説明

電子回路モジュール

【課題】仕切り板を有する板金カバー体の製造コストを大幅に低減できる電子回路モジュールを提供すること。
【解決手段】方形の天板部3の四辺に沿って側板部4が枠状に設けられていると共に、天板部3および側板部4によって画成される直方体形状の空間Sを複数に分割する仕切り板5が設けられた板金カバー体1と、空間Sを介して天板部3と対向するように板金カバー体1が取り付けられる回路基板2とを備えた電子回路モジュールにおいて、板金カバー体1が、天板部3の四辺から個別に延設されて対応する一辺にて直角に折曲された4つの第1金属片11と、第1金属片11の長手方向の一端から延設されて空間S内へ向けて折曲された第2金属片12とを有する1枚の金属板からなり、4つの第1金属片11によって側板部4が形成され、かつ第2金属片12によって仕切り板5が形成される構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケース等の板金カバー体を回路基板に取り付けて構成される電子回路モジュールに係り、特に、複数の仕切り板を有する板金カバー体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば無線通信機器等においては、高周波回路等が配設された回路基板にシールドケース等の板金カバー体を取り付けて構成される電子回路モジュールを使用することがある。一般的に、このような電子回路モジュールの板金カバー体は、方形の天板部材と該天板部材の四辺に沿う枠状の側板部材とを備えた箱形の外観を呈して回路基板の上面を覆っているが、回路基板上に実装されている電子部品どうしの不所望な干渉を抑制するために該回路基板上に仕切り板を配置させた板金カバー体も知られている。すなわち、板金カバー体の天板部材と枠状の側板部材とで画成される直方体形状の空間を複数の小空間に分割する仕切り板を追加することによって、回路基板上の特定の電子部品とその干渉を受けやすい別の電子部品を相異なる小空間に臨出させることができるため、仕切り板の電磁シールド効果によって不所望な干渉を回避できるようになる。
【0003】
しかしながら、仕切り板を追加した構成にすると板金カバー体の部品点数が増えてしまうため、コストアップを余儀なくされるという問題があった。そこで従来、枠状の側板部材と複数の仕切り板が1枚の金属板から形成できるようにした板金カバー体(シールドケース)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来提案において、折曲加工前の展開状態の金属板は、4つの側壁片が長方形を囲むように連続して配置されていると共に、これら側壁片の内縁からそれぞれ該長方形の内方へ隔壁片が突設されており、4つの側壁片の内縁を該長方形に対して直角に折り曲げることによって枠状の側板部材が得られると共に、各隔壁片の基端をそれぞれ直角に折り曲げることによって平面視十字形状に配置された4片の仕切り板が得られるようになっている。
【特許文献1】実開平2−52396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来提案のように、枠状の側板部材と複数の仕切り板とが1枚の金属板から形成できるようにしてあると、板金カバー体の部品点数を減らすことができるが、かかる従来提案を採用しても板金カバー体には天板部材が別途必要であり、この天板部材は手作業で側板部材に組み付けなければならないので、板金カバー体の製造コストを大幅に低減できるわけではなかった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、仕切り板を有する板金カバー体の製造コストを大幅に低減できる電子回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の電子回路モジュールは、方形の天板部の四辺に沿って側板部が枠状に設けられていると共に、これら天板部および側板部によって画成される直方体形状の空間を複数に分割する仕切り板が設けられた板金カバー体と、前記空間を介して前記天板部と対向するように前記板金カバー体が取り付けられる回路基板とを備え、前記板金カバー体が、前記天板部の四辺から個別に延設されて対応する一辺にて直角に折曲された4つの矩形状の第1金属片と、前記各第1金属片の長手方向の一端から個別に延設されて前記空間内へ向けて折曲された複数の第2金属片とを有する1枚の金属板からなり、4つの前記第1金属片によって前記側板部が形成され、かつ前記第2金属片によって前記仕切り板が形成されているという構成にした。
【0007】
このように構成された電子回路モジュールの板金カバー体は、天板部と枠状の側板部と複数の仕切り板とが1枚の金属板から無理なく形成できて組立作業の自動化も容易であり、かつ材料の無駄も少ないことから、仕切り板を有する板金カバー体を極めて安価に製造することが可能となる。
【0008】
上記の構成において、板金カバー体の折曲加工前の展開状態で、天板部の第1の辺と隣接する領域に、該第1の辺の一部と連なる前記第1金属片と、該第1金属片から該第1の辺の他部に沿って突出する前記第2金属片とが配置されていると共に、天板部の第1の辺に対して直角な第2の辺と連なる別の前記第1金属片が、該第2の辺の延長線に沿って突出して折曲加工後に第1の辺の前記他部と隣接する舌片部を有しており、折曲加工後に該舌片部に対して直角に前記空間内へ突出する前記第2金属片によって仕切り板が形成されている場合には、天板部および側板部によって画成される直方体形状の空間を複数の仕切り板で仕切って平面視方形状の小空間を作り出すことができる。
【0009】
また、上記の構成において、板金カバー体の折曲加工前の展開状態で、天板部の四辺の外側にそれぞれ各辺を長辺とする前記第1金属片が突設されていると共に、この第1金属片の長手方向の一端から長辺の延長線に沿って前記第2金属片が突設されており、折曲加工後に前記側板部の隅部から前記空間内へ突出する前記第2金属片によって仕切り板が形成されている場合には、天板部および側板部によって画成される直方体形状の空間を複数の仕切り板で仕切って平面視三角形状の小空間を作り出すことができる。
【0010】
また、上記のいずれかの構成において、板金カバー体が前記第2金属片を4つ有しており、これら第2金属片からなる仕切り板によって前記空間が4つに分割されていると、天板部および側板部によって画成される直方体形状の空間を互いに電磁的にシールドされた4つの小空間に細分化することができる。
【0011】
また、上記のいずれかの構成において、板金カバー体の仕切り板に回路基板の取付孔に挿入される取付脚片が突設されていると、各仕切り板が回路基板に対して容易かつ正確に位置決めできるため好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子回路モジュールによれば、回路基板の上面を覆うように取り付けられる板金カバー体が天板部と枠状の側板部と複数の仕切り板とを有しているが、この板金カバー体は1枚の金属板から無理なく形成できて組立作業の自動化も容易であり、かつ材料の無駄も少ないことから、極めて安価に製造することができる。したがって、電磁シールド効果に優れたシールドケース等として好適な板金カバー体の大幅なコストダウンを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明すると、図1は本発明の第1実施形態例に係る電子回路モジュールの分解斜視図、図2は該電子回路モジュールに用いられた板金カバー体の底面図、図3は該板金カバー体の折曲加工前の展開状態を示す平面図である。
【0014】
図1に示す電子回路モジュールは、1枚の金属板からなり箱形の外観を呈する板金カバー体1と、上面を覆うように板金カバー体1が取り付けられる回路基板2とによって主に構成されており、図示していないが、回路基板2上には各種の電子部品が実装されて所望の電気回路が形成されている。また、回路基板2の複数箇所には板金カバー体1の取付脚片1a(図3参照)を挿入して係合させるための取付孔2aが開設されており、各取付孔2aの周縁部に設けられた図示せぬランド部に各取付脚片1aが半田付けされるようになっている。
【0015】
図1と図2に示すように、板金カバー体1は、正方形の天板部3と、天板部3の四辺に沿って設けられた枠状の側板部4と、天板部3および側板部4によって画成される直方体形状の空間Sを4つの小空間s1に分割する4片の仕切り板5とによって構成されている。そして、この板金カバー体1を取り付けることによって回路基板2が空間Sを介して天板部3と対向するため、回路基板2上の特定の電子部品とその干渉を受けやすい別の電子部品を相異なる小空間s1に臨出させることによって不所望な干渉を回避できるようになっている。
【0016】
この板金カバー体1は、1枚の金属板を図3に示すような形状に打ち抜いた後、これを折曲加工することによって形成されたものである。図3に示す折曲加工前の板金カバー体10は、天板部3と、天板部3の四辺から個別に延設された4つの矩形状の第1金属片11と、各第1金属片11の長手方向の一端から個別に延設された4つの第2金属片12とからなり、天板部3の各辺の一部が隣接する第1金属片11と連なって、この第1金属片11の長手方向の一端から当該辺の他部に沿って第2金属片12が突出していると共に、この第1金属片11の長手方向の他端から当該辺の延長線に沿って舌片部11aが突出している。そして、各第1金属片11を天板部3との境界線(各辺の一部)で直角に折曲すると共に、舌片部11aの基端11bと第2金属片12の基端12aを両者11a,12間の第1金属片11に対して直角に折曲することによって、図2に示すように、舌片部11aを含む4つの第1金属片11からなる枠状の側板部4が得られ、かつ4つの第2金属片12からなり平面視十字形状に配置された4片の仕切り板5が得られるようになっている。すなわち、この板金カバー体1は、天板部3の各辺から回路基板2側へ垂下する各側壁部分がいずれも、当該辺と連なる第1金属片11のうち舌片部11aを除いた部分と、別の第1金属片11の舌片部11aとを並設することによって構成されており、各側壁部分の中央部からそれぞれ第2金属片12が空間Sの中心部に向かって突出して仕切り板5となっている。なお、空間Sは4片の仕切り板5によって4等分されるため、各小空間s1はすべて平面視正方形状で同じ大きさである。
【0017】
また、各仕切り板5の底部(各第2金属片12の一側部)には2箇所に取付脚片1aが突設されており、これら取付脚片1aを回路基板2の対応する取付孔2aに挿入して係合させることによって、各仕切り板5が回路基板2に対して容易かつ正確に位置決めできるため、板金カバー体1を回路基板2に取り付ける作業は容易かつ正確に行える。そして、これら取付脚片1aを取付孔2a近傍のランド部に半田付けすることによって、回路基板2と板金カバー体1とが電気的かつ機械的に接続された状態となるため、該ランド部を介して板金カバー体1を接地することができる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態例に係る電子回路モジュールの板金カバー体1は、天板部3と回路基板2との間に存する空間Sを分割するための仕切り板5を有するというものであるが、この板金カバー体1は天板部3と枠状の側板部4と複数の仕切り板5とを1枚の金属板から無理なく形成できて組立作業の自動化も容易であり、かつ材料の無駄も少ないことから、極めて安価に製造することができる。
