説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置、電子写真感光体の製造方法、及びウレア化合物

【課題】長期使用において機械的耐久性、電気的安定性及び画像流れ抑制を高い次元で満足した高性能な電子写真感光体の提供。
【解決手段】感光体の最表面層が連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と、下記式(1)又は(2)で示されるウレア化合物とが含まれる混合物を硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体およびその製造方法、ならびに、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。また、ウレア化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に搭載される電子写真感光体には、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有する有機電子写真感光体(以下、「電子写真感光体」という)があり、これまで幅広い検討がなされてきた。特に、電子写真感光体の長寿命化や高画質化を目的として、電子写真感光体の耐久性を向上させることが試みられている。
【0003】
感光体の耐久性の向上には、磨耗や傷に対する機械的耐久性および帯電と除電の繰り返し使用に対する電位安定性の向上、放電生成物による画像流れの発生の抑制が挙げられる。そして、画像安定性に優れた電子写真感光体を得るために、機械的耐久性および電位安定性の向上と、画像流れの抑制とを両立した電子写真感光体が求められている。
【0004】
特許文献1では、表面層に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を重合させて得られる重合物を含有させる技術が開示されている。この技術は、電子写真感光体の機械的耐久性(耐摩耗性)と電位安定性を向上させることができる。しかし、特許文献1に記載の耐摩耗性が高い電子写真感光体は、放電生成物(オゾン、窒素酸化物)が蓄積しやすいため、高温高湿環境下において画像流れが発生しやすい。
【0005】
画像流れを抑制する技術として、電子写真感光体に添加剤を含有させる方法が挙げられる。特許文献2では、尿素化合物を感光層に含有させることで、活性ガスによる電子写真感光体の劣化を抑制することが提案されている。
【0006】
また、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を重合させて得られる重合物(硬化性樹脂)を含有する表面層において、高い機械的耐久性を維持するため、連鎖重合性を有する添加剤を用いる技術がある。具体的には、様々な連鎖重合性シロキサン化合物を用いて感光体表面のクリーニング性を向上させる試みがなされている。特許文献3では、ジメチルシロキサン構造を繰り返し単位として有する反応性シリコーン化合物を添加させる方法が提案されている。特許文献4では、ラジカル反応性を有するアクリル変性ポリオルガノシロキサンをラジカル重合性モノマー中に分散させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−066425号公報
【特許文献2】特開昭63−097959号公報
【特許文献3】特開2005−115353号公報
【特許文献4】特開2006−047949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献2に記載の尿素化合物では、画像流れの抑制効果があるものの十分ではなく、さらに、電位安定性が低下しやすい。特許文献3に記載の反応性シリコーン化合物は、ジメチルシロキサン構造とアリール基を有する電荷輸送性化合物との親和性が十分でないために塗膜欠陥が発生しやすい。特許文献4に記載のアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、ジメチルシロキサン構造がクリーニング性を向上させるものの、画像流れの抑制が十分ではなく、電位安定性が低下しやすい。
【0009】
本発明の目的は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を重合させて得られる重合物を含有する表面層を有する電子写真感光体において、機械的耐久性および電位安定性(電位変動の抑制)に優れ、かつ画像流れを抑制する電子写真感光体を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法に関する。さらに、本発明の別の目的は、オゾン、窒素酸化物(NOx)、および硝酸などの活性物質による劣化を抑えるウレア化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
【0011】
本発明は、支持体、該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と、連鎖重合性官能基を有するウレア化合物との組成物を重合させて得られる重合物を含有する表面層を有し、該ウレア化合物が下記式(1)で示される化合物、および下記式(2)で示される化合物の少なくとも一種であることを特徴とする電子写真感光体に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
式(1)および式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を示す。X21〜X24、およびX41〜X46は、それぞれ独立に、アルキレン基を示す。P11〜P14、P31〜P36は、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を示し、P11〜P14のうち少なくとも1つ、P31〜P36のうち少なくとも1つはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である。a、b、gおよびhは、0〜5の整数を示し、iは0〜4の整数を示す。c、d、jおよびkは、0又は1を示す。
【0014】
また、本発明は、前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供することにある。
【0015】
また、本発明は、前記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明は、前記電子写真感光体の製造方法であって、前記電荷輸送性化合物および前記ウレア化合物を含有する表面層用塗布液を用いて塗膜を形成し、該塗膜に含有される前記電荷輸送性化合物、および前記ウレア化合物を重合させることによって表面層を形成する工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明は、下記式(3)または下記式(4)で示されるウレア化合物を提供することにある。
【0018】
【化2】

【0019】
式(3)および式(4)中、R51〜R55は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を示す。X61〜X64、およびX81〜X86は、それぞれ独立に、アルキレン基を示す。P71〜P74、P91〜P96は、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を示し、P71〜P74のうち少なくとも1つ、P91〜P96の少なくとも1つはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である。l、m、pおよびqは、0〜5の整数を示し、rは0〜4の整数を示し、n、o、sおよびtは、0又は1を示す。
【0020】
本発明によれば、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を重合させて得られる重合物を含有する表面層を有する電子写真感光体において、電位安定性に優れ、かつ画像流れが抑制された電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ、及び電子写真装置を提供することができる。また、本発明によれば、前記電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法を提供することができる。さらに、オゾン、窒素酸化物(NOx)、および硝酸などの活性物質による劣化を抑えるウレア化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電子写真感光体を製造するために用いられる電子線照射装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の電子写真感光体は、上記のとおり、支持体(導電性支持体)、該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と、連鎖重合性官能基を有するウレア化合物との組成物を重合させて得られる重合物(硬化性樹脂)を含有する表面層を有し、該ウレア化合物が下記式(1)で示される化合物、および下記式(2)で示される化合物の少なくとも一種であることを特徴とする。
【0023】
【化3】

