説明

電子制御装置

【課題】 待機状態において計測される時刻の信頼性を向上させる。
【解決手段】 所定の期間が経過する時に待機状態から一時的な起動状態に戻る電子制御装置10は、前記一時的な起動状態及び定常的な起動状態において第1の周波数を有する第1のクロックを生成する生成部132と、前記定常的な起動状態及び前記待機状態において第2の周波数を有する第2のクロックを生成する生成部131と、前記定常的な起動状態及び前記一時的な起動状態の少なくとも一方において前記第1のクロックに基づく前記第2のクロックの校正係数を求める校正部231と、前記定常的な起動状態及び前記一時的な起動状態の少なくとも一方において、前記校正係数が第1の所定値以上である場合、前記第2の周波数を高める設定部232と、前記待機状態において前記第2のクロックで前記校正係数に基づく前記所定の期間の経過を計測する計測部233と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置等に関係する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載されるECU(electronic control unit)は、イグニッションがオフされた後、定常的な起動状態から待機状態(スリープ状態)に移行することができる。待機状態において、ECU等の電子制御装置は、機能の一部又は殆どを停止して消費電流又は消費電力を低減することができるが、電子制御装置の用途によっては、待機状態に移行後に所定の期間が経過する時、一時的な起動状態に戻る必要がある。
【0003】
特許文献1は、車両用電子制御装置10を開示し、定常的な起動状態及び一時的な起動状態において、水晶発振子15によるメインクロック(クロック信号fx)が生成される一方、待機状態において、水晶発振子15によるメインクロックが生成されない。待機状態において、メインクロックの代わりに、CR発振回路16によるサブクロック(クロック信号fcc)が生成されている。待機状態において、サブクロックを用いることで、車両用電子制御装置10は、さらに消費電流又は消費電力を低減することができる。しかしながら、CR発振回路16によるサブクロックの精度は、水晶発振子15によるメインクロックの精度よりも低いので、待機状態においてサブクロックで所定の期間を計測すると、一時的な起動状態に戻る時刻に誤差が生じてしまう。そこで、特許文献1は、一時的な起動状態において、メインクロックに基づくサブクロックの校正係数を求め、待機状態において、サブクロックで校正係数に基づく所定の期間を計測することで、一時的な起動状態に戻る時刻を正確に決定することができる。
【0004】
具体的には、特許文献1の表1及び段落[0080]−[0083]、[0076]で示されるように、現在の一時的な起動状態においてメインクロックに基づくサブクロックの校正係数が800/850(=0.9411764705882353≒−6[%])である場合、サブクロックで8ビットタイマレジスタ137を281250回×0.9411764705882353≒264705回フルとすることで、次回の一時的な起動状態に戻る時刻(待機状態に移行後、1時間が経過する時刻)を正確に決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−226165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のCR発振回路16のコンデンサの経年劣化によりコンデンサの容量が減少する場合など、校正係数が大きい時、一時的な起動状態に戻る時刻の信頼性が低下してしまう。また、CR発振回路16が故障している時でも、サブクロックが生成できる限り、待機状態において、サブクロックで校正係数に基づく所定の期間を計測することで、一時的な起動状態に戻る時刻を決定してしまう。
【0007】
本発明の1つの目的は、待機状態において計測される時刻の信頼性を向上可能な電子制御装置等を提供することである。本発明の他の目的は、以下に述べる複数の形態及び好ましい実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う複数の形態のうちの幾つかの形態を例示する。
【0009】
本発明に従う第1の形態は、所定の期間が経過する時に待機状態から一時的な起動状態に戻る電子制御装置であって、
前記一時的な起動状態及び定常的な起動状態において、第1の周波数を有する第1のクロックを生成する第1の生成部と、
前記定常的な起動状態及び前記待機状態において、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のクロックを生成する第2の生成部と、
前記定常的な起動状態及び前記一時的な起動状態の少なくとも一方において、前記第1のクロックに基づく前記第2のクロックの校正係数を求める校正部と、
前記定常的な起動状態及び前記一時的な起動状態の少なくとも一方において、前記校正係数が第1の所定値以上である場合、前記第2の周波数を高める設定部と、
前記待機状態において、前記第2のクロックで前記校正係数に基づく前記所定の期間の経過を計測する計測部と、
を備えることを特徴とする電子制御装置に関係する。
【0010】
校正係数が第1の所定値以上である場合、設定部は、第1の周波数よりも低い第2の周波数を高めることができる。即ち、第2の生成部が劣化していると推定できる時、設定部は、第1の周波数よりも低い第2の周波数を高めることができる。一般に、周波数が高くなれば、クロックの精度が高くなり、消費電流又は消費電力も増加してしまう。しかしながら、第2の生成部が劣化していると推定できる時には、第2の周波数を高めることにより、一時的な起動状態に戻る時刻の信頼性を向上させることができる。
【0011】
第1の形態において、前記校正係数が前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値以上である場合、前記第1の生成部は、前記待機状態において前記第1のクロックの生成を継続してもよく、且つ、前記計測部は、前記待機状態において、前記第1のクロックで前記所定の期間の経過を計測してもよい。
