説明

電子書籍表示装置

【課題】応答性能が速く、しかも単純な構造であるために優れた表示性能が安定して得られる、電子書籍情報の表示に適した安価な装置を提供する。
【解決手段】記憶媒体からの情報を表示する表示部を有する電子書籍表示装置において、該表示部を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板10,20間の密閉された空間に、気体を分散媒として画像表示媒体30を封入し、画像表示媒体30に電界を与えて画像表示媒体を移動させて画像を形成する表示板から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵した半導体記憶装置や、いわゆるPCカード、スマートメディア、CD−ROM等の光記憶ディスク並びにMO等の磁気記憶ディスクなどの外部記憶媒体に記録された情報、特に文字情報を表示する表示部を有する電子書籍表示装置に関するものである。
【0002】
ここで、電子書籍とは書籍などに含まれる文字や図形の情報をデジタルデータ化したものの総称であり、小説や辞書などの書籍をCD−ROM等の記録媒体に記録したものが普及しているが、近年のインターネットの普及を始めとする、情報通信形態の格段の進歩に連れて、様々な形態での電子化した書籍情報が従来の書籍に替わる情報媒体として流通し始めている。
【背景技術】
【0003】
かような電子書籍の利用方法としては、該電子書籍に記録してある情報を、パーソナルコンピューターや専用の表示装置を用いて表示、閲覧するのが一般的である。書籍としての携帯性を考慮した際、多機能のパーソナルコンピューターよりも特化された専用の表示装置が有利であり、そのための装置が種々提案されている。
【0004】
すなわち、表示装置として透過型の液晶パネルは、バックライトが必要であり携帯性が重要である電子書籍表示装置には不適当であるため、従来の電子書籍用表示装置のほとんどがその表示部に反射型液晶表示装置を使用している。しかし、この反射型液晶表示装置では光シャッターとなる液晶層と反射板との間に液晶セルのガラス基板が存在するため、液晶による実像と反射板による虚像との間に視差が生じてしまい、表示画像に影が発生し、さらに液晶表示装置特有の視角特性があり、表示画面とユーザーの視線の成す角度によって表示コントラストが大きく変化してしまうという不具合がある。かような背景から、特許文献1では、ポリマーフィルムを使用した表示品質に優れた液晶を使用した電子書籍用の表示装置が提案されている。
【特許文献1】特開2001−92383号公報
【0005】
ところで、電子書籍用の表示装置には、本来の書籍に対する違和感を極力抑えるために、形状や重量を本来の書籍に近付けること、すなわち厚みが薄くかつ重量が軽いことが要求され、さらに消費電力が小さいこと、表示品質にすぐれることも求められている。しかしながら、液晶パネルは電極を設けたガラス基板を対向させ、これら2枚の基板間に液晶を保持しているため、厚さを薄くするには限界があり、しかもメモリー性がないことから、情報を表示し続けるためには常時電力を供給する必要がある。従って、電子書籍用の表示装置として必要とされる、厚みが薄くかつ重量が軽いこと及び、消費電力が小さいことに対する要求には、十分に答えることができない。
さらに、表示品質についても、視野角が狭い上、コントラストも本来の書籍と遜色のないレベルに達していないのは勿論である。
【0006】
ここに、液晶に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた画像表示装置が提案されている。
これら従来技術は、液晶と比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られること、消費電力が小さいこと、メモリー機能を有していること等のメリットがあることから、電子書籍用の表示装置に適している。最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、電子書籍用の表示装置として製品化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、情報を繰り返して表示する際の応答性に欠けるという問題を抱えている。なお、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであるから、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0008】
本発明は、上述した問題に着目してなされたものであり、応答性能が速く、しかも単純な構造であるために優れた表示性能が安定して得られる、電子書籍情報の表示に適した安価な装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、電子書籍表示装置としては、その携帯を前提にした場合に電源は電池であるのが通例であるが、長時間或いは長期にわたって読書環境を保証するのが難しいことも、携帯型の電子書籍表示装置の課題であった。そこで、連続した動作環境が保証される機能を電子書籍表示装置に与えることが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は次の通りである。
(1)記憶媒体からの情報を表示する表示部を有する電子書籍表示装置であって、該表示部は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間の密閉された空間に、気体を分散媒として画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて画像表示媒体を移動させて画像を形成する表示板から成ることを特徴とする電子書籍表示装置。
【0011】
(2)駆動用電源として電池および家庭用電源の2系統を備えることを特徴とする上記(1)に記載の電子書籍表示装置。
【0012】
(3)画像表示媒体が粒子群または粉流体であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の電子書籍表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子書籍情報の表示を、両基板間の密閉された空間に、気体を分散媒として封入した画像表示媒体の移動によって実現するため、応答が速くかつコントラスト比の高い表示が可能であり、しかも単純な構造で消費電力も少ないから、安価かつ安定性に優れる電子書籍表示装置を提供することができる。
【0014】
また、2電源方式を採用すれば、家庭用電源が使用できる場所では電池の消耗を回避できるため、長時間の動作が保証された電子書籍表示装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の電子書籍表示装置について、図面を参照して詳しく説明する。
図1に示す電子書籍表示装置は、薄板状の筐体1の上面に、外部または内部の記憶媒体からの情報を表示する表示部2を有し、さらに筐体1には、電池(図示せず)を内蔵してなる。また、表示部2における表示内容を更新する手段を有する。この更新手段としては、例えば表示している頁の前頁または次頁を表示するための頁送り手段があり、この頁送りは筐体1上面の操作部3を操作することによって行う。
【0016】
また、筐体1の側面には、電池以外の電源として家庭用電源を使用する場合に、図2に示すように、家庭用電源にトランス付接続コード4を介して接続するための端子5を備え、電池および家庭用電源の2系統での電力供給を可能としている。なお、符号6は、これら2系統電源の切り替えスイッチである。
【0017】
次に、上記した表示部2について、この表示部2を構成する表示板の基本的な構成について説明する。
本発明で用いる表示板は、対向する2枚の基板間に封入した少なくとも1種の粒子から構成される少なくとも2種類の、互いに色と帯電特性の異なる画像表示媒体(粒子群または粉流体)に電界を付与することによって情報を形成する。すなわち、付与された電界方向にそって、高電位側に向かっては低電位に帯電した画像表示媒体が電界の力やクーロン力などによって引き寄せられ、また、低電位側に向かっては高電位に帯電した画像表示媒体が電界の力やクーロン力などによって引き寄せられ、それら画像表示媒体が電位の切替えによる電界方向の変化によって往復運動することにより、画像表示がなされる。従って、画像表示媒体が、均一に移動し、かつ繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、表示板を設計する必要がある。ここで、画像表示媒体とする粒子または粉流体にかかる力は、粒子同士または粉流体同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0018】
本発明の表示板の例を、図3(a)、(b)および図4(a)、(b)に基づき説明する。
図3(a)および(b)に示す例では、基板10および20間の密閉された空間に気体、例えば乾燥空気を分散媒として封入した少なくとも1種の粒子から構成される少なくとも2種の色の異なる画像表示媒体30(ここでは白色粒子30Wと黒色粒子30Bを示す)を、基板10および20の外部から加えられる電界に応じて、基板10および20と垂直方向に移動させ、黒色粒子30Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うかあるいは、白色粒子30Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図3(b)に示す例では、図3(a)に示す例に加えて、基板10と20との間に例えば格子状に隔壁40を設け表示セルを画成している。
【0019】
図4(a)および(b)に示す例では、少なくとも1種の粒子から構成される少なくとも2種の色の異なる画像表示媒体30(ここでは白色粒子30Wと黒色粒子30Bを示す)を、基板10に設けた電極50と基板20に設けた電極60との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板10、20と垂直に移動させ、黒色粒子30Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子30Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図4(b)に示す例では、図4(a)に示す例に加えて、基板10、20との間に例えば格子状に隔壁40を設け表示セルを画成している。
以上の説明は、白色粒子30Wを白色粉流体に、黒色粒子30Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
【0020】
以下、本発明の画像表示板を構成する各部材について説明する。
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から画像表示媒体の色が確認できる透明な基板20であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板10は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型の画像表示板とする場合に不都合がある。
【0021】
必要に応じて基板に設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。視認側基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した視認側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0022】
必要に応じて設ける隔壁40については、その形状は表示にかかわる画像表示媒体の種類により適宜最適に設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0023】
これらのリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図5に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。このうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。いずれの方法においても本発明を好適に用いることができる。
【0024】
次に、本発明の画像表示用パネルで用いる画像表示媒体としての粉流体について説明する。なお、本発明の画像表示媒体としての粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標)」の権利を得ている。
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0025】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち分散媒となる気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
【0026】
本発明の画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、画像表示媒体として気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に例えば用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0027】
ここで、エアロゾル状態の範囲は、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3倍以上である。上限は特に限定されないが、12倍以下であることが好ましい。
【0028】
粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍より小さいと表示上の制御が難しくなり、また、12倍より大きいと粉流体を装置内に封入する際に舞い過ぎてしまうなどの取扱い上の不便さが生じる。なお、最大浮遊時の見かけ体積は次のようにして測定される。すなわち、粉流体が透過して見える密閉容器に粉流体を入れ、容器自体を振動或いは落下させて、最大浮遊状態を作り、その時の見かけ体積を容器外側から測定する。具体的には、直径(内径)6cm、高さ10cmのポリプロピレン製の蓋付き容器(商品名アイボーイ:アズワン(株)製)に、未浮遊時の粉流体として1/5の体積相当の粉流体を入れ、振とう機に容器をセットし、6cmの距離を3往復/secで3時間振とうさせる。振とう停止直後の見かけ体積を最大浮遊時の見かけ体積とする。
【0029】
また、本発明においては、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものが好ましい。
10/V>0.8
ここで、Vは最大浮遊時から5分後の見かけ体積(cm)、V10は最大浮遊時から10分後の見かけ体積(cm)を示す。なお、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化V10/Vが0.85よりも大きいものが好ましく、0.9よりも大きいものが特に好ましい。V10/Vが0.8以下の場合は、通常のいわゆる粒子を用いた場合と同様となり、本発明のような高速応答、耐久性の効果が確保できなくなる。
【0030】
粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、好ましくは0.1〜20μm、更に好ましくは0.5〜15μm、特に好ましくは0.9〜8μmである。0.1μmより小さいと表示上の制御が難しくなり、20μmより大きいと、表示はできるものの隠蔽率が下がり装置の薄型化が困難となる。なお、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、次の粒子径分布Spanにおけるd(0.5)と同様である。
【0031】
粉流体を構成する粒子物質は、下記式に示される粒子径分布Spanが5未満であることが好ましく、更に好ましくは3未満である。
粒子径分布Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粉流体を構成する粒子物質の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質が90%である粒子径をμmで表した数値である。粉流体を構成する粒子物質の粒子径分布Spanを5以下とすることにより、サイズが揃い、均一な粉流体移動が可能となる。
【0032】
なお、以上の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粉流体にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。この粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られる。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粉流体を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
【0033】
粉流体の作製は、必要な樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、モノマーから重合しても、既存の粒子を樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。以下、粉流体を構成する樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0034】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
【0035】
荷電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
着色剤の例としては、塩基性、酸性などの染料が挙げられ、ニグロシン、メチレンブルー、キノリンイエロー、ローズベンガルなどが例示される。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
【0036】
しかしながら、このような材料を工夫無く混練り、コーティングなどを施しても、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することはできない。エアロゾル状態を示す粉流体の決まった製法は定かではないが、例示すると次のようになる。
【0037】
まず、粉流体を構成する粒子物質の表面に、平均粒子径が20〜100nm、好ましくは20〜80nmの無機微粒子を固着させることが適当である。更に、その無機微粒子がシリコーンオイルで処理されていることが適当である。ここで、無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。この無機微粒子を固着させる方法が重要であり、例えば、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)やメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)などを用いて、ある限定された条件下(例えば処理時間)で、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することができる。
【0038】
ここで繰り返し耐久性を更に向上させるためには、粉流体を構成する樹脂の安定性、特に、吸水率と溶剤不溶率を管理することが効果的である。隔壁で仕切られたセル内に封入する粉流体を構成する樹脂の吸水率は、3質量%以下、特に2質量%以下とすることが好ましい。なお、吸水率の測定は、ASTM−D570に準じて行い、測定条件は23℃で24時間とする。粉流体を構成する樹脂の溶剤不溶率に関しては、下記関係式で表される粉流体の溶剤不溶率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。
溶剤不溶率(%)=(B/A)×100
(但し、Aは樹脂の溶剤浸漬前重量、Bは良溶媒中に樹脂を25℃で24時間浸漬した後の重量を示す)
【0039】
この溶剤不溶率が50%未満では、長期保存時に粉流体を構成する粒子物質表面にブリードが発生し、粉流体との付着力に影響を及ぼし粉流体の移動の妨げとなり、画像表示耐久性に支障をきたす場合がある。なお、溶剤不溶率を測定する際の溶剤(良溶媒)としては、フッ素樹脂ではメチルエチルケトン等、ポリアミド樹脂ではメタノール等、アクリルウレタン樹脂では、メチルエチルケトン、トルエン等、メラミン樹脂ではアセトン、イソプロパノール等、シリコーン樹脂ではトルエン等が好ましい。
【0040】
次に、本発明の画像表示用パネルで用いる画像表示媒体としての粒子について説明する。粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0041】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0042】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0043】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0044】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0045】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0046】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0047】
また、本発明の画像表示媒体としての粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0048】
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0049】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
【0050】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0051】
画像表示媒体を構成する粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示用パネルにおける画像表示媒体を構成する粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に画像表示媒体を構成する粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0052】
更に、本発明においては乾式の画像表示媒体を用いる場合に基板間の画像表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図3(a)、(b)および図4(a)、(b)において、対向する基板10、基板20に挟まれる部分から、電極50、60、画像表示媒体(粒子群あるいは粉流体30)の占有部分、隔壁40の占有部分(隔壁を設けた場合)、画像表示板シール部分を除いた、いわゆる画像表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように画像表示板に封入することが必要であり、例えば、画像表示媒体の充填、画像表示板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0053】
本発明の画像表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、画像表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における画像表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には画像表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の電子書籍表示装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の電子書籍表示装置に電源コードを差し込んだ状態を示す斜視図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示板の一例を示す図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれ本発明の画像表示板の他の例を示す図である。
【図5】本発明の画像表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 筐体
2 表示部
3 操作部
4 トランス付接続コード
5 端子
6 切り替えスイッチ
10、20 基板
30 画像表示媒体(粒子群または粉流体)
30W 白色粒子(白色粉流体)
30B 黒色粒子(黒色粉流体)
40 隔壁
50、60 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体からの情報を表示する表示部を有する電子書籍表示装置であって、該表示部は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間の密閉された空間に、気体を分散媒として画像表示媒体を封入し、画像表示媒体に電界を与えて画像表示媒体を移動させて画像を形成する表示板から成ることを特徴とする電子書籍表示装置。
【請求項2】
駆動用電源として電池および家庭用電源の2系統を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子書籍表示装置。
【請求項3】
画像表示媒体が粒子群または粉流体であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の電子書籍表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−58653(P2006−58653A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240970(P2004−240970)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】