説明

電子内視鏡用光源装置

【課題】特殊光と通常光による同時観察に好適な照明光を効率よく生成する。
【解決手段】体腔内挿入部の先端部内に対象部位を撮像するための撮像素子を有し、基端から先端にかけてライトガイドが挿通されている電子内視鏡に、該対象部位の照明光を供給する光源部と、光源部から電子内視鏡のライトガイドの入射端面に至るまでの照明光の光路上に配置され、該照明光のうち所定の波長の光を透過する特殊光領域と該照明光のうち通常光を透過する通常光領域を有する中空の筒状部材である回転ドラムとを有し、特殊光領域及び通常光領域は、回転ドラムの回転軸に垂直な平面内において該回転ドラムの周方向に、該回転ドラムの回転軸に対して所定の角度をなして設けられ、回転ドラムは、特殊光領域及び通常光領域に対向する位置に開口部をそれぞれ有し、照明光の光軸と回転ドラムの回転軸とが直交する電子内視鏡用光源装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用の光源装置に関し、より詳しくは、通常観察用の照明光と特殊光観察用の照明光を効率よく出射することが可能な電子内視鏡用の光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者の体腔内に細径で長尺の挿入部を挿入することにより、対象部位の観察及び撮像を行うことができる電子内視鏡システムが広く用いられている。電子内視鏡の挿入部先端には撮像素子(CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなど)が設けられており、撮像素子により光電変換されて出力される画像信号が、電子内視鏡内を挿通された同軸ケーブルなどの伝送ケーブルを介して、電子内視鏡と接続されるビデオプロセッサに伝送される。
【0003】
また、近年では、可視光による通常光観察のほかに、狭帯域光、蛍光、赤外光などの特定波長の光による特殊光観察を行なう電子内視鏡システムも知られている。このような特殊光観察を行なう電子内視鏡システムの一例として、特許文献1に開示されるシステムが挙げられる。特許文献1においては、可視光を透過させる通常光フィルタと特殊光を透過させる特殊光フィルタを有する回転板によって、可視光と特殊光を切り替えて対象部位に照射し、可視光により通常光観察画像を、特殊光により特殊光観察画像を生成して体腔内の観察を行っている。より具体的には、回転板の半面に通常光フィルタを設け、残りの半面に特殊光フィルタを設け、光源からの照明光が透過する通常光用あるいは特殊光用のフィルタを、撮像素子からの画像信号の転送タイミングに合わせて切り替わるように回転板を回転させる。これにより、通常光観察画像と特殊光観察画像を同時に生成してモニタに表示することができる。
【0004】
また、照明光を通常光又は特殊光に切り替えつつ透過する光の光量を調整する回転板が、特許文献2に開示されている。また、特許文献2には、複数の波長の赤外光を用いて、血液中のヘモグロビンの酸素飽和度の変化を観察する電子内視鏡システムが記載されている。この電子内視鏡システムでは、術者が観察を希望する画像の種類に応じて、可視光又は赤外光がビデオプロセッサから電子内視鏡に供給される。そして、可視光又は赤外光に応じた可視カラー画像又はヘモグロビンの状態を表す画像が撮像素子によって取得され、種々の画像処理が施された後にモニタに表示される。特許文献1の内視鏡システムでは、ヘモグロビンの酸素飽和度による吸収スペクトルの違いに基づき、複数の異なる波長の赤外光によるヘモグロビン画像を取得することで、ヘモグロビンの酸素飽和度の変化を観察することができる。
【0005】
特許文献2においては、R(赤),G(緑),B(青)の各波長に対応した光を透過させて通常光観察画像を得るための照明光を生成するフィルタ群と、対象部位の粘膜深層の酸素飽和度やヘモグロビン量の情報に基づいて特殊光観察画像を得るための照明光を生成するフィルタ群と、対象部位の粘膜表層の酸素飽和度やヘモグロビン量の情報に基づいて特殊光観察画像を得るための照明光を生成するフィルタ群とが、回転板上にて同心円上に配置されている。そして、回転板を照明光の光軸と垂直な方向に移動させることによって各フィルタを切り替える。また、1つのフィルタ群においてフィルタ領域を複数に分割し、各フィルタ領域において透過させる波長の半値全幅が異なるようにする。これにより、撮像素子が配置されている電子内視鏡の先端部から対象部位までの距離に応じて、透過させる波長を変更せずに光量のみを増減させて、適切な光量の照明光を対象部位に照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−321244号公報
