説明

電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターおよびその製造方法

【課題】油揚することなく電子レンジのみで油揚したのと同様な外観と食感のフライ様食品を製造できるバッターおよびこその製造方法を提供すること。
【解決手段】HLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル(DGSE)及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステル(SSE)と多価アルコールと水を特定割合でよく混合し60〜70℃に温めた後、油脂の配合量が高油分乳化油脂組成物全体の70質量%を超え86質量%以下となるように攪拌しながら油脂を徐々に加え乳化したバッター用高油分乳化油脂組成物及びその製造方法である。また、前記バッター用高油分乳化油脂組成物80質量%に対し補助剤として澱粉0.5〜2.0質量%および増粘多糖類0.05質量%〜0.3質量%を水に分散させ加えた後加熱した電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッター及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
とんかつやエビフライのようなフライ食品は、大量の油で揚げて調理するため、使用した油の処理が面倒であったり、油はねやレンジの汚れを伴うために掃除が面倒であったりする。
また、フライ食品は調理に大量の油を用いるため、特に脂質含量が高く、高カロリーであるという問題がある。
油で揚げずに調理する方法として、例えば、電子レンジを使用して調理するフライ様食品が知られている。
このフライ様食品のために、食用油脂5〜40質量%、卵黄類1〜20質量%及び糖類1〜30質量%を含有し、10〜40℃の全ての温度において、粘度が100mPa・s以上且つ5000mPa・s以下であることを特徴とする中種コーティング用酸性水中油型乳化物が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、油揚することなく電子レンジのみで油揚したのと同様な外観と食感のフライ様食品を製造できるバッターおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の乳化剤と多価アルコール及び水を特定の割合で配合しこれに油脂を特定の割合で配合することにより、バッター用高油分乳化油脂組成物を製造でき、補助剤として特定の増粘剤を特定の割合で加えることにより、電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、乳化剤、多価アルコール及び水を以下の(A)、(B)の条件で配合し、
(A)多価アルコール100質量部に対するHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの質量割合は乾物換算で8〜35質量部、
(B)水の質量割合はHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステルの場合は、デカグリセリン脂肪酸エステルと多価アルコールと水の合計の29質量%〜61質量%、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの場合は、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルと多価アルコールと水の合計の41質量%〜71質量%、デカグリセリン脂肪酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを同時に使用する場合は、それぞれの配合割合による前記それぞれの水の配合割合の平均値、
前記配合物をよく混合し60〜70℃に温めた後、油脂の配合量が高油分乳化油脂組成物全体の70質量%を超え86質量%以下となるように攪拌しながら油脂を徐々に加え乳化したバッター用高油分乳化油脂組成物である。
前記バッター用高油分乳化組成物80質量%に対し補助剤として澱粉0.5〜2.0質量%および増粘多糖類0.05質量%〜0.3質量%を水に分散させ加えた後加熱した電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバッターを使用することにより、油揚することなく電子レンジのみで油揚したのと同様な外観と食感を有するフライ様食品を製造できる。
適度な粘性をもつので、素材とブレッダーの結着が良く、電子レンジ調理中の衣のはがれが少なくできる。
適度な油脂を含むので、ブレッダーの食感を向上することができ、食味が非常に良い。余分な油脂を吸収しないので油脂の摂取量を抑制することができる。
油揚用の油は使用しないので通常の油揚の場合のように油を後始末する必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用できる乳化剤はHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルである。
これらは、あらかじめ水を添加してある市販品を使用することができる。
本発明において、前記乳化剤以外の乳化剤を使用した場合は高油分乳化油脂組成物の乳化状態が悪くなり油脂が分離したり、食品の風味および味覚に影響を与えたり、粘性が増して作業性が悪いなど良質の高油分乳化油脂組成物を得ることができない。
【0008】
本発明において使用できる多価アルコールは、食用に使用できるものであれば特に限定されない。
例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、キシロース、アラビノース、マンノース、異性化糖、果糖、還元水飴などを挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0009】
本発明において、乳化剤と多価アルコールの配合割合が重要である。
多価アルコール100質量部に対するHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの質量割合は乾物換算で8〜35質量部である。
この配合割合より乳化剤が多くなると、食品の風味および味覚に影響を与えるので好ましくない。
また、この配合割合より乳化剤が少なくなると油脂が分離するので好ましくない。
なお、本発明において、○○〜△△とは○○以上、△△以下をいい、例えば、1〜3とは1以上3以下をいう。
【0010】
本発明において、水の配合割合もまた重要である。
HLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステルを使用する場合は、水の質量割合はデカグリセリン脂肪酸エステルと多価アルコールと水の合計に対して29.0質量%〜61.0質量%になるように配合する。
HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルを使用する場合は、水の質量割合はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルと多価アルコールと水の合計に対して41.0質量%〜71.0質量%になるように配合する。
