説明

電子写真現像剤用磁性キャリア及びその製造方法、並びに二成分系現像剤

【課題】 本発明は、被覆樹脂の剥がれや磨耗に対する耐久性に優れ、かつキャリアに対する機械的ストレスにも安定となり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘ってカブリ、濃度ムラがなく安定に維持できるようになり、また階調性に優れた高画質な画像を長く維持できる電子写真現像剤に用いられる電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分系現像剤を提供する。
【解決手段】 強磁性酸化鉄粒子をフェノール樹脂に分散してなる粒子表面が微小な凹凸を有す球状磁性複合体粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアであって、
前記球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRzが0.3μm〜2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真現像剤用磁性キャリアに関するものであって、詳しくは粒子表面に微小な凹凸を形成することによって、樹脂被覆時の接着性が優れ被覆層の磨耗や剥がれを防止することができ、キャリアに対する機械的なストレスに対して安定となり、更に適切な電気抵抗値をもち、かつ電気抵抗値の電圧依存性を少なく制御することで、優れた階調性を有す電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分現像剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、電子写真方式においては、セレン、OPC(有機半導体)、a−Si等の光導電性物質を感光体として用い、種々の手段により静電気的潜像を形成し、この潜像に磁気ブラシ現像法等を用いて、潜像の極性と逆に帯電させたトナーを静電気力により付着させ、顕像化する方式が一般に採用されている。
【0003】
この現像工程においては、トナーとキャリアとからなる二成分系の現像剤が使用され、キャリアと呼ばれる担体粒子が摩擦帯電により適量の正又は負の電気量をトナーに付与し、且つ、磁気力を利用し磁石を内蔵する現像スリーブを介して、潜像を形成した感光体表面付近の現像領域にトナーを搬送している。
【0004】
近年、前記電子写真方式の複写機又はプリンターはデジタル化、複合化が進み、高機能化、高画質化及び高速化の要求がこれまで以上に増大している。また、パーソナル化、省スペース化等の市場要求に伴い、電子写真方式の画像形成装置の小型化が促進されている。特にフルカラーの画質に関しては高級印刷、銀塩写真に近い高画質品位が望まれている。この為、細密化された潜像を長期にわたり忠実に可視化するためには現像剤帯電を安定に維持することが重要である。これらの特性を安定に維持するためには、現像剤中に含有されているキャリア特性、つまり帯電機能を有するキャリアの帯電性能や電気抵抗等の諸特性が長期に亘って安定に維持できる高寿命化がより必要とされている。
【0005】
これまで、現像剤を形成するキャリアは、装置内に滞留してトナーと摩擦が繰り返されるために、キャリアの表面状態が使用経時によって変化を起こし、画像が変化するという問題があった。これは、キャリア粒子表面にトナーが強固に付着してしまい汚染されることで本来持っているキャリアの帯電性が失われてしまう現象(いわゆるトナーのスペント)と、キャリア粒子表面に形成された樹脂被覆層が摩擦によって剥離を起こし、リークサイトを生じて電気抵抗が変化する現象の2つの現象が大きな原因とされている。
【0006】
これらの問題に対し、キャリアへのトナーのスペント化を防止するためには、従来からキャリア表面に種々の樹脂を被覆する方法が提案されており、例えばキャリア芯材粒子表面にフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性樹脂をコートしたものが知られている。このようなコート型キャリアは帯電量、抵抗制御の機能付与だけでなく、表面が低表面エネルギー物質で覆われているため、現像時にトナーのスペント化が起こり難く、その結果、帯電量が安定し、現像剤の長寿命化が計れる。
【0007】
一方、キャリアにはある程度の電気抵抗値を有すことが求められており1×10〜1×1016Ω・cm程度の電気抵抗値が求められている。即ち鉄粉キャリアのように電気抵抗値が10Ω・cmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする問題がある。また、絶縁性の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、さらにトナーの帯電量も高くなり、結果、エッジの効いた画像にはなるが、反面、大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるという問題が生じる。
【0008】
更に、電気抵抗値の電圧に対する依存性が大きくなると、一般的に階調性のない画像となり、複写機及びプリンターの現像剤として用いた場合に高画質化が困難となり、用途も限定されることとなる。
【0009】
一般的に二成分系現像剤を構成するキャリアとして、鉄粉キャリア及びフェライトキャリア、バインダー樹脂中に磁性粒子粉末を分散させたバインダー型キャリア、及び磁性体を被覆樹脂でコートしてなるコート型キャリアがよく知られている。
【0010】
鉄粉キャリア及びフェライトキャリアは、通常、粒子表面を樹脂で被覆して使用されるが、鉄粉キャリアは真比重が7〜8g/cmであってフェライトキャリアは真比重が4.5〜5.5g/cmと大きいために、現像機中で攪拌するためには大きな駆動力を必要とし、機械的な損耗が多く、トナーのスペント化、キャリア自体の帯電性劣化や感光体の損傷を招きやすい。さらに、前記鉄粉キャリア及びフェライトキャリア表面と被覆樹脂との接着性が良好とは言い難く、使用中に次第に被覆樹脂が剥離して、帯電性の変化を起こし、結果として画像の乱れやキャリア付着等の問題を引き起こしてしまう。
【0011】
もっとも、特開平2−220068号公報記載の磁性酸化鉄粒子とフェノール樹脂との球状磁性複合体粒子からなる磁性体分散型キャリアは、前記鉄粉キャリア及びフェライトキャリアに比べて被覆樹脂との接着性に数段優れており、使用中に被覆樹脂が剥離する問題はほとんど起こらないものである。
【0012】
しかしながら、近年、カラー化が進むことで高画質化のためのキャリアに対する諸特性の向上と長期に亘って安定に維持できる高寿命化の要求がより高まっていることで、粒子間の衝突、粒子と現像装置内での機械的攪拌、熱的ストレスによって生じる被覆樹脂の削れ、又は剥離の抑制に対して不十分であるという課題を有している。また、前記磁性体分散型キャリアの芯材となる球状磁性複合体粒子の電気抵抗値が低いため、樹脂被覆層の剥離が生じた場合、現像時にリークが生じ、電気抵抗値の電圧依存性が大きくなるため階調性が劣る問題がある。
【0013】
特に最近ではメンテナンスフリーシステムの時代へシフトしてきているため、マシン寿命まで現像剤の耐久性が必要な場合もあり、磨耗による被覆樹脂の剥離の抑制とトナースペントを起こりにくくするための対策、更には、十分な電気抵抗をもっていて、電気抵抗の電圧依存性が低い磁性キャリアが強く要求されている。
【0014】
従来、磁性キャリアの表面状態に着目し、粒子表面に凹凸を形成し、表面凹凸を制御した例がある。
例えば、樹脂分散型粒子やスプレードライ粒子の粒子表面を十点平均粗さRzとその標準偏差によって制御した技術(特許文献1)、凸部形成材を含有し樹脂被覆によって粒子表面の凹凸を形成し、十点平均粗さRz、または、凹凸の高低差と凸部の存在個数によって粒子表面を制御した技術(特許文献2、3)、焼成条件によって粒子表面を算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smによって制御した技術(特許文献4)、同じく焼成条件によって、粒子表面に縞模様の突起部分を形成し、粒子表面を算術平均粗さRaと隣接する突起部分の間の溝の深さによって制御した技術(特許文献5)、酸処理によってハニカム状の粒子表面を形成し、粒子のBET比表面積が計算式S=a×D(S:芯材粒子のBET比表面積 (m/g)、D:芯材粒子の平均粒径 (μm)、a:係数、3≦a≦22、b:係数、b=−1.05)に当てはまるように制御した技術(特許文献6)、粒子表面が板状金属酸化物粒子に起因する微小な凹凸を形成し、磁性キャリアの流動率によって制御した技術(特許文献7)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008―83098号公報
【特許文献2】特開2006−18129号公報
【特許文献3】特開2002―287431号公報
【特許文献4】特開2008―40270号公報
【特許文献5】特開2008―250214号公報
【特許文献6】特開2007―101731号公報
【特許文献7】特開2003―323007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の技術によって粒子表面の凹凸を制御し被覆樹脂との接着性を高くなり耐久性が向上するが、粒子間の衝突、粒子と現像装置内での機械的攪拌、熱的ストレスによって粒子表面凹凸の凸部にかかる負荷へ影響が大きい為、被覆樹脂の削れや剥離の抑制に対して十分とは言えず、上記課題に関して満足するものとは言い難い。
【0017】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、被覆樹脂の剥がれや磨耗に対する耐久性に優れ、かつキャリアに対する機械的ストレスにも安定となり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘ってカブリ、濃度ムラがなく安定に維持できるようになり、また階調性に優れた高画質な画像を長く維持できる電子写真現像剤に用いられる電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分系現像剤を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0019】
即ち、本発明は、フェノール樹脂をバインダーとして強磁性酸化鉄粒子が結着して成る球状磁性複合体粒子から成る電子写真現像剤用磁性キャリアであって、前記球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRzが0.3μm〜2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明1)。
【0020】
また、本発明は、前記球状磁性複合体粒子表面の最大高さRyが0.7μm〜2.5μmである本発明1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明2)。
【0021】
また、本発明は、前記球状磁性複合体粒子表面の算術平均粗さRaが0.1μm〜0.9μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.6μm〜6.0μmである本発明1又は2記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明3)。
【0022】
また、本発明は、前記球状磁性複合体粒子は、強磁性酸化鉄粒子が総量にして80〜99重量%含まれており、
前記強磁性酸化鉄粒子は、粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとによって構成されており、
平均粒子径が大きい強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raと平均粒子径が小さい強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比ra/rbが1より大きく、前記強磁性酸化鉄粒子aと前記強磁性酸化鉄粒子bとの重量比は、該強磁性酸化鉄粒子aと該強磁性酸化鉄粒子bとの総量を100重量部としたとき、1〜50重量部の範囲で強磁性酸化鉄粒子aを含有し、かつ、強磁性酸化鉄粒子aと該強磁性酸化鉄粒子bの形状は、球状、六面体、八面体、多面体、不定形から選ばれるいずれかの形状を示すことを特徴とする本発明1乃至3のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明4)。
【0023】
また本発明は、前記電子写真現像剤用磁性キャリアの印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ωcm〜1×1014Ω・cmであって、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300が
0.1≦R300/R100≦1
であることを特徴とする本発明1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明5)。
【0024】
また本発明は、平均粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとの混合粉末にフェノール類とアルデヒド類とを水性媒体中で攪拌、混合しながら反応・硬化させて、強磁性酸化鉄粒子とフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子を生成させて、球状磁性複合体粒子の表面に平均粒子径の大きな強磁性酸化鉄粒子aの形状に起因する微小な凹凸を有すことを特徴とする本発明1乃至5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法である(本発明6)。
【0025】
また本発明は、本発明1乃至5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの粒子表面がシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上で被覆されていることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明7)。
【0026】
また本発明は、本発明1乃至5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアを用いた二成分系現像剤である(本発明8)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、粒子表面に微小な凹凸を形成し、制御(表面粗さ、凹凸間隔、凹凸高さ、凹凸形状)しているので、樹脂被覆時の接着性が非常に優れ、被覆層の剥がれや磨耗に対する耐久性が優れているため、キャリアに対する機械的ストレスに対して安定であり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘って安定に維持できる高寿命化に優れている。更に、適切な電気抵抗値に制御し、かつ電圧依存性が少ないので階調性に優れ、電子写真現像剤用磁性キャリアとして好適である。
【0028】
本発明に係る二成分系現像剤は、用いる磁性キャリアが耐久性に優れ、電気抵抗を制御しているので、高画質化、高速化に対応した現像剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1で得られた球状磁性複合体粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である(2000倍。)
【図2】実施例1で得られた球状磁性複合体粒子の表面構造を示す電子顕微鏡写真である(5000倍。)
【図3】実施例4で得られた球状磁性複合体粒子の表面構造を示す電子顕微鏡写真である(5000倍。)
【図4】実施例5で得られた球状磁性複合体粒子の表面構造を示す電子顕微鏡写真である(5000倍。)
【図5】比較例1で得られた球状磁性複合体粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である(2000倍。)
【図6】比較例1で得られた球状磁性複合体粒子の表面構造を示す電子顕微鏡写真である(5000倍。)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリア(以下、「磁性キャリア」という)について述べる。
【0032】
本発明に係る磁性キャリア表面の十点平均粗さRzは、0.3μm〜2.0μmである。前記十点平均粗さRzが0.3μm未満であると、磁性キャリア表面が比較的平滑になるため樹脂被覆との接着性が低下し、十分な耐久性が得られない。また、前記十点平均粗さRzが2.0μmを超えてしまうと、磁性キャリア表面の凸部に摩擦、磨耗、機械的ストレス等による負荷がかかり易くなり、十分な耐久性が得られなくなる。好ましい十点平均粗さRzは0.3μm〜1.9μmであり、さらに好ましくは0.3μm〜1.8μmである。
【0033】
本発明に係る磁性キャリア表面の最大高さRyは、0.7μm〜2.5μmの範囲であることが好ましい。前記最大高さRyが0.7μm未満であると、適度な表面凹凸が得られず樹脂被覆時に十分な接着性が得られない。また、前記最大高さRyが2.5μmを超えてしまうと、磁性キャリア表面の凸部に摩擦、磨耗、機械的ストレス等による負荷がかかり易くなり、凹凸の脱離を起こし十分な耐久性が得られなくなる。より好ましい最大高さRyは、0.7μm〜2.45μmの範囲である。
【0034】
本発明に係る磁性キャリア表面の算術平均粗さRaは0.1μm〜0.9μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.8μmの範囲が好ましく、更により好ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲であり、凹凸の平均間隔Smが0.6μm〜6.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜5.5μmであり、更により好ましくは0.65〜3.0μmの範囲が好ましい。算術平均粗さRa及び凹凸の平均間隔Smが前記範囲内にあると、より接着性が良好となるため好ましい。
【0035】
本発明に係る磁性キャリアについて電気抵抗値を測定した場合、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ω・cm〜1×1014Ω・cmであることが好ましい。電気抵抗値R100を前記範囲とすることによって、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着をより抑制したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ潜像の乱れや画像の欠損等をより抑制することができる。
【0036】
本発明に係る磁性キャリアについて電気抵抗を測定した場合、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は1×10Ω・cm〜1×1014Ω・cmが好ましい。
【0037】
本発明に係る磁性キャリアは、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100と印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300と関係が
0.1≦R300/R100≦1.0
である。R300/R100が前記範囲とすることによって電気抵抗値の電圧依存性をより小さくすることができる。
【0038】
本発明に係る磁性キャリアの平均粒子径は10〜100μmが好ましい。平均粒子径が10μm未満の場合には二次凝集しやすく、100μmを越える場合には機械的強度が弱く、また、鮮明な画像を得ることができなくなる。より好ましい平均粒子径は20〜70μmである。
【0039】
本発明に係る磁性キャリアの比重は2.5〜4.5が好ましく、より好ましくは2.5〜4.2である。
【0040】
本発明に係る磁性キャリアの飽和磁化値は20〜100Am/kgが好ましく、より好ましくは40〜85Am/kgである。
【0041】
本発明に係る磁性キャリアは、下記式で表される球形度が1.0〜1.4であることが好ましい。
【0042】
球形度=l/w
l:球状磁性複合体粒子の平均長軸径
w:球状磁性複合体粒子の平均短軸径
【0043】
本発明に係る球状磁性複合体粒子の粒子表面に主に樹脂からなる表面被覆層を形成した磁性キャリアの電気抵抗値は、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ω・cm〜1×1016Ω・cmが好ましい。印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×1016Ω・cmを超える場合は、キャリア電荷がリークしにくくなり、さらにトナーの帯電量も高くなり、その結果、エッジの効いた画像にはなるが、反面、大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるという問題が生じ好ましくない。印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ω・cm〜5.0×1015Ω・cmがより好ましい。
【0044】
本発明に係る磁性キャリアについて電気抵抗を測定した場合、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は1×10Ω・cm〜1×1016Ω・cmが好ましい。
【0045】
本発明に係る磁性キャリアは、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100と印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300との関係(R300/R100)が0.1〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.90であり、更により好ましくは0.25〜0.80である。
【0046】
次に、本発明に係る磁性キャリアの製造法について述べる。
【0047】
即ち、磁性キャリアを構成する球状磁性複合体粒子は、水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下、強磁性酸化鉄粒子粉末を共存させてフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得ることができる。
【0048】
まず、本発明で用いる強磁性酸化鉄粒子粉末について述べる。
【0049】
本発明に係る磁性キャリアに含まれる強磁性酸化鉄粒子粉末は、平均粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとによって構成されている。平均粒子径が相対的に大きい強磁性酸化鉄粒子粉末aの平均粒子径raと平均粒子径が相対的に小さい強磁性酸化鉄粒子粉末bの平均粒子径rbとの平均粒子径比ra/rbが1.0より大きいものである。平均粒子径の比ra/rbが1.0以下の場合には、強磁性酸化鉄粒子粉末aによる表層部が形成されず、十分な凹凸が得られないため、樹脂被覆した場合に十分な接着性が得られない。より好ましい平均粒子径の比ra/rbは1.1〜10.0であり、更に好ましくは1.1〜9.0であり、更により好ましくは1.2〜5.0である。
【0050】
本発明に係る磁性キャリアに含まれる強磁性酸化鉄粒子粉末aと強磁性酸化鉄粒子粉末bとの混合比は、強磁性酸化鉄粒子粉末aと強磁性酸化鉄粒子粉末bとの総量を100重量部として1〜50重量部の範囲内で強磁性酸化鉄粒子粉末aを含有することが好ましい。強磁性酸化鉄粒子粉末aが1重量部未満であると、芯部を形成する強磁性酸化鉄粒子粉末bが粒子表面に現れやすくなるため、強磁性酸化鉄粒子粉末aからなる表層部が形成されなくなり、十分な表面凹凸が得られなくなる。また、強磁性酸化鉄粒子粉末aが50重量部を越える場合は、強磁性酸化鉄粒子粉末aがすべて取り込まれにくくなり微粉、または異形粒子となって収率低下の原因となるため粒子表面に微小な凹凸が十分に形成されなくなる。好ましくは10〜45重量部である。
【0051】
本発明における強磁性酸化鉄粒子粉末aの平均粒子径raは、0.25μm〜5.0μmが好ましい。平均粒子径raが0.25μm未満の場合は、磁性キャリア表面に十分な凹凸が得られなくなる。また、平均粒子径raが5.0μmを超える場合には、表面凹凸の凸部にかかる負荷が大きくなり、強磁性酸化鉄粒子粉末raが脱離して凹凸の脱離、または、被覆樹脂に対する十分な耐久性が得られなくなる。より好ましい平均粒子径raは0.25〜2.0μmである。
【0052】
本発明における強磁性酸化鉄粒子粉末bの平均粒子径rbは、0.05μm〜0.25μmが好ましい。平均粒子径rbが0.05μm未満の場合は、磁性酸化鉄粒子粉末bの凝集力が大きくなり、磁性キャリアの作製が困難なものとなる。また、平均粒子径rbが0.25μmを超える場合には、強磁性酸化鉄粒子粉末aとの粒径差がなくなり、強磁性酸化鉄粒子粉末aによる安定した表層部の形成が困難なものとなる。
【0053】
