説明

電子回路ユニット及びその製造方法

【課題】接着剤を用いて回路基板に対するカバーの取り付け強度を充分に確保しつつ、熱硬化時の半田の流出(半田爆ぜ)による不良の発生を防止する。
【解決手段】電子回路ユニット10は、回路基板12と、その実装面12a上に実装された電子部品14〜20と、電子部品14〜20を覆う状態で実装面12a上に設置されるシールドカバー22とを備える。シールドカバー22は、背面に充填された接着部材24によって電子部品14,16に接着され、この接着力だけで回路基板12に固定されている。接着部材24は電子部品14,16の上面及び側面に付着しているが、底面や回路基板12には付着していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路ユニットに係わり、より詳しくは、金属製のカバーを備えた電子回路ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板上に高周波用の電子部品が実装された電子回路ユニットには、電子部品を覆う金属製のシールドカバーを有するものがある。シールドカバーは通常、回路基板に半田を用いて固定されており、この状態でシールドカバーは電子部品を保護すると同時に、基板上の回路にグランドされることでノイズ対策としても機能する。このようなシールドカバーがその機能を充分に果たすためには、回路基板に対して電気的にも機械的にも確実に固定されている必要がある。
【0003】
このため従来、シールドカバーを回路基板に固定する手法として、シールドカバーを回路基板に対して半田付けするとともに、電子部品のパッケージ上面に導電性接着剤を介してシールドカバーを接着する先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術によれば、半田付けに加えて接着剤の接着力を用いてシールドカバーを固定することができるので、それだけシールドカバーを強固に固定できると考えられる。
【0004】
さらにその他の手法として、電子部品の上面だけに接着剤を塗布するのではなく、電子部品全体を被覆するように接着剤を増量して回路基板上に塗布する先行技術がある(例えば、特許文献2参照。)。この先行技術によれば、接着剤を増量した分だけさらに接着力が増し、それだけ強固にシールドカバーを固定できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165470号公報
【特許文献2】特開2007−67002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に挙げた先行技術(特許文献1)の手法は、パッケージ上面の限られた範囲だけを接着するものであり、接着力は比較的弱いが、それでも回路基板上でシールドカバーを半田付けできるスペースが充分にある場合は相応に有効であると考えられる。しかしながら近年、回路基板上での高密度実装化に伴い、シールドカバーを半田付けできるスペースには余裕がなくなってきている。このため、カバーそのものを半田付けする強度を充分に確保できない場合、パッケージ上面を接着しただけでは強度不足になるという問題がある。
【0007】
この点、後に挙げた先行技術(特許文献2)の手法は、接着剤を大量に用いている分、強度不足についての心配はあまりない。しかしながら、後者の先行技術(例えば特許文献2の図2を参照)のように電子部品全体を接着剤で被覆してしまうと、それによって別の問題が生じてくることも無視できない。
【0008】
具体的には、電子部品の半田付け部分までが接着剤(樹脂)で被覆されていると、接着剤を熱硬化させる過程で半田が溶融したとき、含有水分の蒸発や残留フラックスの気化に伴い、接着剤(樹脂)の微細な隙間から半田が流出する現象(半田爆ぜ)が発生しやすい。このような現象は、電子部品の半田付け不良や他所での半田ブリッジを引き起こし、それによって製品の信頼性を低下させてしまうことになる。
【0009】
そこで本発明は、回路基板に対するカバーの取り付け強度を充分に確保しつつ、半田の流出(半田爆ぜ)による不良の発生を防止することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明の電子回路ユニット(電子回路モジュール、高周波モジュールでもよい)は、回路基板と、この回路基板の実装面に底面を対向させた状態で実装された電子部品と、金属板から作製され、電子部品を覆う状態で回路基板の実装面上に設置されるカバーと、電子部品に対してその底面を除く外面に付着し、回路基板には付着することなくカバーと電子部品とを相互に接着する接着部材とを備えた構成である。
【0011】