デカグリセリン脂肪酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを同時に使用する場合は、それぞれの配合割合による前記それぞれの水の配合割合の平均値となる。
例えば、デカグリセリン脂肪酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを3:7で使用する場合は、(29.0質量%〜61.0質量%)×0.3+(41.0質量%〜71.0質量%)×0.7=37.4質量%〜68.0質量%となり、水の質量割合は、デカグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、多価アルコールと水の合計に対して37.4質量%〜68.0質量%となる。
水の割合が前記範囲より少ない場合は、粘度が高くなりすぎて作業性が悪くなったり、ダマになったりして、乳化が十分にできず、前記範囲より多い場合は、油脂が分離して食味が劣るので好ましくない。
【0011】
本発明において使用できる油脂は、食用に使用できるものであれば特に限定されない。
例えば、サラダ油、菜種油、大豆油、サフラワー油、コーン油、ひまわり油、米油、パーム油、やし油、カカオ脂、オリーブ油、魚油、乳脂、牛脂などを挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。固形脂の場合は溶かして使用する。
【0012】
前記乳化剤、多価アルコール及び水の配合物をよく混合し60〜70℃に温めた後、油脂の配合量がバッター用高油分乳化油脂組成物全体の70質量%を超え86質量%以下となるように攪拌しながら油脂を徐々に加え乳化する。
攪拌手段は乳化ができれば特に限定されない。
本発明のバッター用高油分乳化油脂組成物は乳化し易いので、回転数が1000min−1程度の攪拌機で十分乳化が可能である。
なお、油脂には脂溶性の色素などを添加したり、天然物や香料などでフレーバーリングしたりすることができる。
【0013】
本発明において使用できる補助剤としての澱粉は特に限定されない。
例えばコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などを挙げることができる。
これらの澱粉は未加工の生澱粉でもリン酸架橋、アセチル化などのエステル化やヒドロキシプロピル化などのエーテル化、酸化などの加工した澱粉でも使用できる。
これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
澱粉の使用量は0.5〜2.0質量%であり、0.5質量%未満ではその効果が期待されず、2.0%を超えると粘度が高くなりすぎて作業性が悪くなる。
【0014】
本発明において使用できる補助剤としての増粘多糖類は特に限定されない。
例えばキサンタンガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、サイリウムシードガムなどを挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
増粘多糖類の使用量は0.05〜0.3質量%であり、0.05質量%未満ではその効果が期待されず、0.3質量%を超えると特有のねちゃつきがでて食感が悪くなる。
【0015】
本発明の電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターには必要に応じて、植物性蛋白、粉乳、卵粉、塩、調味料、香辛料、色素などの副資材を配合することができる。
【0016】
上記バッター用高油分乳化油脂組成物に前記澱粉、前記増粘多糖類および必要に応じて前記副資材を混合し水に分散・溶解したものを混合する。澱粉が糊化される温度に混合液を加熱し本発明の電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターを得ることができる。
加熱方法は澱粉が糊化されれば特に限定はなく、加熱温度は澱粉が糊化する55℃からレトルト加熱殺菌温度である125℃まで可能である。
【0017】
以下、本発明の電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターを使用したフライ様食品の製造方法について説明する。
本発明では、バッターの油脂がブレッダーに移行し、油揚したのと同様な外観と食感を有するフライ様食品を製造できることを特徴としている。
従って、本発明のフライ様食品の素材としては特に限定されず、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類や白身魚、エビ、イカなどの魚介類やタマネギ、ピーマン、ジャガイモなどの野菜類などを挙げることができる。
特に電子レンジ加熱したときに熱の通りやすい薄切りの素材が好ましい。
素材は生、冷凍、チルド品、加熱品などを使用することができる。
【0018】
まず、前記素材を、本発明のバッターで被覆する。
被覆の方法は特に限定されないが、本発明のバッターはゾル状なので素材につけてスプーンで伸ばしたり、素材をバッターに漬けたりする方法が挙げられる。
素材はバッターで被覆する前に下味付けや打ち粉をしてもよい。
打ち粉としては、従来フライに使用している打ち粉が使用できる。
例えば、小麦粉等の穀粉およびコーンスターチ等の澱粉や卵粉、大豆などのたんぱく質粉を使用できる。
素材に対するバッターの量は素材100質量部に対し、15質量部以上である。
15質量部未満ではブレッダーが不均一につき、ムラのあるフライ様食品となる。
【0019】
次に、前記バッターで被覆した素材を、ブレッダーで被覆する。
被覆の方法は特に限定されないが、粉状のブレッダーをまぶすように被覆することができる。
ブレッダーとしては従来のフライ用のブレッダーを使用することができるが、サクサクした食感を得るためには、水分値の高い生パン粉やセミドライパン粉は適さない。
好ましいブレッダーは焼成済みのブレッダーであり、例えば、ローストパン粉やクラッカー粉が挙げられる。
【0020】
前記ブレッダーで被覆した素材を電子レンジで加熱調理し、本発明のフライ様食品を得ることができる。
加熱調理は耐熱皿上に前記処理した素材を置き行う。
好ましくは、市販の電子レンジ用発熱シートや耐熱セラミック容器を使用すると素材の変形が抑制されてよい。
【実施例】
【0021】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1〜15]乳化剤の種類
多価アルコール水溶液(日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF)12.5質量部(70質量%水溶液に調整、乾物換算8.75質量部)と表1に示す乳化剤7.5質量部(40質量%水溶液に調整、乾物換算3質量部)を鍋で60〜70℃に加温した後、カッターミキサー(フォアベルク社製、商品名:サーモミックス)に移し、攪拌(1000〜1500min−1)しながらサラダ油80質量部を少しずつ添加し、高油分乳化油脂組成物を調製した。
【0022】
【表1】

【0023】
得られた高油分乳化油脂組成物を目視にて評価した。
目視評価の基準を以下に示す。
乳化状態の評価基準
○ 白くなめらかで乳化状態が良い
△ 褐色がかったり、なめらかでなかったり、乳化状態がやや悪い
× 油分の分離がはっきりわかり、乳化状態が悪い
【0024】
結果を表1に示す。
モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)とショ糖ステアリン酸エステル(HLB15とHLB16)が良い評価であった。
【0025】
[実施例4〜9]多価アルコールの種類
表2に示す甘味度が異なる多価アルコール溶液12.5質量部(70質量%水溶液に調整、乾物換算8.75質量部)とモノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)7.5質量部(40質量%水溶液に調整、乾物換算3質量部)を鍋で60〜70℃に加温した後、カッターミキサー(フォアベルク社製、商品名:サーモミックス)に移し、攪拌(1000〜1500min−1)しながらサラダ油80質量部を少しずつ添加し、高油分乳化油脂組成物を調製し実施例1と同様に、目視評価を行った。
結果を表2に示す。
いずれの多価アルコールでも良好な結果であった。
【0026】
【表2】

【0027】
[実施例10〜15、比較例16〜22]乳化剤と多価アルコールの配合割合
実施例1において、乳化剤と多価アルコール水溶液を表3及び表4に示す割合にし、高油分乳化油脂組成物の目視評価を実施例1と同様に行った。
結果を表3、表4に示す。
なお、表中モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB15)は40質量%水溶液に調整後の値(質量部)である。
多価アルコールは日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF(70質量%水溶液に調整)を使用した。
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
多価アルコール100質量部に対するモノデカグリセリン脂肪酸エステル及び/またはショ糖ステアリン酸エステルの質量割合は乾物換算で8〜35質量部の場合が良好な結果であった。
【0031】
[実施例16〜18、比較例23〜25]水の配合割合(1)
実施例1において、モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)30質量部(無水物換算値)、多価アルコール(日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF)87.5質量部(無水物換算値)、サラダ油800質量部及び水を表5に示す割合とした他は実施例1と同様にして高油分乳化油脂組成物を調製し目視評価を行った。
水の質量%はモノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)、多価アルコール及び水の合計に対する割合である。
結果を表5に示す。
【0032】
【表5】

【0033】
モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB 15)の場合は、水の質量割合がモノデカグリセリン脂肪酸エステルと多価アルコールと水の合計に対して29.9質量%以上、60.8質量%以内で良好な結果であった。
【0034】
[実施例19〜21、比較例26〜28]水の配合割合(2)
実施例1において、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)30質量部(無水物換算値)、多価アルコール(日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF)87.5質量部(無水物換算値)、サラダ油1000質量部及び水を表6に示す割合とした他は実施例1と同様にして高油分乳化油脂組成物を調製し目視評価を行った。
水の質量%はショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)、多価アルコール及び水の合計に対する割合である。
結果を表6に示す。
【0035】
【表6】

