説明

電子回路ユニット

【課題】シールドケースと接地パターンとの導通の信頼性が高く組立作業性も良好な電子回路ユニットを提供すること。
【解決手段】高周波回路が配設された回路基板1と、この回路基板1に取り付けられた金属板からなる一対の枠体2,3とを備え、これら枠体2,3がシールドケースとして機能する電子回路ユニットであって、回路基板1の片面1a側を囲繞する第1の枠体2が仕切り壁21や該仕切り壁21の先端部に形成された第1の突起23を有し、回路基板1の他面1b側を囲繞する第2の枠体3が仕切り壁31や該仕切り壁31の先端部に形成された第2の突起33を有する。第1および第2の突起23,33は、回路基板1のスルーホール6内へ互いに反対方向から挿入され、接地パターン4に導通されているスルーホール6の内部で壁面導体6aに半田付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受信用チューナ等の高周波回路が配設された回路基板に金属板からなる枠体が取り付けられている電子回路ユニットに係り、特に、回路基板の接地パターンに導通されてシールドケースとして機能する枠体の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子回路ユニットにおいては、金属板からなる枠体や仕切り板を回路基板に取り付け、これら枠体や仕切り板を回路基板の接地パターンに導通させることにより、テレビジョン受信用チューナ等の高周波回路で懸念される局部発振信号の漏れを抑制したり回路特性の安定化を図っている。このような電子回路ユニットの従来例として、回路基板を囲繞する金属板製の枠体に仕切り壁を一体的に設け、この仕切り壁の先端部を回路基板に挿通して接地パターンに半田付けすると共に、枠体の開口端を蓋閉する金属板製のカバーに切り起こし片を設け、この切り起こし片を仕切り壁の先端部に弾接させることにより、枠体およびカバーを回路基板のシールドケースとして機能させるようにしたものが知られている。
【0003】
しかしながら、このように構成された電子回路ユニットでは、カバーの切り起こし片が自身の弾性によって仕切り壁の先端部に当接しているだけなので、切り起こし片と仕切り壁との接触状態が不安定でカバーのシールド効果が損なわれやすいという問題があった。つまり、外部から振動や衝撃が加わったり、切り起こし片にへたり等の塑性変形が生じると、この切り起こし片が仕切り壁の先端部に対して接触不良を起こしやすくなるため、カバーが接地パターンと導通されなくなる虞があった。
【0004】
そこで他の従来例として、枠体とカバーにそれぞれ複数のスリット部を形成すると共に、回路基板上で起立して接地パターンに半田付けされた金属板製の仕切り板を設け、この仕切り板の上下両端に形成した複数の爪片を枠体とカバーのスリット部に挿通して捻じることによって、枠体やカバーと仕切り板とが電気的かつ機械的に接続できるようにした電子回路ユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来技術では、仕切り板の爪片を捻じって枠体やカバーにかしめ付けるので、該爪片を枠体やカバーに安定的に圧着させることができ、それゆえ仕切り板と枠体およびカバーからなるシールドケースを回路基板の接地パターンと確実に導通させることができる。
【特許文献1】特開平10−284866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特許文献1に開示された従来の電子回路ユニットでは、仕切り板に形成した複数の爪片を捻じって枠体やカバーにかしめ付けているので、シールドケースと接地パターンとの導通の信頼性は向上するものの、組立時に複数の爪片を一つずつ手作業で捻じらなければならないため、組立作業性が悪くなるという問題があると共に、爪片を捻じる際の応力で仕切り板の半田付け箇所が剥離する虞もあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールドケースと接地パターンとの導通の信頼性が高く組立作業性も良好な電子回路ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の電子回路ユニットは、高周波回路が配設されていると共に接地パターンに導通されたスルーホールを有する回路基板と、この回路基板の片面側を囲繞して該片面の少なくとも一部を覆う金属板製の第1の枠体と、前記回路基板の他面側を囲繞して前記第1の枠体と電気的に接続される金属板製の第2の枠体とを備え、前記第1の枠体に前記スルーホール内へ片面側から挿入される第1の突起を設けると共に、前記第2の枠体に前記スルーホール内へ他面側から挿入される第2の突起を設け、これら第1および第2の突起を前記スルーホールの内部で半田付けするという構成にした。
【0008】
このように構成された電子回路ユニットは、回路基板を囲繞する金属板製の第1および第2の枠体がそれぞれ、接地パターンに導通されたスルーホール内へ互いに反対方向から挿入される第1の突起と第2の突起を有し、これら第1および第2の突起がスルーホールの内部で半田付けされるため、シールドケースとして機能する第1および第2の枠体を回路基板の接地パターンに確実に接続することができ、両枠体の回路基板に対する取付強度も高めやすい。また、組立時には第1の突起と第2の突起をスルーホール内へ挿入した状態で、回路基板上に搭載した各種電子部品と一括してリフロー半田を行うことができるので、両枠体を回路基板に容易に取り付けることができて組立作業性が良好となる。
