説明

電子レンジ用カレーソース、電子レンジ用容器詰カレーソース及びカレー煮の製造方法

【課題】具材を加えて電子レンジで加熱調理することにより、具材のカレー煮を得られるようにするために、ふきこぼれが生じることがなく、具材やソースの加熱調理が短時間に終了しても、具材にカレー特有の辛味を充分に付与することができる電子レンジ用容器詰カレーソースを提供する。
【解決手段】トウガラシオレオレジンをカレーソースに対して0.005〜0.04質量%添加し、前記トウガラシオレオレジン100質量部に対して、胡椒を100〜5000質量部含有し、唐辛子を乾物換算でカレーソースに対して0.5質量%以下含有する又は唐辛子を含有しないカレーソースとし、カレーソースが充填された容器に具材を投入して、電子レンジで加熱調理することによりカレー煮が得られるようにするための電子レンジ用容器詰カレーソース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりカレー煮を得られるようにする電子レンジ用カレーソースに関し、より詳しくは、具材やソースが直接加熱され短時間で加熱調理が終了する電子レンジ加熱であっても、ふきこぼれが生じることなく、具材にカレー特有の辛味を充分に付与することができる電子レンジ用カレーソースに関する。また、本発明は、そのような電子レンジ用カレーソースが充填された容器に具材を投入して電子レンジ調理を行うための電子レンジ用容器詰カレーソース、及びこれらを使用してカレー煮を電子レンジで製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏肉や牛肉等の肉類、ジャガイモや人参等の野菜類等をカレー風味に煮込んだカレー煮は、人気のあるメニューのひとつであり、家庭における食卓での出現頻度も高い。カレー煮は、主にトウガラシにより付与される特有の辛味が特徴であり、近年は、より本格的な辛味の強い味が求められるようになっている。
【0003】
しかしながら、このようなカレー煮を作るには、具材の煮込みに先だって、好ましい香味が発現するように香辛料の配合を調整するとともに、香辛料や油脂、小麦粉等を混合して予めソースを作らなければならず、手間と時間がかかるという問題がある。また、市販されているカレールウを使用する場合であっても、具材の煮込みの際には、ソースのふきこぼれや鍋底へのソースの焦げ付きを防止するために、かなりの頻度で火加減を調整すること等の煩雑な操作が必要となるという問題がある。
【0004】
ところで、火加減の調整等の煩雑な操作が不要であり、短時間で加熱調理を行う方法として電子レンジによる加熱調理が知られている。カレーを電子レンジで加熱調理することについては、例えば、特許第3115234号公報(特許文献1)に、電子レンジで具材とともに加熱調理することにより、カレーが得られる電子レンジ調理用ルウ食品が記載されている。しかしながら、電子レンジによる加熱は、水分を含んだ具材やソースが直接加熱されるという特性があり、電子レンジ加熱時間が長くなり具材が過度に加熱されると具材が煮崩れたり固くなったりする問題が生じるため短時間で加熱調理を終了する必要があり、この場合、具材にカレー特有の辛味が充分に付与され難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3115234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、短時間の電子レンジ加熱であっても具材にカレー特有の辛味が充分に付与されるように、カレー特有の辛味を形成する唐辛子の配合量を増やしたカレーソースを製造し、当該カレーソースに具材を加えて電子レンジによる加熱調理を行ったところ、電子レンジ加熱中にソースが沸騰して沸きあがり、ふきこぼれが生じるという問題が生じた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりカレー煮を得られるようにする電子レンジ用カレーソースであって、具材やソースが直接加熱され短時間で加熱調理が終了する電子レンジ加熱であっても、ふきこぼれが生じることがなく、具材にカレー特有の辛味を充分に付与することができる電子レンジ用カレーソースを提供することである。