説明

電子写真用導電性部材

【課題】イオン導電剤の滲み出しが有効に抑制され、かつ、長期の使用によっても電気抵抗の変化が生じにくい電子写真用の導電性部材の提供。
【解決手段】導電性支持体と、層状粘土鉱物を含有している弾性層とを有している電子写真用導電性部材であって、該層状粘土鉱物は、層間に両性イオン界面活性剤が介在しており、
該該両性イオン界面活性剤は、スルホン酸基およびホスホン酸基の何れか一方または両方を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置及びプロセスカートリッジにて使用される導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において電子写真感光体に当接して配置され、当該電子写真感光体を帯電させる帯電ローラの導電層には、当該導電層の導電性の調整のために四級アンモニウム塩等のイオン導電剤が添加されている。しかしながら、かかる帯電ローラと電子写真感光体とを静止状態で長時間に亘って当接させておいた場合、導電層からイオン導電剤が帯電ローラの表面に滲み出し、当接している電子写真感光体の表面に付着してしまう場合がある。このような課題に対して、特許文献1は、層状粘土鉱物を帯電ローラの弾性部材中に添加する手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−092076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る帯電ローラによる上記課題の解決メカニズムは以下のようなものであると推測される。即ち、一般に層状粘土鉱物は、複数枚の板状の結晶粒子(板状粒子)が間隔を空けてスタックした構造を形成している。しかし、板状粒子の表面は負に帯電しているため、板状粒子同士の層間にナトリウムイオン等の金属陽イオンを介在し電気的中性を保っている。この金属陽イオンはイオン交換性が高いため、容易に他の陽イオンとイオン交換される。その結果、長時間の当接放置により移行したイオン導電剤の四級アンモニウムイオンを層状粘土鉱物の層間に吸着させることで、イオン導電剤のブルームやブリード等の染み出しを抑制している。従って、特許文献1に係る帯電ローラにおいては、イオン導電剤が層状粘土鉱物の板状粒子同士の層間に吸着されることでイオン導電剤の表面への滲み出しが抑制されているものと考えられる。しかしながら、本発明者等による特許文献1に係る発明の検討の結果、弾性層の電気抵抗値が使用に伴って徐々に上昇する傾向が認められた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、イオン導電剤の滲み出しが有効に抑制され、かつ、長期の使用によっても電気抵抗の変化が生じにくい電子写真用の導電性部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性支持体と、層状粘土鉱物を含有している弾性層とを有している電子写真用導電性部材であって、該層状粘土鉱物は、層間に両性イオン界面活性剤が介在しており、該両性イオン界面活性剤は、スルホン酸基およびホスホン酸基の何れか一方または両方を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、イオン導電剤の滲み出しが有効に抑制され、かつ、長期の使用によっても電気抵抗の変化の生じにくい電子写真用の導電性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の電子写真用導電性部材の1形態である帯電ローラの概略図である。
【図2】本発明に用いる層間に両性イオン界面活性剤が介在している層状粘土鉱物の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者等は、特許文献1に係る帯電ローラに認められた、使用に伴う導電層の電気抵抗の変化の原因が以下によるものと考えた。即ち、まずイオン伝導に寄与するイオン導電剤が層状粘土鉱物の板状粒子同士の層間に吸着されることで、イオン導電剤としての機能を果たさなくなる。それにより、層状粘土鉱物の板状粒子同士の層間に吸着されるイオン導電剤量が増加するに伴い、帯電ローラの弾性層が高抵抗化するためである。
【0010】
そこで、本発明者らは、層状粘土鉱物の層間に介在しているイオン(例えば、金属イオン)の少なくとも一部を、両性イオン界面活性剤によって置換して得た、層間に両性イオン界面活性剤が介在している層状粘土鉱物を導電剤として用いることを検討した。その結果、長時間の通電によっても導電層の変化が生じにくく、上記の目的を良く達成し得る導電性部材を得ることができることを見出した。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下、電子写真用導電性部材として、帯電部材についてその詳細を記載するが、本発明はその用途を帯電部材のみに限定するものではない。図1に、本発明の帯電部材の概略図を示す。
【0012】
本発明に係る帯電部材は、図1(a)に示すように、導電性支持体としての芯金11と、その外周に設けられた弾性層12とからなることができる。また、弾性層12中に導電剤として層間に両性イオン界面活性剤が介在している層状粘土鉱物(以降「両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物(両性イオン層状鉱物)」ともいう)を含有している。図1(b)に示すように、弾性層12の表面に表面層13を形成してもよい。
【0013】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、電子写真用導電性部材の分野で公知なものから適宜選択して用いることができる。
【0014】
<弾性層>
弾性層は、マトリックスとしてのゴム成分と、該ゴム成分中に分散している導電剤としての両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物とを含む。以下にこれらの材料について説明する。
【0015】
<<両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物>>
図2に示したように、本発明に係る両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物23は、複数の板状粒子からなる層21の層間に両性イオン界面活性剤22が介在している。
【0016】
層状粘土鉱物を構成している層21の各々の表面は一般的に負に帯電しているため、両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物においては、両性イオン界面活性剤中のカチオン性基と層21とがイオン結合している。両性イオン界面活性剤はカチオン性基とアニオン性基とを同一分子内に有するため、両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物においては層間にアニオン性基が介在することになる。そして、両性イオン界面活性剤が層間に介在することで、両性イオン界面活性剤の一端のカチオン性基が層の一方に固定され、他端のアニオン性基はイオン伝導に寄与する。そのため、イオン電動に寄与するイオン性基が層状粘土鉱物の層間に安定して存在することとなり、従来の課題であった導電剤の表面へのブリードを抑制できる。また、イオン性基が層に結合されているために、長時間の通電によっても弾性層が変化しにくい。その結果、導電性の経時的な変化が抑制された導電部材となるものである。
【0017】
以下、層間に両性イオン界面活性剤が介在するイオン伝導性の両性イオン層状鉱物について更に詳細に説明する。
【0018】
まず、両性イオン界面活性剤含有層状鉱物の製造に使用できる層状粘土鉱物について説明する。
かかる層状粘土鉱物は、一般に板状粒子からなる層の集合体である。すなわち、板状粒子からなる層を複数有し、その層間にイオン交換可能なイオン(例えば金属イオン)が介在している。本発明に係る両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物は、このようなイオンの少なくとも一部を、両性イオン界面活性剤とイオン交換することによって製造することができる。
板状粒子とは、アスペクト比が20以上の構造体を意味する。ここで、板状粒子のアスペクト比とは、「板状粒子内に存在し得る線分のうち最大の長さを有する線分(ア)の長さ」/「前記線分(ア)に垂直に板状粒子内に存在し得る線分のうちの最大の長さを有する線分(イ)」とする。なお、線分(ア)の長さおよび線分(イ)の長さは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することが可能であり、線分(イ)の長さは、層状粘土鉱物の化学構造から類推することも可能である。板状粒子からなる層とは、板状粒子が複数枚積層した構造を意味する。板状粒子が層を形成していることの確認は、TEM観察により可能である。かかる板状粒子としては、例えば、金属ケイ酸塩、チタン酸塩、マンガン酸塩、ニオブ酸塩等が挙げられる。
【0019】
このような板状粒子からなる層を有し得る層状粘土鉱物の具体例としては、ケイ酸塩鉱物、リン酸塩鉱物、チタン酸塩鉱物、マンガン酸塩鉱物、及びニオブ酸塩鉱物などが挙げられる。これらの中でも、層状構造を有するケイ酸塩鉱物などが好ましい。層状構造を有するケイ酸塩鉱物の具体例を以下に例示する。
・雲母族(白雲母、黒雲母、鉄雲母、金雲母、白水雲母、ソーダ雲母、シデロフィライト、イーストナイト、ポリリシオ雲母、トリリシオ雲母、リチア雲母、チンワルド雲母、マーガライト、イライト、海縁石)。
・スメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、タルク)。
・カオリン族(カオリナイト、ハロイサイト)、バーミキュライト、マガディアイト、カネマイト、ケニヤアイト等。
また、上記した層状構造を有するケイ酸塩鉱物としては、天然物であっても合成物であってもよい。
【0020】
本発明に係る両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物の層間に介在する両性イオン界面活性剤の量が多いほど両性イオン層状鉱物のイオン導電性能は向上する。そのため、弾性層の体積固有抵抗率を低下させる上では、層間に介在している両性イオン界面活性剤の量が多いものほど好ましい。ここで、両性イオン界面活性剤の導入量については、両性イオン層状鉱物の作製に用いる原料の層状粘土鉱物のイオン交換容量で表わすことができる。そして、イオン交換容量とは、原料の層状粘土鉱物100gで交換可能なイオン量(ミリ当量)であり、イオン交換容量の数値が大きいほど、両性イオン界面活性剤を導入できる量が多くなることを意味する。一般的に、イオン交換容量は、層状粘土鉱物の種類によって決定される。
【0021】
本発明においては、原料の層状粘土鉱物のイオン交換容量が、50ミリ当量/100g以上、特に、70ミリ当量/100gであることが好ましい。イオン交換容量が50ミリ当量/100g以上を満たすことで、本発明の導電性部材を帯電ローラとして使用する際に望ましい電気抵抗値に調整することが容易となる。なお、本発明では、両性イオン層状鉱物を形成する際に、複数の層状粘土鉱物を用いることが可能であり、複数の層状粘土鉱物を併用することにより、全体のイオン交換容量を調整し、50ミリ当量/100g以上を満たしても構わない。イオン交換容量が50ミリ当量/100g以上の層状粘土鉱物として、雲母族、スメクタイト族、バーミキュライト、マガディアイト、カネマイト、ケニヤアイトなどが挙げられる。また、イオン交換容量が大きくなるほど、層状粘土鉱物の吸水性が増大する傾向があるため、環境安定性の観点から、層状粘土鉱物のイオン交換容量は、400ミリ当量/100g以下であることが好ましい。
