説明

電子写真用二成分現像剤

【課題】 高い転写効率を示し、綺麗な印字を行うことを可能とする電子写真用二成分現像剤を提供すること。
【解決手段】 結着樹脂として10,000〜30,000の分子量を有するバイオプラスチックを用いたトナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、前記トナーは、前記キャリアとともに攪拌することにより摩擦帯電されて測定された帯電量分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあり、かつその範囲内における合計飛翔率が80%を超えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプラスチックを用いた電子写真用二成分現像剤に係り、特に、高い転写効率を示す電子写真用二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成は、静電荷像をトナーにより現像して可視化し、現像により得られたトナー像を用紙に転写した後、熱と圧力により定着させることにより行われる。
【0003】
上記トナーは、結着樹脂に着色剤や帯電制御剤などを配合した混合物を溶融し、混練し、粉砕及び分級して所定の粒度分布に調整することにより製造される。
【0004】
このようなトナーの転写性、クリーニング性を改善するため、トナー粒子に疎水性無機微粉末及び疎水性ケイ素化合微粉末を外添したトナーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、球形混合処理槽を使用して複数種の外添剤粒子を多段外添処理することにより、遊離外添材料や逆帯電トナーが少なく、シャープな帯電量分布を有するトナーを得ることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、このような外添を行うと、トナーの帯電量が高くなりすぎて、転写効率が悪くなり、画像に白抜けが起こるという問題がある。
【0006】
一方、従来、結着樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂や、ポリエステル樹脂などの石油由来の樹脂が使用されている。近年、環境への配慮から、廃棄時に環境への負荷の少ない生分解性樹脂、さらには、再生可能資源からつくられるバイオマスプラスチックを、トナー用樹脂として用いる方法が提案されている。有限な資源への配慮と、環境負荷の低減に貢献する、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックのことをバイオプラスチックと呼ぶ。
【0007】
トナーの結着樹脂に、バイオプラスチックの中の1つである、ポリ乳酸を使用したトナーが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。この場合、粉砕トナーでは、高分子量のポリ乳酸を使用すると、製造工程で粉砕が困難になったり、定着時に低温定着が悪化したりするので、低分子量のポリ乳酸を使用する必要がある。
【0008】
しかし、低分子量のポリ乳酸は、末端のカルボキシル基が増えることや、残存するモノマーの影響などで、長期保存性が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−227171号公報
【特許文献2】特開2005−215235号公報
【特許文献3】特開2008−262179号公報
【特許文献4】特開2007−197602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、高い転写効率を示し、綺麗な印字を行うことを可能とする電子写真用二成分現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、結着樹脂として10,000〜30,000の分子量を有するバイオプラスチックを用いたトナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、前記トナーは、前記キャリアとともに攪拌することにより摩擦帯電されて測定された帯電量分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあり、かつその範囲内における合計飛翔率が80%を超えることを特徴とする電子写真用二成分現像剤を提供する。
【0012】
前記バイオプラスチックとしては、ポリ乳酸を用いることが出来る。また、ポリ乳酸としては、加水分解処理されたものを用いることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、高い転写効率を示し、綺麗な印字を行うことを可能とする電子写真用二成分現像剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係る現像剤の帯電量分布を示す特性図。