また、本発明の目的は、そのような電子レンジ用カレーソースが充填された容器に具材を投入して電子レンジ調理を行うための電子レンジ用容器詰カレーソース、及びこれらを使用して具材のカレー煮を電子レンジで製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく使用原料等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、辛味を付与する原料として、特定の原料を特定の割合で使用したカレーソースは、具材やソースが直接加熱され短時間で加熱調理が終了する電子レンジ加熱であってもふきこぼれが生じることなく、具材にカレー特有の辛味を充分に付与することができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりカレー煮を得られるようにするための電子レンジ用カレーソースであって、トウガラシオレオレジンをカレーソースに対して0.005〜0.1%含有し、前記トウガラシオレオレジン100部に対して、胡椒を100〜5000部含有し、唐辛子を乾物換算でカレーソースに対して0.5%以下含有する又は唐辛子を含有しない電子レンジ用カレーソース、
(2)、カレーソースに対して澱粉を0.1〜10%含有する(1)記載の電子レンジ用カレーソース、
(3)、カレーソースに対して小麦粉を1%以下含有する又は小麦粉を含有しない(1)又は(2)に記載の電子レンジ用カレーソース、
(4)、(1)乃至(3)のいずれかに記載のカレーソースに具材を加えて電子レンジで加熱調理するカレー煮の製造方法、
(5)、(1)乃至(3)のいずれかに記載の電子レンジ用カレーソースが容器に充填されてなり、前記容器内に具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりカレー煮を得られるようにする電子レンジ用容器詰カレーソース、
(6)、前記容器が具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチである(5)記載の電子レンジ用容器詰カレーソース、
(7)、(5)又は(6)に記載の電子レンジ用容器詰唐辛子ソースの容器内に具材を投入して電子レンジで加熱調理するカレー煮の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子レンジ用カレーソースは、具材を加えて電子レンジで加熱調理するだけで、簡便にカレー煮を得ることができるものであり、具材やソースが直接加熱され短時間で加熱調理が終了する電子レンジ加熱であっても、ふきこぼれが生じることなく、具材にカレー特有の辛味を充分に付与することができる。また、そのような電子レンジ用カレーソースを容器に充填し、当該容器内に具材を投入し、電子レンジで加熱調理することにより具材のカレー煮を得られるようにした電子レンジ用容器詰カレーソースによれば、通常は、容器詰めした状態でカレーソースを保管しておき、必要に応じて、具材を容器内に投入して電子レンジ調理を行うだけで具材のカレー煮が得られ大変便利である。したがって、本発明の電子レンジ用カレーソース、当該ソースを容器詰めした電子レンジ用容器詰カレーソース、及びこれらを使用してカレー煮を電子レンジで製造する方法を提供することにより、カレーソースの需要拡大が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施態様の電子レンジ用容器詰めカレーソースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電子レンジ用カレーソース、電子レンジ用容器詰カレーソース及びカレー煮の製造方法を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0013】
本発明のカレー煮とは、具材をカレー風味に煮込んだ料理をいい、具体的には、例えば、チキンカレー、ビーフカレー、及び野菜カレー等が挙げられる。
【0014】
本発明が対象とする電子レンジ用カレーソースとは、具材を加えて電子レンジで加熱調理することにより、上述したカレー煮を得られるようにするソースである。
【0015】
