説明

電子メールシステム及び電子メール返信処理方法

【課題】メールサーバにより返信を迅速にBccフィールドに指定されたアドレスへ転送できるメールシステムの技術を提供する。
【解決手段】ヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれる電子メールに対して返信処理を行うメールサーバを有する電子メールシステムであって、上記メールサーバは、電子メール内のヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれている場合、電子メール内のメッセージIDを上記Bccとして指定されたアドレスと対応付けてデータベース内に格納し、電子メール受信時にヘッダ情報を解析して返信メールであった場合、上記メッセージIDと対応付けて格納された上記Bccとして指定されたアドレスに対して上記返信メールを転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上でメールを交換する電子メールシステムにおいて、ブラインドカーボンコピー(Bcc)の仕組みを高度化し、利用者の利便性を向上させた電子メールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業や会社などでは、電子メールの利便性を利用し、電子メールを使用した業務伝達やコミュニケーションが頻繁に行われている。ここで、電子メールとは、インターネットを使った郵便のようなもので、インターネット経由で相手と文字、データ、画像などをやり取りする仕組みである。
【0003】
一般的な電子メールの機能として、To:で指定した送信先の他に、Cc:(カーボンコピー)やBcc:(ブラインドカーボンコピー)などの本来の送信先以外にも電子メールを同報する機能がある。事情により、同報した送信先をTo:やCc:で指定した送信先に知られたくない場合には、電子メールの送信元は、Bccフィールドに特定の送信先アドレスを入力することになる。
【0004】
つまり、メール送信元は、同報する送信先のアドレスを他の送信先に伏せたい場合、同報する送信先のアドレスをBccフィールドに設定することで、その目的を果たすことが出来る。一方で、Bccフィールドに設定されたアドレスは、他のメール送信先に通知されないため、メール送信先が該当メールに返信した場合、元の送信メールのBccフィールドに設定されたメール送信先(Bcc先)には返信が届かない事になる。
【0005】
このため、現在のメールシステムの仕組みでは、メール返信元は、返信メールをBccフィールドに設定された返信先にも同報したい場合、元のメール送信元からBccフィールドに設定された返信先へその返信を転送してもらう必要がある。自らその返信メールをBccフィールドに設定された返信先に同報したい場合には、元の電子メールの送信元にBccで送ったアドレスはあるか否か個々に尋ねる方法をとる必要がある。
【0006】
このような問題に対して、例えば引用文献1では、Bccに指定された電子メールアドレスを含む複数の電子メールアドレスを記憶手段に記憶し、同報送信の際に記憶手段に記憶された電子メールアドレスに基づいて、Bccに指定されていた電子メールアドレスへ送信する返信メール送信手段を有するデータ通信装置が開示されている。
【0007】
そのため、引用文献1は、同報送信の際にBccに指定されていた電子メールアドレスの秘匿性を保ちつつ、同報送信された所定の電子メールに対する返信メールを、同報送信の際にBccに指定された電子メールアドレスへ送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−30106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記電子メールシステムでは、メールサーバでメールアドレスやメッセージIDの管理をしていないため、クライアントが返信メールを転送する際に、機器の電源が入っていない場合や、サーバからメールを受信していない場合は、BCCフィールドに指定されたアドレスへ電子メールが転送されなかったり、電子メールの転送が遅れたりするという問題があった。
【0010】
また、返信メールをBccフィールドに指定されたアドレスに転送するためには、元のメール送信元等がBccフィールドに指定したアドレスにメールを送信したことを記憶しておくことが必要となるので、クライアントで記憶しておくメールアドレスなどが膨大になってしまうことがあった。
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、メールサーバによりBccフィールドに指定されたアドレスへ迅速に返信を転送できる電子メールシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、ヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれる電子メールに対して返信処理を行うメールサーバを有する電子メールシステムであって、上記メールサーバは、電子メール内のヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれている場合、電子メール内のメッセージIDを上記Bccとして指定されたアドレスと対応付けてデータベース内に格納し、電子メール受信時にヘッダ情報を解析して返信メールであった場合、上記メッセージIDと対応付けて格納された上記Bccとして指定されたアドレスに対して上記返信メールを転送することを特徴とする電子メールシステムに関する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明においては、Bccフィールドに指定された伏せられたアドレスに対してメールサーバが自動的に返信メールを転送するので、迅速且つ確実にBccフィールドに指定されたアドレスへ電子メールの転送が行える。また、送信者のメールサーバに閉じて実装が可能なため、現在広範に普及しているメールシステム全体への修正が不要である。
【0014】
本発明の更なる利点及び実施形態を、記述と図面を用いて下記に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態におけるシステム概略図である。
【図2】本発明の実施形態における電子メールの転送処理を説明するためのシステム概略図である。
【図3】本発明の実施形態における識別子管理部が送信メールを受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における識別子管理部が返信メールを受信したときの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態におけるメールサーバの配置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態におけるシステム全体を示す概略図である。同図を参照すると、本実施形態による電子メールシステムは、メールサーバ10、識別子管理部11、データベース12を備えている。
【0018】
本発明の実施形態による電子メールシステムは、電子メールを受け取った送信先(To:で指定された宛先)がその電子メールに返信する際に、上記電子メールの送信元のメールアドレス及びカーボンコピー(Cc:)で指定された送信先のメールアドレスに電子メールを送信すると共に、ブラインドカーボンコピー(Bcc:)で指定された送信先(Bcc先)のメールアドレスにも返信電子メールを転送する役割を有している。
【0019】
次に、本実施形態による電子メールシステム1の各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
メールサーバ10は、例えば自ネットワークにおけるユーザの電子メールの送受信処理を行うサーバコンピュータである。メールサーバ10は、POP(Post Office Protocol)などのメールサーバに到着したメールをパソコン上のメールクライアントが取り込む際の通信プロトコルや、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)などのメール送信の際やメールサーバ同士のメール配送時に使用されるプロトコルに基づいて機能する。
【0021】
識別子管理部11は、電子メールのヘッダ情報を解析し、Bccフィールドの有無やメッセージIDに応じて、ヘッダ情報(メールアドレス、メッセージIDなど)をデータベース12に保存、又はデータベース12内の検索などを行い、電子メールの転送を行う。データベース12は、電子メールのヘッダ情報を保存する。
【0022】
次に、図1、2に示す本発明の実施形態によるメールサーバ10の詳細な機能について以下に説明する。
【0023】
図1において、本発明の実施形態によるメール送信元dは、送信先a、b、及びBcc先cに送信したい電子メールをメールサーバ10に送信する。本実施形態において、図1に示すように、送信元dが送信する電子メールのヘッダ情報は以下の情報を含む。
<ヘッダ情報>
To:a
Cc:b
Bcc:c
From:d
Message−Id:e
【0024】
次に、メールサーバ10の識別子管理部11は、電子メールのヘッダ情報を解析し、送信する電子メールのヘッダ中にBccフィールドが存在する場合、BccフィールドとMessage-Idフィールドの値の対応(メールアドレス、メッセージID)をデータベース12に保存する。
【0025】
そして、メールサーバ10はメールヘッダ内のTo、Cc、Bccフィールドに設定されたメールアドレスに対して電子メールを転送する。その際、Bccフィールドが存在する場合は、Bccフィールドの削除を行う。本実施形態では、以下のヘッダ情報を含む電子メールがインターネットを介して送信先a、b、及びBcc先c送信されることとなる。
<ヘッダ情報>
To:a
Cc:b
From:d
Message−Id:e
【0026】
図2は、本発明の実施形態における電子メールの転送処理を説明するためのシステム概略図である。図2では、図1において送信元dから電子メールを受信した送信先aが、その電子メールに対して返信する場合について説明する。図2では、返信を行うクライアントを返信元とし、また、返信を受信するクライアントを返信先、Bcc先とする。
【0027】
本実施形態によるメールサーバ10の識別子管理部11は、返信元aから受信した電子メールのヘッダ情報を解析し、受信したメールのヘッダ中にメッセージIDを格納するフィールド(Message-Id, In-Reply-To)が存在する場合、メッセージIDでデータベース12を検索する。本実施形態において、返信元aからの電子メールのヘッダ情報は以下の内容を含む。
<ヘッダ情報>
To:d
Cc:b
From:a
In−Reply−To:e
Message−Id:f
【0028】
データベース12の検索でメッセージIDがヒットした場合、図2に示すように、識別子管理部11は対応するアドレス(Bcc先c)に対して受信した電子メールの転送を行う。また、識別子管理部11は、返信先dに対しても電子メールの転送を行う。
【0029】
このように、本発明の実施形態では、メールサーバ10のデータベース12内でBccに指定されたアドレスをメッセージIDと対応付けて保存しているので、メールサーバ10によってBccに指定されたアドレスに対して迅速且つ確実に返信を転送することができる。
【0030】
また、識別子管理部11は、データベース12へのメールアドレスとメッセージIDの登録管理を行い、登録数が一定の値を超過、あるいは登録から一定の時間が経過したことを契機に古いデータの削除を行う。
【0031】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、図1のメールサーバ10が転送した電子メールがメールサーバ10を経由して送信先、Bcc先に到達する仕組みは当業者にとって既知であり、また本発明とは直接関係しないので、その詳細な仕組みは省略する。
【0032】
なお、上記実施形態では、電子メールの送信サーバと受信サーバを同一のメールサーバ10としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば別々のサーバとしてもよい。その場合、データベース12は両サーバからアクセスできる構成となる。
