説明

電子レンジ耐性を有する冷凍ソース及び該冷凍ソースを含有する冷凍食品

【課題】魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースを電子レンジで解凍・加熱(調理)する際の過加熱を防止でき、該ソースに含まれる蛋白質含有素材が過加熱により変性して、特に、ソースの食感及び外観などが損なわれることのない、電子レンジ耐性を有する冷凍ソース及び該冷凍ソースを含有する冷凍食品を提供すること。
【解決手段】蛋白質含有素材を含み、解凍後の粘度が6〜30Pa・sである、電子レンジ耐性を有する冷凍ソース、及び、該冷凍ソースを含有する冷凍食品、好ましくは、冷凍状態の食品と、該食品の上に載置された上記の冷凍ソースとからなる、冷凍食品。好ましくは、冷凍ソースの粘度が、ソースに膨潤性素材を含有させることにより調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ耐性を有する冷凍ソース及び該冷凍ソースを含有する冷凍食品に関する。詳しくは、魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースを電子レンジで解凍・加熱(調理)する際の過加熱を防止でき、該ソースに含まれる蛋白質含有素材が過加熱により変性して、特に、ソースの食感及び外観などが損なわれることのない、電子レンジ耐性を有する冷凍ソース及び該冷凍ソースを含有する冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースは、電子レンジで解凍・加熱(調理)する場合、蛋白質含有素材中の蛋白質が過加熱により凝固、白濁、変色、退色などの現象を引き起こして変性し、ソースの食感、食味、風味及び外観などが損なわれるとの問題を有している。
そのため、従来、魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースを解凍するにあたっては、流水を用いた解凍や自然解凍などの緩慢な解凍法が採用されており、また解凍後、喫食に適するように加熱(調理)する場合も、過加熱にならないように、温度や昇温速度に細心の注意が払われている。
【0003】
魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースの上述の問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、魚卵類を含有する冷凍ソースに、単糖類、少糖類、多糖類及び多糖類の加水分解物からなる群より選ばれるすくなくとも1種の糖類を3〜30重量%を含有させた、25℃の粘度が0.4〜2Pa・s程度の冷凍ソースが記載されている。この特許文献1に記載の冷凍ソースは、電子レンジで解凍・加熱(調理)しても、ソースの食感、食味、風味及び外観などの劣化が生じ難いものではあるが、十分に満足し得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースを電子レンジで解凍・加熱(調理)する際の過加熱を防止でき、該ソースに含まれる蛋白質含有素材が過加熱により変性して、特に、ソースの食感及び外観などが損なわれることのない、電子レンジ耐性を有する冷凍ソース及び該冷凍ソースを含有する冷凍食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討した結果、魚卵類などの蛋白質含有素材を含む冷凍ソースに、麩粉砕物などの膨潤性素材を含有させて、該ソースの粘度を特定の範囲内とすることにより、上記目的を達成する冷凍ソースが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は、蛋白質含有素材を含み、解凍後の粘度が6〜30Pa・sである、電子レンジ耐性を有する冷凍ソースを提供するものである。
尚、上記粘度は、B型粘度計、No.3ローター、6rpm、25℃で測定したときの粘度である。
また、本発明は、上記の本発明の冷凍ソースを含有する、電子レンジ耐性を有する冷凍食品、好ましくは、冷凍状態の食品と、該食品の上に載置された上記の本発明の冷凍ソースとからなる、電子レンジ耐性を有する冷凍食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子レンジ耐性を有する冷凍ソース及び該冷凍ソースを含有する冷凍食品は、電子レンジで解凍・加熱(調理)しても、電子レンジで解凍・加熱(調理)する際の過加熱を防止でき、該ソースに含まれる蛋白質含有素材が過加熱により凝固、白濁、変色、退色などの現象を引き起こして変性することがないため、食感及び外観などが損なわれることがない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられる蛋白質含有素材としては、特に制限されるものではなく、例えば、たらこ、すじこ、キャビア、いくら、からすみ、かずのこ、うるかなどの魚卵類、イカ、タコ、えび、貝類などの魚介類、卵黄、卵白などが挙げられ、これらの中でも、たらこなどの魚卵類、イカなどの魚介類が好ましい。
これらの蛋白質含有素材の含有量は、ソース中、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
蛋白質含有素材の含有量が少ないと、蛋白質含有素材自体の食感が感じられない場合があり、また蛋白質含有素材の含有量が多いと、ソースの風味が味わえない場合がある。
【0010】
本発明の冷凍ソースは、解凍後の粘度が、測定温度25℃で、6〜30Pa・s、好ましくは10〜20Pa・sである。
冷凍ソースの解凍後の粘度が6Pa・sより低いと、電子レンジによる蛋白質含有素材自体の過加熱が起きる場合があり、また粘度が30Pa・sより高いと、ソースのなめらかさが悪い場合がある。
【0011】
