説明

電子写真現像剤用キャリア芯材、キャリア及び該キャリアを用いた電子写真現像剤

【課題】低バイアスから高バイアスまで抵抗が大きな変化をすることがなく、かつ磁化を制御可能とすることによって、キャリア付着が発生せず、長期間の使用において画像欠陥がなく安定した画像濃度が得られる電子写真現像剤用キャリア芯材、キャリア及び電子写真現像剤を提供すること。
【解決手段】Liフェライト、マグヘマイト、Feからなり、その一部がMnに置換されており、Li含有量が1〜2.5重量%、Mn含有量が2〜7.5重量%であって、さらにケイ素を25〜10000ppm含有し、圧縮破壊強度が130MPa以上、SF−1が125〜145であり、X線回折におけるスピネル結晶構造の各面の各積分強度が一定の式を満たし、測定電圧500V印加時の2mmGapにおける真空抵抗R500が1×10〜5×10Ωであり、かつ測定電圧1000V印加時の6.5mmGapにおける真空抵抗R1000が5×10〜1×1010Ωである電子写真現像剤用キャリア芯材を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される電子写真現像剤用キャリア芯材、キャリア及び該キャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法に使用される二成分系現像剤はトナーとキャリアとにより構成されており、キャリアは現像剤ボックス内でトナーと混合攪拌され、トナーに所望の電荷を与え、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる担体物質である。キャリアはトナー像を形成した後も、マグネットに保持され現像ロール上に残り、さらに再び現像ボックスに戻り、新たなトナー粒子と再び混合攪拌され、一定期間繰り返し使用される。
【0003】
この二成分系現像剤は、一成分系現像剤と異なり、キャリアがトナー粒子を攪拌し、トナー粒子に所望の帯電性を付与すると共に、トナーを搬送する機能を有しており、現像剤設計において制御性がよいため、特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機の分野に広く使用されている。
【0004】
このような二成分系電子写真現像剤においては、高画質画像を得るために、キャリアとして酸化被膜鉄粉、樹脂被覆鉄粉に代えて、Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト等のフェライト粒子が用いられている。これらのフェライト粒子を用いたフェライトキャリアは従来の鉄粉キャリアに比べ、一般に球状であり、磁気特性が調整可能である等の高画質画像を得るのに有利な特性を多く持っている。さらに、このフェライト粒子を芯材として種々の樹脂を被覆した樹脂被覆フェライトキャリアは、耐摩耗性や耐久性等が向上し、また体積固有抵抗の調整が可能となる。
【0005】
しかし、最近、環境規制が厳しくなり、Ni、Cu、Zn等の金属の使用は避けられるようになってきており、環境規制に適応した金属の使用が求められている。
【0006】
環境規制に適応した金属の使用として、従来から用いられている鉄粉キャリアやマグネタイトキャリア等があるが、これらのキャリアでは、上記フェライトキャリア並みの画質及び寿命を得ることは難しい。
【0007】
環境規制に適応したフェライトとしては、Li−Mn系フェライトが提案されているが、Liは温度、湿度等の周囲環境の影響を受けやすく、特性が大きく変化することが指摘されている。
【0008】
さらに現像剤及び感光体の高寿命化を実現するためにはキャリアが破壊され粒状からかけ離れた形状の粒子が増加することで芯材の露出による現像剤の帯電量や抵抗の変動や、破壊された粒子の破片による感光体へのダメージの軽減を図るため強度の高いキャリア及びキャリア芯材が要求されている。
【0009】
特許文献1(特開平7−333910号公報)には、Liフェライトの一部をアルカリ土類金属酸化物から選ばれる少なくとも1種で置換した電子写真現像剤用フェライトキャリアが記載されている。具体的には、Li−Mgフェライトキャリア、Li−Mg−Caフェライトキャリアが実施例に例示されている。この特許文献1では、従来のフェライト粒子に比べて耐久性が同等以上に維持でき、かつ周囲環境に対する安定性に優れた電子写真現像剤用キャリアが得られるとされている。しかし、この電子写真現像剤用キャリアでは、焼成ムラによる飛散物磁化の低いことが問題となっている。
【0010】
この特許文献1の比較例7、12及び17には、Li−Mnフェライトキャリアが記載されている。これら比較例7、12及び17は、環境変動における帯電量変化が大きく、飛散量が大きいとされている。
【0011】
特許文献2(特開平9−6052号公報)には、Liフェライト及びLi−Mnフェライトに、V及びBiを一定量含有させた電子写真用フェライトキャリアが記載されており、異常結晶粒成長が抑制され、もってトナー汚染が少なく長寿命であるとされている。
【0012】
この特許文献2の試料No.8には、Li−Mnフェライトキャリアが記載されており、帯電量の変化に依存したトナーによる汚染が生じるとされている。
【0013】
特許文献3(特開平9−236945号公報)には、表面を樹脂で被覆し、特定の体積固有抵抗を有するLi−Mn系フェライトキャリアと特定のトナーとからなる二成分系現像剤が開示され、高画質の画像を長期間に亘って安定して得られるとされている。
【0014】
しかし、これらLi−Mn系フェライトキャリアでは、通常抵抗が高く、また抵抗が電界強度に依存するという問題がある。電子写真現像剤用キャリアにおいては、特定の電界強度における抵抗が特定の範囲に入っているだけでは不十分であり、電子写真による現像では現像バイアスが変化するが、現像バイアスが変化しても常にキャリア付着が発生しないような抵抗であることが求められている。さらに現像バイアスが変化しても安定した画像濃度が得られることも望まれている。そのためには低バイアスから高バイアスまで抵抗が大きな変化をしないようにしておく必要がある。
【0015】
特許文献4(特開2007−271663号公報)には圧縮破壊強度が150MPa以上、圧縮変化率が15.0%以上、形状係数SF?1が100〜125であることを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤が開示されているが、より表面性の凹凸が大きいキャリア用芯材については何も記載されていない。
