説明

電子レンジ再加温用パイ製品及びその包装体

【課題】 簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有する電子レンジ再加温用パイ製品及びその包装体を提供する。
【解決手段】 アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に含有すること、並びに電子レンジ発熱体で包装することを特徴とする電子レンジ再加温用パイ製品、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に使用する全穀粉類の20〜30質量%の割合で含有する前記電子レンジ再加温用パイ製品、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を原料とするパイ製品を、電子レンジ発熱体で包装することを特徴とする電子レンジ再加温用パイ製品包装体、および、パイ製品が、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に使用する全穀粉類の20〜30質量%の割合で原料とするパイ製品である前記電子レンジ再加温用パイ製品包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に含有すること、併せて電子レンジ発熱体で包装することにより、電子レンジによる再加温時に、パイ表面が焼きたてと同じパリパリした食感を可能とする電子レンジ再加温用パイ製品及びその包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の簡便化にともない、電子レンジによる加熱調理が普及している。この電子レンジ加熱調理法は調理済み食品にマイクロ波を数分間照射することで簡便かつ迅速に食事に供することができる利点がある。そのために、家庭のみならずコンビニエンスストア等の店頭で調理済み食品の再加温用に良く用いられる。
【0003】
よって、従来より、電子レンジによって調理済み食品を美味しく再加温するための各種技術が開発されてきた。
【0004】
例えば特許文献1には、アミロース溶出比(アミロース溶出抑制率)が30%以下である小麦粉を、フライ食品、パン類等の食品のマイクロ波加熱用食品素材として使用して、フライ食品の衣材が電子レンジ加熱により歯切れが悪くなる等の問題、並びに冷凍パンの電子レンジ解凍・加熱時の硬くなる問題を解決したことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポケットパイを、電子レンジ発熱体である、褐色焼き及びかりかり焼き用スリーブで包装することが記載されている。
【0006】
なお、特許文献3には、アミロース溶出比と特許文献1のアミロース溶出抑制率が同義であることが示されている(段落番号0016)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−235482号公報
【特許文献2】特公平5−61534号公報
【特許文献3】特開2004−283134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、生活の簡便化を求める志向が強まり、併せて本物志向も強いことから、電子レンジ再加温用パイ製品についても、簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有することが求められている。
【0009】
本発明者らは、前記消費者の志向を満足すべく、従来の調理済み食品の各種再加温技術につき種々検討を行った。
しかしながらいずれも満足のいくものではなかった。
【0010】
例えば、特許文献1にはパイ製品への適用については記載はないが、試しにパイ製品の原料として、特許文献1のアミロース溶出比(アミロース溶出抑制率)が30%以下である小麦粉を使用してみたところ、後記試験例1の試料(3)にも示すとおり、パイ内部からの水蒸気によって、表面が湿ってしまい十分なパリパリした食感を得られないとの問題点があった。
【0011】
また、特許文献2の開示に従って、単に従来のパイ製品を電子レンジ発熱体で包装したのみでは、後記試験例1の試料(2)にも示すとおり、十分なパリパリした食感が得られず、当該食感において有意に劣っているとの問題点があった。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有する電子レンジ再加温用パイ製品及びその包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、電子レンジ再加温用パイ製品の製造において、原料としてアミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に含有すること、並びに得られたパイ製品を電子レンジ発熱体で包装することにより、従来のパイ製品に比較して、簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有するとの優れた効果が発揮されることを見出した。
【0014】
すなわち、下記構成により、簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有する電子レンジ再加温用パイ製品が得られることを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明の電子レンジ再加温用パイ製品は、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に含有すること、並びに電子レンジ発熱体で包装することを特徴とする。