本発明に係る強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bとしては、マグネタイト粒子、マグヘマタイト粒子等の磁性酸化鉄粒子である。また、強磁性酸化鉄粒子粉末aと強磁性酸化鉄粒子粉末bの粒子形状は、球状、六面体、八面体、多面体、不定形から選ばれるいずれかであり、その組み合わせは、同じ形状同士でも、または形状が異なったものを組み合わせても構わない。
【0054】
本発明における強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bは、粒子表面がAl、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆された強磁性酸化鉄粒子粉末を用いてもよい。上記化合物が被覆されたものを使用する場合、強磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に存在する被覆元素の量は強磁性酸化鉄粒子粉末全体量に対して0.35〜4.0重量%が好ましく、より好ましくは、0.4〜3.5重量%である。粒子表面がAl、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆された強磁性酸化鉄粒子粉末を用いることによって電気抵抗値の高い磁性キャリアを容易に得ることができる。
【0055】
前記粒子表面がAl、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆された強磁性酸化鉄粒子粉末は以下の製造方法によって得ることができる。
【0056】
粒子表面が被覆された強磁性酸化鉄粒子粉末は、常法に従って、マグネタイトの核粒子を製造し、次いで、前記核粒子を含有するスラリーを70〜95℃の温度範囲に保持し、スラリーのpHを制御して被覆元素塩を核粒子に対して0.015重量%/分以下の割合で添加した後、30分以上熟成し、次いで、pH調整した後、常法に従って、水洗、乾燥することによって、得ることができる。
【0057】
本発明における粒子表面が被覆された強磁性酸化鉄粒子粉末を得るための核粒子には、要求される磁気特性・分散性などの観点から様々な形状・粒子径のものが選択可能であり、その製造方法も多様に存在するが、本発明の目的をより効果的に達成するためには、表面処理をより均一に行う観点から、核粒子スラリー中には、表面処理の阻害因子となりやすい物質、例えば、未反応の水酸化鉄微粒子等の混入がないことが好ましい。
【0058】
核粒子を含むスラリーを得るための手段には様々な方法が挙げられるが、例えば、Fe2+水溶液の酸化反応中のpHを所定の値に制御することで、八面体・多面体・六面体・球状・凹凸形状のものを得ることができる。また、酸化反応中の粒子の成長条件を制御することで所望の粒子径の核粒子を得ることができる。また、核粒子の表面平滑性は、酸化反応終盤での成長条件を制御したり、一般に知られているようにシリカ成分やアルミ成分やカルシウム成分などの成分や亜鉛・マンガンなどのスピネルフェライト結晶構造を形成しやすい成分を添加することでも制御できる。
【0059】
Fe2+水溶液としては、例えば、硫酸第一鉄や塩化第一鉄などの一般的な鉄化合物を用いることができる。また、水酸化鉄を得るためもしくはpH調整剤としてのアルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液を用いることができる。各々の原料は、経済性や反応効率などを考慮して選択すればよい。
【0060】
Al表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0が好ましく、より好ましいpHは8.2〜8.8である。スラリーのpHが8.0未満の場合には、Al成分が核粒子表面に被覆されずAl化合物単独で析出し、電気抵抗値の低いものとなり、また、BET比表面積値が高くなり吸湿性が高くなり好ましくない。スラリーのpHが9.0を超える場合にも、Al成分が核粒子表面に被覆されずAl化合物単独で析出し、電気抵抗値の低いもととなり、また、BET比表面積値が高くなり吸湿性が高くなり好ましくない。Mg表面処理時のスラリーのpHは9.5〜10.5、Mn表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0、Zn表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0、Ni表面処理時のpHは7.5〜8.5、Cu表面処理時のpHは6.5〜7.5、Ti表面処理時のpHは8.0〜9.0、Si表面処理時のpHは6.5〜7.5が好ましい。上記pHの範囲外の場合は電気抵抗値の低いものとなり、また吸湿性が高くなり好ましくない。
【0061】
被覆成分を表面処理するスラリーの温度範囲は70〜95℃が好ましい。スラリーの温度が70℃未満の場合には、BET比表面積値の高いものとなり、強磁性酸化鉄粒子自体の吸湿性の観点からも好ましくない。条件値は特に限定はないが、水系のスラリーであるため、生産性やコストを考慮すると95℃程度が上限となる。
【0062】
核粒子を含有するスラリーへの被覆化合物の添加速度は、核粒子に対して被覆元素0.015重量%/分以下で添加することが好ましい。より好ましくは核粒子に対して被覆元素0.01重量%/分以下で添加することが好ましい。被覆元素を0.015重量%/分より大きな添加速度とすると、被覆化合物が核粒子表面に被覆されず単独で析出し、強磁性酸化鉄粒子自体の電気抵抗値の低いものとなり、またBET比表面積値の大きなものとなり強磁性酸化鉄粒子自体の吸湿性の高いものとなる。下限は特に限定はないが生産性を考慮すると0.002重量%/分が下限となる。
【0063】
被覆化合物添加後には30分以上熟成を行うことが被覆化合物を核粒子表面に均一に処理するため好ましい。上限は特に限定はないが生産性を考慮すると240分程度が上限となる。また、スラリーはよく攪拌されていることが好ましい。
【0064】
熟成後は、スラリーのpHを4.0〜10.0の範囲に制御することが好ましい。より好ましいスラリーのpHは6.0〜8.0の範囲である。pHが4.0未満の場合被覆化合物層を核粒子表面に均一に形成することが困難である。pHが10.0を超える場合にも被覆化合物層を核粒子表面に均一に形成することが困難である。制御に際しては、スラリーはよく攪拌されていることが好ましい。
【0065】
反応後は、常法に従って、水洗、乾燥を行えばよい。
【0066】
本発明に用いる強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bは、あらかじめ粒子表面を親油化処理しておくことが望ましい。親油化処理することによって、より容易に球形を呈した磁性キャリアを得ることが可能となる。
【0067】
親油化処理は、強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bをシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤で処理する方法や界面活性剤を含む水性溶媒中に強磁性酸化鉄粒子を分散させて、粒子表面に界面活性剤を吸着させる方法が好適である。
【0068】
シランカップリング剤としては、疎水性基、アミノ基、エポキシ基を有するものが挙げられ、疎水性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシ)シラン等がある。アミノ基、エポキシ基を有するシランカップリング剤としては前記アミノ基を有するシランカップリング剤、前記エポキシ基を有するシランカップリング剤を用いればよい。
【0069】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等を用いればよい。
【0070】
界面活性剤としては、市販の界面活性剤を使用することができ、強磁性酸化鉄粒子や該粒子表面に有する水酸基と結合が可能な官能基を有するものが望ましく、イオン性はカチオン性又はアニオン性のものが好ましい。
【0071】
前記いずれの処理方法によっても本発明の目的を達成することができるが、フェノール樹脂との接着性を考慮するとアミノ基あるいはエポキシ基を有するシランカップリング剤による処理が好ましい。
【0072】
前記カップリング剤又は界面活性剤の処理量は強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bに対して0.1〜10重量%が好ましい。
【0073】
前記強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bは、予め混合してから前記親油化処理を行っても、別々に処理を行っても構わないが、反応の際には強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bが十分に混合された状態で使用することを必須とする(以下、強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bが十分に混合された状態を「ブレンド粉末」という)。
【0074】
本発明に係るブレンド粉末とフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子の製造方法は以下のとおりである。
【0075】
本発明に用いるフェノール類としては、フェノールのほか、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール等のアルキルフェノール類や、アルキル基の一部又は全部が塩素原子、臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類等のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0076】
フェノール類として球状磁性複合体粒子におけるブレンド粉末の全含有量は、球状磁性複合体粒子に対して80〜99重量%が好ましく、80重量%未満の場合には樹脂分が多くなり、大粒子が出来やすくなる。99重量%を越える場合には樹脂分が不足して十分な強度が得られない。より好ましくは、85〜99重量%である。
【0077】
本発明に用いるアルデヒド類としては、ホルマリン又はパラアルデヒドのいずれかの形態のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びグルタールアルデヒド等が挙げられるが、ホルムアルデヒドが最も好ましい。
【0078】
アルデヒド類はフェノール類に対してモル比で1.0〜4.0が好ましく、アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が1.0未満の場合には、粒子の生成が困難であったり、樹脂の硬化が進行し難いために、得られる粒子の強度が弱くなる傾向がある。4.0を超える場合には、反応後に水性媒体中に残留する未反応のアルデヒド類が増加する傾向がある。より好ましくは1.2〜3.0である。
【0079】
本発明に用いる塩基性触媒としては、通常のレゾール樹脂の製造に使用されている塩基性触媒が使用できる。例えば、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアルキルアミンが挙げられ、特にアンモニア水が好ましい。塩基性触媒はフェノール類に対してモル比で0.05〜1.50が好ましい。0.05未満の場合には、硬化が十分に進行せず造粒が困難となる。1.50を越える場合には、フェノール樹脂の構造に影響するため造粒性が悪くなり、粒子径の大きな粒子を得ることが困難となる。
【0080】
本発明における反応は水性媒体中で行われるが、水性媒体中の固形分濃度が30〜95重量%になるようにすることが好ましく、特に、60〜90重量%となるようにすることが好ましい。
【0081】
塩基性触媒を添加した反応溶液は60〜95℃の温度範囲まで昇温し、この温度で30〜300分間、好ましくは60〜240分間反応させ、フェノール樹脂の重縮合反応を行って硬化させる。
【0082】
このとき、球形度の高い球状磁性複合体粒子を得るために、ゆるやかに昇温させることが望ましい。昇温速度は0.3〜1.5℃/minが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2℃/minである。
【0083】
このとき、粒径を制御するために、攪拌速度を制御することが望ましい。攪拌速度は100〜1000rpmが好ましい。
【0084】
硬化させた後、反応物を40℃以下に冷却すると、バインダー樹脂中にブレンド粉末が分散し、その構造は、強磁性酸化鉄粒子粉末aによって表層部が形成された球状磁性複合体粒子の水分散液が得られる。
【0085】
前記球状磁性複合体粒子を含む水分散液を濾過、遠心分離の常法に従って固・液を分離した後、洗浄・乾燥して球状磁性複合体粒子を得る。
【0086】
本発明に係る磁性キャリアは、粒子表面がポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニリデン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上で被覆されていてもよい。
【0087】
本発明に用いる被覆樹脂は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン;アクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン系樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素−ポリアミド樹脂、フッ素−ポリイミド樹脂、フッ素−ポリアミドイミド樹脂、などを挙げることができる。より好ましい樹脂は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上である。
【0088】
本発明に係る磁性キャリアの樹脂による被覆量は、球状磁性複合体粒子に対して0.1〜5.0重量%が好ましい。被覆量が0.1重量%未満の場合には、十分に被覆することが困難となり、コートむらが生じることがある。また、5.0重量%を越える場合には、樹脂の被覆を球状磁性複合体粒子表面に密着させることはできるが、生成した球状磁性複合体粒子同士の凝集が生じ、球状磁性複合体粒子の粒子サイズの制御が困難になる。好ましくは0.5〜3.0重量%である。
【0089】
本発明における樹脂被覆は、樹脂被覆層中に微粒子を含有させても良い。前記微粒子としては、例えばトナーに負帯電性を付与させるものとして、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ニグロシン系染料、ポリアミン樹脂などによる微粒子が好ましい。一方、トナーに正帯電性を付与させるものとして、Cr、Co等金属を含む染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物などによる微粒子が好ましい。なお、これらの粒子は1種単独で使用して良いし、2種以上を併用しても良い。
【0090】
また、本発明における樹脂被覆は、樹脂被覆層中に導電性微粒子を含有させても良い。樹脂中に導電性微粒子を含有させることが、磁性キャリアの抵抗を容易に制御することができる点で好ましい。前記導電性微粒子としては公知のものが使用可能であり、例えばアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、Si、Ti等の金属炭化物、B、Ti等の金属窒化物、Mo、Cr等の金属ホウ化物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してよいし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0091】
球状磁性複合体粒子の粒子表面に樹脂を被覆する場合には、公知のいかなる方法を用いても良い。例えば、乾式法、流動床法、スプレードライ法、ロータリードライ方式、万能攪拌機、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等による浸漬乾燥法等によって行えばよい。
【0092】
次に、本発明における二成分系現像剤について述べる。
【0093】
本発明の磁性キャリアと組み合わせて使用するトナーとしては、公知のトナーを使用することができる。具体的には、結着樹脂、着色剤を主構成物とし、必要に応じて離型剤、磁性体、流動化剤などを添加したものを使用できる。また、トナーの製造方法は公知の方法を使用できる。
【0094】
<作用>
本発明において重要な点は、粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子粉末をフェノール樹脂に分散してなる球状磁性複合体粒子であって、粒子径の大きな強磁性酸化鉄粒子粉末aにより表層部が形成されることで粒子表面に微小な凹凸を形成、制御(表面粗さ、凹凸間隔、凹凸高さ、凹凸形状)することで、更に適切な電気抵抗値をもち電気抵抗の電圧依存性の少ない強磁性酸化鉄粒子粉末を用いることで、十分な電気抵抗、かつ電気抵抗値の電圧依存性の少ない電子写真用磁性キャリアを作製することである。
【0095】
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの製造法は、平均粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bの混合粉末を使用し、強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比ra/rbが1より大きく、強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとの重量比は、強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとの総量を100重量部とした時、1〜50重量部の範囲で強磁性酸化鉄粒子aを含有した構成となっているので、フェノール樹脂をバインダーとして複合化した際に、強磁性酸化鉄粒子aからなる表層部を形成した球状磁性複合体粒子が安定に得られ、その表層部は用いた強磁性酸化鉄粒子aの粒子径と形状に沿って微小な凹凸を形成する。
図1から4のSEM写真に示すように、本発明に係る磁性キャリアは、表層部は平均粒子径の大きな強磁性酸化鉄粒子粉末の粒子径と形状に起因する微小な凹凸を有することを特徴とする。つまり、図5及び6のSEM写真に示すとおり、従来例のような粒子表面が平滑な磁性キャリアとは明らかに相違する。
【0096】
その結果、樹脂被覆時の接着性が大幅に向上し、被覆層の剥がれや磨耗に対する耐久性に優れ、かつキャリアに対する機械的ストレスにも安定となり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘ってカブリ、濃度ムラがなく安定に維持できるようになった。更に、電気抵抗制御によって階調性の優れた画像を得ることができた。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の代表的な実施の形態を次の通りに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の説明において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0098】
<測定方法>
強磁性酸化鉄粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真により撮影した写真、粒子300個についてフェレ径により求めた値で示した。
【0099】
強磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は、透過型電子顕微鏡と「走査型電子顕微鏡S−4800 」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察した写真から判断した。
【0100】
BET比表面積値は、「Mono Sorb MS−II」(湯浅アイオニックス株式会社製)を用いてBET法により求めた値で示した。
【0101】
飽和磁化は、振動試料型磁力計VSM−3S−15(東英工業(株)製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)のもとで測定した値で示した。
【0102】
強磁性酸化鉄粒子粉末中に含まれる金属元素量は「蛍光X線分析装置RIX−2100」(理学電気工業株式会社製)にて測定し、強磁性酸化鉄粒子粉末に対して元素換算で求めた値で示した。
【0103】
球状磁性複合体粒子の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計 LA750((株)堀場製作所製)により計測して体積基準による値で示した。
【0104】
球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRz、最大高さRy、算術平均粗さRa及び凹凸の平均間隔Smは、JIS B0601に準拠して超深度カラー3D形状測定レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス製)を用いて、球状磁性複合体粒子1粒子に対して1000倍の視野にて観察を行った。形状測定は、球状磁性複合体粒子の中心部を中心点として測定距離を10μmに設定して、45°間隔をとりながら8箇所測定したものを平均値で示し、更に任意に選んだ100個のキャリア表面の測定平均値を平均化して値で示した。尚、形状測定をする際、測定誤差を軽減させるための補正処理を行ってから測定を行っている。
【0105】
球状磁性複合体粒子の粒子形状は「走査型電子顕微鏡S−4800 」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察した写真から判断した。
【0106】
真比重はマルチボリウム密度計1305型(マイクロメリティクス/島津製作所製)で測定した値で示した。
【0107】
球状磁性複合体粒子の電気抵抗値(体積固有抵抗値)は、ハイレジスタンスメーター4339B(横河ヒューレットパッカード製)により試料1.0gで測定した値で示した。
【0108】
球形度は、「走査型電子顕微鏡S−4800 」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察した200個以上の球状磁性複合体粒子が写ったSEM写真より、1個の粒子の長軸径(l)と短軸径(w)を測定し、l/w比で示した。
【0109】
<被覆樹脂キャリアの耐久性テスト>
被覆樹脂キャリアの耐久テストは、サンプルミルSK−M10(協立理工(株)社製)により被覆樹脂キャリア試料10gを投入し、回転数16000rpmで30秒間攪拌した。
【0110】
耐久性評価は、下記式で示したように攪拌前後の粒度分布変化を測定し、粒子径22μm以下の粒子の体積率の増加量から微粒子発生率を算出し、以下の5段階で評価した。
微粒子発生率(%)=(攪拌後の粒子径22μm以下の体積率)−(攪拌前の粒子径22μm以下の体積率)
【0111】
A:耐久性テスト前後の微粉発生率が0%以上0.1%未満
B:耐久性テスト前後の微粉発生率が0.1%以上0.5%未満
C:耐久性テスト前後の微粉発生率が0.5%以上1.0%未満
D:耐久性テスト前後の微粉発生率が1.0%以上3.0%未満
E:耐久性テスト前後の微粉発生率が3.0%以上
【0112】
耐久テスト後の磁性キャリアの表面状態(樹脂被覆層の剥れや磨耗等)は走査型電子顕微鏡により下記の3段階で評価した。
A:被覆層の剥れや磨耗等が無し
B:被覆層の剥れや磨耗等がわずかに有り
C:被覆層の剥れや磨耗等が極めてひどい
【0113】
<被覆樹脂キャリアの強制劣化テスト>
被覆樹脂キャリアの強制劣化テストは、以下のように行った。被覆樹脂キャリア50部を100ccのガラス製サンプル瓶の中に入れ、ふたをした後、ペイントコンディショナー(RED DEVIL社製)にて、24時間振とうさせる。
【0114】
電気抵抗値は、下記式で示したように、振とう前後の各々のサンプルについて常温常湿下(24℃、60%RH)の電気抵抗値の変化率を%で表わし、以下の5段階で評価した。
電気抵抗値の変化率(%)=R/RINI×100
R:印加電圧100Vにおける強制劣化テスト後の電気抵抗値
INI:印加電圧100Vにおける強制劣化テスト前の電気抵抗値
【0115】
A:強制劣化テスト前後の変化幅が0%以上5%未満
B:強制劣化テスト前後の変化幅が5%以上10%未満
C:強制劣化テスト前後の変化幅が10%以上20%未満
D:強制劣化テスト前後の変化幅が20%以上30%未満
E:強制劣化テスト前後の変化幅が30%以上
【0116】
強制劣化テスト前後の帯電量は、下記式で示したように、振とう前後の各々のサンプルについて常温常湿下(24℃,60%RH)の帯電量の変化幅を%で表わし、以下の評価基準で行なった。C以上が実用上可能なレベルである。現像剤は本発明の複合体粒子、又は、樹脂被覆した磁性キャリアを95部と負帯電性シアントナーaを5部とを十分に混合して調整した。
【0117】
帯電量の変化率(%)=(1−Q/QINI)×100
INI:強制劣化テスト前の帯電量
Q:強制劣化テスト後の帯電量
【0118】
A:強制劣化テスト前後の変化率が0%以上5%未満
B:強制劣化テスト前後の変化率が5%以上10%未満
C:強制劣化テスト前後の変化率が10%以上20%未満
D:強制劣化テスト前後の変化率が20%以上30%未満
E:強制劣化テスト前後の変化率が30%以上
【0119】
強制劣化テスト後の磁性キャリアの表面状態(樹脂被覆層の剥れや磨耗等)は走査型電子顕微鏡により下記の3段階で評価した。
A:被覆層の剥れや磨耗等が無し
B:被覆層の剥れや磨耗等がわずかに有り
C:被覆層の剥れや磨耗等が極めてひどい
【0120】
<画像評価における被覆樹脂キャリアの評価>
現像剤は本発明の磁性キャリアを95部と負帯電性シアントナーaを5部とを十分に混合して調整した。画像評価はエプソン製LP8000Cを改造して用い、24℃、60%RHの環境条件下(NN)及び30℃、80%RHの環境条件下(HH)でバイアス電圧を変えて初期(1000枚)、10万枚及び100万枚の耐刷評価を行い、以下の評価方法に基づいて評価した。
【0121】
なお、画像評価結果に対してランク付けを行なった。具体的な評価方法は下記のとおりである。
【0122】
(1)画像濃度(ベタ黒部の均一性も含む)
ベタ部の画像濃度をマクベス濃度計により測定した。ベタ黒部の均一性については限度見本を設け、目視で判定し、以下の5段階で評価した。C以上が実用上可能なレベルである。
【0123】
A:原稿濃度を非常によく再現しており、濃度ムラがなく均一なベタ黒部である。
B:原稿濃度を再現しており、濃度ムラがない。
C:画像濃度がよく乗っている。
D:画像濃度は乗っているものの不均一な画像であり、白スジ等が多い。
E:全体的に濃度が低くエッジ効果が大きく、原稿濃度に比べ、大きく濃度が低下している。
【0124】
(2)カブリ
画像上のカブリについては、白地画像上のトナーカブリをミノルタ社製色彩色差計CR−300のL*a*b*モードで測定し、ΔEを求め、以下の4段階で評価した。B以上が実用上可能なレベルである。
【0125】
A:ΔEが1.0未満
B:ΔEが1.0以上〜2.0未満
C:ΔEが2.0以上〜3.0未満
D:ΔEが3.0以上
【0126】
(3)階調性
前記画像評価に従って、初期(1000枚)、10000枚及び50000枚印刷した画像について、KODAK社のグレースケール(0〜19階調テストチャート)を用い、目視で階調パターンを色別できる数により以下の5段階で評価した。C以上が実用上可能なレベルである。
【0127】
A:15(B)階調以上
B:13〜14階調
C:11〜12階調
D:7(M)〜10階調
E:6階調以下
【0128】
トナーの帯電量は、磁性キャリア95部と下記の方法により製造したトナー5部を十分に混合し、ブローオフ帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。
【0129】
(トナー製造例)
ポリエステル樹脂 100部
銅フタロシアニン系着色剤 5部
帯電制御剤(ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛化合物) 3部
ワックス 9部
【0130】
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粉砕、分級して重量平均粒径7.4μmの負帯電性青色粉体を得た。
【0131】
上記負帯電性青色粉体100部と疎水性シリカ1部をヘンシェルミキサーで混合して負帯電性シアントナーaを得た。
【0132】
<強磁性酸化鉄粒子>
強磁性酸化鉄粒子a及び強磁性酸化鉄粒子bとして使用する強磁性酸化鉄粒子の諸特性を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
<強磁性酸化鉄粒子の親油化処理>
[実施例1]
(親油化処理1)
フラスコに酸化鉄粒子4を1000部仕込み十分に攪拌した後、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)5.0部を添加し、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆されている強磁性酸化鉄粒子粉末aを得た。
【0135】
(親油化処理2)
フラスコに酸化鉄粒子1を1000部仕込み十分に攪拌した後、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)10.0部を添加し、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆されている強磁性酸化鉄粒子粉末bを得た。
【0136】
<親油化処理後の強磁性酸化鉄粒子粉末の混合>
フラスコに親油化処理1を行った強磁性酸化鉄粒子粉末a30部と親油化処理2を行った強磁性酸化鉄粒子粉末b70部とを仕込み(ra/rb=1.5)、250rpmの攪拌速度で30分間良く混合攪拌した。
【0137】
<球状磁性複合体粒子の製造>
フェノール 10部
37%ホルマリン 15部
強磁性酸化鉄粒子a粉末及びb粉末の混合粉末 100部
25%アンモニア水 3.5部
水 15部
上記材料を1Lの四つ口フラスコに入れ、250rpmの攪拌速度で攪拌しながら60分間で85℃に昇温させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄粒子と硬化したフェノール樹脂からなる複合磁性体粒子の生成を行った。
【0138】
次に、フラスコ内の内容物を30℃まで冷却後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)に150〜200℃で乾燥して球状磁性複合体粒子を得た。
【0139】
得られた球状磁性複合体粒子は、平均粒子径が37μmであり、十点平均粗さRzが1.20μmであり、最大高さRyが1.80μmであり、算術平均粗さRaが0.25μmであり、凹凸の平均間隔Smが1.30μmであり、比重が3.82g/cmであり、飽和磁化値が75.4Am/kgであり、球形度(l/w)が1.1であった。尚、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100と、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は、電気抵抗値が低くて測定できなかった。
【0140】
ここに得られた球状複合体粒子像と粒子表面像のSEM写真を図1及び図2に示す。図1は粒子構造であり、図2は粒子の表面構造である。球状複合体粒子は真球に近い球形を呈しており、粒子表面は強磁性酸化鉄粒子aに起因する凸部が形成されており、粒子表面に微細な表面凹凸が形成されていることが確認された。
【0141】
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。
【0142】
[実施例2〜4及び6〜12]、[比較例4]
強磁性酸化鉄粒子a及びbの種類及び混合比、親油化処理剤の種類、球状磁性複合体粒子の製造条件を種々変化させた以外は、実施例1と同一の条件で操作を行って球状磁性複合体粒子を得た。
【0143】
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。
【0144】
[実施例5]
(親油化処理3)
フラスコに酸化鉄粒子1を300部と酸化鉄粒子8を700部仕込み、十分に攪拌した後エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)10.0部を添加し、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆されている強磁性酸化鉄粒子a及びbの混合粉末を得た。
【0145】
球状磁性複合体粒子の製造に関しては、製造条件を種々変化させた以外は、実施例1と同一の条件で操作を行って球状磁性複合体粒子を得た。
【0146】
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。
【0147】
[比較例1〜2及び6〜8]
強磁性酸化鉄粒子を1種類使用して親油化処理2を行う。
【0148】
親油化処理剤の種類、球状磁性複合体粒子の製造条件を種々変化させた以外は、実施例1と同一の条件で操作を行って球状磁性複合体粒子を得た。
【0149】
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。
【0150】
[比較例3]
親油化処理した強磁性酸化鉄粒子粉末a及び強磁性酸化鉄粒子粉末bを全く混合しないで球状磁性複合体粒子の製造に使用する以外は、実施例1と同一の条件で操作を行って球状磁性複合体粒子を得た。
