電子内視鏡及び電子内視鏡システム
【課題】被検体の表面に近接して観察を行うとき、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【解決手段】電子内視鏡に設けられた先端部16aは、先端部本体25、先端保護キャップ26、観察レンズ27、照明レンズ28a,28bを備える。先端保護キャップ26の先端面26cに青色光反射面32が形成されている。観察レンズ27、照明レンズ28a,28bは、先端保護キャップ26に形成された貫通孔26d〜26fから露呈する位置に取り付けられ、表面が青色光反射面32と同一面上に位置する。被検体の表面Hからの反射光は、青色光反射面32によって青色光が再度反射する。青色光反射面32で選択的に反射した青色光が被検体の表面Hを再び照射する。観察光学系36の観察範囲には、青色光を多く含んだ照明光が照射される。
【解決手段】電子内視鏡に設けられた先端部16aは、先端部本体25、先端保護キャップ26、観察レンズ27、照明レンズ28a,28bを備える。先端保護キャップ26の先端面26cに青色光反射面32が形成されている。観察レンズ27、照明レンズ28a,28bは、先端保護キャップ26に形成された貫通孔26d〜26fから露呈する位置に取り付けられ、表面が青色光反射面32と同一面上に位置する。被検体の表面Hからの反射光は、青色光反射面32によって青色光が再度反射する。青色光反射面32で選択的に反射した青色光が被検体の表面Hを再び照射する。観察光学系36の観察範囲には、青色光を多く含んだ照明光が照射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を観察する電子内視鏡及び電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、電子内視鏡を用いた診断や治療が数多く行われている。電子内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部の先端部に、被検体内の像光を取り込むための観察光学系と、観察光学系により取り込んだ像光が結像される撮像素子と、被検体内へ照明光を照射するための照明光学系とを備えている。
【0003】
従来より、観察光学系の焦点距離を可変させる機構を備えた電子内視鏡がある。このような電子内視鏡では、通常観察及び拡大観察の間で焦点距離を切り換えることができるため、先ず通常観察を行い、病変部などの異常部位が見つかったとき、拡大観察に切り換えて鮮明な観察画像を得ることができる。
【0004】
電子内視鏡で拡大観察を行う際、通常観察よりも観察光学系の被写界深度が狭くなる。よって、被検体の表面と観察光学系の先端との間隔(ワーキングディスタンスと称される。)を所定距離にしなければ被検体の表面にピントが合わない。被検体の表面にピントが合う距離にするために、挿入部を移動させて被検体に観察光学系を近づけたとき、照明光学系も被検体に近付くため、被検体の表面で反射した照明光が戻ってきて内視鏡先端部で再度反射し、この内視鏡先端部で反射した反射光が被検体の表面を再び照射する。
【0005】
内視鏡先端部の表面が一般的な黒色の場合、反射率が低く、内視鏡先端部で反射した反射光が被検体の表面を再び照射することがない。このため、観察光学系を被検体に近接して観察を行う場合、内視鏡先端部の反射率が低い電子内視鏡では、観察光学系の観察範囲に照明光学系の照明が届かない中抜け状態となることがある。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の電子内視鏡では、内視鏡の先端部にフードを装着し、このフードの内面を白色の反射面とすることで、反射率を高めている。これにより、観察光学系を被検体に近接させたとき、観察範囲が中抜け状態になることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−235789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療用の電子内視鏡では、拡大観察を行うとき、血管と周辺部位とを区別できるように観察したい場合がある。しかしながら、上記特許文献1記載の電子内視鏡を使用すると、血管と周辺部位とのコントラストが低下して観察が困難になる場合がある。血液成分であるヘモグロビンは青色光の吸収率が高く、赤色光の吸収率が低い。すなわち、青色光は表層で吸収されるが、赤色光は被検体の内部にまで深達する。上記特許文献1記載の電子内視鏡のように白色の反射面による反射光で被検体を再度照射し、光強度が大きくなった白色光には、青色光〜赤色光までの波長の光が満遍なく含まれているので、血管と周辺部位との観察に必要な青色光以外に、内部まで深達した赤色光が散乱して観察範囲内に混在する。これにより、血管と周辺部位とのコントラストが低下する。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、被検体の表面に近接して観察を行うとき、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることを可能とする電子内視鏡及び電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられ、被検体内の像光を取り込んで観察を行うための観察光学系と、前記観察光学系の焦点距離を通常観察及び拡大観察の間で可変させる焦点可変手段と、前記観察光学系により取り込まれる観察範囲の像光が結像される撮像素子と、前記観察範囲に向かって照明光を照射する照明光学系と、前記観察範囲に対面し、且つ前記観察光学系の周辺に設けられ、青色光を選択的に反射させる青色光反射面とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記青色光反射面は、400nm以上、550nm以下の波長の光については50%以上、700nm以上の波長の光については5%以下の反射率で反射することが好ましい。
【0012】
前記先端部は、先端部本体と、前記先端部本体の先端側に固着される先端保護キャップとを備え、前記青色光反射面は、前記先端保護キャップに形成されていることが好ましい。また、前記先端部の外周面に装着されるフードを備え、前記青色光反射面は、前記フードに形成されていることが好ましい。
【0013】
前記先端部は、外周面の一部を切り欠いた凹み部を有しており、前記観察光学系は、前記凹み部から露呈する位置に設けられ、前記挿入部の挿入方向と直交する側視方向からの像光を取り込む側視観察光学系であり、前記青色光反射面は、前記凹み部に設けられていることが好ましい。
【0014】
前記凹み部は、前記側視方向と直交する第1の凹み面と、前記外周面と前記第1の凹み面に困まれ、先端側に向かって傾斜する第2の凹み面とから形成され、前記観察光学系は、前記第1の凹み面から露呈する位置に設けられ、前記照明光学系は、前記第2の凹み面から露呈する位置に設けられ、前記青色光反射面は、前記第1の凹み面に形成されることが好ましい。
【0015】
本発明の電子内視鏡システムは、前記照明光学系に照明光を導くライトガイドが設けられた前記電子内視鏡と、光を発する光源と、前記光源からの光を集光して前記ライトガイドに入射させる集光手段と、前記観察光学系が通常観察可能な状態から、拡大観察可能な状態に切り換わったとき、前記光源から前記ライトガイドまでの光路上に位置し、前記ライトガイドに入射される光のうち、中央に位置する減光領域のみを部分的に減光し、前記減光領域の周辺に位置する透過領域では減光せずに光を透過させる部分減光手段とを備え、前記照明光学系は、前記ライトガイドへ入射される光強度の分布に応じて照明光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、観察範囲に対面し、且つ観察光学系の周辺に設けられた青色光反射面が、青色光を選択的に反射させるので、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子内視鏡システムの外観斜視図である。
【図2】電子内視鏡の先端部の構成を示す斜視図である。
【図3】観察光学系及び照明光学系に沿って切断した先端部の断面図である。
【図4】ヘモグロビンの吸光係数を示すグラフである。
【図5】電子内視鏡システムの電気的構成の概要を示すブロック図である。
【図6】電子内視鏡の使用時の状態を説明する説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示す挿入部先端部の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示す挿入部先端部の断面図である。
【図11】第3実施形態の電気的構成の概要を示すブロック図である。
【図12】部分減光板の平面図である。
【図13】光源部の構成を示す説明図である。
【図14】本発明の第4実施形態の構成を示す斜視図である。
【図15】図14に示す挿入部先端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、電子内視鏡システム10は、電子内視鏡11、プロセッサ装置12、光源装置13、送気・送水装置14などから構成されている。送気・送水装置14は、光源装置13に内蔵され、エアーの送気を行う周知の送気装置(ポンプなど)14aと、光源装置13の外部に設けられ、洗浄水を貯留する洗浄水タンク14bから構成されている。電子内視鏡11は、被検体内に挿入される挿入部16と、挿入部16の基端部分に連設された手元操作部17と、プロセッサ装置12及び光源装置13に接続されるコネクタ18と、手元操作部17とコネクタ18との間を繋ぐユニバーサルコード19とを有する。
【0019】
挿入部16は、その先端に設けられ、被検体内撮像用の撮像素子としてのCCD型イメージセンサ(図3参照。以下、CCDという)38等が内蔵された先端部16aと、先端部16aの基端に連設された湾曲自在な湾曲部16bと、湾曲部16bの基端に連設された可撓性を有する可撓管部16cとからなる。
【0020】
コネクタ18は複合タイプのコネクタであり、プロセッサ装置12、及び光源装置13、送気・送水装置14がそれぞれ接続される。手元操作部17には、湾曲部16bを上下左右に湾曲させるためのアングルノブ21や、送気・送水ノズル30(図2参照)からエアー、水を噴出させるための送気・送水ボタン22といった操作部材が設けられている。また、手元操作部17には、鉗子チャンネル(図示せず)に電気メス等の処置具を挿入するための鉗子入口23が設けられている。
【0021】
プロセッサ装置12は、光源装置13と電気的に接続され、電子内視鏡システム10の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置12は、ユニバーサルコード19や挿入部16内に挿通された伝送ケーブルを介して電子内視鏡11に給電を行い、後述するCCD38、の駆動を制御する。また、プロセッサ装置12は、伝送ケーブルを介してCCD38から出力された撮像信号を取得し、各種画像処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置12で生成された画像データは、プロセッサ装置12にケーブル接続されたモニタ24に観察画像として表示される。
【0022】
図2及び図3に示すように、先端部16aは、先端部本体25、この先端部本体25の先端側に固着される先端保護キャップ26、後述する観察光学系36を構成する観察レンズ27、照明光学系としての照明レンズ28a,28b、鉗子出口29、及び送気・送水ノズル30を備える。先端部本体25の後端は、湾曲部16bを構成する先端側の湾曲駒(図示せず)に連結されている。
【0023】