【0024】
式(1)および式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を示す。X21〜X24、およびX41〜X46は、それぞれ独立に、アルキレン基を示す。P11〜P14、P31〜P36は、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を示し、P11〜P14のうち少なくとも1つ、P31〜P36のうち少なくとも1つはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である。a、b、gおよびhは、0〜5の整数を示し、iは0〜4の整数を示し、c、d、jおよびkは、0又は1を示す。
【0025】
本発明者らは、本発明の電子写真感光体において、機械的耐久性および電位安定性に優れ、かつ画像流れが抑制される理由を以下のように推測している。
【0026】
電子写真感光体の表面に蓄積した放電生成物(オゾン、窒素酸化物)は、多湿環境下の水分と作用して硝酸となり、画像流れを引き起こすことが技術文献にて指摘されている(シャープ技報 第101号・2010年8月「複写機画像不良の定量的な評価方法の確立」)。電子写真感光体の表面層の表面に硝酸が付着すると、電子写真感光体に含有される電荷輸送物質に作用して、感光体の表面で比較的寿命の長いイオン対を生成し、表面層の表面抵抗が変化してしまう。その結果、画像形成部と非画像形成部の境界において、十分な明部電位を得ることができずに、画像形成部の画像濃度が薄くなる(画像がかすれる、消失する)という画像流れが発生していると考えられる。
【0027】
そして、本発明のウレア化合物は、ウレア部位にアリール基が隣接し、さらに、窒素原子に、アルキレン基、またはアルキル基を有する構造を有する。このような構造を有することにより、ウレア部位に隣接するアリール基が、電荷輸送物質が有するアリール基に比べて優先的に、放電生成物由来の硝酸と比較的短寿命のイオン対を形成しやすい。よって、表面層の表面抵抗の変化が抑制され、画像形成部と非画像形成部の境界において、十分な明部電位を得ることができる。その結果、画像形成部の画像濃度が薄くなることが抑制され、画像流れが抑制されていると推測している。
【0028】
また、本発明のウレア化合物の上述した構造(ウレア部位にアリール基が隣接し、さらに、窒素原子に、アルキレン基、またはアルキルを有する構造)は、重合(連鎖重合)の重合阻害をすることが低減されている。したがって、本発明のウレア化合物のアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基の部位と、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物との共重合が効率よく進むことにより、重合度の高い重合物を形成することができると考えられる。
【0029】
このような特徴を有することによって、本発明のウレア化合物を用いた電子写真感光体は、機械的耐久性および電位安定性に優れ、かつ画像流れが抑制されていると推測している。
【0030】
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体である。
【0031】
本発明において感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層とが挙げられる。本発明の電子写真感光体においては、積層型感光層が好ましい。また、電荷輸送層自体を積層構成とすることができる。また、電荷輸送層上に保護層を形成してもよい。
【0032】
本発明の電子写真感光体の表面層は、電荷輸送層が最表面である場合は、電荷輸送層が表面層であり、電荷輸送層上に保護層が設けられている場合は、保護層が表面層である。
【0033】
本発明の電子写真感光体の表面層は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と、連鎖重合性官能基を有するウレア化合物との組成物を重合させて得られる重合物を含有する。そして、該ウレア化合物は、上記式(1)で示される化合物、および上記式(2)で示される化合物の少なくとも一種であることを特徴とする。
【0034】
該重合物は、電荷輸送性化合物の連鎖重合性官能基と、ウレア化合物の連鎖重合性官能基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)とが重合することにより得られる。
式(1)、および式(2)の置換若しくは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの無置換のアルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基などのアルコキシ置換アルキル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基などのハロゲン置換アルキル基が挙げられる。置換若しくは無置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの無置換のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基などのアルコキシ置換アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基などのハロゲン置換アルコキシ基が挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
【0035】
本発明のウレア化合物は、上記式(1)、および上記式(2)中のa、b、g,hおよびiが0であると、好ましい。
また、ウレア化合物は、上記式(1)、および上記式(2)中のc、d、jおよびkが0であると好ましい。
さらに、ウレア化合物は、上記式(1)、および上記式(2)中の、X21〜X24、X41〜X46のうち、少なくとも1つがエチレン基またはn−プロピレン基であると、重合反応が行われやすくなり好ましい。
【0036】
以下に、上記式(1)で示される化合物、上記式(2)で示される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
上記例示化合物のうち、本発明においては、好ましくは、上記式(1−1)、(1−3)、(1−5)、(1−15)、(2−1)、(2−4)、(2−8)、(2−9)、(2−10)、(2−11)で示される化合物である。
【0042】
前記ウレア化合物は、水酸基を有するウレア化合物を塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルなどのアクリル化剤でエステル化して合成することができる。
【0043】
前記水酸基を有するウレア化合物は、水酸基を有するアニリン誘導体と尿素とを縮合反応させて水酸基を有するウレア誘導体を得る。その後、ウレア誘導体の水酸基をテトラヒドロピラニルエーテルなどで保護し、ウレア位のNHをN−アルキル化し、さらに脱保護することにより得られる。また、水酸基を有するアニリン誘導体とイソシアン酸フェニル誘導体又はジイソシアン酸フェニレン誘導体との付加反応で得られるウレア化合物を上述の記載と同様に水酸基を保護し、ウレア位のNHをN−アルキル化し、さらに脱保護することにより得られる。
【0044】
本発明の表面層において、ウレア化合物の含有量は、表面層用塗布液の全固形分質量に対して1質量%以上60質量%以下の範囲が好ましく、更に好ましくは5質量%以上40質量%以下の範囲である。1質量%以上60質量%以下であると、画像流れの抑制効果と電位安定性に優れる。
【0045】
本発明の電子写真感光体において、機械的耐久性の観点から、連鎖重合官能基を有する電荷輸送性化合物、および連鎖重合官能基を有するウレア化合物が、合計して3つ以上の連鎖重合官能基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)を有することが好ましい。
【0046】
このような構成によって重合することによって、立体的な網目構造(3次元網目構造)を形成して得られるものである。これにより、表面層に十分な機械的耐久性が付与される。
【0047】
表面層には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物が用いられる。
【0048】
重合(連鎖重合)とは、重合反応形態がラジカルあるいはイオンの中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合、または異性化重合のことをいう。そして、連鎖重合性官能基は、前述の重合反応形態が可能な官能基を意味する。本発明において、連鎖重合性官能基の具体例は、特開2006−010816号公報に開示されている。本発明において、好ましい連鎖重合性官能基は、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基である。理由としては、ウレア化合物がアクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基を有していることにより、親和性が良好となるからである。
【0049】
また、十分な3次元網目構造を形成する観点から、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物であることが好ましい。また、多官能モノマー(同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有し、電荷輸送能を有さない化合物)を併用することで機械的強度を向上させられる場合には、同一分子内に連鎖重合性官能基を1つだけ有する電荷輸送性化合物を用いることができる。
【0050】
本発明において連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、電荷輸送能を有する化合物である。電荷輸送性化合物としては、アリール基またはヘテロアリール基を有するものが一般的である。具体的には、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、9−(p―ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体などが挙げられる。
【0051】
本発明に用いられる連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として好ましくは、特開2000−066425号公報、特開2000−206715号公報、特開2000−206716号公報に開示されている化合物である。さらに、下記式(5)で示される化合物であることが機械的耐久性、電位安定性の面で特に好ましい。
【0052】
【化8】

