説明

電子ユニットのための避雷アレンジメント

航空機の空気力学的フェアリングに適合される電子ユニット(5)から落雷によって生じる電流をそらすための避雷アレンジメント。そのデバイスは、空気力学的フェアリングのCFRPサンドイッチパネル(1)の外側に配置される導電性の取付プレート(9A)を含む。さらに、デバイスは、空気力学的フェアリングのCFRPサンドイッチパネル(1)の内側に配置され、取付プレート(9A)に電気的に接続される、導電性の後プレート(9B)を有する。これに点について、電子ユニット(5)のために備えられる取付手段の第1のグループが、電子ユニット(5)を電気的に後プレート(9B)に接続する。落雷中に生じる電流は、低抵抗で、後プレート(9B)及び取付プレート(9A)を経由して、電子ユニット(5)から航空機の胴体上へとそらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷によって生じる雷電流を、航空機の空気力学的フェアリングに適合される電子ユニットからそらすための航空機の避雷アレンジメントに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機構造において、複合材料、特に積層複合材料は、航空機の重量を減少させるために使用される。この点において、いわゆるCFRPサンドイッチパネルは、樹脂含浸処理された紙からなるハニカム構造の中間層を有する要素に広く使用される。ハニカム構造の中間層は、いずれの場合にも、炭素繊維強化プラスチック材料からなる少なくとも1つの層によって、両側が取り囲まれている。この種のCFRPサンドイッチパネルは、低重量とともに、高い機械的安定性の特徴がある。
【0003】
航空機において、センサ及び測定要素と同様に、様々な電子要素、特にアンテナ、信号灯、照明手段が航空機胴体の外部スキンに適合される。様々なアンテナが、異なる機能のために、例えば、航空機のナビゲーション又は地上のステーションとの通信のために備えられる。そのようなアンテナの例は、V/UHF(very/ultra high frequency)アンテナ、TACAN(technical air navigation)アンテナ、及びGADIRS(GPS Air Data Inertia Reference System)アンテナである。これらのアンテナは、一のアンテナから放射される信号が、ここで障害信号となって、他のアンテナの受信信号を遮断しないように、互いに最小距離にならなければならない。航空機胴体の外部スキンに取り付けられるのは、典型的に、アンテナ、信号灯、センサ等のような、20より多くの電子要素又はユニットである。それ故、ある程度必要となる最小距離の代わりに、そのような電子要素を取り付けるための領域(面積)が制限される。特に、相対的に小さな旅客機、及びエアロフォイル又は翼が航空機胴体のトップにある航空機(高翼航空機)の場合において、電子要素について利用可能な領域が制限される。
【0004】
欧州特許第0790182(B1)号明細書は、特に、航空機上のスキャナの保護のために使用される避雷針ストリップを開示する。この点において、避雷針ストリップの一方側は、雷に対して保護されるように表面に取り付けられ、そして、避雷針ストリップの他方側は、雷に対して露出される。これらの既知の避雷針ストリップは、伝導性粒子が充填される熱可塑性ポリマからなる。
【0005】
独国特許発明第1296539号明細書は、プラスチック部分から製造される自動車ボディのための避雷装置を記述する。例えば、銅メッシュ生地で製造される導電体は、プラスチック材料成分に盛り込まれ又は組み入れられる。これらの導電体は、接続点で自動車の他の部分に導電方式で接続される。
【0006】
図1は、エアロフォイルが航空機胴体にある従来技術による航空機を示す。この点において、流れるような形状の空気力学的フェアリングWFF(wing fuselage fairing)が空気抵抗を低減するために適合される。不要な重量を回避するために、この空気力学的フェアリングWFFは、従来、CFRPサンドイッチパネルから形成されている。
【0007】