【0036】
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)の場合は、水の質量割合がショ糖ステアリン酸エステルと多価アルコールと水の合計に対して41.3質量%以上、70.6質量%以内で良好な結果であった。
【0037】
[実施例22〜31、比較例29〜38]水の割合割合(3)
実施例19において、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)に表7に示す割合でモノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB 15)を配合し、水を表7に示す割合とした他は実施例19と同様にして高油分乳化油脂組成物を調製し目視評価を行った。
結果を表7に示す。
表中、A:Bとはモノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB 15)とショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)の質量割合(無水物換算値)を表し、Aはモノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB 15)、Bはショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)を表す。
【0038】
【表7】

【0039】
好ましい水の配合割合は、モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)とショ糖ステアリン酸エステル(HLB15)の配合割合に比例した。
【0040】
[実施例32〜37、比較例39]油脂の配合割合(1)
モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)75質量部、多価アルコール125質量部、水100質量部及びサラダ油を表8に示す割合とした他は実施例1と同様にして高油分乳化油脂組成物を調製し目視評価を行った。
なお、モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)は40質量%水溶液に調製して使用した。
また、多価アルコールは日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF(70質量%水溶液に調整)を使用した。
結果を表8に示す。
【0041】
【表8】

【0042】
油脂の配合量が高油分乳化油脂組成物全体の86質量%以下で良好な結果であった。
【0043】
[実施例35〜37、比較例40]油脂の配合割合(2)
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)75質量部、多価アルコール125質量部、水200質量部及びサラダ油を表9に示す割合とした他は実施例1と同様にして高油分乳化油脂組成物を調製し官能評価を行った。
なお、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB 15)は40質量%水溶液に調製して使用した。
また、多価アルコールは日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF(70質量%水溶液に調整)を使用した。
結果を表9に示す。
【0044】
【表9】

【0045】
油脂の配合量が高油分乳化油脂組成物全体の86質量%以下で良好な結果であった。
【0046】
[実施例38〜51、比較例41〜48]補助剤の種類
【0047】
モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)125質量部、多価アルコール210質量部、水165質量部及びサラダ油1340質量部を使用して実施例1と同様の方法でバッター用高油分乳化油脂組成物を調製した。
なお、モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)は40質量%水溶液に調製して使用した。
また、多価アルコールは日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF(70質量%水溶液に調製)を使用した。
調製したバッター用高油分乳化油脂組成物80質量%に表10に示す質量%の補助剤を表10に示す質量%の水に分散させ添加し、80℃10分間加熱後冷却し、バッターを調製した。
表10中、実施例43と実施例51の澱粉混合物は、ワキシーコーン加工澱粉とタピオカ加工澱粉を1:1に混合したものである。
実施例50と実施例51の増粘多糖類混合物は、キサンタンガムとタマリンドガムを1:1に混合したものである。
ワキシー加工澱粉は、ワキシー澱粉をアジピン酸架橋アセチル化処理した澱粉である。
タピオカ加工澱粉は、タピオカ澱粉をリン酸架橋ヒドロキシプロピル化処理した澱粉である。
豚ロース薄切りを60g程度になるように数枚重ねて、前記バッター10gを肉の表面に満遍なく塗り、ローストパン粉10gをまぶした。電子レンジで600W1分30秒間加熱調理した。
得られたフライ様食品の食味食感および外観の評価を、10名のパネラーにより、下記に示す基準で行った。
食味食感の評価基準
○ サクサクした食感で、香ばしい。
△ サクサクした食感はあるが、ややネチャつきがある。
× サクサクした食感ではなく、ネチャつきがある。
外観の評価
○ 衣全体がカラッと揚がったフライにみえ、衣の結着がよい。
△ 衣全体がカラッと揚がったフライにみえるが、衣の結着が悪い。
× 衣の一部がふやけてカラッと揚がったフライにみえない。
結果を表10に示す。
【0048】
【表10】