【0009】
上記の構成において、第1の枠体に回路基板の片面に向かって垂下する第1の仕切り壁を設け、この第1の仕切り壁の先端部に第1の突起を形成すると共に、第2の枠体に回路基板の他面に向かって起立する第2の仕切り壁を設け、この第2の仕切り壁の先端部に第2の突起を形成してあると、組立時に第1および第2の仕切り壁を回路基板の表面(片面や他面)に押し当てることによって両枠体の取付高さを規定でき、かつ第1および第2の突起をスルーホールの壁面で位置規制することによって回路基板の表面に沿う平面内での両枠体の取付位置も規定できるため、組立作業性が一層向上させやすくなる。しかも、両枠体の第1の仕切り壁や第2の仕切り壁で回路基板上の特定部位から漏れる信号を電磁的にシールドすることができるため、シールド効果の高いシールドケースを少ない部品点数で実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子回路ユニットによれば、回路基板を囲繞する金属板製の第1および第2の枠体がそれぞれ、接地パターンに導通されたスルーホール内へ互いに反対方向から挿入される第1の突起と第2の突起を有し、これら第1および第2の突起がスルーホールの内部で半田付けされるため、シールドケースとして機能する第1および第2の枠体を回路基板の接地パターンに確実に接続することができ、両枠体の回路基板に対する取付強度も高めやすい。また、組立時には第1の突起と第2の突起をスルーホール内へ挿入した状態で、回路基板上に搭載した各種電子部品と一括してリフロー半田を行うことができるので、両枠体を回路基板に容易に取り付けることができて組立作業性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る電子回路ユニットの外観斜視図、図2は該電子回路ユニットの平面図、図3は図2のA−A線に沿う断面図、図4は図3のB部拡大図、図5は該電子回路ユニットの分解斜視図である。
【0012】
これらの図に示す電子回路ユニットは、テレビジョン受信用チューナ等の高周波回路が配設された回路基板1と、この回路基板1に取り付けられた金属板からなる第1および第2の枠体2,3とによって主に構成されており、第1および第2の枠体2,3を組み合わせてなる筐体がシールドケースとして機能する。
【0013】
回路基板1には、配線パターン(図示せず)や接地パターン4が形成されていると共に、これら配線パターンや接地パターン4に接続された各種の電子部品5が片面1a上に実装されている。また、回路基板1には複数箇所に接地用のスルーホール6が設けられており、各スルーホール6の壁面導体6a(図4参照)が接地パターン4および半田ランド7に導通されている。このほか、回路基板1には、電気的に孤立した半田ランド8や、配線パターンに接続された図示せぬスルーホール等が設けられている。なお、図4中の符号10は半田を示している。
【0014】
第1の枠体2は金属板をプレス抜きして所定形状に折曲加工したものであり、その一端(図5における下端)が回路基板1と略同形の開口端となっている。この第1の枠体2は、回路基板1の片面1a側を囲繞する四角枠状の側板部20と、回路基板1の片面1aに向かって垂下する複数の仕切り壁21と、回路基板1の片面1a上の一部を覆う天板部22と、仕切り壁21の先端部に突設された第1の突起23と、回路基板1に係着させるための複数の係合片24とを備えている。仕切り壁21は第1の突起23を除く先端部分が回路基板1の片面1aと略同等の高さ位置まで垂下しており、図4に示すように、仕切り壁21の先端部分の適宜箇所が半田ランド8等に半田付けされている。また、第1の突起23はスルーホール6内へ挿入されて壁面導体6aに半田付けされており、該第1の突起23の基端近傍において仕切り壁21の先端部分が半田ランド7に半田付けされている。なお、第1の枠体2の側板部20には一辺に沿って合成樹脂製の端子保持板25が取着されており、この端子保持板25に複数本の端子26が保持されている。
【0015】
第2の枠体3も金属板をプレス抜きして所定形状に折曲加工したものであり、その一端(図5における上端)が回路基板1と略同形の開口端となっている。この第2の枠体3は、回路基板1の他面1b側を囲繞する四角枠状の側板部30と、回路基板1の他面1bに向かって起立する複数の仕切り壁31と、回路基板1の他面1b上の一部を覆う底板部32と、仕切り壁31の先端部に突設された第2の突起33と、回路基板1に係着させるための複数の係合片34とを備えている。仕切り壁31は第2の突起33を除く先端部分が回路基板1の他面1bと略同等の高さ位置まで起立しており、第2の突起33はスルーホール6内へ挿入されて壁面導体6aに半田付けされている。
【0016】