【0022】
使用した層状粘土鉱物の種類の確認は、例えば、弾性層の透過型電子顕微鏡観察を行い、弾性層中に含まれる層状粘土鉱物の電子線回折のパターンを撮影すれば、回折パターンの結晶構造解析により識別することができる。原料の層状粘土鉱物のイオン交換容量は、日本ベントナイト工業会標準試験方法(JBAS−106−77)に記載されているベントナイトの陽イオン交換容量の測定方法により測定することができる。具体的には、層状粘土鉱物に含有される金属イオンを酢酸アンモニウム溶液を用い浸出させ、浸出した金属イオンを中和滴定することにより測定できる。
【0023】
<<両性イオン界面活性剤>>
次に、両性イオン界面活性剤について説明する。両性イオン界面活性剤22は、イオン交換基Aであるアニオン基と、イオン交換基Bであるカチオン基とを有する界面活性剤であり、両性イオン層状鉱物においては、板状粒子からなる層21の間に存在する。なお、両性イオン界面活性剤22は、全てが同じ両性イオン界面活性剤でなくても良く、両性イオン層状鉱物の層の間には複数種類の両性イオン界面活性剤が存在していても良い。なお、本発明では、スルホン酸基およびホスホン酸基の何れか一方または両方を含む両性イオン界面活性剤を用いる。
【0024】
イオン交換基A(アニオン基)は、イオン解離性を有する官能基であり、一般的には例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基などが挙げられるが、本発明では、イオン交換基Aによりイオン導電性を得る必要がある。よって、前述のイオン交換基Aの中でもスルホン酸基、およびホスホン酸基であることが重要である。イオン交換基B(カチオン基)は、テトラアルキルアンモニウム基等の四級アンモニウム基および四級ホスホニウム基を用いることができる。
【0025】
両性イオン界面活性剤の例としては、一般的に、カルボキシベタイン型、ホスホベタイン型、スルホベタイン型およびヒドロキシスルホベタイン型の両性イオン界面活性剤が挙げられる。中でもイオン伝導性能に優れているヒドロキシスルホベタイン型、スルホベタイン型およびホスホベタイン型から選ばれる少なくとも1つ、さらにはヒドロキシスルホベタイン型およびスルホベタイン型から選ばれる少なくとも1つの両性イオン界面活性剤が好適に用いられる。
【0026】
ヒドロキシスルホベタイン型両性イオン界面活性剤の具体例としては以下のものが挙げられる。
・アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、脂肪酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、およびそれらの誘導体など。
また、スルホベタイン型両性イオン界面活性剤の具体例としては以下のものが挙げられる。
・アルキルスルホベタイン、アルキルジメチルアミノスルホベタイン、脂肪酸アミドプロピルスルホベタイン、およびそれらの誘導体など。
【0027】
<<両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物の製造方法>>
本発明に係る両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物は、以下の方法で製造することができる。
原料としての層状粘土鉱物は一般的にその層間に金属イオンを有している。金属イオンはイオン交換性が高いため金属イオンを別の物質に置換することが可能である。例えば、カチオン交換性の層状粘土鉱物を用いた場合は、カチオン性の界面活性剤を用いることにより、層間に存在する金属陽イオンをカチオン性界面活性剤で置換することができる。ここで、カチオン性界面活性剤の代わりに両性イオン界面活性剤を用いた場合、原料としての層状粘土鉱物中に含まれていた金属イオンは、両性イオン界面活性剤に含まれるカチオン基によって置換される。つまり、カチオン交換性の層状粘土鉱物が、両性イオン界面活性剤中のカチオン基とイオン結合によって結合される。両性イオン界面活性剤はカチオン基と同時にアニオン基を分子構造内に有する。その結果、両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物は、層間にアニオン基を有することとなる。
【0028】
例えば、原料として、カチオン交換性の層状粘土鉱物としてモンモリロナイトを用い、また、両性イオン界面活性剤としてジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタインを用いた場合、以下のようなイオン交換が生じる。すなわち、モンモリロナイトの層間に介在するナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンが、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタインの分子構造中に含まれる4級アンモニウム基とイオン交換される。これにより、層間にジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタインが介在した両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物が得られる。また、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタインは、分子構造中に4級アンモニウム基に加えて、イオン伝導性、特にプロトン伝導性をもつスルホン酸基を有する。そのため、4級アンモニウム基とスルホン酸基とが層間に存在する両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物が得られる。