【特許文献2】特許第4270634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のような従来の電子内視鏡システムでは、種々の特殊光観察に対応させるためには回転板の面積を大きくしてフィルタ群の種類や数を増やす必要がある。しかし、回転板の面積を大きくすると、回転軸から離れるほど大きなフィルタを設けなければならない。また、回転板を大きくしたことでさらに回転の安定性を保つためにモータを大型化すると、低振動化や静音化を考慮した構成が新たに必要となる可能性がある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、装置を大型化せずに複数種類の特殊光を効率よく生成することが可能な電子内視鏡用光源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における電子内視鏡用光源装置は、体腔内挿入部の先端部内に対象部位を撮像するための撮像素子を有し、基端から先端にかけてライトガイドが挿通されている電子内視鏡に、該対象部位の照明光を供給する光源部と、光源部から電子内視鏡のライトガイドの入射端面に至るまでの照明光の光路上に配置され、該照明光のうち所定の波長の光を透過する特殊光領域と該照明光のうち通常光を透過する通常光領域を有する中空の筒状部材である回転ドラムとを有し、特殊光領域及び通常光領域は、回転ドラムの回転軸に垂直な平面内において該回転ドラムの周方向に、該回転ドラムの回転軸に対して所定の角度をなして設けられ、回転ドラムは、特殊光領域及び通常光領域に対向する位置に開口部をそれぞれ有し、照明光の光軸と回転ドラムの回転軸とが直交する。
【0010】
好ましくは、回転ドラムは、特殊光領域と通常光領域との間に、照明光を遮光する遮光部を有する。遮光部により、回転ドラムの特殊光領域によって生成される特殊光と通常光領域によって生成される通常光とが同時に出射されることが回避されるため、より信頼性のある特殊光観察画像と通常光観察画像を生成することができる。また、通常光領域は、特殊光領域の光透過量と該通常光領域の光透過量が等しくなる減光率を有する。これにより、明るさにばらつきのない診断に好適な特殊光観察画像と通常光観察画像を同時にモニタに表示することができる。
【0011】
さらに好ましくは、回転ドラムは、特殊光領域と通常光領域との組を複数組有し、特殊光領域と通常光領域の各組は、回転ドラムの回転軸方向に隣接して設けられ、各組において、特殊光領域を透過する所定の光の波長は、各組ごとに異なる波長帯域を有し、電子内視鏡光源装置は、さらに、回転ドラムを該回転ドラムの回転軸方向に移動することにより照明光の回転ドラムへの入射位置を切り替える切替手段を有する。これにより、使用する光源装置を変えたりすることなく同一の光源装置で複数種類の特殊光を切り替えて撮像を行うことができる。また、切替手段は、回転ドラムの回転軸を支持する回転ドラム支持体と、該回転ドラム支持体を該回転軸方向に移動するボールねじとを有する。
【0012】
また、隣接する特殊光領域と通常光領域の組において、各特殊光領域及び各通常光領域は、隣接する組の各特殊光領域及び各通常光領域と回転ドラムの回転軸に垂直な方向に互いにずれて配置されている。これにより、各特殊光領域及び各通常光領域を回転ドラムの回転軸に沿って隣接配置した場合よりも、迷光が隣接する特殊光領域ないし通常光領域に入射しにくくなり、かつ回転ドラムを回転軸方向に短縮してより小型の回転ドラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子内視鏡用光源装置によれば、同時観察用の特殊光及び通常光を効率よく生成しつつ小型化が可能な構成を提供することができる。また、回転ドラムを用いることにより、特殊光領域及び通常光領域の形状は従来の回転板における扇形である必要はなく、入射する光の光束幅よりも広い直径を有する円形であればよい。これにより、特殊光領域及び通常光領域の面積をより小さくすることができるため、特殊光領域及び通常光領域に特殊光フィルタ及び通常光フィルタを使用する場合、フィルタのコストダウンを見込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における光源装置を備える電子内視鏡システムを示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態における光源装置に使用される回転ドラムの構成を示す模式図である。
【図3】図3は、図2におけるA−A線による回転ドラムの断面と光源装置の一部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における電子内視鏡用光源装置を備える電子内視鏡システムについて説明する。なお、複数の図にまたがって同じ部材を示す場合は同じ番号を付すこととする。また、電子内視鏡の基端とは、電子内視鏡をビデオプロセッサと接続する接続部側を意味するものであり、電子内視鏡の先端とは、電子内視鏡の体腔内挿入部の先端を意味する。
【0016】
図1は、本実施形態における電子内視鏡システム100を示す概略図である。電子内視鏡システム100は、電子内視鏡1、ビデオプロセッサ2、及びモニタ3を備える。ビデオプロセッサ2の光源部16は、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高輝度ランプを備えており、電子内視鏡1による撮像のための照明光としての白色光を発生する。光源部16から出射された白色光は、回転ドラム13に入射する。回転ドラム13は中空の筒状部材であり、駆動部14によって周方向への回転が制御される。また、ドライバ15がシステムコントロール部21からの制御信号に基づいて駆動部14の駆動制御を行う。回転ドラム13に入射した白色光は、回転ドラム13の回転に合わせて回転ドラム13に設けられた特殊光フィルタ又は金網を透過して特殊光と通常光に交互に変換され、集光レンズ12に進行する。特殊光及び通常光は、集光レンズ12によってライトガイド9の入射端面に入射し、ライトガイド9によって電子内視鏡1の基端から先端まで伝搬される。なお、回転ドラム13及び駆動部14の構成や動作などの詳細については後述する。
【0017】
ライトガイド9は、電子内視鏡1とビデオプロセッサ2との接続部から電子内視鏡1の操作部4及び体腔内挿入部を挿通して該体腔内挿入部の先端まで延びている。術者により把持される操作部4には、いずれも図示しないものの、術者が各種操作を行うための複数のボタン、アングルノブ、処置具挿入口などが設けられている。処置具挿入口は、電子内視鏡1の先端に設けられている処置具用開口(図示せず)に通じている。術者は、処置具挿入口から鉗子などの処置具を挿入し、電子内視鏡1内に設けられた処置具挿通チャンネル(図示せず)を通じて処置具用開口から処置具を出没させ、体腔内の組織を採取するなどの処置を行う。アングルノブは、その回動操作に応じて電子内視鏡1の体腔内挿入部の先端部を湾曲させる。また、各ボタンの操作により、観察対象部位への送気や送水、体液などの吸引、テレビモニタ上の画面の静止、画像記録媒体への観察対象部位の静止画像や動画の記録など、種々の処理を行うことができる。
【0018】
電子内視鏡1の先端には、配光レンズ5や集光レンズ6が配置されている。配光レンズ5は、光源部16からの光を伝搬するライトガイド9の出射端面と対向する位置に設けられており、ライトガイド9が伝搬した照明光を対象部位に出射する。集光レンズ6は、対象部位からの反射光を撮像素子7の受光面に集光させて対象部位の像を結ばせる。
【0019】
撮像素子7において、受光された光は光電変換されて画像信号が生成され、画像信号はプリアンプ8によって増幅された後、電子内視鏡1の接続部内に設けられた制御部10に送られる。制御部10において、画像信号は、輝度信号Y及び色差信号Cb,Crからなる画像信号に変換されてデジタル信号化された後、ビデオプロセッサ2の前段信号処理部17に送られる。また、制御部10は、電子内視鏡1の接続部に設けられたメモリ11に接続されている。制御部10は、電子内視鏡1をビデオプロセッサ2に接続したときに、ビデオプロセッサ2側で種々の制御を行う上で必要となる電子内視鏡1の識別情報や撮像素子7に関する情報などを、メモリ11から読み出して、ビデオプロセッサ2のシステムコントロール部21に送る。さらに、制御部10は、ビデオプロセッサ2のタイミングコントローラ20から受信する信号に基づいて撮像素子7の駆動を制御する。
【0020】
ビデオプロセッサ2の前段信号処理部17は、電子内視鏡1の制御部10から送られてくる画像信号に対して種々の画像処理を施す。前段信号処理部17は、制御部10から送られてくる輝度信号Y及び色差信号Cb,Crをそれぞれ増幅した後、マトリクス回路(図示せず)に送り、回転ドラム13に設けられた各フィルタのフィルタ特性に応じて、変換特性を決定するマトリクス係数の値を変更し、画像信号の色補正を行う。マトリクス回路は、入力される輝度信号Y及び色差信号Cb,Crを混色のない3原色信号R,G,Bに変換して出力する。マトリクス回路によって変換されたR,G,Bの各画像信号は、それぞれ増幅されて適切な信号レベルに調整された後に、各色ごとに画像メモリ18に格納される。
【0021】
回転ドラム13による通常光と特殊光の切り替えのタイミングと、撮像素子7における信号出力の切り替えタイミングとは、タイミングコントローラ20の制御によって同期されている。従って、撮像素子7は、ある露光期間に通常光を受光して通常光観察画像を生成するための信号を出力した後に、続く露光期間に特殊光を受光して特殊光観察画像を生成するための信号を出力し、これを繰り返すことで各信号を交互に出力する。なお、撮像素子7からの画素信号の出力は、回転ドラム13による特殊光と通常光の切り替えに要する移行期間内に行われる。また、画像メモリ18は、通常光による観察画像信号を記憶する通常光観察画像用メモリと、特殊光による観察画像信号を記憶する特殊光観察画像用メモリを有する。そして、画像メモリ18は、通常光観察用の画像信号に基づいて前段信号処理部17により算出された画像信号を通常光観察画像用メモリに書き込みつつ特殊光観察画像用メモリへの書き込みを停止し、特殊光観察用の画像信号に基づいて前段信号処理部17により算出された画像信号を特殊光観察画像用メモリに書き込みつつ通常光観察画像用メモリへの書き込みを停止する。画像メモリ18は、タイミングコントローラ20からの制御信号に基づいて駆動する。
【0022】
また、前段信号処理部17のマトリクス回路のマトリクス係数は、通常光と各特殊光のそれぞれに対応する係数が用意されており、各マトリクス係数はメモリ23に記憶されている。そして、タイミングコントローラ20の制御に基づいて、照明光の切り替えタイミングに合わせて、通常光あるいは特殊光に対応するマトリクス係数がメモリ23から読み出されて設定される。
【0023】
画像メモリ18の通常光観察画像用メモリあるいは特殊光観察画像用メモリから読み出された画像信号は、後段信号処理部19に送られる。後段信号処理部19にて、画像メモリ18から送られてきた信号は、デジタルビデオ信号やRGBビデオ信号、コンポジットビデオ信号、Y/C信号等に変換された後、観察画像としてモニタ3に出力される。術者は、モニタ3に表示される観察画像を確認しながら体腔内の部位の観察や治療を行う。
【0024】
次に、図2及び図3を参照しながら、本発明の一実施形態における回転ドラム13の構成について説明する。図2及び図3から分かるように、回転ドラム13は、回転ドラム13の回転軸14cと直交する方向で切断された断面形状が多角形状の中空筒状部材である。本実施形態においては、回転ドラム13は、3次元で捉えると、中空な八角柱の筒状部材であり、該筒状部材の周面は、回転軸14cに平行な8つの長方形状の平面が連続して繋がって中空の八角柱を構成している。また、図2に示すように、回転ドラム13の周面を構成する回転軸14cに平行な長方形状の平面のそれぞれには、光源部16から出射される照明光のうち所望の波長の光のみを透過させる特殊光フィルタ13a〜13c(特許請求の範囲に記載された特殊光領域に対応する)が設けられている。図2から分かるように、特殊光フィルタ13aと13cは、長方形状の平面の両端に設けられており、特殊光フィルタ13bは、特殊光フィルタ13aと13cが設けられた平面の上方に隣り合う同じく長方形状の平面の中央に設けられている。すなわち、図3に示すように、互いに隣り合う特殊光フィルタ13b,13cの位置関係は、回転ドラム13の回転軸14cの中心に対して45°ずれて設けられていることになる。なお、互いに隣り合う特殊光フィルタ13a,13bの位置関係も同様である。このため、特殊光フィルタ13a〜13cを同じ長方形状の平面上に隣接して配置した場合に比べて、光源部16からの照明光をいずれかの特殊光フィルタに入射させているときに、迷光が他のフィルタ、特に隣接するフィルタに進行しにくくなる。
【0025】
また、回転ドラム13上の特殊光フィルタ13a〜13cが設けられた位置に対向する位置、例えば、特殊光フィルタ13a及び13cについては、特殊光フィルタ13a及び13cが設けられた長方形状の平面と向かい合う長方形状の平面の両端に、図2には示さないものの、2つの開口部が、特殊光フィルタ13a及び13cが設けられた位置と同じ位置に設けられている。図3には、特殊光フィルタ13cに対向する開口部13gを示す。
【0026】
さらに、回転ドラム13の周面を構成する長方形状の他の平面には、特殊光フィルタ13a〜13cとは別に、光源部16から出射される照明光の光量を減少させる減光フィルタとしての機能を有する金網13d〜13f(特許請求の範囲に記載された通常光領域に対応する)が、特殊光フィルタ13a〜13cのそれぞれと組となるように設けられている。各組において、特殊光フィルタと金網は、回転軸14cと垂直な方向に並ぶように設けられる。すなわち、回転ドラム13の周面を構成する長方形状の各平面を左端部と右端部と中央部の3つの領域に分けた場合、各組の特殊光フィルタと金網は、設けられる長方形状の平面は異なるが、同じ領域の同じ位置にあることを要する。例えば、図2に示すように、特殊光フィルタ13bは、長方形状の平面の中央部に設けられている。従って、特殊光フィルタ13bと組となる金網13eも、別の長方形状の平面の中央部に設ける必要がある。なお、本実施形態においては、特殊光フィルタ13bと金網13eとは、回転ドラム13の回転軸14cの中心において互いの法線が90°をなす長方形状の平面のそれぞれに設けられている。他の特殊光フィルタ13a,13cについても、同様に、組となる金網13d,13fが、それぞれの長方形状の平面の同じ領域の同じ位置に設けられており、回転ドラム13の回転軸14cに対する位置関係も、特殊光フィルタ13bと金網13eの位置関係と同様である。なお、図3には、特殊光フィルタ13cと金網13fの位置関係を示す。
【0027】
そして、回転ドラム13の金網13d〜13fが設けられたそれぞれの長方形状の平面に対向する長方形状の平面にも、同じ領域の同じ位置にそれぞれ開口部が設けられている。図2には、金網13d,13fに対向する開口部13h,13iを示し、図3には、金網13fに対向する開口部13iを示す。なお、金網13eについても、対向する長方形状の平面の位置に開口部が設けられている。なお、回転ドラム13の特殊光フィルタ、金網、開口部以外の部分には、遮光性を有する遮光部13jが形成されている。
【0028】
図2に示すように、回転ドラム13の両端には回転軸14cが接続されている。回転軸14cの一端にはタイミングベルト14bが巻き掛けられている。タイミングベルト14bは、モータ14aに連結されており、モータ14aが発生する駆動力を回転軸14cに伝達する。回転軸14cの両端は、回転ドラム支持体14e両端から上方に延びるブラケットに設けられた軸受14dによって回動自在に支持されている。回転ドラム支持体14eの基部上面にはモータ14aが固定されている。さらに、回転ドラム支持体14eの基部には、その長手方向に棒状のボールねじ14fが螺合しており、回転ドラム13の回転軸14cとボールねじ14fとは互いに平行に配置されている。従って、ボールねじ14fを回転させると、ボールねじ14fと螺合する回転ドラム支持体14eは、ボールねじ14fの軸方向に移動し、それに伴って、回転ドラム13が回転軸14c方向に移動する。ボールねじ14fの回転によって回転ドラム13を移動させることで、光源部16からの照明光が回転ドラム13に入射する位置を変更することができる。図2及び図3は、光源部16のランプ16aからの照明光Lが特殊光フィルタ13cと金網13fとの組に交互に入射する場合を示す。使用する特殊光を切り替える場合は、ボールねじ14fの位置制御によって回転ドラム支持体14eを移動し、照明光が特殊光フィルタ13bと金網13dとの組あるいは特殊光フィルタ13aと金網13fとの組に交互に入射するように回転ドラム13の位置を変更する。
【0029】
ボールねじ14fは、ボールねじ支持部14gに支持されている。また、ボールねじ14fは、図示しないボールねじ駆動モータによりその回転が制御される。回転ドラム13の周面に設けられた特殊光フィルタと金網の各組の間隔、回転ドラム13の回転軸14c方向の長さ、ボールねじ14fの軸方向における回転ドラム支持体14eの長さ、ボールねじ14fの軸方向の長さなど、ボールねじ14fの回転制御による回転ドラム支持体14e及び回転ドラム13の位置制御に必要な情報はメモリ23に記憶されている。システムコントロール部21はメモリ23に記憶された情報に基づいて速度信号をドライバ15に送り、ドライバ15はシステムコントロール部21からの速度信号に基づいて速度制御信号をボールねじ駆動モータに送り、ボールねじ駆動モータの回転制御を行う。以上のように、モータ14a、タイミングベルト14b、回転軸14c、軸受14d、回転ドラム支持体14e、ボールねじ14f、ボールねじ支持部14gなどが、回転ドラム13を駆動制御する駆動部14を構成する。なお、ドライバ15は、システムコントロール部21からの制御信号に基づいてモータ14aの回転制御も行い、タイミングベルト14b及び回転軸14cを介して回転ドラム13の回転制御を行う。また、術者は、フロントパネル22のボタンやスイッチ、又は電子内視鏡1の操作部4のボタンなどを操作することにより特殊光フィルタと金網の各組の切り替えを行うことができる。術者による切り替え操作の操作信号はシステムコントロール部21に送られ、システムコントロール部21は受信した操作信号に基づいて駆動部14、ドライバ15の動作制御を行い、回転ドラム13を移動させる。
【0030】
図3は、図2のA−A線による回転ドラム13の断面図であり、さらに回転ドラム13、ランプ16a、集光レンズ12、ライトガイド9の位置関係の概略を示す。便宜上、図3に示す場合では、回転ドラム13が図の時計回り方向に回転しているとする。もちろん、回転ドラム13を反時計回り方向に回転させた場合でも同様に本発明の効果を達成することができる。ランプ16aから出射される照明光Lは、回転ドラム13の回転軸14cと直交しているため、回転ドラム13の回転によって特殊光フィルタ13c、金網13f、開口部13g,13iに順次繰り返し入射する。なお、図2及び図3に示す回転ドラム13を用いる場合は、回転ドラム13が1回転する間に、照明光Lが特殊光フィルタ13cと金網13fに2回ずつ通過するため、撮像素子からの画像信号の転送タイミングに合わせて回転ドラム13が1/2回転するように回転制御を行えばよい。
【0031】
特殊光フィルタ13cを透過した照明光Lは、回転ドラム13内を進行し、特殊光フィルタ13cと対向する位置に設けられた開口部13gを経由して集光レンズ12に進行し、ライトガイド9の入射端面に導かれる。そして、回転ドラム13の回転により、照明光Lは遮光部13jによって遮光された後、金網13fに入射する。照明光Lは、特殊光フィルタ13cに入射する状態と同様に、金網13fを透過すると回転ドラム13内を進行し、金網13fと対向する位置に設けられた開口部13iを経由して集光レンズ12に進行し、ライトガイド9の入射端面に導かれる。
【0032】
さらに回転ドラム13の回転により、照明光Lは再び遮光部13jによって遮光された後、開口部13gに入射する。照明光Lは、開口部13gを経由して回転ドラム13内から特殊光フィルタ13cに入射する。特殊光フィルタ13cを透過した照明光Lは、集光レンズ12に進行し、ライトガイド9の入射端面に導かれる。そして回転ドラム13の回転により、照明光Lは遮光部13jによって遮光された後、開口部13iに入射し、金網13fを透過して集光レンズ12に進行し、ライトガイド9の入射端面に導かれる。従って、回転ドラム13を1/2回転させるごとに照明光を特殊光と通常光とで切り替えて撮像を行うことができる。
【0033】
なお、特殊光フィルタ13a〜13cは、それぞれ異なる波長帯域の光を透過させるフィルタ特性を有する。また、特殊光フィルタ13a〜13cは、白色光から特殊光に変換する際の減光量についてもそれぞれ異なる特性を示す。そこで、特殊光フィルタ13a〜13cの組として設けられる金網13d〜13fのメッシュをそれぞれ異なるように設定し、各組の特殊光フィルタと金網のそれぞれの光透過量が等しくなるように設定する。従って、回転ドラム13の特殊光フィルタと金網の組によって生成される特殊光と通常光の光量は等しくなり、特殊光観察画像と通常光観察画像とをモニタ3に同時に表示した際に明るさのばらつきが目立たないため、特殊光及び通常光を用いた同時観察において、診断により好適な画像を生成することができる。
【0034】
以上が本発明における実施形態に関する説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において種々の変形が可能である。例えば、特殊光フィルタとして、1つのフィルタにおいて複数の離散的な帯域を透過する複峰性のフィルタを採用することもできる。また、回転ドラムへの照明光の入射位置を制御する部材として、ボールねじの代わりにローラガイドやリニアガイドなどの種々のガイド部材を採用してもよい。
