説明

電子楽器の鍵

【課題】 視覚および触覚の双方で、凹凸やその変化を感じとることができ、かつ鍵に適した木目模様を備えた電子楽器の鍵を提供すること。
【解決手段】 白鍵10の上面部11と両側面部13との表面に凹凸模様14を形成した。そして、凹凸模様14を、白鍵10の長手方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる複数の線状凸部14aで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸模様が形成された電子楽器の鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子楽器が備える鍵の中には、美観の向上を図るために、象牙模様や木目模様等の凹凸模様を視認可能にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。この鍵は、白鍵の形をした合成樹脂製のキー本体の上に、半透明の合成樹脂部材からなるキートップ部材を接着剤層で接着固定して構成されており、キートップ部材の裏面には、複数の凹溝および突条部が一体に形成されている。これに対して、接着剤層の上面には、複数の突条部および谷部が一体に形成されている。このため、鍵の上面に照射される光の一部は、キートップ部材の内部を通過してキートップ部材と接着剤層との接触面で反射し、再びキートップ部材の内部を通過して外部に放たれる。このとき、ユーザには、キートップ部材と接着剤層とに形成される凹凸の形状に応じて縞模様、波形模様または木目模様が見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−237453号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、前述した従来の鍵では、凹凸模様を視認可能であるが、鍵の表面が平滑面で構成されているため、触覚で凹凸を感じとることができず、視覚と触覚との間に差が出て違和感が生じる。また、前述した従来の鍵に用いられている木目模様は、複数の輪からなる年輪を表しているもので、細長い鍵に用いる凹凸模様としてふさわしいものではなかった。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、視覚および触覚の双方で、凹凸やその変化を感じとることができ、かつ鍵に適した木目模様を備えた電子楽器の鍵を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る電子楽器の鍵の構成上の特徴は、上面(11)および両側面(13)の少なくとも一つの面に凹凸模様(14)が形成された電子楽器の鍵(10)において、凹凸模様を、鍵の長手方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凹部からなる線状部と、鍵の長手方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凸部からなる線状部(14a)との少なくとも一方の線状部で構成したことにある。
【0007】
本発明に係る電子楽器の鍵では、外観として現れる上面および両側面の少なくとも一つの面に、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部で構成される凹凸模様を形成するとともに、その凹部からなる線状部や凸部からなる線状部を、鍵の長手方向に対して±30度以内の角度で傾斜させている。このため、鍵の延びる方向と、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部が延びる方向とが略一致するようになり、あたかも本物の材木で鍵を構成したかのような視覚と触覚とを得ることができる。この場合の線状部の傾斜角度は、好ましくは±20度に設定することであり、さらに好ましくは±10度に設定することである。
【0008】
すなわち、年輪を有する木材における年輪の中心側から外周側にかかる部分を縦方向に切断したときには、その切断面に、縦方向に延びる複数の線からなる柾目模様が現れるが、その柾目模様を構成する各線の間隔は、木材の根に近い方から先端側に行くほど僅かではあるが徐々に狭くなっていく。このため、柾目模様を構成する各線は、木材の延びる方向に対して僅かに傾斜して見える。したがって、鍵に形成する凹部からなる線状部や凸部からなる線状部を、鍵の長手方向に対して±30度の角度の範囲で傾斜させることにより、その凹凸模様がより本物の木材の柾目模様や追い柾目模様(柾目と板目(年輪の接線方向に切断した面)との中間の形状)に近いものとなる。
【0009】
そして、線状部の傾斜角度が±30度よりも小さくなるほど、より本物の木材の柾目模様や追い柾目模様に近いものとなる。また、この電子楽器の鍵では、凹凸模様が鍵の表面に形成されているため、視覚だけでなく、触覚においても凹凸やその変化を感じとることができる。なお、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部は、1個だけ形成してもよいが、複数個形成することがより好ましい。
