説明

電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置

【課題】装置の構成を簡単にすることができ、また拭き取りロールの回転を感光ドラムの回転に追随させると共に、この拭き取りロールの寿命を長くでき、さらに良好なクリーニング作用を行う。
【解決手段】感光ドラム1の回転方向上流側から順に、感光ドラムの表面に接触する掻き取りブレード11と、感光ドラムの表面にリバース回転にて摺擦する拭き取りロール12とを設け、拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より上流側に拭き取りロールに対して順回転する絞りロール13を、また拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より下流側で、かつ絞りロールとの間に外周の一部を洗浄用のキャリア液に浸漬して、上記拭き取りロールに対して正逆いずれかの方向に回転するブラシロール14をそれぞれ拭き取りロールに圧接した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真印刷機の感光ドラムの表面に残留したキャリア液及びトナーをクリーニングする電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来における感光ドラムクリーニング装置の一例として図1に示すようにしたものがあり、この従来の感光ドラムクリーニング装置は、感光ドラムaの回転方向で、かつ上下方向に位置をずらせた2個所にクリーニングロールb,cをそれぞれ感光ドラムaの回転方向に対してリバース回転させて摺擦させ、上側のクリーニングロールbを、軸体に吸液性を有する摺擦体(スポンジ層)dを積層した構成にし、また下側のクリーニングロールcを、周壁に多数の小孔を設けた円筒eに吸液性を有する摺擦体(スポンジ層)dを積層すると共に、円筒eの中空部に吸引管fを設けた構成にし、上記上側のクリーニングロールbに向けて洗浄液を噴霧する噴霧ノズルgを設け、両クリーニングロールb,cの間にクリーニングブレードhを設けた構成になっている。そして上記両クリーニングロールb,cの表面に、これらの表面をクリーニングするクリーニングブレードi,jが当接されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−271833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の感光ドラムクリーニング装置にあっては、感光ドラムaの表面をクリーニングするために、上下に位置をずらせて2本のクリーニングローラb,cを設けると共に、その上側のクリーニングロールに洗浄液を供給する構成となっていることによりコスト面で問題があり、またこの両クリーニングローラb,cが連動連結されていたため、上記2本のクリーニングロールの回転速度を個々に調整することができず、画像記録速度の変化に追随して全画像記録速度の領域での最適なローラの回転速度制御がしにくかった。
【0005】
また、各クリーニングロールb,cのクリーニングのために、これにクリーニングブレードを接触させていたため、このクリーニングブレードによりスポンジにて構成されているクリーニングロール表面が損傷するおそれがあった。
【0006】
また、両クリーニングロールb,cの間に設けたクリーニングブレードhにて掻き落とされたトナー及びキャリア液が下側のクリーニングロールcを介して排除する構造であるため、上側のクリーニングブレードhにて掻き落としたトナーやキャリア液が下側のクリーニングロールcから感光ドラムaの表面に再付着してしまうことがあり、洗浄効率的に改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記したことにかんがみなされたもので、1つの拭き取りロールを用いて構成を簡単にすると共に、感光ドラムの表面に摺擦するクリーニングロールの回転速度を画像記録速度の変化に追随して制御でき、またクリーニングロールの外周面の損傷を少なくしてこれの寿命を長くでき、さらに高速生産においても感光ドラムの表面に残留するトナー量をより微少にできるようにした電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置は、感光ドラム上に形成されたトナー像を転写ドラムを介して被記録媒体上に転写して画像印刷するようにした電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置において、感光ドラムの回転方向上流側から順に、感光ドラムの表面に接触する掻き取りブレードと、感光ドラムの表面にリバース回転にて摺擦する拭き取りロールとを設け、拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より上流側に拭き取りロールに対して順回転する絞りロールを、また拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より下流側で、かつ上記絞りロールとの間に外周の一部を洗浄用のキャリア液に浸漬して、上記拭き取りロールに対して正逆いずれかの方向に回転するブラシロールをそれぞれ拭き取りロールに圧接した構成になっている。
【0009】
また、本発明に係る電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置は、感光ドラム上に形成されたトナー像を転写ドラムを介して被記録媒体上に転写して画像印刷するようにした電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置において、感光ドラムの回転方向上流側から順に、感光ドラムの表面に接触する掻き取りブレードと、感光ドラムの表面にリバース回転にて摺擦する拭き取りロールとを設け、拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より上流側に拭き取りロールに対して順回転する絞りロールを、また拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より下流側で、かつ上記絞りロールとの間に外周の一部を洗浄用のキャリア液に浸漬して、上記拭き取りロールに対してリバース回転するブラシロールをそれぞれ拭き取りロールに圧接し、機械的に連動駆動された拭き取りロール、絞りロール、ブラシロールとを単独モータに連動連結して駆動制御するようにした構成になっている。
【0010】
そして上記クリーニング装置において、掻き取りブレードの下側に、この掻き取りブレードにて掻き取った掻き取り液を導く掻き取り液ガイドを設け、絞りロールの下側に、絞りロールにて絞られた絞り液と上記掻き取り液ガイドからの掻き取り液を受ける絞り液受皿を設けた構成になっており、さらに上記掻き取りブレードが、感光ドラムとの回転方向に離隔した2個所に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感光ドラムに摺擦するクリーニングロールは1つの拭き取りロールであることにより、拭き取りロールを用いたクリーニング装置として構成を簡単にすることができ、またこの拭き取りロールをこれに圧接する絞りロールとブラシロールと共に単独モータにて駆動するようにしたことにより、感光ドラムに対するクリーニングロールである拭き取りロールを感光ドラムの回転に対して最適な回転数に自由に調整することができる。
【0012】
また、上記拭き取りロールのクリーニングを、この拭き取りロールに圧接回転する絞りロールとブラシロールにて行うようにしたことにより、拭き取りロールはこれのクリーニングによる損傷を受けることがなくなり、拭き取りロールの寿命を長くすることができる。
【0013】
さらに本発明によれば、感光ドラムのクリーニングを感光ドラムの表面に摺接するブレードを有する掻き取りブレード、感光ドラムの表面にリバース回転して摺擦する拭き取りロールにて行われることにより、感光ドラムの表面のクリーニングを良好に行うことができ、これに残留する残留トナー及びキャリア液の量を微少にすることができる。
【0014】
そしてさらに本発明において、掻き取りブレードが感光ドラムの回転方向に離隔した2個所に配置されていることにより、掻き取りブレードによる掻き取り作用をダブルで行うことができ、良好な掻き取り作用を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は本発明を実施しようとする電子写真印刷機を概略的に示す説明図であり、図中1は感光ドラム、2はこの感光ドラム1に対接する転写ドラム、3はこの転写ドラム2に対接するバックアップローラである。
【0016】
この電子写真印刷機にあっては、上記感光ドラム1は図示しないモータ等の駆動手段にて画像形成時に一定速度で矢印方向に回転され、感光ドラム1の表面は帯電装置4にて暗中にて一様に帯電され、ついで感光ドラム1の表面に露光装置5により原稿光像が照射結像され、これにより感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。その後、静電潜像が現像領域を通過する際に、現像装置6にてこの静電潜像が可視像化されて感光ドラム1の表面にトナー像が形成される。
【0017】
この感光ドラム1の表面上におけるトナー像は、転写領域にて転写ドラム2を通して印加されるバイアス電圧とドラム間のニップ圧により、転写ドラム2の表面に1次転写され、この1次転写のトナー像は2次転写領域にて、転写ドラム2とバックアップローラ3の間を通過する被記録媒体7に2次転写されるようになっている。そして2aは、上記転写ドラム2にキャリア液を供給するキャリア液供給装置である。