【0012】
校正係数が第2の所定値以上である場合、計測部は、待機状態において、第2のクロックの代わりに第1のクロックで所定の期間の経過を計測することができる。即ち、第2の生成部が故障していると推定できる時、高い周波数又は精度を有する第1のクロックを用いることで、一時的な起動状態に戻る時刻の信頼性をさらに向上させることができる。
【0013】
第1の形態において、前記校正部は、前記校正係数として、校正作業を複数回実施した校正係数の平均値又は中央値を算出してもよい。
【0014】
第2のクロックの精度が悪い場合、校正係数にばらつきがある。従って、平均値又は中央値を用いることにより、第2の生成部が劣化又は故障していることを確実に推定することができる。言い換えれば、実際には第2の生成部が劣化又は故障していない場合に、不要に第2の周波数を高めること、又は不要に第1のクロックを用いることを抑制することができる。
【0015】
第1の形態において、電子制御装置は、
前記第2の生成部の近傍の温度を検出する検出部を
さらに備えてもよく、
前記校正部は、前記検出部で検出した前記温度又は前記温度を含む温度範囲に対応付けて前記校正係数を求めてもよい。
【0016】
第2のクロックの精度は、第2の生成部の近傍の温度にも依存するので、校正部は、検出部で検出した温度毎に又は温度範囲毎に校正係数を求めることができる。校正係数を適切に求めることで、一時的な起動状態に戻る時刻の信頼性をさらに向上させることができる。
【0017】
第1の形態において、
前記校正部は、前記検出部で検出した前記温度を含む前記温度範囲に対応付けて前記校正係数を求めてもよく、
前記温度範囲は、第1の温度範囲と第2の温度範囲とを有してもよく、
前記校正係数は、前記第1の温度範囲に対応する第1の校正係数と、前記第2の温度範囲に対応する第2の校正係数と、を有してもよく、
前記第1の校正係数が前記第1の所定値以上であり、且つ前記第2の校正係数も前記第1の所定値以上である場合、前記設定部は、前記第2の周波数を高めてもよい。
【0018】
第2のクロックの精度が悪い場合、校正係数にばらつきがあり、そのばらつきが温度に依存する。従って、複数の温度範囲で、校正係数が第1の所定値以上であるか否かを判断することにより、第2の生成部が劣化していることを確実に推定することができる。言い換えれば、実際には第2の生成部が劣化していない場合に、不要に第2の周波数を高めることを抑制することができる。
【0019】
第1の形態において、
電子制御装置は、
前記校正係数が前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値以上である場合、前記待機状態において、車両内に搭載されて計時機能を有する他の電子制御装置であって前記計時機能により前記所定の期間の経過を表す起動信号を生成する他の電子制御装置から、前記起動信号を前記車両内のネットワークを介して受信する受信部を
さらに備えてもよく、
電子制御装置は、
前記起動信号に基づき前記一時的な起動状態に戻ってもよい。
【0020】
第2の周波数を高めても、校正係数が第2の所定値以上である場合、受信部は、待機状態において、第2のクロック又は計測部の代わりに起動信号を受信することができる。即ち、第2の生成部が故障していると推定できる時、他の電子制御装置の計時機能で所定の期間の経過を計測することで、一時的な起動状態に戻る時刻の信頼性をさらに向上させることができる。
【0021】
当業者は、本発明に従う複数の形態の各々が、本発明の精神を逸脱することなく、変形され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従う電子制御装置の概略構成図を示す。
【図2】図1の電子制御装置の動作状態の概略説明図を示す。
【図3】図3(A)、図3(B)、図3(C)及び図3(D)は、校正係数の算出例を示す。
【図4】校正係数の評価例を示す。
【図5】図1の電子制御装置の動作例を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に説明する好ましい実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0024】
1.電子制御装置
1.1.構成
図1は、本発明に従う電子制御装置の概略構成図を示す。図1の例において、電子制御装置10は、例えばマイコン13を備えることができ、マイコン13を用いて待機状態から一時的な起動状態に移行し、又は一時的な起動状態から待機状態に移行することができる。電子制御装置10は、例えば自動車等の車両(図示せず)に搭載することができ、バッテリ電源2から電力の供給を受けることができる。例えばイグニッションキー(図示せず)によってイグニッションスイッチ3がオンされる場合、電子制御装置10は、イグニッションのオンを検出し、バッテリ電源2から電力で定常的な起動状態を維持し、様々な処理を実行することができる。
【0025】
イグニッションスイッチ3がオフされる場合、電子制御装置10は、イグニッションのオフを検出し、イグニッションのオンが再び検出されるまで、様々な処理を停止して、待機する。待機状態を維持する時、電子制御装置10は、一時的な起動状態の準備を実行する。即ち、電子制御装置10は、待機状態において、待機状態に移行後、所定の期間を計測する。所定の期間が経過する時、電子制御装置10は、一時的な起動状態に戻る。一時的な起動状態において、電子制御装置10は、様々な処理のうちの所定の処理だけを実行し、再び待機状態に戻る。このように、イグニッションのオフが検出された後、イグニッションのオンが再び検出されるまで、待機状態から一時的な起動状態への移行及び一時的な起動状態から待機状態への移行が繰り返される。イグニッションのオンが再び検出される場合、電子制御装置10は、定常的な起動状態を維持し、再び様々な処理を実行することができる。
【0026】
図1の例において、電子制御装置10は、バッテリ端子+B及び供給部11を備えることができ、供給部11は、バッテリ端子+Bを介してバッテリ電源2の電圧をマイコン13又は電子制御装置10で使用可能な一定電圧に変換する。マイコン13又はマイコン13の内部は、供給部11からの一定電圧(及び接地電圧GND)で動作する。
【0027】
図1の例において、電子制御装置10は、イグニッション端子IG及び比較部12を備えることができ、比較部12は、イグニッション端子IGでの電圧と基準電圧Vrefとを比較する。イグニッションスイッチ3がオンされる場合、比較部12は、イグニッション端子IG及びイグニッションスイッチ3を介して、バッテリ電源2の電圧が基準電圧Vrefを超えることを検出し、イグニッションがオンされることを表す信号をマイコン13又はマイコン13の内部に送る。イグニッションスイッチ3がオフされる場合、比較部12は、イグニッションがオフされることを表す信号をマイコン13又はマイコン13の内部に送る。
【0028】
図1の例において、電子制御装置10は、第1の生成部132、第2の生成部131、校正部231、設定部232及び計測部233を備える。また、電子制御装置10は、実行部234、検出部235、記憶部236及び通信部237を備えることができる。図1の例において、マイコン13は、これらの機能を備えるが、これらの機能の一部がマイコン13の外部に設けられてもよい。また、マイコン13は、ASIC(application specific integrated circuit)等のロジックICで構成してもよい。マイコン13の具体的な動作については後述する。
【0029】
図1の例において、電子制御装置10は、水晶発振子15及びRC発振素子(CR発振回路)を備えることができる。水晶発振子15は、セラミック発振子等の相対的に高い精度を有する発振素子で構成してもよい。RC発振素子は、図1の例において、抵抗R及びコンデンサCを有し、周波数を変更可能な相対的に低い精度を有する発振素子で構成してもよい。また、電子制御装置10は、端子Tを備えることができ、図示されない機能を備えることができる。電子制御装置10は、図1の例に限定されず、必要に応じて、機能の一部を省略し、又は図示されない機能を追加することができる。水晶発振子15、RC発振素子及び端子Tの具体的な使用方法については後述する。
【0030】
1.2.動作状態
図2は、図1の電子制御装置10の動作状態の概略説明図を示す。図2の例において、時刻T1でイグニッションがオンされ、定常的な起動状態が開始される。その後、時刻T2でイグニッションがオフされ、待機状態が開始される。その後、時刻T11で再びイグニッションがオンされるまで、時刻T3,T5,T7,T9で、一時的な起動状態が開始される。一時的な起動状態は、時刻T4,T6,T8,T10で終了する。時刻T12でイグニッションが再びオフされ、その後、待機状態が開始される。
【0031】
電子制御装置10が例えばFI(fuel injection)ECUである場合、定常的な起動状態(例えば時刻T1からT2まで)において、電子制御装置10は、端子T又は他の端子(図示せず)を介して車両のエンジンへの燃料噴射量を制御することができ、一時的な起動状態(例えば時刻T3からT4まで)において、電子制御装置10は、例えば端子Tを介して燃料漏れの有無を検査することができる。電子制御装置10が例えば乗員検知ECUである場合、定常的な起動状態において、電子制御装置10は、乗員状態の判断結果をエアバックECUに送ることができ、一時的な起動状態において、電子制御装置10は、荷重センサのゼロ点補正を行うことができる。
【0032】
電子制御装置10は、待機状態(例えば時刻T2からT3まで)において、所定の期間を計測するタイマカウント機能を実行することができる。所定の期間が経過する時、電子制御装置10は、一時的な起動状態に戻る。
【0033】
1.3.定常的な起動状態
定常的な起動状態において、図1の第1の生成部132は、水晶発振子15を用いて第1の周波数を有する第1のクロックを生成し、電子制御装置10又はマイコン13は、第1のクロックに基づき動作し、様々な処理を実行することができる。様々な処理の1例として、電子制御装置10又はマイコン13は、校正処理及び設定処理を実行するとともに、例えば燃料噴射量制御処理を実行する。なお、校正処理及び設定処理は、定常的な起動状態だけにおいて実行してもよく、定常的な起動状態及び一時的な起動状態の双方において実行してもよく、場合により、一次的な起動状態だけにおいて実行してもよい。
【0034】
1.3.1.校正処理
少なくとも校正処理において、図1の第2の生成部131は、抵抗R及びコンデンサCを用いて第2の周波数を有する第2のクロックを生成する。校正処理において、校正部231は、第1のクロック及び第2のクロックを入力し、第1のクロックに基づく第2のクロックの校正係数を求める。具体的には、校正部231は、第1のクロック及び第2のクロックの双方で同時に校正期間を計測し、第1のクロックでの第1の計測時間と第2のクロックでの第2の計測時間とを比較し、校正係数を求めることができる。図3(A)、図3(B)、図3(C)及び図3(D)は、校正係数の算出例を示し、以下に算出方法を説明する。
【0035】
校正期間が例えば第1のクロックを基準に決定される場合、校正期間は、第1のクロックでの第1の計測時間と一致する。例えば、第1のクロックで校正期間(例えば10[msec]=第1の計測時間)を計測した時、第2のクロックでの第2の計測時間が例えば10[msec]である場合、校正係数は、10/10(=1.000000000000000=0[%])を示し、これは第2のクロックを校正する必要がないことを意味する(図3(A)参照)。
【0036】
代替的に、例えば、第1のクロックで校正期間(例えば10[msec]=第1の計測時間)を計測した時、第2のクロックでの第2の計測時間が例えば11[msec]である場合、校正係数は、11/10(=1.100000000000000=10[%])を示し、これは第2のクロックが進んでいることを意味する(図3(B)参照)。校正係数が1.10である場合、第2のクロックで所定の期間(例えば1[h])を1.10倍した期間を計測する時、実際には、所定の期間(例えば1[h])が計測される。
【0037】
校正期間が例えば第2のクロックを基準に決定される場合、校正期間は、第2のクロックでの第2の計測時間と一致する。例えば、第2のクロックで校正期間(例えば10[msec]=第2の計測時間)を計測した時、第1のクロックでの第1の計測時間が例えば9[msec]である場合、校正係数は、10/9(=1.111111111111111≒11[%])を示し、これは第2のクロックが進んでいることを意味する(図3(C)参照)。校正係数が1.11である場合、第2のクロックで所定の期間(例えば1[h])を1.11倍した期間を計測する時、実際には、所定の期間(例えば1[h])が計測される。
【0038】
また、代替的に、例えば、第2のクロックで校正期間(例えば10[msec]=第2の計測時間)を計測した時、第1のクロックでの第1の計測時間が例えば11[msec]である場合、校正係数は、10/11(=0.9090909090909091≒−9[%])を示し、これは第2のクロックが遅れていることを意味する(図3(D)参照)。校正係数が0.91である場合、第2のクロックで所定の期間(例えば1[h])を0.91倍した期間を計測する時、実際には、所定の期間(例えば1[h])が計測される。
【0039】
校正部231は、例えば第1のカウンタ及び第2のカウンタで構成され、第1のカウンタは、第1のクロックでカウントアップされ、第2のカウンタは、第2のクロックでカウントアップされる。第1の周波数が例えば20[MHz]であり、第1の計測時間が例えば10[msec]である場合、第2のカウンタのカウント値は、20×1,000,000,000/(10×1,000)=2,000,000を示す。
【0040】
第2の周波数が例えば10[KHz]であり、第2の計測時間が例えば10[msec]である場合、第2のカウンタのカウント値は、10×1,000,000/(10×1,000)=1,000を示す。
【0041】
例えば、第1のクロック(例えば20[MHz])で第1のカウンタのカウント値が2,000,000(校正期間=10[msec])を示した時、第2のクロック(例えば10[KHz])での第2のカウンタのカウント値が例えば1,000である場合、校正係数は、(1,000/10×1,000)/(2,000,000/20×1,000,000,000)(=1.000000000000000=0[%])を示し、これは第2のクロックを校正する必要がないことを意味する(図3(A)参照)。
【0042】
代替的に、例えば、第1のクロック(例えば20[MHz])で第1のカウンタのカウント値が2,000,000(校正期間=10[msec])を示した時、第2のクロック(例えば10[KHz])での第2のカウンタのカウント値が例えば1,100である場合、校正係数は、(1,100/10×1,000)/(2,000,000/20×1,000,000,000)(=1.100000000000000=10[%])を示し、これは第2のクロックが進んでいることを意味する(図3(B)参照)。校正係数が1.10である場合、第2のクロック(例えば10[KHz])で第2のカウンタのカウント値が(10×1,000×3,600)(=所定の期間=1[h])を1.10倍した値を示す時、実際には、所定の期間(例えば1[h])が計測される。
【0043】
代替的に、例えば、第2のクロック(例えば10[KHz])で第2のカウンタのカウント値が1,000(校正期間=10[msec])を示した時、第1のクロック(例えば20[MHz])での第1のカウンタのカウント値が例えば1,800,000である場合、校正係数は、(1,000/10×1,000)/(1,800,000/20×1,000,000,000)(=1.111111111111111≒11[%])を示し、これは第2のクロックが進んでいることを意味する(図3(C)参照)。校正係数が1.11である場合、第2のクロック(例えば10[KHz])で第2のカウンタのカウント値が(10×1,000×3,600)(=所定の期間=1[h])を1.11倍した値を示す時、実際には、所定の期間(例えば1[h])が計測される。
【0044】
また、代替的に、例えば、第2のクロック(例えば10[KHz])で第2のカウンタのカウント値が1,000(校正期間=10[msec])を示した時、第1のクロック(例えば20[MHz])での第1のカウンタのカウント値が例えば2,200,000である場合、校正係数は、(1,000/10×1,000)/(2,200,000/20×1,000,000,000)(=0.9090909090909091≒−9[%])を示し、これは第2のクロックが遅れていることを意味する(図3(D)参照)。校正係数が0.91である場合、第2のクロック(例えば10[KHz])で第2のカウンタのカウント値が(10×1,000×3,600)(=所定の期間=1[h])を0.91倍した値を示す時、実際には、所定の期間(例えば1[h])が計測される。
【0045】
校正処理において、校正部231は、求めた校正係数を評価することができる。具体的には、校正部231又はマイコン13は、校正係数が第1の所定値(例えば1.2)以上である場合、RC発振素子又は第2の生成部131が劣化していると推定できる。好ましくは、校正部231又はマイコン13は、校正係数が第1の所定値よりも大きい第2の所定値(例えば1.3)以上である場合、RC発振素子又は第2の生成部131が故障していると推定できる。
【0046】
同様に、校正部231又はマイコン13は、校正係数が第1の所定値よりも小さい第3の所定値(例えば0.8)以下である場合、RC発振素子又は第2の生成部131が劣化していると推定できる。好ましくは、校正部231又はマイコン13は、校正係数が第3の所定値よりも小さい第4の所定値(例えば0.7)以下である場合、RC発振素子又は第2の生成部131が故障していると推定できる。