電子要素が航空機胴体の外部スキンに適合されることを許容すべく、航空機への落雷中に、電子ユニットに対応する機能的な性能が損なわれないように又は破壊されないように、落雷に対する適切な保護が提供されなければならない。図1に示される、エアロフォイルと航空機導体の間の移行領域内で、空気力学的フェアリングのためにも使用される従来のCFRPサンドイッチパネルは、サンドイッチパネルの上側及び下側のCFRP層が導電性であるが、それらは、落雷によって生じる過電圧又は過電流をそらすために非常に高い境界抵抗を有するにすぎないという理由から、電子ユニットが、そこに取り付けられるということを許容しない。伝導性も相対的に低くなるように、従来のCFRPサンドイッチパネルにおいて、少なくとも1つのCFRPシートからなるCFRP層の厚さは小さい。その材料特性により、繊維複合材料からなる構造は、落雷中に、金属材料からなる構造と比較して異なる方式の挙動を示す。繊維複合材料は、導電性に関して、異方性(CFRP/BFRP)又は非伝導性(GFRP/SFRP)である。繊維複合材料の固有電気抵抗は、金属のそれよりも10の数乗の差で高い。これは、繊維複合材料自体が、高い雷電流の導体として不適当であるということを意味する。落雷の場合には、低いが存在する繊維複合材料の導電性によって、雷電流が、材料の内側に貫通することを防止できない。この結果、熱及び機械的エネルギのかなりの量が、繊維複合材料の構造を大幅に損傷し得る相対的に高い固有抵抗によって解放されることになる。それ故、高い電気絶縁耐力を伴う繊維複合材料の構造でさえ、雷によって貫通され得る。これは、特に、レーダー装置、電子装置、アンテナ、ジェネレータ、及び金属構造のような局地的に高い電位を伴う装置が、落雷の位置の近傍にあるときの場合である。電子要素又は電子ユニットが直接取り付けられるとき、例えば図1に示されるWFF空気力学的フェアリングとして使用される従来のCFRPサンドイッチパネルは、CFRPサンドイッチパネルの境界抵抗が高すぎるということから、適切な避雷を補償することができない。従来のCFRPサンドイッチパネルの境界抵抗は、パネルサイズと層構造に応じて、100mΩよりも大きくなる。しかしながら、胴体に対する多くとも5mΩの境界抵抗が、適切な避雷のために求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、CFRPサンドイッチパネルを使用する従来の航空機の場合、適切な避雷針又は電気ボンディング(電気接続)がないということから、電子ユニット、例えば、アンテナをCFRPサンドイッチパネルに与えるということが不可能である。
【0009】
それ故、本発明の目的は、電子ユニットをCFRPサンドイッチパネルに取り付けることができ、落雷によって生じる損傷に対して電子ユニットを保護し、かつ、そこからそらすためのアレンジメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1において記述される本発明による特徴を有する避雷アレンジメントによって達成される。避雷アレンジメントは、電気的なボンディングの要件及び交換容易性の要件を考慮する。
【0011】
本発明は、航空機の空気力学的フェアリングに適合される電子ユニットへの雷の効果によって短時間での構造負荷流として作用する電流をそらすための避雷アレンジメントに関する。この避雷アレンジメントの要素は、空気力学的フェアリングのCFRPサンドイッチパネルの外側に配置される導電性の取付プレート、及び、空気力学的フェアリングのCFRPサンドイッチパネルの内側に配置される導電性の後プレート、並びに、取付プレートに影響を与える落雷の結果として生じて流れる雷電流が、低抵抗で航空機胴体にそらされるように、特別に取り付けられる複数の取付手段、例えば、電子ユニット、取付プレート、後プレートを電気的に接続する、全部で3つの取付手段のグループ、である。
【0012】
それ故、本発明による避雷アレンジメントは、航空機の外部スキンに適合され、CFRPサンドイッチパネルに取り付けられる電子ユニットについての雷電流避雷器としての役割を果たす。
【0013】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、保護される電子ユニットは、耐食シール層によって分離される取付プレートの中央にある。
【0014】
耐食シール層は、防湿層を形成し、腐食に対して基底構造を保護する。
【0015】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、CFRPサンドイッチパネルは、炭素繊維強化プラスチック材料からなる少なくとも1つの上側のCFRPシートと、炭素繊維強化プラスチック材料からなる少なくとも1つの下側のCFRPシートとを有する。
【0016】
空気力学的フェアリングについてのCFRPサンドイッチパネルの使用は、フェアリングの重量、そしてそれ故航空機の重量を減少させる。減少される全体の重量の結果として、フライトオペレーションにおいて燃料が節約され得る。
【0017】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、直接的な落雷の可能性がある場合に、CFRPサンドイッチパネルを保護するために、ワイヤメッシュ又は金属フォイルが、CFRPサンドイッチパネルの外側のCFRPシートに適用される。
