説明

電子写真用感光体およびそれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ

【課題】少なくとも2本の導電性ブラシを備えた静電ブラシクリーニング方式の、ブラシ毛先が繰り返し同じ傷をなぞることに起因するスジ状濃度ムラを解決し、長期に渡って良好な画像を維持できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも像担持体と、トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備えた画像形成装置において、前記像担持体が、少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び表面層を有し、該表面層に平均1次粒子径が0.1μm〜1.0μmのフィラー微粒子が含有されていることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ブラシロールを像担持体に摺擦させて像担持体上の残留トナーを除去する静電ブラシクリーニング装置を利用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置では、一般に、像担持体上からトナー像を転写した後にその像担持体表面上に残留する不要なトナーをクリーニング装置によって除去する。このクリーニング装置としては、構成が簡単でかつクリーニング性能も優れていることから、クリーニングブレードにより掻き取るブレード方式のものが広く利用されている。ブレード方式は、構成が簡単でかつクリーニング性能も優れている。像担持体表面を機械的に摺擦する力が強いため、画像流れ(画像ボケ)が発生しにくいが、像担持体表面の摩耗や傷を防止することが大きな課題である。
【0003】
そこで、像担持体表面上のトナーを静電作用によりクリーニングする、磁気ブラシやファーブラシを用いた静電ブラシクリーニング方式が検討されている。
ブレードクリーニング方式に対し、静電ブラシクリーニング方式は、クリーニング維持性が高く、特に高速機において有利である。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置は、一般に、転写工程において像担持体表面上に付着するトナーの極性(正規極性)とは逆極性のバイアスを印加して像担持体表面上のトナーを記録材等の被転写材上に転写する。そのため、転写後の像担持体表面上に残留した転写残トナーの中には、正規極性のままの正規極性トナーと、正規極性とは逆極性に帯電した逆帯電トナーとが存在する。よって、静電クリーニング方式を採用する場合、両極性のトナーを静電的に回収できる構成が有効である。このため、像担持体表面の負に帯電したトナーを静電的に吸引するため正電荷が印加された第一のクリーニングブラシと、像担持体表面の正に帯電したトナーを静電的に吸引するため負電荷が印加された第二のクリーニングブラシとを備えたクリーニング装置が開示されている(例えば、特許文献1の特開平4−330482号公報参照)。
【0005】
このように、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを配置した構成により、像担持体表面上に残留する不要なトナーを充分に除去することができる。
従って、クリーニングブラシが1個のみであったり、クリーニングブラシが2個以上であったとしてもいずれのクリーニングブラシも一方の極性のバイアス電圧しか印加されないならば、像担持体表面に残留する不要なトナーのうち、いずれか一方の極性を有するトナーは、実質的に除去することできず、画質の劣化を招く。
【0006】
しかし、このような構成の静電ブラシクリーニング方式においても、ブレードクリーニング方式と比較して像担持体表面の機械的掻き取り力が低く、帯電器から生じる放電生成物を充分に除去できないことによる画像流れ(画像ボケ)が発生しやすいという課題がある。
また、ブラシクリーニング方式は、一度クリーニング対象物(本発明の場合像担持体)に傷がつくとブラシ繊維がその傷を繰り返しなぞる傾向があることが確認されている。これにより像担持体の傷はスジ状の深い溝となり、ハーフトーン画像の白スジ異常画像が発生しやすくなるという課題がある。
【0007】
これらの課題に対して、2つのクリーニングブラシのうち像担持体回転方向上流側に位置するクリーニングブラシのブラシ繊維1本あたりの先端力が、像担持体回転方向下流側に位置するクリーニングブラシのブラシ繊維1本あたりの先端力よりも大きい先端力で前記感光体に接触するように2つのクリーニングブラシを配置する画像形成装置が開示されている(特許文献2の特開2005−17426号公報参照)。
また、像担持体の回転方向に沿って2つのクリーニングブラシが配置され、トナーが樹脂粒子中に無機微粒子を分散含有させた複合粒子を含むことを特徴とする画像形成方法が開示されている(特許文献3の特開2006−251400号公報参照)。
また、2つのクリーニングブラシのうち像担持体回転方向下流側に位置するクリーニングブラシ(ブラシ2)が、像担持体回転方向上流側に位置するクリーニングブラシ(ブラシ1)よりも剛性の高い材料を用い、このブラシ2における機械的掻き取り力をブラシ1における機械的掻き取り力よりも強くしたことを特徴とする画像形成装置が開示されている(特許文献4の特開2009−36956号公報参照)。
しかし、上記特許文献2〜4のいずれにおいても、ブラシ繊維による像担持体の深いスジ状の傷の発生が抑制されず、ハーフトーン画像の白スジ異常画像が発生しやすくなるという課題が解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、少なくとも2本の導電性ブラシを備えた静電ブラシクリーニング方式の課題である、ブラシ毛先が繰り返し同じ傷をなぞることに起因するスジ状濃度ムラを解決し、長期に渡って良好な画像を維持できる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、少なくとも2本の静電ブラシクリーニングを備えた静電ブラシクリーニング方式の、繰り返し使用時にスジ状濃度ムラが顕著になり著しい画質低下を引き起こす原因を調査した。その結果、ブレードを用いない静電ブラシクリーニングでは、像担持体上の回転方向にひとたび微細な傷が入ると、その傷近傍のブラシ毛先が毎回転ごとにその傷をなぞるようになり、回転方向の傷をどんどん深めて行くことを確認した。この現象を回避するために、ブラシ材質、ブラシ回転速度等さまざまな検討を行ったが、効果のある方法として像担持体表面に無機フィラーを含有させることが有効であると分かった。
