説明

電子回路ユニット

【課題】シールドカバーの脱落が防止された電子回路ユニットを提供する。
【解決手段】電子回路ユニットは、電子部品が実装された実装面12を有する回路基板10と、電子部品を覆うように実装面12に配置され、実装面12から離間した位置に開口部28を有する金属板から作製されたカバー16と、回路基板10とカバー16とを接続する半田部22と、開口部28の縁から実装面12に渡り、回路基板10とカバー16とを接続する接着剤からなる接着部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路ユニットに係わり、より詳しくは、金属製のカバーを備えた電子回路ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に半導体チップ等の電気部品が実装された電子回路ユニットには、電気部品を覆う金属製のシールドカバーを有するものがある。シールドカバーは、基板に半田を用いて固定され、電気部品を保護すると同時に、グランド電極としても機能する。
【0003】
近年、電子回路ユニットの小型化に伴い、シールドカバーを半田付けするためのランド面積を基板に十分に確保できないことがある。このような場合、例えば特許文献1が開示するシールドカバー付きの電子回路ユニットのように、箱形のシールドカバーが、半田とともに接着剤を用いて基板に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−103749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシールドカバー付き電子回路ユニットでは、接着剤がシールドカバーの平坦な側壁外面に付着しているのみであり、カバーに対する接着剤の密着力が十分に高いとはいえない。また、接着剤が収縮して接着剤に応力が作用した場合、接着剤が側壁から剥離し易い。このため、シールドカバー又は基板に衝撃や荷重がかかると、シールドカバーが基板から脱落してしまう虞があった。
【0006】
本発明は上記した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、シールドカバーの脱落が防止された電子回路ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0008】
解決手段1:本発明の一態様によれば、電子部品が実装された実装面を有する回路基板と、前記電子部品を覆うように前記実装面に配置され、前記実装面から離間した位置に開口部を有する金属板から作製されたカバーと、前記回路基板と前記カバーとを接続する半田部と、前記開口部の縁から前記実装面に渡り、前記回路基板と前記カバーとを接続する接着剤からなる接着部とを備えることを特徴とする電子回路ユニットが提供される。
【0009】
解決手段1の電子回路ユニットでは、開口部の縁に接着部が掛かっていることで、基板の法線方向にてカバーが基板から離間することが規制される。このため、接着部がカバーから剥離し難く、接着部によって基板に対しシールドカバーが堅固に固定される。この結果として、この電子回路ユニットでは、カバーの脱落が防止される。
【0010】
解決手段2:好ましくは、前記接着部は、前記カバーの表側及び裏側の両方にて、前記開口部の縁から前記実装面に渡っている。
【0011】
解決手段2の電子回路ユニットでは、接着部がカバーの表側及び裏側に設けられ、開口部を通じて繋がっているので、基板の法線方向にてカバーが基板から離間することがより強力に規制される。この結果として、この電子回路ユニットでは、基板からのカバーの脱落がより確実に防止される。
【0012】
解決手段3:好ましくは、前記カバーは、前記実装面と対向する対向壁と、前記対向壁から前記実装面に向けて延びる囲繞壁とを有し、前記開口部は、前記囲繞壁から前記対向壁に渡っている。
【0013】
解決手段3の電子回路ユニットでは、開口部の一部が対向壁にも形成されているので、接着部を構成する接着剤の付与が容易である。
また、開口部の一部が対向壁にも形成されていることで、基板にカバーを固定した後も、内部の電子部品の様子をカバーの外側から容易に確認することができる。このため、この電子回路ユニットについては、品質管理を的確に行うことができる。
【0014】
解決手段4:好ましくは、前記カバーは、前記実装面側の前記囲繞壁の縁に一体に連なり、前記実装面に沿う脚部を更に有し、前記脚部は前記接着部に覆われている。
【0015】
解決手段4の電子回路ユニットでは、実装面に沿う脚部が接着部に覆われることで、基板の法線方向にてカバーが基板から離間することがより強力に規制される。この結果として、この電子回路ユニットでは、基板からのカバーの脱落がより確実に防止される。
【0016】
解決手段5:好ましくは、前記脚部は、前記カバーの内側に位置している。
【0017】
解決手段5の電子回路ユニットでは、脚部がカバーの内側に位置しており、脚部を設けたとしても、基板上に占めるカバーの面積の増大が防止される。このため、この電子回路ユニットによれば、ユニット全体の小型化を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明の電子回路ユニットでは、カバーが基板に対し接着部によって堅固に固定され、カバーの脱落が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施形態に係る電子回路ユニットを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の電子回路ユニットを分解した状態で示す斜視図である。
【図3】図1の領域IIIを拡大して示す図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う部分断面図である。