【0151】
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。
【0152】
[比較例5](特開2008−40270号公報の追試実験)
Feを74部、MnOを20部、Mg(OH)を5部、ZnOを1部計量した後、湿式ボールミルで25時間混合し、粉砕してスプレードライヤにより造粒、乾燥し、電気炉にて800℃、7時間の仮焼成1を行った。得られた仮焼成物1を、湿式ボールミルで2時間粉砕した後、スプレードライヤにより造粒、乾燥し、電気炉にて900℃、6時間の仮焼成2を行った。得られた仮焼成物2を、湿式ボールミルで5時間粉砕した後、スプレードライヤにより造粒、乾燥し、電気炉にて900℃、12時間の本焼成を行いMn−Mgフェライト粒子を得た。
【0153】
得られたMn−Mgフェライト粒子の諸特性を表3に示す。
【0154】
【表2】

【0155】
【表3】

【0156】
<樹脂被覆キャリアの製造>
[実施例13]
窒素気流下、ヘンシェルミキサー内に、実施例1の球状磁性複合体粒子粉末を1000部及び、シリコーン系樹脂(商品名:KR251 信越化学社製)を固形分として10部及びカーボンブラック(商品名:トーカブラック♯4400 東海カーボン社製)を1.5部添加し、50〜150℃の温度で1時間攪拌してカーボンブラックを含有したシリコーン系樹脂からなる樹脂被覆層の形成を行った。
【0157】
ここに得られた樹脂被覆磁性キャリアは、平均粒径が39μmであり、比重が3.69g/cmであり、飽和磁化値が72.9Am/kgであり、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100は、7.2×1012Ω・cmであり、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は、2.7×1012Ω・cmであった。
【0158】
得られた樹脂被覆キャリア粒子1のシリコーン系樹脂による被覆は、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製(S−4800))で観察したところ、均一かつ十分なものであった。
【0159】
[実施例14〜24]、[比較例9〜16]
球状複合体粒子の種類、被覆樹脂の種類、樹脂被覆量を種々変化させた以外は、実施例13と同一の条件で操作を行って樹脂被覆磁性キャリアを得た。
【0160】
得られた樹脂被覆磁性キャリアの製造条件、及びその諸特性を表4に、耐久性評価、及び耐刷評価結果を表5に示す。
【0161】
【表4】

【0162】
【表5】

【0163】
表5に示すとおり、本発明に係る磁性キャリア及び現像剤は、耐久テストにおいて樹脂剥がれや磨耗を起こすことなく被覆樹脂との接着性に優れている為、画質に優れ、高濃度でかつ均一なベタ黒部の再現が得られた。また、被覆処理を施した強磁性酸化鉄粒子粉末を使用することで、磁性キャリアの電気抵抗を適正に制御し、且つ、電圧依存性が小さいことが長期に亘り維持できるものであり、100万枚の印刷でも比較例に対し階調性に優れた画像特性が得られる磁性キャリアであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明に係る磁性キャリアは、粒子表面に微小な凹凸を形成し、粒子表面の凹凸を制御することで被覆樹脂との接着性が非常に優れ、かつ凸部への負荷がかからない程度に凹凸制御をしている為、樹脂被覆層の剥がれや磨耗に対する耐久性が優れていて、キャリアに対する機械的ストレスに安定であり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘ってカブリ、濃度ムラがなく安定に維持される。更に、適切な電気抵抗値に制御でき、かつ電圧依存性が少ないので階調性に優れた高画質な画像を長く維持できるため、近年求められている課題を満足しており、電子写真現像剤に用いられる電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分系現像剤として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂をバインダーとして強磁性酸化鉄粒子が結着してなる球状磁性複合体粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアであって、前記球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRzが0.3μm〜2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリア。
【請求項2】
前記球状磁性複合体粒子表面の最大高さRyが0.7μm〜2.5μmである請求項1記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
【請求項3】
前記球状磁性複合体粒子表面の算術平均粗さRaが0.1μm〜0.9μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.6μm〜6.0μmである請求項1又は2記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
【請求項4】
前記球状磁性複合体粒子は、強磁性酸化鉄粒子が総量にして80〜99重量%含まれており、
前記強磁性酸化鉄粒子は、平均粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとによって構成されており、
平均粒子径が大きい強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raと平均粒子径が小さい強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比ra/rbが1より大きく、前記強磁性酸化鉄粒子aと前記強磁性酸化鉄粒子bとの重量比は、該強磁性酸化鉄粒子aと該強磁性酸化鉄粒子bとの総量を100重量部としたとき、1〜50重量部の範囲で強磁性酸化鉄粒子aを含有し、かつ、強磁性酸化鉄粒子aと該強磁性酸化鉄粒子bの形状は、球状、六面体、八面体、多面体、不定形から選ばれるいずれかの形状を示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
【請求項5】
前記電子写真現像剤用磁性キャリアの印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ωcm〜1×1014Ω・cmであって、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300が
0.1≦R300/R100≦1
であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
【請求項6】
平均粒子径の異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとの混合粉末にフェノール類とアルデヒド類とを水性媒体中で攪拌、混合しながら反応・硬化させて、強磁性酸化鉄粒子とフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子を生成させて、球状磁性複合体粒子の表面に平均粒子径の大きな強磁性酸化鉄粒子aの形状に起因する微小な凹凸を有すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの粒子表面がシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上で被覆されていることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリア。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアを用いた二成分系現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−13676(P2011−13676A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129335(P2010−129335)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】