【0053】
式5中、Ar110は、アルキル基、及び/又はアルコキシ基を有しても良いアリール基を示す。R101、R102は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。R103、R104は、それぞれ独立に、炭素数が1から4のアルキレン基を示す。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0054】
本発明において、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の含有量は、表面層用塗布液の全固形分質量に対して40質量%以上95質量%以下であることが好ましい。40質量%以上95質量%以下であると、十分な電位安定性が得られる。
【0055】
本発明の電子写真感光体の表面層には、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの劣化防止剤、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂微粒子やフッ化カーボンなどの潤滑剤、重合反応開始剤や重合反応停止剤などの重合制御剤が挙げられる。
【0056】
本発明の電子写真感光体は、保護層が表面層である場合は電荷輸送層上に、電荷輸送層が表面層である場合は電荷発生層上に表面層が設けられる。表面層は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と、連鎖重合性官能基を有するウレア化合物とを溶剤に溶解させて得られる表面層用塗布液を用いて塗膜を形成し、塗膜に含有される該電荷輸送性化合物、および該ウレア化合物を重合させることによって形成することができる。
【0057】
表面層用塗布液に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
次に、本発明に用いられる電子写真感光体の構成について説明する。
【0059】
〔支持体〕
本発明の電子写真感光体の支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)であればよい。例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属または合金が挙げられる。また、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂の絶縁性支持体上にアルミニウム、銅などの金属あるいは、酸化インジウム、酸化スズなどの導電材料の薄膜を形成したものが挙げられる。カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子のような導電性粒子を樹脂などに含浸したものや、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。支持体の形状としては、円筒状、シート上が挙げられるが、円筒状が好ましい。また、干渉縞を抑制するために支持体はその表面を適度に荒らしておくことが好ましい。具体的には、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理を行った支持体を用いることが好ましい。
【0060】
本発明の電子写真感光体においては、支持体上に導電性粒子と樹脂を有する導電層を設けてもよい。導電層は、導電性粒子および樹脂を有する導電層用塗布液を支持体上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができ、導電層中には導電性粒子を含む粉体が含有される。導電性粒子としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀、などの金属や合金の粉体や、酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体が挙げられる。
【0061】
導電層に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0062】
導電層用塗布液に用いられる溶剤としては、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがより好ましい。
【0063】
本発明の電子写真感光体では、支持体または導電層と、感光層(電荷発生層)との間に中間層を設けてもよい。中間層は、樹脂を含有する中間層用塗布液を支持体上、または導電層上に塗布し、これを乾燥または硬化させることによって形成することができる。
【0064】
中間層に用いられる樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ−N−ビニルイミダゾール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド樹脂、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ、ゼラチンなどが挙げられる。また、中間層に上述の導電性粒子を含有させることもできる。中間層の膜厚は、0.05μm以上40μm以下であることが好ましく、0.4μm以上20μm以下がより好ましい。また、中間層には、半導電性粒子、電子輸送物質、あるいは電子受容性物質を含有させてもよい。
【0065】
〔感光層〕
本発明の電子写真感光体では、支持体、導電層または中間層上には、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)が形成される。
【0066】
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質として、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、アゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、キノシアニン顔料などが挙げられる。
【0067】
積層型感光層において、本発明の電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル化合物の重合体や共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルベンザール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタ樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0068】
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
【0069】
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との割合は、電荷発生物質1質量部に対して、結着樹脂が0.3質量部以上2質量部以下が好ましい。また、分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルを用いた方法が挙げられる。電荷発生層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましい。種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0070】
積層型感光層において、電荷輸送層が表面層である場合、電荷輸送層は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と、および連鎖重合性官能基を有するウレア化合物との組成物を重合させて得られる重合物を含有する。連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、およびウレア化合物については上述の通りである。また、電荷輸送層上に保護層が形成され、保護層が表面層である場合は、電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂を含有する電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上にと塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0071】
電荷輸送層上に保護層として用いた場合、その下層に当たる電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリールアルカン系化合物、トリアリールアミン系化合物、カルバゾール系化合物、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物などが挙げられる。
【0072】
上記電荷輸送層に用いられる結着樹脂は、電荷発生層に用いられる樹脂と同様であり、好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂が挙げられる。表面層が保護層である場合において、電荷輸送物質の割合は、電荷輸送層の全質量に対して、電荷輸送物質が30質量%以上70質量%以下が好ましい。より好ましくは、40質量%以上60質量%以下である。
【0073】
電荷輸送層の膜厚は、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
【0074】
本発明において、表面層が保護層である場合は、保護層は、上述の通り、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物と連鎖重合性官能基を有するウレア化合物との組成物を重合させて得られる重合物を含有する。
【0075】
また、表面層が電荷輸送層、または保護層のいずれの場合においても、上述の重合物の他に、電荷輸送物質を含有させることができる。表面層に含有させる電荷輸送物質の含有量は、電子写真感光体の機械的耐久性と電位安定性の観点から、表面層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0076】
上記各層の塗布液を塗布する際には、浸漬コーティング(浸漬塗布)法、スプレーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スピンナーコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0077】
単層型感光層の場合は、支持体上に設けられた電荷発生物質及び電荷輸送物質を有する単層型感光層上に本発明の表面層を形成することが好ましい。
【0078】
本発明ではクリーニング性の向上を目的として、電子写真感光体の表面層に粗面化処理を行っても良い。粗面化処理としては、最表面層に研磨シートを擦り当てる方法、凸凹形状を有する型部材の形状を転写して、表面層の表面に凹凸形状を形成する方法が挙げられる。
【0079】
連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物およびウレア化合物の重合は、熱、光(紫外線など)または放射線(電子線など)を用いて行うことができる。上述した化合物を重合させる際には、必要に応じて重合開始剤を用いてもよい。これらの中でも、必ずしも重合開始剤の用いる必要のない、放射線を用いた重合が好ましく、電子線を用いた重合がより好ましい。
【0080】
電子線を用いて重合させると、非常に高密度な3次元網目構造が得られ、良好な電位安定性が得られる。また、短時間でかつ効率的な重合反応であるがゆえに生産性も高い。さらには、電子線透過性の制御をしやすいため、厚膜時や添加剤などの遮蔽物質が表面層中に存在する際の重合阻害の影響が小さい。ただし、連鎖重合性官能基の種類や中心骨格の種類によっては重合反応が進行しにくい場合があり、その際には影響のない範囲内で重合開始剤を添加することもできる。電子線を照射する場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型のいずれの形式も使用することができる。
【0081】
電子線を照射する場合に、好ましい照射条件は以下の通りである。本発明において、加速電圧は120KV以下が好ましく、より好ましくは80KV以下である。また電子線の吸収線量は1×10〜1×10Gyであることが好ましく、更には5×10〜5×10Gyが好ましい。吸収線量が1×10Gy以上1×10Gy以下であると、機械的耐久性、および電位安定性に優れた電子写真感光体が製造できる。
【0082】
図1に本発明の電子写真感光体を製造するために用いられる電子線照射装置の概略構成図を示す。本実施例で用いる電子線照射装置は図1に示すように、電子線発生部110と、照射室120と、照射窓部130とを備えるものである。
【0083】
電子線発生部110は、電子線を発生するターミナル112と、ターミナル112で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管114とを有するものである。また、電子線発生部110の内部は、図示しない拡散ポンプにより10−4〜10−6Paの真空に保たれている。ターミナル112は、熱電子を放出する線状のフィラメント112aと、フィラメント112aを支持するハウス112bと、フィラメント112aで発生した熱電子をコントロールするグリッド112cとを有する。
【0084】
また、電子線発生部110には、フィラメント112aを加熱して熱電子を発生させるための加熱用電源(不図示)と、フィラメント112aとグリッド112cとの間に電圧を印加する制御用直流電源(不図示)と、グリッド112cと照射窓部130に設けられた窓箔132との間に電圧を印加する加速用直流電源(不図示)とが設けられている。
【0085】
照射室120は、円筒状の被照射体(電子写真感光体)101表面に電子線を照射する照射空間122を含むものである。電子写真感光体の表面層を重合させる場合、酸素による重合阻害作用を取り除く目的で、照射室120の内部は不活性ガス雰囲気としている。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。また、円筒状の被照射体101は照射室120内をコンベアの如き搬送手段により矢印Aの方向へ搬送される。さらに、この円筒状の被照射体101が、照射窓部130を通過して電子線を照射される時間内は、被照射体の円筒軸を中心にして回転させることによって、該被照射体101は矢印Bの方向に円筒軸を中心にして回転している。
【0086】
照射窓部130は、金属箔からなる窓箔132と、窓箔132を冷却、および支持する窓枠構造体134とを有するものである。窓箔132は、窓箔132を介して照射室120内に電子線を取り出すものである。加熱用電源により、フィラメント112aに電流を通じて加熱するとフィラメント112aは熱電子を放出する。このうち、グリッド112cを通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、このグリッド112cから取り出された電子線は、グリッド112cと窓箔132との間に印加された加速用直流電源の加速電圧により加速管114内の加速空間で加速される。その後、電子線は、窓箔132を突き抜け、照射窓部130の下方の照射室120内の円筒状の被照射体101に照射される。なお、通常は、加熱用電源と加速用直流電源とを所定の値に設定し、制御用直流電源を可変にすることにより、ビーム電流の調整が可能となる。本発明においては、不活性ガス雰囲気で電子線を照射した後、不活性ガス雰囲気で加熱することが好ましい。
【0087】
本発明における電子写真装置について説明する。
【0088】
図2に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0089】
図2において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、帯電手段(一次帯電手段)3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0090】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5内に収容されたトナーで正規現像または反転現像によりトナー像として顕画化される。電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像は、転写手段6により転写材7に順次転写されていく。ここで、転写材7は、不図示の給紙部から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間に給送される。また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。また、転写手段は、一次転写部材、中間転写体および二次転写部材を有する中間転写方式の転写手段であってもよい。
【0091】
トナー像の転写を受けた転写材7は、電子写真感光体の表面から分離され、定着手段8へ搬送されて、トナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置外へプリントアウトされる。
【0092】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーなどの付着物の除去を受けて清浄面化される。転写残りトナーを現像器などで回収することもできる。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0093】
本発明においては、電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとしてもよい。また、該プロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に装着する構成であってもよい。例えば、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段9からなる群より選択される少なくとも1つの手段を電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段12を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0094】
本発明は、オゾン、窒素酸化物(NOx)、および硝酸などの活性物質による劣化を抑えるウレア化合物として、下記式(3)または、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0095】
【化9】

