によるノート型パソコンを示す略線図である。
【図11】この発明の第8の実施形態による犬型ロボットを示す略線図である。
【図12】この発明の第8の実施形態による犬型ロボットにおいて用いられる燃料電池システムを示す略線図である。
【図13】この発明の第9の実施形態による犬型ロボットを示す略線図である。
【図14】この発明の第10の実施形態による電力供給システムを示す略線図である。
【符号の説明】
【0153】
1…燃料極、3…空気極、5…電解質層、7…燃料、41…骨格、42…カーボン系材料、43…孔、51…ノート型パソコン、57、161…燃料電池、71、141…犬型ロボット、72、142…燃料電池システム、160‥‥電力供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電子メディエーター。
【請求項2】
一般式
【化2】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電子メディエーター。
【請求項3】
酵素および電子メディエーターが固定化された酵素固定化電極において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化3】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化4】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする酵素固定化電極。
【請求項4】
多孔質カーボンからなる電極材に、少なくとも、上記酵素および上記電子メディエーターが固定化されていることを特徴とする請求項3記載の酵素固定化電極。
【請求項5】
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化5】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化6】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
多孔質カーボンからなる電極材に、少なくとも、上記酵素および上記電子メディエーターが固定化されていることを特徴とする請求項5記載の燃料電池。
【請求項7】
一般式
【化7】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電子メディエーター。
【請求項8】
酵素および電子メディエーターが固定化された酵素固定化電極において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化8】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする酵素固定化電極。
【請求項9】
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化9】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
一つまたは複数の燃料電池を用いる電子機器において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化10】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化11】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
一つまたは複数の燃料電池を用いる電子機器において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化12】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
一つまたは複数の燃料電池を用いる移動体において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化13】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化14】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とする移動体。
【請求項13】
一つまたは複数の燃料電池を用いる移動体において、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化15】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とする移動体。
【請求項14】
一つまたは複数の燃料電池を用いる発電システムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化16】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化17】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とする発電システム。
【請求項15】
一つまたは複数の燃料電池を用いる発電システムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化18】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とする発電システム。
【請求項16】
一つまたは複数の燃料電池を用いるコージェネレーションシステムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化19】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化20】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするコージェネレーションシステム。
【請求項17】
一つまたは複数の燃料電池を用いるコージェネレーションシステムにおいて、
少なくとも一つの上記燃料電池が、
正極と負極とがプロトン伝導体を介して対向した構造を有し、上記負極に酵素および電子メディエーターが固定化されている燃料電池において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化21】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなるものであることを特徴とするコージェネレーションシステム。
【請求項18】
酵素および電子メディエーターが固定化された電極を有する電極反応利用装置において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化22】

(式中、X1 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体、および/または、
一般式
【化23】

(式中、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電極反応利用装置。
【請求項19】
酵素および電子メディエーターが固定化された電極を有する電極反応利用装置において、
上記電子メディエーターが、
一般式
【化24】

(式中、X1 、X4 は水素、アルキル基、アリール基、ハロゲンのいずれかを表し、X2 、X3 は水素、アルキル基、アリール基のいずれかを表す)
で表される化合物またはその誘導体からなることを特徴とする電極反応利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−156354(P2006−156354A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304863(P2005−304863)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】