【0010】
理由としては次のように考えられる。
ブレードを用いない静電ブラシクリーニング法においては、像担持体周方向に微細な傷が入ると毎回転ごとに傷周辺のブラシ毛先がその傷をなぞるが、像担持体表面にブラシ毛先よりも強度の高い無機フィラーが含有されている場合には、ブラシ毛先が傷をなぞっても、無機フィラーが存在する箇所では傷を深くすることができないため、ブラシ毛先は傷によって規制されず傷から離れブラシ本来が摺擦すべき場所へ戻ることになり、傷の深さ方向の成長が押さえられるためである。
【0011】
すなわち本発明によれば、
(1)少なくとも像担持体と、トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備えた画像形成装置において、前記像担持体が、少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び表面層を有し、該表面層に平均1次粒子径が0.1μm〜1.0μmのフィラー微粒子が含有されていることを特徴とする画像形成装置。
(2)前記表面層にフィラーによる凸部が形成されており、該凸部が
(フィラーの1次粒子径)×0.2≦(凸部高さ)≦(フィラーの1次粒子径)×0.9
(フィラーの1次粒子径)×0.2≦(凸部径)≦(フィラーの1次粒子径)×5
であり、凸部個数が該電子写真感光体の表面層の表面10000μm当たり50〜400個であることを特徴とする前記(1)記載の画像形成装置、が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置によれば、像担持体上に凸部が形成されているため、クリーニングブラシ繊維が同じスジ状傷をなぞることができないため、スジ状傷の成長を抑えることができる。結果、深さ3μm以上のスジ状傷が原因となって発生するハーフトン画像の白スジ画像を抑制することができる。また、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを用いることにより像担持体上に残留する不要なトナーを充分に除去することができ、長期に渡って良好な画像を維持できる。
さらに、像担持体がスジ状摩耗ではなく均一に摩耗するため、像担持体の寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の概略図である。
【図2】本発明にかかる像担持体の一例の断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置に用いるクリーニング装置の一例の概略模式図である。
【図4】本発明の画像形成装置の他の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
図1は本発明の実施形態である2本の静電ブラシクリーニング装置を備えた画像形成装置の一例である。感光体ドラム(1)はメインモータにより回転駆動されて帯電器(2)により均一に帯電された後に書き込み手段により画像露光(3)を受けて静電潜像が形成され、この静電潜像が現像器(4)で現像されてトナー像となる。この現像器(4)は現像バイアス電源から現像バイアスが印加され、小粒径のトナーにより感光体ドラム(1)上の静電潜像を現像する。感光体ドラム(1)上のトナー像は給紙装置から送られてきた転写紙へ転写チャージャ(5)により転写され、この転写紙は分離チャージャ(6)により感光体ドラム(1)から分離されて定着器によりトナー像が定着される。また、感光体ドラム(1)は転写紙分離後にブラシクリーニング装置(7)により残留トナーが除去され、除電器(8)により除電されて再使用可能となる。
【0015】
図1ではブラシクリーニング装置(7)は、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシ(9)が感光体ドラム(1)へトナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシ(10)よりも上流側で接触し、電源(11)から一定の直流電圧が印加されて感光体ドラム(1)上の残留を除去する例である。
【0016】
下流側の第二のクリーニングブラシ(10)はバイアスローラ(14)と接触し、バイアスローラ(14)は駆動機構により第二のクリーニングブラシ(10)と同じ方向へ回転駆動される。バイアスローラ(14)には電源(15)から一定の直流電圧が印加され、バイアスローラ(14)から第二のクリーニングブラシ(10)に電圧が印加される。第二のクリーニングブラシ(10)は感光体ドラム(1)に接触し、感光体ドラム(1)上の残留トナーを除去する。第二のクリーニングブラシ(10)上のトナーはバイアスローラ(14)により除去され、バイアスローラ(14)上のトナーはバイアスブレード(16)により除去されてトナー搬送コイル(13)を通して回収される。
【0017】
本発明にかかわる像担持体は中間転写体、電子写真用感光体であり、特に電子写真用感光体とそのクリーニング装置に適用した場合にスジ状濃度ムラの低減効果が極めて良好になる。
本発明に用いられる電子写真用感光体は、例えば有機系感光体の場合には図2に示すように、導電性支持体(l0)上に有機感光層(11)が積層されたものであり、この感光層(11)は好ましくは電荷発生層(12)と電荷輸送層(13)に機能分離された積層型感光層である。
【0018】
導電性支持体(10)として、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属、導電性物質を単独又は適当なバイング−と共に塗布して導電層を設けた金属、あるいは導電処理したプラスデツクや紙などをドラム状又はシ−ト状に成形したものなど、従来公知のいずれのものも用いることができる。
【0019】
電荷発生層(12)は、アゾ顔料、キノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などの電荷発生物質を、ポリビニルブチラ−ル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリカ−ボネ−トなどの結着性樹脂に分散含有させて形成することができ、また、真空蒸着装置によって真空蒸着膜として形成することもできる。好ましい膜厚は0.1〜3μmである。
【0020】
電荷輸送層(13)はスチリル系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリアリ−ルアミン系化合物、カルバゾ−ル系化合物、オキサゾ−ル系化合物、ピラゾリン系化合物などの電荷輸送物質を、ボリアリレ−ト、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカ−ボネ−トなどの結着剤樹脂に分散含有させて形成することができる。好ましい膜厚は10〜40μmである。また、感光層(11)の構成として電荷発生層(12)を電荷輸送層(13)の上に形成してもよく、さらには感光層(11)は前述の電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一層に含有させた単一層型であってもよい。
【0021】
さらに、導電性支持体(10)と感光層(11)との間には、接着性及びバリヤ−性を向上させるために下引き層などの中間層を設けてもよい。
【0022】
表面層(14)は、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機フィラーと、スチリル系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリアリ−ルアミン系化合物、カルバゾ−ル系化合物、オキサゾ−ル系化合物、ピラゾリン系化合物などの電荷輸送物質とを、ボリアリレ−ト、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカ−ボネ−トなどの結着剤樹脂に分散含有させて形成することができる。好ましい膜厚は3〜5μmである。
本発明の表面層は、更に膜強度を上げるために表面層に架橋型表面層を設けてもよい。
架橋型表面層には、無機フィラー、架橋型電荷輸送物質、架橋型バインダー成分から成る。架橋型電荷輸送物質は、重合あるいは架橋性のモノマーやオリゴマーとしては、アクリロイルオキシ基やスチレン基を有する連鎖重合系の化合物、水酸基やアルコキシシリル基、イソシアネート基を有する逐次重合系の化合物が挙げられる。得られる電子写真特性、汎用性や材料設計、製造安定性の点から正孔輸送性化合物と連鎖重合系材料の組み合わせが好ましく、さらには正孔輸送性基およびアクリロイルオキシ基の両者を分子内に有する化合物を架橋させる系が特に好ましい。
架橋型バインダー成分は、ラジカル重合性官能基を3つ以上有するものが良く、トリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。その他の3官能以上のバインダー成分としては、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートないしジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有させると良い。
架橋型表面層端は熱、光、放射線を用いて架橋硬化できる。架橋性樹脂は3次元に架橋されていることが好ましい。好ましい膜厚は3〜5μmである。
このような表面層を有する感光体の作製のための参考技術としては、例えば特許文献5の特許第4266859号公報記載のものが技術が挙げられる。
【0023】
表面凸形状評価方法は、短波長に光源を持つレーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製VK−9500 測定用レーザー光源波長:408nm,VK−9700測定用レーザー光源波長)、短波長に光源を持つコンフォーカル光学顕微鏡(例えば、レーザーテック社製 OPTELICS H1200 測定波長:436nm, OPTELICS S130 測定波長:405nm)等を用いて評価することができる。感光体の最表面ために、短波長光源で測定することが重要となる。
一例として、キーエンス社製のVK−9500(バイオレットレーザー 408nm)を用いた場合の評価方法を示す。測定対象の電子写真感光体を円筒支持体を固定できるよう加工された置き台に設置し、電子写真感光体ドラム中央の表面観察を行う。次に対物レンズ倍率50倍とし、感光体表面の10000μmを視野観察とし、凸部の測定を行う。次に、VK−9500測定により得られた高さデータ、画像データから以下のように凸部形状、個数の解析を行った。
(1)レーザー顕微鏡から得られた高さデータから、凸部の高さを算出。(2)次に、2次元の表面形状データから、高さを算出した箇所に対して、画像処理ソフト(例えばMediaCybernetics社製ImageProPlus)を用いて凸部個数をカウントする。以上の、評価方法によって、本発明の表面形状を評価することができる。本発明における実施例及び比較例の電子写真感光体の表面形状の評価、すべてこの方法により行った。
【0024】
本発明における凸部は、(フィラーの1次粒子径)×0.2≦(凸部高さ)≦(フィラーの1次粒子径)×0.9、(フィラーの1次粒子径)×0.2≦(凸部径)≦(フィラーの1次粒子径)×5、であり、凸部個数が該電子写真感光体の表面層の表面10000μm当たり50〜400個が好ましい。凸部高さが高く、凸部系が大きく、凸部個数が少ない場合には、フィラーが凝集が起している状態となるため、不均一な表面層となり、スジ状の感光膜削れを引き起こす部分が発生し、本発明の目的達成が困難なときがある。また、凸部個数が少ない場合には、無機フィラー含有量が少ない場合であり、たとえ凝集しなくても、ブラシから膜を保護するには十分ではなく、本発明の目的の静電2段ブラシでの長寿命、高信頼化の達成が困難なときがある。
【0025】