【0010】
本発明に係る電子楽器の鍵の他の構成上の特徴は、前面(22)に凹凸模様(24)が形成された電子楽器の鍵(20)において、凹凸模様を、鍵の垂直方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凹部からなる線状部と、鍵の垂直方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凸部からなる線状部(24a)との少なくとも一方の線状部で構成したことにある。
【0011】
本発明に係る電子楽器の鍵では、外観として現れる前面に、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部で構成される凹凸模様を形成するとともに、その凹部からなる線状部や凸部からなる線状部を、鍵の垂直方向に対して±30度以内の角度で傾斜させている。これによると、鍵の前面に、鍵の前面に適した木目模様を形成することができる。すなわち、押鍵時には、鍵の前面は、略垂直方向に上下移動する。そして、鍵の前面に形成する凹凸模様の凹部からなる線状部や凸部からなる線状部を、鍵の垂直方向に延ばすことにより、鍵の前面の移動方向と、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部が延びる方向とが略一致するようになり、鍵の移動と凹凸模様とが調和のとれたものとなる。
【0012】
また、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部を、鍵の垂直方向に対して±30度の角度の範囲で傾斜させることにより、凹凸模様がより本物の木材の柾目模様に近いものとなる。この場合も、線状部の傾斜角度は±20度に設定することが好ましく、より好ましくは±10度に設定することである。これによって、凹凸模様がさらに本物の木材の柾目模様に近いものとなる。本発明においても、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部は、1個だけ形成してもよいが、複数個形成することがより好ましい。
【0013】
本発明に係る電子楽器の鍵のさらに他の構成上の特徴は、上面(31)および両側面(33)の少なくとも一つの面に凹凸模様(34)が形成された電子楽器の鍵(30)において、凹凸模様を、緩やかに湾曲しながら延びる凹部からなる線状部と、緩やかに湾曲しながら延びる凸部からなる線状部(34a)との少なくとも一方の線状部で構成するとともに、線状部における両端部の接線間の角度が30度以内になるようにしたことにある。
【0014】
本発明に係る電子楽器の鍵では、外観として現れる上面および両側面の少なくとも一つの面に、凹部からなる線状部や凸部からなる線状部で構成される凹凸模様を形成するとともに、その凹部からなる線状部や凸部からなる線状部を、緩やかに湾曲しながら延びその両端部が向く方向、すなわち両接線の間の角度が30度以内になるようにしている。このため、鍵の表面に、より正確な木目模様を形成することができる。
【0015】
すなわち、木材の柾目や追い柾目には、通常、目曲がりが備わっており、この目曲がりは、僅かな角度で傾斜している。このため、凹凸模様を、緩やかに湾曲する凹部からなる線状部や凸部からなる線状部で構成するとともに、この線状部の両端における接線方向の角度の差が30度以内になるようにすることにより、目曲がりの風合いをかもし出すことができ、凹凸模様をより木目模様に近いものにすることができる。この場合の線状部の両端における接線方向の角度の差は、20度以内にすることが好ましく、10度以内にすることがより好ましい。
【0016】
本発明に係る電子楽器の鍵のさらに他の構成上の特徴は、上面(41)、前面(42)および両側面(43)の少なくとも一つの面に凹凸模様が形成された電子楽器の鍵(40)において、凹凸模様を、略同じ方向に延びる複数の凹部からなる線状部と、略同じ方向に延びる複数の凸部からなる線状部(44a)との少なくとも一方の複数の線状部からなり、線状部間の所定部分に互いの間隔が広くなった広間隔部(45a)が形成されるとともに広間隔部の周囲に互いの間隔が狭くなった狭間隔部(45b)が形成された柾目状部と、環状の凹部からなる線状部または環状の凸部からなる線状部からなり広間隔部内に形成された環状部(44b)と、複数の小凹部または複数の小凸部からなり環状部の内部に形成された節目模様部(44c)とで構成したことにある。
【0017】
本発明に係る電子楽器の鍵では、複数の凹部からなる線状部や複数の凸部からなる線状部で構成される柾目状部で目曲がりの風合いを表現でき、環状の凹部からなる線状部または環状の凸部からなる線状部で構成される環状部と、その内部に形成された小凹部や小凸部からなる節目模様部で節目の風合いを表現できる。これによると、凹凸模様が形成される鍵の面における各部分を異なる凹凸模様にすることができるため、変化に富む凹凸模様を備えた電子楽器の鍵を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る白鍵を示した斜視図である。
【図2】図1に示した白鍵に形成された凹凸模様を示した拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る白鍵を示した斜視図である。
【図4】図3に示した白鍵に形成された凹凸模様を示した拡大図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る白鍵を示した斜視図である。
【図6】図5に示した白鍵に形成された凹凸模様を示した拡大図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る白鍵を示した斜視図である。
【図8】図7に示した白鍵に形成された凹凸模様を示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る電子楽器の鍵を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る白鍵10を示している。この白鍵10は、電子楽器(図示せず)の上面における手前側(演奏者側)に黒鍵とともに複数個並べられるもので、それぞれ長手方向を前後に向けて設置される。この白鍵10は、硬質の合成樹脂を一体成形することにより形成されており、上面部11と、前面部12と、左右一対の側面部13(一方しか図示せず)とで構成されている。上面部11の左側部の後部側には黒鍵を配置するための切り欠き凹部11aが形成され、上面部11の上面後端には、前部側よりも低くなった段部11bが形成されている。この段部11bは、白鍵10を電子楽器の本体に揺動可能に支持させる際に用いられる。なお、前記切り欠き凹部11aの位置は鍵盤における白鍵が割り当てられる位置によって異り、黒鍵に隣接しない白鍵には切り欠き凹部は設けられていない。
【0020】
前面部12は、上面部11の先端縁部よりも僅かに後方部分から下方に延びる略正方形の板状部分で構成されている。左右一対の側面部13の一方(図1の手前側に位置する側面部13)は、L形の板状部分で構成されており、L形の長辺側の外縁部を上面部11の右側部に沿わせ、L形の短辺側の外縁部を前面部12の右側部に沿わせて、上面部11と前面部12とに一体的に組付けられている。また、他方の側面部13は、側面視が一方の側面部13と同じL形に形成されており、上縁部を上面部11の左側部の前部側と切り欠き凹部11aの縁部に沿わせ、前縁部を前面部12の左側部に沿わせた段違い状の板状部分で構成されている。
【0021】
白鍵10の上面部11と一対の側面部13との表面には、それぞれ凹凸模様14が形成されている。この凹凸模様14は、白鍵10の前後方向に延びる線状凸部14aを左右または上下に間隔を保って複数配置することによって柾目模様に形成されている。各線状凸部14aは、略直線状に延びており、図2に矢印aで示した白鍵10の長手方向に対する角度bが30度以内になる範囲で傾斜している。すなわち、上面部11に形成された凹凸模様14を構成する各線状凸部14aは、手前側(図2の左側)から見た状態で、前部よりも後部が右側に位置するように傾斜している。また、側面部13に形成された凹凸模様14を構成する各線状凸部14aは、手前側から見た状態で、前部よりも後部が下側に位置するように傾斜している。
【0022】
各線状凸部14aにおける上面部11および側面部13の表面平坦部15からの突出長さは、それぞれ0.01mm〜1mm、好ましくは0.02mm〜0.5mm、さらに好ましくは0.05mm〜0.3mmに設定され、各線状凸部14aの間隔は、それぞれ0.03mm〜22mm、好ましくは0.05mm〜12mm、さらに好ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。凹凸模様14は、このように間隔を保った複数の線状凸部14aで構成されているため、実際の木材の切断面に現れる柾目模様のように見える。なお、この白鍵10を一体成形する射出成形機には、固定型と可動型とからなる金型が備わっており、金型の成形面に、凹凸模様14に対応する凹凸模様、すなわち、凹凸模様14と凹凸が逆になる凹凸模様が形成されている。このため、白鍵10の成形が容易になる。
【0023】
また、白鍵10が備わった電子楽器を演奏する際には、まず、上面部11に形成された凹凸模様14が見え、押鍵操作をしたときに、隣の白鍵10の側面部13に形成された凹凸模様14が見える。このため、電子楽器の美観が向上するとともに、押鍵操作の際に凹凸模様14が変化して見えるようになり、演奏が楽しくなる。また、押鍵時に、指が上面部11の凹凸模様14に触れることによっても、触感に変化が生じて興趣に富むものとなる。
【0024】
