説明

電子メール送信方法,システム,ならびにクライアント側およびサーバ側電子メール送信プログラム

【課題】 電子メール送信システムで,組織内宛の電子メールを,メーリングリストに登録された組織外の宛先に誤送信することを防止する。
【解決手段】 メールチェック装置3は,メーリングリストの代表アドレスが設定された送信メールについて,自ドメイン内のみの送信を意味する内部フラグを設定する。メール送信装置4は,送信メールの送信先にメーリングリストの代表アドレスがあれば,代表アドレスが示すメーリングリストを展開して送信先にメールアドレスを設定する。メールゲートウェイ装置6は,送信先が自ドメイン外のメールアドレスかつ内部宛フラグが設定された送信メールの送信を中止し,送信中止フラグと,送信先に展開されたメーリングリストのメールアドレスを示すアラート情報とを含む送信中止メールを送信元へ送信し,メールチェック装置3は,受信した送信中止メールをもとに,送信が中止されたメールアドレスをまとめて送信元へ通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子メールの送信技術に関する。より詳しくは,本発明は,所定の範囲外へ電子メールが誤送信されることによる情報漏洩を防止するため,送信先にメーリングリストを示す代表アドレスが設定された電子メールの送信を制御する電子メール送信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子メールは企業の業務活動や個人の私的なコミュニケーション手段として広く社会に定着し,今や社会インフラといってよい状況にある。しかし,電子メールの利用が拡大するにつれ,電子メールを介した情報漏洩事故が後を絶たない。財団法人日本情報処理開発協会の統計(例えば,平成17〜19年度)によれば,電子メールを誤送信したことによる情報漏洩事故は,郵便物の宛先違いなどを含めた漏洩事故全体の約6%を占めるまでになっている。電子メール誤送信による情報漏洩事故は,特に,一般企業にとっては社会的信用を失いかねない大きなリスクとなっている。
【0003】
メール送信による情報漏洩事故は,電子メールの宛先(送信先メールアドレス)の設定をうっかり間違えるという,ヒューマンエラーに起因したものが大半である。一般的に,電子メールの誤送信は,受信者からの指摘を受けて顕在化するため,1件の事故発生が,多大な悪影響を及ぼすおそれがある。また,電子メールシステムの活用が拡大傾向にあることを鑑みれば,事故割合は増加すると考えられる。したがって,うっかりミスのようなヒューマンエラーに起因する誤送信を防止することが,ますます重要となっている。
【0004】
さらに,近年では,1つのメールアドレスを代表させて,登録した複数のメールアドレスに同一のメール文を送信するメーリングリスト送信の利用が拡大している。メーリングリスト送信では,ユーザが電子メールの送信先に設定するメーリングリストの代表アドレス(メールアドレス)と,実際の送信先のメールアドレスとが異なっているため,ヒューマンエラーに起因する誤送信が発生するリスクが,より高い。
【0005】
従来,電子メールの誤送信を防止するため,ユーザが宛先に設定したメールアドレスのドメイン部分を表示し,ユーザの確認指示を取得してから電子メールを送信する処理手法が提供されている。
【0006】
また,メーリングリストに関して,受信メールの転送数を削減するために,メーリングリストごとにカテゴリを対応付け,各カテゴリに属するキーワードと転送先アドレスとを管理して,メーリングリストの代表アドレス宛に送信された電子メールについて,その本文や件名に含まれるキーワードが属するカテゴリを特定し,メーリングリストから特定したカテゴリに対応付けられた転送アドレスを抽出して電子メールを転送する処理手法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−117027号公報
【特許文献2】特開2002−82876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来提供されていた手法は,宛先が通常のメールアドレスである送信メールの誤送信防止対策として効果を発揮する。
【0009】
しかし,メーリングリスト送信での誤送信の場合には,メーリングリストに不特定多数の受信者のメールアドレスが登録されているため,通常のメール誤送信に比べて,誤送信の範囲を把握することが,より困難となる。また,メーリングリストに登録されている全員に,誤送信された電子メールの削除を依頼するしか対応手段がなく,1回の誤送信による情報漏洩の被害は,より拡大しやすい。
【0010】
メーリングリスト送信での誤送信を防止することは非常に重要であるが,以下のような課題があげられる。
【0011】
(1) メーリングリスト登録者の把握の困難性
一般的に,メーリングリストに登録されているメンバのメールアドレスを管理者以外の者が把握することはできない。したがって,ユーザは,メーリングリストに社内メンバのみが登録されていると思い込んで社内宛の電子メールのメーリングリスト送信を行うなど,誤送信につながる状況が生じやすい。
【0012】
(2) アドレス情報による送信範囲の判断の困難性
送信許可のメールアドレスが登録されたホワイトリストや,送信拒否のメールアドレスが登録されたブラックリストを用いて,宛先のメールアドレスの登録情報と送信先ドメインとをチェックし,電子メールの送信を許可/拒否する処理だけでは,メーリングリスト送信での誤送信対策としては不十分である。
【0013】
例えば,メーリングリストの代表アドレスは,送信許可される社内アドレスであるが,リストには送信拒否される社外のメールアドレスが登録されている場合には,従来の宛先(アドレス情報)のチェック処理では,メーリングリストに含まれる社外のメールアドレスに対する誤送信を阻止することができない。
【0014】
また,代表アドレスに,“ML”,“ml”などのようなメーリングリストの代表アドレスであることを示す文字が使用されていない場合には,そもそも,メーリングリストの代表アドレスと認識されないおそれがあり,意識しないメーリングリスト送信による情報漏洩の危険性がより高くなる。
【0015】
(3) メール送信の監視による運用上の負担の増加
メーリングリストの登録情報を蓄積したデータベースを用いて,メール送信処理時に送信の許可/拒否を判断・管理する場合には,メーリングリストに登録されたメールアドレス各々について許可/拒否を判断しなければならず,運用上の負荷が増加する。さらに,メール送信の許可/拒否を監督者に判断させるシステムでは,運用上の負荷が大幅に増加する。
【0016】
(4) メーリングリスト管理システムの改変コストの増加
メーリングリストの管理には,専用の管理ツールとサーバでのalias設定が必要である。したがって,メーリングリスト管理装置に対して誤送信対策を施す場合には,管理ツールやalias設定の変更が必要なうえ,実装されている管理ツールやalias設定がサーバごとに異なるため,組織全体で網羅的な誤送信対策のために,管理ツールやalias設定の改変に,非常に多くのコストが必要となる。
【0017】
(5) アラート情報のチェック負担の増加
メーリングリストによる送信メールが警告対象となった場合に,送信先ごとにアラートメールが生成される。そのため,送信元では,1回のメーリングリスト送信により複数のアラートメールを受信する可能性があり,アラートメールのチェック作業の負担が増加する。さらに,アラートメールのチェック作業が過度の負担と感じられるようになると,チェック作業自体が軽視される傾向があるため,誤送信対策効果が低下するおそれがある。
【0018】
本発明の目的は,所定の範囲外へ電子メールが誤送信されることによる情報漏洩を防止するため,送信先にメーリングリストを示す代表アドレスが設定された電子メールの送信を制御する電子メール送信技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様として開示される電子メール送信方法は,1)送信予定の電子メールであって,送信先にメーリングリストの代表アドレスが設定されている電子メールに対して,所定の組織の範囲に属するメールアドレスにのみ送信する指示を示す内部宛送信指示を示す内部宛フラグを設定する処理ステップと,2)メーリングリストを示す代表アドレスと該メーリングリストに登録されたメールアドレスとを対応付けて記憶するメーリングリスト情報記憶部を参照して,前記電子メールの送信先に,前記代表アドレスが示すメーリングリストに登録されたメールアドレスを設定する処理ステップと,3)前記電子メールの送信先が,前記組織の範囲に属していないメールアドレスであるかを判定し,前記送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスである電子メールに,前記内部宛フラグが付加されているかを検査する処理ステップと,4)前記電子メールの送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスであって前記内部宛フラグが付加されている場合に,前記電子メールの送信を中止して,前記電子メールに送信中止を示す送信中止フラグと送信先に設定された前記代表アドレスに登録されたメールアドレスを示すアラート情報とを付加した送信中止メールを生成し,前記電子メールの送信元へ送信する処理ステップと,5)前記送信中止メールを取得し,前記送信中止メールに含まれるアラート情報から,前記電子メールの送信先のうち送信が中止されたメールアドレスを抽出し,前記抽出したメールアドレスをまとめて通知する処理ステップとを,コンピュータが実行するものである。
【発明の効果】
【0020】
上記の開示された電子メール送信方法によれば,送信先にメーリングリストを示す代表アドレスが設定されている場合に,ユーザが意図していない,所定の範囲外へのメール送信を中止して,送信を中止した送信先を示すアラート情報を効果的に通知できるため,電子メール誤送信による情報漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の一つとして説明する電子メール送信システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態における,電子メール送信システムの各装置の構成例を示す図である。
【図3】本実施の形態における,送信先チェック処理の処理フロー例を示す図である。
【図4】本実施の形態における,宛先確認のための画面の例を示す図である。
【図5】本実施の形態における,内部宛送信指示を示すフラグが設定された送信メール例を示す図である。
【図6】本実施の形態における,電子メール送信システムのメール送信処理の処理フロー例を示す図である。
【図7】本実施の形態における,メーリングリストに登録されたメールアドレスが設定された送信メールの例を示す図である。
【図8】本実施の形態における,送信中止メールの例を示す図である。
【図9】本実施の形態における,電子メール送信システムのメール送信処理の処理フロー例を示す図である。
【図10】本実施の形態における,送信中止情報の例を示す図である。
【図11】本実施の形態における,アラート画面の表示例を示す図である。
【図12】本実施の形態において,電子メール送信システムが備える各装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は,本発明の実施形態の一つとして説明する電子メール送信システムの構成例を示す図である。
【0023】
電子メール送信システム100は,電子メールの送信処理を行うシステムであって,電子メールに対して,予め設定した所定の範囲内に属するメールアドレスにのみ送信する指示(内部宛送信指示)がある場合に,電子メールに内部宛の送信を指示するフラグ(内部宛フラグ)を設定して,内部宛フラグが設定された電子メールの送信処理時に,前記の範囲に属するメールアドレスに対する送信を行い,前記の範囲に属していないメールアドレスに対する送信を中止する。
【0024】
ここで,所定の範囲と,メールシステムにおいて組織の範囲内として認識される範囲を示す。例えば,「範囲内」と「範囲外」とは,一般的には,会社組織における社内と社外であり,ネットワーク上では,ファィアウォールで保護されている内部のイントラネットを「範囲内」とし,ファィアウォールで隔てられる外部を「範囲外」とする。メールシステムにおいては,ファイアウォールとして機能するメールゲートウェイの内側を範囲内とし,メールゲートウェイの外側を範囲外とする。以下の説明では,範囲内または社内とは,ユーザが属するイントラネットであってメールシステムのメールゲートウェイの内側を示し,範囲外または社外とは,外部ネットワークであって,メールゲートウェイの外側を示すものである。
【0025】
電子メール送信システム100は,送信者端末1,メールチェック装置3,メール送信装置4,メーリングリスト管理装置5,およびメールゲートウェイ装置6を有する。
【0026】
送信者端末1は,送信者が使用するクライアント装置である。
【0027】
送信者端末1は,送信メールを生成し,送信要求するメーラ2,および,メーラ2で生成された送信メールの送信先をチェックするメールチェック装置3を有する。
【0028】
メールチェック装置3は,送信者端末1のメーラ2で生成された送信予定の電子メール(送信メール)に対して内部宛送信指示があった場合に,その電子メールのヘッダ部に内部宛フラグを設定する。
【0029】
内部宛送信指示は,ユーザが所属する組織内に属するメールアドレスのみへ送信メールを送信する指示である。組織内に属するメールアドレスの範囲は,所定の定義情報として予め設定される。
【0030】
定義情報には,例えば,管理者によって組織内のメールアドレスとして判定される範囲を示すドメインが設定される。例えば,“fff.com”,“fff.co.jp”,“ppp.co.jp”のドメインに属するメールアドレスが,組織内のメールアドレスとして定義され,それ以外のドメインに属するメールアドレス,“xxx.com”,“xxx.co.jp”,“yyy.co.jp”等は,組織外のメールアドレスとされる。
【0031】
また,メールチェック装置3は,メール送信装置4から,送信メールの送信中止が通知された場合に,送信者端末1へ送信中止された送信先を通知する。
【0032】
メール送信装置4は,電子メールの送信処理を行う装置であり,メーラ2で生成された送信メールを送信先のメールアドレスへ送信する。さらに,メール送信装置4は,送信メールの宛先がメーリングリストの代表アドレスであれば,メーリングリスト管理装置5を参照して,設定された代表アドレスに対応するメーリングリストに登録されているメールアドレスを,送信先に展開する。
【0033】
また,メール送信装置4は,メールゲートウェイ装置6から,送信メールの送信中止を示すフラグが追加された送信メール(送信中止メール)が返信された場合に,送信中止メールをメールチェック装置3へ送信する。
【0034】
メーリングリスト管理装置5は,メーリングリストの代表アドレスと,メーリングリストに登録されているメンバのメールアドレスとを対応付けて記憶,管理する。
【0035】
メーリングリスト管理装置5の代わりに,メール送信装置4が,メーリングリストを示す代表アドレスと該メーリングリストに登録されたメールアドレスとを対応付けて記憶するメーリングリスト情報記憶部を備えるようにしてもよい。
【0036】
メールゲートウェイ装置6は,送信メールを,メール送信装置4のドメイン外のメールアドレスへ送信する処理を行う装置であり,内部宛フラグが設定されている送信メールの送信を中止する。また,メールゲートウェイ装置6は,内部宛フラグが追加された送信メールに対して送信中止を示すフラグ(送信中止フラグ)を追加し,メール送信装置4を介して,送信者端末1へ返信する。
【0037】
メール送信装置4およびメーリングリスト管理装置5は,ドメイン内に1または複数構成されていてよい。
【0038】
図2は,電子メール送信システム100の各装置の構成例を示す図である。
【0039】
メールチェック装置3は,メール送受信部31,フラグ設定部33,定義情報記憶部35,送信中止情報収集部37,および送信中止情報記憶部39を備える。
【0040】
メール送受信部31は,電子メールの送受信処理を行い,メーラ2で生成された送信メールを受け付け,フラグ設定部33による処理の後にメール送信装置4へ送信する。また,メール送受信部31は,メール送信装置4から返信された送信中止メールを,送信中止情報収集部37へ渡す。
【0041】
フラグ設定部33は,送信メールに対する内部宛送信指示が受け付けられた場合に,その送信メールのヘッダ内に内部宛フラグを設定する。内部宛フラグは,例えば「X−Mail−CHK:Int」である。
【0042】
定義情報記憶部35は,送信が許可される所定の範囲内として,送信者の組織を示すドメイン内に属するメールアドレスの範囲が定義された定義情報を記憶する。
【0043】
送信中止情報収集部37は,送信中止メールを取得して,その送信先に設定されていたメーリングリストを示す代表アドレスと,登録されていたメールアドレスとを示す送信中止情報を生成し,送信中止情報をもとにアラート画面を生成して送信者端末1で表示させる。
【0044】
送信中止情報記憶部39は,送信中止メールにもとづく送信中止情報を記憶する。
【0045】
メール送信装置4は,メールチェック装置3から受信した送信メールを,送信先に設定されたメールアドレスへ送信する。メール送信装置4は,送信先がメーリングリストの代表アドレスであれば,代表アドレスが示すメーリングリストに登録されているメールアドレスを送信先に展開する。また,メール送信装置4は,送信先に,組織(ドメイン)に属するメールアドレスが設定されていれば,そのメールアドレスに対応するメール送信装置や端末装置へ送信メールを送信し,組織(ドメイン)に属していないメールアドレスが設定されていれば,メールゲートウェイ装置6へ送信メールを送信する。また,メール送信装置4は,メールゲートウェイ装置6から送信中止メールを受信して,送信者端末1へ送信する。
【0046】
メールゲートウェイ装置6は,フラグ検査部61を備える。
【0047】
フラグ検査部61は,メールゲートウェイ装置6が受信した送信メールに内部宛フラグが設定されているかを検査する。フラグ検査部61は,送信メールの送信先がドメインに属していないメールアドレスであって内部宛フラグが設定されている場合に,その送信メールの送信を中止し,送信メールに送信中止フラグと,送信先に展開されていたメールアドレスを示すアラート情報を追加して送信中止メールを生成し,メール送信装置4へ返信する。
【0048】
次に,電子メール送信システム100の送信先チェック処理の流れを説明する。
【0049】
図3は,送信先チェック処理の処理フロー例を示す図である。
【0050】
ステップS1: 送信者端末1のメーラ2が送信メールを生成する。
【0051】
ステップS2: メール送受信部31は,メーラ2から送信メールを受け取る。フラグ設定部33は,定義情報記憶部35を参照して,メール送受信部31が受け取った送信メールの送信先に組織外のメールアドレスが含まれるかを調べる。
宛先の確認をユーザに促すための画面200を,画面表示部23を介して送信者端末1に表示させる。
【0052】
ステップS3: フラグ設定部33は,画面200を表示する。
【0053】
図4は,画面200の例を示す図である。
【0054】
画面200は,送信メールの送信先に設定されている組織内のメールアドレスを表示する表示領域201,組織外のメールアドレスを表示する表示領域203,組織内のメールアドレスに対する送信のみを指示する組織内送信ボタン205(「社内のみに送信」と表示),組織内および組織外のメールアドレスに対する送信を指示する組織外送信ボタン207(「送信(社外)」と表示),送信の中止を指示する送信中止ボタン209(「送信とりやめ」と表示)を備える。
【0055】
フラグ設定部33は,定義情報記憶部35の定義情報を参照して,送信メールの宛先に設定されている組織内のメールアドレスの一覧を表示領域201に,組織外のメールアドレスの一覧を表示領域203に表示させる。
【0056】
送信メールに設定されているメーリングリストの代表アドレスが,定義情報に定義された範囲内のメールアドレスであれば表示領域201に表示され,範囲外のメールアドレスであれば表示領域203に表示される。
【0057】
ステップS4: フラグ設定部33は,ユーザのクリック操作によって,画面200のどのボタンが選択されたかを調べる。画面200の組織内送信ボタン205が選択されていれば(ステップS4の「組織内送信」),ステップS6の処理へ進む。組織外送信ボタン207が選択されていれば(ステップS4の「組織外送信」),ステップS6の処理へ進む。送信中止ボタン209が選択されていれば(ステップS4の「送信中止」),処理を終了する。
【0058】
ステップS5: 送信メールの送信先に,組織内(社内)のメールアドレスである「xyz@fff.com,abc@fff.co.jp,jkl@fff.com,a@ML.fff.com」と,組織外(社外)のメールアドレスである「xxx@xxx.com」とが設定されているとする。フラグ設定部33は,送信メールに,内部宛フラグを設定する。
【0059】
図5は,内部宛送信指示を示すフラグが設定された送信メール例を示す図である。
【0060】
送信メールのヘッダ内に,内部宛フラグ「X−Mail−CHK:Int」が追加される。内部宛フラグが追加された送信メールは,メール送受信部31によって,メール送信装置4へ送信される。
【0061】
ステップS6: メール送受信部31は,送信メールをメールチェック装置3へ送信する。
【0062】
図6は,電子メール送信システム100のメール送信処理の処理フロー例を示す図である。
【0063】
ステップS10: メール送信装置4は,送信メールを受信する。メール送信装置4は,送信メールの送信先にメーリングリストの代表アドレスが設定されている場合に,メーリングリスト管理装置5から,代表アドレスが示すメーリングリストに登録されているメールアドレスを取得して,送信メールの送信先へ展開して設定する。
【0064】
具体的には,メール送信装置4は,メーリングリスト管理装置5を参照し,送信メールの送信先にメーリングリストを示す代表アドレス「jkl@ML.fff.com」が登録されている場合に,代表アドレス「jkl@ML.fff.com」が示すメーリングリストに登録されている全メールアドレスを取得して,送信メールの送信先に設定する。
【0065】
図7は,メーリングリストに登録されたメールアドレスが設定された送信メールの例を示す図である。
【0066】
内部宛フラグが追加された送信メールのエンベロープで,送信先すなわち送信メールの受信者を示すRCPTコマンドに,メーリングリストの代表アドレス「jkl@ML.fff.com」に登録されているメールアドレス「foo1@fff.com,foo2@fff.com,foo3@xxx.com,…」が展開されて設定される。
【0067】
ステップS11: メール送信装置4は,送信メールの送信先に展開したメールアドレスをもとに,送信メールを振り分け,送信先のメールアドレスのドメイン部が自ドメインと一致すれば,その送信先のメールアドレスが示す他のメール送信装置または送信者端末へ送信メールを送信する。送信先のメールアドレスのドメイン部が自ドメインと一致しなければ,メール送信装置4は,メールゲートウェイ装置6へ送信メールを送信する。
【0068】
ステップS12: メールゲートウェイ装置6が送信メールを受信する。フラグ検査部61は,送信メールに,内部宛フラグが設定されているかを調べる。送信メールに内部宛フラグが設定されていれば(ステップS12のY),ステップS13の処理へ進む。送信メールに内部宛フラグが設定されていなければ(ステップS12のN),ステップS15の処理へ進む。
【0069】
ステップS13: フラグ検査部61の検査結果を受けて,メールゲートウェイ装置6は,内部宛フラグが設定されている送信メールの送信を中止する。
【0070】
ステップS14: メールゲートウェイ装置6は,送信を中止した送信メールに送信中止フラグとアラート情報とを追加して送信中止メールを生成し,送信メールの送信元へ送信する。
【0071】
図8は,送信中止メールの例を示す図である。
【0072】
送信中止メールのヘッダ部には,例えば,送信中止フラグ「X−Mail−CHK:list」と,アラート情報として,その送信メールのエンベロープ(RCPT)に設定されていたメールアドレスが追加される。アラート情報のメールアドレスのうち,ドメイン外のメールアドレスの先頭に,外部宛として送信中止となったメールアドレスであることを示すアラート「Alert」が付加される。
【0073】
ステップS15: メールゲートウェイ装置6は,内部宛フラグが設定されていない送信メールについては,その送信先へ送信する。
【0074】
図9は,電子メール送信システム100のメール送信処理の処理フロー例を示す図である。
【0075】
ステップS20: メールチェック装置3のメール送受信部31は,メール送信装置4から送信中止メールを受信する。
【0076】
ステップS21: メール送受信部31は,受信した送信中止メールのヘッダ部に,送信中止フラグ「X−Mail−CHK:list」とアラート情報とが含まれているかを判定する。
【0077】
送信中止フラグとアラート情報とが含まれる場合には(ステップS21のY),内部宛送信指示に反することによる送信中止であったとして,ステップS22の処理へ進み,送信中止のフラグとアラート情報とが含まれていない場合には(ステップS21のN),宛先不明などの通常のエラーによる送信不能として,ステップS24へ進む。
【0078】
ステップS22: 送信中止情報収集部37は,送信中止メールから,メッセージIDとアラート情報とを取得して送信中止情報を生成し,送信中止情報記憶部39に格納する。
【0079】
なお,送信中止情報記憶部39に記憶される送信中止情報は,判定結果内の日時情報をもとに,所定の期間経過後に削除されるようにしてもよい。
【0080】
図10は,送信中止情報の例を示す図である。
【0081】
送信中止情報は,メッセージID,送信先として設定されていたメーリングリストの代表アドレス,該メーリングリストから展開されたメールアドレス,および判定結果を含む。判定結果は,メーリングリストから展開されたメールアドレスが,自ドメイン外(社外)のメールアドレスを含むかを示す情報と,送信中止情報を格納した日時情報とを含む。
【0082】
ステップS23: 送信中止情報収集部37は,送信中止情報から,メッセージIDが同一のものを抽出して集約し,送信中止があった旨を通知する画面300を生成,表示する。
【0083】
送信中止情報収集部37は,送信中止情報の展開されたメールアドレスから,アラート「Alert」が付加されたメールアドレスを抽出して,警告対象のメールアドレスとする。また,アラート「Alert」が付加されていないメールアドレスを抽出して,送信済みのメールアドレスとする。
【0084】
図11は,アラート画面の表示例を示す図である。
【0085】
アラート画面300は,送信メールに設定された代表アドレスのメーリングリストに含まれる送信先をチェックした旨および外部宛のメールアドレスが含まれていた旨のメッセージ,ML送信先一覧の表示領域301,警告送信先の表示領域303,および確認(OK)ボタン305を有する。
【0086】
表示領域301には,送信されたメールアドレス(自ドメイン内のメールアドレス)が一覧表示され,表示領域303には,警告対象として送信が中止されたメールアドレス(自ドメイン外のメールアドレス)が一覧表示される。確認(OK)ボタン305が押下されると,画面300の表示が終了される。
【0087】
ステップS24: メール送受信部31は,送信中止のフラグとアラート情報とが含まれていない送信中止メールをメーラ2に渡すと,メーラ2は,送信中止メールを表示して,ユーザに,送信メールの送信が中止された旨を通知する。
【0088】
メールチェック装置3において,送信中止情報記憶部39に送信中止情報が記憶された以降にメーラ2から送信メールを受け付ける場合に,フラグ設定部33は,定義情報記憶部35と送信中止情報記憶部39とを参照して,送信メールの宛先確認の画面200に表示させ,ユーザが送信先を確認できるようにしてもよい。
【0089】
また,メールチェック装置3は,送信中止情報から得られた組織外のメールアドレスを,定義情報記憶部35の定義情報に反映させるようにしてもよい。
【0090】
図12は,電子メール送信システム100が備える各装置のハードウェア構成例を示す図である。
【0091】
電子メール送信システム100が備える送信者端末1,メールチェック装置3,メール送信装置4,メーリングリスト管理装置5,およびメールゲートウェイ装置6は,各々,演算装置(CPU)501,一時記憶装置(DRAM,フラッシュメモリ等)502,永続性記憶装置(HDD,フラッシュメモリ等)503,およびネットワークNとのネットワークインターフェース504を有するコンピュータ500と,入力装置(キーボード,マウス等)520と出力装置(ディスプレイ,プリンタ等)530とによって実施することができる。
【0092】
また,送信者端末1,メールチェック装置3,メール送信装置4,メーリングリスト管理装置5,およびメールゲートウェイ装置6は,各々,コンピュータ500が実行可能なプログラムによって実施することができる。この場合に,各装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。提供されたプログラムをコンピュータ500が実行することによって,上記説明した送信者端末1,メールチェック装置3,メール送信装置4,メーリングリスト管理装置5,およびメールゲートウェイ装置6各々の処理機能がコンピュータ500上で実現される。
【0093】
なお,コンピュータ500は,可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り,そのプログラムに従った処理を実行することもできる。さらに,このプログラムは,コンピュータ500で読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。
【0094】
上記説明した実施の形態では,図1の構成例として示すように,メールチェック装置3を送信者端末1内で実施されるものとして説明したが,メーラ2とメールチェック装置3とを別個のハードウェアとして実施してもよい。
【0095】
また,メール送信装置4とメーリングリスト管理装置5とが,また,メール送信装置4とメールゲートウェイ装置6とが,1つのハードウェアとして構成されてもよい。
【0096】
上記説明したように,開示する電子メール送信システム100によれば,代表アドレスが所定の範囲内のメールアドレスであっても,そのリスト内に範囲外のメールアドレスを含むようなメーリングリストのメールアドレスが送信先に設定されている場合に,リストから展開されたメールアドレスが外部宛のもの(自ドメイン外のメールアドレス)であれば,その送信を中止することができる。よって,ユーザが気付かないうちに外部宛へメールを送信してしまうという誤送信事故を回避することができる。
【0097】
さらに,開示する電子メール送信システム100によれば,1つの送信メールごとに送信を中止した送信先を集約して通知することができる。よって,多数の送信中止メールを受信させることによる警告への慣れを防止して,注意喚起の効果を維持させることができる。
【0098】
さらに,開示する電子メール送信システム100によれば,送信中止したメールアドレスとして,ユーザにメーリングリスト内の範囲外のメールアドレスを通知することができる。また,メーリングリストに登録されている組織外のメールアドレスを特定して,メール送信の送信先確認に利用することができる。よって,ユーザにメーリングリスト内の範囲外のメールアドレスを認知させ,メール誤送信のリスクをさらに低下させることができる。
【符号の説明】
【0099】
100 電子メール送信システム
1 送信者端末
2 メーラ
3 メールチェック装置
31 メール送受信部
33 フラグ設定部
35 定義情報記憶部
37 送信中止情報収集部
39 送信中止情報記憶部
4 メール送信装置
5 メーリングリスト管理装置
6 メールゲートウェイ装置
61 フラグ検査部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信予定の電子メールであって,送信先にメーリングリストの代表アドレスが設定されている電子メールに対して,所定の組織の範囲に属するメールアドレスにのみ送信する指示を示す内部宛送信指示を示す内部宛フラグを設定する処理ステップと,
メーリングリストを示す代表アドレスと該メーリングリストに登録されたメールアドレスとを対応付けて記憶するメーリングリスト情報記憶部を参照して,前記電子メールの送信先に,前記代表アドレスが示すメーリングリストに登録されたメールアドレスを設定する処理ステップと,
前記電子メールの送信先が,前記組織の範囲に属していないメールアドレスであるかを判定し,前記送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスである電子メールに,前記内部宛フラグが付加されているかを検査する処理ステップと,
前記電子メールの送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスであって前記内部宛フラグが付加されている場合に,前記電子メールの送信を中止して,前記電子メールに送信中止を示す送信中止フラグと送信先に設定された前記代表アドレスに登録されたメールアドレスを示すアラート情報とを付加した送信中止メールを生成し,前記電子メールの送信元へ送信する処理ステップと,
前記送信中止メールを取得し,前記送信中止メールに含まれるアラート情報から,前記電子メールの送信先のうち送信が中止されたメールアドレスを抽出し,前記抽出したメールアドレスをまとめて通知する処理ステップとを,
コンピュータが実行する
ことを特徴とする電子メール送信方法。
【請求項2】
前記取得した送信中止メールから,送信先に設定された代表アドレスと,前記代表アドレスに登録された組織の範囲に属していないメールアドレスとを抽出し,送信中止情報として送信中止情報記憶部に格納する処理ステップを
前記コンピュータが実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子メール送信方法。
【請求項3】
クライアント装置とサーバ装置とを備える電子メール送信システムであって,
前記クライアント装置が,
送信予定の電子メールであって,送信先にメーリングリストの代表アドレスが設定されている電子メールに対して,所定の組織の範囲に属するメールアドレスにのみ送信する指示を示す内部宛送信指示を示す内部宛フラグを設定するフラグ設定部と,
前記電子メールに,送信中止を示す送信中止フラグと,送信先に設定された前記代表アドレスが示すメールアドレスに登録されたメールアドレスを示すアラート情報とが付加された送信中止メールを取得し,前記送信中止メールに含まれるアラート情報から,前記電子メールの送信先のうち送信が中止されたメールアドレスを抽出し,前記抽出したメールアドレスをまとめて通知する送信中止情報収集部とを備え,
前記サーバ装置が,
メーリングリストを示す代表アドレスと該メーリングリストに登録されたメールアドレスとを対応付けて記憶するメーリングリスト情報記憶部を参照して,前記電子メールの送信先に,前記代表アドレスに登録されたメールアドレスを設定する処理部と,
前記電子メールの送信先が,前記組織の範囲に属していないメールアドレスであるかを判定し,前記送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスである電子メールに,前記内部宛フラグが付加されているかを検査し,前記電子メールの送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスであって前記内部宛フラグが付加されている場合に,前記電子メールの送信を中止して,前記電子メールに送信中止を示す送信中止フラグと送信先に設定された前記代表アドレスが示すメーリングリストに登録されたメールアドレスを示すアラート情報とを付加した送信中止メールを生成し,前記電子メールの送信元へ送信する処理部とを備える
ことを特徴とする電子メール送信システム。
【請求項4】
コンピュータに,
送信先にメーリングリストの代表アドレスが設定されている電子メールを生成する処理と,
前記電子メールに対して,所定の組織の範囲に属するメールアドレスにのみ送信する指示を示す内部宛送信指示を示す内部宛フラグを設定する処理と,
前記電子メールに,送信中止を示す送信中止フラグと,送信先に設定された前記代表アドレスに登録されたメールアドレスを示すアラート情報とが付加された送信中止メールを取得し,前記送信中止メールに含まれるアラート情報から,前記電子メールの送信先のうち送信が中止されたメールアドレスを抽出し,前記抽出したメールアドレスをまとめて通知する処理とを,
実行させるためのクライアント側電子メール送信プログラム。
【請求項5】
コンピュータに,
送信先にメーリングリストの代表アドレスが設定されている電子メールであって,所定の組織の範囲に属するメールアドレスにのみ送信する指示を示す内部宛送信指示を示す内部宛フラグが設定された電子メールを受け付ける処理と,
メーリングリストを示す代表アドレスと該メーリングリストに登録されたメールアドレスとを対応付けて記憶するメーリングリスト情報記憶部を参照して,前記受け付けた電子メールの送信先に,前記代表アドレスが示すメーリングリストに登録されたメールアドレスを設定する処理と,
前記電子メールの送信先が,前記組織の範囲に属していないメールアドレスであるかを判定し,前記送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスである電子メールに,前記内部宛フラグが付加されているかを検査する処理と,
前記電子メールの送信先が前記組織の範囲に属していないメールアドレスであって前記内部宛フラグが付加されている場合に,前記電子メールの送信を中止して,前記電子メールに送信中止を示す送信中止フラグと送信先に設定された前記代表アドレスが示すメーリングリストに登録されたメールアドレスを示すアラート情報とを付加した送信中止メールを生成し,前記電子メールの送信元へ送信する処理とを,実行させるための
サーバ側電子メール送信プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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