【0033】
次に、図1の識別子管理部11のメール送信時の動作を図3に示すフローチャートを使用して説明する。
【0034】
図3において、識別子管理部11は送信メールを受信すると(S301)、送信メール内におけるBccフィールドの存在を確認する。Bccフィールドが存在しない場合には(S302のNO)、メールサーバ10は既存メールサーバのメール送信処理を行う(S304)。Bccフィールドが存在する場合には(S302のYES)、識別子管理部11はBccフィールドに設定されている値と、該当メールのメッセージIDの組み合わせをデータベース12に登録する(S303)。その後、メールサーバ10は既存メールサーバのメール送信処理を行う(S304)。
【0035】
次に図2に示す識別子管理部11のメール受信時の動作を図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0036】
図4において、識別子管理部11は返信メールを受信すると(S401)、メッセージIDをキーとしてデータベース12を検索する(S402)。検索がヒットしない場合は(S403のNO)、メールサーバ10は既存メールサーバのメール受信処理を行う(S405)。検索がヒットした場合には(S403のYES)、識別子管理部11は検索でヒットしたデータベース12に登録されているアドレスに対して、受信メールの転送を行う(S404)。その後、メールサーバ10は既存メールサーバのメール受信処理を行う(S405)。
【0037】
本発明の他の実施形態として、図5を参照すると、その基本的構成は上記の通りであるが、メールサーバ10の配置について改良された実施例を示す。同図においては、メール送信サーバ20、メール受信サーバ30、及びデータベース12を別個分離している。本実施形態では、メール送信サーバ20は識別子管理部(Bcc保存)21を備え、メール受信サーバ30は識別子管理部(Bcc検索)31を備える。
【0038】
このように、本実施形態では、メール送信サーバ20とメール受信サーバ30を分離しているので、メール送受信処理を負荷分散できるという効果が得られる。
【0039】
本構成において、データベース12はメール送信サーバ20及び/又はメール受信サーバ30内に設置する構成であってもよい。
【0040】
なお、カーボンコピーやブラインドカーボンコピーで指定された送信先が電子メールに返信する際にも、上述した本発明の構成により、電子メールの送信元、カーボンコピーで指定された送信先、及びブライドカーボンコピーで指定された送信先にも電子メールを返信できることは言うまでもない。
【0041】
なお、上述した実施形態に含まれる特徴を用いた電子メール返信処理方法も本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1: 電子メールシステム
10: メールサーバ
11: 識別子管理部
12: データベース
20: メール送信サーバ
21: 識別子管理部(Bcc保存)
30: メール受信サーバ
31: 識別子管理部(Bcc検索)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれる電子メールに対して返信処理を行うメールサーバを有する電子メールシステムであって、
前記メールサーバは、電子メール内のヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれている場合、電子メール内のメッセージIDを前記Bccとして指定されたアドレスと対応付けてデータベース内に格納し、さらに電子メール受信時にヘッダ情報を解析して返信メールであった場合、前記メッセージIDと対応付けて格納された前記Bccとして指定されたアドレスに対して前記返信メールを転送することを特徴とする電子メールシステム。
【請求項2】
前記返信メールの解析は、前記受信した電子メールに対する返信メール内のヘッダ情報に含まれるメッセージIDに基づいて前記メールサーバ内の前記データベースを検索し、前記返信メール内のヘッダ情報に含まれるメッセージIDと一致するメッセージIDがデータベース内に存在するか否かにより判断することを特徴とする請求項1に記載の電子メールシステム。
【請求項3】
前記メールサーバはメール送信用サーバとメール受信用サーバとを有し、前記メール送信用サーバ内と前記メール受信用サーバ内の各々に前記データベースを備えるか、又は前記両サーバ共有として前記データベースを備える構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子メールシステム。
【請求項4】
前記メールサーバは、前記データベースへの前記メッセージIDと前記Bccとして指定されたアドレスの登録数が所定値を超えた場合や登録から一定時間が経過した場合には、登録データを古い順に削除することを特徴とする請求項1乃至3に記載の電子メールシステム。
【請求項5】
ヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれる電子メールに対して返信処理を行う電子メール返信処理方法であって、
電子メール内のヘッダ情報にBccとして指定されたアドレスが含まれている場合、電子メール内のメッセージIDを前記Bccとして指定されたアドレスと対応付けてデータベース内に格納し、さらに電子メール受信時にヘッダ情報を解析して返信メールであった場合、前記メッセージIDと対応付けて格納された前記Bccとして指定されたアドレスに対して前記返信メールを転送することを特徴とする電子メール返信処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−230579(P2012−230579A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98928(P2011−98928)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】