本発明の電子レンジ用カレーソースは、唐辛子を乾物換算でカレーソースに対して0.5%以下含有する、又は唐辛子を含有しないことを特徴とし、これにより、強い沸騰状態が数分間連続する電子レンジ調理であってもふきこぼれが生じ難いものとなる。一般的にカレーソースには、辛味を付与する原料として唐辛子が用いられるが、唐辛子は電子レンジ調理中のふきこぼれを助長する傾向がある。したがって、本発明の電子レンジ用カレーソースは、風味を出す等の理由で唐辛子を使用する場合であっても、上述のように唐辛子含有量を乾物換算でカレーソースに対して0.5%以下、好ましくは0.1%以下とする。
【0016】
前記唐辛子としては、一般的にカレーに使用されるものであれば特に制限は無く、風味が得られやすい粉末状のものを使用すればよい。
【0017】
更に、本発明の電子レンジ用カレーソースは、トウガラシオレオレジンをカレーソースに対して0.005〜0.1%、好ましくは0.01〜0.05%含有し、前記トウガラシオレオレジン100部に対して、胡椒を100〜5000部、好ましくは500〜3000部含有することを特徴とする。このように辛味付与原料が特定の割合に調整されている本発明の電子レンジ用カレーソースは、短時間の電子レンジ調理であっても加熱調理後の具材にカレーの特有の辛味が充分に付与される。しかも、これらトウガラシオレオレジン及び胡椒はふきこぼれを助長することがない。
【0018】
本発明の電子レンジ用カレーソースは、辛味付与原料が特定の割合に調整されていることから、短時間で加熱調理が終了する電子レンジ加熱であっても具材にカレーの特有の辛味を充分に付与することができるが、トウガラシオレオレジンの含有量が前記範囲よりも少ない場合は、具材の辛味が弱く、一方、前記範囲よりも多い場合は具材の辛味が強くなりすぎる傾向がある。また、トウガラシオレオレジンに対する胡椒の含有量が前記範囲よりも少ない場合は、具材を喫食した後に口中に残る辛味は付与されるものの、具材を喫食した直後に最初に感じる辛味は付与され難く、カレー煮としての辛味のバランスが悪くなり好ましくない。一方、トウガラシオレオレジンに対する胡椒の含有量が前記範囲よりも多い場合は、具材を喫食した直後に最初に感じる辛味が強くなりすぎてカレー煮としての辛味のバランスが悪くなり好ましくない。
【0019】
本発明の電子レンジ用カレーソースに用いる前記トウガラシオレオレジンとは、原料唐辛子を溶剤、例えば、ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、アセトン等で抽出処理し、その抽出液について溶剤を減圧留去したものである。これらは、トウガラシオレオレジンとして製品が市販されているのでこれらを用いればよい。なお、本発明のカレーソースは辛味を具材に充分に付与する点から、辛味成分を充分に含有したトウガラシオレオレジン用いるとよい。具体的には、当該トウガラシオレオレジン中に辛味成分であるカプサイシンとジヒドロカプサイシンが合計で3%以上含有しているものを用いることが好ましい。トウガラシオレオレジン中の辛味成分の測定は、一般的に用いられている液体クロマトグラフィーによる測定方法、具体的には、「トウガラシ−辛味の科学」(編者 岩井和夫、渡辺達夫、発行所 株式会社 幸書房、2000年1月20日発行)に記載の方法により測定できる。
【0020】
一方、本発明の電子レンジ用カレーソースに用いる前記胡椒とは、コショウ科の植物の乾燥果実であり、ホワイトペパー、ブラックペパー、ピンクペパー、グリーンペパーのいずれでもよいが、カレー煮としてのバランスのよい辛味を得る点からブラックペパーを使用することが好ましい。また、使用する形態としては特に制限は無く、例えば、ホール状、あるいは、粉末状のものを使用すればよいが、より具材にカレー特有の辛さが付与され易い点から粉末状のものを使用することが好ましい。
【0021】
また、本発明の電子レンジ用カレーソースは、具材を加えて電子レンジで加熱する際に、よりふきこぼれが防止され易いように、澱粉をカレーソースに対して0.1〜10%含有することが好ましく、0.1〜5%含有することがより好ましい。
【0022】