先端保護キャップ26は、先端部本体25の先端側を覆う先端板部26aと、先端部本体25の外周面を覆う円筒部26bとからなる。湾曲部16bの外周面を覆う外皮層31が先端部本体25まで延在し、外皮層31の先端と円筒部26bの後端とが突き合わされて端部同士が接着剤などにより固着されている。先端板部26aには、挿入部16の軸方向(挿入方向)と直交する平坦状であり、先端側に位置する先端面26cが形成されている。この先端面26cに後述する青色光反射面32が形成されている。先端板部26aには、貫通孔26d〜26g、及び鉗子出口29が形成されている。
【0024】
観察レンズ27は、挿入部16の挿入方向と平行な直視方向Fに沿って光軸が配されている。この観察レンズ27は、貫通孔26dから露呈する位置に取り付けられ、且つ光入射面となる表面が青色光反射面32と同一面上に位置し、側視方向Sからの像光を取り込む。
【0025】
照明レンズ28a,28bは、貫通孔26e,26fから露呈する位置に取り付けられ、且つ表面が青色光反射面32と同一面上に位置する。照明レンズ28a,28bの奥には、ライトガイド32a,32bの出射端が面している。照明レンズ28a,28bは、ライトガイド32a,32bによって導かれた照明光を観察光学系36が像光を取り込む観察範囲に向かって照射する。
【0026】
ライトガイド32a,32bは、多数の光ファイバー(例えば、石英からなる)を束ねており、外周面にチューブを被覆して形成されたものである。ライトガイド32a,32bは、先端部本体25に保持され、挿入部16、手元操作部17、ユニバーサルコード19、及びコネクタ18の内部を通って光源装置13からの照明光を照明レンズ28a,28bにそれぞれ導く。
【0027】
また、鉗子出口29は、鉗子管路(図示せず)を介して手元操作部17の鉗子入口23に連通している。鉗子入口23から挿入された各種処置具は、鉗子管路に導かれ、鉗子出口29から先端を突出して処置を行うことができる。送気・送水ノズル30は、貫通孔26gから露呈するように設けられ、送気・送水装置14から供給されたエアーや洗浄水を観察レンズ27に向けて噴射して、直視観察レンズ27に付着した汚れなどを洗い流すことができる。
【0028】
先端部16aには、撮像部35が組み込まれている。撮像部35は、観察光学系36、レンズ移動機構37、CCD38とを備える。観察光学系36は、観察レンズ27及びズームレンズ39を備える。
【0029】
CCD38は、観察レンズ27の光軸の延長上に位置している。ズームレンズ39は、観察レンズ27及びCCD38の間に位置し、観察レンズ27及びCCD38に対して光軸の位置を合わせて配されている。観察レンズ27からの入射光がズームレンズ39を経てCCD38の受光面(図示せず)に結像され、撮像信号に変換される。
【0030】
ズームレンズ39及びレンズ移動機構37は焦点可変手段を構成し、レンズ移動機構37がズームレンズ39を光軸方向に沿って進退移動させることにより、観察光学系36の焦点距離が可変する。このレンズ移動機構37は、ズームレンズ39を保持するレンズ保持部材としての移動筒41と、移動筒41をガイドするガイド部材としての固定筒42と、アクチュエータ43とからなる。固定筒42は、先端部本体25の内部に固定され、軸方向がズームレンズ39の光軸と平行に配されている。なお、固定筒42の後端部には、CCD38が固定されている。
【0031】
移動筒41の外周面は、固定筒42の内周面とスライド自在に嵌合する。これにより、ズームレンズ39を光軸方向にガイドする。移動筒41には、接続部44が一体に設けられている。この接続部44は、固定筒42に形成されたスリット45を通して固定筒42の外部に突出する。アクチュエータ43は、接続部44を介して移動筒41に接続されている。アクチュエータ43としては、例えばソレノイドが用いられる。アクチュエータ43の駆動によって、移動筒41とともにズームレンズ39を進退移動させることができる。
【0032】
レンズ移動機構37は、アクチュエータ43の駆動でズームレンズ39が進退移動することにより、通常観察と、通常観察よりも焦点距離が長い拡大観察との間で、観察光学系36の焦点距離を可変させることができる。以下では、通常観察時のズームレンズ39の位置を通常観察位置(図3の2点鎖線で示す位置)、拡大観察時のズームレンズ39の位置を拡大観察位置(図3の実線で示す位置)と称する。
【0033】
先端保護キャップ26は、青色光を選択的に反射する材料、例えば樹脂やゴムから形成されている。これにより、先端保護キャップ26の先端面26cには、青色光反射面32が形成されている。さらに、青色光反射面32は、観察レンズ27の入射面と同一面上にあるため、観察光学系36の観察範囲と対面する位置にある。よって、青色光反射面32は、観察レンズ27の周辺に設けられ、青色光を選択的に反射させることができる。具体的には、青色光反射面32は、青色光として400nm以上、550nm以下の波長の光については50%以上の反射率で反射し、一方、赤色光として700nm以上の波長の光については5%以下の反射率で反射する。
【0034】
図4に示すように、血液中のヘモグロビンは、照明光の波長によって吸光係数mMcm−1が変化する。なお、Hbは酸化ヘモグロビンの吸光係数を示し、HbO2は還元ヘモグロビンの吸光係数をそれぞれ示す。これらの吸光係数は、ヘモグロビンの光の吸収率の大きさ(吸光度)を示しており、上述した赤色光(700nm以上)では吸収率が低く、青色光(400nm以上、550nm以下)では吸収率が高いことが分かる。
【0035】
図5は、電子内視鏡システム10の電気的構成の概略を示す。電子内視鏡11には、撮像部35の他に、AFE51、撮像制御部52を備えている。CCD38は、上述したように受光面に結像された被検体内の像を光電変換して信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を撮像信号として出力する。出力された撮像信号はAFE51に送られる。AFE51は、AFE51は、相関二重サンプリング(CDS)回路、自動ゲイン調節(AGC)回路、A/D変換器など(いずれも図示は省略)から構成されている。CDSは、CCD38が出力する撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD38を駆動することによって生じるノイズを除去する。AGCは、CDSによってノイズが除去された撮像信号を増幅する。
【0036】
撮像制御部52は、電子内視鏡11とプロセッサ装置12とが接続されたとき、プロセッサ装置12内のコントローラ57に接続され、コントローラ57から指示がなされたときにCCD38に対して駆動信号を送る。CCD38は、撮像制御部52からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで撮像信号をAFE51に出力する。
【0037】
プロセッサ装置12は、デジタル信号処理回路(DSP)53、デジタル画像処理回路(DIP)54、表示制御回路55、VRAM56、コントローラ57、操作部58等を備える。
【0038】
コントローラ57は、プロセッサ装置12全体の動作を統括的に制御する。DSP53は、電子内視鏡11のAFE51から出力された撮像信号に対し、色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正等の各種信号処理を施し、画像データを生成する。DSP53で生成された画像データは、DIP54の作業メモリに入力される。また、DSP53は、例えば生成した画像データの各画素の輝度を平均した平均輝度値等、照明光量の自動制御(ALC制御)に必要なALC制御用データを生成し、コントローラ57に入力する。
【0039】
DIP54は、DSP53で生成された画像データに対して、電子変倍、色強調処理、エッジ強調処理等の各種画像処理を施す。DIP54で各種画像処理が施された画像データは、観察画像としてVRAM56に一時的に記憶された後、表示制御回路55に入力される。表示制御回路55は、VRAM56から観察画像を選択して取得し、モニタ24上に表示する。
【0040】
操作部58は、プロセッサ装置12の筐体に設けられる操作パネル、マウスやキーボード等の周知の入力デバイスからなる。コントローラ57は、操作部58や電子内視鏡11の手元操作部17からの操作信号に応じて、電子内視鏡システム10の各部を動作させる。
【0041】
光源装置13は、光源部61、及び光源制御部62などを備えている。光源部61は、光源63、ミラー64、集光レンズ65、光ファイバ66などを備えている。
【0042】
光源63としては、キセノン管などの白色光源からなる。ミラー64は、椀状に形成されたパラボラミラーであり、内周面に鏡面が形成されている。このミラー64は、内周面の中央付近に光源63が配置され、光源63が発する光を前方へ反射する。集光レンズ65は、光源63、及びミラー64の内周面と対面する位置にあり、光源63が発する光、及びミラー64が反射する光を集光して光ファイバ66に導く。光ファイバ66は、コネクタ18を介して電子内視鏡11のライトガイド32a,32bに接続される。集光レンズ65から光ファイバ66を経てライトガイド32a,32bへ光が入射される。
【0043】
光源63が発した光は、ライトガイド32a,32bに導かれ、照明レンズ28a,28bに入射する。そして、照明レンズ28a,28bにより照明光として被検体内に照射される。光源制御部62は、プロセッサ装置12のコントローラ57から入力される調節信号や同期信号にしたがって光源63の点灯/消灯のタイミングを調節する。
【0044】
レンズ移動機構37は、コントローラ57からズームレンズ39の移動指示がなされたときに、アクチュエータ43の駆動によりズームレンズ39が通常観察位置または拡大観察位置に移動する。
【0045】
上記構成の作用について、図6を参照して説明する。被検体内に挿入部16を挿入し、電子内視鏡11での観察を行う際、初期状態では、撮像部35が通常観察可能(ズームレンズ39が通常観察位置)な状態となっている。この状態で通常観察を行い、被検体内を撮像した観察画像がモニタ24上に表示される。
【0046】
さらに精細な観察画像として、血管と周辺部位とを区別した拡大観察を行いたい場合がある。術者は通常観察から拡大観察に切り換える操作を操作部58により行う。コントローラ57は、操作部58の操作に応じて、レンズ移動機構37を動作させてズームレンズ39を通常観察位置から拡大観察位置に移動させる。これにより、観察光学系36は拡大観察が可能な状態になる。図6に示すように、拡大観察を行うとき、観察光学系36のピントを被検体の表面Hに合わせるため、術者の操作により先端部16aが移動され、観察光学系36の入射面すなわち観察レンズ27の入射面が、被検体の表面Hと近接する位置になる。このとき、照明レンズ28a,28bから照射された照明光が被検体の表面Hで反射して戻ってくる。被検体の表面Hで反射した反射光の中には、観察レンズ27の周辺に戻ってくる光もある。観察レンズ27の周辺には青色光反射面32が形成され、且つ青色光反射面32は観察範囲と対面する位置にあるため、被検体の表面Hからの反射光は、青色光反射面32によって青色光が再度反射し、赤色光はほとんどが反射しない。この青色光反射面32で選択的に反射した青色光が被検体の表面Hを再び照射する。よって観察光学系36の観察範囲には、青色光を多く含んだ照明光が照射されるため、この観察範囲を撮像する撮像部35では、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【0047】
上記第1実施形態では、青色光を選択的に反射する材料から先端保護キャップ26を成形することによって、先端保護キャップ26の先端面26cに青色光反射面32を形成する構成としているが、これに限らず、先端保護キャップ26としては、一般的な材料で形成し、先端面に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして観察レンズ27の周辺に青色光反射面を配置するようにしてもよい。また、青色光反射面32としては、先端保護キャップ26の全面に形成してもよく、先端面26cのうち、観察レンズ27の周辺に位置する一部のみに形成していてもよい。