【0035】
また、上記の説明では、特殊光フィルタと金網の各組において、特殊光フィルタと金網をそれぞれ1つずつ設けているが、複数の特殊光フィルタと金網を交互に設け、かつ各特殊光フィルタと各金網に対向する開口部をそれぞれ設けても、特殊光及び通常光による同時観察を行うことができる。
【0036】
さらに、光源部と回転ドラムとの間において、光源部から出射される光の光路上に通常光フィルタを設けてもよい。これにより、特殊光を生成する際は通常光フィルタを通過した光がさらに回転ドラムの特殊光フィルタを通過する。なお、通常光を生成する際は通常光フィルタを通った光が回転ドラムの金網を通過する。従って、ランプからの光の照射による特殊光フィルタの劣化を軽減することができるため、コストダウンを見込める。
【符号の説明】
【0037】
1 電子内視鏡
13 回転ドラム
13a〜13c 特殊光フィルタ
13d〜13f 金網
13g〜13i 開口部
13j 遮光部
14 駆動部
14a モータ
14c 回転軸
14e 回転ドラム支持体
14f ボールねじ
16 光源部
16a ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内挿入部の先端部内に対象部位を撮像するための撮像素子を有し、基端から先端にかけてライトガイドが挿通されている電子内視鏡に該対象部位の照明光を供給する光源部と、
前記光源部から前記電子内視鏡の前記ライトガイドの入射端面に至るまでの照明光の光路上に配置され、該照明光のうち所定の波長の光を透過する特殊光領域と該照明光のうち通常光を透過する通常光領域を有する中空の筒状部材である回転ドラムと、を有し、
前記特殊光領域及び前記通常光領域は、前記回転ドラムの回転軸に垂直な平面内において該回転ドラムの周方向に、該回転ドラムの回転軸に対して所定の角度をなして設けられ、
前記回転ドラムは、前記特殊光領域及び前記通常光領域に対向する位置に開口部をそれぞれ有し、
前記照明光の光軸と前記回転ドラムの回転軸とが直交する、
ことを特徴とする電子内視鏡用光源装置。
【請求項2】
前記回転ドラムは、前記特殊光領域と前記通常光領域との間に、前記照明光を遮光する遮光部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡用光源装置。
【請求項3】
前記通常光領域は、前記特殊光領域の光透過量と該通常光領域の光透過量が等しくなる減光率を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子内視鏡用光源装置。
【請求項4】
前記回転ドラムは、前記特殊光領域と前記通常光領域との組を複数組有し、
特殊光領域と通常光領域の各組は、前記回転ドラムの回転軸方向に隣接して設けられ、
各組において、特殊光領域を透過する所定の光の波長は、各組ごとに異なる波長帯域を有し、
電子内視鏡光源装置は、さらに、前記回転ドラムを該回転ドラムの回転軸方向に移動することにより前記照明光の前記回転ドラムへの入射位置を切り替える切替手段を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子内視鏡光源装置。
【請求項5】
前記切替手段は、前記回転ドラムの回転軸を支持する回転ドラム支持体と、該回転ドラム支持体を該回転軸方向に移動するボールねじとを有することを特徴とする請求項4に記載の電子内視鏡用光源装置。
【請求項6】
隣接する特殊光領域と通常光領域の組において、各特殊光領域及び各通常光領域は、隣接する組の各特殊光領域及び各通常光領域と前記回転ドラムの回転軸に垂直な方向に互いにずれて配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子内視鏡光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200379(P2011−200379A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69721(P2010−69721)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】