本発明において用いることができる前記澱粉としては、例えば、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、これら生澱粉に常法によりα化処理を行ったα化澱粉、生澱粉に常法により湿熱処理を行った湿熱澱粉、更に、生澱粉に常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理等の一種又は二種以上の処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等の加工澱粉等が挙げられる。これらの澱粉の中でも、電子レンジ調理後に、具材表面にカレーソースが付着し易い好ましい性状を付与できるという点から、湿熱処理澱粉又は加工澱粉を好ましく使用できる。
【0023】
また、本発明の電子レンジ用カレーソースは、上述のように電子レンジ加熱する際のふきこぼれが防止され易いように好ましくは澱粉を含有するが、カレーソースに一般的に使用される小麦粉は、ふきこぼれを助長する傾向があるので含有しないことが好ましい。風味を出す等の理由で小麦粉を使用する場合は、ふきこぼれが助長されないように、その含有量を、好ましくはカレーソースに対して0.8%以下、より好ましくは0.5%以下に留めることが好ましい。
【0024】
本発明の電子レンジ用カレーソースの粘度としては、具材に辛味等のカレー風味を付与しやすいように粘度が煮込みに支障がない範囲、つまり、0.1〜10Pa・sであることが好ましく、0.1〜8Pa・sとしてあることがより好ましい。ここで、前記粘度の下限に関し、本発明においては、上述するように好ましくは澱粉を含有することから、粘度が好ましくは0.1Pa・s以上となる。
【0025】
前記本発明における電子レンジ用カレーソースの粘度の測定は、当該ソースをBH形粘度計で、品温60℃、回転数10rpmの条件で、粘度が0.375Pa・s未満のときローターNo.1、0.375Pa・s以上1.5Pa・s未満のときローターNo.2、1.5Pa・s以上3.75Pa・s未満のときローターNo.3、3.75Pa・s以上7.5Pa・s未満のときローターNo.4、7.5Pa・s以上のときローターNo.5を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。なお、カレーソースに具材が含まれる場合は、カレーソースを10メッシュの網目に通して具材を取り除いたものを測定する。
【0026】
なお、本発明の電子レンジ用カレーソースには上述したトウガラシオレオレジン、胡椒、唐辛子、澱粉及び小麦粉の他に、本発明の効果を損なわない範囲で一般的なカレーソースに含有する種々の香辛料や食材、添加材等の原料を用いることができる。例えば、香辛料としては、コリアンダー、クミン、ターメリック、フェネグリーク、オールスパイス、シナモン、カルダモン、クローブ、フェンネル、ジンジャー、ニンニク等が挙げられ、良好なカレー風味を得る点から、少なくともコリアンダー、クミン及びターメリックを用いることが好ましい。また、その他の原料としては、例えば、食塩、みそ、砂糖、液糖、グルタミン酸ナトリウム、核酸系旨味調味料等の各種調味料、日本酒、エチルアルコール等のアルコール、増粘多糖類、更には、野菜類、肉類等の具材等が挙げられる。
【0027】
上述した本発明の電子レンジ用カレーソースは、トウガラシオレオレジン及び胡椒の含有量を上述の範囲とし、好ましくは、澱粉を特定量含有させ、カレーソースの粘度を上述した範囲に調整とする他は、一般的なカレーソースの製造方法に準じて、原料を加熱混合することにより製造することができる。
【0028】
続いて、本発明の電子レンジ用カレーソースを使用してカレー煮を製造する方法を説明する。
【0029】
まず、上述した電子レンジ用カレーソース及び具材を用意する。本発明のカレーソースで調味する具材としては、カレー煮に適したものを適宜選択して使用すればよい。例えば、ジャガイモ、玉葱、人参、茄子、ほうれん草、ブロッコリー等の野菜類、まいたけ、しめじ等のきのこ類、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉等の肉類、スズキ、タラ、たこ、いか、海老、帆立等の魚介類等を挙げることができる。これらの具材は、カレーソースに加える前に予め、下茹で、油通し、あく抜き、電子レンジで加熱する等のいずれかの方法により下処理をしておくことができる。
【0030】
次に、具材を食べ易くし、また、辛味等のカレー風味が染み込みやすいように、好ましくは1〜5cmの大きさにカットし、カットした具材とカレーソースを電子レンジ調理が可能な容器に入れる。具材とカレーソースの割合は料理によるが、カレーソース100部に対して具材を10部〜1000部程度とすればよい。容器としては、例えば、電子レンジ加熱耐性を備えた耐熱性樹脂製のパウチや、カップ状又は深皿状等に成形した施蓋可能な容器、あるいは、陶器製の皿等を用いることができる。
【0031】
続いて、具材とカレーソースを入れた容器ごと電子レンジ加熱調理を行う。電子レンジ加熱調理は、カレーソースと加えた具材を調味する点から少なくともカレーソースが沸騰して煮込み調理がされる加熱条件、具体的には、カレーソースと加えた具材の合計500gあたり、好ましくは出力600W×3分相当以上の加熱をすることが好ましい。ここで600W×3分相当とは、出力300Wであれば6分、出力400Wであれば、4.5分、出力800Wであれば2.25分というように、出力ワット数と時間との積の値が同じになるように換算して計算した条件以上の電子レンジ加熱を行うことである。また、カレーソースと具材の合計が例えば1000gであれば、出力ワット数と時間との積の値が400gの場合の2倍となるように電子レンジ加熱を行う。前記加熱条件の上限としては、あまり長すぎても具材が硬くなったりしやすいことから、通常、カレーソースと加えた具材の合計500gあたり、好ましくは出力600W×20分相当以下の加熱条件とすればよい。
【0032】
このような電子レンジ加熱調理を行っても、本発明の電子レンジ用カレーソースはふきこぼれが防止される。また、以上のようにして電子レンジ加熱調理により得られたカレー煮は、短時間の電子レンジ加熱であっても具材にカレー特有の辛味が充分に付与されたものとなる。
【0033】
次に、本発明の電子レンジ用カレーソースが容器に充填され、容器内に具材を投入し、電子レンジで加熱調理することにより具材のカレー煮を得られるようにする電子レンジ用容器詰カレーソースについて説明する。
【0034】
この電子レンジ用容器詰カレーソースに使用する容器としては、レンジ調理が可能な種々の容器を用いることができる。このような容器としては、例えば、耐熱性樹脂性の成形容器の他、底面にマチをもたせたスタンディングパウチ、底面及び側面にマチをもたせたガゼット袋、四方シール袋等が挙げられる。また、これら容器としては、容器を開封して具材を投入した後電子レンジ調理する前に当該容器を再封するためのジッパー部や、電子レンジ加熱調理時に蒸気を容器外に排出する蒸気抜き機構を備えていることが好ましい。蒸気抜き機構としては、従来より電子レンジ対応包装袋で使用されているものであればよい。また、蒸気抜き機構としては、ジッパー部が電子レンジ加熱時にパウチが膨張する際の圧力で部分的に開口するようにジッパー部の嵌合を調整したものであってもよい。
【0035】
前記電子レンジ用容器詰カレーソースは、容器詰めしてあることにより、保管が可能となり、必要なときに具材を容器内に投入して電子レンジ調理するだけで簡便に具材のカレー煮を製造することができ好ましい。このような電子レンジ用容器詰カレーソースは、例えば、常法により耐熱性パウチに充填密封した後中心品温120℃で4分相当以上のレトルト処理や、凍結処理をすることができ、特にレトルト処理をしたレトルト品であると、長期保管ができ好ましい。
【0036】
続いて、前記本発明の電子レンジ用容器詰カレーソースを使用してカレー煮を製造する方法を説明する。
【0037】
まず、具材の計量及びカットを行った後、電子レンジ用容器詰カレーソースを開封し、そこから具材を投入してジッパーにより再封する。
【0038】