【0018】
CFRPサンドイッチパネルに適合される電子要素が、CFRPサンドイッチパネルの一部を覆うだけであるということから、メッシュ又はネットの形式で構成され、望ましくはワイヤメッシュ(ブロンズネッティング)で実現される金属層は、落雷が電子要素ではなく、CFRPサンドイッチパネル自体の外側に留まっているときに、避雷を与える。もし、ワイヤメッシュが提供されなければ、CFRPサンドイッチパネルへの落雷は、構造的な損傷、例えば、CFRPサンドイッチパネル内の孔(ホール)の発生という結果となる。この理由のため、ワイヤメッシュは、望ましくは、金属合金、例えばブロンズから製造される。
【0019】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、取付プレート及び後プレートは、既知の電気化学系列により、ワイヤメッシュの材料及びCFRPの両方と比較して、低電位差を有し、かつ、可能な限り小さな重量を有する金属からなる。
【0020】
この実施形態の有利な点は、電気化学的な低電位差により、腐食の影響の可能性が最小化され得るということである。
【0021】
本発明による避雷アレンジメントの望ましい実施形態において、取付プレートと後プレートはチタニウムからなる。
【0022】
チタニウムは、銅合金及びCFRPと比較して、電気化学系列において低電位差について、低重量であることを特徴とする。
【0023】
他の実施形態において、取付プレート及び後プレートはアルミニウムからなる。アルミニウムと銅又はCFRPとの電気化学的な電位差は、チタニウムよりも大きく、「比較的不純な」材料の場合に、腐食現象が益々予想されるであろう。
【0024】
アルミニウムは、低い固有重量であることを特徴とする。
【0025】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、後プレートは環状に構成される。
【0026】
後プレートの環状形状は、重量のさらなる減少を引き起こす。
【0027】
本発明による避雷アレンジメントのさらなる実施形態において、後プレートの外周は、取付手段の第2のグループによって取付プレートに電気的に接続される。
【0028】
本発明による避雷アレンジメントのさらなる実施形態において、取付プレートの外周は、取付手段の第3のグループによって保持構造に電気的に接続され、かつ、取付プレートは、前記保持構造によって航空機の胴体に接続される。
【0029】
さらなる取付手段の提供は、CFRPサンドイッチパネルに適合される電子要素、又は同様に適合さえる電子ユニットを含む固定して配置される全体のCFRPが、容易にかつ迅速に分解され、又は交換されるということが可能になる。
【0030】
この点について、避雷アレンジメントは、取付手段の第3のグループを解放することによって、保持構造から取り外され得る。
【0031】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、保護されるべき電子ユニットはアンテナである。
【0032】
本発明による避雷アレンジメントの他の実施形態において、保護されるべき電子ユニットは、センサ要素である。
【0033】
本発明による避雷アレンジメントのさらなる実施形態において、保護されるべき電子ユニットは、信号灯である。
【0034】
本発明による避雷アレンジメントのさらなる実施形態において、保護されるべき電子ユニットは、照明ユニットである。
【0035】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、航空機の胴体に雷電流をそらすための境界抵抗は、5mΩよりも小さい。
【0036】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、落雷後に生じる過電圧は、取付手段の第1のグループを介して電子ユニットから後プレートにそらされ、そして、そこから、取付手段の第2のグループを介して取付プレートに戻るようにそらされ、そして、そこから、取付手段の第3のグループを介して、胴体の保持構造へとそらされる。
【0037】
本発明による避雷アレンジメントの実施形態において、取付手段は、それぞれの場合において、導電性の適切な表面保護とともに、ねじ及びプレートナット(接地点として構成される)によって構成される。
【0038】
これは、信頼性のある電気接地点又は電気接続点(電気ボンディング)の製造を許容する。
【0039】
ねじ接続またはねじ取付も、リベットジョイントと比較して、容易(より容易)に解放するという利点を有する。
【0040】