このように、本実施形態に係る白鍵10では、上面部11および側面部13の表面に、複数の線状凸部14aからなる凹凸模様14を形成するとともに、その複数の線状凸部14aを、白鍵10の長手方向に対して30度以内の角度で傾斜させている。このため、白鍵10の延びる方向と、線状凸部14aが延びる方向とが略一致するようになり、あたかも本物の材木で鍵を構成したかのような視覚を得ることができる。また、この白鍵10では、凹凸模様14が白鍵10の表面に形成されるため、視覚だけでなく、触覚においても凹凸やその変化を感じることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、上面部11および一対の側面部13のすべてに凹凸模様14を設けているが、これは、上面部11および一対の側面部13のいずれか一部に設けてもよい。例えば、側面部13だけに凹凸模様14を設けると、演奏をしていないときには、凹凸模様14が形成されていない白鍵を備えた電子楽器と同じ外観をしているが、演奏時にだけに凹凸模様14が見えるようになり、面白味が一層増すようになる。また、触覚を重視する場合には、上面部11だけに凹凸模様14を設けてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、凹凸模様14を、複数の線状凸部14aで構成しているが、線状凸部14aに代えて、溝状の線状凹部で凹凸模様を構成してもよい。さらに、凹凸模様を線状凸部14aと線状凹部との双方を含む形状にしてもよい。また、線状凸部14aは直線に限らず僅かに湾曲する曲線に形成してもよい。また、各線状凸部14aが白鍵10の長手方向に対して傾く方向は、前述した方向と逆方向であってもよい。さらに、白鍵10を成形する際に、二色の樹脂材料を用いて、白鍵10の色が部分的に異なるようにしてもよい。例えば、薄い茶色の樹脂材料とやや濃い茶色の樹脂材料とを用いると、凹凸模様14がより一層木材の模様に近づく。さらに、この凹凸模様14を形成する鍵は、白鍵10でなく、黒鍵にしてもよいし、白鍵10と黒鍵との双方にしてもよい。
【0027】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る白鍵20を示している。この白鍵20では、上面部21および一対の側面部23の表面は、それぞれ平滑面で構成され、前面部22の表面に、柾目調の凹凸模様24が形成されている。この凹凸模様24は、白鍵10の上下方向に延びる線状凸部24aを左右に間隔を保って複数配置することによって柾目模様に形成されている。各線状凸部24aは、略直線状に延びており、図4に矢印cで示した白鍵20の垂直方向に対する角度dが30度以内になる範囲で傾斜している。また、凹凸模様24を構成する各線状凸部24aは、手前側から見た状態で、下部よりも上部が右側に位置するように傾斜している。この白鍵20のそれ以外の部分の構成については、前述した白鍵10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0028】
このように、本実施形態に係る白鍵20では、前面部22の表面に複数の線状凸部24aからなる凹凸模様24を形成するとともに、その複数の線状凸部24aを、白鍵20の垂直方向に対して30度以内の角度で傾斜させている。これによると、白鍵20の前面部22に、白鍵20の前面部22に適した柾目模様を形成することができる。すなわち、押鍵時には、白鍵20の前面部22は、略垂直方向に上下移動する。そして、白鍵20の前面部22に形成する線状凸部24aを、白鍵20の垂直方向に延ばすことにより、白鍵20の前面部22の移動方向と、線状凸部24aが延びる方向とが略一致するようになり、白鍵20の移動と凹凸模様24とが調和のとれたものとなる。この白鍵20におけるそれ以外の作用効果については、前述した第1実施形態に係る白鍵10と同様である。
【0029】
なお、本実施形態においても、線状凸部24aに代えて、溝状の線状凹部で凹凸模様を構成することができる。また、凹凸模様を線状凸部24aと線状凹部との双方を含む形状にしてもよい。さらに、線状凸部24aを僅かに湾曲する曲線に形成してもよい。また、各線状凸部24aが白鍵20の垂直方向に対して傾く方向は、前述した方向と逆方向であってもよい。また、白鍵20を二色の樹脂材料で成形してもよい。さらに、この凹凸模様24を形成する鍵は、白鍵20でなく、黒鍵にしてもよいし、白鍵20と黒鍵との双方にしてもよい。
【0030】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る白鍵30を示している。この白鍵30では、上面部31および一対の側面部33の表面に、それぞれ柾目調の凹凸模様34が形成され、前面部32の表面は平滑面で構成されている。この凹凸模様34は、図6に示したように、略同じ方向に向かって延びる複数の線状凸部34aで構成されている。各線状凸部34aはそれぞれ緩やかに湾曲した曲線状に形成されており、線状凸部34aの中には、両端が凹凸模様34内に位置しているもの、一方の端部が凹凸模様34の縁部に位置しているもの、および両端が凹凸模様34の縁部に位置しているものが混在している。また、各線状凸部34aの両端部の接線間の角度、例えば、図6の中央に位置する線状凸部34aでは、それぞれ破線の矢印で示した接線eと接線fとの角度は、30度以内になるように設定されている。この白鍵20のそれ以外の部分の構成については、前述した白鍵10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0031】
このように、本実施形態に係る白鍵30では、上面部31および側面部33の表面に、複数の線状凸部34aからなる凹凸模様34を形成するとともに、各線状凸部34aを、緩やかに湾曲しながら延びその両端部の接線方向の角度の差が30度以内になるようにしている。このため、白鍵30の表面により実際の木材の柾目や追い柾目に近い形状の凹凸模様34を形成することができる。すなわち、木材の柾目や追い柾目には、通常、目曲がりが備わっており、この目曲がりは、僅かな角度で傾斜している。このため、凹凸模様34を、緩やかに湾曲する複数の線状凸部34aで構成するとともに、線状凸部34aの両端における法線の角度の差が30度以内になるようにすることにより、目曲がりの風合いを醸し出すことができ、凹凸模様34をより柾目や追い柾目の模様に近いものにすることができる。この白鍵30におけるそれ以外の作用効果は、前述した第1実施形態に係る白鍵10と同様である。
【0032】
なお、本実施形態では、上面部31および一対の側面部33のすべてに凹凸模様34を設けているが、これは、上面部31および一対の側面部33のいずれか一部に設けてもよい。また、本実施形態では、凹凸模様34を、複数の線状凸部34aで構成しているが、線状凸部34aに代えて、溝状の線状凹部で凹凸模様を構成してもよし、線状凸部34aと線状凹部とで凹凸模様を構成してもよい。さらに、白鍵30を二色の樹脂材料で成形してもよい。また、この凹凸模様34を形成する鍵は、白鍵30でなく、黒鍵にしてもよいし、白鍵30と黒鍵との双方にしてもよい。
【0033】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る白鍵40を示している。この白鍵40では、上面部41および一対の側面部43の表面に、それぞれ木目調の凹凸模様44が形成され、前面部42の表面は平滑面で構成されている。この凹凸模様44は、図8に示したように、略同じ方向に向かって延びる複数の線状凸部44aと、環状凸部44bと、環状凸部44b内に形成された複数の小凸部からなる節目模様部44cとで構成されている。複数の線状凸部44aは、それぞれ白鍵40の長手方向に延びており、この複数の線状凸部44aで柾目状部が構成される。そして、複数の線状凸部44aの長手方向に沿った所定の領域g内に、隣接する線状凸部44aの間隔が広くなった広間隔部45aが形成されるとともに、広間隔部45aの周囲に、隣接する線状凸部44aの間隔が狭くなった狭間隔部45bが形成されている。
【0034】
すなわち、複数の線状凸部44aには、略均等の間隔を保った部分と、広間隔部45aや狭間隔部45bが形成された部分とがある。複数の線状凸部44aにおける略均等の間隔を保った部分の間隔は、0.03mm〜22mm、好ましくは0.05mm〜12mm、さらに好ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。また、広間隔部45aの幅は最大部分で22mm程度に設定され、狭間隔部45bの幅は最小部分で0.03mm程度に設定されている。そして、広間隔部45aの内部に、環状部を構成する環状凸部44bが形成されている。この環状凸部44bは、白鍵40の長手方向に沿った方向に長くなった略楕円形に形成されており、長手方向の長さが0.06mm〜80mm、好ましくは0.1mm〜50mm、さらに好ましくは0.16mm〜20mmに設定され、長手方向に直交する方向の長さが0.03mm〜22mm、好ましくは0.05mm〜12mm、さらに好ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。
【0035】
節目模様部44cは、複数の小凸部を所定範囲内に密集させて配置することにより節目模様に形成されている。この節目模様部44cの輪郭部と、環状凸部44bとの間隔は、0.03mm〜22mm、好ましくは0.05mm〜12mm、さらに好ましくは0.08mm〜8mmに設定されている。また、節目模様部44cを構成する各小凸部の直径は、0.03mm〜0.5mm、好ましくは0.05mm〜0.3mm、さらに好ましくは0.08mm〜0.2mmに設定されている。このように、凹凸模様44を、略同じ方向に延びる複数の線状凸部44aと、環状凸部44bと、節目模様部44cとで構成することにより、より木目に近い凹凸模様にすることができる。この白鍵40のそれ以外の部分の構成については、前述した白鍵10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0036】