【0016】
また、同様に、本発明の電子レンジ再加温用パイ製品包装体は、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を原料とするパイ製品を、電子レンジ発熱体で包装することを特徴とする。
【0017】
なお、後記試験例2にも示すとおり、前記効果を顕著に発揮させるためには、パイ製品の原料として、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に使用する全穀粉類の20〜30質量%の割合で含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子レンジ再加温用パイ製品及びその包装体は、その構成に基づいて、パイ製品が、簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有するとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のパイ製品及びその包装体について説明する。
本発明において、パイ製品とは、少なくとも小麦粉を含む穀粉類、バター、マーガリン等の固形油脂、食塩等の塩類、及び水を原料としたパイ生地をオーブン等で焼成することで製造されるものである。
【0020】
具体的なパイ製品としては、アップルパイ、アプリコットパイ、ミートパイ、フランクフルトパイ、チーズパイ、カレーパイ等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明におけるパイ生地の原料である穀粉類のうち、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉は、熱処理等の処理がなされた小麦粉であって、具体的には、下記参考例に例示されるとおりの特許文献1に記載の製造方法で製造されるアミロース溶出比が30%以下である小麦粉である。
【0022】
<参考例1>
生小麦粉(日清製粉株式会社製「フラワー」)100重量部に対して乳化剤(ステアリン酸モノグリセリド)1重量部を添加して充分に撹拌、混合した後、蒸し器中で達温100℃の条件下で60分間加熱処理した。処理後、速やかに室温まで冷却、篩いをとおしてマイクロ波加熱用食品素材(熱処理小麦粉)を得た。得られたマイクロ波加熱用食品素材(熱処理小麦粉)のアミロースの溶出量は生の小麦粉に対して23%に抑制されていた。
【0023】
<参考例2>
生小麦粉(日清製粉株式会社製「フラワー」)100重量部に対して乳化剤(ステアリン酸モノグリセリド)1重量部を添加して充分に撹拌、混合した後、耐熱性のアルミパウチに層厚1cmになるように充填してレトルト殺菌機内に入れた。次に、レトルト殺菌機を密閉し2.0kg/cm2の加圧蒸気ラインを開放して蒸気を導入し、110℃に達温後、60分間保持した。その後、圧力を開放し、冷却した後、マイクロ波加熱用食品素材(熱処理小麦粉)を取り出した。得られたマイクロ波加熱用食品素材(熱処理小麦粉)のアミロースの溶出量は生の小麦粉に対して28%に抑制されていた。
【0024】
この他、簡便には、日清製粉社が製造頒布しているアミロース溶出比が30%以下である熱処理小麦粉を使用することができる。
【0025】
次に前記アミロースの溶出量の測定法を示せば下記のとおりである。
アミロース溶出量の測定小麦粉160mgに対して蒸留水8mlを加えた後、撹拌しながら70℃、10分間加熱する。室温まで冷却した後、遠心分離して上澄液を得る。上澄液0.5mlにヨード発色液4ml(200mgKI,20mgI2/1000ml蒸留水)を加えて発色させた後、660nmの吸光度を測定し溶出アミロース量とした。
【0026】
なお、アミロース溶出比は、前記のようにしてアミロース溶出量を測定し、特許文献1及び特許文献3に記載のとおり、下記式によりアミロース溶出比(%)を算出した。
【0027】
アミロース溶出比(%)=A/B×100
A:加熱処理小麦粉のアミロース溶出量
B:生の小麦粉のアミロース溶出量
【0028】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉の、アミロース溶出比は30%以下であればいずれであってもよいが、10〜30%の範囲であることが好ましい。
【0029】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉は、通常のパイ生地に使用する薄力粉に代えて、全穀粉類の20〜30質量%程度配合することができるが、特に、20〜25質量%の割合で配合して含有することが好ましい。
【0030】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉以外の穀粉類としては、通常のパイ生地に使用される小麦粉である強力粉、薄力粉等を例示できる。
【0031】
通常パイ生地は、強力粉と薄力粉を1:1程度配合して製造されるが、本発明においては前記のとおり薄力粉の一部をアミロース溶出比が30%以下である小麦粉で置換する。
【0032】
パイ生地の原料である固形油脂としては、バター、マーガリン等が例示できる。特に良好な風味を創出するためには、無塩バターの使用が好ましい。
【0033】
固形油脂は通常パイ生地の15〜40質量%使用されるが、本発明においては、パイ表面のパリパリ感、及びパイ自体のサクサクした食感を創出するために、18〜30質量%が好ましい。
【0034】