【0048】
上記第1実施形態では、先端部16aを構成する先端保護キャップ26に青色光反射面32を形成しているが、これに限らず、図7及び図8に示す第2実施形態のように、先端部70の外周面に装着するフード71に青色光反射面を形成するようにしてもよい。なお、図7及び図8においては、上記第1実施形態と同様の部品については、同符号を付して説明を省略する。
【0049】
この第2実施形態では、先端部70は、先端部本体25と、この先端部本体25の先端に固着される先端保護キャップ72を備える。先端保護キャップ72は、上記第1実施形態の先端保護キャップ26と同様に先端板部72a及び円筒部72bを有し、観察レンズ27、照明レンズ28a,28b、及び送気・送水ノズル30を露呈させる貫通孔72d〜72g、及び鉗子出口29が形成されている。この先端保護キャップ72は、例えば一般的な材料から成形され、先端面72cには青色光反射面を形成しなくてもよい。
【0050】
先端部70に装着されるフード71は、先端部70の外周面すなわち先端保護キャップ72の外周面73に嵌合し、且つ先端側が先端面72cよりも挿入方向(直視方向F)の先端側へ突出するように形成されている。このフード71は、内周面が観察レンズ27の表面から被検体側に向かって徐々に外側(観察レンズ27の光軸から離反する側)に傾斜するテーパー状になっており、この内周面に青色光反射面74が形成されている。このフード71は、上記第1実施形態の先端保護キャップ26と同様の青色光を選択的に反射する材料から形成され、青色光反射面74は、青色光を選択的に反射する。
【0051】
青色光反射面74は、先端面72cを囲む位置、すなわち観察レンズ27の周辺に配され、さらにテーパー状に形成されていることから被検体の表面と対面する。よって、被検体の表面Hからの反射光は、青色光反射面74によって青色光が選択的に反射し、被検体の表面Hを再び照射するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この第2実施形態においては、青色光を選択的に反射する材料からフード71を成形することによって、フード71の内周面に青色光反射面を形成する構成としているが、これに限らず、フード71としては、一般的な材料で形成し、内周面に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして青色光反射面を配設するようにしてもよい。
【0052】
上記第1及び第2実施形態においては、直視方向を観察するための観察光学系を備える電子内視鏡及び電子内視鏡システムに本発明を適用しているが、これに限るものではなく、以下で説明する本発明の第3実施形態では、図9〜図11に示すように、先端部82に側視方向を観察するための側視観察光学系83を備えた電子内視鏡81及び電子内視鏡システム80に適用する。なお、図9〜図11においては、上記第1実施形態と同様の部品については、同符号を付して説明を省略する。
【0053】
この第3実施形態では、先端部82は、先端部本体84と、この先端部本体84の先端側に固着される先端保護キャップ85とを備えている。先端保護キャップ85は、円柱形状の外周面86の一部を切り欠いた凹み部87が形成されている。凹み部87には、側視観察光学系83を構成する側視観察レンズ88と、側視照明光学系としての側視照明レンズ89と、鉗子出口90と、ウォータージェット噴射口91とが設けられている。側視観察レンズ88は、挿入部16の挿入方向と直交する側視方向Sに沿って光軸が配されている。
【0054】
凹み部87は、側視方向Sと直交する平面状の第1の凹み面92と、外周面86と第1の凹み面92に囲まれ、先端側に向かって傾斜する平面状の第2の凹み面93とから形成される。側視観察レンズ88は、第1の凹み面92に形成された貫通孔92aから露呈する位置に取り付けられており、且つ光入射面となる表面が第1の凹み面92と同一面上に位置し、側視方向Sからの像光を取り込む。
【0055】
側視照明レンズ89は、第2の凹み面93に形成された貫通孔93aから露呈する位置に取り付けられ、側視照明レンズ89の奥には、ライトガイド94の出射端が面している。側視照明レンズ89は、ライトガイド94によって導かれた照明光を側視観察光学系83が像光を取り込む観察範囲に向かって照射する。
【0056】
また、第2の凹み面93には、鉗子出口90及びウォータージェット噴射口91が設けられている。鉗子出口90は、上記第1実施形態の鉗子出口29と同様に鉗子管路(図示せず)を介して手元操作部17の鉗子入口23に連通している。
【0057】
ウォータージェット噴射口91は、挿入部16、手元操作部17及びユニバーサルコード19内に配設されたウォータージェット管路(図示せず)に連通している。ウォータージェット管路は、送液装置(図示せず)に接続される。ウォータージェット噴射口91は、第2の凹み面93と直交する方向に沿って形成されており、送液装置からウォータージェット管路へ送り込まれた液体を被検体内へ直接吹き付けることができる。
【0058】
ライトガイド94は、多数の光ファイバ(例えば、石英からなる)を束ねており、外周面にチューブを被覆して形成されたものである。ライトガイド94は、先端部本体84に保持され、上記第1実施形態のライトガイド32a,32bと同様に、光源装置13からの照明光を側視照明レンズ89に導く。
【0059】
図10に示すように、先端部16aには、撮像部95が組み込まれている。撮像部95は、側視観察光学系83、レンズ移動機構98、CCD99を備える。先端部本体84は、プリズム96、ズームレンズ97、レンズ移動機構98、CCD99などを保持する。
【0060】
側視観察光学系83は、側視観察レンズ88、プリズム96、ズームレンズ97から構成される。プリズム96は、45°直角二等辺三角形のプリズムであり、直角と対向する斜面に入射光を反射させるミラー96aが形成されている。このプリズム96では、側視観察レンズ88からの入射光はミラー96aで反射して出射面96bから出射する。
【0061】
CCD99は、プリズム96の出射面96b側に位置している。ズームレンズ97は、プリズム96の出射面96b側、且つプリズム96及びCCD99の間に位置する。側視観察レンズ88からの入射光がミラー96aで反射した反射光は、ズームレンズ97を経てCCD99の受光面(図示せず)に結像され、撮像信号に変換される。
【0062】
ズームレンズ97及びレンズ移動機構98は焦点可変手段を構成する。レンズ移動機構98は、上記第1実施形態のレンズ移動機構37と同様に、移動筒41、固定筒42、アクチュエータ43などからなる。このレンズ移動機構98は、上記第1実施形態のレンズ移動機構37と同様に、アクチュエータ43の駆動でズームレンズ97が進退移動することにより、通常観察と、通常観察よりも焦点距離が長い拡大観察との間で、側視観察光学系83の焦点距離を可変させることができる。
【0063】
先端部82では、側視観察レンズ88及び側視照明レンズ89は、互いに異なる面である第1の凹み面92及び第2の凹み面93から露呈するように設けられているため、側視照明レンズ89が照明光を照射する照明方向は、側視観察光学系83が像光を取り込む側視方向Sに対して交差する。
【0064】
先端保護キャップ85は、上記第1実施形態の先端保護キャップ26と同様に、青色光を選択的に反射する材料から形成されている。これにより、第1の凹み面92には、青色光反射面101が形成されている。さらに青色光反射面101は、側視観察レンズ88と同一面上に位置し、側視観察光学系83の観察範囲と対面する位置にある。よって、青色光反射面101は、側視観察レンズ88の周辺に設けられ、上記第1実施形態と同様に青色光を選択的に反射させる。
【0065】
図11は、第3実施形態を適用した電子内視鏡システム80の電気的構成の概略を示す。電子内視鏡システム80は、先端部82が設けられた電子内視鏡81、プロセッサ装置102、光源装置103からなる。電子内視鏡81には、撮像部95の他に、AFE51、撮像制御部52などを備えている。
【0066】
プロセッサ装置102は、デジタル信号処理回路(DSP)53、デジタル画像処理回路(DIP)54、表示制御回路55、VRAM56、コントローラ104、操作部58等を備え、上記第1実施形態と同様に、電子内視鏡11のAFE51から出力された撮像信号に対して各種信号処理を施し、画像データを生成し、また各種画像処理が施された画像データに基づく観察画像をモニタ24上に表示する。
【0067】
レンズ移動機構98は、電子内視鏡11とプロセッサ装置12とが接続されたとき、AFE51、撮像制御部52とともに、コントローラ104に接続される。レンズ移動機構98は、コントローラ104からズームレンズ97の移動指示がなされたときに、アクチュエータ43の駆動によりズームレンズ97が通常観察位置または拡大観察位置に移動する。
【0068】
光源装置13は、光源部105、及び光源制御部106などを備えている。光源部105は、光源107、ミラー108、集光レンズ109、光ファイバ110、部分減光部111などを備えている。
【0069】
光源107、ミラー108、集光レンズ109は、上記第1実施形態の光源63、ミラー64、集光レンズ65と同様であり、光源107が発する光、及びミラー108が反射する光を集光して光ファイバ110に導く。光ファイバ110は、コネクタ18を介して電子内視鏡11のライトガイド94に接続される。ライトガイド94と光ファイバ110とは、光軸の位置を合わせて接続され、集光レンズ109から光ファイバ110を経てライトガイド94へ光が入射される。
【0070】
光源107が発した光は、ライトガイド94に導かれ、側視照明レンズ89に入射する。そして、側視照明レンズ89により照明光として被検体内に照射される。側視照明レンズ89とライトガイド94とは、光軸の位置を合わせて取り付けられる。側視照明レンズ89は、ライトガイド94へ入射される光強度の分布に応じて照明光を照射する。光源制御部106は、プロセッサ装置102のコントローラ104から入力される調節信号や同期信号にしたがって光源107の点灯/消灯のタイミングを調節する。
【0071】
部分減光部111は、部分減光板112及びスライド機構113からなる。部分減光板112は、集光レンズ109と光ファイバ110との間に位置する。図12に示すように、部分減光板112は、円板状であり、中央部分に円形状の減光フィルタ112aが形成されている。この部分減光板112は、減光フィルタ112aの光透過率が低く、減光フィルタ112aの周辺から外側までの部分は光透過率が高くなっている。
【0072】
部分減光板112は、集光レンズ109から光ファイバ110に光が入射される光路上に位置し、且つ集光レンズ109の光軸L1上(図13参照)に減光フィルタ112aの中心位置を合わせる減光位置(図11及び図13の実線で示す位置)と、この減光位置すなわち光路上から退避する退避位置(図11及び図13の2点鎖線で示す位置)との間で移動自在に設けられている。
【0073】
スライド機構113は、部分減光板112の移動をガイドするガイド部材、及び部分減光板112を移動させるアクチュエータ等を備える。アクチュエータとしては、例えばソレノイドが用いられる。スライド機構113は、コントローラ104によって光源制御部106に指示がなされたとき、光源制御部106からの制御信号を受けたアクチュエータの駆動により部分減光板112を退避位置及び減光位置の間でスライド移動させる。
【0074】
コントローラ104は、側視観察光学系83の焦点距離が通常観察及び拡大観察の間で切り換わったとき、すなわち、ズームレンズ97が通常観察位置及び拡大観察位置の間で移動するとき、スライド機構113を動作させて部分減光板112を退避位置及び減光位置の間で移動させる。そして、ズームレンズ97が通常観察位置にあるとき、部分減光板112は退避位置にあり、ズームレンズ97が拡大観察位置にあるとき、部分減光板112は減光位置にある。
【0075】