本発明の電子回路ユニットによれば、電子部品の底面を除く外面に接着部材を付着させた状態でカバーを接着しているので、それだけ接着面積を多く確保することができる。なお、このとき接着部材は電子部品の外面に付着すると同時に、カバーの背面にも付着している。電子部品の底面を除く外面は、回路基板を下に位置した状態でみて、その上に実装されている電子部品の上面及び側面に相当するものである。したがって、電子部品の一面(例えば上面)だけをカバーと接着した場合に比較して、単に接着面積が大きくなるだけでなく、接着部材が電子部品の外面を包み込むようにして立体的に付着するため、カバーを回路基板から剥離させようとする力に対しても、接着部材の接着力は電子部品の上面や側面の各所に分散して作用するため、より強固な接着力を発揮することができる。
【0012】
また、接着部材だけでカバーの取り付け強度を確保できるため、カバーを別途半田付けする必要がなくなり、その分の製造工程を簡略化することができる。また、回路基板上でカバーの半田付け面積を省略することができるため、電子回路ユニット全体を小型化することができるし、不要となった半田付け面積を活かして電子部品の実装密度を向上することもできる。
【0013】
さらに本発明では、回路基板には接着部材を付着させることなくカバーを接着しているので、回路基板上にある電子部品の半田付け部分(例えば半田バンプ)を接着部材が覆うことはない。このため、接着部材を熱硬化させる過程で半田爆ぜ現象が生じることがなく、確実に半田付け不良の発生を防止することができる。
【0014】
より具体的には、電子部品は、少なくともその底面にて回路基板に半田付けされている態様である。このとき接着部材は、電子部品の半田付け部分を覆わない位置に付着していることが好ましい。
【0015】
高密度実装に適した電子部品は、例えばその底面に設けられた半田バンプを介して回路基板にリフローにより半田付けされている形態が多い。このような形態においても、本発明の電子モジュールによれば、接着部材が電子部品の底面にまで回り込まないことから、半田バンプが接着部材で覆われることはない。また、面実装タイプのチップ部品等において、たとえ電子部品の底面から側方に半田付け部分が張り出している形態であっても、接着部材が半田付け部分を覆わない位置に付着しているため、それによって熱硬化時の半田爆ぜ現象を確実に防止することができる。
【0016】
本発明の電子回路ユニットは、回路基板の実装面上に形成された導電部と、カバーの周縁に形成され、回路基板の実装面上に設置された状態で導電部と接触する接触部とをさらに備えてもよい。この場合、カバーの接触部は、接着部材の接着力により導電部に圧着されていることが好ましい。なお導電部は、例えば回路基板に形成された電気回路のグランド(GND)に接続するものであってもよい。
【0017】
上記の構成によれば、カバーを接着部材で接着することで、カバーを回路基板の導電部に対して電気的に接続(圧着)することができる。このため、別途カバーを導電部に対して半田付けする必要がなく、それだけ半田付けに必要な面積を削減できることから、電子回路ユニット全体を小型化することかできるし、削減したスペースを活用して電子部品の実装密度を向上することもできる。
【0018】
また本発明の電子回路ユニットは、カバーに形成され、その周縁から回路基板に向けて突出する脚部と、回路基板の厚み方向に設けられ、内壁に導電層(膜)が形成された穴部とをさらに備えてもよい。この場合、カバーの脚部は、カバーが回路基板の実装面上に設置された状態で穴部に圧入されるとともに、接着部材の接着力により導電層に圧着されていることが好ましい。なお導電層は、例えば回路基板に形成された電気回路のグランド(GND)に接続するものであってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、カバーを接着部材で接着することで、穴部(導電層)に圧入された脚部を電気的に接続(圧着)することができる。このため、別途カバーの脚部を穴部内で半田付けする必要がなく、それだけ製造過程を簡素化することができる。
【0020】
また本発明は、回路基板と、この回路基板の実装面に底面を対向させた状態で実装された電子部品と、電子部品を覆う状態で回路基板の実装面上に設置される金属製のカバーとを有した電子回路ユニットの製造方法を提供する。本発明の製造方法は、以下の工程を有する。
【0021】
〔工程1〕
この工程1では、電子部品を回路基板に実装する。なお、回路基板には予め電気回路を構成する配線パターンや半田付け用のランドが形成されている他、内層パターンやスルーホール、ビア等が形成されていてもよい。いずれにしても工程1で、例えばリフローによる半田付けにより電子部品の実装が行われる。
【0022】
〔工程2〕
この工程2では、電子部品を覆うカバーの背面を上向きにした状態で、この背面に規定量の接着剤を塗布するものとする。ここでいう規定量は、例えば回路基板に実装される電子部品の形状や大きさ、総個数等に基づいて予め決めておくことができる。すなわち、ここで塗布した接着剤は、これ以降の工程で電子部品の外面に回り込んで付着することとなるが、その際、電子部品の底面にまで回り込んだり、回路基板に付着したりしないことを前提として容積(規定量)が計算されているものとする。
【0023】
〔工程3〕
そして工程3において、カバーの背面を上向きにした状態で回路基板の実装面に対してカバーを相対的に設置することにより、カバーの背面に塗布された接着剤に電子部品の底面を除く外面のみを付着させる。このように、上記の工程2において規定量を予め適切にコントロールしておくことにより、この工程3において接着部材が電子部品の底面にまで回り込んだり、回路基板に付着したりするのを確実に防止することができる。
【0024】
〔工程4〕
そして工程4では、回路基板よりカバーを下に位置させた状態で加熱し、接着剤を硬化させる。このとき接着剤は、例えば熱硬化樹脂等の流動体の状態で塗布されているため、上記のように硬化するまではカバーを下にしておくことで、その流動による落下を確実に防止することができる。そして接着剤は、熱硬化すると電子回路ユニットの完成状態において上述した接着部材となる。
【0025】
以上の工程1〜工程4を通じて電子回路ユニットを製造することにより、上述した本発明の電子回路ユニットを得ることができる。また、これ以後の製造過程においてカバーを半田付けする必要がないので、全体として製造工数を削減し、電子回路ユニットの生産効率を向上することができる。
【0026】
本発明の電子回路ユニットの製造方法において、上述したカバーの背面に接着剤を塗布する工程(工程3)では、事前に金属板をプレス加工することで側面の一部が開放された略箱形状にカバーを成型しておくとともに、プレス加工の打ち抜き方向に背面を位置させることで予め側面の開放縁に沿ってバリ状部を設けておき、このバリ状部によって塗布された接着剤の流出を阻止するものとする。
【0027】
例えば、設計上の都合からカバーの側面が部分的に開放された形状であったとしても、上記のように事前のプレス加工によってバリ状部を設けておくことにより、接着剤を塗布する過程でその流出を確実に阻止できるため、それだけ作業性が向上し、かつ、製品の仕上がり品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電子回路ユニット及びその製造方法によれば、接着部材(接着剤)によりカバーを確実に回路基板に対して固定することができるため、回路基板上で半田付け用の面積を削減して全体を小型化することができるし、回路基板上での実装密度を向上することができる。
【0029】
また、カバーの半田付けを省略することで組み立てリフローの工程を削減し、製造工程を簡略化して生産効率を高めることができる。さらに、これまで必要とされていた組み立てリフロー工程をなくすことで、その間に発生していた熱ストスの影響(例えば半田付け強度への影響)をなくすことができる。
【0030】
さらに、完成した状態でカバーの内側に接着部材(硬化樹脂)が充填されているため、それだけユニット(カバー)全体の剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の電子回路ユニットの全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図2】電子回路ユニットの完成状態を示す斜視図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う電子回路ユニットの縦断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線に沿う電子回路ユニットの縦断面図である。
【図5】製造方法の各工程を順番に示した連続図である。
【図6】第2実施形態の電子回路ユニットの全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図7】図6中のVII−VII線に沿うシールドカバー(特に天板)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電子回路ユニット10の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。電子回路ユニット10は、例えば高周波帯の無線通信機能(無線LAN、Bluetooth:登録商標)を有した高周波ユニット(モジュール)であり、このような電子回路ユニット10は、例えば携帯情報端末やノート型パソコン等に内蔵して設けられる。
【0034】
〔回路基板〕
電子回路ユニット10は回路基板12を有しており、回路基板12には図示しない電気回路が形成されている。このため回路基板12の実装面12a上には図示しない配線パターンが設けられている。なお、回路基板12は多層構造を有する形態であってもよく、その場合は回路基板12の内層にも配線パターンが設けられている。
【0035】
〔電子部品〕
回路基板12の実装面12a上には、複数の電子部品14,16,18,20等が実装されている。なお、ここでは図面の煩雑化を防止するため、限られた個数の電子部品14〜20のみを示しているが、実装面12a上にはその他の電子部品もまた実装されており、これらがある程度密集した状態で配置されている。
【0036】
実装される電子部品14〜20としては、例えば、集積回路をパッケージした高周波チップやFETアレイ、チップ抵抗やチップコイル、チップコンデンサ等の受動素子を挙げることができるが、その他のものであってもよい。このうち、比較的大型の電子部品14,16等は、例えば表面実装型のパッケージ部品であり、その外形は扁平な直方体形状をなす。これら電子部品14,16は、例えばその底面(図1には現れていない)に予め設けられた半田バンプを介して回路基板12に実装されている。なお、これら電子部品14,16は、実装される部品の中でも実装面12aに占める面積が大きく、また実装面12a上でみて比較的上背(実装高さ)を有する部品である。
【0037】
〔穴部〕
例えば、回路基板12の隅位置(コーナー位置)には、それぞれスルーホール12b又は挿通穴12cが形成されている。これらスルーホール12bや挿通穴12cは、いずれも回路基板12を厚み方向に貫通して設けられている。またスルーホール12bの内壁面には、例えば導電性ペースト又は導電性めっきによる導電層(参照符号なし)が形成されている。なお導電層は、例えば図示しない電気回路のグランド(GND)に接続されている。
【0038】
〔導電部〕
回路基板12は、例えば平面視で長方形状をなしており、その実装面12a上には一対の長辺部分に相当する両側縁に沿って2条の導電パターン12dが形成されている。これら導電パターン12dは、例えば図示しない電気回路のグランド(GND)に接続されている。
【0039】
〔シールドカバー〕
また電子回路ユニット10はシールドカバー22を有している。このシールドカバー22は、電子回路ユニット10の完成状態で実装面12a上の電子部品14〜20(その他の電子部品を含む)を覆うように配置され、電子部品14〜20を機械的及び電気的に保護する。
【0040】
シールドカバー22は、金属板をプレス加工して形成されており、その形状は図1に示される状態で下端面が全体的に開放された略半箱形をなしている。具体的には、シールドカバー22は実装面12aと対向する天板22aを有するほか、天板22aの4つの辺縁にそれぞれ連なる四方の側板22b,22cを有している。なお側板22b,22cは、天板22aの各辺縁にて折り曲げられ、実装面12aに向けて延びている。
【0041】
〔脚部〕
またシールドカバー22には、対向する一対の側板22cと一体に4つの脚部22dが形成されている。なお、図1には手前側の2つのみ示されているが、図1中でみて奥側に位置する側板22cにもまた、同様の位置に2つの脚部22dが形成されている。これら脚部22dは回路基板12の四隅にそれぞれ対応し定置しており、これら脚部22dはいずれも、側板22cの両側縁部から回路基板12(図1では下方)に向けて突出している。図1中に一点鎖線で示されているように、シールドカバー22が回路基板12に取り付けられた状態で、4つの脚部22dはそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入されるものとなっている。
【0042】
〔脚部の圧入〕
図2は、電子回路ユニット10の完成状態を示す斜視図である。上記のように、シールドカバー22が回路基板12に設置された状態で、4つの脚部22dはそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入されている。このとき、スルーホール12b及び挿通穴12cの内径は脚部22dの幅寸法に略等しく、このため脚部22dは、対応するスルーホール12b又は挿通穴12c内に圧入された状態にある。なお、図2にも手前側の2つのみが示されているが、奥側についても2つの脚部22dがそれぞれ対応するスルーホール12b又は挿通穴12c内に圧入された状態にある。このときスルーホール12b内では、その導電層に対して脚部22dが圧着されることにより、導電層とシールドカバー22とが電気的に接続(圧着)されている。
【0043】
〔側板の圧着〕
また、シールドカバー22が回路基板12に設置された状態で、その4つの側板22b,22cの下端は実装面12aに接触している。このとき長手方向に位置する一対の側板22b(接触部)は、上記の導電パターン12dの直上に位置することで、導電パターン12dに対して圧着された状態にある。そしてこの状態で、導電パターン12dとシールドカバー22とが電気的に接続(圧着)されている。
【0044】
本実施形態(第1実施形態)の電子回路ユニット10において、上述した脚部22dの圧入や側板22bの圧着については、図1及び図2に示されていない接着部材の接着力により実現されている。以下、この点について電子回路ユニット10の内部構造とともに説明する。
【0045】
図3は、図2中のIII−III線に沿う電子回路ユニット10の縦断面図である。また図4は、図2中のIV−IV線に沿う電子回路ユニット10の縦断面図である。なお、これら図3及び図4においては、電子回路ユニット10の内部構造や各部の配置関係の理解を容易にするため、各部の寸法を誇張して表している。
【0046】
〔接着部材〕
シールドカバー22の背面、つまり天板22aの裏面には、接着部材24が充填されている。図3又は図4の断面でみて、接着部材24は背面のほぼ全域にわたって拡がっており、また上下方向でみて接着部材24はある程度の厚み(層厚)を有している。接着部材24は、例えば熱硬化性樹脂(ポリイミド樹脂)を熱処理によって硬化させたものであり、この状態でシールドカバー22を電子部品14,16に対して強固に接着している。
【0047】
〔接着部材の付着範囲〕
ここで図3及び図4に示されているように、接着部材24は電子部品14,16に対し、その上面及び側面には付着しているものの、その底面にまでは付着していない。さらに接着部材24は、シールドカバー22の背面及び電子部品14,16の外面には付着しているものの、回路基板12にまでは付着していない。
【0048】
特に本実施形態においては、各電子部品14,16がそれぞれ底面において半田バンプ14a,16aによって半田付けされているが、接着部材24はこれら半田バンプ14a,16a(半田付け部)を覆わない位置にのみ付着した状態にある。またチップ実装品である電子部品18,20については、それぞれ主に底面(一部の側面)において半田18a,20a(クリーム半田)により半田付けされているが、同じく接着部材24は、これら半田18a,20a(半田付け部)を覆わない位置にのみ付着している。
【0049】
そして接着部材24は、シールドカバー22を電子部品14,16に対して接着することにより、これら電子部品14,16を介してシールドカバー22を回路基板12に対して固定している。このためシールドカバー22は、別途実装面12a上で特に半田付けはされていない。
【0050】
そして図3に示されているように、本実施形態では接着部材24の接着力だけを用いて、上記のように脚部22dがスルーホール12b内で導電層に圧着されるとともに、図4に示されているように、実装面12a上では側板22bが導電パターン12dに対して圧着されている。なお、接着部材24を上記のように熱硬化性樹脂とすることで、その熱処理時における収縮を利用してシールドカバー22を回路基板12に対して強く圧着させることができる。
【0051】
〔製造方法〕
次に、上記の電子回路ユニット10の製造方法について説明する。
図5は、製造方法の各工程を順番に示した連続図である。以下、各工程順に説明する。
【0052】
〔実装工程〕
図5中(A):予め上記の電気回路とともに導電パターン12dやスルーホール12b、挿通穴12cが形成された回路基板12の実装面12a上に、それぞれ電子部品14〜20(その他の電子部品も含む)を実装する。なお電子部品14〜20は、上記のように半田バンプ14a,16aを用いてリフローによる半田付けを行ったり、あるいはクリーム半田(半田18a,20a)を用いてリフローによる半田付けを行ったりして実装することができる。またリフローは、同じ実装工程で行われる。
【0053】
〔塗布工程〕
図5中(B):上記のように予め金属板からプレス成型されたシールドカバー22を、その背面を上向きにした状態で接着部材24の素となる接着剤24aを背面に塗布する。このとき接着剤24aは、例えば充填ノズル26を用いて塗布することができる。また接着剤24aを塗布する量は、これ以降の工程でシールドカバー22に回路基板12を組み合わせたとき、接着剤24aが電子部品14〜20の底面にまで回り込んで付着せず、かつ、回路基板12にも付着することがない適切な量(規定量)として予め計算されているものとする。
【0054】
〔付着工程〕
図5中(C):接着剤24aが塗布された状態のシールドカバー22を下にした状態(背面が上向き)で、回路基板12の実装面12aに対してシールドカバー22を相対的に設置する。ここで「相対的」というのは、回路基板12を静止させた状態でシールドカバー22を上昇させてもよいし、シールドカバー22を静止させた状態で回路基板12を下降させてもよいし、両者を互いに近付けてもよいことを意味する。いずれにしても、このときシールドカバー22の脚部22dをそれぞれ対応するスルーホール12b又は挿通穴12c内に正しく挿入することで、シールドカバー22を回路基板12に対して正しく位置決めすることができる。
【0055】
図5中(D):またこのとき、上記のように比較的背高な電子部品14,16が接着剤24aの充填層に沈み込み、その外面(上面及び側面)に接着剤24aが付着する。ただし、上記のように接着剤24aの塗布量が予め正しく計算されていることから、シールドカバー22を回路基板12に最後まで相対的に設置しても、接着剤24aは電子部品14〜20の底面にまで回り込んで付着することはないし、回路基板12にも付着することはない。これにより、製造過程で各電子部品14〜20の半田付け部分(半田バンプ14a,16a、半田18a,20a)が接着剤24aに覆われてしまうことはない。
【0056】
〔熱硬化工程〕
図5中(D):シールドカバー22を完全に回路基板12に設置すると、シールドカバー22を下にしたままの状態で熱処理を行い、接着剤24aを熱硬化させる。この間、電子部品14〜20の半田付け部分(半田バンプ14a,16a、半田18a,20a)は全て露出しているため、上述した半田爆ぜ現象が生じることはない。
【0057】
以上の工程を実行することで、接着剤24aが熱硬化して接着部材24となり、電子部品14,18を介してシールドカバー22が回路基板12に固定された完成状態となる。したがって、この後に改めてシールドカバー22を半田付けする必要がないことから、組み立てリフローのような後工程を省略することができる。これにより、製造過程を全体として簡略化するとともに、その生産性を向上することができる。
【0058】
さらに、シールドカバー22の接着後に組み立てリフローによる再加熱を行わないことから、その間に熱ストレスが発生することもないし、逆に、完成された電子回路ユニット10は、接着部材24の充填によってシールドカバー22を含めた全体の剛性が向上するという利点がある。
【0059】
また、シールドカバー22を半田付けするための面積を確保する必要がないので、回路基板12をシールドカバー22の側板22b,22cから外側に大きく張り出す必要がなく、それだけユニット全体を小型化することができるし、その分の面積を電子部品の実装領域に割り当てることで、さらに高密度実装が可能となる。
【0060】
〔第2実施形態〕
次に図6は、第2実施形態の電子回路ユニット30の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。第2実施形態の電子回路ユニット30は主に、シールドカバー22の側板22bの一部に開口部22eが設けられている点が第1実施形態と異なっている。その他の構成は第1実施形態と共通であるため、それらについては図示とともに同一の符号を付して重複した説明を省略するものとする。
【0061】
第2実施形態においても、シールドカバー22を接着部材24により接着することで、その確実な固定を行うことができるとともに、シールドカバー22と導電パターン12dやスルーホール12bの導電層との電気的な接続(圧着)を確実に行うことができる。
【0062】
〔バリ状部〕
図7は、図6中のVII−VII線に沿うシールドカバー22(特に天板22a)の縦断面図である。ここでは特に、シールドカバー22の側面における開放縁(天板22aの側端縁)の形態を拡大して示している。
【0063】
〔プレス方向〕
図7中(A):上記のようにシールドカバー22は、事前のプレス加工により金属板から作製されているが、このとき金属板のプレス方向(打ち抜き方向)は、図7中(A)に示される矢印の方向、つまり、シールドカバー22の上面から背面に向かう方向である。言い換えれば、金属板のプレス加工において、そのプレス方向にシールドカバー22の背面が形成されるものとなっている。
【0064】
このような事前のプレス加工を通じて、シールドカバー22の側面における開放縁(天板22aの側端縁)には、微少なバリ状部22fが形成されている。このようなバリ状部22fは、シールドカバー22の側面における開放縁を背面の方向へ僅かに湾曲させている。
【0065】
〔塗布工程時における作用〕
図7中(B):事前のプレス加工により上記のバリ状部22fを設けておくことで、シールドカバー22の背面を上向きにして接着剤24aを塗布する工程においては、開放縁まで拡がってきた接着剤24aの流出がバリ状部22fによって押し止められる(阻止される)。なお、バリ状部22fが設けられることにより、この後の付着工程及び熱硬化工程(図5中(C),(D))においても、同様に接着剤24aの流出は阻止されている。これにより、製造過程での接着剤24aの不用意な流出を防止し、完成状態での仕上がり品質を維持することができる。
【0066】
上述した第1及び第2実施形態では、シールドカバー22を長方形状としているが、シールドカバー22はその他の形状(多角形状、変則形状)であってもよい。
【0067】
また、第1及び第2実施形態で挙げたスルーホール12bや導電パターン12dの配置はあくまで一例であって、これら以外の配置を採用してもよいし、大きさ、配置個数等も適宜に変更することが可能である。
【0068】
また、電子回路ユニットは高周波回路に限らず、その他の電子回路を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10,30 電子回路ユニット
12 回路基板
12a 実装面
12b スルーホール
12c 挿通穴
12d 導電パターン
14,16,18,20 電子部品
14a,16a 半田バンプ
18a,20a 半田
22 シールドカバー
22a 天板
22b,22c 側板
22d 脚部
22e 開口部
22f バリ状部
24 接着部材
24a 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板の実装面に底面を対向させた状態で実装された電子部品と、
金属板から作製され、前記電子部品を覆う状態で前記回路基板の実装面上に設置されるカバーと、
前記電子部品に対してその底面を除く外面に付着し、前記回路基板には付着することなく前記カバーと前記電子部品とを相互に接着する接着部材と
を備えた電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路ユニットにおいて、
前記電子部品は、
少なくともその底面にて前記回路基板に半田付けされており、
前記接着部材は、
前記電子部品の半田付け部分を覆わない位置に付着していることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路ユニットにおいて、
前記回路基板の実装面上に形成された導電部と、
前記カバーの周縁に形成され、前記回路基板の実装面上に設置された状態で前記導電部と接触する接触部とをさらに備え、
前記カバーの接触部は、前記接着部材の接着力により前記導電部に圧着されていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子回路ユニットにおいて、
前記カバーに形成され、その周縁から前記回路基板に向けて突出する脚部と、
前記回路基板の厚み方向に設けられ、内壁に導電層が形成された穴部とをさらに備え、
前記カバーの脚部は、前記カバーが前記回路基板の実装面上に設置された状態で前記穴部に圧入されるとともに、前記接着部材の接着力により前記導電層に圧着されていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項5】
回路基板と、この回路基板の実装面に底面を対向させた状態で実装された電子部品と、前記電子部品を覆う状態で前記回路基板の実装面上に設置される金属製のカバーとを有した電子回路ユニットの製造方法であって、
前記電子部品を前記回路基板に実装する工程と、
前記電子部品を覆う前記カバーの背面を上向きにした状態で、この背面に規定量の接着剤を塗布する工程と、
前記カバーの背面を上向きにした状態で前記回路基板の実装面に対して前記カバーを相対的に設置することにより、前記カバーの背面に塗布された接着剤に前記電子部品の底面を除く外面のみを付着させる工程と、
前記回路基板より前記カバーを下に位置させた状態で加熱し、前記接着剤を硬化させる工程と
を有する電子回路ユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電子回路ユニットの製造方法において、
前記カバーの背面に前記接着剤を塗布する工程では、
事前に金属板をプレス加工することで側面の一部が開放された略箱形状に前記カバーを成型しておくとともに、プレス加工の打ち抜き方向に背面を位置させることで予め前記側面の開放縁に沿ってバリ状部を設けておき、このバリ状部によって塗布された前記接着剤の流出を阻止することを特徴とする電子回路ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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