次に、蒸気抜き機構から内容物がこぼれ難いように蒸気抜き機構が上部にくるように容器を電子レンジに入れ、電子レンジ加熱調理を行う。電子レンジ加熱時には、電子レンジ加熱調理により直接的にカレーソースと具材が加熱されるのに加え、ジッパー部により容器が閉じられていることから、発生した蒸気が容器内のヘッドスペースに充満しカレーソースと具材とがいわゆる蒸らし効果により加熱される。この場合、ふきこぼれが特に発生しやすいが、本発明においては、上述した特定のソースを用いることによりジッパー部により容器が閉じられてから加熱された場合であってもふきこぼれが防止される。発生した蒸気は、蒸気抜き機構から排出されるため、容器の破裂は防止される。
【0039】
加熱調理後は、容器を開口し得られたカレー煮を皿等に盛り付ければよい。以上のようにして電子レンジ加熱調理により得られたカレー煮は、短時間の電子レンジ加熱であっても具材にカレー特有の辛味が充分に付与されたものとなり、また、具材が過度に加熱されて煮崩れたり、硬くなったりして具材本来の美味しさが損なわれることが防止される。
【0040】
以下、本発明について、実施例、比較例、並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
(1)具材
鶏もも肉350g及びジャガイモ小1個100gを一口大(3cm角)にカットした。
【0042】
(2)電子レンジ用カレーソース
下記配合割合の原料を用意した。まず、ニーダーにサラダ油、ソテーした玉ねぎを投入し、次に、トマトピューレ、ターメリック、コリアンダー、クミン、胡椒(ブラックペパー)、ナツメグ、トウガラシオレオレジン(カプサイシンとジヒドロカプサイシンの合計含有量7%)、砂糖、食塩、加工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉)清水を投入し撹拌混合しながら品温が90℃になるまで加熱することにより電子レンジ用カレーソースを得た。なお、香辛料はいずれも粉末品を用いた。
【0043】
(3)電子レンジ用容器詰カレーソース
次に、得られた電子レンジカレーソース60gを図1に示すジッパー付きスタンドパウチ10(電子レンジ加熱時にパウチが膨張する際の圧力で部分的に開口するようにジッパー部11の嵌合を調整した蒸気抜き機構を有するもの、パウチサイズ:縦220mm×横140mm×折込(マチ)40mm、材質:(パウチ)ポリエステル/ポリアミド/無延伸ポリプロピレン、(ジッパー部)ポリプロピレン、最大密封充填可能容量:820mL)に充填密封後、レトルト処理(115℃、15分間)し、パウチ内にカレーソース(60g)が充填されている電子レンジ用容器詰カレーソースを得た。得られた電子レンジ用容器詰カレーソースは、カレーソースに加える具材の好ましい切り方、大きさ、投入量、電子レンジ加熱に必要なワット数と時間等の説明表示を印刷した紙製の化粧箱に封入した。
【0044】
得られた電子レンジ用カレーソースのトウガラシオレオレジンの含有量はカレーソースに対して0.02%、トウガラシオレオレジン及び胡椒の含有割合は、トウガラシオレオレジン100部に対して、胡椒が乾物換算で1500部であった。また、カレーソースの粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.4、回転数10rpm)は6Pa・sであった。
【0045】
<配合割合>
サラダ油 5.0%
玉ねぎ(ソテー品) 35.0%
トマトピューレ 5.0%
ターメリック 0.1%
コリアンダー 10.0%
クミン 1.0%
胡椒 0.3%
ナツメグ 0.05%
トウガラシオレオレジン 0.02%
砂糖 1.0%
食塩 1.0%
加工澱粉 5.0%
清水 残 余
――――――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0046】
(4)電子レンジによる加熱調理
(3)の電子レンジ用容器詰カレーソースのジッパーを開封し、(1)の具材を合計450gを入れ、再度ジッパーを閉じた。次に、具材投入後の電子レンジ用容器詰カレーソースを電子レンジで加熱調理(600W×8分間)をし、開封してこれを皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のカレーソースは、沸騰しても液面上に泡が沸きあがらなかった。
【0047】
得られた具材カレー煮は、具材にカレーの風味や辛味が適度に付与されており辛味のバランスもよく大変好ましいものであった。
【0048】
[実施例2]
実施例1において、下記配合割合とした以外は同様にしてパウチ内にカレーソースが充填されている電子レンジ用容器詰カレーソースを得た。得られた電子レンジ用カレーソースのトウガラシオレオレジンの含有量はカレーソースに対して0.02%、トウガラシオレオレジン及び胡椒の含有割合は、トウガラシオレオレジン100部に対して、胡椒が乾物換算で1500部であった。また、カレーソースの粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.3、回転数10rpm)は2Pa・sであった。
【0049】
<配合割合>
サラダ油 5.0%
玉ねぎ(ソテー品) 35.0%
トマトピューレ 5.0%
ターメリック 0.1%
コリアンダー 10.0%
クミン 1.0%
胡椒 0.3%
ナツメグ 0.05%
唐辛子 0.05%
トウガラシオレオレジン 0.02%
砂糖 1.0%
食塩 1.0%
湿熱処理澱粉 3.0%
小麦粉 0.1%
清水 残 余
――――――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0050】
得られた電子レンジ用容器詰カレーソースに実施例1と同様に具材を合計450g入れ、電子レンジで加熱調理(600W×8分間)を行った後、皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のカレーソースは、液面上に泡が1cm程度の高さにまで沸きあがったがふきこぼれは生じず問題のない範囲であった。
【0051】
得られた具材カレー煮は、具材にカレーの風味や辛味が充分に付与されており辛味のバランスもよく大変好ましいものであった。
【0052】
[比較例1]
実施例1において、唐辛子の配合割合を5%とし、その増加分は清水の配合量を減らして補正した以外は同様にして電子レンジ用容器詰カレーソースを得た。
【0053】
得られた電子レンジ用カレーソースを用い、実施例1と同様に具材の加熱調理を行ったところ、電子レンジの加熱中にカレーソースが沸騰して液面上に泡が沸きあがり、パウチ外に泡がふきこぼれた。
【0054】
[試験例1]
本試験例では、トウガラシオレオレジンの含有量が電子レンジ加熱調理後の具材の辛味の強さに与える影響を調べたるため以下の試験を行った。つまり、実施例1の電子レンジ用カレーソースにおいて、トウガラシオレオレジンの含有量を表1に記載の下記含有量とした以外は同様にして6種類の電子レンジ用カレーソースを得た。なお、トウガラシオレオレジンの含有量を変更に伴って胡椒の含有量もそれぞれトウガラシオレオレジン100部に対して胡椒が乾物換算で1500部となるように変更し、これらトウガラシオレオレジン及び胡椒の増加分又は減少分は清水で補正した。次に、得られた各カレーソースを実施例1と同様にパウチに充填後、レトルト処理することにより6種類の電子レンジ用容器詰カレーソースを得た。続いて、得られた各電子レンジ用容器詰カレーソースに実施例1と同様に具材を入れ、これを電子レンジで加熱調理し、加熱調理後の具材のカレー風味の強さについて下記評価基準で評価した。なお、いずれのカレーソースを用いた場合もふきこぼれは発生しなかった。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
<加熱調理後の具材の辛味の強さについての評価>
1:辛味が弱すぎる
2:辛味が弱いが問題のない程度である
3:適度な辛味が感じられる
4:辛味が強いが問題のない程度である
5:辛味が強すぎる
【0057】
表1より、トウガラシオレオレジン含有量が0.005〜0.1%であるカレーソースは、電子レンジ加熱調理後の具材に辛味が問題の無い程度に付与されており好ましいことが理解できる。特に、トウガラシオレオレジン含有量が0.01〜0.05%である場合は、辛味が適度であり好ましかった。これに対して、トウガラシオレオレジン含有量が前記範囲より少ないと、辛味が弱く、一方、トウガラシオレオレジン含有量が前記範囲より多いと辛味が強すぎて好ましくなかった。
【0058】
[試験例2]
本試験例では、トウガラシオレオレジンに対する胡椒の含有割合が電子レンジ加熱調理後の具材の辛味に与える影響を調べたるため、以下の試験を行った。つまり、実施例1の電子レンジ用カレーソースにおいて、トウガラシオレオレジン及び胡椒の配合割合を下記配合割合とした以外は同様にして5種類の電子レンジ用カレーソースを得た。次に、得られた各カレーソースを実施例1と同様にパウチに充填後、レトルト処理することにより5種類の電子レンジ用容器詰カレーソースを得た。続いて、得られた各電子レンジ用容器詰カレーソースに実施例1と同様に具材を入れ、これを電子レンジで加熱調理してカレー煮を得た。なお、いずれのカレーソースを用いた場合もふきこぼれは発生しなかった。
【0059】
得られた各カレー煮について加熱調理後の具材をそれぞれ喫食し、喫食した直後の辛味の強さ及び口中に残る辛味の強さについて下記評価基準で評価し、更に、具材の辛味のバランスについて下記評価基準で総合的に評価した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
<辛味の強さについての評価基準>
1:辛味が弱い
2:辛みがやや弱い
3:適度な辛みが感じられる
4:辛味がやや強い
5:辛味が強い
<加熱調理後の具材の辛味についての総合評価基準>
A:喫食した直後から喫食後にいたるまで口中に辛味を感じ辛味のバランスがよく大変好ましい。
B:喫食した直後又は喫食後のいずれかの辛味が強くやや辛味のバランスが悪いが問題のない程度であり好ましい。
C:喫食した直後又は喫食後のいずれかの辛味が強すぎて辛味のバランスが悪く好ましくない。
【0062】
表2より、トウガラシオレオレジン100部に対して胡椒の割合が100〜5000部であるカレーソースは、電子レンジ加熱後の具材の辛味のバランスがよく好ましいことが理解される。特に、トウガラシオレオレジン100部に対して胡椒が500〜3000部である場合は、具材を喫食した直後から喫食後にいたるまで口中に辛味を感じ、辛味のバランスがよく大変好ましかった。
これに対して、トウガラシオレオレジンに対する胡椒の含有量が前記割合より少ない場合や多い場合は、喫食した直後又は喫食後のいずれかの辛味が強すぎて辛味のバランスが悪く、いずれも好ましくなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 電子レンジ用容器詰カレーソース
10 容器(パウチ)
11 ジッパー部
20 カレーソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりカレー煮を得られるようにするための電子レンジ用カレーソースであって、トウガラシオレオレジンをカレーソースに対して0.005〜0.1質量%含有し、前記トウガラシオレオレジン100質量部に対して、胡椒を100〜5000質量部含有し、唐辛子を乾物換算でカレーソースに対して0.5質量%以下含有する又は唐辛子を含有しないことを特徴とする電子レンジ用カレーソース。
【請求項2】
カレーソースに対して澱粉を0.1〜10質量%含有する請求項1記載の電子レンジ用カレーソース。
【請求項3】
カレーソースに対して小麦粉を1質量%以下含有する又は小麦粉を含有しない請求項1又は2に記載の電子レンジ用カレーソース。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカレーソースに具材を加えて電子レンジで加熱調理することを特徴とするカレー煮の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子レンジ用カレーソースが容器に充填されてなり、前記容器内に具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりカレー煮を得られるようにする電子レンジ用容器詰カレーソース。
【請求項6】
前記容器が具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチである請求項5記載の電子レンジ用容器詰カレーソース。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電子レンジ用容器詰唐辛子ソースの容器内に具材を投入して電子レンジで加熱調理することを特徴とするカレー煮の製造方法。


【図1】
image rotate