図13に示すように、部分減光板112に形成された減光フィルタ112aは、部分減光板112が減光位置にあるとき、集光レンズ109から光ファイバ110に入射される光のうち減光領域A1に合わせて形成されている。減光領域A1は、集光レンズ109が集光する光のうち、光軸L1の近傍の光強度が大きいため、光軸L1を含む中央の円形状領域が減光領域A1として設定され、この減光領域A1の周辺に透過領域A2が設定されている。これにより、部分減光板112は、減光位置にあるとき、集光レンズ109から光ファイバ110に入射される光のうち中央に位置する減光領域A1のみを部分的に減光し、透過領域A2では減光せずに光を透過させる。
【0076】
上記構成の作用について説明する。被検体内に挿入部16を挿入し、電子内視鏡11での観察を行う際、初期状態では、撮像部95は通常観察可能(ズームレンズ97が通常観察位置)な状態となっている。このとき、光源部105では、部分減光板112は退避位置にある。この状態で通常観察を行い、被検体内を撮像した観察画像がモニタ24上に表示される。
【0077】
撮像部95を使用して通常観察を行っているときに、さらに精細な観察画像として、血管と周辺部位とを区別した拡大観察を行いたい場合、術者は通常観察から拡大観察に切り換える操作を操作部58により行う。撮像部95が拡大観察可能な状態になると、側視照明レンズ89から照射された照明光が被検体の表面で反射して戻ってくる。被検体の表面で反射した反射光の中には、側視観察レンズ88の周辺に戻ってくる光もある。この観察レンズ88の周辺には、上述したように青色光反射面101が形成されているため、被検体の表面からの反射光は、青色光反射面101によって青色光が選択的に再度反射し、青色光が被検体の表面Hを再び照射する。側視観察光学系83の観察範囲には、青色光を多く含んだ照明光が照射されるため、この観察範囲を撮像する撮像部95では、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【0078】
また、ズームレンズ97を通常観察位置から拡大観察位置に移動させるとき、コントローラ104は、光源制御部106を制御してスライド機構113を動作させ、部分減光板112を退避位置から減光位置に移動させる。これにより、光源部105では、集光レンズ109によって集光される光のうち、減光領域A1のみが部分減光されてライトガイド94へ入射される。側視照明レンズ89は、部分減光板112によって部分減光され、ライトガイド94に入射された光強度の分布に応じた照明光を側視観察光学系83の観察範囲へ照射する。
【0079】
側視照明レンズ89は、側視観察光学系83が像光を取り込む側視方向Sに対して交差する方向に照明を照射するため、観察範囲を確実に照明することができる。これにより、血管と周辺部位とのコントラストが大きく、さらに鮮明な観察画像を得ることができる。また、側視観察光学系83で拡大観察を行うとき、部分減光板112によって部分減光された照明光が照射されるため、側視照明レンズ89の光軸付近の光強度が下げられている。よって、側視観察光学系83で拡大観察を行うとき、被検体の表面に側視観察光学系83を近づけても反射光の増加を防ぎ、観察範囲内における輝度分布の偏りを抑制することができる。そして、輝度分布の偏りが抑制されているため、白とびなどが生じることを防いで鮮明な観察画像を得ることができる。
【0080】
なお、上記第3実施形態では、青色光を選択的に反射する材料から先端保護キャップ85を成形することによって、先端保護キャップ85の第1の凹み面92に青色光反射面101を形成する構成としているが、これに限らず、先端保護キャップ85としては、一般的な材料で形成し、第1の凹み面92に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして側視観察レンズ88の周辺に青色光反射面を配置するようにしてもよい。また、青色光反射面101としては、先端保護キャップ85の全面に形成してもよく、第1の凹み面92のうち、側視観察レンズ88の周辺に位置する一部のみに形成していてもよい。
【0081】
また、上記第3実施形態では、部分減光部111として、光透過率が低い減光フィルタ112aが形成された部分減光板112及び部分減光板112を移動させるスライド機構113からなる構成を用いているが、これに限らず、例えば、拡大観察時に光透過率が低い減光パターンが形成される液晶パネル及び液晶パネルを駆動制御するための液晶ドライバからなる部分減光部など、拡大観察時に減光領域のみを部分減光することができる構成であればよい。
【0082】
また、上記第3実施形態では、先端部82を構成する先端保護キャップ85に青色光反射面32を形成しているが、これに限らず、図13及び図14に示す第4実施形態のように、先端部120の外周面に装着するフード121に青色光反射面を形成するようにしてもよい。なお、図13及び図14においては、上記第3実施形態と同様の部品については、同符号を付して説明を省略する。
【0083】
この第4実施形態では、先端部120は、先端部本体84と、この先端部本体84の先端に固着される先端保護キャップ122を備える。先端保護キャップ122は、上記第1実施形態の先端保護キャップ85と同様に外周面123の一部を切り欠いた凹み部124が形成されている。凹み部124は、側視方向Sと直交する平面状の第1の凹み面125と、外周面123と第1の凹み面125に囲まれ、先端側に向かって傾斜する平面状の第2の凹み面126とから形成される。側視観察レンズ88は、第1の凹み面125に形成された貫通孔125aから露呈する位置に取り付けられており、側視方向Sからの像光を取り込む。側視照明レンズ89は、第2の凹み面126に形成された貫通孔126aから露呈する位置に取り付けられ、ライトガイド94によって導かれた照明光を側視観察光学系83が像光を取り込む観察範囲に向かって照射する。先端保護キャップ122は、例えば一般的な材料から成形され、第1の凹み面125には青色光反射面を形成しなくてもよい。
【0084】
先端部120に装着されるフード121は、凹み部124を露呈させる開口部121aが形成されており、先端部120の外周面すなわち先端保護キャップ先端保護キャップ122の外周面123に嵌合する。このフード121は、第1の凹み面125に対して開口部121aの端面が側視方向Sの先端側へ突出するように形成されている。フード121の内周面は、側視観察レンズ88の表面から被検体側に向かって徐々に外側(側視観察レンズ88の光軸から離反する側)に傾斜するテーパー状になっており、この内周面に青色光反射面127が形成されている。このフード121は、上記第1,3実施形態の先端保護キャップ26、第2実施形態のフード71と同様の青色光を選択的に反射する材料から形成され、青色光反射面127は、青色光を選択的に反射する。
【0085】
青色光反射面127は、第1の凹み面125を囲む位置、すなわち側視観察レンズ88の周辺に配され、さらにテーパー状に形成されていることから被検体の表面と対面する。よって、被検体の表面からの反射光は、青色光反射面127によって青色光が選択的に反射し、被検体の表面Hを再び照射するので、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、フード121としては、一般的な材料で形成し、内周面に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして側視観察レンズ88の周辺に青色光反射面を配置するようにしてもよい。
【0086】
上記各実施形態では、側視観察光学系及び直視観察光学系のいずれか一方のみを備えた先端部の構成を示しているが、本発明はこれに限るものではなく、側視観察光学系及び直視観察光学系の両方を備える構成でもよく、この場合、例えば、側視観察光学系及び直視観察光学系に入射される光のいずれか一方を遮光し、他方を透過させる切り換え手段を備え、側視方向及び直視方向の観察のうち、いずれか一方を選択的に行う構成にしてもよい。
【0087】
なお、上記各実施形態では、レンズ保持部材、ガイド部材、アクチュエータを備えるレンズ移動機構を備えているが、これに限らず、例えば回転駆動を直進駆動に変換してズームレンズを進退させるカム部材、カム部材を回転駆動する駆動源としてのステッピングモータなどを備えた構成でもよい。また、上記各実施形態においては、レンズ移動機構のアクチュエータとしてソレノイドを用いているが、これに限らず、例えば圧電素子を用いた圧電アクチュエータなど、ズームレンズを進退移動させることが可能なアクチュエータであればよい。
【0088】
上記各実施形態では、焦点可変手段としてズームレンズとレンズ移動機構からなる構成を用いているが、これに限らず、側視観察光学系の焦点距離を通常観察及び拡大観察の間で可変させる構成であればよく、例えばCCDを光軸方向に移動させて側視観察光学系の焦点距離を可変させる構成を用いてもよい。また、上記各実施形態では、側視観察光学系又は直視観察光学系で取り込んだ被検体内の像光を撮像する撮像素子としてCCDを用いているが、CCDに限らず、CMOSでもよい。
【符号の説明】
【0089】
10,80 電子内視鏡システム
11,81 電子内視鏡
16 挿入部
16a,70,82,120 先端部
27,88 観察レンズ
28a,28b,89 照明レンズ
32,74,101,127 青色光反射面
36,83 観察光学系
37,98 レンズ移動機構
39,97 ズームレンズ
38,99 CCD
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を観察する電子内視鏡及び電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、電子内視鏡を用いた診断や治療が数多く行われている。電子内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部の先端部に、被検体内の像光を取り込むための観察光学系と、観察光学系により取り込んだ像光が結像される撮像素子と、被検体内へ照明光を照射するための照明光学系とを備えている。
【0003】
従来より、観察光学系の焦点距離を可変させる機構を備えた電子内視鏡がある。このような電子内視鏡では、通常観察及び拡大観察の間で焦点距離を切り換えることができるため、先ず通常観察を行い、病変部などの異常部位が見つかったとき、拡大観察に切り換えて鮮明な観察画像を得ることができる。
【0004】
電子内視鏡で拡大観察を行う際、通常観察よりも観察光学系の被写界深度が狭くなる。よって、被検体の表面と観察光学系の先端との間隔(ワーキングディスタンスと称される。)を所定距離にしなければ被検体の表面にピントが合わない。被検体の表面にピントが合う距離にするために、挿入部を移動させて被検体に観察光学系を近づけたとき、照明光学系も被検体に近付くため、被検体の表面で反射した照明光が戻ってきて内視鏡先端部で再度反射し、この内視鏡先端部で反射した反射光が被検体の表面を再び照射する。
【0005】