【0019】
図4は本発明の第2実施形態例に係る板金カバー体の底面図、図5は該板金カバー体の折曲加工前の展開状態を示す平面図であり、図2および図3と対応する部分には同一符号が付してあるため重複する説明は省略する。
【0020】
図4に示す板金カバー体1は、天板部3と枠状の側板部4とによって画成される直方体形状の空間Sを、側板部4の四隅から空間Sの中心部へ向かって突出する4片の仕切り板5で仕切って平面視三角形状の4つの小空間s2を作り出している点が、前述した第1実施形態例と大きく異なっている。図4に示す板金カバー体1は、1枚の金属板を図5に示すような形状に打ち抜いた後、これを折曲加工することによって形成されたものである。図5に示す折曲加工前の板金カバー体10では、天板部3の四辺の外側にそれぞれ各辺を長辺とする第1金属片11が突設されていると共に、各第1金属片11の長手方向の一端からその長辺の延長線に沿って第2金属片12が突設されている。そして、天板部3の四辺で4つの第1金属片11を直角に折曲すると共に、各第2金属片12の基端12aを連続する第1金属片11に対して直角に折曲することによって、図4に示すように、4つの第1金属片11からなる枠状の側板部4が得られ、かつ4つの第2金属片12からなり天板部3の対角線に沿って配置された4片の仕切り板5が得られるようになっている。
【0021】
なお、上記各実施形態例では、板金カバー体1の直方体形状の空間Sを4片の仕切り板5によって4つの小空間に細分化しているが、仕切り板5の数を減らして空間Sを3つまたは2つの小空間に分割してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る電子回路モジュールの分解斜視図である。
【図2】図1に示す板金カバー体の底面図である。
【図3】図2に示す板金カバー体の折曲加工前の展開状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態例に係る板金カバー体の底面図である。
【図5】図4に示す板金カバー体の折曲加工前の展開状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 板金カバー体
1a 取付脚片
2 回路基板
2a 取付孔
3 天板部
4 側板部
5 仕切り板
10 (折曲加工前の)板金カバー体
11 第1金属片
11a 舌片部
12 第2金属片
S 空間
s1,s2 小空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の天板部の四辺に沿って側板部が枠状に設けられていると共に、これら天板部および側板部によって画成される直方体形状の空間を複数に分割する仕切り板が設けられた板金カバー体と、前記空間を介して前記天板部と対向するように前記板金カバー体が取り付けられる回路基板とを備え、
前記板金カバー体が、前記天板部の四辺から個別に延設されて対応する一辺にて直角に折曲された4つの矩形状の第1金属片と、前記各第1金属片の長手方向の一端から個別に延設されて前記空間内へ向けて折曲された複数の第2金属片とを有する1枚の金属板からなり、4つの前記第1金属片によって前記側板部が形成され、かつ前記第2金属片によって前記仕切り板が形成されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記板金カバー体の折曲加工前の展開状態で、前記天板部の第1の辺と隣接する領域に、該第1の辺の一部と連なる前記第1金属片と、該第1金属片から該第1の辺の他部に沿って突出する前記第2金属片とが配置されていると共に、前記天板部の前記第1の辺に対して直角な第2の辺と連なる別の前記第1金属片が、該第2の辺の延長線に沿って突出して折曲加工後に前記第1の辺の前記他部と隣接する舌片部を有しており、折曲加工後に前記舌片部に対して直角に前記空間内へ突出する前記第2金属片によって前記仕切り板が形成されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記板金カバー体の折曲加工前の展開状態で、前記天板部の四辺の外側にそれぞれ各辺を長辺とする前記第1金属片が突設されていると共に、この第1金属片の長手方向の一端から長辺の延長線に沿って前記第2金属片が突設されており、折曲加工後に前記側板部の隅部から前記空間内へ突出する前記第2金属片によって前記仕切り板が形成されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記板金カバー体が前記第2金属片を4つ有しており、これら第2金属片からなる前記仕切り板によって前記空間が4つに分割されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記仕切り板に前記回路基板の取付孔に挿入される取付脚片が突設されていることを特徴とする電子回路モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate