説明

電子写真平版印刷版のパンチ位置決め方法

【目的】 電子写真平版印刷版の印刷版装着用切り欠き部分の穿孔を位置精度良く実施する方法を提供する。
【構成】 ピン穴を有する電子写真平版印刷版の露光時にマークを画像として露光し、パンチ部における切り欠き部分穿孔時にそのピン穴、マークを基準として利用するパンチ位置合わせ方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真平版印刷版の製版装置におけるパンチ位置決め方法に関する。
【0002】
【従来の技術】平版印刷版の作製方法は既に数多く知られている。例えば、印刷用原版に銀塩フィルムによる原稿を密着し、該原版の感光層に直接紫外線等で露光し、これによって原稿の画像部に対応する硬化部分と、非画像部に対応する非硬化部分を形成し、非硬化部分をアルカリ又は水で洗浄除去し、硬化部分をインキ受理性とする製版方法である。この方法による印刷版がいわゆるPS版と称されるものであり、広く用いられている。
【0003】一方、コンピュータ画像処理技術及び大容量データのメモリー開発とデータ通信技術等の進歩により、近年では、原稿入力、補正、編集、割付から頁組まで一貫してコンピュータ操作され、高速通信網や衛星通信により即時遠隔地の末端プロッターに出力出来る電子編集システムが実用化している。特に、即時性の要求される新聞印刷分野等において電子編集システムはもちろん、そこからのデータにより印刷版が直接得られる製版システムについても実用化されつつある。現在、このような製版システムにおいては、電子写真プロセスを利用し、レーザー光源(半導体レーザー、He−Neレーザー等)露光によるシステムが種々の面から検討されている。
【0004】このようなシステムにおいては、後述のような溶出型の電子写真平版印刷版が、従来から使用されているPS版と同様な印刷条件で印刷することが可能であるため、有利に使用できる。その主な製版工程としては印刷用原版を帯電、露光、現像を行い、トナーにより画像を形成し、トナーが付着しない非画像部を溶出液により除去し、予め親水化処理を施した支持体表面を露出させ印刷版とする。ここでトナーにより保護された画像部は親油性であるから、オフセット印刷が出来るのである。
【0005】電子写真平版印刷版は、アルミニウム等の導電性支持体上に光導電性物質を含有する光導電体層が被着された電子写真感光体から作製される。この電子写真感光体の光導電体層を構成する材料としては、特公昭37−17162号、同38−7758号、同46−39405号、特開昭52−2437号、同57−161863号、同58−2854号、同58−28760号、同58−118658号、同59−12452号、同59−49555号、同62−217256号、同63−226668号、特開平1−261659号公報等に記載されている様な有機光導電性化合物・結着樹脂系材料が実用感度、耐刷性等に優れている。
【0006】電子写真平版印刷版の製版工程に於ては、上記電子写真感光体の光導電体層上に、まず所定の帯電工程が施され、一様な電荷がのせられる。次に露光によって画像に対応する静電潜像が形成される。続いて電子写真用現像剤を用いての現像そして定着処理が行われ、上記静電潜像に対応したトナー画像が形成される。トナー画像以外の非画像部は、アルカリ剤等を含有する溶出液により溶解・除去(溶出)され、続いて水洗または酸性のリンス液による版面表面の見かけ上のpHの調節、また必要に応じて版面保護液(保護ガム液)の塗布等の処理が施されて最終的な刷版が得られる。
【0007】ところで上記現像行程において、いわゆる反転現像によりトナー画像を得る場合、その優れた現像特性からカブリおよび線細りのない良好な画像を得ることが出来る。最近では特に高解像力で高品質な画像再現性が要求されており、反転現像による電子写真平版印刷版の製造方法はこの品質要求に応える方法である。
【0008】反転現像を行う場合には、まず露光工程において、トナーの付着が行われるべき部分、すなわち画線部に対して光照射が行われ、その光照射部分の電位がほぼ0Vに減衰させられる。このとき光照射が行われない部分、すなわち非画像部相当部分は初期帯電電位がそのまま維持される事となる。現像行程領域では、液体現像剤で充満された電極を介して電極と電子写真平版印刷版との間に所定の現像バイアスを印加する。この場合現像剤中のトナー粒子は、所定の方法によって帯電された電子写真平版印刷版側と同極性の荷電を有しているものを用いる。このような状態で、上記現像行程領域の現像電界中に静電潜像を有する感光体が搬入されると、現像剤中のトナー粒子が現像電界により感光体側に泳動され、光照射部分である感光体の0V部分にトナー粒子の付着が行われる。この時初期帯電電位が残留している非画像部相当部分はトナー粒子と反発しあうこととなってトナー粒子の付着は回避される。