内視鏡先端部の表面が一般的な黒色の場合、反射率が低く、内視鏡先端部で反射した反射光が被検体の表面を再び照射することがない。このため、観察光学系を被検体に近接して観察を行う場合、内視鏡先端部の反射率が低い電子内視鏡では、観察光学系の観察範囲に照明光学系の照明が届かない中抜け状態となることがある。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の電子内視鏡では、内視鏡の先端部にフードを装着し、このフードの内面を白色の反射面とすることで、反射率を高めている。これにより、観察光学系を被検体に近接させたとき、観察範囲が中抜け状態になることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−235789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療用の電子内視鏡では、拡大観察を行うとき、血管と周辺部位とを区別できるように観察したい場合がある。しかしながら、上記特許文献1記載の電子内視鏡を使用すると、血管と周辺部位とのコントラストが低下して観察が困難になる場合がある。血液成分であるヘモグロビンは青色光の吸収率が高く、赤色光の吸収率が低い。すなわち、青色光は表層で吸収されるが、赤色光は被検体の内部にまで深達する。上記特許文献1記載の電子内視鏡のように白色の反射面による反射光で被検体を再度照射し、光強度が大きくなった白色光には、青色光〜赤色光までの波長の光が満遍なく含まれているので、血管と周辺部位との観察に必要な青色光以外に、内部まで深達した赤色光が散乱して観察範囲内に混在する。これにより、血管と周辺部位とのコントラストが低下する。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、被検体の表面に近接して観察を行うとき、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることを可能とする電子内視鏡及び電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられ、被検体内の像光を取り込んで観察を行うための観察光学系と、前記観察光学系の焦点距離を通常観察及び拡大観察の間で可変させる焦点可変手段と、前記観察光学系により取り込まれる観察範囲の像光が結像される撮像素子と、前記観察範囲に向かって照明光を照射する照明光学系と、前記観察範囲に対面し、且つ前記観察光学系の周辺に設けられ、青色光を選択的に反射させる青色光反射面とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記青色光反射面は、400nm以上、550nm以下の波長の光については50%以上、700nm以上の波長の光については5%以下の反射率で反射することが好ましい。
【0012】
前記先端部は、先端部本体と、前記先端部本体の先端側に固着される先端保護キャップとを備え、前記青色光反射面は、前記先端保護キャップに形成されていることが好ましい。また、前記先端部の外周面に装着されるフードを備え、前記青色光反射面は、前記フードに形成されていることが好ましい。
【0013】
前記先端部は、外周面の一部を切り欠いた凹み部を有しており、前記観察光学系は、前記凹み部から露呈する位置に設けられ、前記挿入部の挿入方向と直交する側視方向からの像光を取り込む側視観察光学系であり、前記青色光反射面は、前記凹み部に設けられていることが好ましい。
【0014】
前記凹み部は、前記側視方向と直交する第1の凹み面と、前記外周面と前記第1の凹み面に困まれ、先端側に向かって傾斜する第2の凹み面とから形成され、前記観察光学系は、前記第1の凹み面から露呈する位置に設けられ、前記照明光学系は、前記第2の凹み面から露呈する位置に設けられ、前記青色光反射面は、前記第1の凹み面に形成されることが好ましい。
【0015】
本発明の電子内視鏡システムは、前記照明光学系に照明光を導くライトガイドが設けられた前記電子内視鏡と、光を発する光源と、前記光源からの光を集光して前記ライトガイドに入射させる集光手段と、前記観察光学系が通常観察可能な状態から、拡大観察可能な状態に切り換わったとき、前記光源から前記ライトガイドまでの光路上に位置し、前記ライトガイドに入射される光のうち、中央に位置する減光領域のみを部分的に減光し、前記減光領域の周辺に位置する透過領域では減光せずに光を透過させる部分減光手段とを備え、前記照明光学系は、前記ライトガイドへ入射される光強度の分布に応じて照明光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、観察範囲に対面し、且つ観察光学系の周辺に設けられた青色光反射面が、青色光を選択的に反射させるので、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子内視鏡システムの外観斜視図である。
【図2】電子内視鏡の先端部の構成を示す斜視図である。
【図3】観察光学系及び照明光学系に沿って切断した先端部の断面図である。
【図4】ヘモグロビンの吸光係数を示すグラフである。
【図5】電子内視鏡システムの電気的構成の概要を示すブロック図である。
【図6】電子内視鏡の使用時の状態を説明する説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示す挿入部先端部の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示す挿入部先端部の断面図である。
【図11】第3実施形態の電気的構成の概要を示すブロック図である。
【図12】部分減光板の平面図である。
【図13】光源部の構成を示す説明図である。
【図14】本発明の第4実施形態の構成を示す斜視図である。
【図15】図14に示す挿入部先端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、電子内視鏡システム10は、電子内視鏡11、プロセッサ装置12、光源装置13、送気・送水装置14などから構成されている。送気・送水装置14は、光源装置13に内蔵され、エアーの送気を行う周知の送気装置(ポンプなど)14aと、光源装置13の外部に設けられ、洗浄水を貯留する洗浄水タンク14bから構成されている。電子内視鏡11は、被検体内に挿入される挿入部16と、挿入部16の基端部分に連設された手元操作部17と、プロセッサ装置12及び光源装置13に接続されるコネクタ18と、手元操作部17とコネクタ18との間を繋ぐユニバーサルコード19とを有する。
【0019】
挿入部16は、その先端に設けられ、被検体内撮像用の撮像素子としてのCCD型イメージセンサ(図3参照。以下、CCDという)38等が内蔵された先端部16aと、先端部16aの基端に連設された湾曲自在な湾曲部16bと、湾曲部16bの基端に連設された可撓性を有する可撓管部16cとからなる。
【0020】
コネクタ18は複合タイプのコネクタであり、プロセッサ装置12、及び光源装置13、送気・送水装置14がそれぞれ接続される。手元操作部17には、湾曲部16bを上下左右に湾曲させるためのアングルノブ21や、送気・送水ノズル30(図2参照)からエアー、水を噴出させるための送気・送水ボタン22といった操作部材が設けられている。また、手元操作部17には、鉗子チャンネル(図示せず)に電気メス等の処置具を挿入するための鉗子入口23が設けられている。
【0021】
プロセッサ装置12は、光源装置13と電気的に接続され、電子内視鏡システム10の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置12は、ユニバーサルコード19や挿入部16内に挿通された伝送ケーブルを介して電子内視鏡11に給電を行い、後述するCCD38、の駆動を制御する。また、プロセッサ装置12は、伝送ケーブルを介してCCD38から出力された撮像信号を取得し、各種画像処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置12で生成された画像データは、プロセッサ装置12にケーブル接続されたモニタ24に観察画像として表示される。
【0022】
図2及び図3に示すように、先端部16aは、先端部本体25、この先端部本体25の先端側に固着される先端保護キャップ26、後述する観察光学系36を構成する観察レンズ27、照明光学系としての照明レンズ28a,28b、鉗子出口29、及び送気・送水ノズル30を備える。先端部本体25の後端は、湾曲部16bを構成する先端側の湾曲駒(図示せず)に連結されている。
【0023】
先端保護キャップ26は、先端部本体25の先端側を覆う先端板部26aと、先端部本体25の外周面を覆う円筒部26bとからなる。湾曲部16bの外周面を覆う外皮層31が先端部本体25まで延在し、外皮層31の先端と円筒部26bの後端とが突き合わされて端部同士が接着剤などにより固着されている。先端板部26aには、挿入部16の軸方向(挿入方向)と直交する平坦状であり、先端側に位置する先端面26cが形成されている。この先端面26cに後述する青色光反射面32が形成されている。先端板部26aには、貫通孔26d〜26g、及び鉗子出口29が形成されている。
【0024】
観察レンズ27は、挿入部16の挿入方向と平行な直視方向Fに沿って光軸が配されている。この観察レンズ27は、貫通孔26dから露呈する位置に取り付けられ、且つ光入射面となる表面が青色光反射面32と同一面上に位置し、側視方向Sからの像光を取り込む。
【0025】
照明レンズ28a,28bは、貫通孔26e,26fから露呈する位置に取り付けられ、且つ表面が青色光反射面32と同一面上に位置する。照明レンズ28a,28bの奥には、ライトガイド32a,32bの出射端が面している。照明レンズ28a,28bは、ライトガイド32a,32bによって導かれた照明光を観察光学系36が像光を取り込む観察範囲に向かって照射する。
【0026】
ライトガイド32a,32bは、多数の光ファイバー(例えば、石英からなる)を束ねており、外周面にチューブを被覆して形成されたものである。ライトガイド32a,32bは、先端部本体25に保持され、挿入部16、手元操作部17、ユニバーサルコード19、及びコネクタ18の内部を通って光源装置13からの照明光を照明レンズ28a,28bにそれぞれ導く。
【0027】
また、鉗子出口29は、鉗子管路(図示せず)を介して手元操作部17の鉗子入口23に連通している。鉗子入口23から挿入された各種処置具は、鉗子管路に導かれ、鉗子出口29から先端を突出して処置を行うことができる。送気・送水ノズル30は、貫通孔26gから露呈するように設けられ、送気・送水装置14から供給されたエアーや洗浄水を観察レンズ27に向けて噴射して、直視観察レンズ27に付着した汚れなどを洗い流すことができる。
【0028】
先端部16aには、撮像部35が組み込まれている。撮像部35は、観察光学系36、レンズ移動機構37、CCD38とを備える。観察光学系36は、観察レンズ27及びズームレンズ39を備える。
【0029】
CCD38は、観察レンズ27の光軸の延長上に位置している。ズームレンズ39は、観察レンズ27及びCCD38の間に位置し、観察レンズ27及びCCD38に対して光軸の位置を合わせて配されている。観察レンズ27からの入射光がズームレンズ39を経てCCD38の受光面(図示せず)に結像され、撮像信号に変換される。
【0030】
ズームレンズ39及びレンズ移動機構37は焦点可変手段を構成し、レンズ移動機構37がズームレンズ39を光軸方向に沿って進退移動させることにより、観察光学系36の焦点距離が可変する。このレンズ移動機構37は、ズームレンズ39を保持するレンズ保持部材としての移動筒41と、移動筒41をガイドするガイド部材としての固定筒42と、アクチュエータ43とからなる。固定筒42は、先端部本体25の内部に固定され、軸方向がズームレンズ39の光軸と平行に配されている。なお、固定筒42の後端部には、CCD38が固定されている。
【0031】
移動筒41の外周面は、固定筒42の内周面とスライド自在に嵌合する。これにより、ズームレンズ39を光軸方向にガイドする。移動筒41には、接続部44が一体に設けられている。この接続部44は、固定筒42に形成されたスリット45を通して固定筒42の外部に突出する。アクチュエータ43は、接続部44を介して移動筒41に接続されている。アクチュエータ43としては、例えばソレノイドが用いられる。アクチュエータ43の駆動によって、移動筒41とともにズームレンズ39を進退移動させることができる。
【0032】
レンズ移動機構37は、アクチュエータ43の駆動でズームレンズ39が進退移動することにより、通常観察と、通常観察よりも焦点距離が長い拡大観察との間で、観察光学系36の焦点距離を可変させることができる。以下では、通常観察時のズームレンズ39の位置を通常観察位置(図3の2点鎖線で示す位置)、拡大観察時のズームレンズ39の位置を拡大観察位置(図3の実線で示す位置)と称する。
