説明

電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラム

【課題】電子書籍を閲覧することに関しての実用性や利便性を向上させること等が可能になる、電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラムを提供すること。
【解決手段】電子書籍を閲覧するための電子書籍閲覧装置30であって、物理書籍の物理頁を識別するための頁マーカと物理頁に付与された物理頁番号とを格納する物理書籍情報DB31bと、電子書籍の電子頁を識別するための電子頁番号と、電子書籍の電子頁のコンテンツとを格納する電子書籍詳細情報DB31dと、ユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカに対応する物理頁番号と、ユーザによって当該物理書籍が回転された数である回転数とに基づいて、物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、この電子頁のコンテンツを電子書籍詳細情報DB31dから取得して表示手段に表示させる電子書籍閲覧部32cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダウンロード等した電子書籍データを情報携帯端末(PDA)に格納し、このPDAのディスプレイに電子書籍を表示させて閲覧することができる電子書籍閲覧装置が提案されている。このようなタイプの電子書籍閲覧装置では、一般に、ユーザがディスプレイに手指で触れることによって電子書籍の頁を仮想的に捲ることが可能となっている。しかしながら、このような電子書籍閲覧装置は、ディスプレイに触れるといった特殊な動作によって頁を捲る必要がある等、従来の印刷出版物の閲覧動作とは異なる動作をユーザに強いるものであるため、依然として、操作性に改善の余地があった。
【0003】
そこで、従来の印刷出版物の閲覧動作と同様の操作を行うことによって、電子書籍を閲覧することができる電子書籍閲覧装置も提案されている。例えば、特許文献1には、カメラ付きのヘッドマウントディスプレイを備えた電子書籍閲覧装置であって、マーカが印刷された電子出版物閲覧用書籍を用いて電子書籍を閲覧することができる電子書籍閲覧装置が開示されている。この電子書籍閲覧装置によれば、電子出版物閲覧用書籍のマーカをカメラで読み取り、このマーカに予め対応付けられている電子書籍情報をデータベースから取得し、この取得した電子書籍情報をヘッドマウントディスプレイに表示させることができる。したがって、ユーザは、従来の印刷出版物の閲覧動作と同様に、電子出版物閲覧用書籍の頁を実際に物理的に捲ることにより、各頁に印刷されたマーカに対応する電子出版物情報を閲覧することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−150599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように電子出版物閲覧用書籍を使用する従来の電子書籍閲覧装置では、電子出版物閲覧用書籍の頁数と電子書籍の頁数との対応関係に起因する各種の問題が一切考慮されていなかった。例えば、特許文献1に記載の電子書籍閲覧装置では、電子出版物閲覧用書籍における各頁のマーカと電子書籍情報とが単に一意に固定的に対応付けられており、両者の頁数が相互に同一であることを前提としていたので、両者の頁数が相互に異なるような場合が想定されていなかった。従って、電子出版物閲覧用書籍の頁数よりも、電子書籍の頁数が多い場合には、超過分の頁に対応するマーカを電子出版物閲覧用書籍に表示することができないことから、超過分の電子書籍の頁を表示することができない等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電子出版物閲覧用書籍の頁数と電子書籍の頁数との対応関係に起因する各種の問題を解決することにより、電子書籍を閲覧することに関しての実用性や利便性を向上させること等が可能になる、電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の電子書籍閲覧装置は、電子書籍を閲覧するための電子書籍閲覧装置であって、物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に表示された頁マーカと、前記物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に付与された物理頁番号とを、相互に対応付けて格納する物理書籍情報格納手段と、前記電子書籍の複数の電子頁を識別するために当該複数の電子頁の各々に付与された電子頁番号と、前記電子書籍の複数の電子頁の各々のコンテンツとを、相互に対応付けて格納する電子書籍情報格納手段と、前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた頁マーカに対応する物理頁番号を前記物理書籍情報格納手段から取得すると共に、ユーザによって当該物理書籍が回転された数である回転数を所定方法で特定し、当該取得した物理頁番号と当該特定した回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、当該特定した電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを前記電子書籍情報格納手段から取得し、当該取得したコンテンツを所定の表示手段に表示させる電子書籍閲覧手段とを備える。
【0008】
請求項2に記載の電子書籍閲覧装置は、請求項1に記載の電子書籍閲覧装置において、前記回転数を特定するための回転数情報を格納する回転数情報格納手段を備え、前記電子書籍閲覧手段は、ユーザによる前記物理書籍の保持方向を特定するために当該物理書籍の複数の物理頁の各々に表示された回転マーカが前記読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた回転マーカに基づいて当該物理書籍が回転されたか否かを判定し、当該物理書籍が回転されたと判定した場合には前記回転数情報格納手段の前記回転数情報を更新し、前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた頁マーカに対応する物理頁番号を前記物理書籍情報格納手段から取得すると共に、前記回転数情報格納手段にて格納された回転数情報に基づいて前記回転数を特定し、当該取得した物理頁番号と当該特定した回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、当該特定した電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを前記電子書籍情報格納手段から取得し、当該取得したコンテンツを所定の表示手段に表示させる。
【0009】
請求項3に記載の電子書籍閲覧装置は、請求項1又は2に記載の電子書籍閲覧装置において、前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁にクリップが取り付けられたことが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該クリップが取り付けられた物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を、当該クリップが取り付けられた時点で当該物理頁に紐付けられている電子頁番号に固定するクリップ処理手段を備える。
【0010】
請求項4に記載の電子書籍閲覧プログラムは、物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に表示された頁マーカと、前記物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に付与された物理頁番号とを、相互に対応付けて格納する物理書籍情報格納手段と、前記電子書籍の複数の電子頁を識別するために当該複数の電子頁の各々に付与された電子頁番号と、前記電子書籍の複数の電子頁の各々のコンテンツとを、相互に対応付けて格納する電子書籍情報格納手段と、を備えるコンピュータを、前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた頁マーカに対応する物理頁番号を前記物理書籍情報格納手段から取得すると共に、ユーザによって当該物理書籍が回転された数である回転数を所定方法で特定し、当該取得した物理頁番号と当該特定した回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、当該特定した電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを前記電子書籍情報格納手段から取得し、当該取得したコンテンツを所定の表示手段に表示させる電子書籍閲覧手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の電子書籍閲覧装置又は請求項4に記載の電子書籍閲覧プログラムによれば、ユーザが閲覧している物理頁の物理頁番号と、ユーザによる物理書籍の回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号が特定されるので、同一の物理頁を閲覧している場合であっても、物理書籍の回転数に応じて異なる電子頁番号のコンテンツが表示される等、物理書籍の物理頁数に制限されることなく電子書籍のコンテンツを表示することが可能になる。従って、物理書籍の物理頁数に対して電子書籍の電子頁数の方が多い場合であっても、電子書籍の全ての電子頁のコンテンツを表示することが可能になる等、物理書籍の頁数と電子書籍の頁数との対応関係に起因する従来の問題を解決することが可能になる。このため、電子書籍を閲覧することに関しての実用性や利便性を向上させること等が可能となる。
【0012】
請求項2に記載の電子書籍閲覧装置によれば、物理書籍の複数の物理頁の各々に表示された回転マーカを読み取ることによって、ユーザによる物理書籍の回転数を特定することができるので、ユーザに特別な操作を強いることなく、物理書籍の回転数を容易かつ正確に特定することが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の電子書籍閲覧装置によれば、ユーザによって閲覧されている物理頁にクリップが取り付けられた場合には、当該クリップが取り付けられた物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号が、当該クリップが取り付けられた時点で当該物理頁に紐付けられている電子頁番号に固定されるので、その後に物理書籍が回転された場合や、当該物理書籍に他の電子書籍が紐付けられた場合であっても、当該物理頁においては常に同じ電子頁のコンテンツを閲覧することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子書籍閲覧システムと物理書籍を模式的に示す図である。
【図2】物理書籍の閲覧状態の経過を模式的に示す図である。
【図3】頁マーカ及び回転マーカを使用した物理書籍の保持方向の識別方法を説明するための図である。
【図4】物理頁と電子頁の紐付け状態を概念的に示す図であり、(a)は初期の正保持方向の場合の紐付け状態を示す図、(b)は(a)の状態から物理書籍を1度だけ回転させて逆保持方向とした場合の紐付け状態を示す図である。
【図5】物理頁と電子頁の紐付け状態を概念的に示す図であり、(a)は初期の正保持方向の場合の紐付け状態を示す図、(b)は(a)の状態でクリップを取り付けた状態を示す図、(c)は(b)の状態から物理書籍を1度だけ回転させて逆保持方向とした場合の紐付け状態を示す図である。
【図6】物理頁と電子頁の紐付け状態を概念的に示す図であり、(a)は初期の正保持方向の場合の紐付け状態、(b)は(a)の状態からクリップを取り付けた状態を示す図、(c)は(b)の状態から物理書籍に対して他の電子書籍が紐付けられた状態を示す図、(d)は(c)の状態から明示的デクリップが行われた場合の状態を示す図、(e)は(c)の状態から黙示的デクリップが行われた場合の状態を示す図、(f)は(e)の後、クリップが取り付けられていた物理頁が初めて閲覧された場合の状態を示す図である。
【図7】電子書籍閲覧装置の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図8】ユーザ情報の構成例を示す図である。
【図9】物理書籍情報の構成例を示す図である。
【図10】電子書籍基本情報の構成例を示す図である。
【図11】電子書籍詳細情報の構成例を示す図である。
【図12】物理電子対応情報の構成例を示す図である。
【図13】物理ユーザ対応情報の構成例を示す図である。
【図14】電子ユーザ対応情報の構成例を示す図である。
【図15】物理書籍使用状態情報の構成例を示す図である。
【図16】書籍選択紐付け情報の構成例を示す図である。
【図17】書籍閲覧紐付け情報の構成例を示す図である。
【図18】栞管理情報の構成例を示す図である。
【図19】クリップ管理情報の構成例を示す図である。
【図20】書籍マーカ使用選択処理のフローチャートである。
【図21】ユーザID使用選択処理のフローチャートである。
【図22】電子書籍選択処理のフローチャートである。
【図23】電子書籍閲覧処理のフローチャートである。
【図24】栞が表示された状態の物理書籍50を示す図であり、(a)は閲覧している物理頁に栞が表示された状態を示す図、(b)は閲覧していない物理頁に栞が表示された状態を示す図である。
【図25】クリップ処理のフローチャートである。
【図26】明示的デクリップ処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラムの実施の形態を詳細に説明する。1)最初に、電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラムに関する基本的な概念について説明し、2)次に、電子書籍閲覧装置を含んだ電子書籍閲覧システムの構成について説明し、3)次に、電子書籍閲覧システムで行われる処理について説明し、4)最後に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0016】
(基本的な概念)
最初に、電子書籍閲覧装置及び電子書籍閲覧プログラムに関する基本的な概念について説明する。図1は、本実施の形態に係る電子書籍閲覧システムと物理書籍を模式的に示す図である。この図1に示すように、電子書籍閲覧システム1は、読み取り装置10、表示装置20、及び電子書籍閲覧装置30を備えて構成されている。読み取り装置10及び表示装置20と、電子書籍閲覧装置30は、ネットワーク40を介して相互に無線通信可能に接続されている。そして、この電子書籍閲覧システム1と、物理書籍50とを使用して、電子書籍を閲覧することができる。なお、この図1では、各装置をそれぞれ1台のみ示しているが、実際には、それぞれ複数台設けることができ、例えば、1台の電子書籍閲覧装置30に対して複数台の読み取り装置10及び表示装置20を接続することができる。
【0017】
「電子書籍」とは、物理的に存在しない仮想的な書籍であり、電子情報を表示する表示手段で表示することでユーザが閲覧可能となる書籍であって、電子ブック、デジタル書籍、あるいは電子出版物と呼ばれるものを含む。「物理書籍」50とは、物理的に存在する書籍であり、電子書籍を閲覧するために使用可能な書籍である。本実施の形態では、電子書籍に関する各種の物体や情報と、物理書籍50に関する各種の物体や情報とを相互に区別するために、必要に応じて、前者には「電子」の文字を付し、後者には「物理」の文字を付するものとする。例えば、電子書籍の各頁を「電子頁」、電子書籍の各頁の通し番号を「電子頁番号」、電子頁の数を「電子頁数」、物理書籍50の各頁を「物理頁」、物理書籍50の各頁の通し番号を「物理頁番号」、物理頁の数を「物理頁数」、とそれぞれ称する。
【0018】
1冊の物理書籍50の使用方法としては、概略的に、電子書籍を「選択する」ために使用する場合と、電子書籍を「閲覧する」ために使用する場合とがある。「選択する」ために使用する場合とは、1冊の物理書籍50を、複数の電子書籍を選択するための仮想的なインデックスや本棚として使用することを意味している。この場合には、1冊の物理書籍50に含まれる複数の頁の各々に、それぞれ異なる電子書籍が紐付けられており、物理書籍50の頁を捲ることで、異なる電子書籍を順次選択することができる。「閲覧する」ために使用する場合とは、1冊の物理書籍50を、電子書籍の内容(コンテンツ)を読むために使用することを意味している。この場合には、1冊の物理書籍50に含まれる複数の頁の各々に、電子書籍に含まれる複数の頁の各々が紐付けられており、物理書籍50の頁を捲ることで、電子書籍の頁を順次閲覧することができる。このように「閲覧する」ために使用する場合においては、1冊の物理書籍50に対して、1冊の電子書籍のみを紐付けてもよいが、複数の電子書籍を紐付けてもよい。以下では、電子書籍を「選択する」ために使用する場合のモードを「選択モード」、電子書籍を「閲覧する」ために使用する場合のモードを「閲覧モード」と称する。
【0019】
「選択モード」において、1冊の物理書籍50に対して複数の電子書籍を紐付けている場合、物理書籍50の物理頁数よりも、当該物理書籍50に対して紐付けられた電子書籍の合計数の方が多い場合が考えられる。また、「閲覧モード」において、1冊の物理書籍50に対して1冊又は複数の電子書籍を紐付けている場合、物理書籍50の物理頁数よりも、当該物理書籍50に対して紐付けられた電子書籍の電子頁数の合計数の方が多い場合が考えられる。このような場合には、ユーザが物理書籍50を保持する方向(以下、保持方向)を変えることで、物理書籍50の物理頁数を仮想的に増加させることができる。例えば、物理書籍50を、初期の保持方向に対して、各頁に平行な平面内において180度回転させることで、物理書籍50の物理頁数を仮想的に増加させる。この回転は、実質的に無制限に繰り返すことができ、このことによって、電子頁数を実質的に無制限に増加させることができる。この点の詳細については後述するが、以下では、ユーザによる物理書籍50の初期の保持方向を「正保持方向」、当該正保持方向に対して180度回転された際の保持方向を「逆保持方向」、回転を行った累計数を「回転数」と称する。物理書籍50の保持方向が正保持方向と逆保持方向のいずれであるのかは、後述する回転マーカ53を用いて識別する。
【0020】
図2は、物理書籍50の閲覧状態の経過を模式的に示す図である。例えば、1冊の物理書籍50が物理頁(物理頁番号=1)から物理頁(物理頁番号=n)(nは任意の整数。以下同じ)までの物理頁を含んでいる場合、物理頁(物理頁番号=1)には電子頁(電子頁番号=1)を紐付け、物理頁(物理頁番号=2)には電子頁(電子頁番号=2)を紐付ける、以降同様に、物理頁(物理頁番号=n)には電子頁(電子頁番号=n)を紐付ける。従って、物理書籍50を正保持方向で保持した状態で、物理頁を物理頁(物理頁番号=1)から物理頁(物理頁番号=n)まで順次捲ることで、電子頁を電子頁(電子頁番号=1)から電子頁(電子頁番号=n)まで順次閲覧することができる。
【0021】
さらに、物理頁(物理頁番号=n)まで捲った状態において、物理書籍50を逆保持方向に回転させて保持した状態を想定し、この物理頁(物理頁番号=n)を捲った次の物理頁(物理頁番号=n−1)に次の電子頁(電子頁番号=n+1)を紐付け、以降同様に、物理頁(物理頁番号=2)には電子頁(電子頁番号=n+n−2)を紐付け、物理頁(物理頁番号=1)には電子頁(電子頁番号=n+n−1)を紐付ける。従って、物理書籍50を逆保持方向で保持した状態で、物理頁を物理頁(物理頁番号=n−1)から物理頁(物理頁番号=1)まで順次捲ることで、電子頁を電子頁(電子頁番号=n+1)から電子頁(電子頁番号=n+n−1)まで順次閲覧することができる。
【0022】
さらに、物理頁(物理頁番号=1)まで捲った状態において、物理書籍50を再び正保持方向に回転させて保持した状態を想定し、この物理頁(物理頁番号=1)を捲った次の物理頁(物理頁番号=2)に次の電子頁(電子頁番号=n+n)を紐付け、以降同様に、物理頁(物理頁番号=n−1)に、次の電子頁(電子頁番号=n+n−1+n−2)を紐付け、物理頁(物理頁番号=n)には電子頁(電子頁番号=n+n−1+n−1)を紐付ける。従って、物理書籍50を正保持方向で保持した状態で、物理頁を物理頁(物理頁番号=2)から物理頁(物理頁番号=n)まで順次捲ることで、電子頁を電子頁(電子頁番号=n+n)から電子頁(電子頁番号=n+n−1+n−1)まで順次閲覧することができる。
【0023】
以降同様に、物理書籍50の保持方向を変えつつ物理頁に電子頁を紐付けることで、物理頁数=nの物理書籍50に対して、実質的に無限の電子頁数の電子頁を紐付けることが可能になる。以下、このように物理書籍50の保持方向を変えることによる、物理頁と電子頁の相互間の紐付けルールを、「回転ルール」と称する。
【0024】
なお、保持方向を変えた状態で表示されている物理頁ではなく、その次の物理頁に対して、次の電子頁を紐付けているのは、「物理頁を捲るという動作に伴って電子頁が変わる」ことを徹底するためであり、物理書籍50自体を実際に閲覧しているような感覚をユーザに与えることで、リアリティを向上させるためである。ただし、このような効果を無視できる場合には、保持方向を変えた状態で表示されている物理頁に、次の電子頁を紐付けてもよく、この場合には、物理書籍を回転させると、電子頁が変わることになる。
【0025】
(基本概念−電子書籍情報)
電子書籍情報は、電子書籍の電子データであり、所定の公知のフォーマットで作成されている。1つの電子書籍情報は、1冊の電子書籍に対応しており、1又は複数の電子頁を含んで構成されている。1冊の電子書籍が複数の電子頁を含む場合、電子書籍情報に含まれる各電子頁の配列や配置方向は、当該電子書籍に紐付けられた物理書籍50における各物理頁の配列や配置方向と合致することが好ましく、例えば、物理書籍50がいわゆる左綴じにより製本されている場合には、電子書籍情報の各電子頁も、左綴じに順じた配列や配置方向で構成されることが好ましい。実際には、物理頁の配列や配置方向が異なる複数の物理書籍を準備しておき、この複数の物理書籍の中から、電子書籍情報に合致した配列や配置方向で構成された物理書籍を適宜選択して使用することで、電子書籍と物理書籍の整合性を図ってもよい。
【0026】
(基本概念−物理書籍)
次に、本実施形態で使用される物理書籍50について説明する。物理書籍50は、本実施の形態では、図2に示すように、表表紙、物理頁(物理頁番号=1)、物理頁(物理頁番号=2)、・・・物理頁(物理頁番号=n)、及び裏表紙を、いわゆる左綴じにより製本した書籍として構成されている。なお、以下では、図2のX方向を「左右方向」、図2のY方向を「上下方向」として説明する。
【0027】
(構成−マーカ)
物理書籍50には、一つの「書籍マーカ」51が表示されている。また、物理書籍50の各物理頁には一つの「頁マーカ」52及び一つの「回転マーカ(天地マーカ)」53が表示されている。なお、これら書籍マーカ51、頁マーカ52、及び回転マーカ53を相互に区別する必要がない場合には、これらを単に「マーカ」と総称する。
【0028】
「書籍マーカ」51とは、物理書籍50を一意に識別するための物理書籍識別標識である。この書籍マーカ51の具体的な構成は任意であり、例えば、一次元や二次元のバーコード(QRコードを含む)により構成してもよく、あるいは、数字、文字、色、もしくは模様等を単独又は組み合わせて構成してもよい。以下では、書籍マーカ51を、表表紙に印刷したAR(拡張現実)コードにより構成した例について説明する。ただし、物理書籍50は、書籍マーカ51に対して一意に紐付ける場合の他、ユーザに対して一意に紐付けてもよく、後者の場合には、書籍マーカ51を省略してもよい。また、物理書籍を一意に特定する物理書籍IDをユーザが入力すること等により、物理書籍を識別する場合にも、書籍マーカ51を省略してもよい。
【0029】
「頁マーカ」52とは、物理書籍50に含まれる各物理頁を識別するための頁識別標識である。この頁マーカ52の具体的な構成は任意であり、例えば、一次元や二次元のバーコード(QRコードを含む)により構成してもよく、あるいは、数字、文字、色、もしくは模様等を単独又は組み合わせて構成してもよい。以下では、頁マーカ52を、ARコードにより構成した例について説明する。このARコードは、各物理頁の上下方向及び左右方向のほぼ中央位置に配置されている。
【0030】
「回転マーカ」53とは、物理書籍50の保持方向(本実施の形態では、上下(天地)方向であり、上述の正保持方向と逆保持方向のいずれか)を識別するための保持方向識別標識である。この回転マーカ53の具体的な構成は任意であり、例えば、数字、文字、記号、色、もしくは模様等を単独又は組み合わせて構成してもよい。以下では、回転マーカ53を、記号により構成した例について説明する。回転マーカ53を用いた物理書籍50の保持方向の識別方法としては、例えば、回転マーカ53を、上下非対称に形成したり、頁マーカ52に対する回転マーカ53の相対的な配置を正保持方向と逆保持方向で変えることで、物理書籍50の保持方向が識別できるようにする。
【0031】
図3は、本実施の形態における、頁マーカ52及び回転マーカ53を使用した物理書籍50の保持方向の識別方法を説明するための図である。本実施の形態では、各物理頁の表面(各物理頁の両側面のうち、表表紙に近い方の面。以下同じ)には、回転マーカ53のみを表示し、各物理頁の裏面(各物理頁の両側面のうち、裏表紙に近い方の面。以下同じ)には、頁マーカ52のみを表示する(なお、図3では、説明の便宜上、頁マーカ52をARマーカではなく数字として示す)。従って、隣接する一対の物理頁によって構成された一つの見開きに対して、一つの頁マーカ52と一つの回転マーカ53が左右方向に沿って表示されることになる。このような前提において、図3(a)に示すように物理頁(物理頁番号=1)を開いた状態から、図3(b)に示すように物理頁(物理頁番号=2)を捲り、以降同様に、図3(c)に示すように最後の物理頁(物理頁番号=n)まで捲り、さらに、図3(d)の状態になった場合を想定する。
【0032】
この場合、頁マーカ52と回転マーカ53の間の相対的な位置関係が、図3(a)から(c)までの関係と、図3(d)の関係で変わっているため、物理書籍50の保持方向が変わったことが電子書籍閲覧装置30側で認識できる。そして、さらに図3(e)の状態になった場合、保持方向が変わった後に頁が捲られたことが電子書籍閲覧装置30側で認識できるので、上記の回転ルールにより、電子頁を仮想的に1頁分だけ先に捲る処理を行う。一方、図3(c)の状態から図3(f)の状態になった場合には、頁マーカ52と回転マーカ53の間の相対的な位置関係が、図3(a)から(c)までの関係と、図3(f)の関係で変わっていないため、物理書籍50の保持方向が変わっていないことが電子書籍閲覧装置30側で認識できるので、電子頁を仮想的に1頁分だけ前に捲り戻す処理を行う。
【0033】
なお、マーカが「表示」されているとは、後述する読み取り手段で読み取りが可能となるように、マーカを物理書籍50の物理頁に対して出力することであり、例えば、物理書籍50の物理頁に対して、マーカをインクにより印刷したり、別途作成したマーカを貼付したり、点字のように打刻することが含まれる。また、マーカは、読み取り手段で読み取ることが可能なものであればよく、ユーザに視認可能なものに限定されないものであって、例えば、マーカを、ユーザが視認できない特殊インクによって表示してもよい。また、書籍マーカ51や回転マーカ53は、必ずしも物理書籍50に固定的に表示されている必要はなく、例えば、物理書籍50とは切り離された用紙に書籍マーカ51を印刷しておき、必要に応じてこの書籍マーカ51を読み取り装置10に読み取らせることで、書籍マーカ51を認識させてもよい。以下では、これら各マーカを、ユーザが視認可能なインクによって物理頁に印刷した例について説明する。なお、所定のユーザの特殊な動作を読み取り装置10に認識させることで物理書籍50や保持方向を特定できる場合や、後述するユーザID使用選択処理のようにユーザID等の情報を用いて書籍選択を行うことができる場合には、書籍マーカ51や回転マーカ53を省略してもよい。また、回転マーカ53については、電子書籍閲覧装置30側で認識できる所定の特殊なユーザ操作により代替してもよい。
【0034】
このように構成された物理書籍50は、物理頁数やマーカが異なるものを複数冊製作してもよく、あるいは、物理頁数やマーカが全く同じ物理書籍50を複数冊製作してもよい。後者の場合には、複数の物理書籍50を異なるユーザが所有等することで、異なるユーザが同じ電子書籍を同時に閲覧等することが可能になる。
【0035】
(基本概念−栞)
電子書籍には、「栞」を取り付けることができる。栞とは、物理書籍50に含まれる複数の物理頁の中で、ユーザが任意の物理頁に対して取り付けることができる目印である。この栞は、物理頁に対応付けて仮想的に取り付けるもので、物理頁に対する電子頁の紐付けに影響を与えないものである。
【0036】
(基本概念−クリップ)
電子書籍には、「クリップ」を取り付けることができる。クリップとは、電子書籍に含まれる複数の物理頁の中で、ユーザが任意の物理頁に対して取り付けることができる目印である。このクリップは、物理頁に対して物理的に取り付けるものであり、かつ、物理頁に対する電子頁の紐付けに影響を与える場合がある点において、栞と異なる。具体的には、クリップは、電子書籍閲覧装置30が認識できる物体として構成され、例えば、金属製のクリップとして構成される。
【0037】
このように物理頁に取り付けられたクリップは、ユーザによって任意のタイミングで物理頁から取り外される。このように、物理頁に取り付けたクリップを取り外す動作を「デクリップ」と称する。このデクリップには、デクリップが行われたことが、当該デクリップが行われた時点で直ちに電子書籍閲覧装置30によって認識できる「明示的デクリップ」と、デクリップが行われたことが、当該デクリップが行われた時点では直ちに電子書籍閲覧装置30によって認識できず、その後に、デクリップが行われた物理頁が閲覧された時点で電子書籍閲覧装置30によって認識される「黙示的デクリップ」とがある。具体的には、ユーザが現在閲覧している物理頁に対して行われたデクリップは、明示的デクリップになり、ユーザが現在閲覧していない物理頁に対して行われたデクリップは、黙示的デクリップになる。
【0038】
この「クリップ」の概念について、さらに詳細に説明する。図4は、物理頁と電子頁の紐付け状態を概念的に示す図であり、(a)は初期の正保持方向の場合の紐付け状態を示す図、(b)は(a)の状態から物理書籍50を1度だけ回転させて逆保持方向とした場合の紐付け状態を示す図である。この図4では、上段に物理頁及び物理頁番号を示し、下段に各物理頁に紐付けられる電子頁及び電子頁番号を示している(以下、図5、6において同様)。図4(a)に示すように、物理頁(物理頁番号=A)から物理頁(物理頁番号=P)に、それぞれ電子頁(電子頁番号=a1)から電子頁(電子頁番号=a16)を紐付けている。なお、電子頁番号における「a」は電子書籍の単位を識別する記号であり、同じ記号を付している場合には同じ電子書籍に含まれる電子頁の電子頁番号であることを示しており、従って、電子頁(電子頁番号=a1)から電子頁(電子頁番号=a16)は同じ電子書籍に含まれる電子頁であるが、後述する図6(d)(e)(f)の電子頁(電子頁番号=b1)から電子頁(電子頁番号=b16)は異なる電子書籍に含まれる電子頁である。
【0039】
図4(a)の後に、物理書籍50を逆保持方向に回転させて保持した場合には、上述の回転ルールにより、図4(b)に示すように、物理頁(物理頁番号=P)から物理頁(物理頁番号=A)に対して、電子頁(電子頁番号=a16)から電子頁(電子頁番号=a31)が紐付けられる。
【0040】
また、図5は、物理頁と電子頁の紐付け状態を概念的に示す図であり、(a)は初期の正保持方向の場合の紐付け状態を示す図、(b)は(a)の状態でクリップを取り付けた状態を示す図、(c)は(b)の状態から物理書籍50を1度だけ回転させて逆保持方向とした場合の紐付け状態を示す図である。図5(a)は、図4(a)と同じである。ここで、図5(b)に示すように、物理頁(物理頁番号=G)にクリップを取り付けた状態を想定する。このように物理頁にクリップを取り付けた場合、当該物理頁に対しては、当該クリップが取り付けられた時点で当該物理頁に紐付けられている電子頁を、固定的に紐付けることとする。従って、この例では、物理頁(物理頁番号=G)に電子頁(電子頁番号=a7)を固定的に紐付けることとする。従って、図5(c)に示すように、その後に、物理書籍50を逆保持方向に回転させて保持した場合において、物理頁(物理頁番号=P)から物理頁(物理頁番号=H)に対しては、図4(b)の場合と同様に、電子頁(電子頁番号=a16)から電子頁(電子頁番号=a24)が紐付けられるが、物理頁(物理頁番号=G)については、図4(b)の場合と異なり、電子頁(電子頁番号=a7)が紐付けられたままである。また、物理頁(物理頁番号=F)から物理頁(物理頁番号=A)に対しては、図4(b)の場合に比べて、物理頁(物理頁番号=G)に電子頁(電子頁番号=a7)が固定的に紐付けられているために1頁分だけ電子頁がスライドし、電子頁(電子頁番号=a25)から電子頁(電子頁番号=a30)が紐付けられる。以降同様に、回転数を増やしても、物理頁(物理頁番号=G)については、電子頁(電子頁番号=a7)が紐付けられたままとなり、他の物理頁に対して紐付けられた電子頁のみが変わる。
【0041】
このようにクリップを用いた物理頁に対する電子頁の紐付けの固定状態は、同じ物理書籍50に対して他の電子書籍が紐付けられた場合でも維持される。図6は、物理頁と電子頁の紐付け状態を概念的に示す図であり、(a)は初期の正保持方向の場合の紐付け状態、(b)は(a)の状態からクリップを取り付けた状態を示す図、(c)は(b)の状態から物理書籍50に対して他の電子書籍が紐付けられた状態を示す図である。図6(a)は、図5(a)と同じであり、図6(b)は、図5(b)と同じである。そして、図6(c)に示すように、物理書籍50に対して他の電子書籍が紐付けられた場合、物理頁(物理頁番号=A)から物理頁(物理頁番号=F)までは、他の電子書籍の電子頁(電子頁番号=b1)から電子頁(電子頁番号=b6)に紐付けられているが、物理頁(物理頁番号=G)については、図5(b)と同様に、電子書籍の電子頁(電子頁=a7)が紐付けられたままである。また、次の物理頁(物理頁番号=H)から物理頁(物理頁番号=P)に対しては、物理頁(物理頁番号=G)に電子頁(電子頁番号=a7)が固定的に紐付けられているために1頁分だけ電子頁を飛ばし、当該他の電子書籍の次の電子頁(電子頁番号=b7)から電子頁(電子頁番号=b15)までが紐付けられている。
【0042】
次に、「明示的デクリップ」の概念について、詳細に説明する。図6(d)は(c)の状態から明示的デクリップが行われた場合の状態を示す図である。このようにクリップが明示的に取り外された場合、当該クリップが取り付けられていた物理頁を含む物理書籍50全体に対する電子頁の紐付け状態が、当該クリップが取り付けられた時の紐付け状態に復旧する。この例では、図6(b)に示すように、クリップが取り付けられた時には、物理頁(物理頁番号=A)から物理頁(物理頁番号=P)に対して電子頁(電子頁番号=a1)から電子頁(電子頁番号=a16)が紐付けられていたので、図6(d)においても、この紐付け状態に復旧する。
【0043】
次に、「黙示的デクリップ」の概念について、詳細に説明する。図6(e)は(c)の状態から黙示的デクリップが行われた場合の状態を示す図、図6(f)は(e)の後、クリップが取り付けられていた物理頁が初めて閲覧された場合の状態を示す図である。図6(e)に示すように、クリップが黙示的に取り外された場合、当該クリップが取り外されたことを電子書籍閲覧装置30が直ちには認識できないので、紐付け状態は変更されず、図(c)と同じ状態に維持される。その後、クリップが取り付けられていた物理頁(物理頁番号=G)が初めて閲覧された場合、図6(f)に示すように、物理頁(物理頁番号=G)に対して紐付けられている電子頁(電子頁番号=a7)が、次に閲覧される物理頁(物理頁番号=H)に対して紐付けられていた電子頁(電子頁番号=b7)に変更され、以降同様に、その後に閲覧される物理頁(物理頁番号=H)から物理頁(物理頁番号=P)に対して紐付けられている電子頁が、電子頁(電子頁番号=b8)から電子頁(電子頁番号=b16)に一つずつ詰められる。
【0044】
(構成−電子書籍閲覧システム)
次に、本実施の形態に係る電子書籍閲覧システム1の構成を説明する。図1に示すように、電子書籍閲覧システム1は、読み取り装置10、表示装置20、及び電子書籍閲覧装置30を備えて構成されている。
【0045】
(構成−電子書籍閲覧システム−読み取り装置)
読み取り装置10は、物理書籍50の各頁に表示されたマーカを読み取る読み取り手段である。また、電子頁の表示位置等を、物理頁の表示位置等に合わせる場合には、読み取り装置10は、マーカのみならず、電子頁全体を認識できる認識手段として構成される。このような読み取り装置10の具体的な読み取り原理は任意であり、例えば、マーカをユーザが視認可能なインクにより構成した場合には、当該マーカを光学的に読み取る光学カメラとして構成し、あるいは、マーカをユーザが視認不能な特殊インクにより構成した場合には、当該マーカを赤外線等によって読み取る赤外線カメラとして構成することができる。本実施の形態では、読み取り装置10を、光学カメラとして構成している。また、読み取り装置10の設置位置や設置構造も任意であり、例えば、ユーザが閲覧を行う室内の天井等に固定することができる。ただし、ユーザが閲覧を行っている頁のマーカを正確に読み取るためには、ユーザの目線と連動して移動することが好ましいため、本実施の形態では、読み取り装置10を、ユーザが顔に装着するヘッドマウントディスプレイの前面に配置された小型カメラとして構成している。
【0046】
(構成−電子書籍閲覧システム−表示装置)
表示装置20は、電子書籍情報を表示する表示手段である。表示装置20の具体的な表示原理は任意であり、例えば、電子書籍情報を壁面やスクリーンに投影可能なプロジェクターとして構成することができる。ただし、ユーザの視野の中で、当該ユーザが閲覧を行っている物理書籍50の各頁に対応する位置に、電子書籍情報を表示することが好ましいため、本実施の形態では、表示装置20を、ユーザが顔に装着する眼鏡形状のヘッドマウントディスプレイとして構成しており、電子頁等をユーザの眼の前方位置に表示する。この表示装置20には、無線通信部が設けられており、この無線通信部を介して、読み取り装置10及び表示装置20と、電子書籍閲覧装置30とが、ネットワーク40を介して情報を無線にて送受信することが可能となっている。
【0047】
(構成−電子書籍閲覧システム−電子書籍閲覧装置)
電子書籍閲覧装置30は、電子書籍を閲覧するための各種の処理を実行する装置であり、例えば、公知のパーソナルコンピュータ、サーバ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、あるいはスマートフォン等を用いて構成されている。図7は、電子書籍閲覧装置30の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この電子書籍閲覧装置30は、記憶部31及び制御部32を備えて構成されている。
【0048】
記憶部31は、電子書籍閲覧装置30の処理に必要な各種の情報を記憶する記憶手段であり、例えばハードディスクやその他の公知の記録媒体によって構成されるもので、ユーザ情報データベース(以下、データベースをDBと記載する)31a、物理書籍情報DB31b、電子書籍基本情報DB31c、電子書籍詳細情報DB31d、物理電子対応情報DB31e、物理ユーザ対応情報DB31f、電子ユーザ対応情報DB31g、物理書籍使用状態情報DB31h、書籍選択紐付け情報DB31i、書籍閲覧紐付け情報DB31j、栞管理情報DB31k、及びクリップ管理情報DB31mを記憶する。これら各DBの詳細は後述する。
【0049】
制御部32は、電子書籍を閲覧するための各種の処理の実行を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る電子書籍閲覧プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納され、当該記録媒体から電子書籍閲覧装置30にインストールされることで、制御部32の各部を実質的に構成する。
【0050】
この制御部32は、機能概念的に、電子書籍群選択部32a、電子書籍選択部32b、電子書籍閲覧部32c、栞処理部32d、及びクリップ処理部32eを備える。電子書籍群選択部32aは、電子書籍群選択処理を実行する電子書籍群選択手段である。電子書籍選択部32bは、電子書籍選択処理を実行する電子書籍選択手段である。電子書籍閲覧部32cは、電子書籍閲覧処理を実行する電子書籍閲覧手段である。栞処理部32dは、栞処理を実行する栞処理手段である。クリップ処理部32eは、クリップ処理を実行するクリップ処理手段である。これら各部の具体的な機能については、後述する。
【0051】
次に、図7に示した記憶部31の各DBの詳細について説明する。ただし、各DBに格納される情報として以下で説明する情報は、あくまで例示であり、実際には、一部を省略することができ、他の情報を含めることができ、あるいは他の情報で置換することができる。
【0052】
ユーザ情報DB31aは、ユーザに関する情報(以下、ユーザ情報)を格納するユーザ情報格納手段である。このユーザ情報は、図8の構成例に示すように、項目「ユーザID」及び項目「パスワード」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「ユーザID」に対応する情報は、ユーザを一意に識別するためのユーザ識別情報である。項目「パスワード」に対応する情報は、ユーザの認証を行うためのユーザ認証情報である。この他にも、ユーザ情報には、ユーザの氏名、年齢、住所、課金情報、アクセス制限等の情報を含めることができる。
【0053】
物理書籍情報DB31bは、物理書籍50に関する情報(以下、物理書籍情報)を格納する物理書籍情報格納手段である。この物理書籍情報は、図9の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」、項目「物理頁番号」、項目「書籍マーカ」、項目「頁マーカ」、及び項目「回転マーカ」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報は、物理書籍50を一意に識別するための物理書籍識別情報である。項目「物理頁番号」に対応する情報は、物理頁番号である。項目「書籍マーカ」、項目「頁マーカ」、及び項目「回転マーカ」に対応する情報は、それぞれ、書籍マーカ51を特定するための書籍マーカ特定情報、頁マーカ52を特定するための頁マーカ特定情報、回転マーカ53を特定するための回転マーカ特定情報であり、例えば、マーカを画像認識するための画像データや、マーカの認識方法を記載したテキストデータやマーカ認識プログラムである。この他にも、物理書籍情報には、物理書籍50に関する情報として、販売価格、製作会社、これまでの所有者等を含めることができる。
【0054】
電子書籍基本情報DB31cは、電子書籍に関する基本的な情報(以下、電子書籍基本情報)を格納する電子書籍基本情報格納手段である。この電子書籍基本情報は、図10の構成例に示すように、項目「電子書籍ID」、項目「画像」、項目「タイトル」、及び項目「概要」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「電子書籍ID」に対応する情報は、電子書籍を一意に識別するための電子書籍識別情報である。項目「画像」に対応する情報は、電子書籍を選択する際の参考になる画像であり、例えば、電子書籍の表表紙の画像である。項目「タイトル」に対応する情報は、電子書籍のタイトルである。項目「概要」に対応する情報は、電子書籍を選択する際の参考になる概要情報であり、例えば、電子書籍の著者や要約である。この他にも、電子書籍基本情報には、電子書籍に関する情報として、販売価格、ISBNコード、これまでの所有者、アクセス制限情報等を含めることができる。
【0055】
電子書籍詳細情報DB31dは、電子書籍に関する詳細な情報(以下、電子書籍詳細情報)を格納する電子書籍詳細情報格納手段(電子書籍情報格納手段)である。この電子書籍詳細情報は、図11の構成例に示すように、項目「電子書籍ID」、項目「電子頁番号」、及び項目「コンテンツ」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「電子書籍ID」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。項目「電子頁番号」に対応する情報は、電子書籍の電子頁番号である。項目「コンテンツ」に対応する情報は、電子書籍の各電子頁のコンテンツデータであり、例えば、各電子頁の画像データや文書データである。この他にも、電子書籍詳細情報には、コンテンツデータの種類やデータ量等の情報を含めることができる。
【0056】
物理電子対応情報DB31eは、物理書籍50と電子書籍の対応関係に関する情報(以下、物理電子対応情報)を格納する物理電子対応情報格納手段である。この物理電子対応情報は、図12の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」及び項目「電子書籍ID」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報と項目「電子書籍ID」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にも、物理電子対応情報には、物理電子対応情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0057】
物理ユーザ対応情報DB31fは、物理書籍50とユーザの対応関係に関する情報(以下、物理ユーザ対応情報)を格納する物理ユーザ対応情報格納手段である。この物理ユーザ対応情報は、図13の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」及び項目「ユーザID」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報と項目「ユーザID」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にも、物理ユーザ対応情報には、物理ユーザ対応情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0058】
電子ユーザ対応情報DB31gは、電子書籍とユーザの対応関係に関する情報(以下、電子ユーザ対応情報)を格納する電子ユーザ対応情報格納手段である。この電子ユーザ対応情報は、図14の構成例に示すように、項目「電子書籍ID」及び項目「ユーザID」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「電子書籍ID」に対応する情報と項目「ユーザID」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にも、電子ユーザ対応情報には、電子ユーザ対応情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0059】
物理書籍使用状態情報DB31hは、物理書籍50の使用状態に関する情報(以下、物理書籍使用状態情報)を格納する物理書籍使用状態情報格納手段である。この物理書籍使用状態情報は、図15の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」、項目「物理頁番号」、項目「回転数」、及び項目「ユーザID」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報、項目「物理頁番号」に対応する情報、及び項目「ユーザID」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。項目「回転数」に対応する情報は、物理書籍50の回転数を特定するための情報である。この他にも、物理書籍使用状態情報には、物理書籍使用状態情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0060】
書籍選択紐付け情報DB31iは、電子書籍を選択する際の物理書籍50に対する電子書籍の紐付け状態に関する情報(以下、書籍選択紐付け情報)を格納する書籍選択紐付け情報格納手段である。この書籍選択紐付け情報は、図16の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」、項目「物理頁番号」、及び項目「電子書籍ID」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報、項目「物理頁番号」に対応する情報、及び項目「電子書籍ID」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にも書籍選択紐付け情報には、書籍選択紐付け情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0061】
書籍閲覧紐付け情報DB31jは、電子書籍を閲覧する際の物理書籍50に対する電子書籍の紐付け状態に関する情報(以下、書籍閲覧紐付け情報)を格納する書籍閲覧紐付け情報格納手段である。この書籍閲覧紐付け情報は、図17の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」、項目「物理頁番号」、項目「電子書籍ID」、及び項目「電子頁番号」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報、項目「物理頁番号」に対応する情報、項目「電子書籍ID」に対応する情報、及び項目「電子頁番号」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にも書籍閲覧紐付け情報には、書籍閲覧紐付け情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0062】
栞管理情報DB31kは、栞を管理するための情報(以下、栞管理情報)を格納する栞管理情報格納手段である。この栞管理情報は、図18の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」及び項目「物理頁番号」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報及び項目「物理頁番号」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にも栞管理情報には、栞管理情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0063】
クリップ管理情報DB31mは、クリップを管理するための情報(以下、クリップ管理情報)を格納するクリップ管理情報格納手段である。このクリップ管理情報は、図19の構成例に示すように、項目「物理書籍ID」、項目「物理頁番号」、項目「電子書籍ID」、及び項目「電子頁番号」と、これら各項目に対応するデータを、相互に対応付けて構成されている。項目「物理書籍ID」に対応する情報、項目「物理頁番号」に対応する情報、項目「電子書籍ID」に対応する情報、及び項目「電子頁番号」に対応する情報は、上述の同一項目名に対応する情報と同じである。この他にもクリップ管理情報には、クリップ管理情報が記録された日時等の情報を含めることができる。
【0064】
(構成−ネットワーク)
ネットワーク40は、LANやインターネットの如きに任意のネットワークである。ただし、読み取り装置10及び表示装置20と、電子書籍閲覧装置30は、有線で接続してもよい。
【0065】
(処理)
次に、このように構成された電子書籍閲覧システム1を用いて行われる各種の処理について説明する。この処理は、電子書籍群選択処理、電子書籍選択処理、電子書籍閲覧処理、栞取り付け処理、栞取り外し処理、クリップ処理、明示的デクリップ処理、及び黙示的デクリップ処理に大別される。以下、これら各処理を順次説明する。なお、この説明では、事前に、ユーザ情報DB31a、物理書籍情報DB31b、電子書籍基本情報DB31c、電子書籍詳細情報DB31d、物理電子対応情報DB31e、物理ユーザ対応情報DB31f、及び電子ユーザ対応情報DB31gの各情報が、任意の方法で格納されているものとする。また、各処理を起動させたり相互に切り換えたりするためのユーザ操作は、例えば、所定の特殊なマーカや所定の特殊なユーザ動作を読み取り装置10で読み取らせることで行うことができるものとする(以下、ユーザ操作に関して同様)。
【0066】
(処理−電子書籍群選択処理)
最初に、電子書籍群選択処理について説明する。この電子書籍群選択処理は、選択対象候補になる1冊又は複数の電子書籍(以下、電子書籍群)を選択するための処理であって、主として電子書籍群選択部32aにより実行される。この電子書籍群選択処理において、ユーザは、書籍マーカ51に基づいて電子書籍群を選択する処理(1冊又は複数の電子書籍が物理書籍50に対して一意に紐付けられている場合に行われる処理。以下、書籍マーカ使用選択処理)と、ユーザIDに基づいて電子書籍群を選択する処理(1冊又は複数の電子書籍がユーザIDに対して一意に紐付けられている場合に行われる処理。以下、ユーザID使用選択処理)とのいずれかを、ユーザ操作を行うことにより起動する。
【0067】
(処理−電子書籍群選択処理−書籍マーカ使用選択処理)
図20は、書籍マーカ使用選択処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。書籍マーカ使用選択処理がユーザ操作によって起動された場合、電子書籍群選択部32aは、読み取り装置10によって書籍マーカ51が読み取られたか否かを監視する(SA1)。具体的には、電子書籍群選択部32aは、読み取り装置10から出力される画像情報の中に、物理書籍情報DB31bに含まれている書籍マーカ51が存在するか否かを、公知の画像解析方法により特定する。
【0068】
書籍マーカ51が読み取られた場合(SA1、Yes)、電子書籍群選択部32aは、当該読み取られた書籍マーカ51が、それ以前に読み取られた中で最新の書籍マーカ51と異なるものであるか否かを判定する(SA2)。具体的には、電子書籍群選択部32aは、SA1において読み取られた書籍マーカ51を記憶部31に順次記憶させておき、新たに書籍マーカ51が読み取られる毎に、当該マーカを記憶部31に記憶させた最新のマーカと対比することで、書籍マーカ51が異なるか否かの判定を行う。
【0069】
そして、書籍マーカ51が異なるものではない場合(SA2、No)、電子書籍群選択部32aは、既に電子書籍群の選択が完了しており、新しい電子書籍群の選択を行う必要はないものとして、SA1に戻る。
一方、書籍マーカ51が異なるものである場合(SA2、Yes)、電子書籍群選択部32aは、未だ電子書籍群の選択が完了していないか、あるいは、既に選択された電子書籍群を他の電子書籍群に変更する必要があるものとして、当該読み取られた書籍マーカ51に対応する物理書籍IDを物理書籍情報DB31bから取得し、当該取得した物理書籍IDに対応するものとしてユーザ等によって予め特定されている全ての電子書籍IDを物理電子対応情報DB31eから取得する(SA3)。
【0070】
ここで、物理書籍IDに対応する電子書籍IDが一つ以上存在する場合(SA4、Yes)、当該一つ以上の電子書籍IDによって、電子書籍群が特定されるので、電子書籍群選択部32aは、書籍マーカ使用選択処理を終了する。
【0071】
一方、物理書籍IDに対応する電子書籍IDが一つも存在しない場合(SA4、No)、電子書籍群選択部32aは、物理書籍IDに対して電子書籍が未だ紐付けられていないものとし、電子書籍IDの入力を促すメッセージを表示装置20を介して表示する(SA5)。このメッセージを読んだユーザが、一つ以上の電子書籍IDを入力すると、電子書籍群選択部32aは、SA3で取得した物理書籍IDと当該入力された電子書籍IDを相互に対応付けて物理電子対応情報DB31eに記憶させる(SA6)。この場合、当該記憶させた一つ以上の電子書籍IDによって、電子書籍群が特定されるので、電子書籍群選択部32aは、これにて書籍マーカ使用選択処理を終了する。なお、ユーザによる入力は、例えば、図示しない入力装置を介して行うことができ、この入力装置からネットワーク40を介して電子書籍閲覧装置30に情報が送信される(以下、ユーザによる入力に関して同様)。
【0072】
(処理−電子書籍群選択処理−ユーザID使用選択処理)
図21は、ユーザID使用選択処理のフローチャートである。ユーザID使用選択処理がユーザ操作によって起動された場合、電子書籍群選択部32aは、ユーザIDの入力を促すメッセージを表示装置20を介して表示する(SB1)。このメッセージを読んだユーザが、ユーザIDを入力すると、電子書籍群選択部32aは、このユーザIDに対応するものとしてユーザ等によって予め特定されている全ての電子書籍IDを電子ユーザ対応情報DB31gから取得する(SB2)。
【0073】
ここで、ユーザIDに対応する電子書籍IDが一つ以上存在する場合(SB3、Yes)、当該一つ以上の電子書籍IDによって、電子書籍群が特定されるので、電子書籍群選択部32aは、ユーザID使用選択処理を終了する。
【0074】
一方、ユーザIDに対応する電子書籍IDが一つも存在しない場合(SB3、No)、電子書籍群選択部32aは、ユーザIDに対して電子書籍が未だ紐付けられていないものとし、電子書籍IDの入力を促すメッセージを表示装置20を介して表示する(SB4)。このメッセージを読んだユーザが、一つ以上の電子書籍IDを入力すると、電子書籍群選択部32aは、SB2で入力されたユーザIDと当該入力された電子書籍IDを相互に対応付けて電子ユーザ対応情報DB31gに記憶させる(SB5)。この場合、当該記憶させた一つ以上の電子書籍IDによって、電子書籍群が特定されるので、電子書籍選択部32bは、ユーザID使用選択処理を終了する。
【0075】
なお、これら書籍マーカ使用選択処理やユーザID使用選択処理では、必要に応じてユーザにユーザID及びパスワードを入力させ、これらユーザID及びパスワードをユーザ情報DB31aに記憶されたユーザID及びパスワードと照合することでユーザ認証を行い、ユーザ認証をパスしたユーザに対してのみ、各種操作を許容するようにしてもよい(これ以降に説明する各処理において同様)。
【0076】
また、ユーザが物理書籍IDを入力した場合には、この物理書籍IDにて識別される物理書籍50を使用する権利を当該ユーザが所有しているか否かを確認するため、物理書籍IDの所有権を示す所定のパスワードを入力させたり、所有権を購入するための課金処理を行い、所有権が確認できた場合にのみ、電子書籍IDの入力等を許容するようにしてもよい。このように所有権が確認できた場合には、物理書籍IDとユーザIDとを物理ユーザ対応情報DB31fに格納しておき、以降は、この物理ユーザ対応情報DB31fを参照して、所有権の有無を確認等するようにしてもよい。また、物理書籍50の所有権がその他の公知の方法で売買等された場合には、この物理ユーザ対応情報DB31fの内容を更新することで、所有権の管理を行うことができる。
【0077】
同様に、ユーザが電子書籍IDを入力した場合には、この電子書籍IDにて識別される電子書籍を閲覧する権利を当該ユーザが所有しているか否かを確認するため、電子書籍IDの所有権を示す所定のパスワードを入力させたり、所有権を購入するための課金処理を行い、所有権が確認できた場合にのみ、電子書籍IDの入力等を許容するようにしてもよい。このように所有権が確認できた場合には、電子書籍IDとユーザIDとを電子ユーザ対応情報DB31gに格納しておき、以降は、この電子ユーザ対応情報DB31gを参照して、所有権の有無を確認等するようにしてもよい。また、電子書籍の所有権がその他の公知の方法で売買等された場合には、この電子ユーザ対応情報DB31gの内容を更新することで、所有権の管理を行うことができる。
【0078】
このように、物理書籍の所有権と電子書籍の所有権とをそれぞれ管理することで、ユーザが他のユーザに対して、物理書籍や電子書籍を、譲渡やプレゼント等することができる。例えば、物理書籍をプレゼントしたいユーザ(以下、プレゼント元ユーザ)は、当該物理書籍の物理書籍ID及びパスワードを添えて、他のユーザ(以下、プレゼント先ユーザ)にプレゼントする。プレゼント先ユーザは、自己のユーザIDとパスワードで電子書籍閲覧装置30にログインした後、当該物理書籍の物理書籍ID及びパスワードを入力する。すると、電子書籍閲覧装置30の電子書籍群選択部32aは、当該物理書籍の物理書籍IDをプレゼント先ユーザのユーザIDに対応させて物理ユーザ対応情報DB31fに記憶させると共に、当該物理書籍の物理書籍IDに対応させていたプレゼント元ユーザのユーザIDを物理ユーザ対応情報DB31fから削除する。このことにより、物理書籍の所有権を、電子的に、プレゼント元ユーザからプレゼント先ユーザへ移動させることが可能になる。
【0079】
また、物理書籍と電子書籍を相互に関連付けた状態で、譲渡やプレゼント等することもできる。例えば、プレゼント元ユーザが、電子書籍群選択処理を完了し、1冊の物理書籍に対して複数の電子書籍を対応させた状態で、当該物理書籍をプレゼント先ユーザに渡す。この際、当該物理書籍の物理書籍ID及びパスワードと、当該複数の電子書籍の各々の電子書籍ID及びパスワードとを添付する。プレゼント先ユーザは、自己のユーザIDとパスワードで電子書籍閲覧装置30にログインした後、当該物理書籍の物理書籍ID及びパスワードと、当該複数の電子書籍の電子書籍ID及びパスワードとを入力する。すると、電子書籍閲覧装置30の電子書籍群選択部32aは、当該物理書籍の物理書籍IDをプレゼント先ユーザのユーザIDに対応させて物理ユーザ対応情報DB31fに記憶させると共に、当該複数の電子書籍の電子書籍IDをプレゼント先ユーザのユーザIDに対応させて電子ユーザ対応情報DB31gに記憶させる。また、電子書籍群選択部32aは、当該物理書籍の物理書籍IDに対応させていたプレゼント元ユーザのユーザIDを物理ユーザ対応情報DB31fから削除すると共に、当該複数の電子書籍の電子書籍IDに対応させていたプレゼント元ユーザのユーザIDを電子ユーザ対応情報DB31gから削除する。このことにより、あたかも、物理書籍の所有権と電子書籍の所有権とを相互に対応させた状態のまま、電子的に、プレゼント元ユーザからプレゼント先ユーザへ移動させることが可能になる。例えば、この場合、プレゼント元ユーザのお気に入りの複数の電子書籍によって構成されたライブラリ全体を、一括してプレゼント先ユーザにプレゼントできることになる。
【0080】
また、各処理の間において、書籍マーカ51の読み取りが所定時間経っても行われない場合等、所定の終了条件に合致した場合には、自動的に各処理を終了するようにしてもよい(これ以降に説明する各処理において同様)。
【0081】
(処理−電子書籍選択処理)
次に、電子書籍選択処理について説明する。この電子書籍選択処理は、電子書籍群選択処理で選択された電子書籍群の中から、実際に閲覧する電子書籍を選択するための処理であって、上述した選択モードの処理であり、主として電子書籍選択部32bにより実行される。なお、電子書籍群選択処理で選択された電子書籍が1冊しかない場合には、当該電子書籍選択処理を省略してもよい。図22は、電子書籍選択処理のフローチャートである。
【0082】
電子書籍群選択処理の完了後に電子書籍選択処理がユーザ操作によって起動された場合、電子書籍選択部32bは、ユーザが現在使用している物理書籍50の使用状態を管理するため、物理書籍使用状態情報DB31hの新規なレコードを生成し、当該生成したレコードを物理書籍使用状態情報DB31hに記憶させる(SC1)。この際、物理書籍IDは、書籍マーカ使用選択処理における図20のSA1で取得したものを使用する。あるいは、書籍マーカ使用選択処理ではなくユーザID使用選択処理が行われたために物理書籍IDが未だ特定されていない場合には、図20のSA1からSA2と同様に特定を行ったり、ユーザに物理書籍IDを入力してもらうことにより特定する(以下同様)。物理頁番号は初期値=NULLとし、回転数は初期値=0とする。ユーザIDは、ユーザID使用選択処理における図21のSB1で取得したものを使用する。あるいは、ユーザID使用選択処理ではなく書籍マーカ使用選択処理が行われたためにユーザIDが未だ特定されていない場合には、図21のSB1と同様に、ユーザにユーザIDを入力してもらうことにより特定する(以下同様)。
【0083】
次に、電子書籍選択部32bは、ユーザが現在使用している物理書籍50の各物理頁に対して、電子書籍群選択処理で選択された電子書籍群に含まれる各電子書籍を紐付ける(SC2)。例えば、電子書籍選択部32bは、電子書籍群選択処理で選択された各電子書籍IDの中から、任意の基準で選択した1冊目の電子書籍の電子書籍IDを、SC1で物理書籍使用状態情報DB31hに記憶させた物理書籍IDによって識別される物理書籍50の最初の物理頁(物理頁番号=1)に紐付け、2冊目の電子書籍の電子書籍IDを、当該物理書籍50の次の物理頁(物理頁番号=2)に紐付け、以降同様に、電子書籍群選択処理で選択された電子書籍群に含まれる全ての電子書籍について紐付けを行う。この際、物理書籍50の物理頁数は、SC1で物理書籍使用状態情報DB31hに記憶させた物理書籍IDに基づいて、物理書籍情報DB31bを参照することによって特定する。また、物理頁数を超える数の電子書籍を紐付ける場合には、上記の回転ルールを適用し、必要に応じて、一枚の物理頁に対して複数の電子書籍を紐付ける。そして、このように紐付けられた結果を記録するため、これらの物理書籍ID、物理頁番号、及び電子書籍IDにより、書籍選択紐付け情報DB31iの新規なレコードを生成し、当該生成したレコードを書籍選択紐付け情報DB31iに記憶させる。
【0084】
次いで、電子書籍選択部32bは、読み取り装置10によって頁マーカ52が読み取られたか否かを監視する(SC3)。具体的には、電子書籍選択部32bは、読み取り装置10から出力される画像情報の中に、SC1で物理書籍使用状態情報DB31hに記憶させた物理書籍IDによって識別される物理書籍50の頁マーカ52が存在するか否かを、公知の画像解析方法により特定する。この際、頁マーカ52は、当該物理書籍IDに基づいて物理書籍情報DB31bを参照することによって取得する。そして、頁マーカ52が特定できた場合(SC3、Yes)、電子書籍選択部32bは、当該頁マーカ52が、それ以前に特定された中で最新の頁マーカ52と異なるものであるか否かを判定する(SC4)。具体的には、SC3において読み取られた頁マーカ52を記憶部31に順次記憶させておき、新たに頁マーカ52が読み取られる毎に、当該マーカを記憶部31に記憶させた最新のマーカと対比することで、頁マーカ52が異なるか否かの判定を行う。
【0085】
そして、頁マーカ52が異なるものではない場合(SC4、No)、電子書籍選択部32bは、既に電子書籍の選択が完了しており、新しい電子書籍の選択を行う必要はないものとして、SC3に戻る。
一方、頁マーカ52が異なるものである場合(SC4、Yes)、電子書籍選択部32bは、未だ電子書籍の選択が完了していないか、あるいは、既に選択された電子書籍を他の電子書籍に変更する必要があるものとして、SC3において読み取られた頁マーカ52に対応する物理頁番号を、物理書籍情報DB31bを参照して特定する(SC5)。そして、このように特定を行う毎に、電子書籍選択部32bは、物理書籍使用状態情報DB31hにおける物理頁番号を更新する(SC6)。
【0086】
また、電子書籍選択部32bは、物理書籍50の回転が行われたか否かを判定する(SC7)。具体的には、電子書籍選択部32bは、SC3において頁マーカ52を読み取る際に同時に回転マーカ53を読み取り、当該回転マーカ53と頁マーカ52との間の相対的な位置関係に基づいて物理書籍50の保持方向を特定し、この保持方向を記憶部31に順次記憶させておく。そして、新たに保持方向を特定する毎に、当該保持方向を記憶部31に記憶させた最新の保持方向と対比し、保持方向が異なっていない場合には物理書籍50の回転が行われていないものと判定し、保持方向が異なっている場合には物理書籍50の回転が行われたものと判定する。なお、回転マーカ53の読み取りは、物理書籍情報DB31bの回転マーカ53を参照して行う。そして、回転が行われたものと判定した場合(SC7、Yes)、電子書籍選択部32bは、物理書籍使用状態情報DB31hにおける回転数を1つだけ増分することにより、回転数を更新する(SC8)。
【0087】
次いで、電子書籍選択部32bは、SC5で特定した物理頁番号に紐付けられている電子書籍IDを特定する(SC9)。具体的には、電子書籍選択部32bは、SC5で特定した物理頁番号、物理書籍使用状態情報DB31hを参照して取得した回転数、及び所定の回転ルールに基づいて、書籍選択紐付け情報DB31iを参照することにより、SC5で特定した物理頁番号に紐付けられている電子書籍IDを特定する。
【0088】
その後、電子書籍選択部32bは、SC9で特定した電子書籍IDに対応する電子書籍のタイトル及び概要を、表示装置20に表示させる(SC10)。具体的には、電子書籍選択部32bは、当該特定した電子書籍IDに対応する画像、タイトル、及び概要を電子書籍基本情報DB31cから取得し、当該取得した画像等を表示装置20に出力し、表示装置20はこれら画像等を表示する。この際、表示装置20による表示は、ユーザが現在開いている物理頁の位置や向きを読み取り装置10を介して特定し、当該物理頁に重畳するような位置及び向きで表示を行うことが好ましい(以下、表示装置20による表示に関して同様)。
【0089】
次いで、電子書籍選択部32bは、閲覧する電子書籍を選択する所定のユーザ操作が行われたか否かを判定し(SC11)、ユーザ操作が行われる迄(SC11、No)、SC2からSC10を繰り返す。このような処理を行うことにより、ユーザは、物理書籍50の物理頁を手指で捲る毎に、当該物理頁に紐付けられた電子書籍の画像、タイトル、及び概要を見ることができ、複数の電子書籍の中から、閲覧したい電子書籍を容易に選択することが可能になる。
【0090】
そして、ユーザ操作が行われた場合(SC11、Yes)、その時点でSC10で特定されている電子書籍IDによって、閲覧対象の電子書籍が特定されるので、電子書籍選択部32bは、電子書籍選択処理を終了する。なお、この電子書籍選択処理においては、1冊の物理書籍50に対して複数の電子書籍を選択するようにしてもよく、この場合には、SC3からSC11を複数回繰り返せばよい。
【0091】
(処理−電子書籍閲覧処理)
次に、電子書籍閲覧処理について説明する。この電子書籍閲覧処理は、電子書籍選択処理で選択された電子書籍を閲覧するための処理であって、上述した閲覧モードの処理であり、主として電子書籍閲覧部32cにより実行される。図23は、電子書籍閲覧処理のフローチャートである。
【0092】
電子書籍選択処理の後に電子書籍閲覧処理がユーザ操作によって起動された場合、電子書籍閲覧部32cは、物理書籍50の各物理頁に対して、電子書籍選択処理で選択された電子書籍の各電子頁を紐付ける(SD1)。例えば、電子書籍閲覧部32cは、電子書籍選択処理で選択された電子書籍IDに対応する電子頁番号を電子書籍詳細情報DB31dから取得する。そして、電子書籍閲覧部32cは、図22のSC1で物理書籍使用状態情報DB31hに記憶させた物理書籍IDによって識別される物理書籍50の最初の物理頁(物理頁番号=1)に、電子書籍の最初の電子頁(電子頁番号=1)を紐付け、物理書籍50の次の物理頁(物理頁番号=2)に、電子書籍の次の電子頁(電子頁番号=2)を紐付け、以降同様に、電子書籍の最後の電子頁に至るまで紐付けを行う。なお、電子書籍選択処理において、1冊の物理書籍50に対して複数の電子書籍が選択された場合には、これら複数の電子書籍の中の紐付け順序を所定の任意の基準で自動的に特定し、最初の電子書籍の最初の電子頁から最後の電子頁までの紐付けを終えた後、2冊目の電子書籍の最初の電子頁から最後の電子頁まで紐付けを行い、以降同様に、全ての電子書籍に対する紐付けを行う。この際、電子書籍の電子頁数の合計が物理書籍50の物理頁数を超える場合には、回転ルールを適用して紐付けを行う。そして、電子書籍選択部32bは、このように紐付けを行った結果を記録すべく、物理書籍ID、物理頁番号、電子書籍ID、及び電子頁番号により、書籍閲覧紐付け情報DB31jの新規なレコードを生成し、当該生成したレコードを書籍閲覧紐付け情報DB31jに記憶させる。
【0093】
次いで、電子書籍閲覧部32cは、電子書籍選択処理のSC3からSC8と同様に、SD2からSD7を行う。なお、SD8からSD10については後述する。そして、電子書籍閲覧部32cは、SD4で特定した物理頁番号に紐付けられている電子頁番号を特定する(SD11)。具体的には、電子書籍閲覧部32cは、SD4で特定した物理頁番号、物理書籍使用状態情報DB31hを参照して取得した回転数、及び所定の回転ルールに基づいて、書籍閲覧紐付け情報DB31jを参照することにより、SD4で特定した物理頁番号に紐付けられている電子頁番号を特定する。
【0094】
その後、電子書籍閲覧部32cは、SD11で特定した電子頁番号に対応するコンテンツを表示装置20に表示させる(SD12)。具体的には、電子書籍閲覧部32cは、SD11で特定した電子頁番号に対応するコンテンツを、電子書籍詳細情報DB31dから取得し、当該取得したコンテンツを表示装置20に出力し、表示装置20はこのコンテンツを表示する。
【0095】
次いで、電子書籍閲覧部32cは、閲覧を終了する所定のユーザ操作が行われたか否かを判定し(SD13)、ユーザ操作が行われる迄(SD13、No)、SD2からSD13を繰り返す。このような処理を行うことにより、ユーザは、物理書籍50の物理頁を手指で捲る毎に、当該物理頁に紐付けられた電子頁を見ることができ、電子書籍を容易に閲覧することが可能になる。そして、電子書籍閲覧部32cは、ユーザ操作が行われた場合(SD13、Yes)、電子書籍閲覧処理を終了する。
【0096】
(処理−栞取り付け処理)
次に、栞取り付け処理について説明する。この栞取り付け処理は、電子書籍閲覧処理で閲覧されている電子書籍に栞を取り付けるための処理であって、電子書籍閲覧処理に対する割り込み処理として起動されるものであり、主として栞処理部32dにより実行される。
【0097】
物理頁が閲覧されている状態において、栞取り付け処理がユーザ操作によって起動された場合、栞処理部32dは、当該閲覧されている物理頁に対応する物理書籍ID及び物理頁番号を対応付けて構成された新規なレコードを生成し、当該生成したレコードを栞管理情報DB31kに記憶させる。この際、物理書籍ID及び物理頁番号は、物理書籍使用状態情報DB31hから取得する。
【0098】
このように栞管理情報DB31kにレコードが記憶されている場合、電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、栞管理情報DB31kのレコードを所定時間毎に取得し、当該取得したレコードに含まれる物理頁番号に対応する位置に、図示しない栞を仮想的に表示させる。この位置の決定は、例えば、物理書籍50の全体の形状と、当該形状における各物理頁の位置との関係を特定する情報を、予め記憶部31に記憶させておき、必要に応じてこの情報を参照することで行うことができる。仮想的な栞は、当該栞が取り付けられた物理頁が閲覧されている場合のみならず、当該物理頁が捲られた場合においても表示する。図24は、栞が表示された状態の物理書籍50を示す図であり、(a)は閲覧している物理頁に栞が表示された状態を示す図、(b)は閲覧していない物理頁に栞が表示された状態を示す図である。この図24(a)(b)においては、栞を符号54で示す。なお、ユーザの視野においては、実際には、物理頁の位置には電子頁のコンテンツが表示されることになるが、この図24(a)(b)では、図示の便宜上、物理頁をそのまま示している。従って、ユーザは、この栞を目印として、所望の物理頁の位置を容易に把握することができる。これにて栞取り付け処理が終了する。
【0099】
(処理−栞取り外し処理)
次に、栞取り外し処理について説明する。この栞取り外し処理は、電子書籍閲覧処理で閲覧されている電子書籍から栞を取り外すための処理であって、電子書籍閲覧処理に対する割り込み処理として起動されるものであり、主として栞処理部32dにより実行される。
【0100】
栞取り付け処理によって栞が取り付けられた物理頁が閲覧されている状態において、栞取り外し処理がユーザ操作によって起動された場合、栞処理部32dは、当該閲覧されている物理頁に対応する物理書籍ID及び物理頁番号を対応付けて構成されたレコードを、栞管理情報DB31kから削除する。この際、物理書籍ID及び物理頁番号は、物理書籍使用状態情報DB31hから取得する。
【0101】
このように栞管理情報DB31kからレコードが削除された場合、電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、当該レコードの物理頁番号の位置に仮想的に表示させていた栞を消去する。これにて栞取り外し処理が終了する。
【0102】
(処理−クリップ処理)
次に、クリップ処理について説明する。このクリップ処理は、電子書籍閲覧処理で閲覧されている電子書籍に対するクリップの取り付けを行うための処理であって、電子書籍閲覧処理に対する割り込み処理として起動されるものであり、主として電子書籍閲覧部32cとクリップ処理部32eにより実行される。図25は、クリップ処理のフローチャートである。
【0103】
電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、ユーザによるクリップの取り付け動作の有無を読み取り装置10によって監視する。具体的には、電子書籍閲覧部32cは、読み取り装置10から所定時間毎に出力される画像情報の中に、クリップが存在するか否かを、公知の画像解析方法により特定する。このために、例えば、ユーザが使用する可能性があるクリップの画像を記憶部31に予め記憶させておく。そして、クリップが存在していない画像情報が取得された後、その後の所定時間以内に、クリップが存在する画像情報が取得された場合であって、これら2つの画像情報がクリップの部分を除いて同一視できる場合には、ユーザによるクリップの取り付け動作があったものと判定して、クリップ処理部32eによるクリップ処理を起動する。
【0104】
クリップ処理部32eは、クリップの取り付けが行われた物理頁(その時点でユーザによって閲覧されている物理頁)に対応する物理書籍ID及び物理頁番号と、この物理頁に紐付けられている電子頁に対応する電子書籍ID及び電子頁番号とを対応付けて構成された新規なレコードを生成し、当該生成したレコードをクリップ管理情報DB31mに記憶させる(SE1)。この際、物理書籍ID及び物理頁番号は、物理書籍使用状態情報DB31hから取得し、電子書籍ID及び電子頁番号は、当該取得した物理書籍ID及び物理頁番号に基づいて書籍閲覧紐付け情報DB31jから取得する。
【0105】
次いで、クリップ処理部32eは、図23の電子書籍閲覧処理のSD1で行われた物理書籍50の各物理頁と電子書籍の各電子頁との紐付けを更新させる(SE2)。すなわち、書籍閲覧紐付け情報DB31jに記憶されている電子頁番号の中で、クリップ管理情報DB31mに記憶させた新規なレコードに含まれる物理頁番号に対応する全ての電子頁番号を、当該レコードに含まれる電子頁番号に書き換える。これにて、クリップ処理を終了する。
【0106】
従って、その後の電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、クリップが取り付けられた物理頁が閲覧されている場合には、回転数に関わらず、クリップ管理情報DB31mに記憶させたレコードに含まれる電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを、表示装置20に表示させることになる。
【0107】
(処理−明示的デクリップ処理)
次に、明示的デクリップ処理について説明する。この明示的デクリップ処理は、電子書籍閲覧処理で閲覧されている電子書籍に対するクリップが明示的に取り外された場合の処理であって、電子書籍閲覧処理に対する割り込み処理として起動されるものであり、主として電子書籍閲覧部32cとクリップ処理部32eにより実行される。図26は、明示的デクリップ処理のフローチャートである。
【0108】
電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、ユーザによるクリップの取り外し動作の有無を読み取り装置10によって監視する。具体的には、電子書籍閲覧部32cは、読み取り装置10から所定時間毎に出力される画像情報の中に、クリップが存在するか否かを、公知の画像解析方法により特定する。そして、クリップが存在する画像情報が取得された後、所定時間以内に、クリップが存在していない画像情報が取得された場合であって、これら2つの画像情報がクリップの部分を除いて同一視できる場合には、ユーザによるクリップの取り外し動作があったものと判定して、クリップ処理部32eによる明示的デクリップ処理を起動する。
【0109】
クリップ処理部32eは、図23の電子書籍閲覧処理のSD1で行われた物理書籍50の各物理頁と電子書籍の各電子頁との紐付けであって、その後のクリップ処理で更新された紐付けを、再度更新する(SF1)。すなわち、クリップの取り外しが行われた物理頁(その時点でユーザによって閲覧されている物理頁)に対応する物理書籍ID及び物理頁番号を物理書籍使用状態情報DB31hから取得し、書籍閲覧紐付け情報DB31jに記憶されている電子頁番号の中で、当該取得した物理書籍ID及び物理頁番号の組み合わせに対応する全ての電子頁を、クリップが取り付けられる前の電子頁に復旧させる。クリップが取り付けられる前の電子頁は、当該取得した物理書籍ID及び物理頁番号の組み合わせに基づいて、クリップ管理情報DB31mから取得する。
【0110】
その後、クリップ処理部32eは、クリップ管理情報DB31mから、クリップの取り外しが行われた物理頁に対応する物理書籍ID及び物理頁番号を含むレコードを削除する(SF2)。これにて明示的デクリップ処理を終了する。
【0111】
従って、電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、クリップが取り外された物理頁が閲覧されている状態において、クリップが取り付けられる前の状態の電子頁のコンテンツを、表示装置20に表示させることになる。
【0112】
(処理−黙示的デクリップ処理)
最後に、黙示的デクリップ処理について説明する。この黙示的デクリップ処理は、電子書籍閲覧処理で閲覧されている電子書籍に対するクリップが黙示的に取り外された場合の処理であって、電子書籍閲覧処理の一部として実行されるものであり、主として電子書籍閲覧部32cとクリップ処理部32eにより実行される。
【0113】
図23の電子書籍閲覧処理のSD7の後、電子書籍閲覧部32cは、SD4で特定した物理頁番号に対応する物理頁に対して、ユーザによってクリップが黙示的に取り外されたか否かを判定する(SD8)。具体的には、電子書籍閲覧部32cは、SD4で特定した物理頁番号がクリップ管理情報DB31mに含まれるか否かを判定し、含まれる場合には、SD2の読み取り時に読み取り装置10によって取得された画像情報にクリップが含まれるか否かを判定し、含まれていない場合には、クリップが黙示的に取り外されたものと判定する。そして、クリップが黙示的に取り外されたと判定した場合(SD8、Yes)、クリップ処理部32eによる黙示的デクリップ処理を起動する。
【0114】
クリップ処理部32eは、SD1で行われた物理書籍50の各物理頁と電子書籍の各電子頁との紐付けであって、その後のクリップ処理で更新された紐付けを、再度更新する(SD9)。すなわち、クリップの取り外しが行われた物理頁(その時点でユーザによって閲覧されている物理頁)に対応する物理書籍ID及び物理頁番号を物理書籍使用状態情報DB31hから取得し、書籍閲覧紐付け情報DB31jに記憶されている電子頁番号の中で、当該取得した物理書籍ID及び物理頁番号の組み合わせに対応する電子頁を、当該物理頁番号より一つ後の物理頁番号に対応する電子頁にて書き換え、それ以降の物理頁番号に対応する電子頁を一つずつ前に詰める。
【0115】
その後、クリップ処理部32eは、クリップ管理情報DB31mから、クリップの取り外しが行われた物理頁に対応する物理書籍ID及び物理頁番号を含むレコードを削除する(SD10)。これにて黙示的デクリップ処理を終了する。
【0116】
従って、電子書籍閲覧処理において電子書籍閲覧部32cは、クリップが取り外された物理頁が閲覧された場合には、クリップが取り付けていない場合と同様に紐付けが行われた状態の電子頁のコンテンツを、表示装置20に表示させることになる。
【0117】
(実施の形態に対する変形例)
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0118】
(変形例−分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、電子書籍閲覧装置30の機能の一部を読み取り装置10や表示装置20に持たせてもよく、あるいは、電子書籍閲覧装置30を複数のコンピュータにより構成してもよい。
【0119】
(物理頁と電子頁の紐付けについて)
上記実施の形態では、電子書籍閲覧処理において、物理書籍50の各物理頁に対して電子書籍の各電子頁を紐付け、この紐付け結果を特定するレコードを書籍閲覧紐付け情報DB31jに格納した後、表示装置に表示させる電子頁を特定しているが、電子頁を特定する必要が生じる毎に、物理頁に対して電子頁を紐付けてもよく、この場合には、書籍閲覧紐付け情報DB31jを省略することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 電子書籍閲覧システム
10 読み取り装置
20 表示装置
30 電子書籍閲覧装置
31 記憶部
31a ユーザ情報DB
31b 物理書籍情報DB
31c 電子書籍基本情報DB
31d 電子書籍詳細情報DB
31e 物理電子対応情報DB
31f 物理ユーザ対応情報DB
31g 電子ユーザ対応情報DB
31h 物理書籍使用状態情報DB
31i 書籍選択紐付け情報DB
31j 書籍閲覧紐付け情報DB
31k 栞管理情報DB
31m クリップ管理情報DB
32 制御部
32a 電子書籍群選択部
32b 電子書籍選択部
32c 電子書籍閲覧部
32d 栞処理部
32e クリップ処理部
40 ネットワーク
50 物理書籍
51 書籍マーカ
52 頁マーカ
53 回転マーカ
54 栞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子書籍を閲覧するための電子書籍閲覧装置であって、
物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に表示された頁マーカと、前記物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に付与された物理頁番号とを、相互に対応付けて格納する物理書籍情報格納手段と、
前記電子書籍の複数の電子頁を識別するために当該複数の電子頁の各々に付与された電子頁番号と、前記電子書籍の複数の電子頁の各々のコンテンツとを、相互に対応付けて格納する電子書籍情報格納手段と、
前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた頁マーカに対応する物理頁番号を前記物理書籍情報格納手段から取得すると共に、ユーザによって当該物理書籍が回転された数である回転数を所定方法で特定し、当該取得した物理頁番号と当該特定した回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、当該特定した電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを前記電子書籍情報格納手段から取得し、当該取得したコンテンツを所定の表示手段に表示させる電子書籍閲覧手段と、
を備える電子書籍閲覧装置。
【請求項2】
前記回転数を特定するための回転数情報を格納する回転数情報格納手段を備え、
前記電子書籍閲覧手段は、
ユーザによる前記物理書籍の保持方向を特定するために当該物理書籍の複数の物理頁の各々に表示された回転マーカが前記読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた回転マーカに基づいて当該物理書籍が回転されたか否かを判定し、当該物理書籍が回転されたと判定した場合には前記回転数情報格納手段の前記回転数情報を更新し、
前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた頁マーカに対応する物理頁番号を前記物理書籍情報格納手段から取得すると共に、前記回転数情報格納手段にて格納された回転数情報に基づいて前記回転数を特定し、当該取得した物理頁番号と当該特定した回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、当該特定した電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを前記電子書籍情報格納手段から取得し、当該取得したコンテンツを所定の表示手段に表示させる、
請求項1に記載の電子書籍閲覧装置。
【請求項3】
前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁にクリップが取り付けられたことが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該クリップが取り付けられた物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を、当該クリップが取り付けられた時点で当該物理頁に紐付けられている電子頁番号に固定するクリップ処理手段を備える、
請求項1又は2に記載の電子書籍閲覧装置。
【請求項4】
電子書籍を閲覧するための電子書籍閲覧プログラムであって、
物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に表示された頁マーカと、前記物理書籍の複数の物理頁を識別するために当該複数の物理頁の各々に付与された物理頁番号とを、相互に対応付けて格納する物理書籍情報格納手段と、
前記電子書籍の複数の電子頁を識別するために当該複数の電子頁の各々に付与された電子頁番号と、前記電子書籍の複数の電子頁の各々のコンテンツとを、相互に対応付けて格納する電子書籍情報格納手段と、
を備えるコンピュータを、
前記物理書籍の複数の物理頁の中でユーザによって閲覧されている物理頁に表示された頁マーカが、所定の読み取り手段にて読み取られた場合、当該読み取られた頁マーカに対応する物理頁番号を前記物理書籍情報格納手段から取得すると共に、ユーザによって当該物理書籍が回転された数である回転数を所定方法で特定し、当該取得した物理頁番号と当該特定した回転数とに基づいて、当該閲覧されている物理頁に紐付けられる電子頁の電子頁番号を特定し、当該特定した電子頁番号に対応する電子頁のコンテンツを前記電子書籍情報格納手段から取得し、当該取得したコンテンツを所定の表示手段に表示させる電子書籍閲覧手段、
として機能させる電子書籍閲覧プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−216016(P2012−216016A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80145(P2011−80145)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【特許番号】特許第4764957号(P4764957)
【特許公報発行日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000131201)株式会社CSK (53)
【Fターム(参考)】