説明

電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】高い耐摩耗性と良好な電気特性を有するともに、クリーニングブレードの劣化を抑制し、良好なクリーニング性、クリーニングブレードと電子写真感光体との摺擦音の予防を長期間にわたり持続できる電子写真感光体を提供する。
【解決手段】 導電性支持体(21)上に少なくとも感光層(電荷発生層(25),電荷輸送層(26))と表面層(28)とを有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の軸方向の表面形状について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレードクリーニングをした時のクリーニングブレードのメクレ、ビビリ等が改善され、球形トナーを使用したときでもトナーすり抜けやフィルミングが発生しにくく、また、長期使用においても上記効果を持続できる、高耐久化と画質安定化の両立を実現した電子写真感光体、及びこれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、デジタル複写機に搭載される電子写真感光体(以下、単に「感光体」或いは「像担持体」ともいう)として、支持体上に有機光導電性材料を含有した有機感光層を設けた電子写真感光体が一般的に使用されている。なかでも、電荷発生材料と電荷輸送材料を個別の層に含有させて積層した積層型有機電子写真感光体が主流になっている。これはコスト、生産性、材料設計の自由度等によるものである。
【0003】
これらの電子写真感光体は、電子写真画像形成プロセスにおいて、機械的外力、電気的または化学的なハザードに曝されるため、種々の劣化を来たす。特に、最近においてはカラー画像の出力が増加し、繰り返し長期にわたって使用する電子写真有機電子写真感光体には、従来以上にこれらの劣化に対する耐久性が要求されている。
【0004】
有機感光体の高耐久化は従来種々の試みがなされてきた。現在では架橋樹脂膜の感光体表面への成膜(特許文献1)とゾル−ゲル硬化膜の感光体表面への成膜(特許文献2)が特に有望視されている。前者は電荷輸送性成分を配合してもワレやクラックが生じにくく生産上歩留まりが低減できるメリットを有する。なかでもラジカル重合性アクリル樹脂は強靱で感度特性の良好な感光体が得られやすく有利である。これらの架橋構造をとる二種の方策は複数の化学結合によって塗膜が形成されるため、塗膜がストレスを受けて化学結合の一部が切断しても直ちに摩耗へ進展することがない。
【0005】
また、写真に用いられる現像用トナーは、製造面のエコロジー性や高画質化に有利であるため、重合トナー(球形トナー)を使用することが主流となりつつある。この重合トナー(球形トナー)は角張ったところ無い球形状のトナーで、懸濁重合法、乳化凝集重合法、エステル伸長重合法、溶解懸濁法などの化学的製造法で製造される。重合トナーは製造方法によって形状に違いが有り、画像形成装置に使用される重合トナーは真球より少し形状をいびつにしている。一般的な特性値は平均円形度が0.95〜0.99、形状係数SF−1、SF−2は110〜140である。尚、平均円形度が1.0、形状係数SF−1、SF−2が100の時、真球を表す。
【0006】
重合トナーは形状が揃っているため、保持する電荷も比較的揃いやすい。また、ワックス(5〜10%)などを内添させやすい。したがって、静電潜像からのはみ出しが殆どないため現像性が良く、シャープ性、解像度、階調性が優れており、転写効率も良い。また、転写時のオイルが不要等多くの利点がある。
【0007】
一方、カラー画像の出力の増加に伴い、高い画像品質が従来以上に求められているが、特に画像形成一回毎に電子写真感光体上に残る残留トナーのクリーニング性能が従来以上に求められている。これは電子写真感光体の摩耗耐久性が上記の如く実現しているが、クリーニング性能の耐久性に関しては耐摩耗性と比較して未だ満足がいかないことによる。長期の繰り返し画像形成において、電子写真感光体の表面に小さな傷、クラックが発生する場合があること、又、クリーニングのために硬いブレードの先端で電子写真感光体表面を摺動するため、ブレードが欠けて細かいトナーがすり抜ける場合もある。特に後者が発生した場合、画像に黒スジが入り、画像品質が一気に低下することになる。この現象は、特に前述した重合トナーを用いた場合に顕著となり、トナーのすり抜けによる画像劣化は、高耐久電子写真感光体の緊急な課題になっている。
【0008】
画像形成装置に用いられるクリーニング部材には繊維ブラシを使用したブラシクリーニング法、ゴムブレードを使用したブレードクリーニング法、及び両者を併用するクリーニング法が公知であるが、コンパクトな設計が出来ること、耐久性が比較的良好であること、クリーニング効率が高いこと等からブレードクリーニング法の使用が多くなっている。
【0009】
クリーニングブレードは、板状に成形されたゴム板(ブレード)をアルミニウム板や鉄板等の支持体に固定したものであり、一定の荷重(押圧)が掛けられ、ブレードのエッジが電子写真感光体に当接するように設置される。電子写真感光体に当接する手段として、ブレードエッジが電子写真感光体に対して、カウンタ方向(電子写真感光体の回転時にブレードエッジが食い込むようになる方向=逆方向)に当接する場合と、トレーリング方向(電子写真感光体の回転時にブレードエッジがなめる(食い込みがない)方向=順方向)に当接する方法が有るが、カウンタ方向に当接する方法がクリーニング性に優れるため、カウンタ当接に設置されるのが一般的となっている。すなわち、カウンタ当接により、クリーニングブレードのエッジは電子写真感光体の回転によって食い込むように働くため、電子写真感光体とブレードエッジ間の隙間が解消され、クリーニング性を高めることになる。
【0010】
一方、クリーニングブレードは、上述したように、潜像担持体の移動方向に対してカウンタとなるように先端を位置決めされて接触させたカウンタ方式が周知であるが、この構成の場合、クリーニングブレードと電子写真感光体表面の摩擦で、クリーニングブレードの先端部分が電子写真感光体の駆動方向へ引き込まれる。感光体の表面層が強固になることで感光体の寿命は向上したが、感光体に接触するクリーニングブレードは従来の感光体以上に機械的ハザードを受けることになる。そのためクリーニングブレードは劣化しやすくなり、ブレードのめくれやエッジ部分の欠けが多く発生し、めくれ部分や欠け部分からトナーがすり抜けする現象が見られた。トナーのすり抜けはスジ状汚れのような異常画像として発生する場合がある。また、当接条件が不安定になると、ブレードの先端がビビリ、不快な音(以下、ブレード鳴き)が発生するという問題もある。
【0011】
これらの問題を解決するためにクリーニング性を向上させる方法も多く開示されてり、特に感光体表面を粗面化する方法が多く公開されている。例えば、表面層を形成する際の乾燥条件を制御する事により、電子写真感光体の表面をユズ肌状に粗面化する方法(特許文献3)、また、表面層に粒子を含有させることで、電子写真感光体の表面を粗面化する技術(特許文献4)が開示されている。また、表面を機械的に粗面化する方法も開示されており、フィルム状研磨材を用いて表面層の表面を研磨することによって、感光体表面を粗面化する技術(特許文献5)、ブラスト処理により電子写真感光体の周面を粗面化する技術(特許文献6)が開示されている。しかし、これらの粗面化技術は初期的には良好なクリーニング性を示すが、長期の使用により感光体が摩耗し、粗面化によるクリーニング効果が低下する問題があった。
【0012】
また、他にも特許文献7では、バランサを電子写真感光体ドラムの内部に挿入させることで鳴きを防止する方策が提案されている。バランサを内包すると、電子写真感光体駆動の高精度化に有利なシャフトが使用できなくなることや、ドラム径の大きなものには適用が困難となること、コストアップになるなど得策ではない。
【0013】
特許文献8では、電子写真感光体の表面層にフッ素樹脂微粒子を配合する方策が開示されている。フッ素樹脂微粒子の含有は表面層の硬度低下をもたらすため、新たな課題が発生し得策ではない。
【0014】
また特許文献9では、感光体のフィラーを含有した架橋樹脂表面層の周方向に溝と形成する技術が開示されているが、これはクリーニング性には大きな改善があるもののブレードの鳴きという観点では十分な解決に至っていない。
【0015】
また特許文献10では、感光体表面層に凸部を形成し、ハードコーティング層を有するクリーニングブレードとの組み合わせにおいてブレード鳴きを改善する技術が開示されているが、ハードコーティング層を有しないブレードでは表面層の凸部にエッジが破壊される場合があった。
【0016】
以上のようなことから、これら従来技術における感光体では、機械的特性、電気特性、トナークリーニング性、クリーニングブレードに関わる問題(メクレ、鳴きなど)に対して優れた総合特性を有しているとは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、感光体自体が高い耐摩耗性と良好な電気特性を有するともに、クリーニングブレードの劣化を抑制し、良好なクリーニング性、クリーニングブレードと電子写真感光体との摺擦音の予防を長期間にわたり持続できる電子写真感光体を提供することを目的とする。また、本発明は、高性能の前記電子写真感光体を使用した画像形成装置及び画像形成装置用のプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 導電性支持体(導電性支持体(21))上に少なくとも感光層(電荷発生層(25),電荷輸送層(26))と表面層(表面層(28))とを有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の軸方向の表面形状について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmであることを特徴とする電子写真感光体(電子写真感光体(11)、図1,図2)。
〔2〕 前記表面層は、フィラー微粒子を含有することを特徴とする前記〔1〕に記載の電子写真感光体。
〔3〕 前記フィラー微粒子は無機フィラーであることを特徴とする前記〔2〕に記載の電子写真感光体。
〔4〕 前記フィラー微粒子はアルミナからなることを特徴とする前記〔2〕または〔3〕に記載の電子写真感光体。
〔5〕 前記表面層は架橋性樹脂からなり、該架橋性樹脂がトリアリールアミン構造を有する架橋性の電荷輸送物質に由来する構造単位を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の電子写真感光体。
〔6〕 前記表面層は、スプレー塗工法により塗工されてなることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の電子写真感光体。
〔7〕 前記表面層は、前記電子写真感光体の軸方向に一定のピッチで配置された開口部(開口部(Mw))を有するマスク(マスク(M))を介してスプレー塗工されてなることを特徴とする前記〔6〕に記載の電子写真感光体(図4)。
〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の電子写真感光体(電子写真感光体(11))と、帯電手段(帯電手段(12))と、露光手段(露光手段(13))と、現像手段(現像手段(14))と、転写手段(転写手段(16))と、前記電子写真感光体を摺擦するクリーニングブレードを有するクリーニング手段(クリーニング手段(17))と、を備えることを特徴とする画像形成装置(図5,図7〜図9)。
〔9〕 前記現像手段は、平均円形度0.95以上0.99以下の球形のトナー(トナー(15))を用いることを特徴とする前記〔8〕に記載の画像形成装置。
〔10〕 前記現像手段は、少なくとも2色以上の現像ステーションを有し、且つ、タンデム方式であって更に重合トナーを用いて現像することを特徴とする前記〔8〕または〔9〕に記載の画像形成装置(図7〜図9)。
〔11〕 少なくとも前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の電子写真感光体(電子写真感光体(11))と、現像手段(現像手段(14))と、クリーニング手段(クリーニング手段(17))とを含む画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、前記クリーニング手段が前記電子写真感光体を摺擦するクリーニングブレードを具備することを特徴とするプロセスカートリッジ(図6)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子写真感光体の軸方向の表面形状について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmであることにより、感光体の耐摩耗性、電気特性に優れ、かつクリーニングブレードの劣化を低減し、良好なクリーニング性及び電子写真感光体とクリーニングブレードとの摺擦音を予防することを長期に渡り持続可能とした電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、優れたクリーニング性を長期に渡り実現した画像形成装置、画像形成装置用のプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の別の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体における表面層をスプレー塗工により形成する様子を示す概略図である。
【図4】表面層形成の際に使用するマスクの構成を示す正面図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置の構成例(1)を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係るプロセスカートリッジの構成例を示す模式断面図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の構成例(2)を示す模式断面図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の構成例(3)を示す模式断面図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の構成例(4)を示す模式断面図である。
【図10】感光体に固体潤滑剤を供給する手段を示す模式断面図である。
【図11】表面粗さ・輪郭形状測定システムの構成図である。
【図12】本発明の電子写真感光体のうねり曲線の一例図である。
【図13】本発明の範囲外の電子写真感光体のうねり曲線の一例図である。
【図14】すり抜け測定に関する感光体周りのレイアウトを表す一例図である。
【図15】感光体ユニットをセットしないブランク状態における電子写真感光体の駆動動作音の周波数特性である。
【図16】本発明の範囲外の電子写真感光体を装着したときの電子写真感光体の駆動動作音の周波数特性である。
【図17】本発明の電子写真感光体を装着したときの電子写真感光体の駆動動作音の周波数特性である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジの構成について説明する。
【0022】
[電子写真感光体]
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体(以下、単に支持体ともいう)上に少なくとも感光層と表面層とを有し、該電子写真感光体の軸方向の表面形状について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmであることを特徴とするものである。
以下、図面を参照しつつ、本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の電子写真感光体の層構成一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)上に、電荷発生層(25)と電荷輸送層(26)からなる感光層と、表面層(28)と、が設けられている。
また、図2は、本発明の更には別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)と電荷発生層(25)の間に下引き層(24)が設けられ、電荷発生層(25)の上に電荷輸送層(26)と表面層(28)が設けられている。
【0024】
<支持体>
前記支持体(21)としては、体積抵抗値が1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
【0025】
ドラム状の支持体(21)としては、直径が20mm〜150mmが好ましく、24mm〜100mmがより好ましく、28mm〜70mmが更に好ましい。前記ドラム状の支持体の直径が、20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなってしまうことがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体を搭載する必要があるため、直径は70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
また、特開昭52−36016号公報に開示されているようなエンドレスニッケルベルト、又はエンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0026】
<感光層>
前記感光層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質を混在させた単層型感光層、図1,図2のように電荷発生層(25)と電荷輸送層(26)とを積層した積層型感光層が挙げられる。
【0027】
前記積層型感光層としては、例えば、前記支持体側から電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する積層型感光層、前記支持体側から電荷輸送層と電荷発生層とをこの順に有する積層型感光層が挙げられる。これらの中でも、前記支持体側から電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する積層型感光層が、耐久性の点から好ましい。
【0028】
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、樹脂などのその他の成分を含有する。
【0029】
−−電荷発生物質−−
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系電荷発生物質、有機系電荷発生物質が挙げられる。
【0030】
前記無機系電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコンなどが挙げられる。前記アモルファスシリコンとしては、ダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが挙げられる。
【0031】
前記有機系電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料等のアゾ系顔料;アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
−−樹脂−−