【図2】実施例2に係る現像剤の帯電量分布を示す特性図。
【図3】比較例1に係る現像剤の帯電量分布を示す特性図。
【図4】比較例3に係る現像剤の帯電量分布を示す特性図。
【図5】比較例4に係る現像剤の帯電量分布を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本発明者らは、二成分現像剤におけるトナーの帯電特性について検討を重ねた結果、所定の狭い範囲に限定した分子量のバイオプラスチックを電子写真用トナーの結着樹脂の主要成分として使用することにより、低い電位でシャープな帯電量分布が得られ、転写性が良好で、綺麗な印字を行うことを可能とする二成分現像剤が得られることを見出した。
【0017】
本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
【0018】
即ち、本発明の一実施形態に係る二成分現像剤は、結着樹脂として10,000〜30,000の分子量を有するバイオプラスチックを用いたトナーと、キャリアとを含み、前記トナーは、前記キャリアとともに攪拌することで摩擦帯電して測定された帯電量分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあり、かつその範囲内における合計飛翔率が80%を超えることを特徴とする。
【0019】
本実施形態に係る電子写真用トナーにおいて、使用するバイオプラスチックの分子量は、10,000〜30,000である。分子量が10,000未満では、帯電量分布のピーク値は−300〜−900Vの範囲内にあるが、その範囲内における合計飛翔率が80%以下であり、転写効率が悪く、特に保存安定性が劣ってしまう。一方、分子量が30,000を超えると、低い電位でシャープな帯電量分布が得られず、転写効率が悪く、特に白抜け画像が発生してしまう。また、分子量が更に高い場合(100,000以上)には、粉砕性が劣り、トナー化が困難となる。
【0020】
本実施形態に係る電子写真用トナーにおいて、結着樹脂として使用されるバイオプラスチックとしては、ポリ乳酸を用いることが出来る。ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合により結合したポリマーであり、近年、環境に優しい生分解性プラスチックとして注目を集めている。即ち、自然界には、エステル結合を切断する酵素(エステラーゼ)が広く分布していることから、ポリ乳酸は環境中でこのような酵素により徐々に分解されて、単量体である乳酸に変換され、最終的には二酸化炭素と水になる。
【0021】
本実施形態で使用されるポリ乳酸の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。原料となるとうもろこし等の澱粉を発酵し、乳酸を得た後、乳酸モノマーから直接脱水縮合する方法や乳酸から環状二量体ラクチドを経て、触媒の存在下で開環重合によって合成する方法がある。なお、乳酸には、光学異性体が存在し、L−乳酸とD−乳酸があるが、ポリ乳酸の製造には、これら単独または混合物のいずれの乳酸を使用しても良い。
【0022】
本実施形態で使用されるポリ乳酸の分子量は、重合時の反応条件を可変することで任意に調整することが可能である。ここで、商業的に販売されているポリ乳酸は、耐熱性向上等のため、より高分子のポリ乳酸が得られる開環重合法で合成されたものであり、その数平均分子量は100,000以上のものが主流である。しかし、本実施形態で使用されるポリ乳酸は、10,000〜30,000と比較的低分子量であって、狭い分子量範囲のポリ乳酸である。なお、ポリ乳酸の加水分解特性を利用し、例えばポリ乳酸を高温高湿環境中に放置して加水分解処理することにより、分子量を低減させたポリ乳酸を得ることが可能である。このように分子量が低いことにより、従来粉砕が困難であったポリ乳酸が、比較的容易に粉砕することが可能となり、ポリ乳酸を高濃度で添加することが可能となるという効果も得られる。
【0023】
本実施形態に係る現像剤のトナーに使用される着色剤としては、従来公知のものを使用できる。例えば、黒の着色剤としては、カーボンブラック、青系の着色剤としては、C.I.Pigment15:3、赤系の着色剤としては、C.I.Pigment57:1、122、269、黄色系の着色剤としては、C.I.Pigment74、180、185等が挙げられる。環境への影響を考慮すると、着色剤単体で安全性が高いものが好ましい。
【0024】
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜10質量%であることが好ましい。また、着色剤は、予め樹脂と着色剤を高濃度に分散したマスターバッチの形として用いても良い。
【0025】