パイ生地の原料である塩類としては、食塩等が例示できる。食塩はパイの種類(甘味か塩味か)によって異なるが通常パイ生地の0.5〜2質量%の範囲で使用される。
【0035】
パイ生地の原料である水としては、食用に適するものであればいずれであってもよく、水道水、井水等が例示できる。水は、生地を混練できる量であればよいが、通常パイ生地の10〜30質量%の範囲で使用される。
【0036】
その他、パイ生地の原料として、必要に応じて、牛乳やグラニュー糖といった糖類を使用することもできる。
牛乳は前記水の代替として使用できる。
【0037】
グラニュー糖は、甘味性のパイ(アップルパイ等)および生地の色つき性の目的で生地に適量、好ましくは0.5〜2質量%使用できる。
【0038】
前記のとおりの配合に基づき、例えば下記のような常法の工程によりパイ生地を作成する。なお、パイ生地の製造法は下記のほかバターの添加時期等各種異なる方法が知られておりいずれを採用してもよい。
【0039】
(a)原料の各穀粉類を混ぜて篩う。
(b)細かくカットした固形油脂の一部と前記穀粉類を混ぜあわせる。
(c)前記混合物に食塩と水を添加(必要に応じて牛乳、グラニュー糖等を添加)して混ぜあわせる。
(d)生地が適当な硬さになるまで練り合わせる。
(e)生地を1時間以上、好ましくは2時間〜3時間・5〜10℃で休ませる。
(f)生地をシート状に伸ばし、当該生地で同じく伸ばした残部の固形油脂を包み、麺棒で伸ばして、三つ折等にして、麺棒で伸ばす工程を反復し、多層を形成する。当該多層生地をパイ生地として使用する。
【0040】
パイは、前記パイ生地で内容物(アップルパイであればアップルプレザーブ等)を包み込んだパイを、オーブンにより180〜220℃・20〜40分、パイの種類大きさにより適宜変更して、焼成することで製造できる。
【0041】
本発明において、パイを包装する電子レンジ発熱体は、マイクロ波により発熱するマイクロ波相互作用層を備えたものであればいずれであってもよく、具体的には市販の発熱体である凸版印刷株式会社製のサセプター等が例示できる。
【0042】
電子レンジ発熱体は、パイを十分に加熱できるように、パイを包み込む形態とすることが好ましい。
【0043】
電子レンジ再加温用パイ製品包装体は、市場での流通を考慮して、パイを電子レンジ発熱体で包み込み、さらに外装包装した形態が例示できる。
【0044】
外装包装を断熱性でマイクロ波透過性の紙等の材質にすることで、直接手で把持して喫食が可能となる。
【0045】
前記焼成済みのパイを電子レンジ発熱体で包装することにより本発明の電子レンジ再加温用パイ製品が得られる。また、前記焼成済みのパイ製品を、電子レンジ発熱体で包装することで本発明の電子レンジ再加温用パイ製品包装体となる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[例1:電子レンジ再加温用アップルパイ製品及びその包装体]
【0047】
<実施例1>
表1のパイ生地の処方に基づいて、下記工程に従ってパイ生地を製造した。
表1の配合割合で総量1kgの原料を使用して、下記工程によりパイ生地を作成した。
【0048】
(a)原料の強力粉、薄力粉、及び熱処理粉(アミロース溶出比が15%である小麦粉)を混ぜて篩う。
(b)細かくカットしたバター(バター全量の2割程度)と前記小麦粉類を混ぜあわせる。
(c)前記混合物をミキサーに入れ、牛乳、水、食塩、グラニュー糖を添加して混ぜあわせる。
(d)生地が適当な硬さになるまでフックで練り合わせる。
(e)生地を2〜3時間・5〜10℃で休ませる。
(f)生地をシート状に伸ばし、当該生地で同じく伸ばした残部のバター(バター全量の8割程度)を包み、麺棒で伸ばして、三つ折・四つ折・四つ折・四つ折にするという、麺棒で伸ばしては折る工程を反復し、最終的に192層を形成する。当該多層生地を3mmの厚さに伸ばし成型し、パイ生地として使用する。
【0049】
別途、次のとおりアップルペーストを作成した。
りんごは芯や皮を除き正味500gを準備し、フードプロセッサで細切し、鍋に移して砂糖(三井製糖社製)75gを加えて、中火で混ぜながら全体が透き通って汁が煮つまるまで10〜15分煮たものを冷ましてアップルペーストとして使用する。
【0050】
前記アップルペースト10g及び薄切りりんご20gを前記パイ生地70gで包み、オーブンにより200℃30分間焼成し、アップルパイ製品8個を得た。
【0051】
次いで、図1に示すとおり、前記パイ製品1を電子レンジ発熱体2で包装し、これを外装包装3に収納し、電子レンジ再加温用アップルパイ製品及びその包装体を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
[例2:電子レンジ再加温用ミートパイ製品及びその包装体]
<実施例2>
表2のパイ生地の処方に基づいて、下記工程に従ってパイ生地を製造した。
表2の配合割合で総量500gの原料を使用して、下記工程によりパイ生地を作成した。
【0054】
(a)原料の強力粉、薄力粉、及び熱処理粉(アミロース溶出比が15%である小麦粉)を混ぜて篩う。
(b)細かくカットしたバター(バター全量の2割程度)と前記小麦粉類を混ぜあわせる。
(c)前記混合物をミキサーに入れ、水、食塩を添加して混ぜあわせる。
(d)生地が適当な硬さになるまでフックで練り合わせる。
(e)生地を2時間・5〜10℃で休ませる。
(f)生地をシート状に伸ばし、当該生地で同じく伸ばした残部のバター(バター全量の8割程度)を包み、麺棒で伸ばして、三つ折・四つ折・四つ折・四つ折にするという、麺棒で伸ばしては折る工程を反復し、最終的に192層を形成する。当該多層生地を3mmの厚さに伸ばし成型し、パイ生地として使用する。
【0055】
別途、次のとおり、ひき肉のフィリングを作成した。
玉ねぎ1個とパセリ(大さじ2杯分)をみじん切りにし、玉ねぎはサラダ油少々で炒めて塩こしょうをして冷ましておきます。前記玉ねぎとパセリのみじん切りと牛ひき肉200gを混ぜ合わせ、塩こしょうで調味してフィリングとして使用する。
【0056】
前記フィリング30gを前記パイ生地70gで包み、オーブンにより200℃35分間焼成し、ミートパイ製品6個を得た。
【0057】
次いで、図1に示すとおり、前記パイ製品1を電子レンジ発熱体2で包装し、これを外装包装3に収納し、電子レンジ再加温用ミートパイ製品及びその包装体を得た。
【0058】
【表2】

【0059】
次に、試験例を示す。
<試験例1>
この試験の目的は小麦粉(薄力粉)の種類および電子レンジ発熱体の有無による電子レンジ再加熱後のパイのパリパリ感を調べることであり、4種類の組み合わせ試料を作成した。
【0060】
1.試験試料
試料(1)から(4)共に、全穀紛類中の強力粉の使用割合が60質量%、薄力粉とアミロース溶出比が30%以下である小麦粉の総和使用割合は全穀粉類に対し40質量%である。
【0061】
試料(1)従来の小麦粉(薄力粉)使用(電子レンジ発熱体なし)
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉は使用せず、薄力粉のみを全穀紛類に対し40質量%使用したことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0062】
試料(2)従来の小麦粉使用+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉は使用せず、薄力粉のみを全穀紛類に対し40質量%使用したことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0063】
試料(3)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用(電子レンジ発熱体なし)実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0064】
試料(4)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用+電子レンジ発熱体使用
実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0065】
2.試験方法
試料(1)から(4)の各々1個を東芝(株)製電子レンジ・定格高周波出力900Wで1分20秒加熱した後試食して、ミートパイ製品のパリパリ感を1から5点法で評価した。
【0066】
3.試験結果
パリパリ感の結果を下記表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
なお、パリパリ感の採点基準は以下の基準で行った。
1:湿ってやわらかく、パリパリ感を認めない
2:若干パリパリ感を認めるが、しっとりしている
3:パリパリ感を少し認める
4:パリパリ感を認める
5:パリパリ感を十分に認める
【0069】
表3の結果より、焼成・チルド冷却したパイ生地を電子レンジで再加熱した後のパリパリ感の得られる条件は試験試料(4)のアミロース溶出比が30%以下である小麦粉+電子レンジ発熱体の組み合わせであり、ミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納した包装体試料が最も効果が最大であることが認められた。
【0070】
<試験例2>
この試験の目的はアミロース溶出比が30%以下である小麦粉の適正使用量を調べることであり、7種類の試料を作成した。
【0071】
この試験ではミートパイ製品を電子レンジ発熱体使用2で挟んだ後、外装包装3に収納した包装体を電子レンジ再加熱して行った。
【0072】
1.試験試料
試料(5)から(12)共に、全穀紛類中の強力粉の使用割合が60質量%、薄力粉とアミロース溶出比が30%以下である小麦粉の総和使用割合は全穀粉類に対し40質量%である。
【0073】
試料(5)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し0質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉は全穀粉類に対し0質量%としたことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0074】
試料(6)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し10質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用割合は全穀粉類に対し10質量%使用したことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0075】
試料(7)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し15質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用割合は全穀粉類に対し15質量%使用したことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0076】