本発明の冷凍ソースの粘度調整は、ソースに、乾燥マッシュポテト、麩粉砕物、パン粉、クラッカー粉砕物などの膨潤性素材、小麦粉、そば粉などを含有させることにより行うことが好ましく、より好ましくは膨潤性素材、特に乾燥マッシュポテトを含有させることにより冷凍ソースの粘度調整を行うことが好ましい。
【0012】
この他、粘度調整剤として、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、小麦でんぷん、またはそれらの加工澱粉などの澱粉類、増粘多糖類などの増粘剤を含有させることにより、冷凍ソースの粘度調整を行うこともできる。
このように、膨潤性素材を含有させることにより冷凍ソースの粘度調整を行うことにより、水を保持したような形態でソースの粘度を調整することができる。したがって、膨潤性素材を含有させることにより冷凍ソースの粘度調整を行うほうが、澱粉類、増粘剤等によりソースの粘度調整を行うよりも、発明の効果を奏する観点で、好ましい。
【0013】
上記の乾燥マッシュポテトは、粒径0.1〜3.0mm程度の粉末または粉砕物であることが好ましく、上記の麩粉砕物は、粒径0.1〜3.0mm程度の粉砕物であることが好ましく、また上記のクラッカー粉砕物は、粒径0.1〜3.0mm程度の粉砕物であることが好ましい。
上記の膨潤性素材などの粘度調整剤の含有量は、冷凍ソースの解凍後の粘度を上記範囲内とする量であり、粘度調整剤の種類によっても異なるが、例えば、膨潤性素材を含有させる場合、通常、冷凍ソース中、1.0〜10質量%とするとよく、好ましくは1.0〜4.0質量%とするのがよい。
【0014】
本発明の冷凍ソースには、上記の蛋白質含有素材及び膨潤性素材などの粘度調整剤の他に、従来の魚卵類などの蛋白質含有素材を含むソースに配合される成分と同様の成分、例えば、食用油、調味料などを、目的とするソースの種類に応じて適宜選択して配合することができる。
【0015】
本発明の冷凍ソースの水分量は、ソース中、20〜95質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。水分量が少ないと、ソースのなめらかさが悪い場合があり、また水分量が多いと、ソースのなめらかさがなくなる場合がある。
【0016】
本発明の冷凍ソースの形状は、制限されるものではなく、例えば、円盤形状、矩形状などが挙げられが、電子レンジで解凍・加熱(調理)した際の温度ムラの防止や成形性の点から、円盤形状とすることが好ましい。
本発明の冷凍ソースを製造するための冷凍方法は、従来の冷凍ソースにおける冷凍方法と同様である。
【0017】
本発明の冷凍ソースは、パスタソース、カレーソース、シチューなどとして好適であり、特にパスタソースとして好適である。
【0018】
本発明の冷凍食品は、上述の本発明の冷凍ソースを含有する冷凍食品、好ましくは、冷凍状態の食品と、該食品の上に載置された上述の本発明の冷凍ソースとからなる、冷凍食品である。
上記食品としては、パスタ、日本そば、うどん、中華麺、ビーフン、ご飯などが挙げられ、特にパスタが好ましい。
冷凍状態の食品の形状は、特に限定されるものではなく、食品の種類に応じた通常の冷凍食品の形状でよい。
【0019】
本発明の冷凍ソースを含有する冷凍食品は、電子レンジで解凍・加熱(調理)する際、解凍・加熱(調理)後の食品が、食品の上にソースがかかった状態となるように、冷凍ソースを上にした状態で電子レンジ内に置くことが好ましい。
本発明の冷凍ソース及び本発明の冷凍食品の電子レンジでの解凍・加熱(調理)条件は、従来の冷凍ソース又は冷凍食品における場合と同条件とすることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0021】
実施例1〜8及び比較例1〜3
表1に示す配合でソースを調製し、該ソース50gを径40mm及び厚み3mmの円盤形状に冷凍して、冷凍パスタソースをそれぞれ得た。
得られた冷凍パスタソースを、長辺150mm、短辺100mm及び厚み20mmの直方体形状に成形された冷凍スパゲッティの麺塊100gの上に載置し、冷凍ソース付き冷凍パスタ食品をそれぞれ得た。
得られた各冷凍ソース付き冷凍パスタ食品について、冷凍ソースが上になるようにして皿に乗せ、電子レンジにて600Wで240秒間解凍・加熱(調理)して、ソースの食感及び外観を、下記の評価基準に従ってパネラー10名に評価させた。その結果(平均点)を表2に示す。
【0022】
(解凍後のソース中の蛋白質含有素材の食感の評価基準)
5:かなり良い硬さ
4:ほど良い硬さ
3:やや硬い
2:少し硬い
1:かなり硬い
【0023】
(解凍後のソース中の蛋白質含有素材の外観の評価基準)
5:ほとんど変色なしの外観
4:やや変色ありの外観
3:やや焼けた外観
2:少し焼けた外観
1:かなり焼けた外観
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質含有素材を含み、解凍後の粘度が6〜30Pa・sである、電子レンジ耐性を有する冷凍ソース。
【請求項2】
蛋白質含有素材が、魚卵類又は魚介類である請求項1記載の冷凍ソース。
【請求項3】
ソースに膨潤性素材を含有させることによりソースの粘度が6〜30Pa・sに調整された請求項1又は2記載の冷凍ソース。
【請求項4】
膨潤性素材が、乾燥マッシュポテト、麩粉砕物、パン粉又はクラッカー粉砕物である請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍ソース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍ソースを含有する、電子レンジ耐性を有する冷凍食品。
【請求項6】
冷凍状態の食品と、該食品の上に載置された請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍ソースとからなる、請求項5記載の冷凍食品。