【0096】
式(3)および式(4)中、R51〜R55は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を示す。X61〜X64、およびX81〜X86は、それぞれ独立に、アルキレン基を示す。P71〜P74、P91〜P96は、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を示し、P71〜P74のうち少なくとも1つ、P91〜P96の少なくとも1つはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である。l、m、pおよびqは、0〜5の整数を示し、rは0〜4の整数を示し、n、o、sおよびtは、0又は1を示す。
【0097】
本発明のウレア化合物は、上記式(3)、および上記式(4)中のl、m、p、qおよびrが0であると、好ましい。
【0098】
また、本発明のウレア化合物は、上記式(3)、および上記式(4)中のn、o、sおよびtが0であると好ましい。
【0099】
さらに、本発明のウレア化合物は、上記式(3)、および上記式(4)中の、X61〜X64、X81〜X86のうち、少なくとも1つがエチレン基またはn−プロピレン基であると、好ましい。
【0100】
本発明のウレア化合物は、具体的には、上記例示化合物(1−1)〜(1−15)、および(2−1)〜(2−12)などが挙げられる。
【0101】
次に、本発明に用いられるウレア化合物の製造例を示す。なお、製造例中の「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。また、質量分析は、TraceDSQ−MASS SPECTROMETER(サーモエレクトロン(株)製)を用いて行った。また、IR(赤外分光法)の測定は、FT/IR−420(日本分光(株)製)を用いて行った。また、NMR(核磁気共鳴スペクトル)の測定は、R−90(日立(株)製)を用いて行った。
【0102】
〔製造例1〕
例示化合物(1−1)の製造
下記式(A)で示される化合物(1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシ−エチル)−フェニル]−ウレア)の合成を行った。3径フラスコに2−(4−アミノフェニル)エタノール200.0部を入れ、3Nの塩酸水溶液506.2部をゆっくり滴下し、その後30分間撹拌を行った。これに尿素58.4部とイオン交換水220部を注加した後、10時間リフラックスを行った。冷却後、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をイオン交換水1300部にて分散洗浄後、濾取した。更にエタノール1000部で分散洗浄後、濾取し、30℃で減圧乾燥を行い微桃色結晶の下記式(A)で示される化合物171.1部を得た。以下に、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0103】
IR(cm−1,KBr):3378,3309,1638,1554,1237,1054,1017
H−NMR(ppm,DMSO−d6):δ=
8.39(s,2H,NH)
7.25(d,4H,J=8.6Hz)
7.08(d,4H,J=8.6Hz)
4.95(brs,2H,OH)
3.55(t,4H,J=7.0Hz)
2.63(t,4H,J=7.0Hz)。
【0104】
【化10】

【0105】
次に、上記式(A)で示される化合物をもとにして、下記式(B)で示される化合物(1,3−ビス{4−[2−テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ]−エチル}−フェニル}−ウレア)を合成した。3径フラスコに上記式(A)で示される化合物149.5部、およびN,N−ジメチルホルムアミド1500部を入れ、溶解させた。これにパラトルエンスルホン酸一水和物1.9部を加えた後、15℃まで冷却した。そこに3,4−ジヒドロ−2H−ピラン168部をゆっくり滴下し、その後、80〜85℃で2時間加熱撹拌を行った。冷却後、水2000部を加え、酢酸エチル1000部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせ、水500部で分散洗浄、分液した。次に、飽和塩化ナトリウム水溶液500部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をアルミナカラム(溶媒:トルエン:テトラヒドロフラン混合)に通し、減圧下で溶媒を留去した。得られた結晶を50〜60℃の80%メタノール水溶液で分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行いクリーム色結晶の下記式(B)で示される化合物を201.6部得た。以下に、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0106】
IR(cm−1,KBr):3390,2948,1710,1595,1538,1514,1115
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
7.24(d,4H,J=8.6Hz)
7.11(d,4H,J=8.6Hz)
6.91(s,2H,NH)
4.60(brs,2H)
4.0〜3.4(m,8H)
2.83(t,4H,J=6.9Hz)
1.7〜1.4(m,12H)。
【0107】
【化11】

【0108】
次に、上記式(B)で示される化合物をもとにして、下記式(C)で示される化合物(1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシ−エチル)−フェニル]−1,3−ジメチル−ウレア)の合成を行った。窒素雰囲気下で、3径フラスコに60%水素化ナトリウム29.8部および乾燥N,N−ジメチルホルムアミド800部を入れ、氷水で冷却した。その中に上記式(B)で示される化合物159.0部を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド800部に溶解させた溶液を、液温が4〜7℃となるように制御しながら滴下した。その後、30分間撹拌した。次に、ヨウ化メチル144.5部を、液温が4〜11℃となるように制御しながら滴下した。その後、冷却を止め室温で1.5時間撹拌を行った後、水2500部を加え、酢酸エチル1000部で3回抽出を行った。3回の抽出液を合わせて、水500部で2回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣にメタノール1000部、およびテトラヒドロフラン200部を加え、さらにパラトルエンスルホン酸一水和物12.8部を加えた後、室温下で5時間撹拌を行った。そこに、水1000部を加え、酢酸エチル2000部で抽出を行った。抽出液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液300部で分散洗浄、分液し、次に飽和塩化ナトリウム水溶液500部で分散洗浄し、分液した。分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:テトラヒドロフラン混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去した。得られた結晶をn−ヘプタンで分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行い、淡いクリーム色結晶の下記式(C)で示される化合物51.6部を得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0109】
MS(Direct Prove):328.14
Calculated Exact Mass:328.18
IR(cm−1,KBr):3406,2868,1622,1599,1514,1376,1055,568
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
6.89(d,4H,J=8.6Hz)
6.71(d,4H,J=8.6Hz)
3.74(t,4H,J=6.3Hz)
3.19(s,6H,N−Me)
2.70(t,4H,J=6.3Hz)
2.09(s,2H,OH)。
【0110】
【化12】