【0049】
補助剤として澱粉および増粘多糖類を併用することにより、良好な食味食感や外観が得られた。また澱粉や増粘多糖類は単独でも2種類以上の混合品でも良好な食味食感および外観が得られた。
また、澱粉の配合量が0.5質量%未満では衣の一部がふやけてカラッと揚がったフライにみえず、2.0質量%を超えるとバッターの粘度が上がりすぎてうまく素材を被覆できず、衣の結着が悪かった。
さらに増粘多糖類の配合量が0.1質量%未満では電子レンジ調理中に衣がはがれカラッと揚がったフライにみえず、0.3質量%を超えると増粘多糖類特有のねちゃつきが生じた。
【0050】
〔実施例52〕とんかつ様食品
モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)125質量部、多価アルコール210質量部、水165質量部及びサラダ油1340質量部を実施例1と同様にしてバッター用高油分乳化油脂組成物を調製した。
なお、モノデカグリセリン脂肪酸エステル(HLB15)は40質量%水溶液に調製して使用した。
また、多価アルコールは日研化成株式会社製、商品名:ソルビトールF(70質量%水溶液に調製)を使用した。
調製したバッター用高油分乳化油脂組成物80質量%にキサンタンガム0.1質量%、加工タピオカ澱粉1.0質量%、食塩3.5質量%およびホワイトペッパー末0.1%を水15.3質量%に分散させ添加した。80℃まで加熱後、パウチに充填し、121℃20分間レトルト殺菌した。
豚ロース薄切りを数枚重ね60g程度に調整し、前記バッター10gを肉の表面に満遍なく塗り、ローストパン粉10gをまぶした。電子レンジで600W1分30秒間加熱調理した。
実施例38と同様に評価をおこなったところ、食味食感および外観が良好であった。
【0051】
〔実施例53〕エビフライ様食品
フライ用に下処理したエビ一尾25gに、実施例52と同様に調整したバッター4gをエビの表面に満遍なく塗り、ローストパン粉2gをまぶした。電子レンジで600W1分30秒間加熱調理した。実施例38と同様に評価をおこなったところ、食味食感および外観が良好であった。
【0052】
〔実施例54〕野菜フライ様食品
5mm厚さにスライスした玉ねぎ15gに、実施例52と同様に調整したバッター3gを玉ねぎの表面に満遍なく塗り、ローストパン粉4gをまぶした。電子レンジで600W1分間調理した。実施例38と同様に評価をおこなったところ、食味食感および外観が良好であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤、多価アルコール及び水を以下の(A)、(B)の条件で配合し、
(A)多価アルコール100質量部に対するHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの質量割合は乾物換算で8〜35質量部、
(B)水の質量割合はHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステルの場合は、デカグリセリン脂肪酸エステルと多価アルコールと水の合計の29.0質量%〜61.0質量%、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの場合は、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルと多価アルコールと水の合計の41.0質量%〜71.0質量%、デカグリセリン脂肪酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを同時に使用する場合は、それぞれの配合割合による前記それぞれの水の配合割合の平均値、
前記配合物をよく混合し60〜70℃に温めた後、油脂の配合量がバッター用高油分乳化油脂組成物全体の70質量%を超え86質量%以下となるように攪拌しながら油脂を徐々に加え乳化したバッター用高油分乳化油脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の前記バッター用高油分乳化組成物80質量%に対し補助剤として澱粉0.5〜2.0質量%および増粘多糖類0.05質量%〜0.3質量%を水に分散させ加えた後加熱した電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッター。
【請求項3】
乳化剤、多価アルコール及び水を以下の(A)、(B)の条件で配合し、
(A)多価アルコール100質量部に対するHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの質量割合は乾物換算で8〜35質量部、
(B)水の質量割合はHLB15以上のデカグリセリン脂肪酸エステルの場合は、デカグリセリン脂肪酸エステルと多価アルコールと水の合計の29.0質量%〜61.0質量%、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルの場合は、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルと多価アルコールと水の合計の41.0質量%〜71.0質量%、デカグリセリン脂肪酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを同時に使用する場合は、それぞれの配合割合による前記それぞれの水の配合割合の平均値、
前記配合物をよく混合し60〜70℃に温めた後、油脂の配合量がバッター用高油分乳化油脂組成物全体の70質量%を超え86質量%以下となるように攪拌しながら油脂を徐々に加え乳化することを特徴とするバッター用高油分乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記バッター用高油分乳化組成物80質量%に対し補助剤として澱粉0.5〜2.0質量%および増粘多糖類0.05質量%〜0.3質量%を水に分散させ加えた後加熱した電子レンジ調理用フライ様食品に使用するバッターの製造方法。