説明

電子機器およびその電源制御装置

【課題】通信ケーブルを介した電子機器への給電の開始および停止の制御を容易に行う。
【解決手段】検出抵抗231を備え、通信ケーブル3を介して給電装置1から給電を受ける電源制御部20を有し、給電が、給電装置1が通信ケーブル3を介して検出抵抗231を検出することで開始され、通信ケーブル3に閾値以上の電流が流れることで停止される、電子機器2において、電源制御部20は、給電を受けて電力の供給を行う電源手段230と、給電を開始するための操作を受け付けると通信ケーブル3と検出抵抗231との間を導通させ、電源手段230から供給される電力により該導通を維持する接続制御手段220と、所定の条件に基づいて、電源手段230から供給される電力により閾値以上の電流を通信ケーブル3に流す切断制御手段240とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブルを介して給電を受ける電子機器およびその電源制御装置に関し、特に、給電の開始および停止を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エコロジーが注目され、電子機器の消費電力の削減が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、全ての構成要素に電力を供給する通常モードと、ネットワークインターフェイスとキー操作検出部と所定の時間をカウントするタイマー部以外の構成要素への電力の供給を停止する省電力モードとを電子機器であるIP電話機に設ける。これにより、例えば着信待ちなど、IP電話機を使用していない場合には、低消費電力モードに移行させることでIP電話機の消費電力を削減することができる。また、着信によるIPパケットをネットワークインターフェイスで受信した場合、あるいは、発信等のキー操作入力をキー操作検出部で検出した場合、あるいは、タイマー部で所定の時間の計測を終了した場合にIP電話機を省電力モードから通常モードに復帰させることで、省電力モードに移行していてもIP電話機を使用する際には、すぐに動作させることができる。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、電子機器に光センサや赤外線センサ、温度センサ等のセンサ部を設け、センサ部が感知した電子機器の周囲の状況に応じて自動的に電子機器の電源管理を行うことで電子機器の消費電力を削減することができる。
【特許文献1】特開2005−101921号公報
【特許文献2】特開2005−004522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、LANケーブル等の通信ケーブルを介して給電を受けることができる電子機器が存在する。なお、通信ケーブルを介して電子機器に給電する給電方式は、IEEE802.3afで規定されており、IP電話機や無線LANのアクセスポイント、監視カメラ等の電子機器への適用が期待されている。
【0006】
IEEE802.3afの規定では、通信ケーブルを介して電子機器に給電するLAN給電装置は、通信ケーブルを介して電子機器が接続されると、通信ケーブルを介して電子機器内に設けられた25kΩの検出抵抗を検出した場合に電子機器への給電を開始する。また、LAN給電装置は、電子機器への給電を開始すると、通信ケーブルを介した電子機器との間の接続が切断されて検出抵抗を検出できなくなった場合や、通信ケーブルに500mA以上の電流が1ms以上の間流れるなど電子機器に異常が生じたと思われる場合を除いて電子機器への給電を継続し続ける。そのため、通常、IEEE802.3afで規定された給電方式により給電を受ける電子機器は、常時LAN給電装置からの給電を受けて起動した状態となっている。
【0007】
しかし、例えば、通信ケーブルを介して給電を受ける電子機器としてIP電話機を考えた場合、コールセンターや会議室等に配置されているIP電話機は使用される時間帯が決まっており、使用しない時間帯もIP電話機に給電を行い起動させておく必要は全くない。また、社員各個人にIP電話機を割り当てている企業などは、社員が会社にいる時間帯だけIP電話機に給電を行い起動させておけばよく、社員の退社後もIP電話機に給電を行い起動させておく必要は全くない。そのため、何百台、何千台規模でIP電話機を使用している企業にとっては、IP電話機を使用しない時間帯も通信ケーブルを介してIP電話機に給電し続けることは、消費電力の大きなロスとなる。
【0008】
特許文献1に記載の技術のように、IP電話機に省電力モードを設ける手段も考えられるが、近年のIP電話機は多機能化が進み、省電力モード時の消費電力が増加傾向にあるため、エコロジーの観点から不要な電力を常時供給し続けるのは問題がある。
【0009】
また、通信ケーブルをIP電話機から抜き、LAN給電装置からの給電を遮断する方法も考えられるが、IP電話機の使用者が毎回通信ケーブルの抜き差しを行う必要があり、使用者にとっては大変煩わしい作業となるため、実施に困難がある。
【0010】
本発明の目的は、通信ケーブルを介した給電の開始および停止の制御を容易に行うことができる電子機器およびその電源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の電子機器は、
検出抵抗を備え、通信ケーブルを介して給電装置から給電を受ける電源制御部を有し、前記給電が、前記給電装置が前記通信ケーブルを介して前記検出抵抗を検出することで開始され、前記通信ケーブルに閾値以上の電流が流れることで停止される、電子機器において、
前記電源制御部は、
前記給電を受けて電力の供給を行う電源手段と、
前記給電を開始するための操作を受け付けると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記電源手段から供給される電力により該導通を維持する接続制御手段と、
所定の条件に基づいて、前記電源手段から供給される電力により前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す切断制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の電源制御装置は、
検出抵抗を備え、通信ケーブルを介して給電装置から給電を受け、該給電が、前記給電装置が前記通信ケーブルを介して前記検出抵抗を検出することで開始され、前記通信ケーブルに閾値以上の電流が流れることで停止される、電源制御装置において、
前記給電を受けて電力の供給を行う電源手段と、
前記給電を開始するための操作を受け付けると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記電源手段から供給される電力により該導通を維持する接続制御手段と、
所定の条件に基づいて、前記電源手段から供給される電力により前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す切断制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、接続制御手段は、給電を開始するための操作を受け付けると、通信ケーブルと検出抵抗との間を導通させ、電源手段から供給される電力によりその導通を維持する。そのため、給電を開始するための操作を行うことで、給電装置が通信ケーブルを介して検出抵抗を検出できるようになり、検出抵抗を検出した給電装置からの給電が開始される。
【0014】
また、本発明によれば、切断制御手段は、所定の条件に基づいて電源手段から供給された電力により閾値以上の電流を通信ケーブルに流す。そのため、所定の条件を満たす場合、通信ケーブルに閾値以上の電流が流れるため、給電装置は給電を停止する。また、給電が停止されるため、接続制御手段が通信ケーブルと検出抵抗との間の導通を維持できなくなり、給電装置から検出抵抗が検出できなくなるため、再度給電を開始するための操作が行われるまで、給電装置からの給電が停止される。
【0015】
そのため、通信ケーブルを介した電子機器への給電の開始および停止の制御を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の電子機器の一実施形態の構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の電子機器2は、電源制御部20および制御部21を有している。なお、ここでは、電子機器2の構成要素として電源制御部21と制御部20のみしか記載していないが、電子機器2はその目的用途に応じた他の構成要素も有しているものとする。
【0019】
電源制御部20は、通信部210、接続制御部220、電源部230および切断制御部240を有しており、通信ケーブルであるLANケーブル3を介して給電装置であるLAN給電装置1から給電を受け、制御部21等の電子機器2の他の構成要素に電力を供給する。なお、LAN給電装置1は、PSE(Power Sourcing Equipment)回路11を有しており、PSE回路11は、IEEE802.3afで規定された給電方法に基づいてLANケーブル3を介して電源制御部20に給電を行う。具体的には、PSE回路11は、通信部210を介してLANケーブル3に接続された電源部230に備えられている25kΩの検出抵抗231を検出すると、電子機器2への給電を開始する。また、PSE回路11は、LANケーブル3に閾値である500mA以上の電流が1ms以上流れると電源制御部20への給電を停止する。