【0047】
校正部231又はマイコン13は、校正係数が第1の所定値(例えば1.2)よりも小さく、且つ校正係数が第3の所定値(例えば0.8)よりも大きい場合、RC発振素子又は第2の生成部131が正常であると推定できる。RC発振素子又は第2の生成部131が正常であると推定できる時、校正処理において、校正部231は、求めた校正係数を例えば記憶部236に記憶することができる。図4は、校正係数の評価例を示す。
【0048】
1.3.2.設定処理
校正係数が第1の所定値(例えば1.2)以上である場合、設定処理において、設定部232は、第2の生成部131で生成される第2のクロックの第2の周波数を高める。好ましくは、校正係数が第1の所定値(例えば1.2)以上であり、且つ校正係数が第2の所定値(例えば1.3)よりも小さい場合、設定部232は、第2の周波数を高める。具体的には、設定部232は、例えば抵抗Rの抵抗値を調整して、第2の周波数を高めることができる。例えば、抵抗Rの抵抗値を小さくすることにより、第2の周波数を大きくすることができる。
【0049】
同様に、校正係数が第3の所定値(例えば0.8)以下である場合、設定部232は、第2の周波数を高める。好ましくは、校正係数が第3の所定値(例えば0.8)以下であり、且つ校正係数が第4の所定値(例えば0.7)よりも大きい場合、設定部232は、第2の周波数を高める。このように、RC発振素子又は第2の生成部131が劣化していると推定できる時、設定部232は、第2の生成部131で生成される第2のクロックの第2の周波数を高める。第2の周波数が高くなれば、コンデンサCの容量が減少することに起因する発振周期の乱れを抑制し、第2のクロックの精度が高くなる。
【0050】
第2の周波数を高める時、設定部232は、例えば10[KHz]から100[KHz]に変更又は再設定することができる。この時、設定部232は、校正係数に応じて第2の周波数を高める程度を決定してもよい。例えば、校正係数が1.21又は0.79である場合、設定部232は、第2の周波数を例えば200[KHz]に再設定することができる。校正係数が1.25又は0.75である場合、設定部232は、第2の周波数を例えば500[KHz]に再設定することができる。校正係数が1.29又は0.71である場合、設定部232は、第2の周波数を例えば900[KHz]に再設定することができる。
【0051】
1.4.待機状態
待機状態において、図1の第2の生成部131は、抵抗R及びコンデンサCを用いて第2の周波数を有する第2のクロックを生成する。設定部232によって例えば抵抗Rの抵抗値を小さく設定される場合、第2の生成部131は、高められた第2の周波数を有する第2のクロックを生成する。RC発振素子又は第2の生成部131が正常であると推定できる時、待機状態において、第1の生成部132は、第2の周波数又は高められた第2の周波数よりも高い第1の周波数を有する第1のクロックの生成を停止することが好ましい。RC発振素子又は第2の生成部131が劣化していると推定できる時も、待機状態において、第1の生成部132は、第1のクロックの生成を停止することが好ましい。
【0052】
待機状態において、計測部233は、第2のクロック(例えば10[KHz])で校正係数に基づく所定の期間(例えば1[h])の経過を計測する。校正係数(例えば1.10)は、例えば記憶部236に記憶されている。計測部233は、例えば第2のカウンタを用いて、所定の期間が経過した時刻又は一時的な起動状態に戻る時刻を計測することができる。具体的には、イグニッションのオフが検出された時(例えば図2の時刻T2)、計測部233は、第2のカウンタをリセットする。その後、計測部233は、第2のクロック(例えば10[KHz])で第2のカウンタをカウントアップさせ、第2のカウンタのカウント値が(10×1,000×3,600)×1.10を示す時(例えば図2の時刻T3)、計測部233は、起動信号を実行部234に送る。
【0053】
RC発振素子又は第2の生成部131が故障であると推定できる時、待機状態において、第1の生成部132は、第1のクロックの生成を継続する。加えて、計測部233は、第1のクロック(例えば20[MHz])で所定の期間(例えば1[h])の経過を計測する。RC発振素子又は第2の生成部131が故障であると推定できる時にイグニッションのオフが検出された場合、計測部233は、第1のクロック(例えば20[MHz])で第1のカウンタをカウントアップさせ、第1のカウンタのカウント値が(20×1,000,000×3,600)を示す時(例えば図2の時刻T3)、計測部233は、起動信号を実行部234に送る。
【0054】
1.5.一時的な起動状態
待機状態において、第1の生成部132が第1のクロックの生成を停止している場合、一時的な起動状態において、第1の生成部132は、第1のクロックの生成を再開する。一時的な起動状態において、電子制御装置10又はマイコン13は、第1のクロックに基づき動作し、様々な処理のうちの所定の処理だけを実行することができる。所定の処理の1例として、例えば実行部234は、燃料漏れの有無を検査する。電子制御装置10又はマイコン13は、所定の処理を完了する時(例えば図2の時刻T4)、一時的な起動状態から待機状態に移行する。
【0055】
1.6.動作例
図5は、図1の電子制御装置10の動作例を示すフローチャートを示す。以下に、図5を参照しながら、電子制御装置10が定常的な起動状態(例えば図2の時刻T1)から待機状態(例えば図2の時刻T2)に移行するまでの動作例について説明する。定常的な起動状態が開始される時、図1のマイコン13又は例えば実行部234は、イグニッションがオフされているか否かを判定する(図5のステップS210)。図5のステップS210において、イグニッションがオフされた時、例えば実行部234は、計測部233に第2のクロックで所定の期間の経過を計測するように指示し、電子制御装置10又はマイコン13は、待機状態に移行する。電子制御装置10又はマイコン13は、図5のステップS210において、イグニッションがオフされていない時、電子制御装置10又はマイコン13は、校正処理及び設定処理を実行することができる(図5のステップS240及びステップS290)。
【0056】
校正処理を実行する前に、マイコン13又は例えば実行部234は、学習条件が満足されているか否かを判定することが好ましい(図5のステップS220)。学習条件は、例えば、バッテリ電源2の電圧又は供給部11からの一定電圧が安定していることを含む。電子制御装置10又はマイコン13は、必要に応じて例えば通信部237を用いて、バッテリ電源2の電圧を直接に検出してもよく、ある期間においてバッテリ電源2の電圧が常にある値を超えていることを確認した時、学習条件が満足される。学習条件は、例えば、車両が停止していることをさらに含む。電子制御装置10又はマイコン13は、必要に応じて例えば通信部237を用いて、車速センサ(図示せず)からの車両の速度を検出してもよく、車両の速度がある値よりも小さいことを確認した時、学習条件が満足される。
【0057】
学習条件が満足された時、マイコン13又は検出部235は、第2の生成部131の近傍の温度(環境温度又は周辺温度)を検出することが好ましい(図5のステップS230)。第2のクロックの精度は、温度にも依存するので、校正部231は、検出部235で検出された温度毎に又は温度範囲毎に校正係数を求めることができる。第2の生成部131の近傍の温度を検出するセンサ(図示せず)は、好ましくは抵抗R及びコンデンサCの近傍に設定され、例えば、電子制御装置10の内部に組み込まれる。第2の生成部131の近傍の温度を検出するセンサは、例えばサーミスタで構成される。
【0058】
温度が検出された時、電子制御装置10又はマイコン13は、校正処理を実行する(図5のステップS240)。具体的には、例えば図3(A)及び図3(B)に示されるように、校正部231は、例えば第1のクロックを基準に校正期間(10[msec])を決定し、第1のクロックに基づく第2のクロックの校正係数を求める。この時、校正係数のばらつきを考慮して、図5のステップS240において、校正作業を複数回実施することが好ましく、校正部231は、校正作業を複数回実施した校正係数の平均値又は中央値を算出する。
【0059】
校正係数の平均値又は中央値が得られた時、校正部231は、求めた校正係数の平均値又は中央値を評価する(図5のステップS250及びステップS270)。具体的には、図5のステップS250において、校正部231は、求めた校正係数の平均値が第1の所定値(例えば1.2)を超えるか否かを判定し、加えて、校正部231は、求めた校正係数の平均値が第1の所定値よりも小さい第3の所定値(例えば0.8)を超えていないか否かを判定する。
【0060】
ステップS250が否定的な結果を示した時、求めた校正係数の平均値は、第1の所定値と第3の所定値との間に位置し、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が正常であると推定できる。第2のクロック又は第2の生成部131が正常であると推定できる時、校正部231は、検出された温度又はその温度を含む温度範囲に基づき、例えば記憶部236に記憶される校正係数を更新する(図5のステップS260)。
【0061】
例えば校正係数の初期値として1.0が記憶部236に記憶され、検出された温度が例えば10[℃]であり、例えば校正作業を2回実施した校正係数の平均値が例えば1.1(=(1.0+1.2)/2)である場合、校正部231は、記憶部236に記憶されている温度10[℃]に対応する校正係数1.0(初期値)を校正係数の平均値1.1に書き換える(図5のステップS260)。
【0062】
ステップS260が実施された後、その後も、ステップS210,S220,S230,S240,S250,S260が実施され得る。例えば校正係数として1.1(前回値)が記憶部236に記憶され、検出された温度が例えば10[℃](今回値)であり、例えば校正作業を2回実施した校正係数の平均値(今回値)が例えば1.15(=(1.2+1.1)/2)である場合、校正部231は、記憶部236に記憶されている温度10[℃]に対応する校正係数1.1(前回値)を校正係数の平均値1.15(今回値)に書き換える(図5のステップS260)。
【0063】
なお、ステップS260において、検出した温度が例えば0[℃]〜20[℃]の温度範囲にある場合、温度範囲毎に、記憶部236に記憶される校正係数を更新してもよい。例えば校正係数として1.1(前回値)が記憶部236に記憶され、検出された温度範囲が例えば0[℃]〜20[℃](今回値)であり、例えば校正作業を2回実施した校正係数の平均値(今回値)が例えば1.15(=(1.2+1.1)/2)である場合、校正部231は、記憶部236に記憶されている温度範囲0[℃]〜20[℃]に対応する校正係数1.1(前回値)を校正係数の平均値1.15(今回値)に書き換えてもよい(図5のステップS260)。
【0064】
ステップS250が肯定的な結果を示した時、校正部231は、求めた校正係数の平均値又は中央値の評価を継続する(図5のステップS270)。具体的には、図5のステップS270において、校正部231は、求めた校正係数の平均値が第1の所定値よりも大きい第2の所定値(例えば1.3)を超えるか否かを判定し、加えて、校正部231は、求めた校正係数の平均値が第3の所定値よりも小さい第4の所定値(例えば0.7)を超えていないか否かを判定する。
【0065】
ステップS270が否定的な結果を示した時、求めた校正係数の平均値は、第1の所定値と第2の所定値との間に位置し、又は第3の所定値と第4の所定値との間に位置する。この時、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が劣化していると即座に推定できるが、第2の生成部が劣化していることを確実に推定するために、ステップS280を実施することが好ましい。具体的には、ステップS270において否定的な結果が1回だけ示された時、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が劣化していると推定しないで、ステップS280は、否定的な結果を示す。
【0066】
ステップS280が否定的な結果を示した後、その後も、ステップS210,S220,S230,S240,S250,S270が実施され得る。ステップS270において否定的な結果が例えば2回示された時、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が劣化していると推定でき、ステップS280は、肯定的な結果を示す。
【0067】
好ましくは、ステップS280が肯定的な結果を示す時の条件として、複数の温度範囲で、ステップS270が否定的な結果を示すことを追加する。例えば温度範囲−20[℃]〜0[℃](第1の温度範囲)では、ステップS270(第1の訂正係数)が否定的な結果を複数回示しているが、例えば温度範囲0[℃]〜20[℃](第2の温度範囲)では、ステップS270(第2の訂正係数)が依然として否定的な結果を示さない場合がある。このような場合、実際には、第2のクロック又は第2の生成部131が劣化していないと推定することができる。従って、例えば温度範囲−20[℃]〜0[℃](第1の温度範囲)でステップS270(第1の訂正係数)が否定的な結果を示し、且つ例えば温度範囲0[℃]〜20[℃](第2の温度範囲)でもステップS270(第2の訂正係数)が否定的な結果を示す場合に限り、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が劣化していると推定でき、ステップS280は、肯定的な結果を示すことが好ましい。
【0068】
ステップS280が肯定的な結果を示した時、設定部232は、第2のクロックの元である第2の周波数を高める(図5のステップS290)。具体的には、例えば第2の周波数の初期値として10[KHz]が抵抗R又は第2の生成部131に設定されている場合、設定部232は、抵抗R又は第2の生成部131に設定されている10[KHz](初期値)を例えば100[KHz]に再設定する(図5のステップS290)。
【0069】
この時、設定部232は、10[KHz](初期値)に対応して記憶部236に記憶されていた全ての温度に対応する校正係数を校正係数1.0(初期値)にリセットすることができる(図5のステップS290)。即ち、ステップS290の実施後に再びステップS260が最初に実施される時、100[KHz](再設定値)に対応して記憶部236に記憶されている校正係数は、1.0(初期値)を示すことになる。
【0070】
ステップS270が肯定的な結果を示した時、求めた校正係数の平均値は、第4の所定値と第1の所定値との間に位置しない。この時、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が故障していると即座に推定できるが、第2の生成部が故障していることを確実に推定するために、ステップS300を実施することが好ましい。具体的には、ステップS270において肯定的な結果が1回だけ示された時、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が故障していると推定しないで、ステップS300は、否定的な結果を示す。
【0071】
ステップS300が否定的な結果を示した後、その後も、ステップS210,S220,S230,S240,S250,S270が実施され得る。ステップS270において肯定的な結果が例えば2回示された時、校正部231は、第2のクロック又は第2の生成部131が故障していると推定でき、ステップS300は、肯定的な結果を示す。好ましくは、ステップS300が肯定的な結果を示す時の条件として、複数の温度範囲で、ステップS270が肯定的な結果を示すことを追加する。
【0072】
ステップS300が肯定的な結果を示した時、マイコン13又は例えば実行部234は、第2のクロックの故障をユーザに報知することができる(図5のステップS310)。マイコン13又は例えば実行部234は、必要に応じて例えば通信部237を用いて、例えばスピーカ(図示せず)を用いて第2のクロックが故障していることを音声でユーザに知らせることができる。
【0073】
第2のクロック又は第2の生成部131が故障していると推定できる時、マイコン13又は例えば実行部234は、イグニッションがオフされているか否かを判定する(図5のステップS320)。図5のステップS320において、イグニッションがオフされた時、例えば実行部234は、計測部233に第1のクロックで所定の期間の経過を計測するように指示し、電子制御装置10又はマイコン13は、待機状態に移行し、この時、計測部233は、第1のクロックで所定の期間の経過を計測する。
【0074】
なお、図5のステップS210が肯定的な結果を示した後に、電子制御装置10又はマイコン13は、待機状態に移行する直前で、定常的な起動状態において、マイコン13又は検出部235は、温度を検出してもよい。代替的に、図5のステップS210が肯定的な結果を示した後に、電子制御装置10又はマイコン13は、待機状態に移行した直後で、待機状態において、マイコン13又は検出部235は、温度を検出することができる。待機状態において、計測部233が第2のクロックで校正係数に基づく所定の期間の経過を計測する時、例えば記憶部236に記憶される温度又は温度範囲毎の校正係数を用いることが好ましい。校正係数を適切に用いることで、一時的な起動状態に戻る時刻の信頼性をさらに向上させることができる。
【0075】
2.変形例
第2のクロック又は第2の生成部131が故障していると推定できる時、待機状態において、計測部233は、第1のクロックで所定の期間の経過を計測することができる。この時、変形例では、電子制御装置10又はマイコン13は、計測部233の動作の代わりに、通信部237を動作させてもよい。好ましくは、第2のクロック又は第2の生成部131が故障していると推定できる時、計測部233は、第2のクロックに基づく所定の期間の経過の計測も、第1のクロックに基づく所定の期間の経過の計測も、実行せず、待機状態において、消費電流又は消費電力を低減するために第1の生成部132及び第2の生成部131の動作を停止する。変形例では、待機状態において、計測部233(及び第1の生成部132及び第2の生成部131)の動作の代わりに、通信部237、特に通信部237のうちの受信部が、所定の期間の経過を表す起動信号を他の電子制御装置(図示せず)から受信する。
【0076】
変形例では、例えばナビゲーション、オーディオ、メータ等の計時機能を有する他の電子制御装置が、所定の期間の経過を表す起動信号を生成し、この起動信号を所定の通信方式で通信部237の受信部に送る。具体的には、他の電子制御装置が常に第3のクロック(好ましくは第2のクロックよりも精度の高い第3のクロック)で動作している時、他の電子制御装置は、第3のクロックで所定の期間の経過を計測する。電子制御装置10は、他の電子制御装置からの起動信号を受信し、受信した起動信号に基づき、一時的な起動状態に移行することができる。なお、他の電子制御装置が所定の期間を把握していない場合、通信部237のうちの送信部が、所定の期間を他の電子制御装置に送ることができる。また、電子制御装置10は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車両内のネットワークを介して、車両内に搭載される他の電子制御装置と相互に通信することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0078】
2・・・バッテリ電源、3・・・イグニッションスイッチ、10・・・電子制御装置、11・・・供給部、12・・・比較部、13・・・マイコン、15・・・水晶発振子、131・・・第2の生成部、132・・・第1の生成部、231・・・校正部、232・・・設定部、233・・・計測部、234・・・実行部、235・・・検出部、236・・・記憶部、237・・・通信部、C・・・コンデンサ、GND・・・接地電圧、IG・・・イグニッション端子、R・・・抵抗、T・・・端子、+B・・・バッテリ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の期間が経過する時に待機状態から一時的な起動状態に戻る電子制御装置であって、
前記一時的な起動状態及び定常的な起動状態において、第1の周波数を有する第1のクロックを生成する第1の生成部と、
前記定常的な起動状態及び前記待機状態において、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のクロックを生成する第2の生成部と、
前記定常的な起動状態及び前記一時的な起動状態の少なくとも一方において、前記第1のクロックに基づく前記第2のクロックの校正係数を求める校正部と、
前記定常的な起動状態及び前記一時的な起動状態の少なくとも一方において、前記校正係数が第1の所定値以上である場合、前記第2の周波数を高める設定部と、
前記待機状態において、前記第2のクロックで前記校正係数に基づく前記所定の期間の経過を計測する計測部と、
を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記校正係数が前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値以上である場合、前記第1の生成部は、前記待機状態において前記第1のクロックの生成を継続し、且つ、前記計測部は、前記待機状態において、前記第1のクロックで前記所定の期間の経過を計測することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記校正部は、前記校正係数として、校正作業を複数回実施した校正係数の平均値又は中央値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記第2の生成部の近傍の温度を検出する検出部を
さらに備え、
前記校正部は、前記検出部で検出した前記温度又は前記温度を含む温度範囲に対応付けて前記校正係数を求めることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記校正部は、前記検出部で検出した前記温度を含む前記温度範囲に対応付けて前記校正係数を求め、
前記温度範囲は、第1の温度範囲と第2の温度範囲とを有し、
前記校正係数は、前記第1の温度範囲に対応する第1の校正係数と、前記第2の温度範囲に対応する第2の校正係数と、を有し、
前記第1の校正係数が前記第1の所定値以上であり、且つ前記第2の校正係数も前記第1の所定値以上である場合、前記設定部は、前記第2の周波数を高めることを特徴とする請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記校正係数が前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値以上である場合、前記待機状態において、車両内に搭載されて計時機能を有する他の電子制御装置であって前記計時機能により前記所定の期間の経過を表す起動信号を生成する他の電子制御装置から、前記起動信号を前記車両内のネットワークを介して受信する受信部を
さらに備え、
前記起動信号に基づき前記一時的な起動状態に戻ることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220276(P2012−220276A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84589(P2011−84589)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】