説明

電子機器、電子機器の制御方法及び制御プログラム

【課題】電子機器、特に通信機能を有する電子機器において、人体が接近しているか否かを判別するための機能構成を設けつつ、装置構成を簡略化し、装置コストを低減し、制御を容易とする。
【解決手段】無線信号を送信する送信手段と、前記送信手段の送信処理と並行して無線信号を受信可能な受信手段と、前記受信手段により受信した前記無線信号の受信レベルに基づいて人体が近接しているか否かを検出する人体近接検出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器、電子機器の制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話端末装置や、通信機能を有するタブレット型のパーソナルコンピュータ装置などの電子機器、特に携帯型電子機器においては、ユーザが電子機器を人体に密着するような状態で通信を行った場合の送信アンテナ付近に発生した局所的な電磁界による人体への影響を考慮して、局所的な電磁界の人体への吸収量である比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)の許容値を規定し、この許容値の範囲内で電子機器を設計するように要求されている。
このため、人体が電子機器に接近しているか否かを判別して、送信電力を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−45698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成においては、人体が電子機器に近接しているか否かを判別するための機能構成を、本来の通信機能構成とは別個に設けており、装置構成が複雑化し、装置コストが上昇するとともに、制御が複雑になるという不具合が生じる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、人体が接近しているか否かを判別するための機能構成を設けつつ、装置構成を簡略化し、装置コストを低減し、制御が容易な電子機器、電子機器の制御方法及び制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子機器の送信手段は、無線信号を送信する。
受信手段は、送信手段の送信処理と並行して無線信号を受信する。
これらにより、人体近接検出手段は、受信手段により受信した無線信号の受信レベルに基づいて人体が近接しているか否かを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態の電子機器の外観斜視図である。
【図2】図2は、電子機器の無線通信機能部の概要構成ブロック図である。
【図3】図3は、実施形態の処理フローチャートである。
【図4】図4は、受信信号レベルの説明図である。
【図5】図5は、電子機器と人体との離接状態の説明図である。
【図6】図6は、送信動作及び受信動作のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態の電子機器の外観斜視図である。
電子機器10は、タブレット型をしており、タッチパネルディスプレイ11を収納したケース12を備えている。
ケース12のベゼル13の所定位置の内部には後述する無線通信機能部を構成し、所定周波数の無線電波信号の送信及び受信を行う送信/受信アンテナ14と、所定周波数の無線電波信号の受信を行う受信アンテナ15と、を備えている。
【0009】
図2は、電子機器の無線通信機能部の概要構成ブロック図である。
電子機器10の無線通信機能部10Aは、無線通信機能部10A全体を制御する制御部21と、上述した送信/受信アンテナ14と、送信/受信アンテナ14を用いた送信及び受信を切り替える切替回路22と、入力された送信信号を変調して送信/受信アンテナ14を介して送信電波信号として送信する送信回路23と、上述した受信アンテナ15と、送信/受信アンテナ14あるいは受信アンテナ15を介して受信した無線電波信号を復調して受信信号として出力する受信回路24と、制御部21の制御下で、信号処理を行い、送信回路23に送信信号を出力するとともに、受信回路24から入力された受信信号を処理して、受信データとして制御部21に出力する信号処理回路25と、を備えている。
【0010】
次に実施形態の動作について説明する。
図3は、実施形態の処理フローチャートである。
まず、制御部21は、通信を開始すると(ステップS11)、通信モードが送信あるいは受信のいずれであるかを判別する(ステップS12)。
【0011】
ステップS12の判別において、通信モードが送信であり、外部の通信装置に対して送信を行う場合には(ステップS12;送信)、切替回路22を送信側(送信回路23側)に切り替える。そして、信号処理回路25を制御して、送信回路23に送信信号を出力させる。これにより送信回路23は、入力された送信信号を変調して送信/受信アンテナ14に出力する。送信/受信アンテナ14は、変調された送信信号が入力されると、無線電波に変換して放射し、外部の通信装置に送信する(ステップS)。
【0012】
これと並行して制御部21は、送信動作の開始に同期して、受信アンテナ15を介して、送信/受信アンテナ14を介して送信された送信電波信号(無線電波信号)を受信させ、受信回路24に受信信号レベル信号を出力させて入力する。そして、送信動作が完了するのに先だって受信動作を終了する。
ここで、送信動作の開始に同期し、送信動作が完了するのに先だって受信動作を終了するのは、確実に送信動作が行われている状態(送信動作中間期間)で受信動作を行って、送信出力制御を行うためである。
【0013】
図4は、受信信号レベルの説明図である。
図5は、電子機器と人体との離接状態の説明図である。
図5(a)に示すように、電子機器10に対してユーザの人体HMが離れている場合には、送信/受信アンテナ14と人体HMとの間の距離があるので、図4の上部に示すように、送信/受信アンテナ14から放射された送信電波信号が人体に吸収されにくく、あるいは、人体HMによる送信/受信アンテナ14の特性の変化が小さいので、受信アンテナ15を介して受信回路24で検出される受信信号レベルは、高い状態となっている。
【0014】
これに対して、図5(b)に示すように、電子機器10に対してユーザの人体HMが近接している場合には、送信/受信アンテナ14と人体HMとの間の距離が少ないので、図4の上部に示すように、送信/受信アンテナ14から放射された送信電波信号が多く人体に吸収され、減衰することとなり、あるいは、人体HMによる送信/受信アンテナ14の特性の変化が大きいので、受信アンテナ15を介して受信回路24で検出される受信信号レベルは、低くなる。
【0015】
そこで、制御部21は、受信信号レベルが、予め規定した局所的な電磁界の人体への吸収量である比吸収率(SAR)の許容値に相応する受信信号レベルのしきい値TH以下となったか否かを判別する(ステップS15)。
ステップS15の判別の結果、受信信号レベルが、予め規定した局所的な電磁界の人体への吸収量である比吸収率(SAR)の許容値の上限値に相応する受信信号レベルのしきい値TH以下となり、比吸収率(SAR)の許容値を超える場合には(ステップS15;しきい値以下)、人体が近接しているとして、送信/受信アンテナからの送信電力を引き下げるように、送信回路23の送信出力制御を行い(ステップS16)、処理をステップS17に移行する。
【0016】
この送信出力制御に伴い、送信/受信アンテナからの送信電力が低下させられると、受信信号レベルも低下することとなるので、制御部21は、受信信号レベルが、予め規定した局所的な電磁界の人体への吸収量である比吸収率(SAR)の許容値の上限値に相応する受信信号レベルのしきい値THの値も低下させるように制御する。なお、このしきい値THの低下状態は、初期状態で設定されるしきい値THを超える受信信号レベルが検出された時点で、人体の近接が検出されなくなったとして制御部21により解除されることとなる。
【0017】
ステップS15の判別の結果、受信信号レベルが、予め規定した局所的な電磁界の人体への吸収量である比吸収率(SAR)の許容値の上限値に相応する受信信号レベルを超えており、比吸収率(SAR)の許容値未満である場合には(ステップS15;しきい値超)、制御部21は、通信が終了したか否かを判別する(ステップS17)。
ステップS17の判別において、通信が終了していない場合には(ステップS17;未終了)、制御部21は、処理を再びステップS12に移行し、以下、同様の処理を行う。
ステップS17の判別において、通信が終了している場合には、制御部21は、処理を終了する。
【0018】
一方、ステップS12の判別において、通信モードが受信であり、外部の通信装置に対して受信を行う場合には(ステップS12;受信)、制御部21は、切替回路22を受信側(受信回路24側)に切り替える。これにより、受信回路24は、送信/受信アンテナ14及び受信アンテナ15を用いて、ダイバーシティ受信を行い、送信/受信アンテナ14あるいは受信アンテナ15を介して受信した無線電波信号を復調して受信信号として信号処理回路25に出力し、信号処理回路25は、制御部21の制御下で受信回路24から入力された受信信号を処理して、受信データとして制御部21に出力する受信動作を行う(ステップS18)。
【0019】
そして、受信動作が終了すると、制御部21は、通信が終了したか否かを判別する(ステップS17)。
ステップS17の判別において、通信が終了していない場合には(ステップS17;未終了)、制御部21は、処理を再びステップS12に移行し、以下、同様の処理を行う。
ステップS17の判別において、通信が終了している場合には、制御部21は、処理を終了する。
【0020】
図6は、送信動作及び受信動作のタイミングチャートである。
上述した手順に従って、送信動作及び受信動作を行うと、図6に示すように、外部の通信機器と通信を行うために、送信/受信アンテナ14を介した送信動作期間T1、T2、T3と並行して、人体が近接しているか否かを判別するための受信レベル検出用受信動作期間RL1、RL2、RL3が行え、送信/受信アンテナ14及び受信アンテナ15を用いて、送信動作期間に同期した送信動作期間とは異なる(ダイバーシティ)受信動作期間R1、R2中に本来の通信のための受信動作を行うこととなるため、本来の通信動作時間で、送信電力制御を行うことができ、実質的な通信効率を向上することが可能となっている。
したがって、本実施形態によれば、実効的な通信効率を低下させることなく、局所的な電磁界の人体への吸収量である比吸収率(SAR)の許容値を遵守した動作が行える電子機器を得ることができる。
【0021】
本実施形態の電子機器で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0022】
また、本実施形態の電子機器で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の電子機器で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、本実施形態の電子機器の制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0024】
10 電子機器
10A 無線通信機能部
11 タッチパネルディスプレイ
12 ケース
13 ベゼル
14 送信/受信アンテナ
15 受信アンテナ
21 制御部(人体近接検出手段)
22 切替回路
23 送信回路(送信手段)
24 受信回路(受信手段)
25 信号処理回路
HM 人体
R1、R2 受信動作期間
RL1、RL2、RL3 受信レベル検出用受信動作期間
TH しきい値
T1、T2、T3 送信動作期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送信する送信手段と、
前記送信手段の送信処理と並行して無線信号を受信可能な受信手段と、
前記受信手段により受信した前記無線信号の受信レベルに基づいて人体が近接しているか否かを検出する人体近接検出手段と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記人体近接検出手段は、前記送信手段の前記無線信号の送信出力レベルに対応して受信レベルしきい値を変更する、ことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記人体近接検出手段は、人体が近接していることを検出して送信出力レベルを低下させるに伴って、受信レベルしきい値を変更している場合に、初期状態において設定される受信レベルしきい値を超える受信レベルが検出された場合に、送信出力レベル及び受信レベルしきい値を初期状態に復帰させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記人体近接検出手段は、前記送信手段により通信のために無線信号を送信している期間中に前記受信手段により受信した前記無線信号の受信レベルに基づいて人体が近接しているか否かを検出する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記受信手段は、前記送信手段の送信動作に同期して、前記無線信号の受信を開始することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記受信手段は、前記送信手段の送信動作中間期間に前記人体が近接しているか否かを検出するための受信動作を行うことを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
無線電波の送信あるいは受信を行う送信/受信アンテナと、
前記送信/受信アンテナを前記送信手段あるいは前記受信手段のいずれかに切り替えて接続する切替手段と、
無線電波の受信を行う受信アンテナと、を備え、
前記切替手段は、前記受信手段が前記送信手段の送信処理と並行して無線信号を受信する際には、前記送信/受信アンテナを前記受信手段に接続し、
前記受信手段は、前記受信手段が前記送信手段の送信処理と並行して無線信号を受信する際には、前記送信/受信アンテナ及び前記受信アンテナを介して受信動作を行う、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
無線信号を送信する送信回路と、前記送信回路の送信処理と並行して無線信号を受信可能な受信回路と、を備えた電子機器で実行される電子機器の制御方法において、
外部機器と通信を行うために前記送信回路が通信を行っている期間中に、前記受信回路により受信を行わせる送受信過程と、
前記受信回路により受信した前記無線信号の受信レベルに基づいて人体が近接しているか否かを検出する人体近接検出過程と、
を備えたことを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項9】
無線信号を送信する送信回路と、前記送信回路の送信処理と並行して無線信号を受信可能な受信回路と、を備えた電子機器をコンピュータにより制御するための制御プログラムであって、
前記コンピュータを、
外部機器と通信を行うために前記送信回路が通信を行っている期間中に、前記受信回路により受信を行わせる送受信手段と、
前記受信回路により受信した前記無線信号の受信レベルに基づいて人体が近接しているか否かを検出する人体近接検出手段と、
して、機能させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−216995(P2012−216995A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80772(P2011−80772)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【特許番号】特許第5023226号(P5023226)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】