このような構成の電子回路ユニットを組み立てる際には、まず、回路基板1の片面1a上に図示せぬクリーム半田を印刷して各種の電子部品5を搭載する。このとき、スルーホール6内にはクリーム半田を充填させておく。そして、この回路基板1を片面1aを上に向けたまま第2の枠体3の仕切り壁31上に搭載して、スルーホール6内に第2の突起33を挿入すると共に、係合片34を回路基板1の周縁部に係着(スナップ止め)させる。次に、回路基板1の片面1a側から第1の枠体2を取り付けてスルーホール6内に第1の突起23を挿入すると共に、係合片24を回路基板1の周縁部に係着(スナップ止め)させる。これにより、第1の枠体2と第2の枠体3が回路基板1に仮固定された状態となり、第1および第2の枠体2,3どうしの相対位置も規定される。しかる後、かかる仮固定状態の回路基板1と第1および第2の枠体2,3をリフロー炉へ搬送してクリーム半田を溶融させるというリフロー半田工程を行うことによって、各種の電子部品5が回路基板1の片面1a上に実装されると共に、第1および第2の突起23,33がスルーホール6の内部で壁面導体6aに半田付けされる。また、かかるリフロー半田工程によって、第1および第2の枠体2,3の各仕切り壁21,31の先端部分が半田ランド7や半田ランド8に半田付けされると共に、端子26群が回路基板1の配線パターンに半田付けされる。したがって、第1および第2の枠体2,3は接地パターン4に導通された状態で回路基板1に確実に固定され、かつ回路基板1に配設された高周波回路は端子26群を介して外部回路と接続可能となり、図1〜図3に示す電子回路ユニットが得られる。
【0017】
以上説明したように、本実施形態例に係る電子回路ユニットは、回路基板1を囲繞する金属板製の第1および第2の枠体2,3がそれぞれ、回路基板1の接地用のスルーホール6内へ互いに反対方向から挿入される第1の突起23と第2の突起33を有し、これら第1および第2の突起23,33がスルーホール6の内部で壁面導体6aに半田付けされるため、シールドケースとして機能する第1および第2の枠体2,3を回路基板1の接地パターン4に確実に導通させることができ、第1および第2の枠体2,3の回路基板1に対する取付強度も高めやすい。また、組立時には第1の突起23と第2の突起33をスルーホール6内へ挿入した状態で、回路基板1上に搭載した各種の電子部品5と一括してリフロー半田を行うことができるため、第1および第2の枠体2,3を回路基板1に容易に取り付けることができて組立作業性が良好となる。しかも、第1および第2の突起23,33が仕切り壁21,31の先端部に突設されていることから、組立時に仕切り壁21,31を回路基板1の表面(片面1aや他面1b)に押し当てることによって第1および第2の枠体2,3の取付高さを規定でき、かつ第1および第2の突起23,33をスルーホール6の壁面で位置規制することにより、回路基板1の表面に沿う平面内での第1および第2の枠体2,3の取付位置も規定できる。したがって、この電子回路ユニットは組立作業性が極めて良好となる。
【0018】
また、この電子回路ユニットは、第1および第2の枠体2,3の仕切り壁21,31や天板部22,32によって、回路基板1上の特定部位から漏れる信号を電磁的にシールドすることができるため、シールド効果の高いシールドケースを少ない部品点数で実現することができる。さらに、この電子回路ユニットは、スルーホール6内に半田10が充填されているため、回路基板1に対する第1および第2の枠体2,3の取付強度や導通の信頼性が極めて高くなっている。
【0019】
なお、上記実施形態例では、リフロー半田工程の前に第1および第2の枠体2,3を回路基板1に仮固定させるために、回路基板1の周縁部にスナップ止めできる係合片24,34を第1および第2の枠体2,3に設けているが、他の適宜手段によって回路基板1と第1および第2の枠体2,3を仮固定状態にすることも可能である。例えば、第2の枠体3の開口端近傍に回路基板1を仮保持できる凹段部等を設け、このような第2の枠体3の開口端近傍に第1の枠体2を外嵌させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態例に係る電子回路ユニットの外観斜視図である。
【図2】該電子回路ユニットの平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】該電子回路ユニットの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 回路基板
2 第1の枠体
3 第2の枠体
4 接地パターン
5 電子部品
6 (接地用)スルーホール
6a 壁面導体
7,8 半田ランド
21 仕切り壁(第1の仕切り壁)
23 第1の突起
31 仕切り壁(第2の仕切り壁)
33 第2の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路が配設されていると共に接地パターンに導通されたスルーホールを有する回路基板と、この回路基板の片面側を囲繞して該片面の少なくとも一部を覆う金属板製の第1の枠体と、前記回路基板の他面側を囲繞して前記第1の枠体と電気的に接続される金属板製の第2の枠体とを備え、
前記第1の枠体に前記スルーホール内へ片面側から挿入される第1の突起を設けると共に、前記第2の枠体に前記スルーホール内へ他面側から挿入される第2の突起を設け、これら第1および第2の突起を前記スルーホールの内部で半田付けしたことを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1の枠体に前記回路基板の片面に向かって垂下する第1の仕切り壁を設け、この第1の仕切り壁の先端部に前記第1の突起を形成すると共に、前記第2の枠体に前記回路基板の他面に向かって起立する第2の仕切り壁を設け、この第2の仕切り壁の先端部に前記第2の突起を形成したことを特徴とする電子回路ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate