説明

電子写真用キャリア、静電荷像現像剤および画像形成方法

【課題】長期に渡って使用しても電気抵抗の低下が少なく、使用開始時と比べても画像濃度の低下の少ない電子写真用キャリアを提供すること。
【解決手段】芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを含み、前記芯材の表面性指標S1が12以上であり、前記樹脂層の厚み方向における電気抵抗が、前記樹脂層の最表面側から前記芯材側へと高くなることを特徴とする電子写真用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーと混合して静電荷像現像剤を構成する電子写真用キャリア、これを用いた静電潜像現像剤、および、この静電潜像現像剤を用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々の分野で利用されている。電子写真法においては、帯電、露光工程により感光体上に形成される静電潜像がトナーを含む現像剤により現像されることによりトナー像を得、さらに、このトナー像を、記録媒体に転写、定着することにより画像を得る。
現像に用いられる現像剤にはトナーとキャリアからなる二成分現像剤と、磁性トナーなどのようにトナー単独で用いられる一成分現像剤とがあるが、二成分現像剤は、キャリアが現像剤の攪拌・搬送・帯電などの機能を分担し、現像剤として機能分離されているため、制御性がよいなどの特徴があり、現在広く用いられている。特に、芯材表面を樹脂で被覆したキャリアを用いる現像剤は、帯電制御性が優れ、環境依存性、経時安定性の改善が比較的容易である。
また、現像方法としては、古くはカスケード法などが用いられていたが、現在は現像剤搬送単体として磁気ロールを用いる磁気ブラシ法が主流である。
【0003】
このような現像に用いられるキャリアとしては一般的に不定形な芯材を、樹脂でコーティングしたものが良く知られている(例えば、特許文献1等参照)。しかし、不定形な芯材を樹脂でコーティングしたキャリアを用いる場合、樹脂で被覆されたキャリアの形状も不定形となるため、現像機内のストレスによってキャリアが破壊され易く、破壊あるいは一部破壊されたキャリアが、感光体などへ移行し、色点のような画像欠陥を招いてしまう場合がある。
【0004】
現像機内のストレスによるキャリアの破壊を防ぐ方法としては、芯材として球形の核体粒子を用いる方法が提案されている(特許文献2参照)。これによって、芯材が樹脂で被覆されたキャリアの形状も球形となるためキャリアが受けるストレスそのものを低減することができる。
しかし、芯材として球形の核体粒子を用いた場合、核体粒子(芯材)と、これを被覆する樹脂との密着性が非常に悪化してしまう。それゆえ、長時間使用した場合、芯材を被覆する樹脂が剥がれてキャリアの電気抵抗が低下し、所定の画像濃度が得られなくなる等の現象が発生する。
【0005】
このような課題に対応するために、表面凹凸の大きい芯材を用いて、表面凹凸の小さいキャリアを作製することが提案されている(特許文献3参照)。この技術では、キャリア自体は、球形状であるため、現像機内のストレスを受けにくく、キャリアの破壊が起こりにくい。その、一方で、芯材表面は凸凹しているために、芯材を被覆する樹脂の剥離も起こりにくくなるため、長期に渡って、所定の画像濃度を維持することが可能である。
【特許文献1】特開2002−116582号公報
【特許文献2】特開平12−221733号公報
【特許文献3】特開2000−172019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、複写機、プリンターの小型化、高速化傾向にともない、現像機自体もより小さく且つ高速で駆動できるものが求められている。しかしながら、このような小型で且つ高速で駆動できる現像機においては、キャリアに加わるストレスも従来より増大する。
このような現像機では、芯材の表面凹凸が小さく、キャリア自体はその表面凹凸が小さいようなキャリアを用いても、長期に渡って使用した場合には、芯材表面を被覆する樹脂が磨耗してキャリアの電気抵抗が徐々に小さくなるため、特にベタ画像を出力した場合には十分な画像濃度が得られなくなる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、長期に渡って使用しても電気抵抗の低下が少なく、使用開始時と比べても画像濃度の低下の少ない電子写真用キャリア、これを用いた静電潜像現像剤、および、この静電潜像現像剤を用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを含み、前記芯材の表面性指標S1が12以上であり、前記樹脂層の厚み方向における電気抵抗が、前記樹脂層の最表面側から前記芯材側へと高くなることを特徴とする電子写真用キャリアである。
【0009】
<2>
前記表面性指標S1が12〜20の範囲内であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用キャリアである。
【0010】
<3>
前記芯材を前記樹脂層で被覆した状態の表面性指標S2が5.5〜15の範囲内であることを特徴とする<1>または<2>に記載の電子写真用キャリアである。
【0011】
<4>
形状係数が125以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の電子写真用キャリアである。
【0012】
<5>
前記樹脂層による前記芯材表面の被覆率が95%以上であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1つに記載の電子写真用キャリアである。
【0013】
<6>
<1>〜<5>のいずれか1つに記載の電子写真用キャリアと、トナーとを含むことを特徴とする静電荷像現像剤である。
【0014】
<7>
前記トナーの体積平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲内であることを特徴とする<6>に記載の静電荷像現像剤である。
【0015】
<8>
像担持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記像担持体表面を露光して潜像を形成する露光工程と、前記潜像と現像剤担持体との間の電位差を利用して、前記潜像が形成された前記像担持体表面に、前記現像剤担持体に担持された現像剤を供給してトナー像を形成する現像工程と、前記像担持体表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体表面に転写された前記トナー像を定着して画像を形成する定着工程とを含む画像形成方法において、
前記現像剤が<7>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法である。
【0016】
<9>
前記電位差の絶対値が450〜700Vの範囲内であることを特徴とする<8>に記載の画像形成方法である。
【0017】
<10>
プロセススピードが300m/s以上であることを特徴とする<8>または<9>に記載の画像形成方法である。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように本発明によれば、長期に渡って使用しても電気抵抗の低下が少なく、使用開始時と比べても画像濃度の低下の少ない電子写真用キャリア、これを用いた静電潜像現像剤、および、この静電潜像現像剤を用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<電子写真用キャリア>
本発明の電子写真用キャリア(以下、「キャリア」と略す場合がある)は、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを含み、前記芯材の表面性指標S1が12以上であり、前記樹脂層の厚み方向における電気抵抗が、前記樹脂層の最表面側から前記芯材側へと高くなることを特徴とする。
【0020】
本発明のキャリアは、芯材の表面性指標S1が12以上、すなわち芯材表面が凹凸しているため、芯材を被覆する樹脂の剥離が起こり難い。しかし、芯材表面が凹凸している場合、長期に渡る使用によって、樹脂層が徐々に磨耗してくると、芯材表面の凸部の頂点から凸部の裾野へと芯材表面が徐々に露出してくるため、芯材表面の露出面積が徐々に増大することになる。これは、経時的には、キャリアの電気抵抗が徐々に低下することを意味する。
【0021】
しかしながら、本発明のキャリアは、芯材表面が凹凸しているのみならず、樹脂層の厚み方向における電気抵抗が、樹脂層の最表面側から芯材側へと高くなっている。このため、長期に渡る使用によって樹脂層が徐々に磨耗して芯材表面の露出面積が徐々に増大しても、樹脂層で被覆されている部分の電気抵抗は大きくなるために、芯材表面の露出面積の増大による電気抵抗の低下を相殺し、キャリア全体として電気抵抗の低下を抑制することができる。
それゆえ、本発明のキャリアを用いて、長期に渡って画像を形成した場合、キャリアの電気抵抗は使用初期と比べてもあまり低下しないため、ベタ画像などを形成しても、使用初期と同程度の画像濃度を得ることができる。
【0022】
なお、樹脂層の層構成は、その厚み方向における電気抵抗が、樹脂層の最表面側から芯材側へと高くなっているものであれば、その層構成は特に限定されず、厚み方向に対して、例えば、組成が連続的に変化するような傾斜構造であってもよいが、実用上は、2以上の層からなる多層構造であることが好ましく、キャリアの生産性の点からは、2層構成〜3層構成であることが特に好ましい。
【0023】
例えば、樹脂層が、樹脂層の表面を構成する層(表面層)と、芯材表面を直接被覆する層(芯材被覆層)と、からなる2層構成の場合、各層を構成する材料の電気抵抗は、「表面層を構成する材料の電気抵抗<芯材被覆層を構成する材料の電気抵抗」なる関係を満たす必要がある。