本発明に係る両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物は、両性イオン界面活性剤の水溶液中に原料たる層状粘土鉱物を分散させ24時間程度攪拌し、当該層状粘土鉱物の層間に介在する金属イオンの少なくとも一部を両性イオン界面活性剤で置換することで得られる。得られた両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物は、濾過や遠心分離によって回収することができる。
又、原料としての層状粘土鉱物の層間の金属イオンを両性界面活性剤に置換する際には、層間に介在する金属イオンをプロトンで置換し、遊離した金属イオンを層状粘土鉱物から取り除いた後に、層間に介在するプロトンを両性イオン界面活性剤で置換するプロセスを経ることが好ましい。これにより、原料の層状粘土鉱物に介在していた金属イオンの残存量を低く抑えることができる。
【0029】
層状粘土鉱物の層間の金属イオンが、両性イオン界面活性剤に置換されていることの確認は、誘導結合プラズマ(ICP)、エックス線光電子分光(ESCA)、二次イオン質量分析(SIMS)等を用いて行うことができる。これらの元素分析を行い、両性イオン層状鉱物中に残存する金属イオン量を定量することで、両性イオン界面活性剤による置換の程度を算出できる。また、層状粘土鉱物の層間の金属イオンが、両性イオン界面活性剤に置換された場合は、両性イオン層状鉱物の層間の間隔が変化し、さらに、その層間隔は、両性イオン界面活性剤によって置換された量によっても異なる。このため、前述の元素分析と同様に、層間隔を測定することにより、置換の程度を算出することができる。層間隔の測定にはエックス線回折(XRD)を用いることで、その変化を容易に確認できる。また、置換前後の質量比から両性イオン界面活性剤による置換の程度を算出することもできる。なお、本発明に用いる両性イオン層状鉱物中の両性イオン界面活性剤量は、以下であることが好ましい。即ち、両性イオン層状鉱物の作製に用いる原料の層状粘土鉱物のイオン交換容量に対して50mol%以上である。
【0030】
本発明においては、あらかじめ両性イオン界面活性剤を層間に導入した両性イオン層状鉱物を導電剤として用いる。しかし、層間に金属イオンを有する未処理の層状粘土鉱物と、カチオン性の両性イオン界面活性剤(イオン導電剤)とを併用し弾性層に添加した場合においても、長時間の通電の結果、カチオン性の界面活性剤が層状粘土鉱物の層間に置換される。しかしながら、あらかじめ界面活性剤を層間に導入した両性イオン層状鉱物と、通電の結果界面活性剤を取り込んだ層状粘土鉱物とでは、置換された量が大きく異なる。通電の結果界面活性剤を取り込んだ場合の界面活性剤量は、原料の層状粘土鉱物のイオン交換容量に対して10mol%以下となるため、前述の分析手段によって両者の識別は可能である。
【0031】
弾性層中の導電剤として用いる両性イオン層状鉱物の含有量は、適宜設定することができる。しかし、電圧印加により電子写真感光体を容易に帯電処理することができる観点から、弾性層の体積固有抵抗率を1×103Ω・cm以上1×109Ω・cm以下の範囲に調整できる含有量であることが好ましい。より具体的には、ベースのポリマー(原料ゴム)100質量部に対して、両性イオン層状鉱物を0.5質量部以上20質量部以下の割合で配合することが好ましい。配合量が0.5質量部以上の場合には、導電剤添加による導電性の付与効果を容易に得ることができ、導電層の電気抵抗を上述の範囲に容易に調整することできる。20質量部以下の場合、弾性部材の硬度が非常に高くなることを容易に防ぐことができる。更に両性イオン層状鉱物の好ましい含有量範囲は1質量部以上10質量部以下である。なお、弾性層における原料ゴムの含有量は、30質量部以上90質量部以下が好ましい。これらの原料の混合方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した混合方法を例示することができる。
【0032】
<ゴム成分>
弾性層のゴム成分としては、特に限定されるものではなく、電子写真用導電性部材の分野において公知のゴムを用いることができる。中でも、イオン伝導性の良好な、極性ポリマーを好適に用いることができる。極性ポリマーの具体例を以下に挙げる。エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物、アクリルゴム及びウレタンゴム等。
【0033】
<他の成分>
弾性層には、本発明の効果を損なわない範囲で、ゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、軟化剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、粘着付与剤、分散剤、発泡剤等を添加することができる。
本発明の導電性弾性部材は、帯電ローラ等の帯電部材以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラ等の搬送部材としても使用可能である。
【0034】
なお、本発明の導電性部材は、以下の工程を含む製造方法により製造することができる。
(1)板状粒子からなる層が積層され、その板状粒子からなる層間にイオンが介在する構造を有する層状粘土鉱物と、スルホン酸基およびホスホン酸基のいずれか一方または両方を含む両性イオン界面活性剤とをそれぞれ用意する工程。
(2)前記イオンの少なくとも一部を、前記両性イオン界面活性剤で置換して両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物を調製する工程。
(3)前記両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物を含む弾性層を導電性支持体上に形成する工程。
【0035】
本発明に係る導電性部材は、例えば、感光体等の被帯電部材に当接して当該被帯電体を帯電させるための帯電部材として好適に用い得る。また、像担持体と、当該像担持体に接触し電圧の印加により前記像担持体を帯電する帯電部材とを有し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されてなるプロセスカートリッジにおいて、当該帯電部材として、本発明に係る導電性部材を好適に用い得る。
【0036】
帯電部材は、その最外部の感光体と接する部分が、トナーや外添剤の付着を防止する目的で、非粘着処理されていることが好ましい。図1は本発明の電子写真用導電性部材の1種である帯電部材の形態を示す概略図である。帯電部材の構成は図1(a)に示すように、芯金11とその外周に設けられた弾性層12とからなる単層構成であっても良く、図1(b)に示すような、弾性層12の外側に表面層13を配置した2層構成であってもよい。更に弾性層12と表面層13との間に中間層や接着層を何層か配置した多層構成であってもよい。なお、本発明に係る導電性部材の電気抵抗の目安としては、1×103Ω・cm以上1×109Ω・cm以下である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
本発明に係る、導電剤としての両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物を以下の手法で作製した。
(合成例1−1)スルホベタイン含有モンモリロナイト
層状粘土鉱物としてモンモリロナイト(月布産:日本粘土学会標準試料)100g(イオン交換容量:119ミリ当量/100g)を1Nの塩酸10l中で24時間攪拌した。反応後、10000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄み液を除去後、再び水中に分散させた。遠心分離による再沈殿と水による洗浄を2回繰り返すことで、モンモリロナイトの層間のナトリウムをプロトンで置換した。続いて、プロトンで置換したモンモリロナイトと、両性イオン界面活性剤として、スルホベタイン型のジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタイン29gを2000mlの水中で24時間攪拌した。攪拌後、10000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄み液を除去後、メタノール中に分散させた。遠心分離による再沈殿とメタノールによる洗浄を2回繰り返すことで、両性イオン層状鉱物として、モンモリロナイトの層間のプロトンをジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタインで置換したスルホベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率を、置換前後の質量比から算出した結果、モンモリロナイトのイオン交換容量に対して92mol%であった。
(合成例1−2)スルホベタイン含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤として、スルホベタイン型のジメチルベンジルアンモニウムプロパンスルホベタイン54gを用いた以外は、合成例1−1に従い、スルホベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して90mol%であった。
(合成例2−1)ヒドロキシスルホベタイン含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤として、ヒドロキシスルホベタイン型のラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン60gを用いた以外は、合成例1−1に従い、ヒドロキシスルホベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して94mol%であった。
(合成例2−2)ヒドロキシスルホベタイン含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤として、ヒドロキシスルホベタイン型のジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムプロパンスルホベタイン32gを用いた以外は、合成例1−1に従い、ヒドロキシスルホベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して94mol%であった。
(合成例3)スルホベタイン含有マガディアイト
層状粘土鉱物として、マガディアイト(イオン交換容量:238ミリ当量/100g)50gを用いた以外は、合成例1−1に従い、スルホベタイン含有マガディアイトを作製した。なお、マガディアイトは、シリカゲル(商品名:ワコーゲルQ63、和光純薬工業製)20g、水酸化ナトリウム3.07gおよび純水111gをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の密閉容器に封入し、150℃で48時間、水熱条件下で反応させて得た。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はマガディアイトのイオン交換容量に対して87mol%であった。
(合成例4)ヒドロキシスルホベタイン含有マガディアイト
両性イオン界面活性剤として、ヒドロキシスルホベタイン型のラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン60gを用いた以外は、合成例3に従い、ヒドロキシスルホベタイン含有マガディアイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はマガディアイトのイオン交換容量に対して88mol%であった。
(合成例5)スルホベタイン含有サポナイト
