説明

電子回路モジュール

【目的】 一面にキャップとグリッド状に配置されたピンを有するLSIの放熱効率を高める。
【構成】 キャップ6と同一面にグリッド状に配置されたピン7を有するLSI5に対し、第1の凹部18及び丸穴19と第2の凹部20を有する放熱板3を熱伝導ラバー22とともにプリント配線板2に取付ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は航空機等に搭載される電子機器の電子回路モジュールの改良に関するもので、その放熱構造に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子回路部品の冷却方法として、従来より最も一般的な方法は冷却空気を直接電子回路部品に吹きあてる方法である。しかし最近、電子機器の分野における機能の分散化が進むにつれて、電子機器そのものを比較的環境条件の悪い場所へも設置したいという気運が高まっている。すなわち、電子機器は従来のように温度、湿度、塵埃等が制御されている部屋に設置されるとは限らないのである。このような場合、電子回路部品に直接冷却空気を吹きあてる方法は、電子機器の信頼性上好ましい方法ではない。なぜなら冷却空気中に浮遊している塵埃が電子回路部品に付着し、その付着した部分が腐食したり、絶縁破壊する恐れがあるからである。
ところで航空機に搭載される電子機器では、上記のような塵埃による信頼性の低下を防ぐために間接冷却の電子回路モジュールがよく使用される。
【0003】
まず従来のこの種の電子回路モジュールについて説明する。図3はその代表的な例を示す外観図、図4は図3の断面AAを示す図である。また図5は図3に示す電子回路モジュールを実装した電子機器の外観図、図6は図5の断面BBを示す図である。図において1は電子回路モジュールであり、プリント配線板2、放熱板3及び上記プリント配線板2にハンダ付けされたIC4、LSI5等の電子回路部品によって構成されている。ここで、上記LSI5は、上記プリント配線板2と対向する面の中央部には、内部に収納されている集積回路を保護するためのキャップ6を有し、かつ上記キャップ6の外周にはグリッド状に配置されたピン7を具備している。また上記放熱板3は熱伝導性のよい金属(例えばアルミニウム合金)板から成り、複数個所を矩形状に打ち抜かれているとともに、一面にはプリント配線板2と接するように配されている。8は上記電子回路モジュール1を収納するための箱状のシャーシで、上面には電子回路モジュール1を取り外すための開口部9が設けられている。10は上記開口部9を覆うためのカバーで、上記シャーシ8に対し周辺部でねじ等により固定されている。上記シャーシ8の開口部9と直角をなし、かつ互いに相対する2面には、隔壁11によって矩形の通風ダクト12が形成されており、この通風ダクト12の内部には放熱フィン13が設けられるとともに外部ダクト14を介して機体から供給される冷却空気15が流れるようになされている。さらに上記隔壁11の外面には、上記開口部9と直角をなすように形成されたコの字型の溝16があり、上記電子回路モジュール1の端部17は、上記溝16にはまり込むように上方から差し込まれている。 ここで、IC4から発生する熱は、放熱板3を介して電子回路モジュール1の端部17へと伝導された後、隔壁11を経由して放熱フィン13から冷却空気15へと放熱されている。一方LSI5から発生する熱はLSI5の一面にグリッド状に配置されたピン7を介してプリント配線板2へ伝導され、その後に放熱板3、隔壁11、放熱フィン13を経由して冷却空気15へと放熱されている。
したがってIC4やLSI5の電子回路部品には直接冷却空気15を吹きあてない工夫がなされているわけである。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記のような従来の電子回路モジュールでは、LSI5の放熱効率が悪いという欠点がある。なぜならば上述のように、LSI5から発生する熱の伝導経路中に、プリント配線板の材料としては、エポキシ系樹脂あるいはポリイミド系樹脂などがよく使用されるが、いずれも金属材料に比べて熱伝導性に劣る材料である。
【0005】
この考案は上記のような課題を解決するためになされたもので、上述のような一面にグリッド状に配置されたピンを有するLSI5の放熱効率を改善した電子回路モジュールを得る事を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この考案に係る電子回路モジュールは、矩形平板状の外形をなし一面の中央部には、内部に収納する集積回路を保護する矩形平板状のキャップを有し、かつ上記キャップの外周にグリッド状に配置されたピンを具備する電子回路部品に対し、上記電子回路部品と対向する一面には上記キャップの外形より若干大きな第1の凹部及び上記ピンの太さより若干大きな丸穴を備え、かつ反対面には電子回路部品とほぼ同じ大きさの第2の凹部を形成した金属製平板状の放熱板に、上記ピンが挿入されるとともに、ハンダ付けされるスルーホールを備えたプリント配線板との間で密着するように配し、さらに上記電子回路部品のピンが挿入される丸穴を有するとともに、シリコン系エラストマーとAl23系フィラーを主成分とする熱伝導性ラバーを介して放熱板と電子部品とが互いに密着するように配したものである。