【0111】
次に、上記式(C)で示される化合物をもとにして例示化合物(1−1)を合成した。3径フラスコに上記式(C)で示される化合物41.5部と乾燥テトラヒドロフラン800部を加え、続いてトリエチルアミン48.6部を注加し、氷水で冷却し、液温が3〜12℃となるように制御しながら塩化アクリロイル34.3部をゆっくり滴下した。その後、冷却を止め、室温で2時間撹拌を行った。そこに、10%水酸化ナトリウム水溶液400部を加え、撹拌後、酢酸エチル400部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせて、飽和塩化ナトリウム水溶液400部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣にトルエン500部を加え溶解し、活性炭2部を加え室温下で30分撹拌を行った後、ろ過し、ろ液に対して減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去し、黄色粘性液体の例示化合物(1−1)を44.6部得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0112】
MS(Direct Prove):436.26
Calculated Exact Mass:436.20
IR(cm−1,Neat):2956,1724,1656,1516,1356,1189,987,811
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
6.89(d,4H,J=8.6Hz)
6.71(d,4H,J=8.6Hz)
6.6〜5.7(m,6H)
4.24(t,4H,J=7.0Hz)
3.15(s,6H,N−Me)
2.82(t,4H,J=7.0Hz)。
【0113】
〔製造例2〕
例示化合物(1−2)の製造
まず、下記式(D)で示される化合物(1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1,3−ジフェニルウレア)を合成した。3径フラスコにN−(2−ヒドロキシエチル)アニリン5.5部とテトラヒドロフラン20部を加え、その溶液にフェニルイソシアネート4.8部をテトラヒドロフラン20部で溶解させた溶液を撹拌下ゆっくり滴下した。その後、室温で2時間撹拌を行い、更に1時間リフラックスを行った。減圧下で溶媒を留去し、更に500Paの減圧下、80℃で揮発成分を蒸発させ、クリーム色結晶を10.4部得た。3径フラスコに得られたクリーム色結晶4.3部、および乾燥テトラヒドロフラン40部を加え、溶解させた。その後、これにパラトルエンスルホン酸一水和物0.03部を加え、そこに3,4−ジヒドロ−2H−ピラン2.1部をゆっくり滴下し、その後、60℃で3時間加熱撹拌を行った。冷却後、水100部を加え、酢酸エチル50部で3回抽出を行った。3回の抽出液を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液80部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、褐色粘性液体を5.6部を得た。
【0114】
窒素雰囲気下、3径フラスコに60%水素化ナトリウム0.7部、および乾燥N,N−ジメチルホルムアミド10部を入れ、氷水で冷却した。その中に得られた褐色粘性液体5.5部を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド15部に溶解させた溶液を液温が2〜7℃となるように制御しながら滴下した。その後、30分間撹拌した。次に、ヨウ化メチル3.4部を液温が3〜11℃となるように制御しながら滴下した。その後、冷却を止め、室温で1.5時間撹拌を行った後、水50部を加え、酢酸エチル30部で3回抽出を行った。3回の抽出液を合わせ、水50部で2回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を留去し、オレンジ色粘性液体を5.4部得た。得られたオレンジ色粘性液体を5.3部に、メタノール25部を加え、さらにパラトルエンスルホン酸一水和物0.19部を加えた後、3時間リフラックスを行った。そこに水100部を加え、酢酸エチル100部で抽出を行った。抽出液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液20部で分散洗浄して、分液した。次に、飽和塩化ナトリウム水溶液20部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去した。得られた結晶をn−ヘプタンで分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行い白色結晶の下記式(D)で示される化合物を2.6部得た。以下に、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0115】
IR(cm−1,KBr):3438,2942,1626,1497,1350,1029,754,694
H−NMR(ppm,CDCl3):δ=
7.1〜6.9(m,6H)
6.8〜6.6(m,4H)
4.41(t,1H,J=4.1Hz,OH)
3.9〜3.6(m,4H)
3.19(s,3H,N−Me)。
【0116】
【化13】

【0117】
次に、上記式(D)で示される化合物をもとにして、例示化合物(1−2)を合成した。3径フラスコに上記式(D)で示される化合物2.5部と乾燥テトラヒドロフラン25部を加えた。続いて、トリエチルアミン1.4部を注加し、氷水で冷却し、液温が3〜15℃となるように制御しながら塩化アクリロイル1.0部をゆっくり滴下した。その後、冷却を止め、室温下で2時間撹拌を行った。そこに10%水酸化ナトリウム水溶液25部を加え、撹拌後、酢酸エチル80部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液40部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去し、淡黄色液体の例示化合物(1−2)を2.6部得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0118】
MS(Direct Prove):324.12
Calculated Exact Mass:324.15
IR(cm−1,Neat):2954,1725,1658,1652,1596,1496,1188,754,694
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
7.0〜6.8(m,6H)
6.8〜6.6(m,4H)
6.3〜6.0(m,2H)
5.9〜5.7(m,1H)
4.41(t,2H,J=5.5Hz)
3.88(t,2H,J=5.5Hz)
3.17(s,3H,N−Me)。
【0119】
〔製造例3〕
例示化合物(1−3)の製造
まず、下記式(E)で示される化合物(1,3−ビス(3−ヒドロキシメチル−フェニル)−ウレア)を合成した。3径フラスコに3−アミノベンジルアルコール50.0部を入れ、3N塩酸水溶液162部をゆっくり滴下、その後30分撹拌を行った。これに尿素16.3部とイオン交換水65部を注加した後、10時間リフラックスを行った。冷却後、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をイオン交換水400部にて分散洗浄後、濾取した。更にエタノール400部で分散洗浄後、濾取し、30℃で減圧乾燥を行い白色結晶の下記式(E)で示される化合物を33.7部得た。以下に、NMRのデータを示す。
H−NMR(ppm,DMSO−d6):δ=
8.56(s,2H,NH)
7.5〜6.8(m,8H)
5.12(t,2H,J=5.8Hz,OH)
4.46(d,4H,J=5.8Hz)。
【0120】
【化14】

【0121】
次に、上記式(E)で示される化合物をもとにして、下記式(F)で示される化合物(1,3−ビス[3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシメチル)−フェニル]−ウレア)を合成した。3径フラスコに上記式(E)で示される化合物28.5部、およびN,N−ジメチルホルムアミド300部を入れ、溶解させた。これにパラトルエンスルホン酸一水和物0.4部を加えた後、80℃まで昇温した。そこに3,4−ジヒドロ−2H−ピラン35.2部をゆっくり滴下し、その後、80〜85℃で5時間加熱撹拌を行った。冷却後、水600部を加え、酢酸エチル500部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせ、水300部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルで再結晶し、得られた結晶を50〜60℃の温水で分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行い白色結晶の下記式(F)で示される化合物33.8部を得た。以下に、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0122】
IR(cm−1,KBr):3325,2952,1656,1567,1034H−NMR(ppm,DMSO−d6):δ=
8.63(s,2H,NH)
7.5〜6.9(m,8H)
4.8〜4.3(m,6H)
4.0〜3.3(m,4H)
1.7〜1.4(Br,12H)。
【0123】
【化15】

【0124】
次に、上記式(F)で示される化合物をもとにして、下記式(G)で示される化合物(1,3−ビス(3−ヒドロキシメチル−フェニル)−1,3−ジメチル−ウレア)を合成した。窒素雰囲気下、3径フラスコに60%水素化ナトリウム7.2部、および乾燥N,N−ジメチルホルムアミド360部を入れ、氷水で冷却した。その中に上記式(F)で示される化合物36.0部を液温が4〜7℃となるように制御しながら添加した。その後、室温下で30分間撹拌を行った。次に、氷水で冷却し、ヨウ化メチル34.8部を液温が4〜11℃となるように制御しながら滴下した。その後、冷却を止め、室温で1時間撹拌を行った後、水750部を加え、酢酸エチル300部で3回抽出を行った。3回の抽出液を合わせ、水200部で2回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣にエタノール400部を加え、さらにパラトルエンスルホン酸一水和物2.1部を加えた後、3.5時間リフラックスを行った。減圧下で溶媒を留去し、そこに酢酸エチル900部、5%炭酸水素ナトリウム水溶液180部を加え、抽出を行った。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液100部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:テトラヒドロフラン混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去した。得られた結晶をn−ヘプタンで分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行い白色結晶の下記式(G)で示される化合物19.4部を得た。以下に、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0125】
IR(cm−1,KBr):3394,2855,1666,1634,1602,1439,1372,700
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
7.1〜6.6(m,8H)
4.43(d,4H,CH2−OH)
3.22(s,6H,N−Me)
2.60(brs,2H,OH)。
【0126】
【化16】

【0127】
次に、上記式(G)で示される化合物をもとにして、例示化合物(1−3)を合成した。
3径フラスコに上記式(G)で示される化合物19.0部と乾燥テトラヒドロフラン600部を加えた。続いて、トリエチルアミン21.1部を注加し、氷水で冷却し、液温が4〜15℃となるように制御しながら塩化アクリロイル17.2部をゆっくり滴下した。その後、冷却を止め、室温下で2時間撹拌を行った。そこに10%水酸化ナトリウム水溶液150部を加え、撹拌後、酢酸エチル200部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液200部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣にトルエン200部を加え溶解し、活性炭1部を加え室温下で30分撹拌を行った後、ろ過し、ろ液に対してい減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去し、淡黄色粘性液体の例示化合物(1−3)15.7部を得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0128】
MS(Direct Prove):408.03
Calculated Exact Mass:408.17
IR(cm−1,Neat):2958,1725,1659,1407,1354,1187,698
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
7.0〜6.7(m,8H)
6.4〜5.8(m,6H)
4.98(s,4H)
3.20(s,6H,N−Me)。
【0129】
〔製造例4〕
例示化合物(2−1)の合成
まず、下記式(H)で示される化合物(1−(2−ヒドロキシエチル)−3−{3−[3−(2−ヒドロキシエチル)−3−フェニルウレイド]−フェニル}−1−フェニルウレア)を合成した。3径フラスコにN−(2−ヒドロキシエチル)アニリン21.4部とテトラヒドロフラン110部を加え、その溶液に1,3−フェニレンジイソシアネート5.0部をテトラヒドロフラン50部に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくり滴下した。その後、2時間リフラックスを行った後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:テトラヒドロフラン混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去した。得られた結晶をトルエンで分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行い白色結晶の下記式(H)で示される化合物11.7部を得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0130】
MS(Direct Prove):434.16
Calculated Exact Mass:434.20
IR(cm−1,KBr):3432,3318,1674,1642,1530,1488,1420,1292,1209,1051,700
H−NMR(ppm,DMSO):δ=
7.84(s,2H,NH)
7.41(t,3H,J=7.7Hz)
7.34〜7.25(m,7H)
7.04〜7.00(m,3H)
4.90(t,2H,J=5.0Hz,OH)
3.71(t,4H,J=6.1Hz)
3.53(q,4H)。
【0131】
【化17】

【0132】
次に、上記式(H)で示される化合物をもとにして、下記式(I)で示される化合物(1−(2−ヒドロキシエチル)−3−{3−[3−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチル−3−フェニルウレイド]−フェニル}−3−メチル−1−フェニルウレア)を合成した。3径フラスコに上記式(H)で示される化合物10.5部、乾燥テトラヒドロフラン100部、およびパラトルエンスルホン酸一水和物0.5部を加えた。そこに3,4−ジヒドロ−2H−ピラン6.1部をゆっくり滴下し、その後、5時間撹拌を行った。この反応液に水200部を加え、酢酸エチル80部で3回抽出を行った。3回の抽出液を合わせ、5%炭酸水素ナトリウム水溶液40部で分散洗浄し、分液した有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液60部で分散洗浄した。分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、黄色粘性液体を16.0部得た。
【0133】
窒素雰囲気下、3径フラスコに60%水素化ナトリウム2.1部、および乾燥N,N−ジメチルホルムアミド10部を入れ、氷水で冷却した。その中に、得られた黄色粘性液体16.0部を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド50部に溶解させた溶液を液温が2〜12℃となるように制御しながら滴下した。その後、30分間撹拌した。次に、ヨウ化メチル10.3部を液温が2〜12℃となるように制御しながら滴下した。その後、冷却を止め、室温で1時間撹拌を行った後、水100部を加え、酢酸エチル70部で3回抽出を行った。3回の抽出液を合わせ、水50部で2回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を留去し、黄色粘性液体を16.2部得た。得られた黄色粘性液体を16.2部にエタノール80部を加え、さらにパラトルエンスルホン酸一水和物0.3部を加えた後、7時間リフラックスを行った。そこに5%炭酸水素ナトリウム水溶液40部を加え、酢酸エチル150部で抽出を行った。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液40部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:テトラヒドロフラン混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去した。得られた結晶をn−ヘキサンで分散洗浄を行った後、結晶を濾取し、30℃で減圧乾燥を行い白色結晶の下記式(I)で示される化合物7.4部を得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0134】
MS(Direct Prove):462.37
Calculated Exact Mass:462.23
IR(cm−1,KBr):3408,2931,1619,1593,1385,1067,696
H−NMR(ppm,DMSO):δ=
7.04〜6.19(m,14H)
4.67(br,2H,OH)
3.51(brs,8H)
2.8(s,6H,N−Me)。
【0135】
【化18】