他の実施形態において、取付手段は、導電性のリベット又はボルトによって構成される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、従来技術による従来の航空機の構造要素を示す。
【図2】図2A、図2Bは、電流をそらすための本発明によるアレンジメントを用いるCFRPサンドイッチパネルの平面図及び断面図である。
【図3】図3は、本発明による避雷アレンジメントの実施形態を例示するための、図2Bに示される断面の詳細を示す。
【図4】図4A、図4Bは、本発明による装置において使用される取付プレート及び後プレートの可能な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下において、本発明による避雷アレンジメントの実施形態が添付の図面を参照して記述される。
【0043】
図2A及び2Bからわかるように、空気力学的フェアリングの範囲内で使用されるCFRPサンドイッチパネル1は、例えば、樹脂含浸処理された紙からなるハニカム構造の層2を有する。このハニカム中間層2の上側又は外側に配置されるのは、重量を減少させるために、相対的に小さな厚さの少なくとも1つのCFRPシート3である。CFRP外部シートに配置されるのは、CFRPサンドイッチパネル1を保護するためのワイヤメッシュである。フェアリングの下側又は内側に配置されるのは、炭素繊維強化プラスチック材料からなる少なくとも1つのCFRPシート4である。各CFRPサンドイッチパネル1は、包囲モノリシック(ハニカムなし)周辺領域を有する。この周辺領域は、保持構造に機械的に接触するために使用される。その両側で、ハニカム構造の中間層2は、示される例においてアンテナである電子要素5A,5Bの取付のために先細りとなっている。これらのアンテナは、電子接続部又は同軸コネクタ6A,7A,8A及び6B,7B,8Bをそれぞれ有する。これらの接続接点は、CFRPサンドイッチパネル1内の孔を介して内側から接触され又は接続され得る。図2に示す実施形態において、CFRPサンドイッチパネル1は、図1に示す空気力学的フェアリングの両側の2つのアンテナ5A,5Bの接続のために対称的に構成される。図2Aに示すCFRPサンドイッチパネル1の大きさは、例えば、510×1600mmである。図2Aはまた、アンテナの接続接点のために与えられる孔を示す。
【0044】
図3は、図2Bに示される断面図の詳細図を示す。図3は、落雷の直接的な効果に対して電子ユニット5を保護するための本発明による避雷アレンジメント9の可能な実施形態を示す。図3に示される実施形態における電子ユニット5はアンテナ、例えばCRPA(control radiation pattern antenna)である。このアンテナは、レードームとも呼ばれる非導電性材料からなるシース(覆い)10を有する。このシース10は、下部に適合される実際のアンテナを保護する役割を果たす。さらに、アンテナは、例えば金属からなる脚11を有する。アンテナの下側に備えられるのは、例えば同軸コネクタである接続接点6,7,8である。これらは、電気コネクタプラグによって航空機胴体の内部から接触され得る。対応する孔が、この目的のためにCFRPサンドイッチパネル1内に形成される。これらの孔は、CFRPサンドイッチパネル1の3つの層2,3,4を貫通する。電子ユニット5又は言及されたアンテナは、耐食性シール層12によって分離されて、本発明による避雷アレンジメントの取付プレート9A上にある。耐食性シール層12は、例えばゴムからなる。この耐食性シール層12は、防湿層を形成し、そして、特に腐食に対する基底の取付プレート9Aを保護する。加えて、一方で、アンテナ脚11及び基底のシール層12を囲み、他方で、横方向でも、アンテナ脚11及びシール層12に加えて、取付プレート9Aを湿気に対して保護し、しかも、航空機の空気抵抗を減少させるシール13が備えられ得る。図3に示すように、取付プレート9Aの下に配置されるのは、外側又は上側のCFRPシート3上にあり、そして、CFRPサンドイッチパネル1内の孔を生じさせ得るであろう落雷に対してCFRPシートを保護する銅メッシュ20である。
【0045】