次に、本発明に用いられるクリーニング手段について説明する。本発明に用いられるクリーニング手段は、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシ(第1の導電性ブラシ)と、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシ(第2の導電性ブラシ)を備える。例えば、潜像担持体の回転方向に沿って配置された第1の導電性ブラシと第2の導電性ブラシとを含むものであり、クリーニング時には、第1の導電性ブラシにはトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が、第2の導電性ブラシとにはトナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加されるものである。
【0026】
第一、第二のクリーニングブラシの配置関係については特に限定はなく、逆極性第一ブラシ→同極性第二ブラシでも、同極性第二ブラシ→逆極性第一ブラシの順に配置されてもかまわない。
第一のクリーニングブラシ、第二のクリーニングブラシともに回転方向には特に規定はなく、ドラム回転方向に対して順方向に接触回転しても、逆方向に接触回転してもかまわない。回転方向についてはトナーの掻き取り力とで設定されるべきであるが、感光体の長寿命化の観点からは感光体に対して負荷の小さい順方向接触回転で、かつ感光体とクリーニングブラシの周速差が小さい方が好ましい。
【0027】
なお、第1の導電性ブラシおよび第2の導電性ブラシは、通常、1対(2個)用いられるが、各々2個以上用いてもよい。たとえば、感光体の回転方向に沿って、第1の導電性ブラシ、第2の導電性ブラシ、第1の導電性ブラシ、第2の導電性ブラシの順や、第1の導電性ブラシ、第1の導電性ブラシ、第2の導電性ブラシ、第2の導電性ブラシの順に配置されたように4個であってもよい。
また、少なくとも第1の導電性ブラシと第2の導電性ブラシと各々少なくとも1個以上備えていれば、第1の導電性ブラシの個数と第2の導電性ブラシの個数とは同一でなくてもよい。
【0028】
なお、以下の説明においては、第1の導電性ブラシおよび第2の導電性ブラシが1対(2個)用いられることを前提とし、感光体回転方向上流側に第1の導電性ブラシを配置し、感光体回転方向下流側に第2の導電性ブラシを配置した場合について説明する。
【0029】
図3は本発明で用いられるクリーニング装置の一例を示す概略模式図である。図3に示したクリーニング装置(7)はカートリッジ方式のもので、2つのクリーニングユニットを備えるものである。
すなわち、図3中、ハウジング(700)内には、ロール状ブラシ部材(第1の導電性ブラシ)(701a)、回収ロール部材(702a)及びスクレーパー(703a)からなる第1のクリーニングユニットと、ロール状ブラシ部材(第2の導電性ブラシ)(701b)、回収ロール部材(702b)及びスクレーパー(703b)からなる第2のクリーニングユニットとが収容されている。なお、回収ロール部材(702a、702b)のかわりに、ロール状ブラシ部材に付着したトナーを機械的に叩き落とすフリッキング部材を設置してもよい。
【0030】
ハウジング(700)の感光体(1)に近い側は開口しており、その開口部においてロール状ブラシ部材(701a、701b)の外周面(ブラシ先端で形成される面)がそれぞれ感光体(1)の外周面に当接している。
ロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)は、シャフト(705a)(又は705b)の外周面上に、その中心から外周面方向に複数の繊維を配してロール状としたものである。シャフト(705a、705b)はそれぞれ感光体(1)との接線に平行に配置されており、ロール状ブラシ部材(701a、701b)はシャフト(705a、705b)を中心として回転可能である。また、シャフト(705a、705b)のそれぞれと感光体(1)との距離は、ロール状ブラシ部材(701a、701b)のブラシ先端の感光体(1)に対する食い込み量が所定の値(好ましくは0.5〜2.0mm、より好ましくは0.9〜1.8mm)となるように設定されている。
【0031】
ロール状ブラシ部材(701a、701b)の繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維が挙げられ、ベルトロン(カネボウ社製)、SA−7(東レ社製)、UUナイロン(ユニチカ社製)等の市販品を使用することができる。これらの繊維の太さは、好ましくは30デニール以下(比重1.2g/cmの繊維の場合、径は28μm以下)、より好ましくは20デニール以下(同様に19μm以下)、さらに好ましくは0.5〜10デニール(同様に0.5〜9μm以下)である。また、繊維の密度は、好ましくは20,000本/inch以上、より好ましくは40,000本/inch以上である。
ロール状ブラシ部材の繊維に導電性を付与する方法としては、繊維に導電性粉末やイオン導電材を配合する方法、繊維の内部又は外部に導電層を形成する方法等が挙げられる。
また、導電性が付与された繊維の抵抗値は、繊維単体で10〜10Ω・cmが好ましい。
【0032】
回収ロール部材(702a、702b)は、熱硬化性樹脂を硬化させてロール状に成型し、シャフト(705a、705b)の外周に配したものである。回収ロール部材(702a)(又は702b)は、その外周面がロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)のブラシ先端に当接している。また、シャフト(705a)(又は705b)はシャフト(704a)(又は704b)に平行に配置されており、回収ロール部材(702a)(又は702b)はシャフト(705a)(又は705b)を回転軸として回転可能となっている。
【0033】
回収ロール部材(702a、702b)に用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。中でもフェノール樹脂は、寸法精度が高い、成型が容易である、成形体の表面平滑性に優れる、安価である等の利点を有するので好ましい。
【0034】
