説明

電子レンジ

【課題】電子レンジの庫内の調理物の状況を鮮明に見えるようにすることにより、状況を見ながら調理を進められるようにする。
【解決手段】少なくともガラス板6,7と機器本体に電気的に接続してなる金属製の遮蔽板4とからなるドアを備え、前記ドアの遮蔽板4はその一部に可視光領域において透明な導電性酸化物膜層9を設けて構成した導電性酸化物窓5を有するとともに、導電性酸化物膜層9と遮蔽板4を電気的に接続した構成としてあり、電子レンジ庫内の視認性が向上するとともに、透明な導電性酸化物を設けて構成した導電性酸化物窓の面積も比較的小さくてすみ、安全性が高められ、コストも安くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭あるいは業務用で使用されている電子レンジにおける視認性の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジは窓からマイクロ波が漏洩しないように、2枚のガラスの間にマイクロ波を漏洩させないための遮蔽板(例えば、パンチングメタル、金網等)が挟まれた構成としている。しかしながら、遮蔽板はマグネトロンから発せられる2.45GHzのマイクロ波が庫外に漏洩するのを防止するために決まった開口率以上に大きく取れず、電子レンジ内部の様子が見にくかった。
【0003】
このような課題を解決するものとして、電子レンジの窓ガラス基材の上に導電性酸化物膜層を形成し、可視光領域を透明にする窓を設けることにより、パンチングメタルで構成されたものと比較し、庫内の状況を鮮明に見えるようにしたものがあった(特許文献1)。
【0004】
この構成のものは、マグネトロンより発せられたマイクロ波が、ガラス基材上に設けられた導電性酸化物膜層により、反射あるいは吸収されて熱となり、電子レンジ庫内から外へ漏洩しないようになっている。
【特許文献1】特開平09−48640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のガラス基板上に導電性酸化物膜層を構成した窓では、ガラスが割れたときに、マイクロ波が庫外へ漏洩する危険性が大きくなる。また、大きな面積に導電性膜を構成するためには、製造装置も大きくなり、さらに膜にピンホールがあればマイクロ波が漏洩する可能性があるので大きな面積にピンホール無く導電性酸化物膜層を形成することは非常困難なこととなる。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、簡単な構成でマイクロ波の漏洩を防ぐことができ、庫内の視認性も良く、ガラスの割れの虞が少なくて安全性も高い電子レンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子レンジは上記目的を達成するため、少なくともガラス板と機器本体に電気的に接続してなる金属製の遮蔽板とからなるドアを備え、前記ドアの遮蔽板はその一部に可視光領域において透明な導電性酸化物を設けて構成した導電性酸化物窓を有するとともに、導電性酸化物と遮蔽板を電気的に接続した構成としてあり、電子レンジ庫内の視認性が向上するとともに、透明な導電性酸化物を設けて構成した導電性酸化物窓の面積も比較的小さくてすみ、安全性が高められ、コストも安くできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子レンジは、調理をしている際に電子レンジ庫内の視認性が良く調理物の状態がはっきりと観察できるとともに、安全性も高くすることができ、家庭用はもちろん業務用の電子レンジにも好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、少なくともガラス板と機器本体に電気的に接続してなる金属製の遮蔽板とからなるドアを備え、前記ドアの遮蔽板はその一部に可視光領域において透明な導電性酸化物膜層を設けて構成した導電性酸化物窓を有するとともに、導電性酸化物膜層と遮蔽板を電気的に接続した構成としてあり、電子レンジ庫内の視認性が向上するとともに、透明な導電性酸化物を設けて構成した導電性酸化物窓の面積も比較的小さくてすみ、安全性が高められ、コストも安くできる。
【0010】
第2の発明は、遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓が、設置される面の中央部に配置されることによって、庫内がより見やすくなるものである。
【0011】
第3の発明は、遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓の大きさが、筐体の設置される面と相似系であることにより庫内の状況が見やすくなるものである。
【0012】
第4の発明は、遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓の形状が、横長の形状であることにより、庫内が見やすくできるものである。
【0013】
第5の発明は、透明な導電性酸化物を形成するためのガラス基板の厚みを0.3mm以上、5mm以下にすることにより、強度が確保され安全性が向上する。一方、電子レンジ全体の重量増も区精することができる。
【0014】
第6の発明は、遮蔽板は格子状に形成し、この格子状部分に導電性酸化物窓を配置したことにより、導電性酸化物窓の強度が向上するとともに、導電性酸化窓と遮蔽板が電気的接続される面積も増え、信頼性が向上する。
【0015】
第7の発明は、遮蔽板の一部に形成する導電性酸化物窓の大きさは、遮蔽板の面積の60%以下とすることにより、電子レンジの窓に衝撃が加わったときに導電性酸化物窓が破壊されることが少なく安全性を高くすることができる。
【0016】
第8の発明は、遮蔽板の一部に形成する導電性酸化物窓を、透明な耐熱性樹脂板に導電性酸化物膜層を設けたものとすることにより、ガラスと違い衝撃に強く、さらに軽くすることができるものである。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施例の形態における電子レンジの斜視図、図2は同ドアに設置された窓の部分断面を示す概略図である。
【0019】
