説明

電子出口窓の組立て方法および電子出口窓組立体

本発明は電子ビーム発生装置の電子出口窓組立体を組立てる方法に関するものであって、この方法は、電子ビーム発生装置のハウジングに箔支持プレート(208)を配置する段階と、窓箔(206)を少なくとも1本の連続した接着線(218)に沿ってフレーム(214)に接着して、出口窓副組立体(216)を作り上げる段階と、出口窓副組立体(216)をハウジングに取付ける段階とを含んで成る。本発明はまた、電子出口窓組立体にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子出口窓の組立て方法および電子出口窓組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム発生装置は、食品パッケージや医療機器を殺菌するように物品の殺菌に使用されたり、例えばインクを凝固させることに使用される。一般に、これらの装置は箔と、その箔を支持するプレートとにより形成される電子出口窓を含んでいる。銅製であることが好ましい支持プレートは複数の開口を有しており、作動時に電子は電子ビーム発生装置からそれらの開口を通して出て行く。箔は約6〜10μmの厚さを有しており、チタンで作ることができる。この厚さ故に電子の大部分は箔を通過することができる。
【0003】
本発明は基本的に、ウェブ材の照射に使用する電子ビーム発生装置、すなわち比較的大きな電子出口窓を有する電子ビーム発生装置に関するのである。
【0004】
上述形式の電子ビーム装置の製造に現在使用されている方法または工程を、図1および図2を参照して以下に説明する。
【0005】
電子ビーム装置100は2個の部品、すなわち電子ビームを発生して成形する組立体103を収容し保護するチューブ体102と、窓箔106や、電子ビーム装置100の内部が真空圧になったときに窓箔106が押し潰されてしまうのを防止する箔支持プレート108などの電子ビームの出口部分に関する構成要素を担持するフランジ104とを含んで構成されている。さらに、電子ビーム装置の作動時には、箔は過度の熱作用を受ける。そのために、箔支持プレート108は使用時に、箔106に発生した熱を装置の箔から伝導により逃がすという重要な目的も果たすのである。箔の温度をほどほどに維持することで、箔106の十分に長い寿命を達成することができる。
【0006】
製造において、銅製の支持プレート108はフランジ104に接着されるのであり、この段階ではフランジ104はチューブ体102から分離されている。フランジ104は一般にステンレス鋼で作られる。その後、窓箔106が箔支持プレート108の全周沿いに伸長する線に沿って支持プレート108に対して接着され、また、余った窓箔106は切除される。その後、例えば伝熱に関する特性を改善するために、箔106に被覆を施すことができる。この被覆は、電子ビーム装置100の外部に面する箔106の表面に施される。フランジ104はその後チューブ体102に取付けられて密封ハウジングが形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者は、電子ビーム装置が例えば酸素を含む雰囲気の中で使用される場合には、このような従来のやり方は適切でないことを発見した。このような環境の下では、加速された電子は、強い侵食性物質であるオゾンを発生させることになる。オゾンは銅製の箔支持材を腐食し、このことはハウジングの密封状態および電子ビーム発生装置の機能を危うくする。さらに加えて、食品パッケージを製造するパッケージ機械では、パッケージの製造開始前の機械部品の殺菌に過酸化水素がしばしば使用されている。従って、銅製の箔支持材は十分に過酸化水素に触れることになる。過酸化水素は銅製の支持材に対する強い腐食性物質でもあるのだ。
【0008】
最も影響を受けやすい箇所は、箔106との接着線における銅製部分である。ここでは、たった数十分の一ミリメートルほどの接着線の下側に腐食が生じるだけで上述した悪い結果をもたらすのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子ビーム発生装置の電子出口窓を組立てる方法を提供することによってこの問題の解決を図ることを目的とするものであり、この組立て方法とは、電子ビーム発生装置のハウジングに箔支持プレートを配置する段階と、窓箔を少なくとも1本の連続した接着線に沿ってフレームに接着して、これにより出口窓副組立体を作り上げる段階と、出口窓副組立体をハウジングに取付ける段階とを含んで成る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法には幾つかの利点がある。1つは腐食防止フレームに対する箔の取付けが、このフレームは次にハウジングのフランジの内部に接着されるのであるが、密封状態を形成することであり、このことが銅製の箔支持プレートを、腐食や密封性崩壊をもたらす腐食性物質の影響から保護することになる。
【0011】
この組立て方法の他の利点は、箔が内面に、すなわち電子ビーム発生装置の内部に面する表面に被覆を施せることである。磨り減るという観点から、例えばプラズマから保護される内面に被覆を有することは有利である。さらに、たとえ箔に被覆を施さなければならないとしても、箔とフレームとを含んで成る副組立体を被覆機械内に配置するだけでよい。
【0012】
さらなる利点は、構成要素のコスト面および箔が傷を生じ易い点に関係する。電子ビーム装置の組立ては、幾つかの重要な段階、すなわち1つは例えばフレームに対する箔の接着、また1つは任意であるが箔の被覆という段階を伴う複雑な製造方法で行われる。さらに、チューブ体およびフランジは、箔に比べてコストの高い構成要素である。箔をフレームに取付けることにより、また、製造工程の後段で前記フレームを電子ビーム発生装置の残る部分に対して取付けることにより、たとえ箔に関係する何れかの段階で失敗したとしても、経費節約が達せられる。
【0013】
この方法の好ましい実施例は、従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明はまた、電子ビーム発生装置の電子出口窓組立体をも含む。この電子出口窓組立体は箔支持プレートおよび窓箔を含んで構成されており、前記箔支持プレートは電子ビーム発生装置のハウジングに配置され、前記窓箔は少なくとも1本の連続した接着線に沿ってフレームに接着されて出口窓副組立体を形成し、また、前記出口窓副組立体がハウジングに取付けられる。
【0015】
この方法に関して説明した利点は、電子出口窓組立体にも同様に適用される。
【0016】
電子出口窓組立体の好ましい実施例は、従属請求項に記載されている。
【0017】
本発明の例示の実施例を、以下に添付図面を参照して非常に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術による電子ビーム装置の概略等角横断面図である。
【図2】分解図で示した図1の装置の概略部分横断面図である。
【図3】図2の横断面図と対比するための、本発明の第1の実施例による装置の分解図で示した概略部分横断面図である。
【図4】図3に類似の、組立て状態で示す概略部分横断面図である。
【図5】本発明の実施例による被覆を備えた箔の部分横断面図である。
【実施例1】
【0019】
従来技術による解決策を含んだ図1および図2については既に記載した。本発明の例示実施例において、図3および図4に示すように、箔支持プレート208は電子ビーム発生装置のハウジングに配置される。箔支持プレート208は銅製であることが好ましく、ハウジングのフランジ204に接着される。可能な1つの接着技術はろう付けである。箔支持プレート208はフランジ204の開口212の縁210に接着される。
【0020】
これとは別の段階、または同じ製造段階において、前記フランジ204は電子ビーム発生装置の前記ハウジングを形成するチューブ体202に対してプラズマ溶接される。図示していない別の実施例では、チューブ体202およびフランジ204は一体部品として作られる。
【0021】
別の段階において、窓箔206をフレーム214に接着して出口窓副組立体216を形成する。用語「フレーム」は、本明細書においては中央穴を有する形状の部材と解釈するべきである。箔206はチタン製であることが好ましく、前記フレーム214はステンレス鋼製であることが好ましい。可能な接着技術は、例えばレーザー溶接、電子ビーム溶接、ろう付け、超音波溶接、拡散接合および膠接着である。例示実施例では、箔206は図4に部分的に示される連続した接着線218に沿ってフレーム214に拡散接合される。接着線218は、電子ビーム装置の内部の真空圧を維持できるように連続されている。この用語「連続」は、本明細書においては接着線が無端すなわち閉結されていると定義するために使用される。さらに、接着線218はフレーム214の穴形状に沿って、フレーム214の全周の内側を伸長していなければならない。接着線218はフレーム214の全周から距離を隔てた位置を伸長していることが好ましい。さらに、少なくとも1本の接着線218が形成される。従って、2本や3本の接着線を形成することができる。例えば、内側接着線および外側接着線をフレーム214に形成することができ、また、それらの2本の接着線を例えば互いに同心的に形成することができる。
【0022】
この段階において、箔206は任意であるが被覆することができ、また、被覆工程においては出口窓組立体216のみ処理されればよい。この実施例によれば、箔206は両面に被覆し得るが、内面、すなわち組立てられた電子ビーム発生装置の内部に向けられる側の箔206の表面を被覆されることが好ましい。
【0023】
図5において、箔206は206Cで指示される被覆を有して示されている。
【0024】
被覆206Cは、熱伝導率を高めて箔206の寿命を延長させることを目的にして作用する。
【0025】
説明したように、本発明で得られる利点は箔206に被覆206Cを備えることができるという可能性にある。電子ビーム装置の作動時に電子出口窓の外側に発生するプラズマは、電子出口窓の被覆を磨り減らすことになる。しかしながら、箔206の内面では、被覆206Cはプラズマの作用から保護されることになる。従って、本発明によれば、幾つかの熱伝導性の被覆材料、例えばDLC(ダイヤモンド類似炭素)、銅、アルミニュウム、黒鉛、銀および金の中から選択することができる。
【0026】
その後、フレーム214、従って出口窓副組立体216はハウジングのフランジ204の部分に取付けることができる。
【0027】
出口窓副組立体216をハウジングに取付ける段階は、箔支持プレート208が電子ビーム発生装置の外気に露出されないことを保証するために出口窓副組立体216が箔支持プレート208の保護を果たすように行われる。図3および図4に見られるように、フレーム214は、ハウジングのフランジ204で一部を形成されるとともに箔支持プレート208で一部を形成される凹部220の中に配置される。図示していない代替実施例において、フレームを受入れるためのこの凹部は、ハウジングのみに形成されることができる。
【0028】
出口窓副組立体216のフレーム214は、ハウジングに対して溶接されることが好ましい。
【0029】
図4では、出口窓副組立体216をハウジングに取付けた後、箔支持プレート208の一部分たりとも外気に露出されることはなく、これにより銅製の箔支持プレート208の腐食は防止されることが見て取れる。
【0030】
これらの利点以外にも、出口窓副組立体216をフランジ204に溶接する前に、出口窓副組立体216を別々に試験して、接着部分における、接着線218に沿う、箔206とフレーム214との間におけるそれぞれの気密シールを確認することができる。それらのシールに欠陥があるとしたならば、コストや製造時間に多大の影響を与えることなく簡単に出口窓副組立体216を廃棄することができる。フレーム214はこの例示実施例では3mmの肉厚を有し、ステンレス鋼で作られる。
【0031】
この本発明の解決方法によれば、窓箔206が僅かな処理段階においてしか露出されないというさらに他の利点がある。箔206の肉厚を考慮すれば、箔206に対する、またはその付近におけるいかなる処理作業も箔206の完全性を危険にさらしかねないということを理解しなければならないのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム発生装置の電子出口窓を組立てる方法であって、
電子ビーム発生装置のハウジングに箔支持プレート(208)を配置する段階と、
窓箔(206)を少なくとも1本の連続した接着線(218)に沿ってフレーム(214)に接着して、出口窓副組立体(216)を作り上げる段階と、
出口窓副組立体(216)をハウジングに取付ける段階とを含んで成る電子出口窓の組立て方法。
【請求項2】
箔支持プレート(208)が電子ビーム発生装置の外気に露出されないことを保証するために前記出口窓副組立体(216)が箔支持プレート(208)の保護を果たすように、出口窓副組立体(216)をハウジングに取付ける段階を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
出口窓副組立体(216)の取付けが、ハウジングにより一部を形成されるとともに箔支持プレート(208)により一部を形成される凹部(220)の中にフレーム(214)を配置する段階を含んで成る請求項1から請求項2までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記窓箔(206)をフレーム(214)に拡散接合する段階を含んで成る請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
出口窓副組立体(216)をハウジングに取付ける前に、窓箔(206)に被覆(206C)を備える段階を含んで成る請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
組立てられた電子ビーム発生装置の内部へ向いた窓箔(206)の表面に前記被覆(206C)を備える段階を含んで成る請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
出口窓副組立体(216)を取付ける段階がハウジングに対するフレーム(214)の溶接を含んで成る請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
箔支持プレートおよび窓箔を含んで構成される電子ビーム発生装置の電子出口窓組立体であって、
前記箔支持プレート(208)が電子ビーム発生装置のハウジングに配置され、
前記窓箔(206)が少なくとも1本の連続した取付け線(218)に沿ってフレーム(208)に接着されて出口窓副組立体(216)を形成し、
前記出口窓副組立体(216)がハウジングに取付けられた電子出口窓組立体。
【請求項9】
箔支持プレート(208)が電子ビーム発生装置の外気に露出されないことを保証するために前記出口窓副組立体(216)が箔支持プレート(208)の保護を果たすように、出口窓副組立体(216)がハウジングに取付けられた請求項8に記載の電子出口窓組立体。
【請求項10】
出口窓副組立体(216)のフレーム(214)が、ハウジングにより一部を形成されるとともに箔支持プレート(208)により一部を形成される凹部(220)の中に配置された請求項8から請求項9までのいずれか一項に記載の電子出口窓組立体。
【請求項11】
窓箔(206)がフレーム(214)に拡散接合された請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の電子出口窓組立体。
【請求項12】
出口窓副組立体(216)をハウジングに取付ける前に、窓箔(206)に被覆(206C)が備えられた請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の電子出口窓組立体。
【請求項13】
前記被覆(206C)が、電子ビーム発生装置の内部へ向いた窓箔(206)の表面に備えられた請求項12に記載の電子出口窓組立体。
【請求項14】
フレーム(214)がハウジングに対して溶接された請求項8から請求項13までのいずれか一項に記載の電子出口窓組立体。
【請求項15】
フレーム(214)がステンレス鋼で作られた請求項8から請求項14までのいずれか一項に記載の電子出口窓組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519947(P2012−519947A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553330(P2011−553330)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001376
【国際公開番号】WO2010/102757
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)