【0009】このような反転現像に用いられる現像剤としては、一般に乾式現像剤および液体現像剤のいずれも採用することが出来るが、液体現像剤を用いれば、トナー粒子を微細なものとすることができるため高解像力で良好な画像再現性を得ることが出来る。液体現像剤は、高絶縁媒体中に顔料(染料)あるいはポリマー粒子を分散させ必要に応じて着色を行い、これに電荷(荷電)制御剤を加えて所定の電荷を付与したものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】新聞印刷分野おいてオフセット(平版)印刷機は、印刷紙面に対する平版印刷版の印刷面の左右位置決め手段として、印刷機の印刷版装着部分に位置決めピンを設け、予め平版印刷版にはそのピンに対応する切り欠き部を設けて、それを基準に印刷機に印刷版を装着し、印刷版の左右位置決めを行い印刷を実施している(例えば、「新聞印刷 印刷編改訂版」(日本新聞協会 発行)P202 オフセット印刷機の特徴、等に記載)。
【0011】ところで、コンピュータからの画像データを、レーザー光源を用いて上述のような電子写真反転現像プロセスを含み印刷版を直接自動製版する装置では、印刷機に装着するための切り欠き部分を穿孔するために、パンチ部とよばれる工程が存在する。この工程では前工程から搬送された印刷版の周側面の少なくとも一部を基準として位置決めし、穿孔していた。このような装置としては例えば、「新聞技術」日本新聞協会 NO.133 P16〜23(1990)記載のコンピューター直接製版装置等が挙げられる。このような製版装置においては、印刷版の断裁精度によっては基準にずれを生じ、穿孔位置にもずれを生じさせる場合があった。モノクロ印刷などの単色印刷の場合はまだしも、例えば4色重ね合わせるカラー印刷、特に印刷機が多色機の場合などには、この際のずれは印刷物に致命的欠陥を与えていた。
【0012】電子写真平版印刷版を電子写真プロセスを含み、印刷機に装着できる状態まで自動で製版を行う製版装置における、印刷機装着用のパンチ穴穿孔位置決め手段もしくは方法は、上述の方法以外にはこれまでに存在していなかった。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題の解決は、以下の構成をとる本発明の方法により達成される。本発明に係る第1の発明は光導電層を有するシート状の電子写真平版印刷版を少なくとも、帯電後、コンピュータからの画像情報に基づき平面定盤上で走査露光を行い、続いて現像、定着、溶出の順に処理を行い、その後印刷機装着用の位置決めパンチを行う手段を有する製版装置において、(1)前記平面定盤上で該印刷版の露光位置決めの際に、少なくとも帯電前に穿孔された該印刷版のピン穴を基準として該印刷版の位置決めを行い、(2)予めメモリーとしてコンピュータが保有しているかあるいは画像情報に付随してコンピュータに入力された、画像情報に対して常に所定位置に露光されるマークを該印刷版上に露光し、(3)少なくとも現像工程、定着工程、溶出工程、終了後当該印刷版のパンチ実施の際に、前記ピン穴を基準として該印刷版を摺動させ前記マークを光学的読み取り手段にて判読して摺動を停止することにより、該印刷版の位置決めを行う構成である。
【0014】本発明におけるマークとは、光学的読み取り手段により読み取り位置を確認できるものであれば、線状、点状のものなど特に限定されるものではない。
【0015】さらに本発明に係る第2の発明は、第1の発明記載の光学的読み取り手段が、半導体レーザーを用いている構成である。
【0016】本発明における光学的読み取り手段としては半導体レーザー光を用いた市販の光電スイッチ類およびそれに関するコントローラ類を用いることが出来る。
【0017】
【実施例】以下、本発明に係わる電子写真平版印刷版の製版装置に於ける各工程及びそれらに具有或は志向する作用の詳細について図面を用いて説明する。尚、本発明はその主旨を越えない限り、本説明及び実施例に何ら制限されるものではない。
【0018】図1は本発明の帯電および露光部を概略的に示したものである。本実施例の装置においては、前工程の図示しない給版部より搬送された、ピン穴104を有する、表面を砂目立ておよび陽極酸化したJIS1050アルミニウムシート(0.3mm厚)上に無金属フタロシアニンを光導電材料として用いた光導電層を塗布した電子写真平版印刷版103(以下印刷版と記述する)は平面定盤101上に一旦静置されるようになっている。次に平面定盤101よりピン穴104に対し下方からピン(図示せず)が出され、ピン穴104にピン(図示せず)が挿入された状態で印刷版103の露光位置を位置決め手段(図示せず)により決定され、ピン(図示せず)が下降し真空吸着が行われる。次にこの状態で帯電工程(図示せず)が行われ、その後露光が開始される。露光は、露光ユニット102により、コンピュータからの画像情報に基づいて印刷画像と、予め設定された位置(点線で示された印刷範囲106の外)にマーク105が画像として露光される様になっている。
【0019】電子写真平版印刷版の現像工程および溶出工程においては液体の処理剤を用いる場合が多く、前記ピン穴104は、印刷版搬送方向に対し印刷版上で印刷範囲外の終端側(例えば印刷機装着用折り曲げしろ部分等)に位置し、可能な限り小面積(例えば5mm以下)にすることがこれら液体の絞り不良の悪影響を受けにくくなるために好ましい。また、本実施例におけるピン穴の穿孔は本発明に係る製版装置にセットする前に予め行ったが、製版装置内において、帯電工程前に穿孔手段を設けることも可能である。
【0020】印刷版103に対する走査露光方法は、本発明に於いては問題とならずいかなる手段を用いても構わない。本実施例に於いては、図1に矢印で示したように平面定盤101の移動により副走査を行っているが、露光ユニット102の移動による副走査でも可能である。
【0021】露光工程後の印刷版は、その後所定の処理工程(現像工程、定着工程、溶出工程、等)を経てパンチ工程に搬送される。図2において、パンチ台201上に搬送された印刷版103は、ピン穴104にパンチ部ピン205がパンチ台201から上昇、挿入される。次に印刷版103はパンチ位置決め押しピン204とパンチ位置決め戻しピン203に挟持され、一旦パンチ位置決め押しピン204のストローク終端まで戻される。その後予めマーク105の上部位置に設置された半導体レーザーを用いたレーザ式光電スイッチ202(キーエンス製LZ−151)からレーザー光が発射される。レーザー光が発射されている間に印刷版103はパンチ位置決め押しピン204およびパンチ位置決め戻しピン203によって挟持、摺動される。摺動中にレーザ式光電スイッチ202はマークを読み取るとその位置で印刷版103を停止させるべく信号が制御部(図示せず)に送られ、パンチ位置決め押しピン204およびパンチ位置決め戻しピン203の摺動が停止されるようになっている。
【0022】上述のようにして印刷版103の位置が決定されると直ちに、印刷版103はパンチ台201に真空吸着されるようになっている。図4に示したように、パンチ台201に固定されているパンチ下刃207に対してパンチ上刃支持部402に支持されたパンチ上刃206が図示しない駆動手段によって下降されることにより、電子写真平版印刷版103はパンチ上刃206とパンチ下刃207の穿孔部403の重なり合う部分、すなわち印刷機用切り欠き部分208が切り欠かれる。印刷版103の印刷機用切り欠き部分208に対応する切り欠き屑(図示せず)はパンチ台201に設けられた切り欠き屑排出口401から図示しない切り屑受けに集められるようになっている。
【0023】このようにして、印刷版103のマーク側とピン穴側の双方に印刷機用切り欠き部分208の穿孔が行われるようになっている。本実施例においては、印刷機用切り欠き部分208は図3に示した部分および形状であるが、これは対応する印刷機によるものであり、切り欠き部分の位置、形状、個数は特に限定されるものではない。
【0024】次に本実施例の作用について説明する。ピン穴104を有する印刷版103は平面定盤101上に搬送され、次に平面定盤101よりピン穴104に対し下方からピン(図示せず)が出され、ピン穴104にピン(図示せず)が挿入された状態で印刷版103の露光位置を位置決め手段(図示せず)により決定され、ピン(図示せず)が下降し真空吸着が行われた後にこの状態で帯電工程(図示せず)が行われ、その後露光が、露光ユニット102により、コンピュータからの画像情報に基づいて印刷画像と、予め設定された位置(点線で示された印刷範囲106の外)にマーク105が画像として露光される様になっている。
【0025】露光工程後の印刷版は、その後所定の処理工程(現像工程、定着工程、溶出工程、等)を経てパンチ工程に搬送される。図2において、パンチ台201上に搬送された印刷版103は、ピン穴104にパンチ部ピン205がパンチ台201から上昇、挿入される。次に印刷版103はパンチ位置決め押しピン204とパンチ位置決め戻しピン203に挟持され、一旦パンチ位置決め押しピン204のストローク終端まで戻される。その後予めマーク105の上部位置に設置された半導体レーザーを用いたレーザ式光電スイッチ202(キーエンス製LZ−151)からレーザー光が発射される。レーザー光が発射されている間に印刷版103はパンチ位置決め押しピン204およびパンチ位置決め戻しピン203によって挟持、摺動される。摺動中にレーザ式光電スイッチ202はマークを読み取るとその位置で印刷版103を停止させるべく信号が図示しない制御部に送られ、パンチ位置決め押しピン204およびパンチ位置決め戻しピン203の摺動が停止されるようになっている。
【0026】上述のようにして印刷版103の位置が決定されると直ちに、印刷版103はパンチ台201に真空吸着され、パンチ台201に固定されているパンチ下刃207とパンチ上刃206により、電子写真平版印刷版のマーク側とピン穴側の双方に印刷機用切り欠き部分208の穿孔が行われる。このようにして製版された印刷版は、印刷画像に対して位置ずれのない印刷機装着用の切り欠き部が穿孔でき、印刷機に装着しても位置ずれなく印刷を行うことが出来る。またさらに、4色の多色印刷を行う場合においてはそれぞれの色版の画像の位置ずれなく切り欠き部が穿孔でき、多色印刷機に装着して多色印刷を行っても4色の位置ずれなく印刷物に印刷することが出来る。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、電子写真平版印刷版の自動製版装置におけるパンチ工程において、電子写真平版印刷版の断裁精度に係わらず、印刷機装着用の切り欠き部分の穿孔を位置精度よく実施することが可能となり、特に多色印刷においても色ずれの発生しない印刷版を作製することが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる製版装置の描画部の概略斜視図。
【図2】本発明に係わる製版装置のパンチ部の概略斜視図
【図3】本発明に係わる製版装置のパンチ工程後の印刷版上面概略図
【図4】本発明に係わる製版装置のパンチ部の断面拡大概略図
【符号の説明】
101 平面定盤
102 露光ユニット
103 電子写真平版印刷版
104 ピン穴
105 マーク
106 電子写真平版印刷版の印刷範囲
201 パンチ台
202 レーザ式光電スイッチ
203 パンチ位置決め戻しピン
204 パンチ位置決め押しピン
205 パンチ部ピン
206 パンチ上刃
207 パンチ下刃
208 印刷機用切り欠き部分
301 印刷版折曲げ位置
401 パンチ台の切り欠き屑排出口
402 パンチ上刃支持部
403 穿孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光導電層を有するシート状の電子写真平版印刷版を少なくとも、帯電後、コンピュータからの画像情報に基づき平面定盤上で走査露光を行い、続いて現像、定着、溶出の順に処理を行い、その後印刷機装着用の位置決めパンチを行う手段を有する製版装置において、(1)前記平面定盤上で該印刷版の露光位置決めの際に、少なくとも帯電前に穿孔された該印刷版のピン穴を基準として該印刷版の位置決めを行い、(2)予めメモリーとしてコンピュータが保有しているかあるいは画像情報に付随してコンピュータに入力された、画像情報に対して常に所定位置に露光されるマークを該印刷版上に露光し、(3)少なくとも現像工程、定着工程、溶出工程、終了後当該印刷版のパンチ実施の際に、前記ピン穴を基準として該印刷版を摺動させ前記マークを光学的読み取り手段にて判読して摺動を停止することにより、該印刷版の位置決めを行うことを特徴とする電子写真平版印刷版のパンチ位置決め方法。
【請求項2】 前記光学的読み取り手段に、半導体レーザーを用いる請求項1記載の電子写真平版印刷版のパンチ位置決め方法。
【請求項3】 前記電子写真平版印刷版が多色印刷用印刷版である請求項1および2記載の電子写真平版印刷版のパンチ位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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