説明

電子制御装置

【課題】電子制御装置のケースの内外を呼吸させるための通気孔のフィルタ固定構造を簡素化すると共に、高圧洗浄の噴流等によるフィルタ剥がれを抑える。
【解決手段】電子部品やコネクタ等を実装したプリント配線基板10を収容するケース20に内外を呼吸させるための通気孔22cを備えた電子制御装置において、通気孔22cを覆うように複数個の微小穴61が設けられ、接着部を有するシート60にフィルタ膜50を貼付け、シート60によりフィルタ膜50を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン等の制御を行う電子制御装置に係り、特に、電子制御装置の内部と外部との間の通気性を確保するためのフィルタの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のエンジン等の制御を行う電子制御装置は、電子制御装置としての機能を達成する電子回路を構成する電子部品を実装したプリント配線基板を防水シールが施されたケースに収容して構成される。ケースには、内部と外部との間の通気性を得るため通気孔が設けられる。
【0003】
特に、電子制御装置がエンジンルームに設けられる場合、電子制御装置に水がかかるおそれがあり、このような場合には、水が電子制御装置のケース内部に浸入するのを防ぐため、通気孔部分にはフィルタが取り付けられている。
【0004】
従来、このような電子制御装置のフィルタ固定構造では、ケースの一部領域に穴部または筒部を設け、フィルタ膜を樹脂溶着によって固定し、スナップフィット等によりケースに固定されたキャップによりフィルタ膜を保護している。
【0005】
また、別の固定構造として、特許文献1に記載される技術が知られている。特許文献1に記載される技術では、ケースの内部と外部を連通する複数個の通気孔を覆うようにケースの外側に取付けられたフィルタ膜によりフィルタが構成される。
【0006】
さらに、別の技術として、特許文献2に記載されるように、ねじの挿通孔が形成された環状のフィルタ押さえ板でフィルタ膜を押さえ付け、フィルタ押さえ板をねじによりケースにねじ止めした構造が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−243829号公報
【特許文献2】特開2000−138469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、フィルタ膜を樹脂溶着したフィルタ固定構造では、フィルタのハウジングに樹脂を用いる必要があり、材料が制限される。また、キャップやスナップフィットを設けるため、形状が複雑となり、成形性が悪くなる。さらに、フィルタ膜がOリング等をはさんで間接的に固定されるため、気密性を確保するのが困難である。
【0009】
特許文献1に開示された技術では、フィルタ膜をケースに固定するため、フィルタ膜自体に接着部が設けられている。接着部には、高圧洗浄の噴流等によるフィルタ膜の剥がれに耐える接着力が必要とされる。このため接着部は、ある程度大きくする必要があり、取付けに際して、フィルタ膜を精度良く固定することが難しくなる。また、フィルタ膜が直接外部に曝されているため、外的な負荷によって、傷つきやすいという問題を有する。外壁を設けているが、一時的なしのぎにしかならず、フィルタ膜を十分に保護することができない。さらに、外壁の周りには水や泥等が停留することも想定される。
【0010】
特許文献2に開示された技術では、フィルタ押さえ板が必要とされ、さらにこれをねじにより固定しなければならず、部品点数が多くなると共に、組立に要する時間が長くなり、コスト高となるといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した従来技術における問題を解決するために、電子部品を実装したプリント配線基板と、このプリント配線基板を収容し、その内外で通気させるための通気孔を備えたケースと、通気孔を覆うフィルタ膜とを有する電子制御装置において、フィルタ膜が、通気孔に対応する位置に通気孔を覆うように設けられた複数の微小穴を備えたシートによりケースに固定されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
電子制御装置のケースの内外を呼吸させるための通気孔のフィルタ固定構造を簡素化可能となり、また、高圧洗浄の噴流等によるフィルタ剥がれを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において適宜変更し得るものである。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る電子制御装置の一実施例における構成を示す分解斜視図である。
【0015】
電子制御装置1は、例えば、自動車のエンジンルームに搭載され、エンジン、各種アクチュエータ等、自動車の各種機械的要素の少なくとも一部を制御するための制御装置である。電子制御装置1は、各種制御を実現するための電子回路を構成する電子部品が実装されたプリント配線基板10と、プリント配線基板10を収容するケース20とを有して構成される。なお、図では、コネクタの端子は図示が省略されている。
【0016】
プリント配線基板10には、外部との信号のやり取りのためのコネクタ12が接続されている。コネクタ12は、ケース20の開口部に取り付けられており、車両搭載時にはハーネスが接続される。
【0017】
ケース20は、ベースとなるケース本体21と、ケース本体21の開口部を封止し、ケース本体21と共にプリント配線基板10を収容する空間を形成するカバー22とを含んで構成される。ケース本体21の開口縁部21aとカバー22の周縁部22bの内面との間、及び、コネクタ下面部12cとケース本体21の前壁部上面21bとの間は、シール材31により防水されている。また、カバー22のコネクタ用開口部内面22aとコネクタの側面部12b,上面部12aとの間は、シール材30により防水されている。ケース本体21とカバー22とは、ねじ40により固定されている。
【0018】
カバー22の上面には、通気孔22cが設けられており、電子制御装置1の内部と外部との間の通気が確保されている。通気孔22cには、カバー22の外部側からフィルタ膜50が被せられ、フィルタ膜50は、複数の微小穴部61が設けられた粘着性のあるシート60によりカバー22に固定されている。カバー22は、プレス,鋳造,樹脂による射出成形等により成形される。
【0019】
図2は、本発明に係る電子制御装置のフィルタ保護構造を示す要部断面図である。
【0020】
フィルタ膜50は、通気孔22cを覆うように配置され、その上からシート60により被われ、カバー22に固定される。フィルタ膜50は、高圧洗浄等の噴流に耐えられる程度の耐水性強度を持っている。フィルタ膜50は、通気性を有するが、水などの通過を阻害する材質の部材で構成される。
【0021】
シート60に設けられた微小穴部61は、通気孔22cの位置にくるように設けられており、通気孔22c,フィルタ膜50、及び微小穴部61を介して電子制御装置1の内部と外部との間で空気の出入りが許容される。一方で、通気孔22cは、フィルタ膜50で被われているため、外部から電子制御装置1の内部に水が浸入することはない。
【0022】
シート60としては、ネームプレート等のトレイサビリティや電子制御装置1の識別に利用されるシートを代用することが可能である。このように、ネームプレート等のシートを用いることで、部品点数の削減を図ることができる。この場合、微小穴部61は、シート60に記載されている文字が判別でき、且つケース20の内外を呼吸できる程度の大きさの複数の微小穴で構成されることが望ましい。
【0023】
図3は、電子制御装置のフィルタ固定構造を示す要部上面図である。
【0024】
図3(a)は、円形形状の通気孔22cに対して、フィルタ膜50として、一辺の長さが、通気孔22cの直径よりも大である矩形形状のフィルタ膜50aを取り付けた固定構造を示している。図3(b)は、円形形状の通気孔22cに対して、フィルタ膜50として、通気孔22cの半径よりも大きい半径を持つ円形形状のフィルタ膜50bを取り付けた固定構造を示している。
【0025】
このように、フィルタ膜50の形状は、カバー22の通気穴22cの形状より大きく、且つ貼付けるシート60の形状より小さい形状で成形できれば、矩形、あるいは円形でもよく、さらには、長円形状の円形形状等任意の形状をしていてもよい。
【0026】
図3(c)は、長円形状の通気孔22c′に対して、通気孔22c′よりも大きい長円形状のフィルタ膜50cを取り付けたフィルタ膜の固定構造を示している。このように、フィルタ膜の形状は、ケース20のサイズや内外を連通する通気孔の形状に自由にあわせることができる。
【0027】
このように、フィルタ膜の形状を、ケースや通気孔形状に合わせたフィルタ固定構造とすると共に、それを覆う接着性のあるシートの形状に自由度を持たせることで、防水性,信頼性の向上を確保できる。
【0028】
以上説明した実施例によれば、複数個の微小穴部が設けられた粘着性を有したシートにフィルタ膜を貼付けてカバーに設けられた通気孔を塞ぐことで、簡素化された形状で耐水性を得ることができる。また、フィルタ膜が直接外部に曝されることがなく、シートによりフィルタ膜が保護される。さらに、高圧洗浄の噴流等によるフィルタの剥がれを抑えることができ、防水性,信頼性の向上を確保することができる。
【実施例2】
【0029】
図4は、本発明に係る電子制御装置の第2の実施例におけるフィルタ固定構造を示す要部断面図である。なお、本実施例においては、以下で説明するフィルタ固定構造以外の構成については、第1の実施例と同一の構成を有するものとして説明する。
【0030】
本実施例では、カバー22の外面側,通気孔22cの周縁にフィルタ膜50のカバー
22への当接面とほぼ同一形状で、フィルタ膜50の厚みよりも深い凹部22dが設けられる。フィルタ膜50は、この凹部22dに嵌め込まれるような形で取り付けられる。
【0031】
このような固定構造とすることで、製造時におけるフィルタ膜50の位置決めを容易なものとし、自動機による貼付け精度良く行うことが可能となる。
【実施例3】
【0032】
図5は、本発明に係る電子制御装置の第3の実施例におけるフィルタ固定構造を示す要部断面図である。なお、本実施例においても、以下で説明するフィルタ固定構造以外の構成については、第1の実施例と同一の構成を有するものとして説明する。
【0033】
本実施例では、カバー22の外面側,フィルタ膜50を固定するシート60の貼り付け箇所にシート60の形状に合わせた凹部22eが設けられる。この凹部22e内部,通気孔22cの周縁に、第2の実施例と同様に、フィルタ膜50のカバー22への当接面とほぼ同一形状で、フィルタ膜50の厚みよりも深い凹部22dが設けられる。フィルタ膜
50は、凹部22dに嵌め込まれるような形で取り付けられ、凹部22eに貼り付けられるシート60で覆われる。
【0034】
このような固定構造とすることで、高圧洗浄の噴流等がシート60の端部60aに直接かかることを防ぐことができ、高圧洗浄等によるフィルタ膜50の剥がれを抑えることができ、より、防水性,信頼性の向上を確保できる。
【0035】
以上説明した実施例によれば、電子制御装置のカバー等に設けられる通気孔のフィルタ固定構造を簡素化し、部品点数の削減を図ることが可能となる。また、高圧洗浄の噴流等によるフィルタ剥がれを抑えるとともに、フィルタ膜が直接外部に曝されないため、フィルタ膜を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例に係る電子制御装置の分解斜視図である。
【図2】第1の実施例におけるフィルタ固定構造を示す要部断面図である。
【図3】電子制御装置のフィルタ固定構造の要部上面図である。
【図4】第2の実施例におけるフィルタ固定構造を示す要部断面図である。
【図5】第3の実施例におけるフィルタ固定構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…電子制御装置、10…プリント配線基板、12…コネクタ、20…ケース、21…ケース本体、22…カバー、22c…通気孔、22d…凹部(フィルタ取り付け用)、
22e…凹部(シート貼り付け用)、30,31…シール材、50…フィルタ膜、60…シート、61…微小穴部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装したプリント配線基板と、該プリント配線基板を収容し、その内外で通気させるための通気孔を備えたケースと、前記通気孔を覆うフィルタ膜とを有する電子制御装置において、前記フィルタ膜が、前記通気孔に対応する位置に前記通気孔を覆うように設けられた複数の微小穴を備えたシート状の部材により前記ケースに固定されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記フィルタ膜は、前記通気孔より大きく、且つ前記シート状の部材より小さいことを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記通気孔の周縁に前記フィルタ膜の厚みよりも深い凹部が設けられ、前記フィルタ膜が、前記凹部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記シート状の部材は、前記通気孔の周縁に前記シート状の部材と略同一形状に設けられた凹部に貼り付けられることを特徴とする請求項1乃至3記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−55981(P2008−55981A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232984(P2006−232984)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】