層状粘土鉱物として、合成サポナイト(クニミネ工業)(イオン交換容量:71ミリ当量/100g)100gを用いた以外は、合成例1−1に従い、スルホベタイン含有サポナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率は合成サポナイトのイオン交換容量に対して97mol%であった。
(合成例6)ヒドロキシスルホベタイン含有サポナイト
両性イオン界面活性剤として、ヒドロキシスルホベタイン型のラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン60gを用いた以外は、合成例5に従い、ヒドロキシスルホベタイン含有サポナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率は合成サポナイトのイオン交換容量に対して95mol%であった。
(合成例7)スルホベタイン含有ハロイサイト
層状粘土鉱物として、ハロイサイト(朝鮮産:日本粘土学会標準試料)(イオン交換容量:30ミリ当量/100g)100gを用いた以外は、合成例1−1に従い、スルホベタイン含有ハロイサイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はハロイサイトのイオン交換容量に対して92mol%であった。
(合成例8)スルホベタイン含有カオリナイト
層状粘土鉱物として、カオリナイト(関白産:日本粘土学会標準試料)(イオン交換容量:15ミリ当量/100g)100gを用いた以外は、合成例1−1に従い、スルホベタイン含有カオリナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はカオリナイトのイオン交換容量に対して90mol%であった。
(合成例9)ホスホベタイン含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤として、ホスホベタイン型のラウリルジメチルアンモニウムプロピルホスホベタイン32gを用いた以外は、合成例1−1に従い、ホスホベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して92mol%であった。
(合成例10)ホスホベタイン含有ハロイサイト
層状粘土鉱物として、ハロイサイト(朝鮮産:日本粘土学会標準試料)(イオン交換容量:30ミリ当量/100g)100gを用いた以外は合成例9に従い、ホスホベタイン含有ハロイサイトを作製した。尚、両性イオン界面活性剤の置換率はハロイサイトのイオン交換容量に対して92mol%であった。
(合成例11)スルホベタイン/ヒドロキシスルホベタイン含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤として、スルホベタイン型のジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホベタイン14.6gと、ヒドロキシスルホベタイン型のジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムプロパンスルホベタイン17.1gを併用した。それ以外は、合成例1−1に従い、スルホベタイン/ヒドロキシスルホベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して92mol%であった。
【0038】
<比較例1および2に用いる導電剤の調製>
下記合成例12〜13に記載した方法により比較例1〜2に用いる導電剤を調製した。
(合成例12)カルボキシベタイン含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤として、カルボキシベタイン型のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン50gを用いた以外は、合成例1−1に従い、カルボキシベタイン含有モンモリロナイトを作製した。なお、両性イオン界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して90mol%であった。
(合成例13)カチオン性界面活性剤含有モンモリロナイト
両性イオン界面活性剤の変わりにカチオン性の界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムクロライド55gを用いた以外は、合成例1−1に従い、カチオン性界面活性剤含有モンモリロナイトを作製した。なお、カチオン性界面活性剤の置換率はモンモリロナイトのイオン交換容量に対して96mol%であった。
【0039】
<実施例1>
(1)弾性ローラの製造:
下記表1に記載の材料をオープンロールにて混合して未加硫ゴム組成物を得た。
【0040】
【表1】

【0041】
次に、クロスヘッド押し出し機に芯金の供給機構、導電性ローラの排出機構を有する装置を用意し、芯金の搬送速度を60mm/sec、クロスヘッドには内径がφ(直径)9.0mmのダイスを取り付け、押出し機とクロスヘッドを80℃に調整した。押し出し機から上記未加硫ゴム組成物を熔融押し出しし、クロスヘッドに供給した外径φ6mm、長さ258mmのステンレス棒の芯金の周囲に未加硫ゴム組成物の層を形成した。次に、170℃の熱風加硫炉中に未加硫ゴム組成物の層で周面が被覆された芯金を投入し、60分間加熱して当該未加硫ゴム組成物の層を架橋させてゴム弾性層とした。その後、ゴム弾性層の長さが228mmになるように端部を切断、除去した。最後に、ゴム弾性層の表面を回転砥石で研磨し、中央部直径8.5mm、中央部から左右90mm端部側の平均直径8.4mmのクラウン形状に成形し、本発明に係る弾性ローラを得た。この弾性ローラの体積抵抗率およびブリード性を以下の方法で評価した。
【0042】
(体積抵抗率の測定)
温度23℃/湿度50%R.H.(相対湿度)環境下にて、金属ドラムに上記弾性ローラを当接(片側500gの両端荷重)させ、芯金と金属ドラムの間に直流200Vの電圧を印加して測定した。
【0043】
(ブリード評価)
上記弾性ローラを温度40℃/湿度95%R.H.環境下にて、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに当接(片側1kgの両端荷重)させ2週間静置し、PETシート表面を光学顕微鏡で観察し、弾性ローラからのブリード物の付着の有無を観察し、下記の基準に基づき評価した。
A:当接部にブリード物が観察されない。
B:当接部の一部にかすかな曇りが観察される。
C:当接部の全面にブリード物が観察される。
D:当接部にブリード物が観察され、目立つもの。
【0044】
(2)帯電ローラの製造:
上記(1)にて製造した弾性ローラに以下の方法により表面層を形成して帯電ローラを製造した。
【0045】
(表層の形成)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液(商品名:プラクセルDC2016、ダイセル化学工業(株)製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が18質量%となるように調整した。上記アクリルポリオール溶液の固形分100質量部に対して、下記表2に示す材料を添加して混合溶液を調製した。
【0046】
【表2】

【0047】
次いで、450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、分散メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散後、樹脂粒子として架橋タイプアクリル粒子「MR50G」(商品名、綜研化学製)を5.44質量部(カプロラクトン変性アクリルポリオール100質量部に対して20質量部相当量)を添加した後、更に30分間分散して表面層形成用塗料を得た。次いで、得られた表面層形成用塗料に、上記(1)で製造した弾性ローラを1回ディッピングした。その後、常温で30分間風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機中で1時間乾燥させ、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機中で1時間乾燥させて、弾性層上に表面層を形成した。なお、ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/s、最終速度が2mm/sになるように調節し、20mm/sから2mm/sの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。こうして得た帯電ローラを下記の画像形成試験に供した。
【0048】
(画像形成試験)
電子写真式のレーザープリンタ(商品名:LBP5400、キヤノン(株)社製)について、記録メディアの出力スピードが150mm/secとなるように改造した。この改造したレーザープリンタの帯電ローラとして上記の帯電ローラを装着した。なお、このレーザープリンタの画像解像度は600dpiである。
【0049】
上記レーザープリンタに間欠的な画像形成動作をさせることにより、40001枚の電子写真画像を出力した。間欠的な画像形成動作とは、画像を2枚出力させた後、電子写真感光ドラムの回転を約3秒停止させ、再び画像形成の動作を開始させるものである。また、このときに出力した画像としては、1枚目〜40000枚目までは、ベタ黒画像の印字濃度を100%としたときに印字濃度が1%となるように紙面上にアルファベットの「E」の文字を印字した画像とし、最後の1枚はハーフトーン画像とした。なお、ここでのハーフトーン画像は電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像とした。そして、40001枚目のハーフトーン画像を目視で観察し、下記の基準にて評価した。
【0050】
更に、上記画像形成試験の後、以下の方法にて2回目の画像形成試験を行った。すなわち、20001枚の電子写真画像を出力し、1枚目〜20000枚目までは、印字濃度1%のE文字画像とし、最後の1枚はハーフトーン画像とした。そして20001枚目の画像形成試験と同様に最後に出力したハーフトーン画像を目視で観察し、下記の基準にて評価した。
A:ハーフトーン画像に横スジ状画像が観察されない。
B:ハーフトーン画像で一部に軽微な横スジ状画像が観察される。
C:ハーフトーン画像で全面に軽微な横スジ状画像が観察される。
D:ハーフトーン画像に横スジ状画像が観察され、目立つもの。
【0051】
<実施例2〜16>
導電剤種および量を下記表3および4に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを調製し、評価した。また、この弾性ローラの弾性層の周面に実施例1と同様にして表面層を形成して帯電ローラを製造し、実施例1と同じ画像形成試験に供した。
【0052】
<実施例17〜21>
原料ゴムをGECOからアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)(商品名:Nipol DN219、日本ゼオン社製)に変え、導電剤種及び量を表5に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを製造し、評価した。また、この弾性ローラの弾性層の周面に実施例1と同様にして表面層を形成して帯電ローラを製造し、実施例1と同じ画像形成試験に供した。
【0053】
<実施例22>
(1)弾性ローラの製造:
外径φ6mm、長さ279mmのステンレス棒の芯金を用いた点と、クロスヘッドに内径がφ12.5mmのダイスを取り付けた点以外は、実施例4と同様にしてゴム弾性層で被覆された芯金を製造した。その後、ゴム弾性層の長さが235mmになるように端部切断、除去した。最後に、ゴム弾性層の表面を直径12.0mmとなるように回転砥石で研磨して弾性ローラを製造した。この弾性ローラについて、実施例1と同じ方法で体積抵抗率の測定およびブリード評価を行なった。
【0054】
(2)現像ローラの製造:
ポリオール(商品名:ニッポラン5033、日本ポリウレタン工業社製)にメチルエチルケトンを加え、固形分が14質量%となるように調整した。前述のポリオール溶液の固形分100質量部に対して、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製)26質量部、イソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)の固形分10質量部を加え混合溶液を調整した。450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散して表面層形成用塗料を得た。得られた表面層形成用塗料中に、上記(1)で製造した弾性ローラを1回ディッピングした。その後、常温で30分間以上風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥させ、更に145℃に設定した熱風循環乾燥機にて30分乾燥させて、弾性層上に表面層を形成した。ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/s、最終速度が2mm/sになるように調節し、20mm/sから2mm/sの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。こうして実施例22に係る現像ローラを得た。こうして得た現像ローラを下記の画像形成試験に供した。
【0055】
(画像形成試験)
実施例1に於いて用いたレーザープリンタ(商品名:LBP5400、キヤノン(株)社製)の改造機に上記の現像ローラとして装着した。そして、現像ローラと感光ドラムとの当接圧力と進入量を、現像ローラ上のトナー被覆量が0.35mg/cm2となるように調整した。又、現像ローラから古いトナーを掻き落とし、現像ローラに新しいトナーを供給する軟質ウレタンスポンジ製のトナー供給ローラを設けた。このレーザプリンタを用いて以下のように電子写真画像を形成した。すなわち、感光ドラムの回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔50ドットの横線を描くようなハーフトーン画像を20000枚連続して出力した。そして、1枚目の画像と20000枚目の画像とを目視で観察し、両者の間での濃度変化の有無または濃度変化の程度および各画像における現像ローラピッチで生じているムラ等の画像不良の有無を以下の基準で評価した。
A:濃度変化がほとんどなく、また、画像不良が見られない。
B:濃度変化がわずかに見られるが、画像不良が見られない。
C:濃度変化が見られ、画像不良がかすかに認められる。
D:顕著な濃度変化がみられ、画像不良が認められる。
【0056】
<実施例23、24>
導電剤種および量を表6に記載したように変えた以外は実施例22と同様にして弾性ローラを製造し、評価した。また、この弾性ローラの弾性層の周面に実施例22と同様にして表面層を形成して現像ローラを製造し、実施例22と同じ画像形成試験に供した。
【0057】
<比較例1>
導電剤として合成例12において調製した、層間にカルボキシベタイン型のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが介在してなる層状粘土鉱物を用いた以外は実施例1と同様にして弾性ローラおよび帯電ローラを製造し、実施例1と同様に評価した。なお、当該層状粘土鉱物の層間には、スルホン基およびホスホン基が存在しないため本発明に係る両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物には該当しない。
【0058】
<比較例2〜6>
導電剤種および量を表7に示した様に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ及び帯電ローラを製造し、実施例1と同様に評価した。
【0059】
<比較例7>
導電剤種及び量を表7に示したように変更した以外は実施例22と同様にして弾性ローラおよび現像ローラを製造し、実施例22と同様に評価した。
【0060】
実施例1〜8の結果を表3に、実施例9〜16の結果を表4に、実施例17〜21の結果を表5に、また、実施例22〜24の結果を表6に示す。更に、比較例1〜7の評価結果を表7に示す。なお、比較例1〜6では、1回目の画像評価結果がCまたはDであったため、2回目の評価は行わなかった。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【符号の説明】
【0066】
11 芯金
12 弾性層
13 表面層
21 板状粒子からなる層
22 両性イオン界面活性剤
23 両性イオン界面活性剤含有層状粘土鉱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、層状粘土鉱物を含有している弾性層とを有している電子写真用導電性部材であって、
該層状粘土鉱物は、層間に両性イオン界面活性剤が介在しており、
該両性イオン界面活性剤は、スルホン酸基およびホスホン酸基の何れか一方または両方を有していることを特徴とする電子写真用導電性部材。
【請求項2】
前記両性イオン界面活性剤が、スルホベタイン型およびヒドロキシスルホベタイン型から選ばれる一方または両方である請求項1に記載の電子写真用導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−22240(P2012−22240A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161572(P2010−161572)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】