説明

電子回路モジュール

【目的】 一面のグリッド状に配置されたピンを有するLSIの放熱効率を高める。
【構成】 グリッド状に配置されたピン16を有するLSI5に対し、上記ピン16に電流を絶縁するための絶縁性被膜21をコーティングし、丸穴17と凹部18を有する放熱板を熱伝導ラバー21とともにプリント配線板2に取付ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は航空機等に搭載される電子機器の電子回路モジュールの改良に関するもので、その放熱構造に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子回路部品の冷却方法として、従来より最も一般的な方法は冷却空気を直接電子回路部品に吹きあてる方法である。しかし最近、電子機器の分野における機能の分散化が進むにつれて、電子機器そのものを比較的環境条件の悪い場所へも設置したいという気運が高まっている。すなわち、電子機器は従来のように温度、湿度、塵埃等が制御されている部屋に設置されるとは限らないのである。このような場合電子回路部品に直接冷却空気を吹きあてる方法は、電子機器の信頼性上好ましい方法ではない。なぜなら冷却空気中に浮遊している塵埃が電子回路部品に付着し、その付着した部分が腐食したり、絶縁破壊する恐れがあるからである。
ところで航空機に搭載される電子機器では、上記のような塵埃による信頼性の低下を防ぐために間接冷却の電子回路モジュールがよく使用される。
【0003】
次に従来の電子回路モジュールについて説明する。図3はその代表的な例を示す外観図、図4は、図3の断面AAを示す図である。また図5は、図3に示す電子回路モジュールを実装した電子機器の外観図、図6は、図5の断面BBを示す図である。図において電子回路モジュール1は、プリント配線板2、放熱板3及び上記プリント配線板2にはんだ付されたIC4、LSI5等の電子回路部品によって構成されている。ここで放熱板3は、熱伝導性の良い金属板(例えばAl合金)から成り、複数箇所を矩形状に打ち抜かれているとともに、一面はプリント配線板2と接するように配されている。6は上記電子回路モジュール1を収納するための箱状のシャーシで、上面には電子回路モジュール1を取外すための開口部7が設けられている。8は上記開口部を覆うためのカバーで、シャーシ6に対し周辺部でねじ等により固定されている。上記シャーシ6の開口部7と直角をなし、かつ互いに相対する2面には隔壁9によって矩形の通風ダクト10が形成されており、この通風ダクト10の内部には放熱フィン11が設けられるとともに外部ダクト12を介して機体から供給される冷却空気13が流れるようになされている。さらに上記隔壁9の外面には、上記開口部7と直角をなすように形成されたコの字形の溝14があり、上記電子回路モジュール1の端部15は、上記溝14にはまり込むように上方から差し込まれている。
ここでIC4から発生する熱は、放熱板3を介して電子回路モジュール1の端部15へと伝導された後、隔壁9を経由して放熱フィン11から冷却空気13へと放熱されている。一方LSI5から発生する熱は、LSI5の一面にグリッド状に配置されたピン16を介してプリント配線板2へ伝導され、その後に放熱板3、隔壁9、放熱フィン11を経由して冷却空気13へと放熱されている。したがってIC4やLSI5の電子回路部品には直接冷却空気13を吹き当てない工夫がなされている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記のような従来の電子回路モジュールでは、LSI5の放熱効率が悪いという欠点がある。なぜならば、上述のようにLSI5から発生する熱の伝導経路中に、プリント配線板の材料としては、エポキシ系樹脂あるいはポリイミド系樹脂などがよく使用されるが、いずれも金属材料に比べて熱伝導性に劣るため、熱効率が低下する。
【0005】
この考案は上記のような課題を解決するためになされたもので上述のような一面にグリッド状に配置されたピンを有するLSI5の放熱効率を改善した電子回路モジュールを得る事を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この考案に係わる電子回路モジュールは、矩形平面状の外形をなし、かつ一面にはグリッド状に配置されたピンを有する電子回路部品に対し、上記電子回路部品と対向する面には、上記ピンより若干大きな丸穴を備えかつ反対面には電子回路部品とほぼ同じ大きさの凹部を有した金属製で平板状の放熱板を配し、上記電子回路部品のピンには上記放熱板に挿入される範囲以上のコーティングをする電気絶縁性材料からなる絶縁性被膜と、さらに上記電子回路部品のピンが挿入される丸穴を有するとともにシリコン系エラストマーとAl23系フィラーを主成分とする熱伝導ラバーを介して放熱板と電子部品とが互いに密着するように配したものである。