【0018】
トナー像が2次転写された被記録媒体7は、図示しない定着装置(乾燥機)によりトナー像に定着された後、印刷物として機外に排出される。一方、上記1次転写後、感光ドラム1上に残留した残留電位が除電器8にて除去される。そして上記1次転写完了後の感光ドラム1の表面に残留したキャリア液と残留トナーが上記除電器8の下流側で感光ドラムクリーニング装置9により除去されるようになっている。なお、転写ドラム2に残留した残留トナーは、転写ドラムクリーニング装置10にて除去されて次の作像に備えられるようになっている。
【0019】
上記感光ドラムクリーニング装置9は図3に示すようになっている。この図3において、11は掻き取りブレード、12は拭き取りロール、13は絞りロール、14はブラシロール、15はこれらを収納するケースである。
【0020】
上記掻き取りブレード11は、感光ドラム1に先端が摺接する2枚のブレード11a,11bを感光ドラム1の回転方向に離隔してブラケット16に固着した構成になっている。そしてこのブラケット16は、1本の固着具17にてケース15側に固定されていて、この固定具17をゆるめることによりブラケット16が回動して上記両ブレード11a,11bの感光ドラム1の周面への当接強さを調節できるようになっている。上記2枚のブレード11a,11bのそれぞれの先端は、上記固定具17によるブラケット16の回動支点より上側に位置していることにより、ブラケット16を図3において左方向に回動することにより両ブレード11a,11bの摺接力が大きくなるが、このときにおいて両ブレード11a,11bが上下方向に離隔していることにより、上側に位置する上流側のブレード11aの摺接力が下側に位置する下流側のブレード11bより大きくなる。
【0021】
掻き取りブレード11の下側に掻き取りブレード11bにて掻き取った掻き取り液を受ける掻き取り液ガイド18が設けてあり、この掻き取り液ガイド18はケース15の下部に設けられた絞り液受皿19に連通されている。
【0022】
拭き取りロール12は上記掻き取りブレード11の下流側に位置して感光ドラム1の周面に接触すると共に、感光ドラム1の周面に対してリバースする方向に回転するようにして設けられている。拭き取りロール12の外周部はスポンジにて構成されていて、この拭き取りロール12が感光ドラム1の周面に対してリバース回転することにより摺擦して感光ドラム1の表面を拭き取るようになっている。
【0023】
絞りロール13は拭き取りロール12の下側で、かつこの拭き取りロール12の感光ドラム1との接触点よりも上流側に圧接されている。また、この絞りロール13は拭き取りロール12に対して順方向に回転するようになっている。そしてこの絞りロール13の下側に上記絞り液受皿19が設けられている。
【0024】
ブラシロール14は、拭き取りロール12の上記感光ドラム1との摺擦部より下流側で、かつ上記絞りロール13より上流側の周面で接触するようにして設けられている。そしてこのブラシロール14は、拭き取りロール12に対してリバース回転するようになっている。ブラシロール14の下側に洗浄用のキャリア液を入れる液舟20が設けてあり、ブラシロール14の下部はこの液舟20内のキャリア液に浸漬されている。
【0025】
上記拭き取りロール12、絞りロール13及びブラシロール14は図示しない歯車機構にて連結されていて、これらは回転速度を自由に制御可能にした図示しない単独モータを駆動元として駆動されるようになっており、拭き取りロール12は感光ドラム1の回転に追随するように回転制御され、また感光ドラム1の回転に対して最適な回転数に自由に調整できるようになっている。
【0026】
上記構成において、感光ドラム1の回転に従って、この感光ドラム1の表面に残留しているキャリア液と残留トナーは除電器8にて除電された後において掻き取りブレード11にて掻き取られる。このときにおいて感光ドラム1の表面に残留トナーは、キャリア液と共に2枚のブレード11a,11bにてこれの大部分が掻き取られる。そしてこの掻き取られた残留トナーは、キャリア液と共に掻き取り液ガイド18を通って絞り液受皿19に導かれる。
【0027】
ついで感光ドラム1の表面は、リバース回転している拭き取りロール12にて摺擦され、上記掻き取りブレード11にて取りきれなかった微細な残留トナー及びキャリア液が、この拭き取りロール12にて拭き取られる。そしてこの拭き取りによって汚れた拭き取りロール12はブラシロール14の押し付け回転により、かつこのブラシロール14から供給される洗浄用のキャリア液にてクリーニングされる。また、上記ブラシロール14にて拭き取りロール12に供給された洗浄用のキャリア液は、感光ドラム1に摺擦する前に絞りロール13にて絞り取られる。絞り取られたキャリア液は、絞り液受皿19より外部へ排出される。
【0028】
上記実施の形態では、掻き取りブレード11を2枚のブレード11a,11bを用いた例を示したが、これは1枚あるいは3枚以上であっても良い。
【0029】
上記ブラシロール14は、拭き取りロール12に対して順回転するようにしてもよい。この場合、ブラシロール14に対する動力伝達系を変えるか、あるいはブラシロール14を単独モータにて駆動するようにしてもよい。なお、上記拭き取りロール12、ブラシロール14及び絞りロール13のそれぞれを回転制御可能にした単独モータにて駆動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の感光ドラムクリーニング装置を示す断面図である。
【図2】本発明を適用しようとする電子写真印刷機の一例を概略的に示す説明図である。
【図3】本発明の要部を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…感光ドラム、2…転写ドラム、3…バックアップローラ、4…帯電装置、5…露光装置、6…現像装置、7…被記録媒体、8…除電器、9…感光ドラムクリーニング装置、10…転写ドラムクリーニング装置、11…掻き取りブレード、11a,11b…ブレード、12…拭き取りロール、13…絞りロール、14…ブラシロール、15…ケース、16…ブラケット、17…固定具、18…掻き取り液ガイド、19…絞り液受皿、20…液舟。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラム上に形成されたトナー像を転写ドラムを介して被記録媒体上に転写して画像印刷するようにした電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置において、
感光ドラムの回転方向上流側から順に、感光ドラムの表面に接触する掻き取りブレードと、感光ドラムの表面にリバース回転にて摺擦する拭き取りロールとを設け、
拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より上流側に拭き取りロールに対して順回転する絞りロールを、また拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より下流側で、かつ上記絞りロールとの間に外周の一部を洗浄用のキャリア液に浸漬して、上記拭き取りロールに対して正逆いずれかの方向に回転するブラシロールをそれぞれ拭き取りロールに圧接した
ことを特徴とする電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置。
【請求項2】
感光ドラム上に形成されたトナー像を転写ドラムを介して被記録媒体上に転写して画像印刷するようにした電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置において、
感光ドラムの回転方向上流側から順に、感光ドラムの表面に接触する掻き取りブレードと、感光ドラムの表面にリバース回転にて摺擦する拭き取りロールとを設け、
拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より上流側に拭き取りロールに対して順回転する絞りロールを、また拭き取りロールの感光ドラムとの摺擦部より下流側で、かつ上記絞りロールとの間に外周の一部を洗浄用のキャリア液に浸漬して、上記拭き取りロールに対してリバース回転するブラシロールをそれぞれ拭き取りロールに圧接し、
機械的に連動駆動された拭き取りロール、絞りロール、ブラシロールとを単独モータに連動連結して駆動制御するようにした
ことを特徴とする電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置。
【請求項3】
掻き取りブレードの下側に、この掻き取りブレードにて掻き取った掻き取り液を導く掻き取り液ガイドを設け、
絞りロールの下側に、絞りロールにて絞られた絞り液と上記掻き取り液ガイドからの掻き取り液を受ける絞り液受皿を設けた
ことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項記載の電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置。
【請求項4】
掻き取りブレードが、感光ドラムとの回転方向に離隔した2個所に配置されている
ことを特徴とする請求項1,2,3のいずれか1項記載の電子写真印刷機の感光ドラムクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−157179(P2009−157179A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336424(P2007−336424)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】