【0020】
通信部210は、LANケーブル3を介してLAN給電装置1のPSE回路11と接続される。
【0021】
電源部230は、検出抵抗231を備えており、通信部210を介してLANケーブル3と接続され、PSE回路11からの給電により制御部21等の電子機器2の他の構成要素に電力を供給する。
【0022】
接続制御部220は、給電を開始するための操作を受け付けるスイッチ221を備えており、通信部210を介してLANケーブル3に電源部230と直列に接続される。接続制御部220は、給電を開始するための操作がスイッチ221で受け付けられると、LANケーブル3と電源部230に備えられている検出抵抗231との間を導通させる。これにより、LANケーブル3を介してPSE回路11が検出抵抗231を検出できるようになり、電源制御部2への給電が開始され、電源部230から電子機器2の各構成要素に電力が供給される。また、接続制御部220は、給電を開始するための操作終了後も、電源部230から供給される電力によりLANケーブル3と検出抵抗231との間の導通を維持する。
【0023】
切断制御部240は、通信部210を介してLANケーブル3に電源部230と並列に接続され、所定の条件、例えば制御部21からの制御信号や電子機器2の周囲の照度や温度の変化等に基づいて、電源部230から供給される電力により閾値である500mA以上の電流をLANケーブル3に流す。切断制御部240がLANケーブル3に500mA以上の電流を流すことにより、PSE回路11内の電流保護回路が動作し、PSE回路11は電源制御部20への給電を停止する。また、給電が停止されることで、接続制御部220は、LANケーブル3と検出抵抗231との間の導通を維持できなくなり、LANケーブル3と検出抵抗231との間の接続を切断する。これによりPSE回路11から検出抵抗231が検出できなくなり、LANケーブル3と検出抵抗231との間の導通が再度確立されるまでPSE回路11から電源制御部20への給電は行われない。
【0024】
上述したように、本実施形態の電子機器2においては、接続制御部220は、給電を開始するための操作を受け付けると、LANケーブル3と検出抵抗231との間を導通させ、また、電源部230から供給される電力によりその導通を維持する。そのため、給電を開始するための操作を行うことで、LAN給電装置1のPSE回路11がLANケーブル3を介して検出抵抗231を検出することができるようになり、検出抵抗231を検出したPSE回路11から電源制御部20への給電が開始される。
【0025】
また、本発明によれば、切断制御部240は、所定の条件に基づいて電源部230から供給された電力により閾値以上の電流をLANケーブル3に流す。そのため、所定の条件を満たす場合、LANケーブル3に閾値以上の電流が流れるため、PSE回路11は給電を停止する。また、給電が停止されるため、接続制御部220がLANケーブル3と検出抵抗231との間の導通を維持できなくなり、PSE回路11から検出抵抗231が検出できなくなるため、再度給電を開始するための操作が行われるまで、PSE回路11から電源制御部20への給電が停止される。
【0026】
そのため、LANケーブル2を介した電子機器2への給電の開始および停止の制御を容易に行うことができる。
【実施例】
【0027】
次に、具体的な実施例を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0028】
なお、以下では、図1に示した電子機器をIP電話機として具体化した場合の実施例について説明する。
【0029】
(実施例1)
図2は、図1に示した電子機器2の実施例1の構成を示す図である。
【0030】
図2に示すように、本実施例のIP電話機2は、電源制御部20、制御部21および入力部であるユーザインターフェース(IF)22を有している。また、電源制御部20は、LANコネクタ211、LANIF回路212、スイッチ221、第1トランジスタ(Tr1)222、第2トランジスタ(Tr2)242、第3トランジスタ(Tr3)241、第1抵抗(R1)243、電流調整抵抗である第2抵抗(R2)244、PD(Power Device)回路232、検出抵抗231、電源回路233およびリセットIC245を有している。
【0031】
なお、図1に示した通信部210はLANコネクタ211およびLANIF回路212から構成され、電源部230はPD回路232、検出抵抗231および電源回路233から構成され、接続制御部220はスイッチ221および第1トランジスタ222から構成され、切断制御部240は第2トランジスタ242、第3トランジスタ241、第1抵抗243、第2抵抗244およびリセットIC245から構成される。
【0032】
LANコネクタ211は、LANケーブル3を介してLAN給電装置1のPSE回路11と接続される。
【0033】
LANIF回路212は、LANコネクタ211に接続されたLANケーブル3にPD回路232を接続する。
【0034】
PD回路232は、検出抵抗231を備えており、LANIF回路212を介して、LANコネクタ211に接続されたLANケーブル3と接続される。なお、PD回路232は、PSE回路11から給電を受けると、48Vの電圧を電源回路233に出力する。
【0035】
スイッチ221は、LANIF回路212を介してLANコネクタ211に接続されたLANケーブル3に、PD回路232と直列に接続される。スイッチ221は、解放状態においては、LANケーブル3と検出抵抗231との間の接続を切断しており、給電を開始するための操作、具体的には押下等の操作を受け付けることによりLANケーブル3と検出抵抗231との間を導通させる。これにより、PSE回路11は、LANケーブル3に接続された検出抵抗231を検出できるようになり、電源制御部20への給電を開始する。
【0036】
第1トランジスタ222は、LANIF回路212とPD回路232との間で、スイッチ221と並列に接続され、ベースにはPD回路232が接続されている。第1トランジスタ222は、PSE回路11からの給電が開始され、PD回路232から48Vの電圧が出力されると、その出力電圧がベースに印加されてON状態となり、LANIF回路212を介して、LANコネクタ211に接続されたLANケーブル3と検出抵抗231との間を導通させ、出力電圧がベースに印加されている間、その導通を維持する。なお、第1トランジスタ222は、ベースにPD回路232の出力電圧が印加されていない状態はOFF状態であり、LANケーブル3と検出抵抗231との間の接続を切断する。
【0037】
電源回路233は、PD回路232から出力された電圧を変圧し、制御部21等を駆動させるのに必要な電圧Vcpuを出力する。
【0038】
ユーザIF22は、ユーザによるIP電話機2を制御するための各種操作を受け付ける。なお、ユーザIF22には、ボタンやタッチパネル等を用いることができる。
【0039】
制御部21は、電源回路233から出力されたVcpuにより駆動し、IP電話機2の他の構成要素の制御を行う。具体的には、制御部211は、Vcpuが印加されて駆動すると、第3トランジスタ241のベースに一定の電圧であるハイレベル電圧の制御信号を出力する。また、制御部21は、ユーザIF22にて給電を停止するための操作が受け付けられると、制御信号の電圧をハイレベル電圧よりも低いローレベル電圧に設定する。
【0040】
第3トランジスタ241は、グランドと第2トランジスタ242のベースとの間に接続され、制御部21からベースに出力される制御信号の電圧がハイレベル電圧の場合、ON状態となり、グランドと第2トランジスタ242のベースとの間を導通させる。また、第3トランジスタ241は、ベースに出力される制御信号の電圧がローレベル電圧の場合、OFF状態となり、グランドと第2トランジスタ242のベースとの間の接続を切断する。
【0041】
第2抵抗244は、LANIF回路212を介して、LANコネクタ211に接続されているLANケーブル3に検出抵抗231と並列に接続される。第2抵抗244は、PSE回路11から給電を受けると閾値である500mA以上の電流をLANケーブル3に流す。
【0042】
第2トランジスタ242は、LANコネクタ211に接続されているLANケーブル3に第2抵抗244と直列に接続される。第2トランジスタ242のベースは、第1抵抗243およびリセットIC245を介して電源回路233に接続されている。第2トランジスタ242は、ベースに印加される電圧の大きさに応じてON状態とOFF状態が切り替わり、ON状態の時には、LANケーブル3と第2抵抗244との間を導通させ、OFF状態の時には、LANケーブル3と第2抵抗244との間の接続を切断する。なお、第2トランジスタ242のベースに印加される電圧の大きさは、第3トランジスタの状態に応じて変化し、第3トランジスタがOFF状態の場合、電源回路233から出力された電圧が全てベースに印加されるため、第2トランジスタはON状態となる。一方、第3トランジスタがON状態の場合、ベースとグランドとが接続されるため、ベースに印加される電圧が減少し、第2トランジスタはOFF状態となる。
【0043】
リセットIC245は、制御部21から制御信号が第3トランジスタ241のベースに出力されてから、電源回路233の出力電圧が第2トランジスタ242のベースおよび第3トランジスタ241に印加されるように、入力された電源回路233の出力電圧を遅延させて出力する。
【0044】
第1抵抗243は、第2トランジスタ242のベース及び第3トランジスタ241に印加される電圧の大きさを調整するための抵抗である。
【0045】
以下に、図2に示した本実施例のIP電話機2の動作について説明する。
【0046】
最初に、図2に示したIP電話機2を起動する動作について説明する。
【0047】
まず、LANコネクタ211にLANケーブル3が接続され、電源制御部20とPSE回路11とが接続される。このとき、スイッチ221、第1トランジスタ222ともにLANケーブル3と検出抵抗231との間の接続を切断しているため、PSE回路11は、検出抵抗231を検出することができず、電源制御部20への給電を行わない。
【0048】
次に、給電を開始するための操作としてスイッチ221が押下されると、スイッチ221は、LANIF回路212を介して、LANコネクタ211に接続されているLANケーブル3と検出抵抗231との間を導通させる。これにより、PSE回路11は、検出抵抗231を検出できるようになり、電源制御部20への給電を開始する。なお、スイッチ221は状態を保持しないものとし、給電を開始するための操作が終了して押下が解放されるとOPEN状態となる。
【0049】
次に、PSE回路11からの給電が開始されると、PD回路232は、48Vの電圧を電源回路233に出力する。この電圧は第1トランジスタ222のベースにも印加され、これにより第1トランジスタ222がON状態となるため、スイッチ221の解放後も、LANケーブル3と検出抵抗231との間を導通が維持される。なお、IEEE802.afの規定に基づいて、25kオームの検出抵抗231と第1トランジスタ222の直列合成抵抗が26.25kΩを超えないように、第1トランジスタの抵抗を設定する必要がある。
【0050】
次に、PD回路232から48Vの電圧が出力されると、電源回路233は、この電圧を変圧して制御部21等を駆動させるのに必要な電圧Vcpuを出力する。
【0051】
次に、CPU等の制御部21は、電源回路233から出力されたVcpuにより起動し、第3トランジスタ241のベースに出力する制御信号の電圧をハイレベル電圧に設定する。
【0052】
また、リセットIC245は、電源回路233から出力されたVcpuが入力されると、制御部21からハイレベル電圧の制御信号が第3トランジスタ241のベースに出力されるまで、入力されたVcpuを出力するのを遅延させる。リセットIC245から遅延されて出力されたVcpuは、第1抵抗243により適当な電圧に調整された後、第2トランジスタ242のベースに印加される。
【0053】
その後、第3トランジスタ241は、ベースにハイレベル電圧の制御信号が入力されたことでON状態となり、グランドと第2トランジスタ242のベースとを導通させる。そのため、第2トランジスタ242のベースに印加される電圧が減少し、第2トランジスタ242がOFF状態のままとなり、PSE回路11から電源制御部20への給電が継続される。
【0054】
次に、図2に示したIP電話機2を停止する動作について説明する。
【0055】
まず、ユーザIF22は、給電を停止するための操作を受け付けると、給電を停止するよう指示する給電停止命令を制御部21に出力する。なお、ユーザIF22で行う給電を停止するための操作としては、ユーザIF22に備えられた給電停止を割り当てられたボタンの押下や、画面上の給電停止の項目の選択、タッチパネルの画面上の給電停止アイコンの押下などが想定される。
【0056】
これを受け、制御部21は、第3トランジスタ241のベースに出力する制御信号の電圧をローレベル電圧に設定する。
【0057】
次に、第3トランジスタ241は、制御部21から出力される制御信号の電圧がローレベル電圧に設定されたことでOFF状態となり、グランドと第2トランジスタ242のベースとの間の導通を切断する。これにより、第2トランジスタ242のベースに印加される電圧が増加し、第2トランジスタ242がON状態となる。
【0058】