【図5】図1の電子回路ユニットにおける、回路基板に対するシールドカバーの固定方法を示すフローチャートである。
【図6】第二実施形態に係る電子回路ユニットに用いられるシールドカバーの開口部近傍を拡大して示す斜視図である。
【図7】第二実施形態に係る電子回路ユニットにおける、第一実施形態の図4に相当する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
〔第一実施形態〕
図1は、第一実施形態に係る電子回路ユニットを示す斜視図である。
電子回路ユニットは、例えば、高周波を送受信する機能を有し、パソコンにUSB接続される無線LAN装置に内蔵される。
【0022】
図2は、電子回路ユニットを分解した状態で示す斜視図であり、電子回路ユニットは、配線パターンを有する回路基板10と、回路基板10の少なくとも一方の面(実装面)12に実装された、複数の電子部品とを有する。電子部品としては、例えば、ICチップ14が実装されている。ICチップ14は、例えば表面実装技術を用いて実装される表面実装デバイスであり、扁平な直方体形状を有する。
【0023】
〔シールドカバー〕
また、電子回路ユニットは、回路基板10の実装面12に固定されたシールドカバー16を有する。シールドカバー16は、実装面12上の電子部品を覆うように配置され、電子部品を機械的及び電気的に保護している。
【0024】
具体的には、シールドカバー16は、金属板を成形して形成され、例えば、扁平な箱形状を有する。シールドカバー16は、実装面12と対向する天井壁(対向壁)18と、対向壁18の4つの辺縁に連なり、実装面12に向けて延びる4つの側壁(囲繞壁)20とを有する。つまり、対向壁18の辺縁は折り曲げられ、対向壁18に略直交するように囲繞壁20が一体に連なっている。
【0025】
対向壁18と実装面12との間に電子部品は位置しており、囲繞壁20は、電子部品の周りを囲んでいる。対向壁18とは反対側の囲繞壁20の辺縁は、実装面12の近傍に位置するか、実装面12に当接しており、囲繞壁20と実装面12との間の隙間は、可及的に小さくされている。
なお、対向壁18の外形は例えば長方形であり、以下では、4つの囲繞壁20のうち長い方を長壁20aといい、短い方の側壁を短壁20bともいう。
【0026】
〔半田部〕
シールドカバー16の例えば4隅には、半田部22が設けられ、半田部22は、実装面12に対してシールドカバー16を固定するとともに、シールドカバー16と回路基板10の配線回路のグランド側とを接続している。
【0027】
具体的には、図2に示したように、シールドカバー16の4隅には、突起24が一体に形成されている。突起24は、実装面12と直交するように囲繞壁20から突出している。シールドカバー16の4隅が位置付けられる回路基板10の部分には、スルーホール(図示せず)が形成されており、突起24は、対応するスルーホールにそれぞれ挿入される。そして、突起24がスルーホールに挿入された状態で、突起24の周辺が半田付けされ、これにより半田部22が形成される。
【0028】
〔接着部〕
図3は、図1中の領域IIIの拡大図であり、図3に示したように、シールドカバー16の例えば2つの長壁20aの中央には、接着部26が設けられている。接着部26は接着剤からなり、好ましくは、熱硬化性の接着剤である。接着部26は、半田部22と協働して、シールドカバー16を回路基板10に対して固定している。
なお、図2の分解斜視図においては、接着部26は省略されている。
【0029】
〔開口部〕
ここで、シールドカバー16の囲繞壁20には、実装面12側の辺縁から離間した位置に、開口部28が形成されている。
本実施形態では、好ましい態様として、開口部28が、長壁20aから対向壁18に渡っており、長壁20aに形成された開口部28の部分は長方形をなし、対向壁18に形成された開口部28の部分は半円形をなす。
【0030】
図4は、図1中のIV−IV線に沿う部分断面図であり、図3及び図4に示したように、前述した接着部26は、実装面12側の開口部28の縁に掛かっている。すなわち、接着部26は、長壁20aの表側の略4半球形の部分と、長壁20aの裏側略4半球形の部分とを有し、接着部26の表側の部分と裏側の部分とが、開口部28通じて一体に繋がっている。
【0031】
このため、接着部26は、全体として、略半球形をなし、開口部28よりも実装面12側の長壁20aの部分(被接着部)30は、接着部26に殆ど覆われている。つまり、接着部26は実装面12、被接着部30の両面、及び、開口部28の縁に対して密着している。
【0032】
〔製造方法〕
以下、上述した電子回路ユニットにおける、回路基板10へのシールドカバー16の固定方法について説明する。
図5は、固定方法の手順を示すフローチャートであり、まず、電子部品が実装された回路基板10のスルーホール内及びその近傍に、半田ペーストが塗布される(ステップS10)。
【0033】
ステップS10の後、突起24をスルーホールに挿入しながら、シールドカバー16を回路基板10の実装面12上に配置する(ステップS12)。
ステップS12の後、長壁20aの被接着部30を覆うように、接着剤を被接着部30及びその近傍に注液する(ステップS14)。
【0034】
ステップS14の後、シールドカバー16が配置された回路基板10には、連続炉を通過させるリフロー処理が施され、半田ペースト及び接着剤が加熱される(ステップS16)。これにより、熱硬化性の接着剤が硬化して接着部26になるとともに、半田ペーストが硬化して半田部22になり、固定が終了する。
【0035】
上述した第一実施形態の電子回路ユニットでは、開口部28の縁に接着部26が掛かっていることで、回路基板10の法線方向にてシールドカバー16が回路基板10から離間することが規制される。このため、接着部26がシールドカバー16から剥離し難く、接着部26によって回路基板10に対しシールドカバー16が堅固に固定される。この結果として、この電子回路ユニットでは、シールドカバー16の脱落が防止される。