また、樹脂層が、表面層と芯材被覆層との間に1層以上の中間層を設ける場合には、互いに隣接する2つの層を構成する材料の電気抵抗は、原則として「キャリア表面側の層を構成する材料の電気抵抗<芯材側の層を構成する材料の電気抵抗」を満たしていればよい。但し、「表面層を構成する材料の電気抵抗<芯材被覆層を構成する材料の電気抵抗」なる関係が必ず満されるのであれば、互いに隣接する少なくともいずれか2つの層を構成する材料の電気抵抗は、同じであってもよい。
【0024】
上述したような観点から、表面層を構成する材料の電気抵抗R(S)に対する芯材被覆層を構成する材料の電気抵抗R(C)との比率(R(C)/R(S))は少なくとも1を超えることが必要であるが、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。
R(C)/R(S)が、1以下の場合には、長期に渡って画像を形成した場合、キャリアの電気抵抗は使用初期と比べて徐々に、あるいは、顕著に低下してしまうことが避けられないため、ベタ画像などを形成しても、使用初期と同程度の画像濃度を得ることができない。
なお、R(C)/R(S)が大きすぎる場合には、キャリアの使用に伴い、一時的にせよキャリアの抵抗が必要以上に大きくなりすぎ、経時的に画質がばらつきが発生してしまう場合があるため、10万以下であることが好ましく、1万以下であることがより好ましい。
【0025】
また、R(C)/R(S)が1以上であることを満たした上で、表面層を構成する材料の電気抵抗R(S)は、107〜1013の範囲内が好ましく、108〜1012の範囲内がより好ましく、芯材被覆層を構成する材料の電気抵抗R(C)は1010〜1014の範囲内が好ましく、1011〜1013の範囲内がより好ましい。
なお、樹脂層の各層を構成する材料の電気抵抗は、抵抗を制御するために、樹脂の種類や、樹脂に配合される金属粉やカーボンブラック等の導電材料の種類・配合量を調整することによって所望の値に容易に制御することができる。
【0026】
ここで、樹脂層の各層を構成する材料の電気抵抗は、実際に作製しようとするキャリアと同様の芯材を用い、この芯材表面に各層を構成する材料単体で、被覆率が100%(膜厚としては約3μm程度)となるように被覆した単層コートキャリアを作製し、この単層コートキャリアの電気抵抗を測定することにより評価した。
この単層コートキャリアの電気抵抗の測定環境は、温度20℃、50%RHで実施した。測定手順を以下に示す。20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となる単層コートキャリアキャリアを1〜3mm程度の厚さになるように平坦に載せ、キャリア層を形成する。この上に前記同様の20cm2の電極板を載せキャリア層を挟み込む。キャリア間の空隙をなくすため、キャリア層上に載置した電極板の上に4kgの荷重をかけてからキャリア層の厚み(cm)を測定する。キャリア層上下の両電極は、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、樹脂層の各層を構成する材料の電気抵抗に相当する単層コートキャリアの抵抗(Ω・cm)を計算する。キャリア抵抗の計算式は、下式(1)に示すとおりである。
・式(1) Rs=Es×20/(Is−I0)/Ls
上記式(1)中、Rsは単層コートキャリアの抵抗(=樹脂層の各層を構成する材料の電気抵抗)(Ω・cm)、Esは印加電圧(V)、Isは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lsはキャリア層の厚み(cm)をそれぞれ表す。また係数の20は、電極板の面積(cm2)を表す。
【0027】
なお、芯材の表面性指標S1は既述したように12以上であることが必要であるが、17.6以上であることが好ましい。表面性指標S1が12未満の場合には、芯材表面の凹凸が小さすぎるために、樹脂層が芯材表面から剥離してしまい、キャリアの電気抵抗が一挙に低下してしまう。このため長期に渡る使用では、画像を形成しても所定の画像濃度を維持することができなくなる。また、キャリアの感光体上への移行も発生する。
但し、芯材の表面性指標S1が大きすぎる場合には、使用開始の初期から、樹脂層が少し磨耗しただけでも芯材表面が露出しやすくなったり、あるいは、芯材を樹脂層で被覆した場合に、キャリア表面の凹凸も必要以上に大きくなりやすいため、芯材の表面性指標S1は20以下であることが好ましい。
【0028】
一方、芯材を樹脂層で被覆した状態(すなわち、キャリア自体)の表面性指標S2が5.5〜15の範囲内であることが好ましく、5.5〜11の範囲内であることがこのましい。表面性指標S2が5.5未満の場合には、トナーへの帯電付与能力が低下してしまう場合があり、15を超えると現像機内のストレスを受けやすくなり、キャリアが破壊されて微粉を発生するために画質欠陥を招く場合がある。
【0029】
本発明において、芯材やキャリアの表面性指標は下式(2)により求められる。
・式(2) 表面性指標=比重×平均粒径×BET比表面積
ここで、式(2)に示すBET比表面積はSA3100比表面積・細孔分測定装置(コールター社製)を用いた。その際、測定試料は測定用セルに約15〜20g入れ、精密天秤で正確に秤量する。秤量し終えたら、装置付帯の脱ガスポートにて、200℃で30分間真空吸引熱処理を行う。ついで、測定ポートに試料をセットし、装置のプログラム“BET5”を選択し、測定を開始する。測定は自動的に行われ、測定終了時に試料の重量をインプットするとBET比表面積が自動的に算出される。
また、式(2)に示す平均粒径は、LS−Particle−Size−Analyzer(COULTER社)を用い、体積粒度分布に対し小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を平均粒径として求めた。
【0030】
また、キャリアの形状係数は125以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、形状係数は小さいほど好ましい。125を超える場合には、現像機内の攪拌によりキャリアがストレスを受けた際に、芯材表面が露出しやすくなり、長期に渡る使用では画像濃度の低下などを引き起こす場合がある。
【0031】
なお、キャリアの形状係数は下式(3)により求められる値を意味する。
・式(3) 形状係数=100π×(ML)2 /(4×A)
ここで、MLはキャリア粒子の最大長、Aはキャリア粒子の投影面積である。なお、キャリア粒子の最大長と投影面積は、スライドガラス上にサンプリングしたキャリア粒子を光学顕微鏡により観察し、ビデオカメラを通じて画像解析装置(LUZEX III、NIRECO社製)に取り込んで、画像解析を行うことにより求めたものである。この際のサンプリング数は100個以上で、その平均値を用いて、式(3)に示す形状係数を求めた。
【0032】
また、樹脂層による芯材表面の被覆率は95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%に近ければ近いほどこのましい。被覆率が95%未満の場合には、長期に渡って使用した場合にキャリアへの電荷注入が発生し、電荷注入が起こったキャリアが感光体上へ移行し、画像上に白抜けが発生してしまう場合がある。
【0033】
なお、被覆率はXPS測定により求めた。XPS測定装置としては、日本電子製、JPS80を使用し、測定は、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を20mVに設定して実施し、樹脂層を構成する主たる元素(通常は炭素)と、芯材を構成する主たる元素(例えば芯材がマグネタイトなどの酸化鉄系材料の場合は鉄および酸素)とについて測定した(以下、芯材が、酸化鉄系である場合を前提に説明する)。ここで、炭素についてはC1sスペクトルを、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを、酸素についてはO1sスペクトルを測定した。
【0034】
これらの各々の元素のスペクトルに基づいて、炭素、酸素、鉄の元素個数(Ac+Ao+AFe)を求めて、得られた炭素、酸素、鉄の元素個数比率より下式(4)に基づいて、芯材単体(樹脂で被覆する前のキャリア)、および、芯材を樹脂層で被覆した後(キャリア)の鉄量率を求め、続いて、下式(5)により被覆率を求めた。
・式(4)
鉄量率(atomic%)=AFe/(Ac+Ao+AFe)×100
・式(5)
被覆率(%)={1−(キャリアの鉄量率)/(芯材単体の鉄量率)}×100
【0035】
なお、芯材として、酸化鉄系以外の材料を用いる場合には、酸素の他に芯材を構成する金属元素のスペクトルを測定し、上述の式(4)や式(5)に準じて同様の計算を行えば被覆率を求めることができる。
【0036】
次に、本発明のキャリアを構成する材料やその製造方法について説明する。
本発明に用いられる芯材としては、キャリア用の公知の芯材が利用でき、フェライト、マグネタイト、鉄粉などの磁性粒子が好ましく用いられる。
磁性粒子の個数平均粒径は10〜55μmの範囲が好ましい。前記磁性粒子の個数平均粒径が55μmを超えると、現像機内ストレスにより樹脂層の剥がれが生じ、キャリア抵抗が低下する場合がある。
一方、磁性粒子の個数平均粒径10μm未満であると、トナーインパクションが発生し、キャリア抵抗が上昇する場合がある。これらの現象は、キャリア1粒子当たりの重さに起因するものと推定される。
なお、個数平均粒径は、LS−Particle−Size−Analyzer(COULTER社)を用い、数粒度分布に対し小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を個数平均粒径として求めた。