【0007】
【作用】
この考案においては電子回路部品から発生する熱は、熱伝導ラバーを介して直接放熱板へと導びかれる。したがって一面に保護用キャップとグリッド状に配置されたピンを有する電子回路部品が実装される場合でも放熱効率のよい電子回路モジュールが実現することができる。
【0008】
【実施例】
図1はこの考案による電子回路モジュールの一実施例を示す外観図、図2は図1の断面CCを示す図である。図において1〜7は従来の電子回路モジュールと同等のものである。18は放熱板3のLSI5と対向する一面に設けられた矩形の第1の凹部で、LSI5のキャップ6の外形より若干大きな寸法で形成されている。19は上記LSI5のピン7が挿入されるように配置された丸穴で、ピン7より若干大きな径になっている。上記放熱板3のLSI5の配置される面の反対面にはLSI5とほぼ同じ大きさの第2の凹部20が形成されている。上記第2の凹部20の大きさは、上記ピン7が放熱板3の上記丸穴19に挿入されて、プリント配線板2にハンダ付がされた時に、プリント配線板にハンダフィレット21が形成されても上記ピン7と上記放熱板3とが電気的にショートしない関係になっている。22は熱伝導ラバーで放熱板3とLSI5との間に配せられ、双方の密着性を高めている。ここで上記LSI5から発生する熱は、熱伝導ラバー20を介して放熱板3へと熱伝導で導びかれる。したがって上記熱伝導ラバー20は熱伝導に優れた材料でなければならないことは言うまでもないが、さらにLSI5と放熱板3との密着性を高めるための柔軟性、ピン7同士のショートを防止するための電気絶縁性を有する必要があり、シリコン系エラストマーとAl23系フィラーとを主成分とした材料が一般に市販されている。
【0009】
【考案の効果】
この考案による電子回路モジュールは、以上のような構成から成るために、一面にグリッド状に配置されたピンを有するLSIを放熱効率を損なう事なく実装でき、しかも電子回路部品には直接冷却空気を吹きあてない間接冷却方式を実現することが可能となり電子回路部品の信頼性を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案による電子回路モジュールの一実施例を示す外観図である。
【図2】図1の断面CCを示す図である。
【図3】従来の代表的な電子回路モジュールを示す外観図である。
【図4】図3の断面AAを示す図である。
【図5】図3に示す電子回路モジュールを実装した電子機器の外観図である。
【図6】図5の断面BBを示す図である。
【符号の説明】
1 電子回路モジュール
2 プリント配線板
3 放熱板
4 IC
5 LSI
6 キャップ
7 ピン
8 シャーシ
9 開口部
10 カバー
11 隔壁
12 通風ダクト
13 放熱フィン
14 外部ダクト
15 冷却空気
16 溝
17 端部
18 第1の凹部
19 丸穴
20 第2の凹部
21 ハンダフィレット
22 熱伝導ラバー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 矩形平板状の外形をなし、一面の中央部には、内部に収納する集積回路を保護する矩形平板状のキャップを有し、かつ上記キャップの外周にはグリッド状に配置されたピンを有する電子回路部品と、上記電子回路部品と対向する一面には、上記キャップの外形より若干大きな第1の凹部及び上記ピンの太さより若干大きな丸穴を備え、かつ反対面には、上記電子回路部品とほぼ同じ大きさの第2の凹部を形成するとともに、上記丸穴に上記電子回路部品のピンが挿入されるように配した金属製平板状の放熱板と、上記電子回路部品のピンが挿入される丸穴を有するとともに、上記電子回路部品と上記放熱板との双方に対し密着するように配せられたシリコン系エラストマーとAl23系フィラーを主成分とする熱伝導ラバーと、上記電子回路部品のピンが挿入されるとともに、ハンダ付けされたスルーホールを備え、かつ上記放熱板の上記熱伝導ラバーと密着する面と、反対側の面に接するように配されたプリント配線板とで構成したことを特徴とする電子回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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