【0016】
【特許文献1】特開平7−333910号公報
【特許文献2】特開平9−6052号公報
【特許文献3】特開平9−236945号公報
【特許文献4】特開2007−271663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明は、低バイアスから高バイアスまで抵抗が大きな変化をすることがなく、かつ磁化を制御可能とすることによって、キャリア付着が発生せず、安定した画像濃度が得られる電子写真現像剤用キャリア芯材、キャリア及び該キャリアを用いた電子写真現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、検討の結果、圧縮破壊強度が130MPa以上、SF−1が125〜145であり、Li、Mn、Fe及びOを構成元素とし、さらに少量のケイ素を含有し、X線回折における特定面の各積分強度比が一定の関係を有し、また2mmGapにおける500Vの真空抵抗及び6.5mmGapにおける1000Vの真空抵抗が一定範囲にあるキャリア芯材及びこれに樹脂を被覆してなるキャリア、並びに該キャリアを用いた電子写真現像剤により上記目的を達成されることを知見して本発明に至った。そして、上記のようなキャリア芯材は、大気中ではなく、酸素濃度を制御した雰囲気で焼成することにより製造できることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は、Liフェライト、マグヘマイト(γ−Fe)、Feからなり、その一部がMnに置換されており、Li含有量が1〜2.5重量%、Mn含有量が2〜7.5重量%であって、さらにケイ素を25〜10000ppm含有し、圧縮破壊強度が130MPa以上、SF−1が125〜145であり、X線回折におけるスピネル結晶構造の(110)、(210)、(211)及び(311)面の各積分強度をそれぞれI110、I210、I211、I311とした時に、下記式(1)を満たし、測定電圧500V印加時の2mmGapにおける真空抵抗R500が1×10〜5×10Ωであり、かつ測定電圧1000V印加時の6.5mmGapにおける真空抵抗R1000が5×10〜1×1010Ωであることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材を提供するものである。
【0020】
【数1】

【0021】
本発明に係る上記電子写真現像剤用キャリア芯材は、pH4標準液によるLi溶出量が60ppm以下であることが望ましい。
【0022】
本発明に係る上記電子写真現像剤用キャリア芯材は、BET比表面積が0.075〜0.4m/gであることが望ましい。
【0023】
本発明に係る上記電子写真現像剤用キャリア芯材は、3K・1000/4π・A/m(3KOe)における磁化が40〜71Am/kgであることが望ましい。
【0024】
本発明に係る上記電子写真現像剤用キャリア芯材は、体積平均粒径が20〜100μmであることが望ましい。
【0025】
また、本発明は、上記キャリア芯材に樹脂を被覆してなる電子写真現像剤用キャリアを提供するものである。
【0026】
本発明の上記電子写真現像剤用キャリアにおいて、上記樹脂はシリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素アクリルエポキシ樹脂から選択される1種以上の樹脂であることが望ましい。
【0027】
本発明の上記電子写真現像剤用キャリアにおいて、上記樹脂中にカーボンブラック、金属酸化物、金属錯体から選択される少なくとも1種の無機微粒子を含有することが望ましい。
【0028】
また、本発明は、上記キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るキャリア芯材、キャリアを用いることによって、電子写真現像剤とした時に、低バイアスから高バイアスまで抵抗が大きな変化をすることがなく、また磁化を容易に制御できるため、キャリア付着が発生せず、安定した画像濃度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良形態について説明する。
<本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材>
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、Liフェライト、マグヘマイト(γ−Fe)、Feからなり、その一部がMnに置換されている。ここにおいて、Li含有量が1〜2.5重量%、Mn含有量が2〜7.5重量%である。このように、Liを含有することで磁化を低くでき、Mnを含有することで磁化を高くすることができるので、用途に応じてLi及びMnの含有量を選択して磁化を制御することができる。
【0031】
Li含有量が1重量%未満では、Li含有効果が発揮されずマグネタイトやMnフェライトと同様に抵抗が低くなりすぎ所望の画質が得られなくなる恐れがあり、2.5重量%を超えると、帯電量の環境依存性が悪化し所望の帯電特性が得られなくなる恐れがある。また、Mn含有量が2重量%未満では、Mn含有の効果が得られず所望の磁気特性が得られない可能性があり、7.5重量%を超えると、本焼成後においてもフェライトにならなかった過剰な鉄やMnが別の化合物を形成し、赤色微粉が発生し、白斑等の画像欠陥の原因となる可能性がある。
【0032】
本発明に係る電子写真用キャリア芯材は、ケイ素を25〜10000ppm、好ましくは50〜10000ppm、さらに好ましくは100〜10000ppm含有する。このようにケイ素を少量含有することにより、キャリア芯材の強度が向上する。ケイ素の含有量が25ppm未満では、ケイ素の含有効果がなく、ケイ素の含有量が10000ppmを超えると、同じ温度でも焼成が進みすぎて形状の悪いキャリアになってしまう可能性がある。
【0033】
本発明に係る電子写真用キャリア芯材は、圧縮破壊強度が130MPa以上、形状係数(SF−1)が125〜145である。圧縮破壊強度が130MPa以上の場合はキャリア芯材の強度が十分であることを意味し、表面の凹凸が大きい場合であっても十分キャリアとして使用できる。130MPaよりも小さい場合は現像器中でキャリアが破壊される可能性があり、感光体に傷をつけて白斑等の画像欠陥の原因となる可能性がある。
【0034】
SF−1が125よりも小さい場合は表面の凹凸が小さいため、キャリアが破壊された場合、大きな破片が出やすくなり、感光体に与えるダメージが大きくなるだけでなく、破断面の芯材部が露出し、抵抗や帯電量が変化してしまう可能性が高い。SF−1が145よりも大きい場合には表面の凹凸が大きく、形状が極めて悪いため、感光体を傷つけ、白斑等の画像欠陥の原因となる可能性がある。
【0035】
本発明に係る電子写真用キャリア芯材は、X線回折におけるスピネル結晶構造の(110)、(210)、(211)及び(311)面の各積分強度をそれぞれI110、I210、I211、I311とした時に、下記式(1)を満たす。
【0036】
【数2】

【0037】
上記式(1)に示されるように、100×(I110+I210+I211)/I311の下限は2超、上限は14未満であるが、好ましくは2超〜10、より好ましくは2超〜6である。
【0038】
後述するように、Li−Mn系フェライトにおいて、Li−Mn系フェライトの酸化度はX線回折により測定したパターンに含まれる特定のピークの積分強度をもとに知ることができる。具体的には、本来ほぼ完全なスピネル構造のフェライトにおいては、(110)、(210)及び(211)面に起因するピークはX線回折で検出されない。しかしながら、酸化性雰囲気における焼成によってスピネル構造の一部に格子欠陥が生じることでマグヘマイトと類似の新たな周期性が発生し、その格子欠陥の発生量は(110)、(210)、(211)面に起因するピークの大きさとして反映される。そのためこれら3つのピークの積分強度の和とスピネル構造であれば常に出現するピークの積分強度とを比較することでLi−Mn系フェライトの酸化度を定量的に知ることができるのである。なお、Li原子は原子量が小さくX線回折が起こりにくく、マグヘマイトと類似の回折パターンが得られるため、ここで本明細書に記載されているLiフェライトの類似の構造には、Liフェライトの一部がMnに置換されたもの、マグヘマイト及びマグヘマイトの一部がMnに置換されたものも含まれるものとし、原料のMn化合物が原料の形態及び単独のMn酸化物(MnO、Mn及びMn)でキャリア芯材中に存在しないことを意味するものとする。
【0039】
上記式(1)において、100×(I110+I210+I211)/I311が2以下の場合には、マグヘマイトに類似の結晶構造が相対的に減少し、通常のスピネル構造を持つMnで一部置換されたマグネタイトが増加する。このことは、電気抵抗が低くなるとともに磁化が高くなることを意味している。14以上の場合には、主にMnに置換されたマグヘマイト及びマグヘマイトに類似の回折パターンを持つMnに一部置換されたLiフェライトが生成することになる。このことは、結晶格子に含まれる格子欠陥が多くなるだけでなく欠陥そのものが規則的に配列することで電気抵抗が高くなるとともに磁化が低くなる。
【0040】
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の測定電圧500V印加時の2mmGapにおける真空抵抗R500が1×10〜5×10Ωであり、かつ測定電圧1000V印加時の6.5mmGapにおける真空抵抗R1000が5×10〜1×1010Ωである。500V及び1000Vにおける抵抗が上記範囲を外れた場合には、低バイアスから高バイアスまで抵抗が大きな変化をもたらし、抵抗の電界依存性が大きくなる。
【0041】
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材のLi溶出量は60ppm以下であることが好ましい。60ppmよりも多い場合にはLiフェライトの一部が焼成時にLiOとマグネタイト(Mnに一部置換されたものも含む)に解離し、LiOが空気中の水分及び/又は炭酸ガスを取り込むことでLiOH及び/又はLiCOに変化し、pH4の標準液で容易に溶出したことを示しており、キャリア芯材及び電子写真用キャリアとしても環境依存性が悪くなる。
【0042】
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材のBET比表面積は、0.075〜0.4m/gであることが望ましく、より望ましくは0.075〜0.35m/g、最も望ましくは0.075〜0.3m/gである。BET比表面積が0.075m/g未満では、表面の凹凸がほとんどない状態になっていることを意味しており、樹脂を被覆してキャリアとして実機で使用した場合に、凹凸による樹脂のアンカー効果がなくなるので被覆樹脂が剥離する可能性がある。0.4m/gを超えると、表面積が大きくなりすぎて空気中の水分のキャリア表面への吸着に伴う帯電特性が悪化する可能性がある。
【0043】
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の3K・1000/4π・A/mにおける磁化が40〜71Am/gであることが望ましく、より望ましくは45〜71Am/gであり、最も望ましくは50〜71Am/gである。上記3K・1000/4π・A/mにおける磁化が40Am/g未満であると、飛散物磁化が悪化しキャリア付着による画像欠陥の原因となる可能性があり、71Am/gを超えると、キャリア芯材に含まれる組成のうちLiフェライトが減少し相対的にマグネタイト、マグヘマイト及びMnフェライトの含有する量が増加することになるため、抵抗が低くなりすぎる可能性が有り、低抵抗によるキャリア付着の原因となる可能性がある。
【0044】
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の体積平均粒径は20〜100μmであることが望ましく、より望ましくは20〜80μmであり、最も望ましくは20〜60μmである。この範囲でキャリア付着が防止され、また良好な画質が得られる。体積平均粒径が20μm未満であると、キャリア付着が発生しやすくなるため好ましくない。体積平均粒径が100μmを超えると、画質が劣化しやすくなり好ましくない。
【0045】
これらキャリア芯材の特性等は、下記により測定される。
(Li、Mn、Fe及びケイ素含有量)
キャリア芯材0.2gを秤量し、純水60mlと1モル/lの塩酸20ml及び1モル/lの硝酸20mlを加えたものを加熱し、キャリア芯材を完全溶解させた水溶液を準備し、ICP分析装置(島津製作所社製ICPS−1000IV)を用いてLi、Mn、Fe及びケイ素の含有量を測定した。
【0046】
(Li溶出量)
キャリア芯材50gとpHメーター校正用pH4標準液50mlを100mlガラスビンに入れ、ペイントシェーカーで10分間攪拌した。攪拌終了後上澄み液を2mlサンプリングし、純水を加えて100mlに希釈した溶液をICPにて測定し、得られた測定値を50倍してLi溶出量の値とした。なお、pH4標準液はJIS Z 8802のpH測定方法に指定されているものを使用した。
【0047】
(圧縮破壊強度)
島津微小圧縮試験機MCT?W500(島津製作所社製)を用い、試験力490mN、負荷速度19.37mN/sec、圧子の種類としてφ50μm平面を用い、下記の計算式により求め、試験回数10回の平均値を圧縮破壊強度とした。
【0048】
【数3】

【0049】
(抵抗:真空抵抗)
電極間間隔2mm又は6.5mmにて非磁性の平行平板電極(10mm×40mm)を対向させ、その間に、試料200mgを秤量して充填する。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、500及び1000Vの電圧を順に印加し、それぞれの印加電圧における抵抗を絶縁抵抗計(SM−8210、東亜ディケーケー社製)にて測定した。なお、サンプルは真空乾燥機(ユニトラップUT−3000L、東京理化器械社製)を用いて0.1MPa以下、130℃で1時間減圧乾燥したものを減圧乾燥後装置より取り出し、30min間室温25℃、湿度55%の制御された恒温恒湿室内放置後、同様の環境下で測定を行った。
【0050】
(BET比表面積)
自動比表面積測定装置GEMINI2360(島津製作所社製)を用いて、吸着ガスであるNを吸着させて測定したキャリア粒子のN吸着量から求めることができる。なお、本発明では、このN吸着量を測定する際に用いられる測定管は、測定前に、減圧状態にて50℃で2時間の空焼きを行った。さらに、この測定管にキャリア粒子5gを充填し、減圧状態で30℃の温度で2時間前処理を行った後に、25℃下でNガスをそれぞれ吸着させてその吸着量を測定した。それらの吸着量は、吸着等温線を描き、BET式から算出される値である。
【0051】
(磁化)
積分型B−HトレーサーBHU−60型(理研電子社製)を使用して測定した。電磁石間に磁場測定用Hコイル及び磁化測定用4πIコイルを入れる。この場合、試料は4πIコイルに入れる。電磁石の電流を変化させ磁場Hを変化させたHコイル及び4πIコイルの出力をそれぞれ積分し、H出力をX軸に、4πIコイルの出力をY軸に、ヒステリシスループを記録紙に描く。ここで測定条件としては、試料充填量:約1g、試料充填セル:内径7mmφ±0.02mm、高さ10mm±0.1mm、4πIコイル:巻数30回にて測定した。
【0052】
(体積平均粒径)
日機装社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定される。分散媒には水を用いた。
【0053】
(形状係数:SF−1)
日本電子社製JSM−6060Aを用い、加速電圧は20kVとし、キャリアSEMを200倍視野にて、粒子が重ならないように分散させて撮影し、その画像情報を、インターフェースを介してメディアサイバネティクス社製画像解析ソフト(Image−Pro PLUS)に導入して解析を行い、Area(面積)及びフェレ径(最大)を求め、下記式より算出し得られた値である。キャリアの形状が球形に近いほど100に近い値となる。形状係数SF−1は、1粒子毎に算出し、100粒子の平均値をそのキャリアの形状係数SF−1とした。
【0054】
【数4】

【0055】
(赤色微粉)
キャリア芯材を10g秤量し、50mlのガラスビンに入れ、さらにエタノールを30ml加え、20回手振りし、ガラスビンを静置した。1分後にエタノールの上澄みを目視により着色しているかどうか観察し、着色していれば赤色微粉が発生したものと判断した。
【0056】
(X線回折測定)
測定装置としてパナリティカル社製「X’PertPRO MPD」を用いた。X線源としてCo管球(CoKα線)を、光学系として平行光学系を用いて、測定は0.02°のステップスキャンで行った。測定結果は通常の粉末の結晶構造解析と同様に解析用ソフトウエア「X’Pert HighScore」を用いてデータ処理し、積分強度比を求めた。なお、X線源についてはCu管球でも問題なく測定できるが、Feを多く含んだサンプルの場合には測定対象となるピークと比較してバックグラウンドが大きくなるので、Co管球を用いる方が好ましい。また、光学系は集中法でも同様の結果が得られる可能性があるが、粒径が大きいサンプルに対してはピークシフトの発生等測定精度を悪化させる恐れがあるので平行光学系での測定が好ましい。さらに、ステップスキャンの各点におけるカウント時間はスピネル構造の(311)面のピーク強度が約50000cpsとなるようにし、粒子の特定の優先方向への配向がない条件で測定を行った。
【0057】
<本発明に係る電子写真現像剤用キャリア>
本発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、本発明に係る上記キャリア芯材に樹脂を被覆してなる。
【0058】
本発明に係る電子写真現像剤用キャリアに用いられる被覆樹脂は、特に制限はないが、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素アクリルエポキシ樹脂から選択される1種以上の樹脂であることが望ましい。樹脂被覆量としては、キャリア芯材に対して0.5〜3.0重量%が望ましい。
【0059】
また、キャリアの電気抵抗や帯電量、帯電速度をコントロールすることを目的に、被覆樹脂にカーボンブラック、金属酸化物、金属錯体から選択される少なくとも1種の無機微粒子を含有することが望ましい。無機微粒子はそれ自身の持つ電気抵抗が低いことから、含有量が多すぎると急激な電荷リークを引き起こしやすい。従って、含有量としては、被覆樹脂の固形分に対し0.25〜20.0重量%であり、好ましくは0.5〜15.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。
【0060】
更に、被覆樹脂中には、帯電制御剤を含有させることができる。帯電制御剤の例としては、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤や各種シランカップリング剤が挙げられる。これは多量の樹脂を被覆した場合、帯電付与能力が低下することがあるが、各種の帯電制御剤やシランカップリング剤を添加することにより、コントロールできるためである。使用できる各種の帯電制御剤やカップリング剤の種類は特に限定されないが、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等の帯電制御剤やアミノシランカップリング剤等が好ましい。
【0061】
<本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材及びキャリアの製造方法>
次に、本発明に係る電子写真用キャリア芯材及びキャリアの製造方法について説明する。
【0062】
先ず、所定組成となるように、キャリア芯材原料を適量秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜20時間粉砕、混合する。このようにして得られた粉砕物を加圧成型器等によりペレット化した後、900〜1200℃の温度で仮焼成する。仮焼成温度が900℃未満では、本焼成後のキャリア表面形状が凹凸になってしまい、1200℃を超えると、粉砕が困難となる。加圧成型器は使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化してもよい。
【0063】
仮焼成後、さらにボールミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じて分散剤、バインダー等を適量添加してスラリーとなし、粘度調整後、スプレードライヤーにて造粒し、酸素濃度を0.5〜1.5容量%に制御し、1050〜1300℃で1〜24時間保持し、本焼成を行う。仮焼成後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕してもよい。
【0064】
本発明に係るキャリア芯材を得るには、焼成雰囲気の酸素濃度を0.5〜1.5容量%に制御することが重要である。このように、大気中ではなく、酸素濃度を制御した雰囲気で焼成を行うことで所望の抵抗の芯材を基本組成のみで得ることができるので焼結助剤等の影響を排除することができる。また、後処理での抵抗調整は不要となり、余分な工程を通す必要がないのでコスト的にも有利である。
【0065】
このように、比較的酸素濃度の低い雰囲気で焼成が行われるため、結晶構造内部では酸素が不足しやすい状態となり、焼成後はMnに一部置換されたマグネタイトの結晶構造を含むようになる。上記の結晶構造を持つことで大気焼成に代表されるLi系フェライトと異なり抵抗が下がりやすいだけでなく、焼成時の酸素濃度を制御することでMnに一部置換されたマグネタイトの結晶構造を生成させる度合いを制御することができる。
【0066】
また、焼成時に酸素濃度を制御することで、Li、Mnの添加量を一定にしたままでも磁化と抵抗を制御することができる。特にLiフェライトはその組成を表わす化学式(Li0.5Fe2.5)からも判るように、通常の2〜3価の金属酸化物で構成されるフェライトと比較して鉄を多く含んでいる。そのため、焼成時の酸素濃度を変えることで鉄の2価、3価のバランスを少し化学的量論比から変化させることで金属元素の構成比そのものを変えることなく抵抗や磁化を用途に応じて制御できるようになる。
【0067】
このように本焼成して得られた焼成物を、解砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法等を用いて所望の粒径に粒度調整したキャリア芯材を得る。
【0068】
次に、得られたキャリア芯材の表面に樹脂を被覆する。樹脂の被覆方法としては、樹脂を溶剤に希釈し、上記キャリア芯材の表面に被覆するのが一般的である。樹脂の被覆量及び種類は、上述した通りである。ここに用いられる溶剤としては、有機溶剤に可溶性のある樹脂である場合は、トルエン、キシレン、セロソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール等が挙げられ、水溶性樹脂あるいはエマルジョン系樹脂であれば水を用いればよい。また上記キャリア芯材に、上述のような被覆樹脂を被覆する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能撹拌機による液浸乾燥法等により被覆することができる。被覆率を向上させるためには、流動床による方法が好ましい。
【0069】
樹脂をキャリア芯材に被覆後、焼き付けする場合は、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリ式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。焼き付けの温度は使用する樹脂により異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げる必要がある。
【0070】
このようにして、キャリア芯材表面に樹脂が被覆、焼き付けられた後、冷却され、解砕、粒度調整を経て本発明に係る樹脂被覆したキャリアが得られる。
【0071】
(帯電量測定)
負帯電性市販トナー3gとキャリア47gを秤量し、50mlのガラスビンに入れてボールミルでガラスビンが100回転になるように回転数を合わせて混合攪拌を行った。攪拌時間は30minとし、それぞれ現像剤をN/N環境(室温25℃、湿度55%)下に1時間暴露後、サンプリングして帯電量をEpping社製吸引帯電量測定装置にて測定した。
【0072】
<本発明に係る電子写真用現像剤>
次に、本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。
本発明に係る電子写真現像剤は、上述した電子写真現像剤用キャリアとトナーとからなるものである。
【0073】
本発明の電子写真現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子も使用することができる。
【0074】
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
【0075】
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、更にはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独又は混合して用いられる。
【0076】
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料及び4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
【0077】
着色剤(色剤)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
【0078】
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に機能付与のため外添剤を添加することもできる。
【0079】
更に、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
【0080】
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
【0081】
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
【0082】
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
【0083】
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。更に、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
【0084】
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼす。上記範囲内の量で使用することは単量体の分散安定性の確保と重合トナー粒子の環境依存性を低減する観点から好ましい。
【0085】
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれをも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
【0086】
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
【0087】
更に、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
【0088】
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
【0089】
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0090】
更に、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
【0091】
上記のようにして製造されたトナー粒子の体積平均粒径は、2〜15μm、好ましくは3〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しかぶりやトナー飛散を引き起こしやすく、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
【0092】
上記のように製造されたキャリアとトナーとを混合し、電子写真現像剤を得ることができる。キャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は、3〜15重量%に設定することが好ましい。3重量%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15重量%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
【0093】
上記のように調製された本発明に係る電子写真現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
【0094】
以下、本発明を実施例等に基づき具体的に説明する。
【実施例1】
【0095】
Fe、Mn、Liが所定重量割合となるように、Fe76.7モル、LiCO13.3モル、Mn3.33モルを秤量し、固形分50%となるように水を加え、さらに、Siが固形分に対して4000ppmになるようにSiO換算で40%のコロイダルシリカ懸濁液を添加し、ビーズミルで粉砕後、スプレードライヤーにて仮造粒し、1000℃にて大気中で仮焼成を行った。仮焼成物をさらに固形分が50%となるように水とバインダー成分と分散剤を添加してビーズミルで粉砕し、スプレードライヤーで造粒した。得られた造粒物を650℃の大気雰囲気中で造粒物中に含まれる有機成分を除去した後、1145℃、酸素濃度1容量%の条件で16時間焼成し焼成物を得た。得られた焼成物をハンマークラッシャーで解砕、分級、磁力選鉱を行い体積平均粒径35.6μmのキャリア芯材を得た。
【実施例2】
【0096】
表1に示されるように、Mn1.66モルを用いた以外は実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.9μmのキャリア芯材を得た。
【実施例3】
【0097】
表1に示されるように、Mn5モルを用いた以外は実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.5μmのキャリア芯材を得た。
【実施例4】
【0098】
表1に示されるように、LiCO9.5モルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.3μmのキャリア芯材を得た。
【実施例5】
【0099】
表1に示されるように、LiCO26.6モルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.2μmのキャリア芯材を得た。
【実施例6】
【0100】
表1に示されるように、Si含有量が10000ppmとなるように、コロイダルシリカ懸濁液を添加した以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.3μmのキャリア芯材を得た。
【実施例7】
【0101】
表1に示されるように、焼成時の酸素濃度を0.5容量%とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径36.0μmのキャリア芯材を得た。
【実施例8】
【0102】
表1に示されるように、焼成時の酸素濃度を1.5容量%とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。
【実施例9】
【0103】
表1に示されるように、焼成時の焼成温度を1130℃とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径33.9μmのキャリア芯材を得た。
【実施例10】
【0104】
表1に示されるように、焼成時の焼成温度を1185℃とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.8μmのキャリア芯材を得た。
【比較例】
【0105】
〔比較例1〕
表1に示されるように、焼成時の酸素濃度を非酸化性雰囲気(0容量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.5μmのキャリア芯材を得た。
【0106】
〔比較例2〕
表1に示されるように、焼成時の酸素濃度を10容量%とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径36.0μmのキャリア芯材を得た。
【0107】
〔比較例3〕
表1に示されるように、焼成時の酸素濃度を14容量%とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.9μmのキャリア芯材を得た。
【0108】
〔比較例4〕
表1に示されるように、焼成時の酸素濃度を大気焼成(21容量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.3μmのキャリア芯材を得た。
【0109】
〔比較例5〕
表1に示されるように、LiCOを添加しない以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.2μmのキャリア芯材を得た。
【0110】
〔比較例6〕
表1に示されるように、LiCO28.6モル、Mn1.66モルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径36.1μmのキャリア芯材を得た。
【0111】
〔比較例7〕
表1に示されるように、Mnを添加しない以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.0μmのキャリア芯材を得た。
【0112】
〔比較例8〕
表1に示されるように、LiCO9.5モル、Mn6.67モルを用いた以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径35.2μmのキャリア芯材を得た。
【0113】
〔比較例9〕
表1に示されるように、Si含有量が0ppmとなるように、コロイダルシリカ懸濁液を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.8μmのキャリア芯材を得た。
【0114】
〔比較例10〕
表1に示されるように、Si含有量が20000ppmとなるように、コロイダルシリカ懸濁液を添加した以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。
【0115】
〔比較例11〕
表1に示されるように、焼成時の焼成温度1100℃とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.7μmのキャリア芯材を得た。
【0116】
〔比較例12〕
表1に示されるように、焼成時の焼成温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様の方法で体積平均粒径34.2μmのキャリア芯材を得た。
【0117】
実施例1〜10及び比較例1〜12の原料仕込量、焼成条件、化学分析(ICP)、X線回折測定結果を表1に示す。
【0118】
また、実施例1〜10及び比較例1〜12の磁気特性、500Vの真空抵抗(2mmGap)及び1000Vの真空抵抗(6.5mmGap)、粉体特性(体積平均粒径D50、BET比表面積、赤色微粉発生、SF−1)及びLi溶出量を表2に示す。また、実施例4で得られたキャリア芯材粒子の(110)、(210)、(211)付近の拡大したX線回折チャートを図1に示す。
【実施例11】
【0119】
実施例1と同様の方法で体積平均粒径58.83μmのキャリア芯材を作成し、三菱レイヨン社製アクリル樹脂LR−269を被覆樹脂として混合攪拌機により塗布した。このとき樹脂溶液はキャリア芯材に対する樹脂の固形分で1重量%となるように樹脂を秤量し、樹脂の固形分が10重量%となるようにトルエンを添加したものを使用した。樹脂を塗布した後、完全に揮発分をなくすために145℃設定の熱風乾燥機で2時間乾燥させて樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例12】
【0120】
実施例1と同様の方法で体積平均粒径58.83μmのキャリア芯材を作成し、信越シリコーン社製シリコーン樹脂KR−350にアルケマ社製ポリフッ化ビニリデン樹脂Kynar#2500を添加したものを被覆樹脂として流動床コーティング装置により塗布した。このときシリコーン樹脂溶液はキャリア芯材に対する樹脂の固形分で2重量%となるように樹脂を秤量し、樹脂の固形分が10重量%となるようにトルエンを添加したものを使用した。さらに、ポリフッ化ビニリデン樹脂はシリコーン樹脂の固形分の10重量%となるように秤量した後、樹脂溶液に添加し、IKA社製ホモジナイザーULTRATURRAX T−50にて3分間分散させてからコーティングに使用した。樹脂を塗布した後、完全に揮発分をなくすために280℃設定の熱風乾燥機で3時間乾燥させて樹脂被覆キャリアを得た。
【0121】
実施例11及び12の帯電量(攪拌時間:1分、5分、30分)を評価した。結果を表3に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1〜10において電気抵抗は印加電圧によらずほぼ一定となった。一方、比較例1は2mmGapにおける500V印加時の真空抵抗及び6.5mmGapにおける1000V印加時の真空抵抗が測定できなかった。比較例2〜4は焼成時の酸素濃度が高く、抵抗が高くなっており、また赤色微粉が発生した。比較例5はLiを含有していないため磁気特性に劣ったものであった。比較例6はLi含有量が多く、Mn含有量が少ないため、Li溶出量も多く、抵抗が高くなっており、また赤色微粉が発生した。比較例7はMnを含有しないため、磁気特性に劣ったものであった。比較例8はLi含有量が多く、Mn含有量が少ないため赤色微粉が発生した。比較例9はSiを添加しなかったため焼結が進まずキャリア芯材の比表面積が非常に大きいものとなり、また圧縮破壊強度に劣るものであった。比較例10はSi含有量が過剰になりすぎ、焼結が進みすぎキャリア芯材の比表面積が非常に小さく、形状の悪いものとなった。さらに、比較例11では焼成温度が低いためフェライトか反応が十分に進まずリチウム溶出量が多く環境依存性の良くない芯材になり、比較例12では焼成温度が高いためキャリア芯材の凹凸が少なくBET比表面積が小さくなりすぎ、いずれも圧縮破壊強度が劣ったものとなった。また、実施例及び比較例で得られたすべてのキャリア芯材をX線回折にて測定したところ各種酸化Mnの形態では存在していないことが確認された。なお、実施例及び比較例で得られたすべてのキャリア芯材をX線回折にて測定したところ、原料形態のMn化合物及び/又は酸化Mnのピークは測定されなかった。そのため、実施例1〜10、比較例1〜4、比較例6及び比較例8〜12で得られたキャリア芯材に含まれるMnはLi−フェライト、マグヘマイト、Feの一部に置換されているものと判断した。また、比較例5で得られたキャリア芯材に含まれるMnはマグヘマイト、Feの一部に置換されているものと判断した。
【0126】
また、表2の結果から、実施例1〜10及び比較例1〜12で得られたキャリア芯材のX線回折の測定結果から、積分強度比は磁気特性及び電気的特性を選別する際の良い選別方法になっていることが示された。
【0127】
また、実施例11及び12は、キャリア芯材に樹脂を被覆したものであるが、表3に示されるように樹脂で被覆することでキャリアとして十分な帯電特性が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係るキャリア芯材及びキャリアを用いることによって、電子写真現像剤とした時に、低バイアスから高バイアスまで抵抗が大きな変化をすることがなく、また磁化を容易に制御でき、キャリア付着が発生せず、長期間の使用においても安定した画像濃度が得られる。
【0129】
従って、本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材、キャリア及びこれを用いた電子写真現像剤は、高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機等の分野に広く使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、実施例4で得られたキャリア芯材の(110)、(210)、(211)付近の拡大したX線回折のチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liフェライト、マグヘマイト、Feからなり、その一部がMnに置換されており、Li含有量が1〜2.5重量%、Mn含有量が2〜7.5重量%であって、さらにケイ素を25〜10000ppm含有し、圧縮破壊強度が130MPa以上、SF−1が125〜145であり、X線回折におけるスピネル結晶構造の(110)、(210)、(211)及び(311)面の各積分強度をそれぞれI110、I210、I211、I311とした時に、下記式(1)を満たし、測定電圧500V印加時の2mmGapにおける真空抵抗R500が1×10〜5×10Ωであり、かつ測定電圧1000V印加時の6.5mmGapにおける真空抵抗R1000が5×10〜1×1010Ωであることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材。
【数1】

【請求項2】
pH4標準液によるLi溶出量が60ppm以下である請求項1記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
【請求項3】
BET比表面積が0.075〜0.4m/gである請求項1又は2記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
【請求項4】
3K・1000/4π・A/mにおける磁化が40〜71Am/kgである請求項1、2又は3記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
【請求項5】
体積平均粒径が20〜100μmである請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のキャリア芯材に樹脂を被覆してなる電子写真現像剤用キャリア。
【請求項7】
上記樹脂がシリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素アクリルエポキシ樹脂から選択される1種以上の樹脂である請求項6記載の電子写真現像剤用キャリア。
【請求項8】
上記樹脂中にカーボンブラック、金属酸化物、金属錯体から選択される少なくとも1種の無機微粒子を含有する請求項6又は7記載の電子写真現像剤用キャリア。
【請求項9】
請求項6、7又は8記載のキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−244571(P2009−244571A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90651(P2008−90651)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【出願人】(000231970)パウダーテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】