本実施形態に係る現像剤のトナーには、必要に応じて、従来公知の離型剤を添加することができる。そのような離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のオレフィン系ワックスや、カルナウバワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス等の天然ワックス、合成エステルワックス等が挙げられる。
【0026】
低温定着性や高速印字性能を向上させるには、60〜100℃程度と比較的低い融点を有する離型剤が好ましく、具体的には、カルナウバワックスや、合成エステルワックスが好ましい。環境への影響を考慮すると、天然物系のカルナウバワックスがより好ましい。
【0027】
離型剤の配合量は、トナー全体に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る現像剤のトナーには、必要に応じて、従来公知の帯電制御剤を添加することができる。これらの帯電制御剤のうち、例えば、正帯電制御剤としては、4級アンモニウム塩、アミノ基を含有する樹脂等が、負帯電制御剤として、サルチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、カルボキシル基を含有する樹脂などが挙げられる。
【0029】
帯電制御剤の添加量は、トナー全体に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る現像剤のトナーには、バイオプラスチック以外に、必要に応じて、従来公知のトナー用樹脂を添加することができる。そのような樹脂としては、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂があるが、顔料分散性、低温定着性の観点から、トナー用に開発されたポリエステル樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独であっても、2種類以上を混合しても構わない。これらの樹脂の配合量は、環境への影響を考慮すると、トナー全体に対して、0〜50質量%であることが好ましい。
【0031】
その他の材料として、粉砕性、定着性等の改善のため、低分子量の樹脂を添加することができる。ここで、低分子量の樹脂としては、分子量数百〜数千のオリゴマー領域の樹脂であり、粘着付与剤として市販されているロジン及びロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等がある。
【0032】
本実施形態に係る現像剤のトナーには、必要に応じて従来公知の加水分解抑制剤を添加することができる。そのような加水分解抑制剤として、例えば、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物及びオキサゾリン系化合物などが挙げられる。このような加水分解抑制剤は、残存モノマーや分解により生じた水酸基やカルボキシル基末端を封止し、加水分解の連鎖反応を抑制することができる。
【0033】
加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物であるカルボジライトLA−1(日清紡績(株)製)などが市販されている。加水分解抑制剤の添加量は、バイオプラスチックに対し、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
【0034】
本実施形態に係る現像剤のトナーには、必要に応じて従来公知の結晶核剤を添加することができる。そのような結晶核剤として、タルクなどの無機核剤、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、ベンジリデンソルビトール、カルボン酸アミドなどの有機核剤、等が挙げられる。
【0035】
以上説明した電子写真用二成分現像剤は、従来公知の方法により製造することができる。
【0036】
例えば、バイオプラスチックを含有する結着樹脂、着色剤、シリカ、及び必要に応じてその他添加剤を含む原料を混合した後、2軸混練機や加圧ニーダー、オープンロールなどの混練機で混練し、混練物を得る。この混練物を冷却した後、ジェットミル等の粉砕機で粉砕し、風力分級機等で分級することで、トナーを得ることができる。
【0037】
ここで、トナーの粒径は特に限定されないが、通常5〜10μmとなるように調整される。なお、流動性向上、帯電性調整、耐久性向上のため、外添剤を添加することもできる。
【0038】
外添剤としては、無機微粒子が一般的であり、シリカ、チタニア、アルミナ等が挙げられ、そのうち疎水化処理されたシリカ(日本アエロジル(株)、CABOT(株)より市販)が好ましい。無機微粒子の粒径は、1次粒子径として、7〜40nmのものが良く、機能向上のため、2種類以上を混ぜ合わせても良い。
【0039】
以上のようにして得られたトナーにキャリアを混合して、二成分現像剤を得ることが出来る。キャリアとしては、通常の二成分現像剤に用いられるものを使用することが出来る。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例と比較例を示し、本発明についてより具体的に説明する。
【0041】
実施例及び比較例で用いるポリ乳酸の分子量の調整を行った。
【0042】
ポリ乳酸(REVODE101B、海正生物(株)製)を温度80℃、湿度80%RHに設定した恒温恒湿槽内に放置することにより、加水分解処理を行った。処理時間を変更して加水分解処理を行い、分子量の異なるポリ乳酸を得た。
【0043】
下記表1に、加水分解の処理時間及び加水分解されたポリ乳酸の分子量を示す。
【表1】

【0044】
上記表1に示すように、処理時間が増加するに従って、加水分解されたポリ乳酸の分子量は低下することがわかる。
【0045】
なお、分子量は、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量である。なお、測定装置としては、GPC(島津製作所(株)製)及び検出器Rlを用いた。
【0046】
実施例1、2、比較例1〜4
樹脂及び顔料をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)を用いて攪拌した。次いで、二軸押出機(池貝(株)製)により溶融混練し、混練物を冷却延伸し、フェザーミル(ホソカワミクロン(株)製)にて2mm以下のサイズに粉砕して、マスターバッチを得た。
【0047】
得られたマスターバッチ、樹脂、離型剤、及び帯電制御剤をヘンシェルミキサーで攪拌し、二軸押出機で溶融混練し、冷却した後、衝突版式粉砕機(NPK製)を用いて粉砕し、気流式分級機(NPK製)を用いて分級して、平均粒子径9μmの粉体を得た。得られた粉体に外添剤として疎水性シリカを添加し、ヘンシェルミキサーで攪拌して粉体に表面処理を施し、実施例1,2及び比較例1−4のそれぞれについて4種づつ、合計24種のトナーを製造した。それらのトナーの組成を下記表3示す。なお、表中の数値は質量部である。
【0048】
製造したトナーとキャリア(シリコン樹脂コートフェライトキャリア:平均粒径35μm)をナウターミキサーで混合し、二成分現像装置「C2250」(富士ゼロックス(株)製)カラープリンタ毎分25枚(A4横)機にトナーを実装し、通常環境(25℃、50%RH)下で、普通紙 (XEROX-P紙A4サイズ)に印字し、転写性及び画像の評価を行った。それぞれの特性の試験法及び評価基準を以下に示す。
【0049】
<粉砕性>
粉砕・分級工程にて混練粗砕物を粉砕分級した場合の、トナーの母体となる粒子の収率(質量%)により判断する。実状として、収率が65%以上であれば粉砕性が良好であると評価する。また、この時のトナーの体積平均粒径は9μm、微粉として3μm以下の個数割合が5%以下、粗粉として16μm以上の体積割合が3%以下となるように粉砕条件を調整する。
【0050】
(評価基準)
○:収率65%以上
△:収率50%以上、65%未満、
×:収率50%未満
−:トナー化できず。
【0051】
<保存安定性>
温度40℃、湿度90%の恒温槽に30日間放置し、固まり具合で評価する。
【0052】
50ccビーカーに30cc目盛まで(15g程度)トナーを収容し、バネ秤で針金が15mm進入した時の値を読む。
【0053】
(評価基準)
○:0.5N未満
×:0.5N以上
−:トナー化できず。
【0054】
<転写効率>
ベタ画像を転写した後の感光体上のトナーをメンディングテープ(3M(株)製)によりテーピングしてはぎ取り、紙上に貼ったものを、X−Rite(X-Rite(株)製)によりv値、c値、m値、及びy値を測定し、これらの値の一番高い値(ドラム上転写前トナー濃度)をDとし、転写後定着前のトナーの載った紙上にメンディングテープを貼ったものを、X−Riteによりv値、c値、m値、及びy値を測定し、これらの値の一番高い値(転写されたトナーの濃度)をPとし、更に、未使用の紙上に貼ったメンディングテープのX−Rite濃度をEとした時、以下の式で転写効率を計算した。
【0055】
転写効率(%)=(P−E)/(D−E)×100
(評価基準)
○:85%以上
△:75%以上、85%未満
×:75%未満
−:トナー化できず。
【0056】
<白抜け画像>
二成分現像装置「DocuPrint C2250 」(富士ゼロックス(株)製)で画像サンプルを印字し、画像サンプルの白抜けの有無を目視で評価した。
【0057】
(評価基準)
○:白シロ抜けがある。
【0058】
×:白シロ抜けが無い。
【0059】
−:トナー化できず。
【0060】
<帯電量分布>
電界飛翔式帯電量測定装置(ディーアイティー(株)製)を用い、下記の条件で帯電量分布を測定した。
【0061】
トナー濃度:10質量パーセント
順帯電(負帯電)電圧:0〜−3000V
回転数:300rpm
測定時間:各15sec
使用キャリア
芯材:フェライト系、コート:シリコーン系樹脂、
AD:2.0〜2.2g/cm
平均粒子径:34〜36μm、飽和磁化:69emu/g
攪拌条件:トナー濃度比11質量%の現像剤を作製し、蓋付きガラススクリュー管に入れ、小型ボールミル AV-1で20分間攪拌し、摩擦帯電させて、帯電量分布測定を行った。
【0062】
測定は、帯電電圧を0Vから−300Vずつ上昇させて、トナーの飛翔量を測定することにより行った。その結果を下記表2に示す。なお、飛翔率は、下記式により求めた。
【0063】
−300〜−900Vのトナー濃度
=(飛散トナー合計質量/測定サンプル質量)×100
−300〜−900Vにおけるトナーの飛翔率(%)
=(−300〜−900Vのトナー濃度)/測定サンプルのトナー濃度)
×100
【表2】

【0064】
上記表2をグラフ化したのが図1〜図5である。
【0065】
(評価基準)
○:分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあり、その範囲の合計飛翔率が80%を超える。
【0066】
△:分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあり、その範囲の合計飛翔率が60〜80%。
【0067】
×:−300〜−900Vの範囲の合計飛翔率が60%以下、もしくは、分布のピーク値が−900Vを超える。
【0068】
−:トナー化できず。
【0069】
以上の各特性の評価結果を下記表3に示す。
【表3】

【0070】
上記表3に示すように、結着樹脂として分子量10,000〜30,000のポリ乳酸を用いた実施例1及び2に係る現像剤は、いずれも優れた粉砕性、保存安定性、転写効率、白抜け画像、及び帯電量分布を示している。なお、実施例1及び2に係る現像剤の帯電量分布は、図1及び2に示すように、低い電位においてシャープであり、分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあって、その範囲の合計飛翔率が80%を超えていることがわかる。
【0071】
これに対し、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた比較例1に係る現像剤は、白抜け画像が見られ、帯電量分布も劣っている。比較例1に係るトナーの帯電量分布は、図3に示すように、シャープではなく、−300〜−900Vの範囲の合計飛翔率は60%以下である。また、結着樹脂として加水分解処理を行わないポリ乳酸を用いた比較例2に係る現像剤は、トナー化が出来なかった。結着樹脂として分子量38,000のポリ乳酸を用いた比較例3に係る現像剤は、粉砕性及び転写効率に難点があり、特に帯電量分布が劣っていた。比較例3に係る現像剤の帯電量分布は、図4に示すように、シャープではなく、−300〜−900Vの範囲の合計飛翔率は60%以下である。
【0072】
また、結着樹脂として分子量7,000のポリ乳酸を用いた比較例4に係る現像剤は、転写効率及び帯電量分布に難点があり、特に保存安定性が劣っていた。比較例4に係る現像剤の帯電量分布は、図5に示すように、ややシャープであるが、−300〜−900Vの範囲の合計飛翔率は80%以下である。
【0073】
以上のように、結着樹脂を分子量10,000〜30,000のバイオプラスチックにすることによって低い電位で帯電量分布がシャープになり、転写効率が上がり、綺麗な印字を行うことが出来る。帯電量分布が小さくなると、記録媒体に吸着されたトナーが離れやすくなり、転写効率が向上し、残留トナーなどによる転写画像品質の低下がなくなるので、高品質の印字物が得られるのである。また、転写に必要なエネルギーが小さくて済むので、消費電力を低減することができるという効果も得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂として10,000〜30,000の分子量を有するバイオプラスチックを用いたトナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、前記トナーは、前記キャリアとともに攪拌することにより摩擦帯電されて測定された帯電量分布のピーク値が−300〜−900Vの範囲内にあり、かつその範囲内における合計飛翔率が80%を超えることを特徴とする電子写真用二成分現像剤。
【請求項2】
前記バイオプラスチックがポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用二成分現像剤。
【請求項3】
前記ポリ乳酸は、加水分解処理されたものであることを特徴とする請求項2に記載の電子写真用二成分現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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