説明

電子棚札および電子棚札のディスプレイの表示制御方法

【課題】電子棚札がディスプレイの表示更新に失敗した場合に、ディスプレイに更新前の画面が表示されたままとなり、客に誤った情報が伝達されてしまう、といった事態を発生しにくくする技術を提供する。
【解決手段】売価表示処理部821は、サーバから商品情報を新たに受信した場合に、電子棚札5のディスプレイ51に現在表示されている画面を消去する消去処理を行った上で、新たに受信した商品情報を表示する更新画面をディスプレイに描画する描画処理を行って、前記ディスプレイの表示を更新する。一方、エラー表示処理部822は、売価表示処理部821がディスプレイ51の表示更新に失敗した場合、消去処理を行わずに、白の画面をディスプレイ51に描画する描画処理を複数回行った上で、エラー画面をディスプレイ51に描画する描画処理を行って、ディスプレイ51の表示を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品に対応して配置され、サーバから受信した前記商品に係る商品情報を、電子ペーパーにより構成されるディスプレイに表示する電子棚札に関する。
【背景技術】
【0002】
電子棚札システム(ESLシステム/Electronic Shelf Label System)について簡単に説明する。一般に、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗では、POSシステム等に記憶される商品マスタによって、店舗内の商品の売価が一元的に管理されている。その一方で、顧客(消費者)への売価の伝達は、商品の位置に配置される紙媒体の棚札によりなされることが多い。このような紙媒体の棚札を採用した場合においては、棚札の管理は人手に頼らざるを得ないことから、売価の間違いなどの人為的ミスが生じやすい。このため、POSシステムのレジスタによる精算時の売価とは異なる誤った売価が、顧客に対して伝達されるおそれがある。
【0003】
電子棚札システムはこのような問題を解決するために実用化されたシステムである。電子棚札システムは、電子表示装置の一種である「電子棚札」と、電子棚札のそれぞれに対して情報を提供するサーバである「情報配信装置」とを備える。情報配信装置は、商品マスタに基づく売価を示す情報を含む通信信号を各電子棚札に送信(例えば、赤外線送信)する。電子棚札は、店舗内において各商品に対応して配置され、情報配信装置から受信した通信信号に基づいて、対応する商品の売価などの商品情報をそのディスプレイに表示する。また、商品の売価が変更される等して商品マスタに格納される情報が更新されると、情報配信装置は、新たな売価を示す情報を含む通信信号を各電子棚札に送信し、電子棚札は、受信した通信信号に基づいてそのディスプレイの表示を更新する。これによって、電子棚札に表示される売価の更新がなされる。このように、電子棚札システムを用いると、精算時の売価と常に一致する正しい売価が電子棚札に表示され、正しい売価が顧客に伝達される。
【0004】
ところで、商品の配置変更に対応できるように可搬性をもたせるために、電子棚札の駆動源は電池とされることが多い。電池寿命を少しでも長くもたせるため、電子棚札は、消費電気量をできるだけ低く抑えた構成とする必要があり、この点に鑑みて電子棚札のディスプレイは電子ペーパーにより構成されることが多い。電子ペーパーは、表示内容の変更(表示更新)にのみ駆動電力を必要とし、表示内容の保持には駆動電力を与える必要がないという特徴を有しており、電子棚札のディスプレイに非常に適しているのである。電子ペーパーの基礎的技術については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−331904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイが電子ペーパーにより構成される電子棚札においては、電池の残存容量が少なくなってくると、ディスプレイの表示更新処理中に電圧が降下してリセットがかかり、ディスプレイの表示更新が失敗してしまう可能性が高くなる。このような状況で表示更新に失敗すると、多くの場合、ディスプレイに更新前の画面(すなわち、更新前の売価)が表示されたままとなってしまう。ディスプレイに更新前の価格が表示されたままとなっている事実には、客は当然のことながら、店舗スタッフも容易には気付かない。したがって、誤った価格が長期間客に伝達され続けてしまう危険性が非常に高い。
【0007】
このような事態を回避するための方策の1つとして、表示更新に失敗した電子棚札には、そのディスプレイにエラー画面を表示させることが考えられる。エラー画面が表示されていれば、客に誤った価格が伝達されるおそれもなく、店舗スタッフも更新失敗している電子棚札の存在に気づきやすい。
【0008】
ところが、上述したとおり、電子棚札が一度ディスプレイの表示更新に失敗しているということは、電池の残存容量が少なくなっている可能性が高く、このような状況で再度の表示更新処理を行わせても、当該表示更新処理中に電圧が降下して再リセットがかかり、画面の表示に失敗してしまう可能性が高い。すなわち、電子棚札が一度ディスプレイの表示更新に失敗している状況では、エラー画面を表示するための表示更新処理も失敗に終わる可能性が高く、結局は、ディスプレイに更新前の画面(更新前の売価)が表示されたままとなってしまう場合が多い。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、電子棚札がディスプレイの表示更新に失敗した場合に、ディスプレイに更新前の画面が表示されたままとなり、客に誤った情報が伝達されてしまう、といった事態を発生しにくくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、商品に対応して配置され、サーバから受信した前記商品に係る商品情報を、電子ペーパーにより構成されるディスプレイに表示する電子棚札であって、前記サーバから商品情報を新たに受信した場合に、前記ディスプレイに現在表示されている画面を消去する消去処理と、前記消去処理の後に前記新たに受信した商品情報を表示する更新画面を前記ディスプレイに走査描画する更新画面描画処理とを行って、前記ディスプレイの表示更新を行う表示処理手段と、前記ディスプレイの表示更新が失敗した場合に、白の画面を前記ディスプレイに走査描画する白描画処理を複数回繰り返して行う白描画繰り返し処理と、前記繰り返し白描画処理の後に所定のエラー画面を前記ディスプレイに走査描画するエラー画面描画処理とを行って、前記ディスプレイの表示更新を行うエラー表示処理手段と、を備える。
【0011】
請求項2の発明は、商品に対応して配置され、サーバから受信した前記商品に係る商品情報を、電子ペーパーにより構成されるディスプレイに表示する電子棚札における、前記ディスプレイの表示制御方法であって、前記ディスプレイに現在表示されている画面を消去する消去工程と、新たに受信した商品情報を表示する更新画面を前記ディスプレイに走査描画する更新画面描画工程と、を備える第1表示変更工程と、白の画面を前記ディスプレイに走査描画する白描画工程を複数回繰り返す白描画繰り返し工程と、所定のエラー画面を前記ディスプレイに走査描画するエラー画面描画工程と、を備える第2表示変更工程と、を備え、サーバから商品情報を新たに受信した場合に前記第1表示変更工程を実行し、前記第1表示変更工程が正常に完了せず前記ディスプレイの表示更新が失敗した場合に、前記第2表示変更工程を実行する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、2の発明によると、サーバから新たに受信した商品情報を表示する更新画面をディスプレイに表示する際にはディスプレイに現在表示されている画面を消去する消去処理を行うが、エラー画面をディスプレイに表示する際には白の画面をディスプレイに走査描画する白描画処理を複数回行うことでもって消去処理に代えている。この構成によると、エラー画面については電気的負担をかけずに表示更新することができるので、ディスプレイの表示更新に失敗した状況であっても、エラー画面の表示には成功できる可能性が高い。したがって、電子棚札のディスプレイに更新前の画面が表示されたままとなり、客に誤った情報が伝達されてしまう、といった事態が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子棚札システムが備える電子棚札が配置された様子を示す図である。
【図2】電子棚札システムを含む商品管理システムの構成例を示す図である。
【図3】発注処理端末の構成を示す斜視図である。
【図4】ESLサーバの構成を示す図である。
【図5】商品ファイル、装置IDファイル、および、リンクテーブルの構成例を示す図である。
【図6】電子棚札の構成を示す図である。
【図7】ディスプレイの表示更新に関する機能構成を示すブロック図である。
【図8】ディスプレイの表示更新に関する処理の全体の流れを示す図である。
【図9】ディスプレイ更新処理の流れを示す図である。
【図10】エラー処理の流れを示す図である。
【図11】電圧回復待ちについて説明するための図である。
【図12】売価表示更新処理の流れを示す図である。
【図13】エラー表示処理の流れを示す図である。
【図14】確認通信に関する機能構成を示すブロック図である。
【図15】確認通信を説明するための図である。
【図16】第2の変形例を説明するための図である。
【図17】第2の変形例に係る電子棚札が実行する処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〈1.電子棚札システム〉
図1は、電子棚札システム1が備える電子棚札5が、店舗の商品棚60に配置された様子を示す図である。本電子棚札システム1においては、売価などの商品6に係る商品情報を表示する可搬性の電子棚札5が、各商品6に対応して配置される。そして、商品マスタに基づく売価を示す情報を含む通信信号が情報配信装置から各電子棚札5に送信され、その売価が各電子棚札5に表示される。これにより、電子棚札5において精算時の売価と一致する正しい売価が表示され、正しい売価が顧客に伝達されるようになっている。
【0015】
図1に示されるように、商品棚60はフェース61と呼ばれる空間に区分され、各フェース61には同一種の商品6が集約されて載置される。商品棚60のフレーム62には、各フェース61に対応する位置にそれぞれ電子棚札5が取り付けられている。すなわち、電子棚札5はそれぞれ一の商品6(正確には、一の商品の種類)に対応づけられ、その対応する商品6の近傍(一般的には、商品6の下側)のフレーム62に配置される。各電子棚札5はそれぞれディスプレイを備えており、ディスプレイには対応する商品6の売価が表示される。店舗の顧客(消費者)は、このような電子棚札5の表示により商品6の売価を認識する。
【0016】
電子棚札5は可搬性の装置であり、商品6の配置変更に対応できるように、フレーム62から取り外して別の位置に再配置することも可能とされている。本実施の形態においては、図1に示すような商品棚60が店舗内の販売スペースに複数配置されているものとする。
【0017】
〈2.商品管理システム〉
図2は、店舗に適用される、電子棚札システム1を含む商品管理システム100の構成例を示す図である。図2に示されるように、商品管理システム100は、電子棚札システム1とともに、ストアコントローラ2及びPOSシステム3を備えている。POSシステム3が備えるPOSサーバ31、及び電子棚札システム1が備えるESLサーバ10は、LAN21を介してストアコントローラ2に接続されている。これにより、ストアコントローラ2、POSシステム3及び電子棚札システム1の相互間でデータ通信が可能とされている。
【0018】
〈2−1.ストアコントローラ〉
ストアコントローラ2は一般的なコンピュータで構成され、商品管理システム100を統括的に管理する装置として機能する。また、ストアコントローラ2はインターネットなどの外部ネットワークに接続されており、外部ネットワークを介して、店舗を統括管理する本部センターに配置されたサーバ装置等のコンピュータと通信可能とされている。
【0019】
〈2−2.POSシステム〉
POSシステム3は、商品6の販売に係る情報をその販売時点において収集して分析するシステムであり、POSシステム3を統括的に管理するPOSサーバ31とともに、商品6の精算を行う複数のレジスタ32を備えている。POSサーバ31とレジスタ32とは専用の通信ケーブルで接続されている。
【0020】
POSサーバ31は一般的なコンピュータで構成され、そのハードディスクには、売価などの商品6に係る各種の情報を示す商品マスタ301が記憶されている。複数のレジスタ32のそれぞれにおいては、商品マスタ301に記載される売価に基づいて商品6の精算がなされる。
【0021】
店舗内の全商品6に係る情報は、この商品マスタ301により一元的に管理されている。商品マスタ301に記載される情報には、商品6を識別するための商品コード、商品6の名称である商品名、通常の売価である通常価格、特売における売価である特売価格、特売を実施する期間である特売期間、販売数、在庫数、1回の発注で納品される数である発注数などが含まれている。
【0022】
〈2−3.発注処理端末〉
LAN21には、無線LAN用の電波中継器たるアクセスポイント(AP)170が接続されている。商品6を発注する際に使用される可搬性の発注処理端末180は、アクセスポイント170を通じてLAN21に接続することが可能であり、ストアコントローラ2、POSサーバ31及びESLサーバ10と通信することが可能である。発注処理端末180は、店舗スタッフにより所定の操作が実行されると、商品6の発注を指示する発注指示情報を、無線LANを利用してストアコントローラ2に出力する。発注指示情報には、例えば、発注対象の商品6を識別するための商品コードや、当該商品6の発注数などが含まれている。ストアコントローラ2は、発注処理端末180からの発注指示を受け付ける発注サーバとしても機能し、入力された発注指示情報を本部センターに通知する。本部センターは、各店舗からの発注指示情報に基づいて、発注先の業者のサーバに対して商品6の発注を行う。
【0023】
図3は発注処理端末180の詳細な構成を示す斜視図である。図3に示されるように、発注処理端末180は、「ハンディーターミナル」と呼ばれる可搬性の業務端末であって、各種情報を表示するディスプレイ181と、バーコードを読み取るバーコードリーダ182と、店舗スタッフの各種操作を受け付ける操作部183とを備えている。また、発注処理端末180は、アクセスポイント170と無線通信を行う通信部184を備えている。この通信部184の機能により、発注処理端末180は、アクセスポイント170を通じて、ストアコントローラ2、POSサーバ31及びESLサーバ10と通信することが可能である。そして、発注処理端末180には、その動作を統括的に管理する制御部185が設けられている。制御部185はCPUやメモリなどで構成されている。
【0024】
〈2−4.電子棚札システム〉
〈2−4−1.構成〉
電子棚札システム1は、上述した複数の電子棚札5と、電子棚札5に表示すべき商品6の売価などを配信する情報配信装置40と、電子棚札5の表示画面を切り換える際に使用される可搬性のリモコン160とを備えている。
【0025】
〈情報配信装置〉
情報配信装置40は、電子棚札システム1を統括的に管理するサーバ装置であるESLサーバ10と、複数の通信装置4と、ESLサーバ10と複数の通信装置4との間の信号の中継器として機能するベースステーション41とを備えている。ESLサーバ10と複数の通信装置4とは、ベースステーション41を通じて相互にデータ通信が可能とされている。また、各通信装置4は電子棚札5と赤外線通信を行う。複数の通信装置4は、販売スペース90内に配置された全ての電子棚札5と通信可能なように、販売スペース90の天井などに略一定距離ごとに配置される。
【0026】
ESLサーバ10のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。図4はESLサーバ10の構成を示す図である。ESLサーバ10は、各種演算処理を行うCPU11、ブートプログラム等を記憶するROM12、演算処理の作業領域となるRAM13、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク14、各種表示を行うディスプレイ15、キーボード及びマウスなどで構成される入力部16、LAN21を介したデータ通信機能を有するデータ通信部17、並びに、ベースステーション41と通信するためのインターフェイス18を備えている。電子棚札5に送信すべきデータ(後述する「売価配信データ」)は、このインターフェイス18及びベースステーション41を通じて通信装置4に伝達される。
【0027】
ESLサーバ10のハードディスク14には、動作プログラムが予め記憶されており、この動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより、ESLサーバ10としての各種機能が実現される。また、ESLサーバ10のハードディスク14には、商品ファイル101、装置IDファイル102、および、リンクテーブル103が記憶されている。
【0028】
商品ファイル101、装置IDファイル102、および、リンクテーブル103について図5を参照しながら説明する。図5(a)は商品ファイル101の構成例を示す図である。図5(b)は装置IDファイル102の構成例を示す図である。図5(c)はリンクテーブル103の構成例を示す図である。
【0029】
商品ファイル101は、商品6に係る各種の情報を示すデータファイルである。商品ファイル101はテーブル形式となっており、レコード112のそれぞれが一の商品6に係る情報を示している。具体的には、レコード112ごとに、商品コード、商品名、通常価格、特売価格、特売期間、販売数及び在庫数などが登録されている。これらの情報は、上述したPOSシステム3に記憶された商品マスタ301と同様の情報であり、ESLサーバ10とPOSシステム3との通信により商品マスタ301の情報に基づいて登録される。このため、商品ファイル101の情報と商品マスタ301の情報とは内容が一致する。
【0030】
装置IDファイル102は、電子棚札システム1が備える複数の電子棚札5のそれぞれの「装置コード」を格納するフィアルである。ただし、「装置コード」とは、電子棚札5のそれぞれに登録された固有のハードウェアIDである。
【0031】
リンクテーブル103は、商品ファイル101に格納された商品6と、装置IDファイル102に格納された装置コードとを1対1で対応付けるテーブルである。リンクテーブル103により、商品6と電子棚札5とが1対1の関係でデータ的に対応づけられる(リンク付けされる)ことになる。
【0032】
以上の構成を有するESLサーバ10は、各電子棚札5に送信する「売価配信データ」をCPU11で生成し、生成した売価配信データをインターフェイス18及びベースステーション41を通じて各通信装置4に出力する。各通信装置4は、入力された売価配信データを、自身が通信可能な各電子棚札5に赤外線信号の形で出力する。これにより、販売スペース90に配置された各電子棚札5に対して同一の売価配信データが情報配信装置40から入力される。なお、後述するように、売価配信データには、一の装置コードおよび一の売価表示画像データ(当該装置コードを付された電子棚札5が表示すべき画像データ)が含まれている。
【0033】
〈電子棚札〉
電子棚札5の構成について図6を参照しながら説明する。図6は電子棚札5の構成を示す図である。電子棚札5の前面には、商品情報を表示するディスプレイ51と、情報配信装置40との通信を担う通信部54とが配置されている。また、電子棚札5の裏面には、自装置の装置コードを示す文字列とバーコードが印刷されたラベルが貼付されている。
【0034】
通信部54は、赤外線信号を出力する発光部52と、通信装置4からの赤外線信号及びリモコン160からの赤外線信号を受信し、それを電気信号に変換して後述の制御部57に出力する受光部53とを備えている。データを送信する送信部として機能する発光部52は例えばLEDで構成されており、データを受信する受信部として機能する受光部53は、例えばフォトダイオード及びアンプで構成されている。
【0035】
ディスプレイ51は、ドットマトリクス方式の不揮発性表示部であって、電子ペーパーで構成されている。ディスプレイ51は、ドットマトリクス方式の表示部であるため、商品6の売価などを示す数値のみならず、文字、記号、図形などを表示することができる。また、ディスプレイ51は電子ペーパーにより構成されるため、表示内容の変更(表示更新)にのみ駆動電力を必要とし、表示内容の保持には駆動電力を与える必要がない。
【0036】
また、本実施の形態に係るディスプレイ51は、複数の表示画面を切り換えて表示することが可能である。例えば、ディスプレイ51は、商品の売価など、商品を購入する顧客が利用する情報が主に表示される表示画面(表画面)と、商品の販売数など、店舗の店員が利用する情報(販売数、発注数、特売期間などの商品情報や、自身に割り当てられた装置コード等)が表示される表示画面(裏画面)とを切り換えて表示することができる。
【0037】
表画面には、例えば図6に示されるように、自装置が対応付けられた商品の売価51aとともに、その商品を特定可能な情報である商品名51b及び商品コード51d(具体的には、商品コードを示すバーコード)が表示される。ディスプレイ51に商品特定情報が表示されずに売価51aのみが表示される場合には、電子棚札5がいずれの商品に対応付けられているかの把握は困難であるが、このような商品特定情報の表示により、電子棚札5と商品とが視覚的に対応付けられる。また、自装置が対応付けられた商品6の商品コードを数字で表す文字列51cと、当該商品コードを示すバーコード51dとが、当該バーコード51dが延びる方向に並んで表示されてもよい。
【0038】
電子棚札5の内部には、当該電子棚札5の電源を供給する小型の電池56と、当該電子棚札5の動作を統括的に制御する制御部57とが設けられている。制御部57は、CPUやメモリなどで構成されている。このメモリには各種のデータ(ディスプレイ51に表示すべき画像データ、ディスプレイ51の更新状態を示すステータスフラグ、自装置の装置コード、等)が記憶される。すなわち、通信装置4から出力された赤外線信号(売価配信データ)は、通信部54で受信されて制御部57に入力され、制御部57は、入力された売価配信データに含まれる画像データ(売価表示画像データ)を当該メモリに記憶する。
【0039】
また、制御部57は、ディスプレイ51の表示を制御する表示制御部として機能する。すなわち、制御部57は、所定のタイミングで、メモリに記憶された画像データ(売価表示画像データ、後述するエラー画像データ、等)のいずれかを読み出し、ディスプレイ51を制御して、当該読み出した画像データをディスプレイ51に表示させる。また、制御部57は、ディスプレイ51の表示をリモコン160から出力される赤外線信号に応じて切り換える。後述するように、リモコン160は、操作ボタン(図示省略)を有しており、操作ボタンに対する外部からの操作に応じて赤外線信号を送信することが可能である。リモコン160の操作ボタンが押下されて、受光部53にリモコン160からの赤外線信号が入力されると、受光部53は当該赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。そうすると、制御部57は、ディスプレイ51の表示を、例えば表画面から裏画面に変更する。この状態で、リモコン160の操作ボタンが再度押下されて、受光部53にリモコン160からの赤外線信号が入力されると、受光部53は当該赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。そうすると、制御部57は、ディスプレイ51の表示を、裏画面から表画面に変更する。
【0040】
〈リモコン〉
リモコン160は、電子棚札5の表示画面を切り換えるための信号を発信する遠隔操作機器である。リモコン160は、赤外線信号を出力する発光部と、発光部を制御する制御部と、赤外線信号の送信指示を受け付ける操作ボタンとを備えている(いずれも図示省略)。操作ボタンが押下されると、制御部は発光部を制御して、当該発光部から所定の赤外線信号を出力させる。リモコン160からの赤外線信号を受信した電子棚札5では、上述したとおり、そのディスプレイ51の表示が切り換わることになる。
【0041】
〈2−4−2.電子棚札システムの基本動作〉
次に、電子棚札5に売価が表示されるまでの電子棚札システム1の動作について説明する。本電子棚札システム1において、情報配信装置40から電子棚札5への売価の配信は、システム起動時、及び電子棚札5に表示させる売価を更新する際などに行われる。ここで売価を更新する際とは、商品マスタ301の通常価格が変更されたときや、特売の実施にあたって売価を通常価格から特売価格に変更するときなどが該当する。システム起動時には、店舗内の全ての商品6に関して売価の配信がなされる。一方、売価を更新する際には、対象となる商品6のみに関して売価の配信がなされる。これにより、電子棚札5に表示される売価と、レジスタ32による精算時の売価とが常時に一致されることになる。以下では、一の商品6に関しての売価の配信に係る動作について説明する。以下の説明において、売価の配信の対象となる商品6を「対象商品6」という。
【0042】
まず、情報配信装置40のESLサーバ10が、対象商品6に対応する電子棚札5の装置コードと、当該電子棚札5に表示させる画像データ(売価表示画像データ)とを含むデータ(これを「売価配信データ」という)を生成する。具体的には、まず、リンクテーブル103を参照して、対象商品6とリンク付けされている装置コードを取得する。また、商品ファイル101のうちの対象商品6に係るレコード112を参照して、通常価格及び特売価格のうちの配信すべき売価や商品名等を取得し、取得された売価や商品名等の各種情報を表示した画像を生成して、売価表示画像データとして取得する。そして、取得された装置コードと生成された売価表示画像データとを含めた1個のデータを生成し、これを売価配信データとして取得する。売価配信データに含まれる売価表示画像データが電子棚札5のディスプレイ51に表示されることによって、電子棚札5に対応する商品の売価等が表示されることになる(図6参照)。
【0043】
売価配信データが生成されると、ESLサーバ10は、生成された売価配信データを電気的な信号としてベースステーション41を通じて各通信装置4に送信する。
【0044】
ESLサーバ10から送信された売価配信データは、通信装置4において受信される。通信装置4は、売価配信データを受信すると、これを赤外線信号の形で出力する。
【0045】
通信装置4から出力された赤外線信号は、電子棚札5の通信部54において受信される。通信部54は、受信した赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。制御部57は、入力された電気信号から売価配信データに含まれていたデータ(装置コードおよび売価表示画像データ)を取得する。
【0046】
次に、制御部57は、取得された装置コードが、制御部57のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。取得された装置コードが自装置のものと一致しない場合、制御部57は、受信した売価配信データは他の電子棚札5のための情報であると判断し、処理を終了する。一方、取得した装置コードが自装置のものと一致した場合、制御部57は、受信した売価配信データは自装置のための情報であると判断し、売価配信データを正常に受け取った旨を示す情報を含む赤外線信号(ACK信号)を発光部52に出力させる。そして、得られた売価表示画像データをディスプレイ51に表示させる。これによって、当該電子棚札5のディスプレイ51に新たな売価が表示される。すなわち、売価が更新される。
【0047】
なお、電子棚札5から送信されたACK信号は通信装置4で受信され、当該ACK信号に含まれる情報がESLサーバ10に伝達される。ESLサーバ10は、電子棚札5からのACK信号を受信しない場合は、売価配信データが電子棚札5で正常に受信されなかったと判断して、電子棚札5からのACK信号を受信するまで売価を繰り返し配信する処理を行う(リカバリー通信)。これにより、電子棚札5の表示を確実に更新でき、システムの信頼性を大幅に向上できる。
【0048】
以上のような動作によって、情報配信装置40から電子棚札5へ売価の配信がなされることになる。
【0049】
〈3.電子棚札〉
上述したとおり、電子棚札5は、自装置の装置コードを含む売価配信データを受信した場合に、自装置のディスプレイ51の表示を更新する。このディスプレイ51の表示更新に関して詳細に説明する。
【0050】
〈3−1.構成〉
ディスプレイ51の表示更新に関する機能構成について図7を参照しながら説明する。図7は、当該機能構成を示すブロック図である。
【0051】
電子棚札5の制御部57は、画像メモリ71とフラグメモリ72とを備える。これら各メモリ71,72は不揮発性メモリにより構成される。また、制御部57のCPUには、通信処理部81と、表示処理部82と、フラグ管理部83と、エラー処理制御部84と、電圧検出部85と、初期化処理部86と、が実現されている。
【0052】
画像メモリ71は、ディスプレイ51に表示すべき各種の画像データが記憶されるメモリである。画像メモリ71には、ESLサーバ10より受信された売価表示画像データが格納される。また、画像メモリ71には電子棚札5においてトラブルが発生した場合にディスプレイ51に表示するエラー画面用の画像データ(以下「エラー用画像データ」という)が予め記憶されている。エラー画面は、白の画面でもよいし、エラーの種類を示唆する情報(例えば、エラー番号)が表された画面(図12参照)でもよい。
【0053】
フラグメモリ72は、電子棚札5の状態、特にディスプレイ51の更新状態を示すフラグ(以下「ステータスフラグF」という)が記憶されるメモリである。ステータスフラグFは肯定値「F=0」、第1否定値「F=2」、第2否定値「F=1」のいずれかの値によりディスプレイ51の更新状態を示す。ただし、肯定値「F=0」は、後述する売価表示更新処理が正常に完了して、ディスプレイ51が適正に更新されている状態を示し、第1否定値「F=2」および第2否定値「F=1」はそれ以外の状態(売価表示更新処理が正常に完了せず、ディスプレイ51が適正に更新されていない状態)を示す。ステータスフラグFの値は、後述するフラグ管理部83により管理される。
【0054】
通信処理部81は、ESLサーバ10との通信に関する各種処理を行う機能部である。通信処理部81は、ESLサーバ10から受信した売価配信データ(すなわち、ESLサーバ10から発信され、通信装置4を介して赤外線信号の形で受光部53に受信され、さらに、受光部53にて電気信号に変換された上で制御部57に出力された電気信号)から、装置コードおよび売価表示画像データを取得する。ここで取得された装置コードが自装置のものと一致する場合、通信処理部81は、取得された売価表示画像データを画像メモリ71に格納する(受信コマンド処理)。また、この場合、通信処理部81は、発光部52にACK信号を出力させる(ACK返信処理)。ただし、後述するように、通信処理部81は、ステータスフラグFの状態に応じてACK返信処理を行うべきか否かを判断する。すなわち、ステータスフラグFが肯定値「F=0」の場合(すなわち、ディスプレイ51が適正に更新されている状態の場合)に限りACK返信処理を行い、それ以外の場合(すなわち、ディスプレイ51が適正に更新されていない状態の場合)はACK返信処理を行わない。
【0055】
表示処理部82は、ディスプレイ51の表示に関する各種処理を行う機能部であり、売価表示処理部821と、エラー表示処理部822とを備える。売価表示処理部821は、通信処理部81が新たな売価表示画像データを画像メモリ71に格納した場合に、当該新たな売価表示画像データをディスプレイ51に表示させてディスプレイ51の表示を更新する(売価表示更新処理)。また、エラー表示処理部822は、エラー処理制御部84から所定の指示を受けた場合に、画像メモリ71に格納されたエラー用画像データをディスプレイ51に表示させる(エラー表示処理)。
【0056】
フラグ管理部83は、ステータスフラグFを管理する機能部であり、ディスプレイ51の更新状態に応じてステータスフラグFの値を設定する。すなわち、フラグ管理部83は、売価表示更新処理を実行する前にステータスフラグFの値を暫定的に否定値(具体的には、第1否定値「F=2」)に設定し、売価表示更新処理が正常に完了した場合に、ステータスフラグFの値を肯定値「F=0」に更新する(図9参照)。したがって、売価表示更新処理が正常に完了しない場合は、ステータスフラグFの値は第1否定値「F=2」のままとされる。この場合、所定のエラー処理が行われることになる(図8参照)。また、フラグ管理部83は、エラー処理においてエラー表示処理を実行する前に、ステータスフラグFの値を第1否定値「F=2」から第2否定値「F=1」に更新する(図10参照)。したがって、エラー表示処理が実行されてから、次回の売価表示更新処理を実行する前までの間はステータスフラグFの値は第2否定値「F=1」とされる。
【0057】
エラー処理制御部84は、表示処理部82が売価表示更新処理に失敗した場合に、表示処理部82および初期化処理部86に所定のタイミングで指示を与えて一連のエラー処理を実行させる機能部である。すなわち、エラー処理制御部84は、表示処理部82が売価表示更新処理に失敗した場合に、電圧回復待ちをした上で、エラー表示処理部822にエラー表示処理を行わせる(図10参照)。エラー処理の流れについては後に具体的に説明する。
【0058】
電圧検出部85は、電池56の電圧を検出する機能部である。電圧検出部85は、電池56の電圧が、電子棚札5の動作電圧の下限値(以下「最低動作電圧」という)以下となったことを検出した場合、後述する初期化処理部86に初期化処理を行わせる。
【0059】
初期化処理部86は、電子棚札5の初期化処理を行う機能部である。初期化処理部86は、電子棚札5が起動されたとき、また、電圧検出部85からの指示を受けた場合に初期化処理を行う。
【0060】
〈3−2.処理の流れ〉
次に、ディスプレイ51の表示更新に関する処理の流れを図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、ディスプレイ51の表示更新に関する処理の全体の流れを示す図である。図9は、ディスプレイ更新処理の流れを示す図である。図10は、エラー処理の流れを示す図である。
【0061】
〈3−2−1.ディスプレイの表示処理〉
図8を参照する。電子棚札5が起動されると、初期化処理部86が初期化処理を行う(ステップS1)。初期化処理が行われると、電子棚札5は通信装置4からの赤外線信号の送信(すなわち、ESLサーバ10からの売価配信データの送信)を待ち受ける状態となる(ステップS2)。
【0062】
自装置の装置コードを含む売価配信データが受信されると(ステップS2でYES)、通信処理部81は、ステータスフラグFが肯定値「F=0」であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0063】
ステータスフラグFが肯定値「F=0」である場合(ステップS3でYES)、通信処理部81はACK返信処理を行い(ステップS4)、その上で受信コマンド処理(ステップS2で受信された売価配信データに含まれる売価表示画像データを画像メモリ71に格納する処理)を行う(ステップS5)。一方、ステータスフラグFが肯定値「F=0」でない場合(ステップS3でNO)、通信処理部81はACK返信処理を行わずに、受信コマンド処理を行う(ステップS5)。
【0064】
受信コマンド処理が行われると、続いて、ディスプレイ更新処理が行われる(ステップS6)。ディスプレイ更新処理について、図9を参照しながら具体的に説明する。
【0065】
ディスプレイ更新処理においては、まず、フラグ管理部83が、ステータスフラグFを第1否定値「F=2」に更新する(ステップS61)。
【0066】
続いて、売価表示処理部821が、ステップS5で画像メモリ71に格納された売価表示画像データを読み出して、当該売価表示画像データをディスプレイ51に表示させる(売価表示更新処理)(ステップS62)。
【0067】
ステップS62の処理が成功し、ディスプレイ51の表示が適正に更新されたことが確認された場合(ステップS63でYES)、フラグ管理部83は、ステータスフラグFを第1否定値「F=2」から肯定値「F=0」に更新する(ステップS64)。この場合、ステータスフラグFが肯定値「F=0」とされた状態でディスプレイ更新処理が終了することになる。
【0068】
一方、ステップS62の処理が失敗し、ディスプレイ51の表示が適正に更新されなかった場合(ステップS63でNO)、フラグ管理部83は、ステータスフラグFを更新しない。この場合、ステータスフラグFが第1否定値「F=2」とされた状態のままでディスプレイ更新処理が終了することになる。なお、売価表示更新処理が失敗する状況とは、具体的には、売価表示更新処理において電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となってしまった場合である。上述したとおり、電子棚札5のディスプレイ51は電子ペーパーにより構成されており、後に説明するように、電子ペーパーにおいては、その表示を書き換える際に相当量のピーク電流が必要となる。したがって、例えば電池56の電池残量が少ない状況で売価表示更新処理を行おうとした場合、相当量のピーク電流が消費されるために電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となってしまう可能性が高い。電圧検出部85は、電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となったことを検出すると、初期化処理部86に初期化処理を行わせる。この場合、売価表示更新処理は中断されるため、ディスプレイ51の表示は適正に更新されず、売価表示更新処理は失敗したことになる。
【0069】
〈3−2−2.エラー処理〉
売価表示更新処理が失敗した場合、エラー処理制御部84がエラー処理を行わせる。エラー処理について、図10を参照しながら説明する。
【0070】
上述したとおり、売価表示更新処理において電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となると、プログラムが自動的に再起動し、初期化処理部83による初期化処理が行われる(ステップS81)。
【0071】
初期化処理が終了すると、エラー処理制御部84は、ステータスフラグFが第1否定値「F=2」であるか否かを判断する(ステップS82)。ここでステータスフラグFが第1否定値「F=2」であることは、当該エラー処理において、エラー表示処理がまだ一度も実行されていないことを意味している。すなわちここでは、当該エラー処理において、エラー表示処理が既に実行されたか否かが判断されている。いま、ステータスフラグFが第1否定値「F=2」である(当該エラー処理において、エラー表示処理がまだ実行されていない)として話を進める。
【0072】
ステータスフラグFが第1否定値「F=2」である場合(ステップS82でYES)、エラー処理制御部84は、初期化処理が完了してから所定の時間(例えば30秒)が経過するのを待つ(電圧回復待ち)(ステップS83)。すなわち、エラー処理制御部84は、売価表示更新処理の失敗から所定時間が経過するまでディスプレイ更新処理を開始させない。なお、経過時間のカウントは、タイマ841(図7参照)を用いて行うこととし、待機時間の具体的な値は任意に設定できるものとする。
【0073】
電圧回復待ちを行うのは、次に行われるエラー表示処理の成功可能性を高めるためである。上述したとおり、売価表示更新処理が失敗しているという状況は、図11に模式的に示されるように、電子棚札5の電池残量が少ない状態で売価表示更新処理を行おうとしたために電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となってしまった状況と考えられる。この場合、初期化処理が行われることによって供給電圧は最低動作電圧までは回復するが、ここからのさらなる電圧の回復は徐々になされていくため、初期化処理が完了した時点ではまだ十分な電圧回復は期待できない。
【0074】
上述したとおり、ディスプレイ51の表示を書き換える際には相当量のピーク電流が必要となる。(後に説明するように、この実施の形態に係るエラー表示処理では、売価表示更新処理よりも少なくなるように工夫されてはいるものの、やはりある程度のピーク電流は必要とされる。)したがって、初期化処理が完了してからすぐに(すなわち、十分な電圧回復がなされていないうちに)エラー表示処理を行おうとした場合、当該処理で消費されるピーク電流によって電池56からの供給電圧が再び最低動作電圧以下となる可能性が高い(図11の破線)。電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となってしまうと、初期化処理部86が初期化処理を行うことになり、この場合、エラー表示処理は中断されるため、ディスプレイ51の表示は適正に更新されない、すなわち、エラー表示処理が失敗に終わってしまうことになる。
【0075】
一方、電圧回復待ちを行った場合、すなわち、初期化処理が完了してから一定時間(例えば30秒)が経過するのを待った場合、この間に電圧回復が期待できる。したがって、エラー表示処理で消費されるピーク電流によって、電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となる可能性が低くなる(図11の実線)。すなわち、エラー表示処理が失敗に終わってしまう可能性が低くなる。
【0076】
電圧回復待ちが終了すると、ディスプレイ更新処理が開始される(ステップS84)。エラー処理におけるディスプレイ更新処理においては、まず、フラグ管理部83が、ステータスフラグFを第1否定値「F=2」から第2否定値「F=1」に更新する(ステップS841)。続いて、エラー処理制御部84は、エラー表示処理部822にエラー画面を表示させるよう指示を与える。エラー表示処理部822は、エラー処理制御部84からの指示に応じて、画像メモリ71に格納されたエラー用画像データを読み出し、当該エラー用画像データをディスプレイ51に表示させる(エラー表示処理)(ステップS842)。
【0077】
なお、画像メモリ71には、電子棚札5において発生しうる各種エラーのそれぞれに応じた複数種類のエラー用画像データ(例えば、エラー番号を表示する画像データ(図13参照))が予め格納されていてもよい。この場合、エラー処理制御部84は、売価表示更新処理の失敗というエラーに応じた一のエラー用画像データを選択し、選択したエラー用画像データを表示するようにエラー表示処理部822に指示を与える。エラー表示処理部822は、エラー処理制御部84からの指示を受けると、画像メモリ71に格納された複数のエラー用画像データのうち、指示されたエラー用画像データを読み出して、当該エラー用画像データをディスプレイ51に表示させる。この構成によると、ディスプレイ51に、売価表示更新処理の失敗を示すエラー画面が表示されることになるので、エラー発生の事実だけでなく、売価表示更新処理が失敗しているということをも店舗スタッフに確実に知得させることができる。
【0078】
ディスプレイ更新処理(ステップS84)において行われたエラー表示処理(ステップS842)が成功し、ディスプレイ51にエラー画面が適正に表示されたことが確認された場合(ステップS85でYES)、エラー処理制御部84は、エラー処理を終了する。
【0079】
一方、ディスプレイ更新処理(ステップS84)において行われたエラー表示処理(ステップS842)が失敗し、ディスプレイ51の表示が適正に更新されなかった場合(ステップS85でNO)、再び初期化処理部86が初期化処理を行うことになる(ステップS81)。すなわち、エラー表示処理が失敗する状況とは、具体的には、電池56の電池残量が少ないために、エラー表示処理において電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となってしまった場合である。電圧検出部85は、電池56からの供給電圧が最低動作電圧以下となったことを検出すると、初期化処理部86に初期化処理を行わせる。この場合、エラー表示処理は中断されるため、ディスプレイ51の表示は適正に更新されない。
【0080】
初期化処理が終了すると、続いて、エラー処理制御部84は、ステータスフラグFが第1否定値「F=2」であるか否かを判断する(ステップS82)。ステータスフラグFが第1否定値「F=2」でない場合(ステップS82でNO)、エラー処理制御部84は、ステップS83〜ステップS85の処理を行うことなく、エラー処理を終了する。上述した通り、エラー表示処理が一度行われた場合、当該処理が成功しているか否かにかかわらず、ステータスフラグFの値は第2否定値「F=1」に設定された状態となっている。したがって、ステップS81の初期化処理が行われた後の時点においてステータスフラグFが第2否定値「F=1」である(第1否定値「F=2」でない)ことは、当該エラー処理においてエラー表示処理が既に実行されており、かつ、当該エラー表示処理が失敗に終わっているという状況を意味している。このような状況においては、エラー表示処理が適正に行えないほどにまで電池56の電池残量が少なくなっていると推測され、このような状況で再度エラー表示処理を行っても失敗する可能性が高い。したがって、この場合は、再度のディスプレイ更新処理を行うことなく(すなわち、再度のエラー表示処理を行うことなく)、エラー処理を終了するのである。
【0081】
〈3−3.売価表示更新処理、および、エラー表示処理〉
上述した通り、ディスプレイの表示更新に関する処理においては、売価表示処理部821が売価表示更新処理を行い(図9のステップS62)、これによってディスプレイ51に新たな売価が表示される。また、売価表示更新処理が失敗した場合には、エラー表示処理部822がエラー表示処理を行い(図10のステップS842)、これによってディスプレイ51にエラー画面が表示される。以下において、売価表示更新処理、エラー表示処理の各処理について具体的に説明する。
【0082】
各処理についての説明をする前に、電子ペーパーの表示原理について簡単に説明しておく。電子ペーパーは、周知のごとく、対向する2枚の基板間(前面側に配置された基板を以下「第1基板」と、背面側に配置された基板を以下「第2基板」という)に、プラスに停電した黒の電子粉流体と、マイナスに帯電した白の電子粉流体とを封入した構成となっている。また、2枚の基板にはマトリクス状に電極が配置されており、ディスプレイ領域の任意の位置で任意の電圧差を形成することが可能となっている。基板間に電圧差が形成されると、封入された各色の電子粉流体がそれぞれ異なる方向に移動し、これによって当該位置に白あるいは黒が表示されることになる。例えば、ディスプレイのある画素位置を白く表示する場合、当該位置の電極から第1基板に電圧を付加して、第1基板の電圧を第2基板の電圧よりも高くする(以下「白電圧付加」という)。すると、白の電子粉流体が第1基板側に移動し、黒の電子粉流体が第2基板側に移動する。これによって当該画素位置が白表示される。逆に、当該位置を黒く表示する場合、当該位置の電極から第2基板に電圧を付加して、第2基板の電圧を第1基板の電圧よりも高くする(以下「黒電圧付加」という)。すると、黒の電子粉流体が第1基板側に移動し、白の電子粉流体が第2基板側に移動する。これによって当該画素位置が黒表示される。
【0083】
〈3−3−1.売価表示更新処理〉
売価表示更新処理について、図12を参照しながら具体的に説明する。図12は、売価表示更新処理の流れを示す図である。なお、図12には、各処理の段階におけるディスプレイ51の様子が模式的に並記されている。
【0084】
売価表示処理部821は、まず、現在表示されている画面(更新前画面)を消去する(消去処理)(ステップS621)。消去処理は、具体的には、「黒消去」と「白消去」とを交互に複数回行うことによって行われる。ここでは例えば、黒消去(ステップS6211)、白消去(ステップS6212)、黒消去(ステップS6213)の各処理をこの順序で行うことによって行われるものとする。
【0085】
ただし、「黒消去」とは、ディスプレイ51を構成する基板に配置された電極の全てに、同時に、黒電圧付加を行う処理である。全電極に対して、同時に、黒電圧付加を行うと、ディスプレイ51の全領域が一瞬で黒表示となる。また、「白消去」とは、全電極に、同時に、白電圧付加を行う処理である。全電極に対して、同時に、白電圧付加を行うと、ディスプレイ51の全領域が一瞬で白表示となる。
【0086】
黒の電子粉流体と白の電子粉流体とは互いに逆の電気を帯びているため、描画状態においては互いに固着した状態となっている。したがって、黒消去(もしくは白消去)を一回行っただけでは電子粉流体が十分にほぐれず、更新前画面が完全には消去されない。また、電子粉流体が十分にほぐれていないと、更新後の画面がコントラストのないぼやけた画面となってしまう。ここでは、黒消去と白消去とを交互に複数回行う(すなわち、全電極に対する黒電圧付加と白電圧付加とを交互に複数回行う)ので、固着していた黒の電子粉流体と白の電子粉流体とがよく撹拌され、電子粉流体が十分にほぐれる。これによって、ディスプレイ51に表示されていた更新前画面を完全に消去することができる。また、更新後の画面を良好なコントラストで描画することが可能となる。
【0087】
更新前画面が消去されると、続いて、売価表示処理部821は、売価表示画像データをディスプレイ51に走査描画(ライト)させる(ステップS622)。すなわち、売価表示画像データの各画素値に応じて、各電極に黒電圧付加もしくは白電圧付加を行う。ただし、描画処理は、消去処理のように全電極に対して同時に電圧付加を行うのではなく、一電極ずつ順番に電圧付加をしていくことによって行われる。すなわち、消去処理が終了した段階ではディスプレイ51は前面黒表示となっているところ、まず、最上段の行ラインに配置された電極のうち、白表示すべき画素に対応する電極に例えば左から順番に白電圧付加を行っていく。続いて、2段目の行ラインに配置された電極のうち、白表示すべき画素に対応する電極に順番に白電圧付加を行っていく。このような処理を一行ラインずつ全行ラインについて行っていく。このような処理が全行ラインについて行われると、描画処理が完了する。このように一電極ずつ順番に電圧付加をしながら画面を描画する構成(走査描画)によると、描画処理が完了するまでに要する時間が長くなるものの、瞬間的な電圧負荷が小さくなるので、消去処理に比べてピーク電流が小さくなり、電圧降下によるリセットが発生しにくくなる。
【0088】
なお、黒電圧付加および白電圧付加は、より具体的には、所定の電圧を所定時間付加する処理を複数回行うことによってなされる。一回の電圧付加時間および電圧付加回数は任意に設定できるが、この時間が長くなるほど、また、この回数が多くなるほど、ディスプレイのコントラストがあがってくる。一般に、消去処理における黒/白電圧付加の一回の電圧付加時間は、描画処理に係る電圧付加時間よりも長く設定される。また、消去処理における黒/白電圧付加の電圧付加回数は、描画処理に係る電圧付加回数よりも多く設定される。すなわち、描画処理に係る一回の黒/白電圧付加は、消去処理に係る一回の黒/白電圧付加よりも少ない電気量しか必要としない。この点から見ても、描画処理においては、消去処理に比べてピーク電流が小さくなり、電圧降下によるリセットが発生しにくくなる。
【0089】
〈3−3−2.エラー表示処理〉
次に、エラー表示処理について、図13を参照しながら具体的に説明する。図13は、エラー表示処理の流れを示す図である。なお、図13には、各処理の段階におけるディスプレイ51の様子が模式的に並記されている。
【0090】
エラー表示処理部822は、まず、ディスプレイ51に白画面を走査描画(ライト)させる(白描画処理)(ステップS84211)。すなわち、エラー表示処理が開始される段階ではディスプレイ51には更新前画面が表示されているところ、まず、最上段の行ラインに配置された電極のうち、黒表示されている画素に対応する電極に順番に白電圧付加を行っていく。続いて、2段目の行ラインに配置された電極のうち、黒表示されている画素に対応する電極に順番に白電圧付加を行っていく。このような処理を一行ラインずつ全行ラインについて行っていく。このような処理が全行ラインについて行われると、白描画処理が完了する。このように一電極ずつ順番に電圧付加をしていく構成によると、上述したとおり、消去処理に比べてピーク電流が小さくなり、電圧降下によるリセットが発生しにくくなる。
【0091】
また、上述した通り、描画処理に係る一回の黒/白電圧付加は、消去処理に係る一回の黒/白電圧付加よりも少ない電気量しか必要とせず、この点から見ても、白描画処理においては、消去処理に比べて電圧降下によるリセットが発生しにくい。
【0092】
エラー表示処理においては、エラー表示処理部822は、上述した白描画処理を複数回(ここでは、3回)繰り返して実行する(ステップS8421〜ステップS8423)。白描画処理を繰り返す回数は、任意に設定可能であるが、更新前画面をある程度(それが売価を表示している画面であると客が認識しない程度)まで消去するには、少なくとも3回以上に設定することが好ましい。
【0093】
3回の白描画処理が完了すると、エラー表示処理部822は、エラー画像データをディスプレイ51に走査描画(ライト)させる(ステップS854)。すなわち、エラー画像データの各画素値に応じて、各電極に黒電圧付加もしくは白電圧付加を行う。ここでも、各電極に対する電圧負荷は、一電極ずつ行われる。すなわち、白描画処理が終了した段階ではディスプレイ51は全面白表示となっているところ、まず、最上段の行ラインに配置された電極のうち、黒表示すべき画素に対応する電極に順番に黒電圧付加を行っていく。続いて、2段目の行ラインに配置された電極のうち、黒表示すべき画素に対応する電極に順番に黒電圧付加を行っていく。このような処理を一行ラインずつ全行ラインについて行っていく。このような処理が全行ラインについて行われると、描画処理が完了する。
【0094】
なお、この描画処理は、黒表示すべき画素に対応する電極に黒電圧を付加することによって行われるので、電圧負荷を小さくするためには、エラー画像データは黒の画素数がなるべく少ない画像データ(すなわち、白を基調とする画像データ)としておくことが好ましい。例えば、図13に示されるように、画面上小さなサイズでエラー番号(売価表示更新処理の失敗というエラーを示すエラー番号)が表示されるものとすればよい。
【0095】
〈4.効果〉
従来の電子棚札システムにおいては、電子棚札は、ESLサーバから自装置が対応する商品に係る商品情報(売価配信データ)を受信した場合には、必ずACK信号を返信する。このような構成では、電子棚札が、受信した商品情報に基づいてディスプレイを表示更新する処理を失敗している場合であっても、ESLサーバ側は、その事実に気付かないまま、次々と新たな商品情報を送信し続ける。一方、電子棚札の側では、新たな商品情報を受信する度にACK信号の返信と表示内容の更新とを行う。電池56の残存容量が少なくなっている場合、必要とする電気量が小さいACK信号の返信処理には成功するものの、必要とする電気量が大きい表示更新処理には結局失敗してしまう。したがって、電子棚札5のディスプレイには更新内容が反映されないままの古い売価が表示され続ける。ところが、ESLサーバはACK信号を受信しているのでその異変を検知できない。したがって、このような状態は店舗スタッフに気付かれないまま長期間にわたって継続する可能性が非常に高い。
【0096】
上記の実施の形態に係る電子棚札システム1によると、このような事態の発生を速やかに検知して、これを店舗スタッフに迅速かつ確実に知得させることが可能となる。
【0097】
すなわち、電子棚札システム1によると、電子棚札5は、ESLサーバ10から自装置が対応する商品6に係る商品情報(売価配信データ)を受信した場合であっても、ステータスフラグFが、ディスプレイが適正に更新されている状態を示す肯定値「F=0」に設定されていない場合はサーバにACK信号を返信しない。この構成によると、ESLサーバ10が、ACK信号の有無から、電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適正に行われているか否かを検知することができる。すなわち、何らかのトラブル(例えば、バッテリー不足による電圧降下)により電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適正に行われていない場合に、ESLサーバ10側でこれを検知することが可能となる。また、当該トラブルが復旧してディスプレイ51の更新が適正に行われるようになった場合にも、ESLサーバ10側でこれを検知することができる。つまり、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のそれぞれがディスプレイの更新を適正に行っているか否かをESLサーバ10で一括管理することが可能となる。
【0098】
したがって店舗スタッフは、店舗内にディスプレイ51の更新に失敗している電子棚札5がある場合に、ESLサーバ10の保持する情報を見ることによって、当該電子棚札5の存在を迅速かつ確実に知得することができる。この店舗スタッフが、適切な措置(ディスプレイ51の更新に失敗している電子棚札5の電池交換など)をとることによって、正しい売価を表示していない電子棚札5が店舗内に存在するという状況を速やかに改善することが可能となる。
【0099】
また、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1によると、電子棚札5は、ステータスフラグFが、ディスプレイ51が適正に更新されていない状態を示す否定値「F=1」に設定されている場合は、ACK返信処理は行わないものの、受信コマンド処理およびディスプレイ更新処理は行おうとする(図8参照)。先のディスプレイ更新処理に失敗している電子棚札5であっても、周囲の環境温度の変化により電圧が回復して、次のディスプレイ更新処理を成功する可能性がある。例えば、スーパー等の青果物や肉売り場の冷蔵庫付近は低温であるため、このようなコーナーに配置された電子棚札5には電圧降下の状態が発生しやすく、リセットがかかりやすい。しかしながら、低温コーナーではリセットがかかってしまう電子棚札5でも、常温コーナーに移動されると再びディスプレイ更新処理を行える状態となる可能性が高い。上記の実施の形態においては、電子棚札5がディスプレイ更新処理に成功すると、ステータスフラグFは再び肯定値「F=0」とされ(図9参照)、以降、電子棚札5はACK返信処理を行う状態となる。すなわち、上記の実施の形態においては、このような状況において、電子棚札5を正常動作に自動復旧させることが可能となる。
【0100】
また、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1によると、電子棚札5においてディスプレイ51が適正に更新されなかった場合に、エラー処理制御部84がエラー表示処理部822にエラー表示処理を行わせる。したがって、ディスプレイ51が適正に更新されなかった電子棚札5のディスプレイ51には、エラー画面が表示されることになる。この構成によると、更新前の画面(すなわち、更新前の売価)が電子棚札5に表示され続けることによって、客に誤情報を与えるといった事態の発生を防止することが可能となる。
【0101】
また、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1によると、エラー処理制御部84がエラー表示処理部822にエラー表示処理を一度だけ行わせる。すなわち、このエラー表示処理が正常に完了せずディスプレイ51にエラー画面が表示されなかった場合であっても、再度のエラー表示処理は行わせない。エラー表示処理に一度失敗している場合、バッテリー不足による著しい電圧降下が生じている可能性が高く、再度のエラー表示処理を実行しても失敗する可能性が高い。上記の構成によると、再度のエラー表示処理は行わせないので、失敗する可能性が高い処理が何度も繰り返されて電子棚札5の電力が無駄に消耗される事態を回避することが可能となる。
【0102】
また、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1によると、電子棚札5においてディスプレイ51が適正に更新されなかった場合に、エラー処理制御部84がエラー表示処理部822にエラー表示処理を行わせるところ、この処理を、初期化処理が完了してから所定時間が経過した後に(すなわち、売価表示更新処理が行われてから所定時間が経過した後に)開始させる。売価表示更新処理に失敗している場合、売価表示更新処理による電圧降下が生じている可能性が高く、この状態で直ちにエラー表示処理を実行しても失敗する可能性が高い。上記の構成によると、売価表示更新処理の失敗から所定時間が経過するのを待ってからエラー表示処理を開始させるので、その間に電圧の回復が期待でき、安定した電圧状態でエラー表示処理を行うことが可能となる。したがって、エラー表示処理に失敗する可能性が低くなる。
【0103】
また、上記の実施の形態に係る電子棚札システムにおいては、電子棚札5のディスプレイ51に更新画面を表示する処理(売価表示更新処理)と、エラー画面を表示する処理(エラー表示処理)とが異なる態様で実行される。具体的には、売価表示更新処理においては消去処理を行うが、エラー表示処理においては消去処理を行わず、白の画面を走査描画する処理を複数回行うことでもって消去処理に代えている。これによって以下の効果が得られる。
【0104】
まず、売価表示更新処理においては、消去処理を行うことによって更新前画面(すなわち更新前の売価)を完全に消去することが可能となり、更新後の画面(すなわち更新後の売価)を良好なコントラストで描画することが可能となる。つまり、更新後の画面を、残像のないはっきりとした状態で表示することが可能となる。
【0105】
一方、上述したとおり、消去処理は瞬間的な電圧負荷が大きいため、電子棚札5の電池56の残存容量が少ないと電圧降下によるリセットが発生しやすいところ、エラー表示処理においては白画面の走査描画を複数回行うことによって更新前画面の表示を消去するので、瞬間的な電圧負荷が小さく、このようなリセットの発生確率が低くなる。また、上述した通り、短時間で見ると描画処理は消去処理よりも少ない電気量しか必要としないので、白ライト処理を複数回行うことでもって更新前画面を消去する構成によると、消去処理を行う構成に比べて消費されるピーク電流が小さくなる。この点から見ても、リセットの発生確率が抑えられる。つまり、エラー画面については電気的負担をかけずに表示更新することができるので、ディスプレイ51の表示更新に失敗した状況であっても、エラー画面の表示には成功できる可能性が高くなる。エラー画面の表示に失敗する可能性が低くなると、電子棚札5のディスプレイ51に更新前の画面が表示されたままとなり、客に誤った情報が伝達されてしまう、といった事態が発生しにくくなる。
【0106】
なお、消去処理を白ライト処理で代えることのデメリットとして、更新前の画面の残像が残りやすい、また、更新後の画面においてコントラストが出にくい、といったことがある。しかしながら、エラー表示処理の目的は更新前画面(すなわち更新前の売価)が表示されたままとなって客に誤った情報が伝達されることを防止することであるので、更新前の画面は必ずしも完全に消去されていなくともよく、それが売価を表示している画面であると客が認識しない程度にまで見にくくなっていれば十分である(白ライト処理を複数回(好ましくは3回以上)行えば、この程度にまで更新間の画面を見にくくしておくのに十分である)。また、エラー画面も店舗スタッフがエラー番号を認識できる程度のコントラストで表示されていれば十分である。したがって、これらのデメリットはエラー表示処理においては問題とはならない。
【0107】
〈5.変形例〉
〈5−1.第1の変形例〉
第1の変形例について説明する。上記の実施の形態に係る電子棚札システム1は、電子棚札5が、ディスプレイ51の更新に失敗した場合にはACK信号の返信を行わないという特徴を有している(図15(a)参照)。したがって、ESLサーバ10は、ACK信号が受信されないことをもって、電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適正に行われていないことを検知することができる。
【0108】
しかしながら、場合によっては、電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適正に行われている、すなわち、電子棚札5からACK信号が返信されているにもかかわらず、ESLサーバ10の側でACK信号が受信されないという状況も想定されうる(図15(b)参照)。例えば、電子棚札5の発光部52から発せられた赤外線信号が人や商品棚等に遮られて通信装置4に届かなかった場合がこれに該当する。このような状況においては、電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適切に行われているにもかかわらず、ESLサーバ10が、当該電子棚札5がディスプレイ51の更新に失敗していると誤認してしまう。
【0109】
このような事態を回避すべく、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1に以下に説明する確認通信を行う機能をさらに付加してもよい。
【0110】
〈5−1−1.構成〉
確認通信を行う機能について図14および図15を参照しながら説明する。図14は、確認通信に関する機能構成を示すブロック図である。図15は、確認通信を説明するための図である。
【0111】
この変形例に係るESLサーバ10は、確認通信を行うための機能部として、確認信号送信部91と、更新状態判断部92とを備える。これら機能部は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0112】
確認信号送信部91は、売価配信データを送信したにもかかわらず電子棚札5からACK信号が受信されない場合に、ACK信号が得られなかった売価配信データに含まれていた装置コード(すなわち、ACK信号を送信するはずの電子棚札5の装置コード)を含む確認信号を生成して、これを送信する。
【0113】
更新状態判断部92は、確認信号に対するACK信号の有無に基づいて、電子棚札5のディスプレイ51の更新状態を判断する。すなわち、確認信号に対するACK信号が電子棚札5から得られた場合は、当該電子棚札5においてディスプレイ51の更新が正常に行われていないと判断する(図15(a))。一方、確認信号に対するACK信号が電子棚札5から得られない場合は、当該電子棚札5においてディスプレイ51の更新が正常に行われていると判断する(図15(b))。
【0114】
一方、この変形例に係る電子棚札5は、確認通信を行うための機能部として、確認信号返信部93を備える。この機能部は、制御部57により実現される。
【0115】
確認信号返信部93は、ESLサーバ10から自装置あての確認信号(すなわち、自装置の装置コードを含む確認信号)を受信した場合、自装置のディスプレイ51の更新状態をステータスフラグFの値から判断し、ステータスフラグFが肯定値「F=0」でない場合(すなわち、ディスプレイ51が適正に更新されていない場合)に限りACK返信処理を行う。
【0116】
〈5−1−2.処理の流れ〉
上記の各機能部において行われる確認通信の処理の流れについて図15を参照しながら説明する。
【0117】
売価配信データを送信したにもかかわらず電子棚札5からACK信号が受信されない場合、確認信号送信部91が、当該売価配信データに含まれていた装置コードを含む確認信号を生成して、これを送信する。ESLサーバ10から送信された確認信号は、ベースステーション41を通じて各通信装置4に送信され、通信装置4から赤外線信号の形で出力される。通信装置4から出力された赤外線信号は、電子棚札5の通信部54において受信されることになる。
【0118】
自装置あての確認信号(すなわち、自装置の装置コードを含む確認信号)が通信部54にて受信されると、確認信号返信部93は、フラグメモリ72に格納されたステータスフラグFを参照して、ディスプレイ51の更新が正常に行われている状態であるか否かを判断する。
【0119】
ステータスフラグFの値が肯定値「F=0」とされていない場合、確認信号返信部93はACK返信処理を行う(図15(a))。ESLサーバ10の側において確認信号に対するACK信号が受信されると、更新状態判断部92は、確認信号を送信した電子棚札5においてディスプレイ51が適正に更新されていないと判断する。この場合、ESLサーバ10は、その旨を店舗スタッフに報知するための処理を行う。例えば、当該電子棚札5の電池交換を行うべき旨の警告画面をディスプレイ15に表示する。
【0120】
一方、ステータスフラグFの値が肯定値「F=0」とされている場合、確認信号返信部93はACK返信処理を行わない(行ったところで、そのACK信号もESLサーバ10まで届かない可能性が高い)(図15(b))。ESLサーバ10の側において確認信号を送信した電子棚札5からのACK信号が受信されない場合、更新状態判断部92は、当該電子棚札5においてディスプレイ51が適正に更新されていると判断する。この場合は、上記のような報知処理は行わない。
【0121】
〈5−1−3.効果〉
上記の変形例によると、売価配信データに対するACK信号がESLサーバ10において受信されない場合に、それが、電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適正に行われていないことに起因するものなのか、それ以外の理由に起因するものなのかを正しく判断することができる。したがって、電子棚札5においてディスプレイ51の更新が適切に行われているにもかかわらず、ESLサーバ10が、当該電子棚札5がディスプレイ51の更新に失敗していると誤認してしまうといった事態を回避することが可能となる。すなわち、ディスプレイ51の更新に失敗している電子棚札5を正確に特定することが可能となる。
【0122】
〈5−2.第2の変形例〉
第2の変形例について図16を参照しながら説明する。上述した通り、電子棚札5の制御部57は、ESLサーバ10から自装置あての売価配信データAを受信した場合、信号を正常に受け取った旨を示す情報を含む赤外線信号(ACK信号)を発光部52に出力させ、その後に、ディスプレイ51の表示更新Aを行って新たに得られた売価表示画像データをディスプレイ51に表示させる(図16(a))。
【0123】
ところで、ESLサーバ10は電子棚札5から送信されたACK信号を通信装置4を介して受信することになるが、もしもこのACK信号が受信できなかった場合、ESLサーバ10は、配信した売価配信データが電子棚札5で正常に受信されなかったと判断してリカバリー通信を行う。すなわち、電子棚札5からのACK信号を受信するまで売価配信データAを繰り返して送信し続ける。
【0124】
上記の変形例においても言及した通り、ESLサーバ10がACK信号を受信できない場合というのは、送信された売価配信データAが電子棚札5で正常に受信されていない、電子棚札5が、ディスプレイ51の更新に失敗している、といった状況も当然考えられるが、中には、電子棚札5から返信されたACK信号が何らかの要因でESLサーバ10に受信されなかったという状況もありうる。
【0125】
リカバリー通信を受信した電子棚札5は、当該受信した売価配信データAに基づいて再びディスプレイ51の表示更新Aを行うが、後者の状況の場合、電子棚札5はすでに表示更新Aが完了しているにもかかわらず同じ表示更新処理Aを繰り返して行ってしまうことになる(図16(b))。リカバリー通信はESLサーバ10が電子棚札5からのACK信号を受信するまで繰り返し行われることになるので、このような無駄な表示更新処理が何度も繰り返して行われてしまう可能性もある。
【0126】
上述した通り、電子棚札5において用いられる電子ペーパーは、表示内容の変更(表示更新)にのみ駆動電力を必要とし、表示内容の保持には駆動電力を与える必要がないという特徴を有している。したがって、表示更新の回数が少なければ、電子棚札5の電池56の電池寿命を長く保たせることができるが、このように無駄な表示更新処理が行われてしまうと、電池56は想定外の早さで消耗してしまうことになる。このような事態を回避すべく、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1において以下の機能をさらに付加してもよい。
【0127】
この変形例に係る電子棚札システムは、上記の実施の形態に係る電子棚札システム1と同様の構成を有している(図2参照)。以下においては上記の実施の形態に係る電子棚札システム1と相違する点のみを説明する。また、同じ構成要素については同じ符号で示すこととする。
【0128】
この変形例に係るESLサーバ10は、売価配信データに含まれる売価表示画像データに、該画像データに固有の識別情報(例えば、チェックサムや電文による識別情報)を付与する。そして、識別情報が付与された一の売価表示画像データと一の装置コードとを含めた売価配信データを、電気的な信号としてベースステーション41を通じて各通信装置4に送信する。
【0129】
一方、この変形例に係る電子棚札5は、ESLサーバ10から自装置あての売価配信データ(すなわち、自装置の装置コードを含む売価配信データ)を受信した場合、以下の処理を行う。
【0130】
この変形例に係る電子棚札5が実行する処理の流れを、図17を参照しながら説明する。図17は、この変形例に係る電子棚札が実行する処理の流れを示す図である。
【0131】
電子棚札5が起動されると、まず、初期化処理が行われ(ステップS101)、続いて、電子棚札5は通信装置4からの赤外線信号(すなわち、ESLサーバ10からの売価配信データ)を待ち受ける状態となる(ステップS102)。
【0132】
自装置の装置コードを含む赤外線信号が受信されると(ステップS102でYES)、電子棚札5はACK返信処理を行う(ステップS103)。
【0133】
続いて、電子棚札5の制御部57は、ステップS102で得られた売価配信データに含まれる売価表示画像データに付与されている識別情報が、制御部57の所定のメモリ(以下「識別情報メモリ」という)内に記憶された識別情報と一致するか否かを判定する(ステップS104)。ただし、後述するように、識別情報メモリ内には、現在ディスプレイ51に表示されている売価表示画像データに付与されていた識別情報が記憶されている。
【0134】
ステップS102で受信した売価表示画像データに付与されている識別情報が識別情報メモリに記憶されている識別情報と一致しない場合(ステップS104でNO)、制御部57は、受信した売価表示画像データは、現在ディスプレイ51に表示されている売価表示画像データとは異なるものであると判断する。この場合、制御部57は、まず、受信コマンド処理(ステップS102で受信された売価表示画像データを画像メモリに格納するとともに、当該売価表示画像データに付与されていた識別情報を識別情報メモリに格納する処理)を行う(ステップS105)。続いて、ステップS105で画像メモリに格納された売価表示画像データを読み出して、当該売価表示画像データをディスプレイ51に表示させる(売価表示更新処理)(ステップS106)。
【0135】
一方、ステップS102で受信した売価表示画像データに付与されている識別情報が識別情報メモリに記憶されている識別情報と一致する場合(ステップS104でYES)、制御部57は、受信した売価表示画像データは、現在ディスプレイ51に表示されている売価表示画像データと同じものであると判断する。この場合、制御部57は、受信コマンド処理および売価表示更新処理を行うことなく、再び、通信装置4からの赤外線信号の送信を待ち受ける状態となる(ステップS102)。
【0136】
上記の変形例によると、電子棚札5が無駄な更新処理(現在表示されている画像データと同じ画像データをディスプレイ51に表示更新する処理)を行うことを回避することができる。これによって、電池56の無駄な消費を抑えることが可能となる。また、ディスプレイ51の書き換え寿命も延命することができる。
【0137】
〈5−3.その他の変形例〉
なお、上記の実施の形態において、ESLサーバ10が、店舗内にディスプレイ51の更新に失敗している電子棚札5が発生したことを検知した場合に、当該電子棚札5の装置コードを例えば発注処理端末180に送信して、ディスプレイ51の更新に失敗している電子棚札5の発生を店舗スタッフに報知する構成としてもよい。この構成によると、店舗スタッフは、当該電子棚札5の発生を店舗内において知得することが可能となる。
【符号の説明】
【0138】
1 電子棚札システム
5 電子棚札
10 ESLサーバ
71 画像メモリ
72 フラグメモリ
81 通信処理部
82 表示処理部
83 フラグ管理部
84 エラー処理制御部
85 電圧検出部
86 初期化処理部
821 売価表示処理部
822 エラー表示処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品に対応して配置され、サーバから受信した前記商品に係る商品情報を、電子ペーパーにより構成されるディスプレイに表示する電子棚札であって、
前記サーバから商品情報を新たに受信した場合に、前記ディスプレイに現在表示されている画面を消去する消去処理と、前記消去処理の後に前記新たに受信した商品情報を表示する更新画面を前記ディスプレイに走査描画する更新画面描画処理とを行って、前記ディスプレイの表示更新を行う表示処理手段と、
前記ディスプレイの表示更新が失敗した場合に、白の画面を前記ディスプレイに走査描画する白描画処理を複数回繰り返して行う白描画繰り返し処理と、前記繰り返し白描画処理の後に所定のエラー画面を前記ディスプレイに走査描画するエラー画面描画処理とを行って、前記ディスプレイの表示更新を行うエラー表示処理手段と、
を備えることを特徴とする電子棚札。
【請求項2】
商品に対応して配置され、サーバから受信した前記商品に係る商品情報を、電子ペーパーにより構成されるディスプレイに表示する電子棚札における、前記ディスプレイの表示制御方法であって、
前記ディスプレイに現在表示されている画面を消去する消去工程と、新たに受信した商品情報を表示する更新画面を前記ディスプレイに走査描画する更新画面描画工程と、を備える第1表示変更工程と、
白の画面を前記ディスプレイに走査描画する白描画工程を複数回繰り返す白描画繰り返し工程と、所定のエラー画面を前記ディスプレイに走査描画するエラー画面描画工程と、を備える第2表示変更工程と、
を備え、
サーバから商品情報を新たに受信した場合に前記第1表示変更工程を実行し、前記第1表示変更工程が正常に完了せず前記ディスプレイの表示更新が失敗した場合に、前記第2表示変更工程を実行することを特徴とする表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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