回収ロール部材(702a、702b)の曲げ弾性率は700kPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が700kPa未満であると、回収ロール部材に撓みが生じてブラシ部材やブレード部材との当接位置や食い込み量を所定値に保持することが困難となる。
また、曲げ弾性率が700kPa未満の材料を用いて回収ロール部材の肉厚を増加させて剛性を保持しようとすると、成形収縮が大きくなって寸法精度が不十分となり、さらには、重量が増加する、成形時間が増加する、後工程が必要となる等の問題が生じてコストが増大する。なお、ここでいう曲げ弾性率は、JIS K7203に準拠して測定される値をいう。
【0035】
また、回収ロール部材(702a、702b)はそれぞれロール状ブラシ部材(701a、701b)及びスクレーパー(703a、703b)と接触状態にあるため、その動作により回収ロール部材(702a、702b)の外周面は磨耗し得る。
本発明では、回収ロール部材の外周面についてJIS K6902に準拠して磨耗量を測定したとき、当該磨耗量が20mg以下であることが好ましい。これにより、ブラシ部材及びブレード部材の当接圧や食い込み量を大きな値に設定することができ、また、その場合にも長期にわたって安定的なクリーニングを行うことができる。なお、磨耗量が20mgを超えると、回収ロール部材の寿命が不十分となって頻繁な交換が必要となる場合がある。
【0036】
また、回収ロール部材(702a、702b)のロックウェル硬さ(Mスケール)は100以上であることが好ましい。ロックウェル硬さが100以上であると、寸法精度の高い成形が可能となり、また、削れに対して非常に強いロール部材となる。なお、ここでいうロックウェル硬さとは、JIS K7202に準拠して測定される値をいう。
【0037】
スクレーパー(703a、703b)は金属薄板からなるもので、その一端のエッジ部分が回収ロール部材(702a、702b)の外周面に当接するように配置されている。
スクレーパー(703a、703b)の他端はそれぞれハウジング(700)に固定されるが、それらの固定方法は特に制限されず、スクレーパー(703b)のように取付け金具(706)を用いて固定してもよく、スクレーパー(703a)のようにハウジング(700)に直接固定してもよい。
スクレーパー(703a、703b)の材質としては、高耐久性及び低コストの点から、ステンレス又はリン青銅が好ましい。スクレーパー(703a、703b)の厚みは、好ましくは0.02〜2mm、より好ましくは0.05〜1mmである。なお、スクレーパーの代わりにブレード部材を用いてもよい。
【0038】
上記構成を有するクリーニング装置(7)においては、先ず、転写後の感光体(1)上に残存する残留トナーがロール状ブラシ部材(701a、701b)により除去される。
次に、ロール状ブラシ部材(701a、701b)の回転により回収ロール部材(702a、702b)との当接位置まで残留トナーが移送されて回収される。これにより、ロール状ブラシ部材(701a、701b)のブラシ先端は再生され、感光体(1)のクリーニングに繰り返し使用される。
回収ロール部材(702a、702b)に付着した残留トナーは、回収ロール部材(702a、702b)の回転によりスクレーパー(703a、703b)との当接位置まで移送され、スクレーパー(703a、703b)により除去される。これにより、回収ロール部材(702a、702b)の表面も再生され、ロール状ブラシ部材のブラシ先端の再生に繰り返し使用される。
【0039】
なお、本発明においては、トナーや紙粉等の感光体1上の付着物を静電的に吸着除去するために、ロール状ブラシ部材(701a、701b)の双方には互いに極性の異なる電圧が印加されるが、さらに、ロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)と回収ロール部材(702a)(又は702b)との間に電位差のあるクリーニングバイアスを印加する機構とすることが好ましい。
より具体的には、ロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)に所定の電圧を印加することで、その静電誘因力により感光体(1)上の残留トナーをロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)に付着させることができる。そして、回収ロール部材(702a)(又は702b)にロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)への印加電圧よりも絶対値が大きく且つ極性が同じ電圧を印加することで、ロール状ブラシ部材(701a)(又は701b)に付着した残留トナーを回収ロール部材(702a)(又は702b)に付着させることができる。ロール状ブラシ部材と回収ロール部材との電位差(絶対値)は、好ましくは100V以上、より好ましくは200V以上、さらに好ましくは650Vである。
【0040】
ロール状ブラシ部材(701a、701b)へ電圧を印加するには、ブラシ部材の繊維が導電性を有していることが必要である。ここで、当該ブラシ部材の繊維に導電性を付与する方法としては、繊維に導電性粉末やイオン導電材を配合する方法、繊維の内部又は外部に導電層を形成する方法等が挙げられる。また、導電性が付与された繊維の抵抗値は、繊維単体で10〜1011Ω・cmが好ましい。
また、回収ロール部材(702a、702b)の電気抵抗を調整する方法としては、無機フィラー及び/又は有機フィラーを充填する方法等が挙げられる。無機フィラーや有機フィラーを回収ロール部材に充填すると、回収ロール部材の剛性が増加するという利点もある。
【0041】
無機フィラーとしては、錫、鉄、銅、アルミ等の金属粉体や金属繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機フィラーとしては、カーボンブラック、炭素粉、グラファイト、磁性粉、酸化亜鉛、酸化すず、酸化チタン等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属硫化物、ストロンチウム、バリウム、希土類等の所謂ハードフェライト、マグネタイト、銅、亜鉛、ニッケル及びマンガン等のフェライト、またはこれらの表面を必要に応じ導電処理したもの、銅、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、コバルト、バリウム、アルミニウム、錫、リチウム、マグネシウム、シリコン、リン等の異なる金属元素を含んだ酸化物、水酸化物、炭酸塩又は金属化合物等から選ばれ高温中で焼成して得られる金属酸化物の固溶体、所謂複合金属酸化物等やポリアニリンが挙げられる。
【0042】
回収ロール部材(702a、702b)に500Vの電圧を印加したときの抵抗値は、好ましくは1×10〜1×1010Ω・cm、より好ましくは1×10〜1×10Ω・cmである。抵抗値が1×10Ω未満の場合、回収ロール部材への電荷注入が起こり、ブラシ部材が掻き取ったトナーや紙粉等の微粉末の極性が反転するため、これらを電気的に吸着することが困難となる場合がある。他方、回収ロール部材の抵抗値が1×1010Ω・cmを超えると、回収ロール部材に電荷が蓄積される現象(チャージアップ)が起こりやすくなり、この場合もトナーや紙粉等の微粉末の電気的な吸着が困難となる場合がある。
【0043】
なお、図3に示したクリーニング装置はロール状ブラシ部材、回収ロール部材及びブレード部材からなるクリーニングユニットを2個備えるものであり、使用に際しては、双方のロール状ブラシ部材に印加される電圧の極性が互いに逆となるように調整される。
クリーニングユニットの個数が1個のみであると十分なクリーニング性能が得られないため、本発明においては、上述したような1対のクリーニングユニットを備えている必要があるが、必要であれば、更に他のクリーニングユニットを備えていてもよい。
【0044】
なお、転写後の感光体(1)上に残存する残留トナーの極性は、転写電界の影響によりばらつきやすい。すなわち、残留トナーの大半は、現像時に感光体(1)に供給されるトナーの極性と同極性のままで存在するが、その一部は逆極に反転する場合がある。
このような場合、ロール状ブラシ部材(701a)、回収ロール部材(702a)、スクレーパー(703a)からなるクリーニングユニットと、ロール状ブラシ部材(701b)、回収ロール部材(702b)、スクレーパー(703b)からなるクリーニングユニットとのロール状ブラシ部材に印加される電圧を互いに異なるものとすることにより、一方を正規の極性に帯電した残留トナーのクリーニング用、他方を逆極性に帯電した残留トナーのクリーニング用として使用することで、正規の極性に帯電した残留トナー及び逆極性に帯電した残留トナーの双方を効率的に除去することができる。
【0045】
より具体的には、先ず、第1のクリーニングユニットにおいて、ロール状ブラシ部材(701a)と回収ロール部材(702a)とにトナーの正規の極性と異なる極性の電圧を印加して、残留トナーの大半を占める正規の極性のトナーを静電的に吸着除去する。次に第2のクリーニングユニットにおいて、ロール状ブラシ部材(701b)と回収ロール部材(702b)とにトナーの積器の極性と同極性の電圧を印加する事で、逆極性に帯電した残留トナーを静電的に吸着除去することが有効である。
印加する電圧は、第一クリーニングブラシは0〜+1500volt、第二クリーニングブラシは0〜−1500voltの範囲が好ましい。
【0046】
本発明の画像形成装置においては、帯電手段、現像手段、現像剤、転写手段、除電手段については従来のものが使用できる。図4のようなタンデム方式の中間転写ベルト(30)を備えた画像形成装置にも本発明は利用できる。
図4において、画像形成装置(1)は、各色のトナー像を形成するためのトナー像形成ユニット(10)、3本のテンションローラ(31)間に回動可能に張架され、各感光体ドラム(11)から一次転写されたトナー像を二次転写装置(40)の箇所で画像受容媒体(P)に一括して二次転写する中間転写ベルト(30)、定着ローラ(51)と加圧ローラ(52)を有し画像受容媒体(P)上に二次転写されているトナー画像を定着するための定着装置(50)、及びベルトクリーナー(70)から主に構成されている。
トナー像形成ユニット(10)は、各感光体ドラム(11)に、電子写真方式によるカラー画像形成を行なうための各帯電器(12)、カラー画像書込用の露光器(13)、それぞれ現像ローラ(142)を有し各色の現像剤を用いて現像する現像器(141)、一次転写ロール(20)、クリーニング装置(17)、除電器(18)から主に構成されている。図中、符号(60)は用紙トレイ、符号(61)は給紙コロ、符合(511)は定着ローラ(51)中のヒータを表わす。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明について詳細に説明する。また、以下で記載する配合量についての部は質量部を意味する。
【実施例1】
【0048】
リコー製タンデム方式カラー複写機imagio MP C7500 機のクリーニング部を本発明の図4の装置に改造した。
このとき使用したクリーニング装置および感光体の構成を記す。
クリーニング装置は、感光体回転方向上流側に下記第1のクリーニングユニットを配置し、感光体回転方向下流側に下記第2のクリーニングユニットを配置した。
<第1のクリーニングユニット>
(1)ロール状ブラシ部材
ブラシ材質:導電性ナイロン、繊維太さ:約40μm、電気抵抗:1×10Ω、毛足長さ:4mm、繊維密度:50,000本/inch、感光体への食い込み量:約1.0mm、周速:60mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対して逆回転、ブラシ印加バイアス:+200V。
【0049】
<第2のクリーニングユニット>
(1)ロール状ブラシ部材
ブラシ材質:導電性ナイロン、繊維太さ:約40μm、電気抵抗:1×10Ω、毛足長さ:4mm、繊維密度:50,000本/inch、感光体への食い込み量:約1.0mm、周速:60mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対して逆回転、ブラシ印加バイアス:−400V。
【0050】
<感光体>
導電性支持体としての直径60mmのアルミニウムシリンダーに、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液、表面層塗工液を、順次塗布・乾燥し、約3.5μmの下引き層、約0.2umの電荷発生層、約23μmの電荷輸送層、約10μmの表面層を形成し、積層感光体を作製した。なお、各層の塗工後に指触乾燥を行った後、下引き層は130℃、電荷発生層は95℃、電荷輸送層は120℃で各々20分乾燥を行った。表面層は塗布後、指触乾燥を行った後、UVランプ(バルブ種 Hバルブ)(FusionUVシステムズ社製)を用いて、ランプ出力200W/cm、照度:450mW/cm、照射時間:30秒の条件で光照射後、130℃20分の乾燥して表面層を形成した。
【0051】
(下引き層用塗工液)
酸化チタン(CR−EL、平均一次粒径:約0.25μm、石原産業(株)製):50部
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50、固形分:50%、大日本インキ化学工業(株)製):14部
メラミン樹脂(L−145−60、固形分:60%、大日本インキ化学工業(株)製):8部
2−ブタノン:70部
【0052】
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン結晶を下記組成の処方にて、下記に示す条件にて分散を行ない、電荷発生層用塗工液を作製した。用いたチタニルフタロシアニンは、X線回折スペクトル測定により、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニンである。(X線回折スペクトル測定条件:X線管球:Cu,電圧:50kV,電流:30mA,走査速度:2°/分,走査範囲:3°〜40°,時定数:2秒)
【0053】
(液組成)
チタニルフタロシアニン結晶:15部
ポリビニルブチラール(積水化学社製:BX−1):10部
2−ブタノン:280部
【0054】
(液の分散、調整)
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン溶液及び上記顔料を投入し、ローター回転数1200r.p.m.にて30分間分散を行い、電荷発生層用塗工液を作製した。
【0055】
(塗工)
なお、電荷発生層の膜厚は、780nmにおける電荷発生層の透過率が25%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行ない、電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムを比較対照とし、市販の分光光度計(島津製:UV−3100)にて、780nmの透過率を評価した。
【0056】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZポリカーボネート(帝人化成製:パンライトTS−2050):10部
下記構造式の低分子電荷輸送物質:10部
テトラヒドロフラン:80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(信越化学工業製:KF50−1CS):0.2部
【0057】
【化1】

【0058】
[表面層用分散溶液]
下記処方の分散溶液を調整した後、VIBRAX VXR basic(IKA社製)を用い、1500回転/minで2時間分散し作製した。
市販のPSZボール(直径0.5mm):100部
テトラヒドロフラン:20部
無機フィラー:2部
(アルミナ微粒子、平均1次粒子径:0.3μm:住友化学製;AA03)
分散剤:0.2部
(BYK製;BYK−P104)
【0059】
〔表面用塗工液〕
表面層用分散液を用い、下記処方に調整した。
下記構造の電荷輸送物質:8.3部
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:20部
(ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート;日本化薬社製:KAYARAD DPCA−120)
テトラヒドロフラン:100部
無機フィラー:8部
(アルミナ微粒子、平均1次粒子径:0.3μm:住友化学製;AA03)
分散剤:0.8部
(BYK製;BYK−P104)
【0060】
【化2】

【0061】
以上のようにして得られた画像形成装置を用いて以下の条件で10万枚の複写試験を行い、複写試験後に600dpi2by2の中間調画像を確認したところ、画像濃度の均一性、初期とまったく変わらず良好なものであった。
プロセス線速 360mm/sec
現像方式 2成分反転現像方式
トナー帯電極性 マイナス
トナー粒径 6.5μm
帯電電位 −600volt
現像バイアス −450volt
露光後電位 −100volt
【0062】
[比較例1]
実施例1の表面層用塗工液を下記ものに変えたい以外は、実施例1と全く同様にして画像形成装置を構成した。
[表面層用塗工液]
下記構造の電荷輸送物質:8.3部
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:20部
(ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート;日本化薬製:KAYARAD DPCA−120)
テトラヒドロフラン:100部
【0063】
【化3】

【0064】
得られた画像形成装置を用いて10万枚の複写試験を行い複写試験後に600dpi2by2の中間調画像を確認したところ、画像濃度の均一性ははなはだ悪く左右均等ではなく、さらにスジ状の濃度ムラが顕著であった。画像濃度の左右差、スジ状濃度ムラの原因を調べるため、画像形成装置から感光体を取り出しその表面を観察したところ、感光体表面の凹状スジが著しく発生しており、凹深さは1〜2μmも発生しており、左右の濃度差はこの凹深さの差に起因することが分かった。
【実施例2】
【0065】
実施例1の表面層用分散液及び表面層用塗工液を下記ものに変えて、表面層形成後の処理を150℃で30min乾燥のみにした以外は、実施例1と同様にして画像形成装置を構成した。
〔表面層用分散液〕
テトラヒドロフラン:14部
シクロヘキサノン:6部
無機フィラー:2部
(アルミナ微粒子、平均1次粒子径:0.3μm:住友化学製;AA03)
分散剤:0.2部
(BYK製;BYK−P104)
【0066】
〔表面層用塗工液〕
下記構造の電荷輸送物質:8.3部
ビスフェノールZポリカーボネート:10部
(帝人化成製:パンライトTS−2050)
テトラヒドロフラン:70部
シクロヘキサノン:30部
無機フィラー:8部
(アルミナ微粒子、平均1次粒子径:0.3μm:住友化学製:AA03)
分散剤:0.8部
(BYK製;BYK−P104)
【0067】
【化4】

【0068】
[比較例2]
実施例2の表面層用塗工液を下記ものに変えた以外は、実施例2と全く同様にして画像形成装置を構成した。
下記構造の電荷輸送物質:8.3部
ビスフェノールZポリカーボネート:10部
(帝人化成製;パンライトTS−2050)
テトラヒドロフラン:70部
シクロヘキサノン:30部
【0069】
【化5】

【実施例3】
【0070】
表面層用塗工液の無機フィラー量を表1に記載のように変え、表面性を変えた以外は実施例1と同様に画像形成装置を構成し、複写試験を行った。フィラー量、凸部径、凸部高さ、凸部個数、を表1に、複写試験結果を表2にまとめる。
【実施例4】
【0071】
表面層用塗工液の無機フィラー量を表1に記載のように変え、表面性を変えた以外は実施例1と同様に画像形成装置を構成し、複写試験を行った。フィラー量、凸部径、凸部高さ、凸部個数、を表1に、複写試験結果を表2にまとめる。
【実施例5】
【0072】
表面層用塗工液の無機フィラー量を表1に記載のように変え、表面性を変えた以外は実施例1と同様に画像形成装置を構成し、複写試験を行った。フィラー量、凸部径、凸部高さ、凸部個数、を表1に、複写試験結果を表2にまとめる。
【実施例6】
【0073】
表面層用塗工液の無機フィラー量を表1に記載のように変え、表面性を変えた以外は実施例1と同様に画像形成装置を構成し、複写試験を行った。フィラー量、凸部径、凸部高さ、凸部個数、を表1に、複写試験結果を表2にまとめる。
【実施例7】
【0074】
表面層用塗工液の無機フィラー量を表1に記載のように変え、表面性を変えた以外は実施例1と同様に画像形成装置を構成し、複写試験を行った。フィラー量、凸部径、凸部高さ、凸部個数、を表1に、複写試験結果を表2にまとめる。
【実施例8】
【0075】
表面層用塗工液の無機フィラー量を表1に記載のように変え、表面性を変えた以外は実施例1と同様に画像形成装置を構成し、複写試験を行った。フィラー量、凸部径、凸部高さ、凸部個数、を表1に、複写試験結果を表2にまとめる。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
表1、2より、実施例の感光体に無機フィラーによる凸部を形成することにより、左右濃度ムラ、スジ状ムラが良好に抑えられてることが分かる。
【符号の説明】
【0079】
(図1)
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 画像露光
4 現像器
5 転写チャージャ
6 分離チャージャ
7 ブラシクリーニング装置
8 除電器
9 第一のクリーニングブラシ
10 第二のクリーニングブラシ
11 電源
12 フリッカーバー
13 トナー搬送コイル
14 バイアスローラ
15 電源
16 バイアスブレード
(図2)
10 導電性支持体
11 有機感光層
12 電荷発生層
13 電荷輸送層
14 表面層
(図3)
1 感光体
7 クリーニング装置
700 ハウジング
701a ロール状ブラシ部材(第1の導電性ブラシ)
701b ロール状ブラシ部材(第2の導電性ブラシ)(
702a 回収ロール部材
702b 回収ロール部材
703a スクレーパー
703b スクレーパー
704a シャフト
704b シャフト
705a シャフト
705b シャフト
706 取付け金具
(図4)
P 画像受容媒
1 画像形成装置
10 トナー像形成ユニット
11 感光体ドラム
12 帯電器
13 露光器
141 現像器
142 現像ローラー
17 クリーニング装置
18 除電器
20 1次転写ロール
30 中間転写ベルト
31 テンションローラ
40 二次転写装置
50 定着装置
51 定着ローラ
511 ヒータ
52 加圧ローラ
60 用紙トレイ
61 給紙コロ
70 ベルトクリーナ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開平4−330482号公報
【特許文献2】特開2005―17416号公報
【特許文献3】特開2006―251400号公報
【特許文献4】特開2009―36956号公報
【特許文献5】特許第4266859号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも像担持体と、トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備えた画像形成装置において、前記像担持体が、少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び表面層を有し、該表面層に平均1次粒子径が0.1μm〜1.0μmのフィラー微粒子が含有されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記表面層にフィラーによる凸部が形成されており、該凸部が
(フィラーの1次粒子径)×0.2≦(凸部高さ)≦(フィラーの1次粒子径)×0.9
(フィラーの1次粒子径)×0.2≦(凸部径)≦(フィラーの1次粒子径)×5
であり、凸部個数が該電子写真感光体の表面層の表面10000μm当たり50〜400個であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−186352(P2011−186352A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54024(P2010−54024)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】