【0033】
先端保護キャップ26は、青色光を選択的に反射する材料、例えば樹脂やゴムから形成されている。これにより、先端保護キャップ26の先端面26cには、青色光反射面32が形成されている。さらに、青色光反射面32は、観察レンズ27の入射面と同一面上にあるため、観察光学系36の観察範囲と対面する位置にある。よって、青色光反射面32は、観察レンズ27の周辺に設けられ、青色光を選択的に反射させることができる。具体的には、青色光反射面32は、青色光として400nm以上、550nm以下の波長の光については50%以上の反射率で反射し、一方、赤色光として700nm以上の波長の光については5%以下の反射率で反射する。
【0034】
図4に示すように、血液中のヘモグロビンは、照明光の波長によって吸光係数mMcm−1が変化する。なお、Hbは酸化ヘモグロビンの吸光係数を示し、HbO2は還元ヘモグロビンの吸光係数をそれぞれ示す。これらの吸光係数は、ヘモグロビンの光の吸収率の大きさ(吸光度)を示しており、上述した赤色光(700nm以上)では吸収率が低く、青色光(400nm以上、550nm以下)では吸収率が高いことが分かる。
【0035】
図5は、電子内視鏡システム10の電気的構成の概略を示す。電子内視鏡11には、撮像部35の他に、AFE51、撮像制御部52を備えている。CCD38は、上述したように受光面に結像された被検体内の像を光電変換して信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を撮像信号として出力する。出力された撮像信号はAFE51に送られる。AFE51は、AFE51は、相関二重サンプリング(CDS)回路、自動ゲイン調節(AGC)回路、A/D変換器など(いずれも図示は省略)から構成されている。CDSは、CCD38が出力する撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD38を駆動することによって生じるノイズを除去する。AGCは、CDSによってノイズが除去された撮像信号を増幅する。
【0036】
撮像制御部52は、電子内視鏡11とプロセッサ装置12とが接続されたとき、プロセッサ装置12内のコントローラ57に接続され、コントローラ57から指示がなされたときにCCD38に対して駆動信号を送る。CCD38は、撮像制御部52からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで撮像信号をAFE51に出力する。
【0037】
プロセッサ装置12は、デジタル信号処理回路(DSP)53、デジタル画像処理回路(DIP)54、表示制御回路55、VRAM56、コントローラ57、操作部58等を備える。
【0038】
コントローラ57は、プロセッサ装置12全体の動作を統括的に制御する。DSP53は、電子内視鏡11のAFE51から出力された撮像信号に対し、色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正等の各種信号処理を施し、画像データを生成する。DSP53で生成された画像データは、DIP54の作業メモリに入力される。また、DSP53は、例えば生成した画像データの各画素の輝度を平均した平均輝度値等、照明光量の自動制御(ALC制御)に必要なALC制御用データを生成し、コントローラ57に入力する。
【0039】
DIP54は、DSP53で生成された画像データに対して、電子変倍、色強調処理、エッジ強調処理等の各種画像処理を施す。DIP54で各種画像処理が施された画像データは、観察画像としてVRAM56に一時的に記憶された後、表示制御回路55に入力される。表示制御回路55は、VRAM56から観察画像を選択して取得し、モニタ24上に表示する。
【0040】
操作部58は、プロセッサ装置12の筐体に設けられる操作パネル、マウスやキーボード等の周知の入力デバイスからなる。コントローラ57は、操作部58や電子内視鏡11の手元操作部17からの操作信号に応じて、電子内視鏡システム10の各部を動作させる。
【0041】
光源装置13は、光源部61、及び光源制御部62などを備えている。光源部61は、光源63、ミラー64、集光レンズ65、光ファイバ66などを備えている。
【0042】
光源63としては、キセノン管などの白色光源からなる。ミラー64は、椀状に形成されたパラボラミラーであり、内周面に鏡面が形成されている。このミラー64は、内周面の中央付近に光源63が配置され、光源63が発する光を前方へ反射する。集光レンズ65は、光源63、及びミラー64の内周面と対面する位置にあり、光源63が発する光、及びミラー64が反射する光を集光して光ファイバ66に導く。光ファイバ66は、コネクタ18を介して電子内視鏡11のライトガイド32a,32bに接続される。集光レンズ65から光ファイバ66を経てライトガイド32a,32bへ光が入射される。
【0043】
光源63が発した光は、ライトガイド32a,32bに導かれ、照明レンズ28a,28bに入射する。そして、照明レンズ28a,28bにより照明光として被検体内に照射される。光源制御部62は、プロセッサ装置12のコントローラ57から入力される調節信号や同期信号にしたがって光源63の点灯/消灯のタイミングを調節する。
【0044】
レンズ移動機構37は、コントローラ57からズームレンズ39の移動指示がなされたときに、アクチュエータ43の駆動によりズームレンズ39が通常観察位置または拡大観察位置に移動する。
【0045】
上記構成の作用について、図6を参照して説明する。被検体内に挿入部16を挿入し、電子内視鏡11での観察を行う際、初期状態では、撮像部35が通常観察可能(ズームレンズ39が通常観察位置)な状態となっている。この状態で通常観察を行い、被検体内を撮像した観察画像がモニタ24上に表示される。
【0046】
さらに精細な観察画像として、血管と周辺部位とを区別した拡大観察を行いたい場合がある。術者は通常観察から拡大観察に切り換える操作を操作部58により行う。コントローラ57は、操作部58の操作に応じて、レンズ移動機構37を動作させてズームレンズ39を通常観察位置から拡大観察位置に移動させる。これにより、観察光学系36は拡大観察が可能な状態になる。図6に示すように、拡大観察を行うとき、観察光学系36のピントを被検体の表面Hに合わせるため、術者の操作により先端部16aが移動され、観察光学系36の入射面すなわち観察レンズ27の入射面が、被検体の表面Hと近接する位置になる。このとき、照明レンズ28a,28bから照射された照明光が被検体の表面Hで反射して戻ってくる。被検体の表面Hで反射した反射光の中には、観察レンズ27の周辺に戻ってくる光もある。観察レンズ27の周辺には青色光反射面32が形成され、且つ青色光反射面32は観察範囲と対面する位置にあるため、被検体の表面Hからの反射光は、青色光反射面32によって青色光が再度反射し、赤色光はほとんどが反射しない。この青色光反射面32で選択的に反射した青色光が被検体の表面Hを再び照射する。よって観察光学系36の観察範囲には、青色光を多く含んだ照明光が照射されるため、この観察範囲を撮像する撮像部35では、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【0047】
上記第1実施形態では、青色光を選択的に反射する材料から先端保護キャップ26を成形することによって、先端保護キャップ26の先端面26cに青色光反射面32を形成する構成としているが、これに限らず、先端保護キャップ26としては、一般的な材料で形成し、先端面に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして観察レンズ27の周辺に青色光反射面を配置するようにしてもよい。また、青色光反射面32としては、先端保護キャップ26の全面に形成してもよく、先端面26cのうち、観察レンズ27の周辺に位置する一部のみに形成していてもよい。
【0048】
上記第1実施形態では、先端部16aを構成する先端保護キャップ26に青色光反射面32を形成しているが、これに限らず、図7及び図8に示す第2実施形態のように、先端部70の外周面に装着するフード71に青色光反射面を形成するようにしてもよい。なお、図7及び図8においては、上記第1実施形態と同様の部品については、同符号を付して説明を省略する。
【0049】
この第2実施形態では、先端部70は、先端部本体25と、この先端部本体25の先端に固着される先端保護キャップ72を備える。先端保護キャップ72は、上記第1実施形態の先端保護キャップ26と同様に先端板部72a及び円筒部72bを有し、観察レンズ27、照明レンズ28a,28b、及び送気・送水ノズル30を露呈させる貫通孔72d〜72g、及び鉗子出口29が形成されている。この先端保護キャップ72は、例えば一般的な材料から成形され、先端面72cには青色光反射面を形成しなくてもよい。
【0050】
先端部70に装着されるフード71は、先端部70の外周面すなわち先端保護キャップ72の外周面73に嵌合し、且つ先端側が先端面72cよりも挿入方向(直視方向F)の先端側へ突出するように形成されている。このフード71は、内周面が観察レンズ27の表面から被検体側に向かって徐々に外側(観察レンズ27の光軸から離反する側)に傾斜するテーパー状になっており、この内周面に青色光反射面74が形成されている。このフード71は、上記第1実施形態の先端保護キャップ26と同様の青色光を選択的に反射する材料から形成され、青色光反射面74は、青色光を選択的に反射する。
【0051】
青色光反射面74は、先端面72cを囲む位置、すなわち観察レンズ27の周辺に配され、さらにテーパー状に形成されていることから被検体の表面と対面する。よって、被検体の表面Hからの反射光は、青色光反射面74によって青色光が選択的に反射し、被検体の表面Hを再び照射するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この第2実施形態においては、青色光を選択的に反射する材料からフード71を成形することによって、フード71の内周面に青色光反射面を形成する構成としているが、これに限らず、フード71としては、一般的な材料で形成し、内周面に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして青色光反射面を配設するようにしてもよい。
【0052】
上記第1及び第2実施形態においては、直視方向を観察するための観察光学系を備える電子内視鏡及び電子内視鏡システムに本発明を適用しているが、これに限るものではなく、以下で説明する本発明の第3実施形態では、図9〜図11に示すように、先端部82に側視方向を観察するための側視観察光学系83を備えた電子内視鏡81及び電子内視鏡システム80に適用する。なお、図9〜図11においては、上記第1実施形態と同様の部品については、同符号を付して説明を省略する。
【0053】
この第3実施形態では、先端部82は、先端部本体84と、この先端部本体84の先端側に固着される先端保護キャップ85とを備えている。先端保護キャップ85は、円柱形状の外周面86の一部を切り欠いた凹み部87が形成されている。凹み部87には、側視観察光学系83を構成する側視観察レンズ88と、側視照明光学系としての側視照明レンズ89と、鉗子出口90と、ウォータージェット噴射口91とが設けられている。側視観察レンズ88は、挿入部16の挿入方向と直交する側視方向Sに沿って光軸が配されている。
【0054】
凹み部87は、側視方向Sと直交する平面状の第1の凹み面92と、外周面86と第1の凹み面92に囲まれ、先端側に向かって傾斜する平面状の第2の凹み面93とから形成される。側視観察レンズ88は、第1の凹み面92に形成された貫通孔92aから露呈する位置に取り付けられており、且つ光入射面となる表面が第1の凹み面92と同一面上に位置し、側視方向Sからの像光を取り込む。
【0055】
側視照明レンズ89は、第2の凹み面93に形成された貫通孔93aから露呈する位置に取り付けられ、側視照明レンズ89の奥には、ライトガイド94の出射端が面している。側視照明レンズ89は、ライトガイド94によって導かれた照明光を側視観察光学系83が像光を取り込む観察範囲に向かって照射する。
【0056】
また、第2の凹み面93には、鉗子出口90及びウォータージェット噴射口91が設けられている。鉗子出口90は、上記第1実施形態の鉗子出口29と同様に鉗子管路(図示せず)を介して手元操作部17の鉗子入口23に連通している。
【0057】
ウォータージェット噴射口91は、挿入部16、手元操作部17及びユニバーサルコード19内に配設されたウォータージェット管路(図示せず)に連通している。ウォータージェット管路は、送液装置(図示せず)に接続される。ウォータージェット噴射口91は、第2の凹み面93と直交する方向に沿って形成されており、送液装置からウォータージェット管路へ送り込まれた液体を被検体内へ直接吹き付けることができる。
【0058】
ライトガイド94は、多数の光ファイバ(例えば、石英からなる)を束ねており、外周面にチューブを被覆して形成されたものである。ライトガイド94は、先端部本体84に保持され、上記第1実施形態のライトガイド32a,32bと同様に、光源装置13からの照明光を側視照明レンズ89に導く。
【0059】
図10に示すように、先端部16aには、撮像部95が組み込まれている。撮像部95は、側視観察光学系83、レンズ移動機構98、CCD99を備える。先端部本体84は、プリズム96、ズームレンズ97、レンズ移動機構98、CCD99などを保持する。
【0060】
側視観察光学系83は、側視観察レンズ88、プリズム96、ズームレンズ97から構成される。プリズム96は、45°直角二等辺三角形のプリズムであり、直角と対向する斜面に入射光を反射させるミラー96aが形成されている。このプリズム96では、側視観察レンズ88からの入射光はミラー96aで反射して出射面96bから出射する。
【0061】
CCD99は、プリズム96の出射面96b側に位置している。ズームレンズ97は、プリズム96の出射面96b側、且つプリズム96及びCCD99の間に位置する。側視観察レンズ88からの入射光がミラー96aで反射した反射光は、ズームレンズ97を経てCCD99の受光面(図示せず)に結像され、撮像信号に変換される。
【0062】
ズームレンズ97及びレンズ移動機構98は焦点可変手段を構成する。レンズ移動機構98は、上記第1実施形態のレンズ移動機構37と同様に、移動筒41、固定筒42、アクチュエータ43などからなる。このレンズ移動機構98は、上記第1実施形態のレンズ移動機構37と同様に、アクチュエータ43の駆動でズームレンズ97が進退移動することにより、通常観察と、通常観察よりも焦点距離が長い拡大観察との間で、側視観察光学系83の焦点距離を可変させることができる。
【0063】
先端部82では、側視観察レンズ88及び側視照明レンズ89は、互いに異なる面である第1の凹み面92及び第2の凹み面93から露呈するように設けられているため、側視照明レンズ89が照明光を照射する照明方向は、側視観察光学系83が像光を取り込む側視方向Sに対して交差する。
【0064】
先端保護キャップ85は、上記第1実施形態の先端保護キャップ26と同様に、青色光を選択的に反射する材料から形成されている。これにより、第1の凹み面92には、青色光反射面101が形成されている。さらに青色光反射面101は、側視観察レンズ88と同一面上に位置し、側視観察光学系83の観察範囲と対面する位置にある。よって、青色光反射面101は、側視観察レンズ88の周辺に設けられ、上記第1実施形態と同様に青色光を選択的に反射させる。
【0065】
図11は、第3実施形態を適用した電子内視鏡システム80の電気的構成の概略を示す。電子内視鏡システム80は、先端部82が設けられた電子内視鏡81、プロセッサ装置102、光源装置103からなる。電子内視鏡81には、撮像部95の他に、AFE51、撮像制御部52などを備えている。
【0066】
プロセッサ装置102は、デジタル信号処理回路(DSP)53、デジタル画像処理回路(DIP)54、表示制御回路55、VRAM56、コントローラ104、操作部58等を備え、上記第1実施形態と同様に、電子内視鏡11のAFE51から出力された撮像信号に対して各種信号処理を施し、画像データを生成し、また各種画像処理が施された画像データに基づく観察画像をモニタ24上に表示する。
【0067】
レンズ移動機構98は、電子内視鏡11とプロセッサ装置12とが接続されたとき、AFE51、撮像制御部52とともに、コントローラ104に接続される。レンズ移動機構98は、コントローラ104からズームレンズ97の移動指示がなされたときに、アクチュエータ43の駆動によりズームレンズ97が通常観察位置または拡大観察位置に移動する。
【0068】
光源装置13は、光源部105、及び光源制御部106などを備えている。光源部105は、光源107、ミラー108、集光レンズ109、光ファイバ110、部分減光部111などを備えている。
【0069】
光源107、ミラー108、集光レンズ109は、上記第1実施形態の光源63、ミラー64、集光レンズ65と同様であり、光源107が発する光、及びミラー108が反射する光を集光して光ファイバ110に導く。光ファイバ110は、コネクタ18を介して電子内視鏡11のライトガイド94に接続される。ライトガイド94と光ファイバ110とは、光軸の位置を合わせて接続され、集光レンズ109から光ファイバ110を経てライトガイド94へ光が入射される。
【0070】
光源107が発した光は、ライトガイド94に導かれ、側視照明レンズ89に入射する。そして、側視照明レンズ89により照明光として被検体内に照射される。側視照明レンズ89とライトガイド94とは、光軸の位置を合わせて取り付けられる。側視照明レンズ89は、ライトガイド94へ入射される光強度の分布に応じて照明光を照射する。光源制御部106は、プロセッサ装置102のコントローラ104から入力される調節信号や同期信号にしたがって光源107の点灯/消灯のタイミングを調節する。
【0071】
部分減光部111は、部分減光板112及びスライド機構113からなる。部分減光板112は、集光レンズ109と光ファイバ110との間に位置する。図12に示すように、部分減光板112は、円板状であり、中央部分に円形状の減光フィルタ112aが形成されている。この部分減光板112は、減光フィルタ112aの光透過率が低く、減光フィルタ112aの周辺から外側までの部分は光透過率が高くなっている。
【0072】
部分減光板112は、集光レンズ109から光ファイバ110に光が入射される光路上に位置し、且つ集光レンズ109の光軸L1上(図13参照)に減光フィルタ112aの中心位置を合わせる減光位置(図11及び図13の実線で示す位置)と、この減光位置すなわち光路上から退避する退避位置(図11及び図13の2点鎖線で示す位置)との間で移動自在に設けられている。
【0073】
スライド機構113は、部分減光板112の移動をガイドするガイド部材、及び部分減光板112を移動させるアクチュエータ等を備える。アクチュエータとしては、例えばソレノイドが用いられる。スライド機構113は、コントローラ104によって光源制御部106に指示がなされたとき、光源制御部106からの制御信号を受けたアクチュエータの駆動により部分減光板112を退避位置及び減光位置の間でスライド移動させる。
【0074】
コントローラ104は、側視観察光学系83の焦点距離が通常観察及び拡大観察の間で切り換わったとき、すなわち、ズームレンズ97が通常観察位置及び拡大観察位置の間で移動するとき、スライド機構113を動作させて部分減光板112を退避位置及び減光位置の間で移動させる。そして、ズームレンズ97が通常観察位置にあるとき、部分減光板112は退避位置にあり、ズームレンズ97が拡大観察位置にあるとき、部分減光板112は減光位置にある。
【0075】
図13に示すように、部分減光板112に形成された減光フィルタ112aは、部分減光板112が減光位置にあるとき、集光レンズ109から光ファイバ110に入射される光のうち減光領域A1に合わせて形成されている。減光領域A1は、集光レンズ109が集光する光のうち、光軸L1の近傍の光強度が大きいため、光軸L1を含む中央の円形状領域が減光領域A1として設定され、この減光領域A1の周辺に透過領域A2が設定されている。これにより、部分減光板112は、減光位置にあるとき、集光レンズ109から光ファイバ110に入射される光のうち中央に位置する減光領域A1のみを部分的に減光し、透過領域A2では減光せずに光を透過させる。
【0076】
上記構成の作用について説明する。被検体内に挿入部16を挿入し、電子内視鏡11での観察を行う際、初期状態では、撮像部95は通常観察可能(ズームレンズ97が通常観察位置)な状態となっている。このとき、光源部105では、部分減光板112は退避位置にある。この状態で通常観察を行い、被検体内を撮像した観察画像がモニタ24上に表示される。
【0077】
撮像部95を使用して通常観察を行っているときに、さらに精細な観察画像として、血管と周辺部位とを区別した拡大観察を行いたい場合、術者は通常観察から拡大観察に切り換える操作を操作部58により行う。撮像部95が拡大観察可能な状態になると、側視照明レンズ89から照射された照明光が被検体の表面で反射して戻ってくる。被検体の表面で反射した反射光の中には、側視観察レンズ88の周辺に戻ってくる光もある。この観察レンズ88の周辺には、上述したように青色光反射面101が形成されているため、被検体の表面からの反射光は、青色光反射面101によって青色光が選択的に再度反射し、青色光が被検体の表面Hを再び照射する。側視観察光学系83の観察範囲には、青色光を多く含んだ照明光が照射されるため、この観察範囲を撮像する撮像部95では、血管と周辺部位とのコントラストが大きい観察画像を得ることができる。
【0078】
また、ズームレンズ97を通常観察位置から拡大観察位置に移動させるとき、コントローラ104は、光源制御部106を制御してスライド機構113を動作させ、部分減光板112を退避位置から減光位置に移動させる。これにより、光源部105では、集光レンズ109によって集光される光のうち、減光領域A1のみが部分減光されてライトガイド94へ入射される。側視照明レンズ89は、部分減光板112によって部分減光され、ライトガイド94に入射された光強度の分布に応じた照明光を側視観察光学系83の観察範囲へ照射する。
【0079】
側視照明レンズ89は、側視観察光学系83が像光を取り込む側視方向Sに対して交差する方向に照明を照射するため、観察範囲を確実に照明することができる。これにより、血管と周辺部位とのコントラストが大きく、さらに鮮明な観察画像を得ることができる。また、側視観察光学系83で拡大観察を行うとき、部分減光板112によって部分減光された照明光が照射されるため、側視照明レンズ89の光軸付近の光強度が下げられている。よって、側視観察光学系83で拡大観察を行うとき、被検体の表面に側視観察光学系83を近づけても反射光の増加を防ぎ、観察範囲内における輝度分布の偏りを抑制することができる。そして、輝度分布の偏りが抑制されているため、白とびなどが生じることを防いで鮮明な観察画像を得ることができる。
【0080】
なお、上記第3実施形態では、青色光を選択的に反射する材料から先端保護キャップ85を成形することによって、先端保護キャップ85の第1の凹み面92に青色光反射面101を形成する構成としているが、これに限らず、先端保護キャップ85としては、一般的な材料で形成し、第1の凹み面92に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして側視観察レンズ88の周辺に青色光反射面を配置するようにしてもよい。また、青色光反射面101としては、先端保護キャップ85の全面に形成してもよく、第1の凹み面92のうち、側視観察レンズ88の周辺に位置する一部のみに形成していてもよい。
【0081】
また、上記第3実施形態では、部分減光部111として、光透過率が低い減光フィルタ112aが形成された部分減光板112及び部分減光板112を移動させるスライド機構113からなる構成を用いているが、これに限らず、例えば、拡大観察時に光透過率が低い減光パターンが形成される液晶パネル及び液晶パネルを駆動制御するための液晶ドライバからなる部分減光部など、拡大観察時に減光領域のみを部分減光することができる構成であればよい。
【0082】
また、上記第3実施形態では、先端部82を構成する先端保護キャップ85に青色光反射面32を形成しているが、これに限らず、図13及び図14に示す第4実施形態のように、先端部120の外周面に装着するフード121に青色光反射面を形成するようにしてもよい。なお、図13及び図14においては、上記第3実施形態と同様の部品については、同符号を付して説明を省略する。
【0083】
この第4実施形態では、先端部120は、先端部本体84と、この先端部本体84の先端に固着される先端保護キャップ122を備える。先端保護キャップ122は、上記第1実施形態の先端保護キャップ85と同様に外周面123の一部を切り欠いた凹み部124が形成されている。凹み部124は、側視方向Sと直交する平面状の第1の凹み面125と、外周面123と第1の凹み面125に囲まれ、先端側に向かって傾斜する平面状の第2の凹み面126とから形成される。側視観察レンズ88は、第1の凹み面125に形成された貫通孔125aから露呈する位置に取り付けられており、側視方向Sからの像光を取り込む。側視照明レンズ89は、第2の凹み面126に形成された貫通孔126aから露呈する位置に取り付けられ、ライトガイド94によって導かれた照明光を側視観察光学系83が像光を取り込む観察範囲に向かって照射する。先端保護キャップ122は、例えば一般的な材料から成形され、第1の凹み面125には青色光反射面を形成しなくてもよい。
【0084】
先端部120に装着されるフード121は、凹み部124を露呈させる開口部121aが形成されており、先端部120の外周面すなわち先端保護キャップ先端保護キャップ122の外周面123に嵌合する。このフード121は、第1の凹み面125に対して開口部121aの端面が側視方向Sの先端側へ突出するように形成されている。フード121の内周面は、側視観察レンズ88の表面から被検体側に向かって徐々に外側(側視観察レンズ88の光軸から離反する側)に傾斜するテーパー状になっており、この内周面に青色光反射面127が形成されている。このフード121は、上記第1,3実施形態の先端保護キャップ26、第2実施形態のフード71と同様の青色光を選択的に反射する材料から形成され、青色光反射面127は、青色光を選択的に反射する。
【0085】
青色光反射面127は、第1の凹み面125を囲む位置、すなわち側視観察レンズ88の周辺に配され、さらにテーパー状に形成されていることから被検体の表面と対面する。よって、被検体の表面からの反射光は、青色光反射面127によって青色光が選択的に反射し、被検体の表面Hを再び照射するので、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、フード121としては、一般的な材料で形成し、内周面に青色光を選択的に反射する塗料を塗布したり、青色光を選択的に反射する材料からなるシートを貼るなどして側視観察レンズ88の周辺に青色光反射面を配置するようにしてもよい。
【0086】
上記各実施形態では、側視観察光学系及び直視観察光学系のいずれか一方のみを備えた先端部の構成を示しているが、本発明はこれに限るものではなく、側視観察光学系及び直視観察光学系の両方を備える構成でもよく、この場合、例えば、側視観察光学系及び直視観察光学系に入射される光のいずれか一方を遮光し、他方を透過させる切り換え手段を備え、側視方向及び直視方向の観察のうち、いずれか一方を選択的に行う構成にしてもよい。
【0087】
なお、上記各実施形態では、レンズ保持部材、ガイド部材、アクチュエータを備えるレンズ移動機構を備えているが、これに限らず、例えば回転駆動を直進駆動に変換してズームレンズを進退させるカム部材、カム部材を回転駆動する駆動源としてのステッピングモータなどを備えた構成でもよい。また、上記各実施形態においては、レンズ移動機構のアクチュエータとしてソレノイドを用いているが、これに限らず、例えば圧電素子を用いた圧電アクチュエータなど、ズームレンズを進退移動させることが可能なアクチュエータであればよい。
【0088】
上記各実施形態では、焦点可変手段としてズームレンズとレンズ移動機構からなる構成を用いているが、これに限らず、側視観察光学系の焦点距離を通常観察及び拡大観察の間で可変させる構成であればよく、例えばCCDを光軸方向に移動させて側視観察光学系の焦点距離を可変させる構成を用いてもよい。また、上記各実施形態では、側視観察光学系又は直視観察光学系で取り込んだ被検体内の像光を撮像する撮像素子としてCCDを用いているが、CCDに限らず、CMOSでもよい。
【符号の説明】
【0089】
10,80 電子内視鏡システム
11,81 電子内視鏡
16 挿入部
16a,70,82,120 先端部
27,88 観察レンズ
28a,28b,89 照明レンズ
32,74,101,127 青色光反射面
36,83 観察光学系
37,98 レンズ移動機構
39,97 ズームレンズ
38,99 CCD
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられ、被検体内の像光を取り込んで観察を行うための観察光学系と、
前記観察光学系の焦点距離を通常観察及び拡大観察の間で可変させる焦点可変手段と、
前記観察光学系により取り込まれる観察範囲の像光が結像される撮像素子と、
前記観察範囲に向かって照明光を照射する照明光学系と、
前記観察範囲に対面し、且つ前記観察光学系の周辺に設けられ、青色光を選択的に反射させる青色光反射面とを備えることを特徴とする電子内視鏡。
【請求項2】
前記青色光反射面は、400nm以上、550nm以下の波長の光については50%以上、700nm以上の波長の光については5%以下の反射率で反射することを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記先端部は、先端部本体と、前記先端部本体の先端側に固着される先端保護キャップとを備え、
前記青色光反射面は、前記先端保護キャップに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子内視鏡。
【請求項4】
前記先端部の外周面に装着されるフードを備え、
前記青色光反射面は、前記フードに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子内視鏡。
【請求項5】
前記先端部は、外周面の一部を切り欠いた凹み部を有しており、
前記観察光学系は、前記凹み部から露呈する位置に設けられ、前記挿入部の挿入方向と直交する側視方向からの像光を取り込む側視観察光学系であり、
前記青色光反射面は、前記凹み部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の電子内視鏡。
【請求項6】
前記凹み部は、前記側視方向と直交する第1の凹み面と、前記外周面と前記第1の凹み面に困まれ、先端側に向かって傾斜する第2の凹み面とから形成され、
前記観察光学系は、前記第1の凹み面から露呈する位置に設けられ、
前記照明光学系は、前記第2の凹み面から露呈する位置に設けられ、
前記青色光反射面は、前記第1の凹み面に形成されることを特徴とする請求項5記載の電子内視鏡。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項記載の前記電子内視鏡であり、前記照明光学系に照明光を導くライトガイドが設けられた前記電子内視鏡と、
光を発する光源と、
前記光源からの光を集光して前記ライトガイドに入射させる集光手段と、
前記観察光学系が通常観察可能な状態から、拡大観察可能な状態に切り換わったとき、前記光源から前記ライトガイドまでの光路上に位置し、前記ライトガイドに入射される光のうち、中央に位置する減光領域のみを部分的に減光し、前記減光領域の周辺に位置する透過領域では減光せずに光を透過させる部分減光手段とを備え、
前記照明光学系は、前記ライトガイドへ入射される光強度の分布に応じて照明光を照射することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられ、被検体内の像光を取り込んで観察を行うための観察光学系と、
前記観察光学系の焦点距離を通常観察及び拡大観察の間で可変させる焦点可変手段と、
前記観察光学系により取り込まれる観察範囲の像光が結像される撮像素子と、
前記観察範囲に向かって照明光を照射する照明光学系と、
前記観察範囲に対面し、且つ前記観察光学系の周辺に設けられ、青色光を選択的に反射させる青色光反射面とを備えることを特徴とする電子内視鏡。
【請求項2】
前記青色光反射面は、400nm以上、550nm以下の波長の光については50%以上、700nm以上の波長の光については5%以下の反射率で反射することを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記先端部は、先端部本体と、前記先端部本体の先端側に固着される先端保護キャップとを備え、
前記青色光反射面は、前記先端保護キャップに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子内視鏡。
【請求項4】
前記先端部の外周面に装着されるフードを備え、
前記青色光反射面は、前記フードに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子内視鏡。
【請求項5】
前記先端部は、外周面の一部を切り欠いた凹み部を有しており、
前記観察光学系は、前記凹み部から露呈する位置に設けられ、前記挿入部の挿入方向と直交する側視方向からの像光を取り込む側視観察光学系であり、
前記青色光反射面は、前記凹み部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の電子内視鏡。
【請求項6】
前記凹み部は、前記側視方向と直交する第1の凹み面と、前記外周面と前記第1の凹み面に困まれ、先端側に向かって傾斜する第2の凹み面とから形成され、
前記観察光学系は、前記第1の凹み面から露呈する位置に設けられ、
前記照明光学系は、前記第2の凹み面から露呈する位置に設けられ、
前記青色光反射面は、前記第1の凹み面に形成されることを特徴とする請求項5記載の電子内視鏡。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項記載の前記電子内視鏡であり、前記照明光学系に照明光を導くライトガイドが設けられた前記電子内視鏡と、
光を発する光源と、
前記光源からの光を集光して前記ライトガイドに入射させる集光手段と、
前記観察光学系が通常観察可能な状態から、拡大観察可能な状態に切り換わったとき、前記光源から前記ライトガイドまでの光路上に位置し、前記ライトガイドに入射される光のうち、中央に位置する減光領域のみを部分的に減光し、前記減光領域の周辺に位置する透過領域では減光せずに光を透過させる部分減光手段とを備え、
前記照明光学系は、前記ライトガイドへ入射される光強度の分布に応じて照明光を照射することを特徴とする電子内視鏡システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−213441(P2012−213441A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79257(P2011−79257)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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