【0007】
【作用】
この考案においては電子回路部品から発生する熱は熱伝導ラバーを介して直接放熱板へと導かれる。したがって一面にグリッド状に配置されたピンを有する電子回路部品が実装される場合でも放熱効率の良い電子回路モジュールが実現することができる。
【0008】
【実施例】
図1はこの考案による電子回路モジュールの一実施例を示す外観図、図2は図1の断面CCを示す図である。図において1〜5及び16の従来の電子回路モジュールと同等のものである。17は放熱板3のLSI5と対向する一面に設けられた丸穴で、LSI5のピン16より若干大きな径で形成されている。また上記放熱板3の反対面には上記LSI5とほぼ同じ大きさの凹部18が形成されている。電気的な絶縁性を有する絶縁性被膜19は上記ピン16にコーティングされている。上記絶縁性被膜19は、上記ピン16が上記放熱板3の丸穴に挿入されてプリント配線板2にはんだ付けされた時に、プリント配線板2にハンダフィレット20が形成されても上記ピン16と上記放熱板3または隣同士のピン16が電気的にショートしないような範囲においてコーティングされている。21は熱伝導ラバーで、放熱板3とLSI5との間に配せられ双方の密着性を高めている。ここで、上記LSI5から発生する熱は、熱伝導ラバー21を介して放熱板3へと熱伝導で導かれる。したがって、上記熱伝導ラバー21は熱伝導に優れた材料でなければならないことは言うまでもないが、さらにLSI5と放熱板3との密着性を高めるための柔軟性、ピン16同士のショートを防止するための電気絶縁性を有する必要があり、シリコン系エラストマーとAl23系フィラーを主成分とした材料が一般的に市販されている。
【0009】
【考案の効果】
この考案による電子回路モジュールは、以上のような構成から成るために、一面にグリッド状に配置されたピンを有するLSIを放熱効率を損なう事なく実装でき、しかも電子回路部品には直接冷却空気を吹きあてない間接冷却方式を実現することが可能となり電子回路部品の信頼性を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案による電子回路モジュールの一実施例を示す外観図である。
【図2】図1の断面CCを示す図である。
【図3】従来の代表的な電子回路モジュールを示す外観図である。
【図4】図3の断面AAを示す図である。
【図5】図3に示す電子回路モジュールを実装した電子機器の外観図である。
【図6】図5の断面BBを示す図である。
【符号の説明】
1 電子回路モジュール
2 プリント配線板
3 放熱板
4 IC
5 LSI
6 シャーシ
7 開口部
8 カバー
9 隔壁
10 通風ダクト
11 放熱フィン
12 外部ダクト
13 冷却空気
14 溝
15 端部
16 ピン
17 丸穴
18 凹部
19 絶縁性被膜
20 ハンダフィレット
21 熱伝導ラバー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 矩形平板状の外形をなしかつ一面にはグリッド状に配置されたピンを有する電子回路部品と、上記電子回路部品と対向する一面は上記ピンの太さより若干大きな丸穴を備え、かつ反対面には上記電子回路部品とほぼ同じ大きさの凹部を形成するとともに、上記丸穴に上記電子回路部品のピンが挿入されるように配した金属製平面状の放熱板と、上記電子回路部品のピンが挿入される丸穴を有するとともに上記電子回路部品と上記放熱板の双方に対し密着するように配せられたシリコン系エラストマーとAl23系フィラーを主成分とする熱伝導ラバーと、上記電子回路部品のピンの上記放熱板に挿入される範囲以上にコーティングされるとともに電気絶縁性の材料からなる絶縁性被膜と、上記電子回路部品のピンが挿入されるとともにはんだ付されたスルーホールを備え、かつ上記放熱板の上記熱伝導ラバーと密着する面と反対側の面に接するように配されたプリント配線板とで構成することを特徴とした電子回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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