【0037】
磁性粒子の磁力は、3000エルステッドにおける飽和磁価が50emu/g以上であることが好ましく、より好ましくは60emu/g以上である。飽和磁価が50emu/gより弱い磁力では、キャリアがトナーと共に、感光体上に現像されてしまう場合がある。
【0038】
樹脂層に用いられる樹脂としては、キャリア用に用いられる公知の樹脂であればいずれも利用することができ、二種以上を組み合わせて利用することもできる。
樹脂としては、機能の面から、トナーに帯電性を付与するための樹脂(帯電付与樹脂)と、トナー成分のキャリアへの移行を防止するための低表面エネルギー樹脂とに大別される。
また、樹脂として微粒子を用いる場合、その粒径は芯材の粒径の1/10以下であることが好ましい。
【0039】
ここで、トナー成分のキャリアへの移行を防止するための低表面エネルギー樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0040】
トナーに帯電性を付与するための帯電付与樹脂の内、トナーに負帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、アミノ系樹脂、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、およびエポキシ樹脂等があげられ、さらにポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂等があげられる。
また、トナーに正帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0041】
また、樹脂層には、抵抗を制御するための導電粉を添加することが好ましい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。
これらの導電粉は、平均粒径1μm以下のものが好ましい。平均粒径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる場合がある。また、導電粉自身の導電性は1010Ωcm以下が好ましく、109Ωcm以下がより好ましい。更に、必要に応じて、導電性樹脂等を併用することができる。
【0042】
樹脂層に含まれる導電粉の含有量は、0.05〜1.5質量%が好ましく、0.10〜1.0質量%がより好ましい。
含有量が1.5質量%を超えると、キャリア抵抗の低下を招き、現像像へのキャリア付着などにより画像欠損を引き起こす場合がある。一方、導電粉の樹脂層における含有量が0.05質量%未満であると、キャリアが絶縁化され、現像時、現像電極として働きにくくなり、特に黒のベタ画像を形成した際にエッジ効果が出る等、ソリッド画像の再現性が劣る場合がある。
【0043】
なお、樹脂層は、その厚み方向における電気抵抗が、樹脂層の最表面側から芯材側へと高くなるようにできるのであればその形成方法は特に限定されないが、芯材表面から順に電気抵抗が異なる材料からなる層を積層して形成することが好ましい。
樹脂層全体の平均膜厚は通常のキャリアでは0.1〜10μm程度であるが、本発明においては経時に渡り安定したキャリアの体積抵抗を発現させるため、0.5〜3.0μmの範囲内であるとがより好ましく、0.5〜2.0μmの範囲内であることが更に好ましい。
【0044】
また、芯材の表面に樹脂層を形成する場合には、公知の湿式法または乾式法により形成することができる。なお、高い被覆率を得るためには乾式法を利用することが好ましい。
具体的には、芯材を樹脂層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、樹脂層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で樹脂層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と樹脂層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0045】
なお、通常のキャリアの場合は、1種類の樹脂層形成用溶液のみが用いられるが、本発明においては、樹脂層を構成する各層毎に複数の樹脂層形成用溶液を用意し、各々の層毎に順次積層形成する。
樹脂層形成用溶液に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよいが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エタノール、水などを利用することができる。
【0046】
<静電荷像現像剤>
本発明の静電荷像現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、本発明のキャリアと、トナーとを含むいわゆる二成分系現像剤であれば特に限定されない。
ここで、トナーとキャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であることが好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0047】
トナーとしては、公知のトナーであればいかなるトナーでも利用することができ、例えば、混練粉砕法や、懸濁重合法などが利用できるが、粒度分布等、トナーの粒度や形状、粒子構造の制御性に優れることから乳化重合凝集法により作製されたものであることが好ましい。なお、乳化重合凝集法は、少なくとも樹脂粒子を含む粒子を分散した分散液中で、前記粒子を凝集させて凝集粒子を得る凝集工程と、前記凝集粒子を加熱して融合させる融合工程とを含むトナー製造方法である。
また、本発明においては、高精細な画像が得られることから、小径のトナー、すなわち体積平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲内のトナーを用いることが好ましい。ここで、トナーの体積平均粒径は、上述の式(2)中に示される平均粒径と同様にして測定されるものである。
【0048】
なお、上述したような小径トナーを用いた場合には、小径化による流動性の低下を防止するために外添剤を多量に用いる。このため、現像剤中に多量に存在する外添剤によってキャリア表面の磨耗が促進されやすく、芯材表面が早期に露出してしまう傾向があるため、従来のキャリアと組み合わせた場合、経時でのキャリアの電気抵抗の低下がより起こりやすくなるという問題があった。
しかしながら、本発明では、キャリア表面の磨耗により芯材表面が徐々に露出しても、キャリアの電気抵抗の低下を長期に渡って抑制することができるため、小径のトナーと組み合わせても、長期に渡り安定した画質を維持することが容易である。
【0049】
次に、本発明に用いられるトナーの構造や構成材料、製造方法等についてより詳細に説明する。なお、構成材料は、基本的に乳化重合凝集法を利用してトナーを作製する場合を前提として説明するが、勿論、他のトナー製造方法を利用してトナーを製造する場合にも同様の材料を利用することができる。
【0050】
−結着樹脂−
乳化重合凝集法を利用して作製される本発明に用いられるトナーを構成する樹脂(結着樹脂)としては、ビニル系樹脂を代表とする非晶性樹脂はもとより、非結晶性のポリエステル樹脂、結晶性のポリエステル樹脂など様々なものを用いることができる。
【0051】
ビニル系結着樹脂としての例としては、スチレン、パラクロルスチレンなどのスチレン類ビニルナフタレン、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n―ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n―オクチル、アクリル酸2―クロルエチル、アクリル酸フェニル、α―クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメチレン脂肪族カルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリルロニトリル、アクリルアミド、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、例えばN―ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物などの含N極性基を有する単量体やメタクリル酸、アクリル酸、桂皮酸、カルボキシエチルアクリレートなどのビニルカルボン酸類などビニル系モノマーの単独重合体及び共重合体及び/または各種ポリエステル類など、さらには各種ワックス類もあわせて使用可能である。
【0052】
ビニル系単量体の場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂微粒子分散液を作製することができ、その他の樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に解かし、イオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機により水中に微粒子状に分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂微粒子分散液を得ることができる。
【0053】
結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、また適度な融点をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。以下、結晶性ポリエステル樹脂を例に説明する。
結晶性脂肪族系ポリエステルには、ポリカプロラクトンのように開環重合的に進行するポリエステルもあるが、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものも多い、本発明において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0054】
本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50重量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0055】
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。
例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。
【0056】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
尚、前記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステル又は酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。また、前記スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分には、スルホン酸基を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸の低級アルキルエステル又は酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0057】
前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。
【0058】
また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、トナー母粒子を微粒子に作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0059】
これらの、脂肪族ジカルボン酸由来構成成分以外の酸由来構成成分(2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分)の、酸由来構成成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある。一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0060】
尚、本発明において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)を1単位(モル)したときの百分率を指す。
【0061】
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジカルボン酸が望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。
【0062】
前記アルコール由来構成成分が脂肪族ジオール由来構成成分の場合には、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含む。さらに前記アルコール由来構成成分が脂肪族ジオール由来構成成分の場合、前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量は90構成モル%以上であるのが好ましい。
【0063】
前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう。
必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分、スルホン酸基を持つジオール由来構成成分等の構成成分である。
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。
前記スルホン酸基を持つジオールとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
【0064】
これらの、直鎖型の脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分を加える場合、すなわち2重結合を持つジオール由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分を加える場合、全アルコール由来構成成分における2重結合を持つジオール由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分の含有量は、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
【0065】
前記脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分の含有量が、全アルコール由来構成成分に対して1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなったり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある。
一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0066】
トナーの結着樹脂の融点は50〜120℃であることが好ましく、60〜110℃であることがより好ましい。融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。
【0067】
尚、本発明において、前記結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下、「DSC」と略記する。)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。尚、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
【0068】
前記ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0069】
前記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と供に重縮合させるとよい。
【0070】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0071】
−着色剤−
本発明に用いられるトナーの着色剤としては、公知の着色剤を用いることができるが、例えば、次のような着色剤を使用することができる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等を挙げることができる。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG等を挙げることができる。
【0072】
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等を挙げることができる。
【0073】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンB レーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ、ピグメントレッド146,147、184、185、155、238、269などのナフトールレッド等を挙げることができる。
【0074】
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどを挙げることができる。
【0075】
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等を挙げることができる。
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等を挙げることができる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等をあげることができる。
【0076】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等を挙げることができる。
また、染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等があげられる。
【0077】
また、これらの着色剤は単独もしくは混合して使用される。なお、後述する乳化重合凝集法を利用してトナーを作製する場合、これらの着色剤は、分散液として利用される。例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を用いて着色剤粒子の分散液を調製することができる。また、これらの着色剤は極性を有する界面活性剤を用いて、ホモジナイザーによって水系に分散することもできる。
【0078】
本発明に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。
そして、着色剤は、トナー構成固体分総重量に対して4〜15重量%の範囲で添加することができる。黒色着色剤として磁性体を用いる場合は、他の着色剤とは異なり、12〜24重量%添加することができる。
前記の着色剤の配合量は、定着時の発色性を確保するための必要量である。また、トナー中の着色剤粒子の中心径(メジアン径)は100〜330nmにすることにより、OHP透明性及び発色性を確保することができる。なお、着色剤粒子の中心径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定することができる。
【0079】
−離型剤−
本発明で用いられるトナーの離型剤としては、公知の離型剤を用いることができるが、具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。
これらのワックス類は、室温付近では、トルエンなど溶剤にはほとんど溶解しないか、溶解しても極めて微量である。
【0080】
これらのワックス類は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で微粒子状に分散させ、1μm以下の粒子の分散液を作製することができる。
また必要に応じて、画像の耐候性などを向上させるために重合性紫外線安定性単量体などを含有しても良い。
【0081】
重合性紫外線安定性単量体の例としては4−(メタ)アクリロイルオキシー2,2,6,6―テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノー2,2,6,6−テトラピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシー1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノー1,2,2,6,6ペンタメチルピペリジン、4−シアノー4―(メタ)アクリロイルアミノー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイルー4−(メタ)アクリロイルアミノー2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのピペリジン系化合物が効果的である。これらは、1種また2種以上を用いることができる。
【0082】
これらの離型剤は、トナー構成固体分総重量に対して5〜25重量%の範囲で添加することが、オイルレス定着システムにおける定着画像の剥離性を確保する上で望ましい。
なお、得られた離形剤粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。また、離型剤を使用するときには、樹脂微粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を凝集した後に、さらに樹脂微粒子分散液を追加して凝集粒子表面に樹脂微粒子を付着することが帯電性、耐久性を確保する観点から望ましい。
【0083】
−その他(添加剤)−
本発明に用いられるトナーには、必要に応じて公知の内添剤や外添剤を利用することができる。
例えば、磁性トナーとして用いる場合は、磁性粉を含有させても良い。具体的には、磁場中で磁化される物質を用いるが、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性の粉末、もしくはフェライト、マグネタイト等の化合物が使用される。
水相中でトナーを得るときには、磁性体の水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは予め磁性体の表面を改質し、例えば疎水化処理等を施しておくことが好ましい。
【0084】
また内添剤としてフェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体を使用したり、帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料やトリフェニルメタン系顔料など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することが出来る。但し、乳化重合凝集法を利用してトナーを作製する場合、凝集や合一時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
【0085】
また、本発明に用いられるトナーは、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に種々の外添剤を添加することができる。例えば、トナー粒子に、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機微粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を乾燥状態でせん断をかけながらトナー粒子表面に添加して使用することができる。
また水中にてトナー表面に付着せしめる場合、無機微粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべてのものをイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で分散することにより使用することができる。
【0086】
−トナーの製造方法−
なお、本発明に用いられるトナーは、既述したように、凝集工程と、融合工程とを少なくと経て作製されるものであるが、凝集工程を経て形成された凝集粒子(コア粒子)の表面に表面エネルギーの低い高分子微粒子を付着させたコア/シェル構造を有する凝集粒子を形成する付着工程を設けることがより好ましい。
また、凝集工程で用いられる分散液(原料分散液)は、下記に説明する乳化工程を利用して調整されることが好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0087】
−乳化工程−
原料分散液は、結着樹脂の乳化粒子(以下、「樹脂粒子」と略す)と、水系媒体および必要に応じて着色剤や離型剤を含む分散液とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。したがって結着樹脂は原料分散液中にあらかじめ樹脂粒子として分散させておく必要がある。
【0088】
前記樹脂粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易くなる場合がある。
一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前記平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)などを用いて測定することができる。
【0089】
前記分散液における分散媒としては、例えば水系媒体や有機溶剤などが挙げられる。
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくのが好ましい。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等のイオン性界面活性剤が好ましい。
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエンが挙げられ、前記結着樹脂に応じて適宜選択して用いる。
【0091】
前記樹脂粒子が、前記ビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、前記ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等することにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0092】
前記樹脂粒子が、前記ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、該樹脂が、水への溶解度が比較的低い油性溶剤に溶解するのであれば、該樹脂を該油性溶剤に溶解させ、この溶液を、ホモジナイザー等の分散機を用いてイオン性界面活性剤や高分子電解質と共に水中に微粒子分散し、その後、加熱又は減圧して該油性溶剤を蒸散させることにより、ビニル系樹脂以外の樹脂製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0093】
一方、前記樹脂粒子が、結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂である場合、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有した、自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成できる。結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルフォン基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0094】
また、結着樹脂として、それ自体水に分散しない、すなわち自己水分散性を有しないポリエステル樹脂を用いる場合には、後述する離型剤と同様、樹脂溶液及び又はそれと混合する水性媒体に、イオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理すると、容易に1μm以下の微粒子にされ得る。このイオン性界面活性剤や高分子電解質を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜5重量%程度になるようにするのが適当である。
【0095】
このようにして得られた樹脂微粒子分散液中の微粒子の中心径(メジアン径)は1μm以下であることが好ましく、50〜400nmの範囲内であることがより好ましく、70〜350nmの範囲内であることが更に好ましい。
なお、樹脂微粒子の中心径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定することができる。
【0096】
−凝集工程−
凝集工程においては、樹脂粒子、着色剤、および、離型剤をそれぞれ含む分散液を少なくとも混合して得られた原料分散液を加熱し、これらの微粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。なお、樹脂粒子が結晶性ポリエステル等の結晶性樹脂である場合には、結晶性樹脂の融点付近の温度で、且つ、融点以下の温度にて加熱し、これらの微粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。
【0097】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性にすることによってなされる。
前記凝集工程に用いられる凝集剤は、原料分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、すなわち無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0098】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0099】
なお、後述する付着工程を利用せずにトナーを作製する場合、凝集工程で利用する樹脂粒子は、表面エネルギーの小さい樹脂材料からなることが好ましい。この場合、感光体表面に対するトナーの離型性をより向上させることができる。
このような表面エネルギーの小さいトナー用の樹脂材料としては、少なくとも一部の水素原子がフッ素置換された樹脂材料を用いることができる。
【0100】
−付着工程−
凝集工程を経た後には、必要であれば付着工程を実施してもよい。付着工程では、上記した凝集工程を経て形成された凝集粒子の表面に、樹脂粒子を付着させることにより被覆層を形成する。これにより、いわゆるコア/シェル構造を有するトナーを得ることができる。
【0101】
被覆層の形成は、凝集工程において凝集粒子(コア粒子)を形成した分散液中に、通常、無定形高分子粒子を含む分散液を追添加することにより行うことができる。なお、付着工程で利用する樹脂粒子は、上述した場合と同様、表面エネルギーの小さい樹脂材料からなることが好ましい。この場合、感光体表面に対するトナーの離型性をより向上させることができる。
【0102】
なお、樹脂の乳化重合、顔料の分散、樹脂微粒子の分散、離型剤の分散、粒子の凝集、凝集粒子の安定化などに界面活性剤を用いることができる。具体的には硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを使用できる。
【0103】
−融合工程−
凝集工程、あるいは、凝集工程および付着工程を経た後に実施される融合工程は、これらの工程を経て形成された凝集粒子を含む懸濁液のpHを6.5〜8.5の範囲にすることにより、凝集の進行を止めた後、加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。なお、結着樹脂として結晶性樹脂を用いている場合には、結着樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。
【0104】
融合時の加熱に際して、あるいは融合が終了した後に、架橋反応を行わせてもよい。また、融合と同時に架橋反応を行うこともできる。架橋反応を行わせる場合には、例えば、結着樹脂として2重結合成分を共重合させた、不飽和スルホン化結晶性ポリエステル樹脂を用い、この樹脂にラジカル反応を起こさせ、架橋構造を導入することができる。
【0105】
重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル‐2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシα−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t―ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
【0106】
これら重合開始剤は、単独で使用することも、または2種以上を併用することもできる。重合開始剤の量や種類は、ポリマー中の不飽和部位量、共存する着色剤の種類や量によって選択される。
重合開始剤は、原料分散液を作製する段階であらかじめこの分散液に混合しておいてもよいし、凝集工程で凝集粒子に取り込ませてもよい。さらには、融合工程、或いは、融合工程の後に導入してもよい。凝集工程、付着工程、融合工程、あるいは融合工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化した液を、分散液に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0107】
−洗浄、乾燥工程等−
凝集粒子の融合・合一工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。また、乾燥後のトナー粒子には、既述したような種々の外添剤を必要に応じて添加することができる。
【0108】
<画像形成方法>
次に、本発明の現像剤を用いた画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、公知の二成分現像剤を用いた電子写真方式の画像形成方法において、本発明の現像剤を用いるのであればそのプロセスは特に限定されないが、具体的には、以下の工程を含むプロセスであることが好ましい。
すなわち、像担持体(感光体)表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記像担持体表面を露光して潜像を形成する露光工程と、前記潜像と現像剤担持体(現像ロール)との間の電位差を利用して、前記潜像が形成された前記像担持体表面に、前記現像剤担持体に担持された本発明の現像剤を供給してトナー像を形成する現像工程と、前記像担持体表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体表面に転写された前記トナー像を定着して画像を形成する定着工程とを含むことが好ましい。
【0109】
なお、潜像と現像ロールとの間の電位差(現像バイアス)は、一般的には200V 〜400V程度の範囲内に設定されることが多い。しかしながら、高精細な画像を得るために、上述したような体積平均粒径が小さい小径トナーを用いるような場合や、欧米などの日本と比べて比較的高温低湿の環境(温度25〜30℃、湿度20〜50%程度の範囲)で画像形成装置が使用されるような場合においては、現像バイアスは450〜700Vの範囲内に設定されることが好ましい。
なお、通常は、現像バイアスが高い場合、芯材表面が露出した部分から電荷が注入してキャリアの全体の電気抵抗が低下し、感光体上に形成された潜像部分へキャリアが移行し、画像に白抜けが発生しやすくなる。しかしながら、上述したよう被覆率を95%以上としたキャリアを用いることにより450〜700Vの範囲内の現像バイア加えて、本発明のキャリアは、芯材表面が露出するに伴い、樹脂で被覆された部分の電気抵抗は高くなる傾向にあるため、芯材表面が露出した部分から電荷が注入が起こっても、キャリアの全体としての電気抵抗の低下幅は従来のキャリアと比べると小さく、この点においても画像の白抜けの発生を抑制することができる。
【0110】
また、本発明のキャリアは、現像機内において、従来よりもより強いストレスに曝されても、樹脂層の磨耗によるキャリアの電気抵抗の低下が起こりにくいため、現像機内でのストレスがより強い条件、すなわちプロセススピード(感光体の周速度)が300m/sから実用上の上限である500m/s程度の範囲内の高速条件においても、長期に渡って安定した画質を維持することが可能である。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「部」を意味する。
【0112】
−樹脂微粒子分散液の調製−
・スチレン(和光純薬製):320部
・nブチルアクリレート(和光純薬製):80部
・βカルボキシエチルアクリレート(ローディア日華製):9部
・1’10デカンジオールジアクリレート(新中村化学製):1.5部
・ドデカンチオール(和光純薬製):2.7部
以上の成分を混合溶解し、これをアニオン性界面活性剤ダウファックス(ローディア社製)4部を含有するイオン交換水550部に溶解し、さらにフラスコ中で分散、乳化し10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム6部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次いで系内の窒素置換を十分に行った後、フラスコ内を攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。これにより体積平均粒径210nm、固形分量43重量%、ガラス転移点51.0℃、重量平均分子量Mw30000のアニオン性の樹脂粒子分散液を調製した。
【0113】
−着色剤粒子分散液(1)の調製−
・フタロシアニン顔料(大日精化社製、PVFASTBLUE):90部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンSC):10部
・イオン交換水:240部
以上の成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した後、循環式超音波分散機(日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけて着色剤粒子分散液(1)を調製した。着色剤分散液(1)における着色剤の数平均粒径は150nmで、粒径0.03μm以下の粒子は4.0個数%、0.5μm以上の粒子は0.5個数%であった。
【0114】
−着色剤粒子分散液(2)の調製−
・カーボンブラック(CABOT社製、R330):90部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンSC):10部
・イオン交換水:240部
以上の成分を混合し、着色剤分散液(1)と同様の条件にて着色剤粒子分散液(2)を調製した。着色剤分散液(2)における着色剤の数平均粒径は155nmで、粒径が0.03μm以下の粒子は5.0個数%、0.5μm以上の粒子は0.5個数%であった。
【0115】
−着色剤粒子分散液(3)の調製−
・C.Iピグメント・レッド122(大日製化社製、ECR−185):90部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンSC):10部
・イオン交換水:240部
以上の成分を混合し、着色剤分散液(1)と同様の条件にて着色剤粒子分散液(3)を調製した。着色剤分散液(3)における着色剤の数平均粒径は165nmで、粒径が0.03μm以下の粒子は6.0個数%、0.5μm以上の粒子は0.5個数%であった。
【0116】
−着色剤粒子分散液(4)の調製−
・C.Iピグメント・レッド185(クラリアント社製):90部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンSC):10部
・イオン交換水:240部
以上の成分を混合し、着色剤分散液(1)と同様の条件にて着色剤粒子分散液(4)を調製した。着色剤分散液(4)における着色剤の数平均粒径は170nmで、粒径が0.03μm以下の粒子は7個数%、0.5μm以上の粒子は0.5個数%であった。
【0117】
−着色剤粒子分散液(5)の調製−
・C.Iピグメントイエロー74(クラリアント社製):90部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンSC):10部
・イオン交換水:240部
以上の成分を混合し、着色剤分散液(1)と同様の条件にて着色剤粒子分散液(5)を調製した。着色剤分散液(5)における着色剤の数平均粒径は175nmで、粒径が0.03μm以下の粒子は6個数%、0.5μm以上の粒子は0.3個数%であった。
【0118】
−離型剤分散液(1)の調製−
・離型剤としてのポリエチレンワックス(東洋ペトロライト社製:PW725、融点103℃):90部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンSC):10部
・イオン交換水:240部
以上の成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス750)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、数平均粒径200nmの離型剤分散液(1)を調製した。
【0119】
−トナー粒子1の作製−
(凝集工程)
・イオン交換水:500部
・樹脂粒子分散液:250部
・着色剤分散液(1):36部
・離型剤分散液(1):56部
・無機微粒子分散液(日産化学社製、スノーテックスOL):10部
・無機微粒子分散液(日産化学社製、スノーテックスOS):10部
・凝集剤〔浅田化学社製、ポリ塩化アルミニウム〕:0.5部
以上の成分を混合し丸型ステンレス製フラスコ中で、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)で混合分散した。混合は樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液を分割し、3分割づつ段階的に行った。その後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら40℃まで緩やかに加熱して10分間保持した。フラスコ中で形成された凝集粒子(コア粒子)の体積平均粒径を測定したところ3.5μmであることが確認された。
【0120】
(付着工程)
上記調製した凝集粒子を含む分散液に、さらに前記樹脂粒子分散液60部を緩やかに添加し、30分間保持し、コア粒子の表面に更に樹脂微粒子を付着させた。得られた凝集粒子について、体積平均粒径を測定すると4.0μmであった。
【0121】
(融合工程)
次に、1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液をpHが6.0になるように添加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら85℃まで緩やかに加熱し60分間保持した。その後96℃まで加熱し、1mol/リットルの硝酸水溶液をpH4.2になるまで加え、5時間保持した。その後、冷却、ろ過し、イオン交換水で5回洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることによりトナー粒子を作製した。
得られたトナー粒子の体積平均粒径は4.0μm、形状係数は120であった。このトナー粒子300部に対し、疎水性シリカ(TS720:キャボット製)を30部添加し、サンプルミルにてブレンドし、目開き45μmのシーブを用いて粗大粒子を除去し、外添剤が添加されたトナー粒子1を得た。
【0122】
−トナー粒子2の作製−
着色剤分散液(1)の代わりに着色剤分散液(2)36部を用いた以外は、トナー粒子1と同様にして造粒し、外添剤処理することによりトナー粒子2を得た。体積平均粒径は4.0μm、形状係数は120であった。
【0123】
−トナー粒子3の作製−
着色剤分散液(1)の代わりに着色剤分散液(3)18部および着色剤分散液(4)18部を用いた以外は、トナー粒子1と同様にして造粒し、外添剤処理することによりトナー粒子3を得た。体積平均粒径は4.0μm、形状係数は120であった。
【0124】
−トナー粒子4の作製−
着色剤分散液(1)の代わりに着色剤分散液(5)36部を用いた以外は、トナー粒子1と同様にして造粒し、外添剤処理することによりトナー粒子4を得た。体積平均粒径は4.0μm、形状係数は120であった。
【0125】
−トナー粒子5の作製−
凝集工程において、凝集温度40℃を50℃に変更した以外はトナー粒子1と同様にして造粒してトナー粒子5を得た。トナー粒子5の体積平均粒径は6.0μm、形状係数は120であった。
続いて、トナー粒子300部に対する、疎水性シリカ(TS720:キャボット製)の添加量を6部に変更した以外は、トナー粒子1と同様にして外添剤処理し、外添剤が添加されたトナー粒子5を得た。
【0126】
−トナー粒子6の作製−
着色剤分散液(1)の代わりに着色剤分散液(2)36部を用いた以外は、トナー粒子5と同様にして造粒し、外添剤処理することによりトナー粒子6を得た。体積平均粒径は6.0μm、形状係数は120であった。
【0127】
−トナー粒子7の作製−
着色剤分散液(1)の代わりに着色剤分散液(3)18部および着色剤分散液(4)18部を用いた以外は、トナー粒子5と同様にして造粒し、外添剤処理することによりトナー粒子7を得た。体積平均粒径は6.0μm、形状係数は120であった。
【0128】
−トナー粒子8の作製−
着色剤分散液(1)の代わりに着色剤分散液(5)36部を用いた以外は、トナー粒子5と同様にして造粒し、外添剤処理することによりトナー粒子8を得た。体積平均粒径は6.0μm、形状係数は120であった。
【0129】
<キャリアD1の作製>
−樹脂層形成用溶液(芯材被覆層形成用溶液)の調整−
・ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子(分子量=60万、平均粒径=0.15μm、ガラス転移温度Tg=120℃):6部
・カーボンブラック(Regal330R;キャボット社製):3部
・樹脂微粒子(架橋メラミン樹脂粒子;平均粒径0.3μm):0.3部
・トルエン100部
上記成分をホモジナイザーで10分攪拌/分散して、芯材被覆層形成用溶液を得た。なお、この溶液を用いて、後述する回分式ニーダーを用いた場合と同様にして被覆率が100%となるように単層コートキャリアを作製し、芯材被覆層の電気抵抗を測定したところ4.0×1014Ω・cmであった。
【0130】
−樹脂層形成用溶液(表面層形成用溶液)の調整−
・ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子(分子量=60万、平均粒径=0.15μm、ガラス転移温度Tg=120℃):6部
・カーボンブラック(Regal330R;キャボット社製):10部
・樹脂微粒子(架橋メラミン樹脂粒子;平均粒径0.3μm):0.3部
・トルエン100部
上記成分をホモジナイザーで10分攪拌/分散して、表面層形成用溶液を得た。なお、この溶液を用いて、後述する回分式ニーダーを用いた場合と同様にして被覆率が100%となるように単層コートキャリアを作製し、表面層の電気抵抗を測定したところ1.5×1010Ω・cmであった。
【0131】
−樹脂層の形成−
フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径=35μm、比重=4.5、形状係数=125、表面性指標=14)100部と、芯材被覆層形成用溶液30部とをジャケットを備えた容量50Lの回分式ニーダー内に投入し、減圧下、90℃にて30分撹拌し、十分トルエンを除き、フェライト粒子表面に芯材被覆層を形成した。続いて、冷却後、目開き75μmの篩で篩分を行うことによって得られた粒子の断面を走査型電子顕微鏡により観察したところ芯材被覆層の平均膜厚は1.0μmであった。
次に、この芯材被覆層が形成されたフェライト粒子100部を120℃にて10分間攪拌した後、表面層形成用溶液を3g/minの割合で噴霧した。累計30部噴霧した後、減圧下、90℃にて30分撹拌し、十分トルエンを除き、冷却後、75μmの篩で篩分を行うことによりキャリアD1を得た。
キャリアD1の断面を走査型電子顕微鏡(HITACHI社製、S4100)により観察したところ、樹脂層全体の平均膜厚は2.0μmであったことから、表面層の平均厚みが1.0μmであることがわかった。また、形状係数は120、表面性指標は10.0、被覆率は98%であった。
【0132】
<キャリアD2の作製>
キャリアD1のキャリアの作製に用いたフェライト粒子の代わりに、フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径=35μm、比重=4.5、形状係数=125、表面性指標=18)を用いた以外は、キャリアD1と同様に作製し、キャリアD2を得た。
芯材被覆層の平均膜厚は1.0μm、表面層の平均膜厚は1.0μm、キャリアの形状係数は120、キャリアの表面性指標は14.0、被覆率は98%であった。
【0133】
<キャリアD3の作製>
キャリアD1のキャリアの作製に用いたフェライト粒子の代わりに、フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径=35μm、比重=4.5、形状係数=123、表面性指標=10)を用いた以外は、キャリアD1と同様に作製し、キャリアD3を得た。
芯材被覆層の平均膜厚は1.0μm、表面層の平均膜厚は1.0μm、キャリアの形状係数は120、キャリアの表面性指標は6.0、被覆率は98%であった。
【0134】
<キャリアS1の作製>
−樹脂層形成用溶液の調整−
・ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子(分子量=60万、平均粒径=0.15μm、ガラス転移温度Tg=120℃):6部
・カーボンブラック(Regal330R;キャボット社製):6.5部
・樹脂微粒子(架橋メラミン樹脂粒子;平均粒径0.3μm):0.3部
・トルエン100質量部
上記成分をホモジナイザーで10分攪拌/分散して、樹脂層形成用溶液を得た。なお、この溶液を用いて、後述する回分式ニーダーを用いた場合と同様にして被覆率が100%となるように単層コートキャリアを作製し、樹脂層の電気抵抗を測定したところ6.0×1012Ω・cmであった。
【0135】
−樹脂層の形成−
フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径=35μm、比重=4.5、形状係数=125、表面性指標=14)100部と、樹脂層形成用溶液60部とをジャケットを備えた容量50Lの回分式ニーダー内に投入し、減圧下、90℃にて30分撹拌し、十分トルエンを除き、フェライト粒子表面に樹脂層を形成し、冷却後、75μmの篩で篩分を行うことによりキャリアS1を得た。
キャリアS1の断面を走査型電子顕微鏡により観察したところ、樹脂層の平均膜厚は2.0μmであった。また、形状係数は120、表面性指標は10.0、被覆率は98%であった。
【0136】
(現像剤の調製)
以下の表1に示すようにキャリアD1〜D3およびキャリアS1それぞれ100部に対し、トナー1〜4またはトナー5〜8を6部混合し、4色の現像剤を調整した。
【0137】
(評価)
このようにして得られた現像剤を用いて、Fuji Xerox社製DocuColor 1250の改造機により、コントラスト電位(現像バイアス)500Vで、常温・常湿(22℃,55%RH)環境下で100000枚のコピーテストを行い、10枚後(初期)および100000枚後における画像濃度およびキャリアの電気抵抗と、100000枚コピー後における樹脂層の膜剥がれの有無や程度について評価した。結果を以下の表1に示す。
なお、コピーテストにおいてはA4用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製、C2紙)に、黒、シアン、マゼンタ、イエロー各々のベタ画像(3cm×3cm)を形成した。また、コピーテストに際しては、プロセススピードを適宜切り替えて実施した。
【0138】
【表1】

【0139】
なお、表1中に示す画像濃度、キャリアの電気抵抗、100000枚コピー後における樹脂層の膜剥がれの評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0140】
−画像濃度−
黒色ベタ画像部分の初期および100000枚コピー後の画像濃度をXriteにより測定すると共に、初期の画像濃度を100%とした時の100000枚後の画像濃度を以下の基準で評価した。なお画像濃度は4色の平均値とした。
◎:初期の画像濃度を100%とした時の100000枚後の画像濃度が98%以上
○:初期の画像濃度を100%とした時の100000枚後の画像濃度が95%以上98%未満
△:初期の画像濃度を100%とした時の100000枚後の画像濃度が90%以上95%未満
×:初期の画像濃度を100%とした時の100000枚後の画像濃度が90%未満
【0141】
−キャリアの電気抵抗−
キャリアの初期および100000枚コピー後のキャリアの電気抵抗の測定環境は、温度20℃、50%RHで実施した。
測定手順を以下に示す。20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となるキャリアを1〜3mm程度の厚さになるように平坦に載せ、キャリア層を形成する。この上に前記同様の20cm2の電極板を載せキャリア層を挟み込む。キャリア間の空隙をなくすため、キャリア層上に載置した電極板の上に4kgの荷重をかけてからキャリア層の厚み(cm)を測定する。キャリア層上下の両電極は、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、キャリア抵抗(Ω・cm)を計算する。キャリア抵抗の計算式は、下式(6)に示すとおりである。
・式(6) Rc=Ec×20/(Ic−I0)/Lc
上記式(6)中、Rcはキャリア抵抗(Ω・cm)、Ecは印加電圧(V)、Icは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lcはキャリア層の厚み(cm)をそれぞれ表す。また係数の20は、電極板の面積(cm2)を表す。
なお、100000枚後のキャリアの電気抵抗は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液を用いて、トナーを充分除いた後測定した。
【0142】
また、初期のキャリアの電気抵抗を100%とした時の100000枚後のキャリアの電気抵抗を以下の基準で評価した。
◎:初期の電気抵抗の常用対数(log)値を100%とした時の、100000枚後の電気抵抗の常用対数(log)値が95%以上
○:初期の電気抵抗の常用対数(log)値を100%とした時の、100000枚後の電気抵抗の常用対数(log)値が90%以上
△:初期の電気抵抗の常用対数(log)値を100%とした時の、100000枚後の電気抵抗の常用対数(log)値が85%以上
×:初期の電気抵抗の常用対数(log)値を100%とした時の、100000枚後の電気抵抗の常用対数(log)値が85%未満
【0143】
−樹脂層の膜剥がれ−
100000枚コピー後のキャリア100個の表面を走査型電子顕微鏡(HITACHI社製、S4100)により1000倍画像にて樹脂層の膜剥がれの有無や程度を観察し、以下の基準で評価した。
◎:初期のキャリア表面との差が観測されない
○:初期のキャリア表面と比較しキャリア1個あたりの膜剥れの箇所増加平均が3箇所以内
△:初期のキャリア表面と比較しキャリア1個あたりの膜剥れの箇所増加平均が5箇所以内
×:初期のキャリア表面と比較しキャリア1個あたりの膜剥れの箇所増加平均が5箇所を超える

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを含み、前記芯材の表面性指標S1が12以上であり、前記樹脂層の厚み方向における電気抵抗が、前記樹脂層の最表面側から前記芯材側へと高くなることを特徴とする電子写真用キャリア。
【請求項2】
前記表面性指標S1が12〜20の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用キャリア。
【請求項3】
前記芯材を前記樹脂層で被覆した状態の表面性指標S2が5.5〜15の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用キャリア。
【請求項4】
形状係数が125以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真用キャリア。
【請求項5】
前記樹脂層による前記芯材表面の被覆率が95%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真用キャリア。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真用キャリアと、トナーとを含むことを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項7】
前記トナーの体積平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の静電荷像現像剤。
【請求項8】
像担持体表面を帯電する帯電工程と、帯電された前記像担持体表面を露光して潜像を形成する露光工程と、前記潜像と現像剤担持体との間の電位差を利用して、前記潜像が形成された前記像担持体表面に、前記現像剤担持体に担持された現像剤を供給してトナー像を形成する現像工程と、前記像担持体表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体表面に転写された前記トナー像を定着して画像を形成する定着工程とを含む画像形成方法において、
前記現像剤が請求項6または7に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
前記電位差の絶対値が450〜700Vの範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
プロセススピードが300m/s以上であることを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成方法。