図1、図2において、電子レンジ本体1の前面に設置されるドア2は、電子レンジの庫内内部を見るために金属製パンチングメタル、金網等で形成された遮蔽板4と、外側ガラス板6並びに内側ガラス板7を有している。本発明においては、遮蔽板4はガラス板6,7の周囲と対応する部分のみとし、その遮蔽板4の中央部分であって外側ガラス板6並びに内側ガラス板7の間に導電性酸化物膜層9が形成してある。この導電性酸化物膜層9はガラス基材8の表面に形成してあり、導電性酸化物窓5を構成している。導電性酸化物層9は、酸化インジュウムに酸化錫を添加したものあるいは、酸化錫化合物にアンチモン、フッ素を添加したものあるいは、酸化亜鉛にアルミニウムを添加したもののうち少なくとも1種類を成分とする。
【0020】
上記構成において、電子レンジ本体に内蔵されたマグネトロンより発せられたマイクロ
波は、電子レンジ庫内に広がり、前記遮蔽板4と導電性酸化物窓5によって反射(あるいは一部吸収)され、電子レンジ庫内へと戻るため、マイクロ波が外部へ漏れることはない。また、外側ガラス板6と内側ガラス板7によって保護されているために、導電性酸化物膜窓5が誤って壊される可能性も少ない。さらに、導電性酸化物窓5が電子レンジのドア全体に形成されているのではなく中央部の一部分に形成されていることによって安全性がさらに高まっている。
【0021】
なお、上記導電性酸化物窓5は視認性を向上させるために、設置される電子レンジの筐体の面の中央に相似形に配置することで見やすくなる。また、人の目は横に広がった構造をしているので、横長の形状をする方が視認性は向上するものである。
【0022】
また、導電性酸化物窓5を形成するガラス基材8は、強度を確保し安全性を向上させるために、厚みを0.3mm以上とするのがよく、ドアの開け閉めや移動による振動衝撃に十分耐えるようになる。しかしながら、電子レンジの構造上あるいは重量が余り重くならないようにすることを配慮すると厚みの上限値は5mm以下に抑えるのが望ましい。
【0023】
また、導電性酸化物窓5を形成するガラス基材8の代わりに透明な耐熱性樹脂板を用いることも可能であり、衝撃に強く、軽くすることができる。透明な耐熱性樹脂板として、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリシクロオレフィン等がある。
【0024】
(実施の形態2)
図3は本発明の第2の実施の形態における電子レンジの遮蔽板を示す概略図、図4は遮蔽板から導電性酸化物窓を外した所を示す概略図である。
【0025】
この実施の形態のものは、電子レンジ本体ドアに設置されている遮蔽板4の一部部分を切り取って、格子10を形成する。ここにガラス基板に導電性酸化物膜層を形成した導電性酸化物窓5を配置する。配置された導電性酸化物窓5の導電性酸化物層側と遮蔽板との間で電気的接続を行うようにする。格子10を形成することにより多くの面積で電気的接続ができるために、マイクロ波の遮断が効果的に行えるものである。また、設置される導電性酸化物窓の強度も強化されるので安全性の向上が図れるものである。
【0026】
さらに、遮蔽板の一部に形成する導電性酸化物窓5の大きさを遮蔽板の面積の60%以下とすることで、全面を導電性酸化物窓にするよりも強度と安全性がよくなり、さらに導電性酸化物を形成するコストも安くできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明の電子レンジは、従来の電子レンジに比較し電子レンジ庫内の視認性が向上し庫内の調理物が確認しやすくなるとともに、それでいてガラスの損傷やマイクロ波の漏洩の虞も少なく安全性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における電子レンジの斜視図
【図2】同窓の部分断面を示す概略図
【図3】同実施の形態2における遮蔽板を示す概略図
【図4】同遮蔽板から導電性酸化物窓を外した所を示す概略図
【符号の説明】
【0029】
1 電子レンジ本体
2 ドア
3 操作部
4 遮蔽板
5 導電性酸化物窓
6 外側ガラス板
7 内側ガラス板
8 ガラス基材
9 導電性酸化物膜層
10 格子


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス板と機器本体に電気的に接続してなる金属製の遮蔽板とからなるドアを備え、前記ドアの遮蔽板はその一部に可視光領域において透明な導電性酸化物膜層を設けて構成した導電性酸化物窓を有するとともに、導電性酸化物膜層と遮蔽板を電気的に接続した電子レンジ。
【請求項2】
遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓が、設置される面の中央部に配置されることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ。
【請求項3】
遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓の大きさが、筐体の設置される面と相似系であることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ。
【請求項4】
遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓の形状が、横長の形状であることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ。
【請求項5】
透明な導電性酸化物を形成するためのガラス基板の厚みが0.3mm以上、5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ。
【請求項6】
遮蔽板は格子状に形成し、この格子状部分に導電性酸化物窓を配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の電子レンジ。
【請求項7】
遮蔽板の一部に形成する導電性酸化物窓の大きさは、遮蔽板の面積の60%以下とすることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ。
【請求項8】
遮蔽板の一部に設けられた導電性酸化物窓が、透明な耐熱性樹脂板に可視光領域において透明な導電性酸化物膜層を設けることで形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の電子レンジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−60014(P2008−60014A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238472(P2006−238472)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】