【0136】
次に、上記式(I)で示される化合物をもとにして、例示化合物(2−1)を合成した。3径フラスコに上記式(I)で示される化合物6.2部と乾燥テトラヒドロフラン120部を加えた。続いて、トリエチルアミン6.8部を注加し、氷水で冷却し、液温が3〜11℃となるように制御しながら塩化アクリロイル4.9部をゆっくり滴下した。その後、冷却を止め、室温下で1時間、続いて35℃で1時間撹拌を行った。そこに1%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、撹拌後、酢酸エチル100部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液80部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:トルエン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去し、淡黄色結晶を得た。この結晶をトルエン:ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色結晶の例示化合物(2−1)2.8部を得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0137】
MS(Direct Prove):570.02
Calculated Exact Mass:570.25
IR(cm−1,Neat):1736,1652,1376,1207,985,762,696
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
6.99〜5.69(m,20H)
4.36(t,4H,J=5.6Hz)
3.81(t,4H,J=5.6Hz)
2.91(s,6H,N−Me)。
【0138】
〔製造例5〕
例示化合物(2−4)の合成
前記式(I)で示される化合物をもとにして、例示化合物(2−4)を合成した。3径フラスコに上記式(I)で示される化合物1.0部と乾燥テトラヒドロフラン20部を加えた。続いて、トリエチルアミン1.1部を注加し、氷水で冷却し、液温が1〜5℃となるように制御しながら塩化メタクリロイル0.9部をゆっくり滴下した。その後、冷却を止め、室温下で3時間撹拌を行った。そこに10%水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、撹拌後、酢酸エチル30部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液20部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去し、薄黄色結晶を得た。この結晶をトルエン:n−ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色結晶の例示化合物(2−4)0.6部を得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0139】
MS(Direct Prove):598.32
Calculated Exact Mass:598.28
IR(cm−1,Neat):2954,1732,1719,1649,1597、1367,1166,764,698
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
6.99〜5.89(m,16H)
5.49(t,4H,J=1.7Hz)
4.34(t,4H,J=5.6Hz)
3.83(t,4H,J=5.6Hz)
2.90(s,6H,N−Me)
1.85(s,6H)。
【0140】
〔製造例6〕
例示化合物(1−15)の合成
前記式(C)で示される化合物をもとにして例示化合物(1−15)を合成した。3径フラスコに上記式(C)で示される化合物5.0部と乾燥テトラヒドロフラン100部を加え、続いてトリエチルアミン7.7部を注加し、氷水で冷却し、液温が4〜10℃となるように制御しながら塩化メタクリロイル6.4部をゆっくり滴下した。その後、冷却を止め、室温で4時間撹拌を行った。そこに、10%水酸化ナトリウム水溶液50部を加え、撹拌後、酢酸エチル50部で2回抽出を行った。2回の抽出液を合わせて、飽和塩化ナトリウム水溶液60部で分散洗浄し、分液した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラム(溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル混合)にて精製し、減圧下で溶媒を留去し、薄黄色結晶を得た。この結晶をn−ヘキサンで再結晶を行い、白色結晶の例示化合物(1−15)を3.1部得た。以下に、質量分析値、IRスペクトルより得られた特徴的なピークおよびNMRのデータを示す。
【0141】
MS(Direct Prove):464.33
Calculated Exact Mass:464.23
IR(cm−1,Neat):2960,1710,1663,1517,1357、1324,1160
H−NMR(ppm,CDCL3):δ=
6.90(d,4H,J=8.5Hz)
6.70(d,4H,J=8.5Hz)
6.09(Brs,2H)
5.55(t,2H,J=1.5Hz)
4.22(t,4H,J=7.0Hz)
3.15(s,6H,N−Me)
2.82(t,4H,J=7.0Hz)
1.94(s,6H)。
【実施例】
【0142】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、実施例および比較例中の膜厚は、渦電流式膜厚計(商品名:Fischerscope、フィッシャーインスツルメント社製)を用いて、または、単位面積当たりの質量からの比重換算によって求めた。
【0143】
〔実施例1〕
直径30mm、長さ357.5mm、肉厚1mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
【0144】
次に、10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子(商品名:ECT−62、チタン工業(株)製)50部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライトJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70質量%)25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部およびシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散処理して、導電層用塗布液を調製した。
【0145】
この導電層用塗布液を浸漬塗布し、これを30分間140℃で乾燥させることによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0146】
次に、ナイロン6−66−610−12四元共重合体樹脂(商品名:CM8000、東レ(株)製)2.5部、およびN−メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス製)7.5部を、メタノール100部およびブタノール90部の混合溶剤に溶解させて、中間層用塗布液を調製した。
【0147】
この中間層用塗布液を上記導電層上に浸漬塗布し、10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.7μmの中間層を形成した。
【0148】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)11部を用意した。それに、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部、およびシクロヘキサノン130部を混合し、直径1mmのガラスビーズ500部を加えて、18℃の冷却水で冷却しつつ1800rpmの条件で2時間分散処理した。分散処理後、酢酸エチル300部およびシクロヘキサノン160部を加えて希釈して、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0149】
この電荷発生層用塗布液中のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の平均粒径(メジアン)を、液相沈降法を基本原理とした堀場製作所製の遠心式粒度測定装置(商品名:CAPA700)を用いて測定したところ、0.18μmであった。
【0150】
この電荷発生層用塗布液を上記中間層上に浸漬塗布し、110℃で10分間乾燥させることによって、膜厚が0.17μmの電荷発生層を形成した。
【0151】
次に、下記式(6)で示される化合物(電荷輸送物質)5部、下記式(7)で示される化合物(電荷輸送物質)5部、および、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学(株)製)10部を、モノクロロベンゼン70部およびジメトキシメタン30部の混合溶剤に溶解させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0152】
この電荷輸送層用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥させることによって、膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。
【0153】
【化19】

【0154】
次に、下記式(8)で示される化合物90部、および例示化合物(1−1)10部を、n−プロパノール100部に溶解させ、さらに1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)100部を加えて、保護層用塗布液を調製した。
【0155】
【化20】

【0156】
この保護層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を50℃で5分間加熱処理した。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧80kV、吸収線量19000Gyの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。その後、窒素雰囲気下にて、125℃で30秒間加熱処理した。なお、電子線の照射から30秒間の加熱処理までの酸素濃度は19ppmであった。次に、大気中において、20分間110℃で加熱処理することによって、膜厚が5μmの保護層を形成した。
【0157】
このようにして、支持体、導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を有し、保護層が表面層である電子写真感光体を製造した。
【0158】
〔実施例2〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を例示化合物(1−2)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0159】
〔実施例3〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を例示化合物(1−3)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0160】
〔実施例4〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を例示化合物(2−1)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0161】
〔実施例5〕
実施例1において、保護層用塗布液の構成を、前記式(8)で示される化合物95部、および例示化合物(1−1)5部に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0162】
〔実施例6〕
実施例1において、保護層用塗布液の構成を、前記式(8)で示される化合物80部、および例示化合物(1−1)20部に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0163】
〔実施例7〕
実施例1において、保護層用塗布液の構成を、前記式(8)で示される化合物60部、および例示化合物(1−1)40部に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0164】
〔実施例8〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を例示化合物(1−15)に、前記式(8)で示される化合物を下記式(9)で示される化合物にそれぞれ変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0165】
【化21】

【0166】
〔実施例9〕
実施例5において、例示化合物(1−1)を例示化合物(2−1)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0167】
〔実施例10〕
実施例6において、例示化合物(1−1)を例示化合物(2−1)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例6と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0168】
〔実施例11〕
実施例7において、例示化合物(1−1)を例示化合物(2−1)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0169】
〔実施例12〕
実施例11において、例示化合物(1−1)を例示化合物(2−4)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0170】
〔実施例13〕
実施例12において、前記式(8)で示される化合物を前記式(9)で示される化合物に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例12と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0171】
〔実施例14〕
実施例1において、保護層用塗布液をトリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:TMPTA、ダイセル・サイテック(株)製)(重合性官能基であるアクリロイル基を有し、電荷輸送構造をもたない化合物)45部、下記式(10)で示される化合物45部、および例示化合物(1−1)10部をn−プロパノール25部に溶解させ、さらに1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)25部を加えて、保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0172】
【化22】

【0173】
〔実施例15〕
実施例14において、例示化合物(1−1)を例示化合物(2−1)に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0174】
〔比較例1〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を加えずに保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0175】
〔比較例2〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を下記式(11)で示される化合物に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0176】
【化23】

【0177】
〔比較例3〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を下記式(12)で示される化合物に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0178】
【化24】

【0179】
〔比較例4〕
実施例1において、例示化合物(1−1)を下記式(13)で示される化合物に変更して保護層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0180】
【化25】

【0181】
〔比較例5〕
実施例14において、例示化合物(1−1)を加えずに保護層用塗布液を調製した以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0182】
(評価方法)
実施例1〜15、および比較例1〜5の電子写真感光体の評価方法については、以下の通りである。電位安定性の評価としては、明部電位の変動量を評価した。画像流れの評価としては、感光体の繰り返し使用後の画像品位を評価した。
【0183】
(明部電位の変動量)
評価装置としては、電子写真複写機GP−405(キヤノン(株)製)を用い、外部からコロナ帯電器に電源が供給できるように改造した。さらにGP−405のドラムカートリッジをコロナ帯電器が装着できるように改造し、コロナ帯電器として電子写真複写機GP−55(キヤノン(株)製)用の帯電器を装着した。このドラムカートリッジに上記電子写真感光体を装着し、改造したGP−405に装着して以下のように電位特性、画像品質を評価した。なお、電子写真感光体用のヒーター(ドラムヒーター(カセットヒーター))は評価中常時OFFにした。
【0184】
電子写真感光体の表面電位の測定は、電子複写機本体から現像ユニットを取り外し、現像位置に電位測定用プローブ(model6000B−8、トレック・ジャパン社製)を固定し測定を行った。その際、転写ユニットは電子写真感光体に非接触、紙は非通紙とした。
【0185】
帯電器の電源駆動を外部電源から供給できるように接続した。電源としては、高圧電源コントロールシステム、(Model 610C、トレック社製)を用いて、放電電流量:500μAになるように調整し、電子写真感光体の初期暗部電位(Vd)が−650(V)、初期明部電位(Vl)が−200(V)になるように、定電流制御スコロトロングリッド印加電圧と露光光量の条件を設定した。
【0186】
製造した電子写真感光体を複写機に装着した後、温度30℃、湿度80%RHの環境下で、画像比率5%の画像を、A4縦サイズ紙にて1000枚通紙使用した。通紙終了後、明部電位(Vl)の値を測定し、初期明部電位の値からの変化分を電位変動ΔVlとして算出した。結果を表1に示す。
【0187】
(感光体の繰り返し使用後の画像品位)
つづいて、電位変動評価が終了した電子写真感光体を再び複写機に装着した後、画像比率5%の画像を、A4縦サイズ紙にて、さらに9000枚通紙使用した後(合計1万枚通紙時)、複写機への給電を停止し、72時間休止させた。72時間後に再び複写機に給電を開始し、A4縦サイズ紙にて、格子画像(4ライン、40スペース)、アルファベットのEの文字(フォント種:Times,6ポイント)が繰り返された文字画像(E文字画像)を出力した。
【0188】
同様にして、4万枚(合計5万枚通紙時)、5万枚(合計10万枚通紙相当)通紙使用した後、複写機への給電を停止し、72時間休止させた。それぞれ、72時間後に再び複写機に給電を開始し、A4縦サイズ紙にて、格子画像・E文字画像を出力した。
【0189】
得られた画像について、以下の評価ランクに従って評価した。本発明において、ランク5、4および3が本発明の効果が得られているレベルであり、その中でもランク5は優れているレベルであると判断した。一方、ランク1、2は本発明の効果が得られていないレベルと判断した。評価結果を表1に示す。
ランク5:格子画像、E文字画像、共に画像欠陥はみられない
ランク4:格子画像が一部かすんでいるが、E文字画像の画像欠陥はみられない
ランク3:格子画像が一部かすんでおり、E文字画像が一部薄くなる
ランク2:格子画像が部分的に消失しており、E文字画像が全面薄くなる
ランク1:格子画像が全面消失しており、E文字画像が全面薄くなる。
【0190】
【表1】

【符号の説明】
【0191】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
101 被照射体(電子写真感光体)
110 電子線発生部
112 ターミナル
112a フィラメント
112b ハウス
112c グリッド
114 加速管
120 照射室
122 照射空間
130 照射窓部
132 窓箔
134 窓枠構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、および連鎖重合性官能基を有するウレア化合物を重合させて得られる重合物を含有する表面層を有し、
該ウレア化合物が下記式(1)で示される化合物、および下記式(2)で示される化合物の少なくとも一種であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(式(1)および式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を示す。X21〜X24、およびX41〜X46は、それぞれ独立に、アルキレン基を示す。P11〜P14、P31〜P36は、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を示し、P11〜P14のうち少なくとも1つ、P31〜P36のうち少なくとも1つはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である。a、b、gおよびhは、0〜5の整数を示し、iは0〜4の整数を示す。c、d、jおよびkは、0又は1を示す。)
【請求項2】
前記式(1)及び(2)において、R〜Rが、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基を示す請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記式(1)及び(2)において、a、b、g、hおよびiが0である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記式(1)または(2)において、X21〜X24、X41〜X46のうち、少なくとも1つがエチレン基またはn−プロピレン基を示す請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記式(1)及び(2)において、c、d、jおよびkが0である請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記電荷輸送性化合物の前記連鎖重合性官能基が、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物が、同一分子内に2つ以上の前記連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物である請求項1から6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
前記電荷輸送性化合物および前記ウレア化合物を含有する表面層用塗布液を用いて塗膜を形成し、
該塗膜に含有される前記電荷輸送性化合物、および前記ウレア化合物を重合させることによって表面層を形成する工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項11】
前記重合が、前記塗膜に電子線を照射することによって行われる請求項10に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項12】
下記式(3)または下記式(4)で示されるウレア化合物。
【化2】


(式(3)および式(4)中、R51〜R55は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、ハロゲン置換アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を示す。X61〜X64、およびX81〜X86は、それぞれ独立に、アルキレン基を示す。P71〜P74、P91〜P96は、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を示し、P71〜P74のうち少なくとも1つ、P91〜P96の少なくとも1つはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である。l、m、pおよびqは、0〜5の整数を示し、rは0〜4の整数を示し、n、o、sおよびtは、0又は1を示す。)
【請求項13】
前記式(3)及び(4)において、l、m、p、qおよびrが0である請求項12に記載のウレア化合物。
【請求項14】
前記式(3)及び(4)において、X61〜X64、X81〜X86のうち、少なくとも1つがエチレン基又はn−プロピレン基を示す請求項12または13に記載のウレア化合物。
【請求項15】
前記式(3)及び(4)において、n、o、sおよびtが0である請求項12から14のいずれか1項に記載のウレア化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−8013(P2013−8013A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100964(P2012−100964)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】