このように、本実施形態に係る白鍵40では、複数の線状凸部44aで柾目や目曲がりの風合いを表現でき、環状凸部44bとその内部に形成された節目模様部44cとで節目の風合いを表現できる。これによると、凹凸模様44が形成される白鍵40の上面部41および一対の側面部43の表面における各部分を異なる凹凸模様にすることができるため、変化に富む凹凸模様44を備えた白鍵40を得ることができる。この白鍵40におけるそれ以外の作用効果は、前述した第1実施形態に係る白鍵10と同様である。
【0037】
なお、前述した実施形態においは、凹凸模様44を、上面部41と両側面部43の表面に設けているが、この凹凸模様44を前面部42にも設けることができる。また、凹凸模様44を、上面部41、前面部42および両側面部43のいずれか一部に設けてもよい。また、本実施形態では、凹凸模様44を、線状凸部44a、環状凸部44bおよび複数の小凸部からなる節目模様部44cで構成しているが、これらに代えて、溝状の線状凹部、環状凹部および複数の小凹部からなる節目模様部で凹凸模様を構成してもよい。また、線状凸部44a、環状凸部44bおよび複数の小凸部からなる節目模様部44cと、溝状の線状凹部、環状凹部および複数の小凹部からなる節目模様部との双方で凹凸模様を構成してもよい。
【0038】
さらに、白鍵40を二色の樹脂材料で成形してもよい。また、この凹凸模様44を形成する鍵は、白鍵40でなく、黒鍵にしてもよいし、白鍵40と黒鍵との双方にしてもよい。さらに、前述した白鍵10,20,30,40の上面後端には、それぞれ段部11bが形成されているが、この段部11bを設けずに、白鍵10,20,30,40の上面は前端から後端にかけて連続した平面に形成してもよい。また、白鍵10,20,30,40の前面部12,22,32,42は、それぞれ上面部11,21,31,41の先端縁部よりも後方部分から下方に延びて上面部11,21,31,41の先端縁部が前面部12,22,32,42よりも前方に突出しているが、この突出した部分は除去してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10,20,30,40…白鍵、11,21,31,41…上面部、12,22,32,42…前面部、13,23,33,43…側面部、14,24,34,44…凹凸模様、14a,24a,34a,44a…線状凸部、44b…環状凸部、44c…節目模様部、45a…広間隔部、45b…狭間隔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および両側面の少なくとも一つの面に凹凸模様が形成された電子楽器の鍵において、
前記凹凸模様を、前記鍵の長手方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凹部からなる線状部と、前記鍵の長手方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凸部からなる線状部との少なくとも一方の線状部で構成したことを特徴とする電子楽器の鍵。
【請求項2】
前面に凹凸模様が形成された電子楽器の鍵において、
前記凹凸模様を、前記鍵の垂直方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凹部からなる線状部と、前記鍵の垂直方向に対して±30度の範囲の角度で略直線状に延びる凸部からなる線状部との少なくとも一方の線状部で構成したことを特徴とする電子楽器の鍵。
【請求項3】
上面および両側面の少なくとも一つの面に凹凸模様が形成された電子楽器の鍵において、
前記凹凸模様を、緩やかに湾曲しながら延びる凹部からなる線状部と、緩やかに湾曲しながら延びる凸部からなる線状部との少なくとも一方の線状部で構成するとともに、前記線状部における両端部の接線間の角度が30度以内になるようにしたことを特徴とする電子楽器の鍵。
【請求項4】
上面、前面および両側面の少なくとも一つの面に凹凸模様が形成された電子楽器の鍵において、
前記凹凸模様を、
略同じ方向に延びる複数の凹部からなる線状部と、略同じ方向に延びる複数の凸部からなる線状部との少なくとも一方の複数の線状部からなり、前記線状部間の所定部分に互いの間隔が広くなった広間隔部が形成されるとともに前記広間隔部の周囲に互いの間隔が狭くなった狭間隔部が形成された柾目状部と、
環状の凹部からなる線状部または環状の凸部からなる線状部からなり前記広間隔部内に形成された環状部と、
複数の小凹部または複数の小凸部からなり前記環状部の内部に形成された節目模様部と
で構成したことを特徴とする電子楽器の鍵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−47930(P2012−47930A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189182(P2010−189182)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】