試料(8)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し20質量%+電子レンジ発熱体使用
実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ生製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0077】
試料(9)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し25質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用割合は全穀粉類に対し25質量%使用したことを除き、基本的に実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0078】
試料(10)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し30質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用割合は全穀粉類に対し30質量%使用したことを除き、基本的に実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ製品を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0079】
試料(11)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し35質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用割合は全穀粉類に対し35質量%使用したことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ生地を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0080】
試料(12)アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀粉類に対し40質量%+電子レンジ発熱体使用
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用割合は全穀粉類に対し40質量%使用したことを除き、実施例2及び表2と同一の方法で得たミートパイ生地を図1に示した電子レンジ発熱体2で挟んだ後、外装包装3に収納して最終包装体試料を得た。
【0081】
2.試験方法
試料(5)から(12)の各々1個を東芝(株)製電子レンジ・定格高周波出力900Wで1分20秒加熱した後試食して、ミートパイ製品のパリパリ感を1から5点法で評価した。
【0082】
3.試験結果
パリパリ感の結果を下記表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
なお、パリパリ感の採点基準は試験例1と同一の基準を用いた。
【0085】
表4の結果より、焼成・チルド冷却したパイ生地を電子レンジで再加熱した後のパリパリ感の得られる条件はアミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀紛類に対し20〜30質量%であることが認められた。また、好ましくはアミロース溶出比が30%以下である小麦粉使用量が全穀紛類に対し20〜25質量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、簡便に電子レンジで温められ、かつ、パイ表面がオーブンでの焼きたてと同じパリパリした食感を有する電子レンジ再加温用パイ製品及びその包装体を提供するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例に係る電子レンジ再加温用パイ製品包装体の開口状態の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1…パイ、2…電子レンジ発熱体、3…外装包装、4…包装体。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に含有すること、並びに電子レンジ発熱体で包装することを特徴とする電子レンジ再加温用パイ製品。
【請求項2】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に使用する全穀粉類の20〜30質量%の割合で含有する請求項1の電子レンジ再加温用パイ製品。
【請求項3】
アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を原料とするパイ製品を、電子レンジ発熱体で包装することを特徴とする電子レンジ再加温用パイ製品包装体。
【請求項4】
パイ製品が、アミロース溶出比が30%以下である小麦粉を、パイ生地に使用する全穀粉類の20〜30質量%の割合で原料とするパイ製品である請求項3の電子レンジ再加温用パイ製品包装体。



【図1】
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【公開番号】特開2008−125403(P2008−125403A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312334(P2006−312334)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】