前記電荷発生層に必要に応じて用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷発生物質100質量部に対し、500質量部以下が好ましく、10質量部〜300質量部がより好ましい。
【0034】
前記電荷発生層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空薄膜作製法、キャスティング法などが挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法などが挙げられる。
前記キャスティング法としては、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などが挙げられる。
【0035】
また前記キャスティング法においては、通常、塗工液が用いられる。前記塗工液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷発生物質を必要に応じて前記樹脂と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル、超音波等の公知の分散方法を用いて溶剤中に分散した塗工液が挙げられる。なお、前記樹脂の添加は、前記電荷発生物質の分散前及び分散後のどちらでも構わない。前記塗工液は、電荷発生物質、溶媒及び樹脂を主成分とするが、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の添加剤が含まれていてもよい。場合によっては、電荷発生層に後述の電荷輸送物質を添加することも可能である。
【0036】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインなどの一般に用いられる有機溶剤が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を使用することが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記電荷発生層は、前記塗工液を用いて前記支持体上又は下引き層等の上に塗工し、乾燥することにより形成される。塗工方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。塗工後にはオーブン等を用いて加熱乾燥してもよい。乾燥温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜160℃が好ましく、80℃〜140℃がより好ましい。
【0038】
前記電荷発生層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。電荷発生層の厚みを大きくすると残留電位の低減や高感度化に有利であるが、一方で帯電電荷の保持性や空間電荷の形成などの帯電性の低下を起こすことがある。前記好ましい範囲であると、これらのバランスがとれる点から有利であり、前記より好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる。
【0039】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷発生物質100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。レベリング剤の場合には、前記電荷発生物質100質量部に対して、0.001質量部〜0.1質量部が好ましい。前記含有量が、前記下限値未満であると、感度劣化を起こすことがある。
【0041】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、樹脂などのその他の成分を含有する。
【0042】
−−電荷輸送物質−−
前記電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送物質、正孔輸送物質などが挙げられる。
【0043】
前記電子輸送物質としては、例えば、非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開2001−330973号公報の一般式(1)〜一般式(6)に例示される芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記電子輸送物質のうち、重合体型の電子輸送物質は、架橋樹脂層を前記電荷輸送層上に積層した際に、電荷輸送層を構成する成分の架橋樹脂層への滲みだしが少なく、架橋樹脂層の硬化不良を防止するのに適当な材料である。また、耐熱性にも優れるため、架橋樹脂層を成膜する際の硬化熱による劣化が少ない点で有利である。
【0045】
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
−−樹脂−−
前記電荷輸送層に必要に応じて用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル・共重合体)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、エポキシアクリレート等の光硬化樹脂等の樹脂がある。これらの中でも、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が、電荷移動特性が良好となる点で好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度や耐摩耗性を改善できる点で好ましい。また、機械的、化学的及び電気的安定性、密着性などの他に電荷輸送物質との相溶性が重要である。
【0047】
前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常の場合、電荷輸送物質及び添加剤を樹脂とともに溶媒に分散又は溶解した塗工液を、前記電荷発生層上に塗工し、乾燥させる方法などが好適である。
【0048】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジオキソラン、アニソール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が特に好ましい。
【0049】
前記電荷輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、実用的に有効な表面電位を維持するためには、10μm〜40μmが好ましく、15μm〜30μmがより好ましい。
【0050】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷輸送物質100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。レベリング剤の場合には、前記電荷輸送物質100質量部に対して、0.001質量部〜0.1質量部が好ましい。前記含有量が、前記下限値未満であると、感度劣化を起こすことがある。
【0052】
<表面層>
前記表面層は、樹脂からなり、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0053】
−樹脂−
表面層に用いられる樹脂としては、電荷輸送層の項目で挙げたものを使用しても良いし、架橋性樹脂を使用してもよい。感光体の表面層に架橋性樹脂を用い、さらにフィラー(後述)を含有することで、表面層は非常に強固となり高い耐久性を持たせることができるとともにフィラーによる微細な凹凸形状を形成し、クリーニング性を向上させることができる。また感光体の摩耗や傷を防ぎ、うねり形状(後述)を長期的に持続させることができる。
【0054】
−−架橋性樹脂−−
前記架橋樹脂としては、架橋構造を有する樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記架橋樹脂を構成する構造単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリロイルオキシ基やスチリル基を有する連鎖重合系の化合物、水酸基、アルコキシシリル基、イソシアネート基を有する逐次重合系の化合物などに由来する構造単位が挙げられる。
【0055】
前記アクリロイルオキシ基やスチリル基を有する連鎖重合系の化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メタクリロイル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
これらの中でも、耐摩耗性に優れる点、及び画像流れを解消する点から、トリメチロールプロパントリアクリレートに由来する構造単位が好ましい。
【0056】
前記トリメチロールプロパントリアクリレートに由来する構造単位の前記架橋樹脂における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐摩耗性に優れる点から、前記架橋樹脂の固形分100質量部に対して10質量部〜70質量部が好ましく、30質量部〜60質量部がより好ましい。
【0057】
前記架橋樹脂としては、電子写真特性、汎用性、材料設計、及び製造安定性の点から、前記電荷輸送物質を含有していることが好ましく、架橋性の電荷輸送物質に由来する構造単位を有していることがより好ましい。
【0058】
前記架橋性の電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷輸送物質に由来する構造及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、電荷輸送物質に由来する構造及びスチリル基を有する化合物、電荷輸送物質に由来する構造及び水酸基を有する化合物、電荷輸送物質に由来する構造及びアルコキシシリル基を有する化合物、電荷輸送物質に由来する構造及びイソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。
【0059】
前記電荷輸送物質に由来する構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トリアリールアミン構造であることが、高感度化の点で好ましい。
【0060】
前記電荷輸送物質に由来する構造及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、以下の一般式(1)で表されるトリアリールアミン構造を有する架橋性の電荷輸送物質が、高感度化及び耐摩耗性の点で好ましい。
【0061】
【化1】

【0062】
また、前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば以下の化合物(No.1〜No.26)が挙げられる。
【0063】
【化2】

【0064】
【化3】

【0065】
【化4】

【0066】
前記表面層は、その他の成分として、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、発泡剤、有機微粒子などを含有していてもよい。これらの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記表面層の固形分100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。なお、レベリング剤の含有量としては、前記表面層の固形分100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部が好ましい。
【0067】
前記表面層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面層を形成する材料を含有する塗料(表面層用塗料)を塗工する方法が挙げられる。
【0068】
前記表面層用塗料は、硬化を促進させたり、安定化させたりするために、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの光重合開始剤を含有していてもよい。
【0069】
また、前記表面層用塗料は、溶媒を含有していてもよい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、環境負荷の観点から、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロパノールなどが好ましい。
【0070】
前記表面層用塗料の塗工方法としては、後述する表面形状(うねり形状)を形成できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコート法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。これらの中でも、スプレー塗工法、リングコート法が好ましい。
【0071】
前記表面層は、一度で塗工し、表面層を形成することも可能であるが、2回以上重ねて塗工し、表面層を多層にする方が層中におけるフィラーの均一性の面から好ましい。これによって、残留電位の低減、解像度の向上、及び耐摩耗性の向上に対してより一層の効果が得られる。
【0072】
前記架橋性樹脂を用いた場合は、架橋性の材料を架橋させるために、主に紫外線領域に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源を利用してもよい。
前記UV照射光源の照度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50mW/cm以上1000mW/cm以下が好ましい。前記照度が、50mW/cm未満であると、架橋反応に時間を要することがあり、1000mW/cmを超えると、架橋反応の進行が不均一となることがあり、表面層に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生じたりすることがある。また、急激な架橋反応により内部応力が大きくなり、表面層にクラックや剥がれが発生することがある。
【0073】
前記表面層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜15μmが好ましい。前記表面層の厚みが著しく増加すると、画質が若干劣化する傾向が認められるため、必要最小限度の厚みに設定することが好ましい。
【0074】
−表面形状−
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを有し、その表面において所定のうねり形状を有する。
ここで、所定のうねり形状とは、電子写真感光体の軸方向の表面について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmである表面形状である。また、電子写真感光体の円周方向には、このようなうねり形状がない。
【0075】
このように、電子写真感光体の軸方向表面に、大きなうねり形状を持たせることにより、クリーニング性を大幅に向上させ、さらにクリーニングブレードの鳴きやメクレを抑制し、良好なクリーニング性を長期的に持続させることが可能である。また、うねり形状により電子写真感光体とクリーニングブレードの接触面積を減らし、クリーニングブレードの劣化を抑制することができる。
【0076】
詳しくは次のとおりである。
画像形成装置内で電子写真感光体が駆動すると、それに当接するクリーニングブレードは程度の差こそあれ、電子写真感光体の駆動方向へ引き込まれ、それを契機にスティック・スリップ運動を生じる。このスティック・スリップ運動は、クリーニングブレードの弾性による復元力がその電子写真感光体に対する最大静止摩擦力より大きくなる時点で一気に復元状態の方向へ移動し、次いで、復元力が弱まるとクリーニングブレードの移動は停止し、再び、感光体の駆動方向へ引きずられる運動と解釈される。
【0077】
本発明では、電子写真感光体の表面に上記表面形状を付与することで、クリーニングブレードの振動は感光体表面の凸形状の周期に応じた振動が付加されてブレード鳴きは緩和され、また同時にブレードのメクレやクリーニング性も同時に確保できることを見出した。
具体的には、表面層の軸方向のうねり形状が、前記うねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μm、うねり曲線要素の平均長さWsmが3.0mm〜6.0mmであるとき、クリーニングブレードの鳴き・メクレおよびトナーすり抜けの抑制に効果がある。また表面層のうねり形状は、算術平均うねりWaが0.10μm〜0.20μmで、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.5mm〜5.5mmであることがより好ましい。
【0078】
算術平均うねりWaが0.2μmより大きい場合、表面層の膜厚差が大きくなるため作像プロセスにおいて濃度ムラやドットチリを発生させることがある。また算術平均うねりWaが0.08μm未満の場合、表面層のうねりが小さいため、ブレードの振動が少なく、クリーニングブレード鳴きの抑制効果は得られない。
【0079】
うねり曲線要素の平均長さWSmが6.0mmより大きい場合は振幅の大きなうねりとなるため、クリーニングブレードの鳴きの低減効果が十分に得られない。またうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mmより小さい場合、ブレードの振動が起こらずクリーニング性は低下し、またブレードのめくれが発生しやすくなる。
【0080】
−−表面形状の測定方法−−
前述した算術平均うねりWa及びうねり曲線要素の平均長さWSmは、2.5mm以下の短波長の粗さ成分と8.0mm以上の波長を取り除いたうねり曲線から得られるパラメータである。また、この算術平均うねりWa及びうねり曲線要素の平均長さWSmは、JIS B 0601(2001年規格)に準拠したものであり、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から算出したものである。
【0081】
なお、本発明では東京精密製表面粗さ計サーフコム1400Dを用いて測定長さ50.0mm、測定速度0.6mm/sで測定を行っているが、JIS規格に準拠し、これと同等の測定が可能なものであればいかなる測定装置でもよい。
【0082】
また、測定位置や測定数についての制限はないが、測定誤差を少なくするため複数点測定するのが好ましい。例えば円筒状の電子写真感光体では、長手方向の上端、中央、下端の3点、周方向90°おきに4点の計12点の測定を行い、12点の平均値を求めることで測定誤差の少ない値を得ることができる。
【0083】
−−表面形状の形成方法−−
電子写真感光体の表面層の前記うねり形状の制御方法は、塗工工程での塗膜時にうねりを制御する方法、塗工液の処方によりうねりを形成する方法、うねりを持った基体上に塗膜する方法、膜成形後に機械的にうねりを形成させる方法などがあり、いずれの方法でも構わないが、比較的容易にかつ低コストでうねり制御ができるため、塗工工程での塗膜時にうねりを制御する方法や塗工液の処方によりうねりを制御する方法が好ましい。
【0084】
塗膜時にうねりを制御する場合は、塗工方法としてスプレー塗工法を用いてうねりを制御するのが好ましく、スプレー塗工時の霧化エア圧や吐出量、スプレーガン-基体間距離、塗工回数などのスプレー塗布条件でうねりを制御することができる。加えて、被塗工面の前に所望のパターンに対応したマスクを設置する方法もある。
【0085】
また、スプレー塗工後に溶剤やエアを吹き付けることでうねりを形成することも可能である。塗工液の処方によりうねりを制御する場合は、塗工液中にレベリング剤や溶媒の種類や添加量、塗工液の固形分濃度によりうねりを制御することができる。これらの塗工液の処方とスプレー塗工法を組み合わせることでもより効果的にうねりを制御することが可能である。
【0086】
以下に、電子写真感光体表面のうねりを制御する方法の一例として、スプレー塗工法により表面層を形成する場合のうねりを制御する方法を示すが、本発明のうねりの制御方法はこれに限られるものではない。
【0087】
スプレー塗工法により表面層を形成し、うねりを制御する場合、スプレー塗工時のスプレーガンはいかなるものでもよいが、塗工液の吐出量、霧化エア流量、霧化エア圧などを制御できるものが好ましい。スプレーガンの例としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等が挙げられる。また、スプレーは縦型でも横型でもよい。本発明では明治機械製作所製のエアスプレーA100を用いて塗工をおこなっている。
【0088】
図3に、本発明の電子写真感光体における表面層をスプレー塗工により形成する際の概略を示す。符号(A)はスプレーガンを示し、符号(B)は塗布される基体を示す。図3において基体(B)は、支持体に感光層を塗工した感光体製造段階品を示し、支持体には円筒状のものを使用している。また、基体(B)は駆動手段により矢印方向に回転されており、スプレーガン(A)が基体上に表面層塗工液を霧化しながら塗布している。このとき、スプレーガン(A)は、基体(B)の左端から矢印方向にゆっくり移動し、表面層塗工液を基体(B)全面に塗工する。表面層塗工液の塗工回数は任意である。
【0089】
スプレーガン(A)の移動速度と基体(B)の回転数は任意であるが、塗工ムラ発生を抑制する点から、スプレーガン(A)の移動速度は10mm/s以下、基体(B)の回転数は60rpm以上が好ましい。
【0090】
また、スプレーガン(A)と基体(B)の距離は20mm〜100mmが好ましく、30mm〜70mmがより好ましい。20mm未満ではスプレーガン(A)と基体(B)との距離が近すぎるため塗工ムラが発生しやすくなり、100mmを越えると、スプレーガン(A)と基体(B)との距離が長くなりスプレーガン(A)から吐出した霧化液滴中の溶剤が蒸発しやすくなり、液滴が小さくなるためうねりが形成しにくくなる。
【0091】
塗工液の吐出量は、0.02ml/s以上が好ましい。0.02ml/s未満では吐出量が少ないため液滴が細かくなり、うねりが形成されにくくなる。吐出量はスプレーガン(A)のノズル開度や、シリンジポンプの押し出し量等で制御することができる。
【0092】
また、塗工液を塗膜直後のウェットな状態で溶剤やエアを吹き付けることでうねりを形成することも可能である。溶剤を吹き付ける場合、溶剤の種類は任意であるが、吹き付け後、塗膜表面に残らないようにするため沸点の低いものが好ましい。
【0093】
次に、図3において、基体(B)とスプレーガン(A)の間にマスクを置いて、電子写真感光体表面のうねりを制御する場合について説明する。
基体(B)とスプレーガン(A)の間に所望の開口部パターンのマスクを設置することで、マスクのパターンに類似して基体(B)側に塗工液が塗布される。このとき、電子写真感光体表面のうねりがマスクの開口部パターンにどれだけ類似するかは、基体(B)とマスクの距離、塗工直後の指触乾燥時間、塗工液の粘度などによって決まる。
【0094】
ここで使用するマスク(M)は、図4に示すように、電子写真感光体の軸方向(図中左右方向)に対応して一定のピッチで配置された開口部(Mw)を有するものである。マスク(M)における各寸法(横寸法A、縦寸法B、開口部(Mw)幅C,長さ(E)、開口部間隔D)は、基体とマスクの距離、塗工直後の指触乾燥時間、塗工液の粘度などとの関係から、前記うねり形状となるように決定される。
また、マスクの材質としては、溶剤に不要なものなら特に制約はなく、例えばステンレスを用いるとよい。
【0095】
マスク(M)の寸法例を表1に示す。なお、後述する実施例、比較例では、この寸法表に基づいたマスク(M)を用いており、そのときの材質はステンレスとした。
【0096】
【表1】

【0097】
−フィラー添加−
表面層では、表面のうねり形状と微細凹凸を付与することにより、画像形成プロセス中におけるクリーニング工程で、感光体に当接するクリーニングブレードが感光体表面で微振動を起こし、感光体上の残トナーの拭き取りを向上させることができる。本発明では、表面層中へのフィラーの添加により微細凹凸と大きなうねり形状の両方を持たせることで、クリーニング性を大幅に向上させ、さらにクリーニングブレードの鳴きやメクレを抑制し、良好なクリーニング性を長期的に持続させることが可能である。
【0098】
また、フィラーは表面層に微細な凹凸を形成するため、クリーニングブレードの微振動をより効果的にする。フィラーを用いなかった場合、長期の使用により感光体が削れ、うねり形状が消失するため、徐々にクリーニング性が低下していってしまう場合がある。そのため、フィラーを含有させることで、うねり形状を長期的に持続させ、長期に渡り良好なクリーニング性を持たせることが可能となる。
【0099】
フィラー微粒子の粒子径は好ましくは0.1μm〜1.0μm、より好ましくは0.1μm〜0.5μmである。0.1μm未満の場合、フィラーによる耐摩耗性の向上が小さくなり、うねり形状の保持に大きな改善は得られない。フィラー粒径が1.0μmより大である場合、クリーニングブレードに対する局所的な抵抗が増加するため、クリーニングブレードの破損させる場合がある。
【0100】
フィラーは無機フィラー、有機フィラーが使える。
前記有機フィラーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末;シリコ−ン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、α−アルミナ等のアルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。これらの中でも、フィラーの硬度の点から無機フィラーを用いることが耐摩耗性の向上の点で好ましい。
【0101】
前記フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電子写真感光体と摺擦するクリーニングブレードなどの他部材へのダメージを緩和できる点から、前記表面層の固形分に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上35質量%以下がより好ましい。
【0102】
また更に、これらのフィラーについて、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性があるからである。
【0103】
表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー重量に対して3〜30重量%が適しており、5〜20重量%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。
【0104】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、例えば、下引き層(24)などが挙げられる。
−下引き層−
前記支持体と前記感光層との間には、必要に応じて、前記下引き層を設けてもよい。前記下引き層は、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。
前記下引き層の材料としては、例えば、樹脂と、微粉末とを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有するものが挙げられる。
【0105】
−−樹脂−−
前記樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元構造を形成する硬化型樹脂、などが挙げられる。
【0106】
−−微粉末−−
前記微粉末としては、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、金属硫化物、又は金属窒化物などが挙げられる。
【0107】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などが挙げられる。
【0108】
また、前記下引き層としては、Alを陽極酸化にて設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものなどが挙げられる。
【0109】
前記下引き層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜50μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。
【0110】
[画像形成装置およびプロセスカートリッジ]
本発明に係る画像形成装置は、前述した本発明の電子写真感光体(感光体(11))と、帯電手段(12)と、露光手段(13)と、現像手段(14)と、転写手段(16)と、感光体(11)を摺擦するクリーニングブレードを有するクリーニング手段(17)と、を備えるものである。
以下、図面に沿って本発明で用いられる画像形成装置を説明する。
【0111】
図5は、本発明に係る画像形成装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図5において、感光体(11)は、架橋型樹脂表面層を積層する電子写真感光体である。感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0112】
帯電手段(12)は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段(12)は、消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触若しくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段(12)への汚染を防止するため、感光体(11)と帯電手段(12)表面の間に適度な空隙を有するように感光体(11)近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。
【0113】
転写手段(16)には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0114】
露光手段(13)、除電手段(1A)等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルタ、バンドパスフィルタ、近赤外カットフィルタ、ダイクロイックフィルタ、干渉フィルタ、色温度変換フィルタなどの各種フィルタを用いることもできる。
【0115】
現像手段(14)により感光体(11)上に現像されたトナー(15)は、印刷用紙やOHP用スライドなどの印刷メディア(18)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体(11)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段(17)により、感光体(11)より除去される。クリーニング手段(17)は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0116】
感光体(11)に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体(11)表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。係る現像手段(14)には、公知の方法が適用され、また、除電手段(1A)にも公知の方法が用いられる。
【0117】
印刷メディア(18)に転写されたトナーは、定着手段(19)により定着される。
【0118】
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。光照射工程は、像露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、クリーニング前露光およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。例えば、支持体側よりクリーニング前露光を行ってもよく、感光層側から行ってもよい。また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
【0119】
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジの形状は多く挙げられるが、一般的な例として、図6に示すものが挙げられる。図6における符号は、図5に示すものに対応して付されている。また、感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0120】
図7には本発明による画像形成装置の別の例を示す。
この画像形成装置では、感光体(11)の周囲に帯電手段(12)、露光手段(13)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の色毎の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)、中間転写ベルトである中間転写体(1F)、クリーニング手段(17)が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。
【0121】
感光体(11)は、架橋型樹脂表面層を積層する電子写真感光体である。
また各色の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)は各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。感光体(11)上に形成されたトナー像は中間転写ベルト(1F)の内側に配置された第1の転写手段(1D)により、中間転写ベルト(1F)上に転写される。第1の転写手段(1D)は感光体(11)に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト(1F)を感光体(11)に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト(1F)上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段(1E)により、印刷メディア(18)に一括転写された後、定着手段(19)により定着されて画像が形成される。
第2の転写手段(1E)も中間転写ベルト(1F)に対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト(1F)に当接する。
【0122】
転写ドラム方式の画像形成装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材(印刷メディア(18))に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図7に示すような中間転写方式の画像形成装置では中間転写体(1F)上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は図7に示す装置に限らず、前述の図5、図6および後述する図8(具体例を図9に記す。)に記す画像形成装置に適用することができる。
【0123】
図8には本発明による画像形成装置の別の例を示す。
この画像形成装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、色毎に画像形成部が配設されている。また、各色の感光体(11Y,11M,11C,11Bk(感光体(11)と総称する)が設けられている。
【0124】
この画像形成装置に用いられる感光体(11)は、架橋型樹脂表面層を積層する電子写真感光体である。
【0125】
また、各感光体(11Y,11M,11C,11Bk)の周りには、帯電手段(12)、露光手段(13)、現像手段(14)、クリーニング手段(17)等が配設されている。また、直線上に配設された各感光体(11Y,11M,11C,11Bk)の各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト(1F)が駆動手段(1C)にて掛け渡されている。この搬送転写ベルト(1F)を挟んで各感光体(11Y,11M,11C,11Bk)に対向する転写位置には転写手段(16Y,16M,16C,16Bk)が配設されている。
【0126】
図8の形態のようなタンデム方式の画像形成装置は、色毎に感光体(11Y,11M,11C,11Bk)を持ち、各色のトナー像を搬送転写ベルト(1F)に保持された印刷メディア(18)に順次転写するため、感光体を一つしか持たないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。
【0127】
<固体潤滑剤供給>
本発明では、図10に示すように潤滑剤(3A)を感光体(11)表面に供給するためのステアリン酸亜鉛供給手段として、潤滑剤供給手段(3C)を上記の画像形成装置について設けてもよい。
【0128】
この潤滑剤供給手段(3C)は、塗布部材としてのファーブラシ(3B)、固体潤滑剤(3A)、潤滑剤をファーブラシ方向に押圧するための加圧バネ(3D)を有している。
【0129】
このときの固体潤滑剤(3A)はバー状に成型されたステアリン酸亜鉛である。ファーブラシ(3B)は感光体(11)表面にブラシ先端が当接しており、軸を中心に回転することによって固体潤滑剤(3A)を一端ブラシに汲み上げ、感光体(11)表面との当接位置までブラシ上に担持搬送して感光体表面に入力する。
【0130】
また、経時で固体潤滑剤(3A)がファーブラシ(3B)に掻き削られて減少してもファーブラシ(3B)に接触しなくならないように、加圧バネ(3D)によって所定の圧力で固体潤滑剤(3A)がファーブラシ(3B)側に押圧されている。これによって、微量の固体潤滑剤(3A)でも常に均一にファーブラシ(3B)に汲み上げられる。
【0131】
また、感光体(11)表面に付着した固体潤滑剤の定着性を高めるための固体潤滑剤定着手段を設けてもよい。この手段はクリーニングブレードのような板をトレーリング方式で設ける手段や、ゴムロールを感光体に押し合てる手段がある。
【0132】
固体潤滑剤(3A)としては、例えば、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−オキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられるが、特に感光体(11)の摩擦係数を低減する効果の大きいステアリン酸金属塩、更にはステアリン酸亜鉛が一層好ましい。
【実施例】
【0133】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて重量部(質量部)を表わす。
【0134】
(実施例1)
円筒状アルミニウム製支持体(肉厚0.8mm、長さ340mm、外径30mmφ)上に、下記の下引き層用塗工液を用いて浸漬塗工し、加熱乾燥後の膜厚が3.5μmになるように下引き層を形成した。
【0135】
−下引き層用塗工液−
アルキッド樹脂 6重量部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CR−EL:石原産業) 40重量部
メチルエチルケトン 50重量部
【0136】
この下引き層上に下記構造のビスアゾ顔料を含む電荷発生層塗工液に浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0137】
−電荷発生層用塗工液―
下記構造式(A)のビスアゾ顔料 2.5重量部
【0138】
【化5】

【0139】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0140】
この電荷発生層上に下記の電荷輸送層用塗工液を用いて、浸積塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層を形成した。
【0141】
−電荷輸送層用塗工液−
ビスフェーノルZ型ポリカーボネート 10重量部
(パンライトTS2050,帝人化成社製)
下記構造式(B)の低分子電荷輸送物質 10重量部
【0142】
【化6】

【0143】
テトラヒドロフラン 80重量部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2重量部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0144】
つぎに、電荷輸送層上に電荷輸送層用と同じ塗工液を表面層用塗工液としてスプレー塗工し、加熱乾燥させ、膜厚5μmの表面層を得た。
【0145】
スプレー塗工条件を以下に示す。
ノズル−支持体間距離 :50mm
霧化エア圧 :2.5kg/cm
エア流量 :15.0L/min
吐出量 :0.06ml/s
スプレーガンの移動速度:5.4mm/s
ドラム回転数 :80rpm
指触乾燥時間 :10分
吹き付け回数 :1回
ドラム前面に配置したマスク種:マスク#1(表1)
ドラム−マスク距離 :10mm
【0146】
(実施例2)
実施例1において、表面層塗工時に用いるマスクをマスク#2(表1)に変更し、吐出量を0.10ml/sに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0147】
(実施例3)
実施例1において、表面層塗工時に用いるマスクをマスク#3(表1)に変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0148】
(実施例4)
実施例3において、表面層塗工液を下記に変更した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を得た。
【0149】
−表面層塗工液−
ポリカーボネート樹脂 4重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
前記構造式(B)の低分子電荷輸送物質 3重量部
微粒子:架橋スチレン−アクリル微粒子の分散体 5重量部
(JSR株式会社製、SX866(A))
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0150】
(実施例5)
実施例3において、表面層塗工液を下記に変更した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を得た。
【0151】
−表面層塗工液−
ポリカーボネート樹脂 4重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
前記構造式(B)の低分子電荷輸送物質 3重量部
微粒子:シリカ微粒子 1.4重量部
(KMPX−100、平均一次粒径:0.1μm、信越化学工業製)
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0152】
(実施例6)
実施例3において、表面層塗工液を下記に変更した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を得た。
【0153】
−表面層塗工液−
ポリカーボネート樹脂 4重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
前記構造式(B)の低分子電荷輸送物質 3重量部
微粒子:α−アルミナ 1.4重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0154】
(実施例7)
実施例3において、表面層塗工液を下記構成の架橋表面層塗工液に変更した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を得た。なお、表面層塗工後に、このドラムとUV硬化ランプから120mm距離を置いて、ドラムを回転させながらUV硬化を施した。この位置でのUV硬化ランプ照度は550mW/cm(紫外線積算光量計UIT−150、ウシオ社製による測定値)であった。また、ドラムの回転速度は25rpmとし、UV硬化を行う際、アルミニウムドラム内に30℃の水を循環させて連続3分間、UV硬化した。その後、130℃にて30分間加熱乾燥した。結果、6μmの架橋型樹脂表面層を設けた電子写真感光体を得た。
【0155】
−表面層塗工液(架橋表面層塗工液)−
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 9重量部
(トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:382、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99)
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 9重量部
(アクリル酸2−[4’−(ジ−p−トリル−アミノ)−ビフェニル−4−イル]−エチル)(下記構造式(C))
【0156】
【化7】

【0157】
光重合開始剤 2重量部
(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製))
テトラヒドロフラン 100重量部
【0158】
(実施例8)
実施例7において、表面層塗工液に以下の材料を添加した以外は実施例7と同様にして電子写真感光体を得た。
・アルミナフィラー(スミコランダムAA03、平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業製):8重量部
・ポリカルボン酸化合物 (低分子量不飽和ポリカルボン酸ポリマー溶液、BYK−P104、不揮発分50%、BYKケミー社製):0.2重量部
【0159】
(比較例1)
実施例1において、表面層塗工時にマスクを外した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0160】
(比較例2)
実施例4において、表面層塗工時にマスクをマスク#4(表1)に変更した以外は実施例4と同様にして電子写真感光体を得た。
【0161】
(比較例3)
実施例6において、表面層塗工時にマスクをマスク#5(表1)に変更した以外は実施例6と同様にして電子写真感光体を得た。
【0162】
(比較例4)
実施例8において、表面層塗工時の吐出量を0.12ml/sに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
【0163】
〔測定方法及び評価方法〕
以上のようにして作製した電子写真感光体サンプルについて、つぎのように測定及び評価を行った。
(1) 感光体表面形状の測定
表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密社、Surfcom 1400D、図11に示す構成)にて、電子写真感光体の軸方向表面を、ろ波中心線うねり測定、測定長さ50.0mm、カットオフ波長2.5mm〜8.0mm、測定速度0.6mm/sの条件でうねり曲線を測定し、カットオフ種別はガウシアン補正、傾斜補正は最小二乗法直線近似を選択した。このうねり曲線より、表面層の算術平均うねりWaとうねり曲線要素の平均長さWSmを算出した。
測定点は感光体の長手方向の上端、中央、下端の3点、周方向90°おきに4点の計12点の測定を行い、12点の平均値を値とした。
【0164】
なお、実施例1、比較例1の電子写真感光体の表面形状を測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られたうねり曲線をそれぞれ図12,図13に記す。
【0165】
(2) トナーすり抜け測定・評価方法
(測定方法)
本実施例におけるトナーすり抜け測定は、図14に示すように、感光体(11)に付着するトナーをクリーニングブレード(35)で捕集するプロセスにて行った。クリーニングブレード(35)をすり抜けたトナー(34)は厚さ1mmで8mm×310mmの白地のフエルト(槌屋社製、以下、すり抜けトナーキャッチャーと称する)(33)をクリーニングブレード下流、現像器開口部上流に据え付け、感光体(11)に接触させることで捕集した。
実際の測定は以下の手順で行った。すなわち、リコー社製 imagio Neo C455の感光体セットのうち、クリーニングブラシと帯電ローラークリーナー、および棒状のステアリン酸亜鉛を取り除いたものをすり抜け強度測定用の感光体セットとした。取り付け位置はブラック現像ステーションにした(図14)。
Imagio Neo C455の帯電ローラ印加バイアスのうち、DCバイアスを調整し、感光体(11)の帯電電位を−700Vになるようにした。次いで、露光部電位が−250Vになるよう書き込み光量を調整した。この状態で種々、現像バイアスを変えてベタパターンを書き込ませた。
転写前の感光体(11)に入力されたトナーを透明粘着テープ(日東電工社、プリンタックC)で捕集し、捕集したテープの画像濃度を反射分光濃度計(キヤノンアイテック社、X−RITE939)で測定し、この濃度が1.0となる現像バイアスに変更した。
次に、現像手段の開口部上端に2mm厚の線状のスポンジテープ(住友3M社、スコッチテープ4016)を介して、すり抜けトナーキャッチャー(33)(厚さ1mmで8mm×310mmのフエルト(槌屋社製))を貼り合わせた。これを本体に装着した。
クリーニングブレード(35)はImagio Neo C455純正品の新品を取り付け、清掃した感光体(11)を取り付けて、23℃55%RH環境で画像濃度5%のA4サイズのテストパターン画像(36)を連続50枚、コピー用紙(My Paper A4、NBSリコー社品)にプリントした。トナーは純正品の重合トナー(IPSIOトナー タイプ゜9800)を使用した。
【0166】
(評価方法)
プリント後、すり抜けトナーキャッチャー(33)を回収し、フエルトの汚染具合を目視で観察し、以下の基準で評価した。
−評価基準−
○: ほとんど汚れていない
△: わずかに汚れが認められる
×: 見た目で明らかに汚染がひどい
【0167】
(3) ブレード鳴き評価
画像形成装置のブレード鳴き評価はカラー複写機(リコー社製 imagio Neo C455)を用いた。カラー複写機の前面パネルの裏側に評価対象の感光体ユニットの装着位置に最も近い位置に小型マイクロフォンを装着した。このマイクロフォンをパーソナルコンピュータに接続し、音響解析ソフト(E.N.Software社 FFT Wave Version 7.7)により、電子写真感光体(11)の駆動音を録音した。得られた音響データをフーリエ変換した音の周波数特性を比較することで騒音の善し悪しを判断した。14時間駆動後、マイクロフォンを用いて、電子写真感光体(11)の駆動音を録音し、この録音データの周波数特性を比較した。
【0168】
得られたデータの一例を図15〜図17に示す。
図15は、感光体ユニットをセットしないブランク状態における動作音の周波数特性である。5000Hz前後にピークは見られない。
図16は、本発明ではない表面層を積層した電子写真感光体(例えば比較例1)を装着し、電子写真感光体を駆動した際の動作音の周波数特性である。この場合、ブレード鳴きが聞こえた。この録音データの周波数特性から約5kHzに音響パワーのピークが見られる。
図17は、本発明に該当する表面層を有する電子写真感光体(例えば実施例1)に交換したときの動作音の周波数特性を表すグラフである。この録音データの周波数特性は約5kHzに音響パワーのピークが消失している。
なお、電子写真感光体の駆動音を録音する際、カラー複写機内に評価対象の感光体ユニットを1基のみ装着し、現像ユニット、転写ユニットは除外した。
【0169】
ブレード鳴きについては、5243Hzの音響パワー(dB)を測定し、以下の基準で評価した。
−評価基準−
○: −70dB以下(良好)
△: −60〜−70dB(問題ないレベル)
×: −60dB以上(不快な音に感じるレベル)
【0170】
(4) 画像評価
画素密度が600dpi×600dpiで8×8のマトリクス中に4ドット×4ドットを描いたハーフトーンパターンと白紙パターンを交互に連続5枚ずつ印刷し、10000枚出力後と100000枚出力後の白紙パターンの地肌汚れを目視により、以下の基準で評価した。
−評価基準−
○: 極めて優れている
△: 問題なし
×: くすんだ感触を受ける。
また、耐久試験におけるクリーニングブレードの状態を観察し、メクレやビビリの発生についても観察した。
【0171】
感光体表面形状の測定結果を表2に、トナーすり抜け、ブレード鳴き、画像評価の結果を表3に示す。
【0172】
【表2】

【0173】
【表3】

【0174】
以上の結果より、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を順次積層した電子写真感光体において、電子写真感光体の軸方向の表面形状について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmである電子写真感光体により、クリーニングブレードのビビリや鳴き、メクレがなく、長期間に渡り良好なクリーニング性を有し、かつ優れた耐久性及び電気特性を有していることが確認された。また、本発明の感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジが高性能、高信頼性を有していることが明らかとなった。
【0175】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0176】
11,11Bk,11C,11M,11Y 電子写真感光体(感光体)
12,12Bk,12C,12M,12Y 帯電手段
13,13Bk,13C,13M,13Y 露光手段
14,14Bk,14C,14M,14Y 現像手段
15 トナー
16,16Bk,16C,16M,16Y 転写手段
17,17Bk,17C,17M,17Y クリーニング手段
18 印刷メディア(印刷用紙、OHP用スライド)
19 定着手段
1A 除電手段
1C 駆動手段
1D 第1の転写手段
1E 第2の転写手段
1F 中間転写体
21 導電性支持体
24 下引き層
25 電荷発生層
26 電荷輸送層
28 架橋型樹脂表面層(表面層)
32 現像ローラ
33 すり抜けトナーキャッチャー
34 すり抜けトナー
35 クリーニングブレード
36 プリント画像
3A 固体潤滑剤
3B ファーブラシ
3C 潤滑剤供給手段
3D 加圧バネ
42 表面粗さを測定するプローブを取り付けた治具
43 治具42を測定対象に沿って移動させる移動手段
44 表面粗さ計
45 信号解析を行うパーソナルコンピュータ
A スプレーガン
B 基体
M マスク
Mw 開口部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0177】
【特許文献1】特開2000−66424号公報
【特許文献2】特開2000−171990号公報
【特許文献3】特開昭53−092133号公報
【特許文献4】特開昭52−026226号公報
【特許文献5】特開平02−139566号公報
【特許文献6】特開平02−150850号公報
【特許文献7】特開2003−215829号公報
【特許文献8】特開2003−5606号公報
【特許文献9】特開2010−134459号公報
【特許文献10】特開2010−145793号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の軸方向の表面形状について、輪郭曲線方式で測定し、λc輪郭曲線フィルタのカットオフ値2.5mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタのカットオフ値8.0mmでうねりより長い波長成分を遮断して得られるうねり曲線における算術平均うねりWaが0.08μm〜0.20μmであり、かつうねり曲線要素の平均長さWSmが3.0mm〜6.0mmmであることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記表面層は、フィラー微粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記フィラー微粒子は無機フィラーであることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記フィラー微粒子はアルミナからなることを特徴とする請求項2または3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記表面層は架橋性樹脂からなり、該架橋性樹脂がトリアリールアミン構造を有する架橋性の電荷輸送物質に由来する構造単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記表面層は、スプレー塗工法により塗工されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記表面層は、前記電子写真感光体の軸方向に一定のピッチで配置された開口部を有するマスクを介してスプレー塗工されてなることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、前記電子写真感光体を摺擦するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記現像手段は、平均円形度0.95以上0.99以下の球形のトナーを用いることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像手段は、少なくとも2色以上の現像ステーションを有し、且つ、タンデム方式であって更に重合トナーを用いて現像することを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
少なくとも請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体と、現像手段と、クリーニング手段とを含む画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、前記クリーニング手段が前記電子写真感光体を摺擦するクリーニングブレードを具備することを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203023(P2012−203023A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64580(P2011−64580)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】