【0036】
また、上述した第一実施形態の電子回路ユニットでは、接着部26がシールドカバー16の表側及び裏側に設けられ、開口部28を通じて繋がっているので、回路基板10の法線方向にてシールドカバー16が回路基板10から離間することがより強力に規制される。この結果として、この電子回路ユニットでは、回路基板10からのシールドカバー16の脱落がより確実に防止される。
【0037】
更に、上述した第一実施形態の電子回路ユニットでは、開口部28の一部が対向壁18にも形成されているので、接着部26を構成する接着剤の付与が容易である。
また、開口部28の一部が対向壁18にも形成されていることで、回路基板10にシールドカバー16を固定した後も、内部の電子部品の様子をシールドカバー16の外側から容易に確認することができる。このため、この電子回路ユニットについては、品質管理を的確に行うことができる。
【0038】
〔第二実施形態〕
以下、第二実施形態に係る電子回路ユニットについて説明する。
図6は、第二実施形態の電子回路ユニットで用いられるシールドカバー32の開口部28近傍を示している。なお、第一実施形態と同一の構成については、同一の符合を付して説明を省略する。
【0039】
シールドカバー16は、被接着部30の実装面12側の辺縁から、脚部34が一体に延びている。脚部34は、実装面12に沿うように延び、例えば、四角形の平面視形状を有する。脚部34は、好ましくは、図7に示したようにシールドカバー16の内側に位置付けられる。そして、脚部34は、被接着部30とともに、接着部26によって覆われている。
【0040】
第二実施形態の電子回路ユニットでは、実装面12に沿う脚部34が接着部26に覆われることで、回路基板10の法線方向にてシールドカバー16が回路基板10から離間することがより強力に規制される。つまり、脚部34が抜け止めとして機能する。この結果として、この電子回路ユニットでは、回路基板10からのシールドカバー16の脱落がより確実に防止される。
【0041】
また、第二実施形態の電子回路ユニットでは、脚部34がシールドカバー16の内側に位置しており、脚部34を設けたとしても、回路基板10上に占めるシールドカバー16の面積の増大が防止される。このため、この電子回路ユニットによれば、ユニット全体の小型化を図ることが可能である。
【0042】
本発明は、上述した第一及び第二実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、接着部36は、開口部28の縁に掛かっていれば、シールドカバー16,32の表側と裏側のうち何れか一方に設けられていればよい。
また、開口部28は囲繞壁20に少なくとも形成されていればよく、必ずしも、対向壁18にまで広がっている必要はない。
【0043】
更に、開口部28は、囲繞壁20の何れかの部位に形成されていればよく、例えば、隅に設けられていてもよい。開口部28の数や、接着部26及び半田部22の数も特に限定されることはない。
また更に、使用する接着剤は、熱硬化性の接着剤に限定されることはない。
回路基板10に対しシールドカバー16,32を固定する方法も限定されることはなく、リフロー処理によって、シールドカバー16,32の固定と電気部品の固定を同時に行っても良い。また、加熱手段は連続炉に限定されることはない。
【0044】
一方、シールドカバー16,32の形状は、箱形状に限定されることはなく、必要に応じて、囲繞壁20の一部に切欠きが形成されていてもよい。脚部34は、シールドカバー16,32の内側ではなく、外側に向けて延びていてもよい。脚部34の平面視形状は、半円形等であってもよい。
最後に電子回路ユニットが適用される装置は、無線LAN装置に限定されることがないのは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
10 回路基板
12 実装面
16,32 シールドカバー(カバー)
18 対向壁
20 囲繞壁
22 半田部
26 接着部
28 開口部
30 被接着部
34 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された実装面を有する回路基板と、
前記電子部品を覆うように前記実装面に配置され、前記実装面から離間した位置に開口部を有する金属板から作製されたカバーと、
前記回路基板と前記カバーとを接続する半田部と、
前記開口部の縁から前記実装面に渡り、前記回路基板と前記カバーとを接続する接着剤からなる接着部と
を備えることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路ユニットにおいて、
前記接着部は、前記カバーの表側及び裏側の両方にて、前記開口部の縁から前記実装面に渡っている
ことを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路ユニットにおいて、
前記カバーは、前記実装面と対向する対向壁と、前記対向壁から前記実装面に向けて延びる囲繞壁とを有し、
前記開口部は、前記囲繞壁から前記対向壁に渡っている
ことを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の電子回路ユニットにおいて、
前記カバーは、前記実装面側の前記囲繞壁の縁に一体に連なり、前記実装面に沿う脚部を更に有し、
前記脚部は前記接着部に覆われている
ことを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の電子回路ユニットにおいて、
前記脚部は、前記カバーの内側に位置している
ことを特徴とする電子回路ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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