本発明によるデバイス9は、導電性の取付プレート9Aに加えて、導電性の後プレート9Bをさらに有する。図3に示される実施形態において、この導電性の後プレート9Bは環状である。環形状は、導電性の後プレート9Bの本来の重量を最小化し得る。図3に示すように、本発明によるデバイス9の2つの導電性のプレート9A,9Bは、導電性の取付手段14のグループを介して共に接続される。これらの導電性の取付手段14は、望ましくは、導電性の表面保護を伴うねじである。取付手段又はねじのグループは、例えば、4つの対称的に配置されるねじからなる。図3に示す実施形態において、ねじ14のグループは、アンテナ脚11を本発明によるデバイス9の導電性の後プレート9Bに電気的に接続する。2つの導電性のプレート、すなわち、取付プレート9Aと後プレート9Bは、望ましくは、チタニウムで製造される。一方では、チタニウムは、本来低重量で良好な導電性の特徴がある。他方では、チタニウムと、ワイヤメッシュ20からなる銅合金及び内部のCFRP層からなるCFRPの両方との間の電気化学的な電位差は小さいので、腐食は最小化され得る。
【0046】
他の実施形態において、取付プレート9A及び後プレート9Bは、アルミニウムから製造される。他の実施形態において、2つのプレート9A,9Bは低い固有の重量を有する他の金属から製造される。
【0047】
さらなる可能な実施形態において、2つのプレート9A,9Bは、純金属または金属合金からなるものでなく、適切な安定性を与え、低い固有の重量を伴う他の良好な導電性を有する材料で構成される。金属化プラスチック材料が、例として任意に選択され得る。
【0048】
図3においてわかるように、例示される実施形態における本発明によるデバイス9は、取付手段14の第1のグループに加えて、ねじであり得る取付手段15の第2のグループを有する。この取付手段15の第2のグループは、後プレート9Bを取付プレート9Aに電気的に接続する。取付手段15の第2のグループは、環状の後プレート9Bの外周において配置される。
【0049】
図3に示される実施形態において、取付プレート9Aは、さらなる又は取付手段16の第3のグループによって保持構造17に電気的に接続され、かつ、この保持構造17によって航空機の胴体に接続される。この保持構造17はまた、金属又は良好な導電性を伴う他の材料からなる。
【0050】
図3に示されるデバイス9は、落雷の効果に対して、電子要素5、すなわちアンテナの信頼性のある保護をすることができる。落雷中に、そこで生じる過電圧は、取付手段14の第1のグループを経由して導電性のアンテナ脚11から第2の導電性のプレート(後プレート)9Bに流れる電流(落雷)によってそらされる。後プレート9Bから、そこに導かれる電流は、取付手段15の第2のグループを介して、取付プレート9Aに戻って流れ、そして、そこから、取付手段16の第3のグループを介して、航空機胴体の金属の下部構造又は保持構造17に流れる。可能な実施形態において、導電性の取付手段14の第1のグループと取付プレート9Aとの間の電気的接続も存在する。電子要素5の内側に落ちる雷は、それ故、本発明による避雷アレンジメントによって、金属の又は航空機の導電性の胴体構造内にそらされ、雷電流は、導電性のプレート9A,9Bを介して、保持構造17内に流れ、そしてそこから、航空機の残りの胴体領域にそらされる。このそらされた雷が航空機胴体の他の位置において再び現れる。
【0051】
図3からわかるように、本発明による装置は、避雷を補償するための複数の接地点18A〜18Fを有する。非常に低い電気的な境界抵抗を伴う電気的な接続が接地点18A〜18Fにある。
【0052】
図3に示される実施形態において、取付手段14,15,16の3つのグループは、望ましくは、導電性の表面保護を伴うそれぞれ4つのねじ/プレートナットからなる。ねじは、最小直径を有する。ねじは、それらが容易に取り除かれ得るという有利性を有する。
【0053】
図3に示される実施形態は、そこに取り付けられる電子要素5、すなわち、例えば、アンテナを含むCFRPサンドイッチパネル1が、航空機胴体の保持構造17から容易にかつ素早く取り外され得るという特定の有利性を有する。全体のパネル1はそれ故、比較的短い時間内に、例えば、数分内に取り替えられ得る。これは、もし、電子要素5、例えばアンテナ又はセンサが何らかの理由で故障し、そして、航空機のストップオーバの間に早急に交換されなければならない場合に、特に重要である。図3による実施形態において、例示される取付手段14,15,16は、互いに依存し合う層(要素)の境界点(位置決め要素)で低い境界電気抵抗を付与するための電気的接続のために使用され、そして、電子要素5からそらされ、航空機の胴体構造内又は胴体構造を通じて流れる、発生した雷電流をそらすためにCFRPサンドイッチパネル1について取り付けられる。図3に示される実施形態において、落雷中に生じる電流をそらすための境界抵抗は、5mΩよりも小さい。
【0054】
通常はねじである図3に示される取付手段14,15,16に加えて、特定の周辺の条件、例えば、導電性の表面保護及び適切な直径が満足されるとき、機械的なアタッチメントのために使用されるさらなる取付手段が備えられ得る。
【0055】
他の実施形態において、取付手段14,15,16はまた、導電性のリベット又はボルトによって形成され得る。
【0056】
図4Aは、本発明によるデバイス9内に使用される取付プレート9Aの実施形態を示す。この実施形態において、取付プレート9Aは、直径400mmで、厚さ2.5mm(空気抵抗を減少させるために皿ビスの使用による)の円形のチタニウムディスクからなる。取付プレート9Aの周囲に備えられるのは、過電圧をそらすために使用される導電性のねじである。さらに、例えば4つの孔が、4つの導電性のねじ16−1,16−2,16−3,16−4とともに、アンテナの避雷を実行するために備えられ得る。これらの孔は、例えば5.2mmの直径を有する。導電性のねじは、例えば4.8mmの直径を有し得る。可能な実施形態において、ねじ15−iは、取付プレート9Aのエッジから10mmの距離で、孔を通じて案内される。
【0057】
図4Bは、後プレート9Bの可能な実施形態を示す。このプレートはまた、チタニウムで、例えば1.2mmの厚さに製造され得る。図4Bに示されるように、後プレート9Bは、望ましくは、ディスクではなく、不要な重量を減少させるために環状である。例示される実施形態において、環状の後プレート9Bの外径も、取付プレート9Aと同様に、400mmである。その内径は、例えば300mmである。他の実施形態において、後プレート9Bはまた、取付プレート9Aと同様にディスク形状であり、電子要素5の接点6,7,8を接続するための孔を有する。本発明によるデバイス9は、航空機のためだけでなく、他の飛行物、例えばヘリコプタにも適している。
【0058】
図4Aに示されるチタニウムの取付プレート9Aは、複数の孔が備えられる突起19を有する。図3に示される第3取付手段又はねじ16−1,16−2,16−3,16−4は、これらの孔に案内され得る。
【符号の説明】
【0059】
1…CFRPサンドイッチパネル、2…中間層、3…CFRPシート、4…CFRPシート、5…電子ユニット、6…接続接点、7…接続接点、8…接続接点、9A…取付プレート、9B…後プレート、10…シース、11…アンテナ脚、12…シール層、13…シール、14…取付手段、15…取付手段、16…取付手段、17…保持構造、18A…接地点、18B…接地点、18C…接地点、18D…接地点、18E…接地点、18F…接地点、19…突起、20…ワイヤメッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ユニット(5)が航空機の外側の空気力学的フェアリングに取り付けられ、落雷中に、雷電流を航空機の胴体の導電性の保持構造(17)上にそらすことが可能な、電子ユニットを雷から保護するための航空機の避雷アレンジメントにおいて、
a)前記空気力学的フェアリングのCFRPサンドイッチパネル(1)の外側に配置される導電性の取付プレート(9A)と、
b)前記空気力学的フェアリングのCFRPサンドイッチパネル(1)の内側に配置され、かつ前記取付プレート(9A)に電気的に接続される導電性の後プレート(9B)と、
c)落雷中に、前記取付プレート(9A)及び前記後プレート(9B)を経由して前記電子ユニット(5)からの雷電流のための低抵抗の電流経路が備えられ、雷電流が、電流経路から導電性を有し取り外し可能な取付手段(16)を経由して前記取付プレート(9A)に接続される避雷アレンジメントの導電性の前記保持構造(17)にそれるように、前記電子ユニット(5)と前記CFRPサンドイッチパネル(1)に配置される前記取付プレート及び前記後プレートとの間に導電性の接続が実現され、かつ、ボディに前記電子ユニット(5)を取り付けるために備えられる、取り外し可能な導電性の取付手段(14)と、
を含む避雷アレンジメント。
【請求項2】
前記電子ユニット(5)が、前記取付プレート(9A)の中央に配置され、前記取付プレート(9A)が位置決めされる耐食シール層(12)が前記取付プレート(9A)上に配置される請求項1に記載の避雷アレンジメント。
【請求項3】
前記CFRPサンドイッチパネル(1)は、炭素繊維強化プラスチック材料からなる少なくとも1つの上側のCFRPシート(3)と、ハニカム構造の層(2)と、炭素繊維強化プラスチック材料からなる少なくとも1つの下側のCFRPシート(4)とを有することを特徴とする請求項1に記載の避雷アレンジメント。
【請求項4】
金属ワイヤメッシュ(20)又は金属フォイルが、落雷の効果に対して前記CFRPパネル(1)を保護すべく、前記CFRPパネル(1)の上側のCFRPシート(3)に備えられることを特徴とする請求項3に記載の避雷アレンジメント。
【請求項5】
前記ワイヤメッシュ(20)は、金属合金、望ましくは、ブロンズワイヤメッシュからなることを特徴とする請求項4に記載の避雷アレンジメント。
【請求項6】
前記取付プレート(9A)は、電気化学系列において、前記ワイヤメッシュ(20)の材料と比較して、低電位差を有し、低重量を有することを特徴とする請求項4に記載の避雷アレンジメント。
【請求項7】
前記取付プレート(9A)及び前記後プレート(9B)はチタニウムからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の避雷アレンジメント。
【請求項8】
重量を減少させるべく、前記後プレート(9B)が環状に構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の避雷アレンジメント。
【請求項9】
前記後プレート(9B)の外周は、導電性の取付手段(15)を介して、導電性の方式で、前記取付プレート(9A)に接続されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の避雷アレンジメント。
【請求項10】
前記取付プレート(9A)の外周は、導電性の取付手段(16)を介して、導電性の方式で、導電性の保持構造(17)に接続され、雷電流は、導電性の前記プレート(9A,9B)を介して前記保持構造(17)に流れ、そこから、航空機の残りの胴体領域内へとそらされ得ることを特徴とする請求項9に記載の避雷アレンジメント。
【請求項11】
前記電子ユニット(5)は、アンテナ、センサ要素、信号灯によって、又は、照明ユニットによって具体化されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の避雷アレンジメント。
【請求項12】
前記電流を前記航空機胴体にそらすための境界抵抗が5mΩより小さいことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の避雷アレンジメント。
【請求項13】
落雷中に生じ、導電性の保持構造(17)にそらされる過電圧の案内経路が、取付手段(14)の第1のグループを経由して前記電子ユニット(5)から前記後プレート(9B)に通じ、そして、そこから取付手段(15)の第2のグループを経由して前記取付プレート(9A)に通じ、そして、そこから取付手段(16)の第3のグループを経由して前記保持構造(17)に通じることを特徴とする請求項10に記載の避雷アレンジメント。
【請求項14】
前記取付手段(14,15,16)のグループが金属のねじ、望ましくは、それぞれの場合に、導電性の表面保護を有する少なくとも4つのねじによって実現されることを特徴とする請求項13に記載の避雷アレンジメント。
【請求項15】
前記取付手段(14,15,16)のグループがボルトによって補強されることを特徴とする請求項13に記載の避雷アレンジメント。
【請求項16】
前記導電性の保持機構(17)が金属であることを特徴とする請求項1に記載の避雷アレンジメント。
【請求項17】
前記導電性の保持機構(17)は、金属の航空機構造の保護領域の基礎構造であることを特徴とする請求項10に記載の避雷アレンジメント。
【請求項18】
前記空気力学的フェアリングが、航空機構造、望ましくは、航空機胴体に一体化される要素であることを特徴とする請求項1に記載の避雷アレンジメント。
【請求項19】
前記ワイヤメッシュ(20)は銅合金からなることを特徴とする請求項5に記載の避雷アレンジメント。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の避雷アレンジメントを伴う航空機のための空気力学的フェアリング。
【請求項21】
請求項20に記載の空気力学的フェアリングを伴う航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529136(P2012−529136A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513604(P2012−513604)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057677
【国際公開番号】WO2010/139709
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(311014956)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (54)
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany
【出願人】(507189703)エルビュス オペラシオン (エス.アー.エス.) (35)
【Fターム(参考)】