次に、第2トランジスタ242がON状態となったことで、第2抵抗244とLANケーブル3との間が導通し、第2抵抗244にPSE回路11から給電された電力が供給される。これにより、LANケーブル3に閾値以上の電流である500mAの電流が流れる。なお、第2抵抗244の抵抗の大きさは、PSE回路11から供給された電力により500mA以上の電流が流れるように設定しておく必要がある。
【0059】
次に、PSE回路11は、IEEE802.3afの規定に基づいて、LANケーブル3に500mAの電流が1ms以上流れると電源制御部20への給電を停止する。
【0060】
次に、PSE回路11から電源制御部20への給電が停止されると、PD回路232から48Vの電圧が出力されなくなるため、第1トランジスタがOFF状態となる。これにより、LANケーブル3と検出抵抗231との間の接続が切断される。
【0061】
その後、PSE回路11は、定期的に検出抵抗231を検出するために検出電圧をLANケーブル3を介して電源制御部20に出力するが、LANケーブル3と検出抵抗231との間の接続が切断されているため検出抵抗231を検出することができず、給電を停止したままの状態となる。
【0062】
上述したように、本実施例のIP電話機2においては、ユーザの操作によりIP電話機2への給電の開始及び停止を容易に制御することができる。
【0063】
(実施例2)
図3は、図1に示した電子機器2の実施例2の構成を示す図である。
【0064】
図3に示すように、本実施例のIP電話機2は、図2に示した実施例1のIP電話機2の構成要素に加え、センサ部23を有している。
【0065】
センサ部23は、図3に示したIP電話機2の周囲の照度や温度を測定し、測定した照度や温度に基づいて制御部20に給電停止命令を出力する。そのため、PSE回路11から電源制御部20への給電の停止を、IP電話機2の周囲の環境の変化に応じて自動で行うことができる。
【0066】
センサ部23として、図3に示したIP電話機2の周囲の照度を測定する光センサを用いる場合、センサ部23は、周囲の照度が所定の設定照度以下の場合に制御部20に給電停止命令を出力する。この様にすることで、例えば、夜間や電灯が消えIP電話機2の周囲が暗くなった場合に、自動で給電を停止することができる。なお、センサ部23が周囲の照度が所定の設定照度以上の場合に制御部20に給電停止命令を出力するように構成しても良い。
【0067】
また、センサ部23として、図3に示したIP電話機2の周囲の温度を測定する温度センサを用いる場合、センサ部23は、周囲の温度が所定の設定温度以上の場合に制御部20に給電停止命令を出力する。この様にすることで、例えばIP電話機2に異常が発生し温度が上昇した際に、自動でIP電話機2への給電を停止することができる。また、夏に、ユーザが、IP電話機2が設置されている部屋から退出してクーラーが停止され、周囲の温度が上昇した場合に、IP電話機2への給電を自動で停止することができる。なお、センサ部23が周囲の温度が所定の設定温度以下の場合に制御部20に給電停止命令を出力するように構成しても良い。この場合、冬に、ユーザが部屋から退出して暖房が停止され、周囲の温度が低下した場合に、IP電話機2への給電を自動で停止させることができる。また、温度範囲を設定して、その温度範囲から外れた場合にセンサ部23が制御部20に給電停止命令を出力する構成としても良い。
【0068】
上述したように、本実施例のIP電話機2においては、センサ部23を設けることで、IP電話機2の周囲の環境の変化に応じてIP電話機2への給電を自動で停止させることができる。
【0069】
(実施例3)
図4は、図1に示した電子機器2の実施例3の構成を示す図である。
【0070】
図4に示すように、本実施例のIP電話機2は、図3に示した実施例2のIP電話機2の構成要素に加え、タイマー部24を有している。
【0071】
タイマー部24は、時間を計測し、ユーザIF部22を介して設定された所定の設定時間を計測した場合に制御部20に給電停止命令を出力する。これにより、指定の時間に自動でIP電話機2への給電を停止させることができる。そのため、タイマー部24を用いて、IP電話機2に日時を計測する時計機能やカレンダー機能を持たせることで、時刻や曜日、日付等を指定してIP電話機2への給電を自動で停止させることができる。
【0072】
(実施例4)
図5は、図1に示した電子機器2の実施例4の構成を示す図である。
【0073】
図5に示すように、本実施例のIP電話機2は、図4に示した実施例3のIP電話機2の構成要素に加え、LANケーブル5を介して他の電子機器であるPC4と接続するためのLANコネクタ25およびLANIF回路26を有している。なお、本発明の通信手段は、LANコネクタ25およびLANIF回路26から構成される。
【0074】
LANIF回路26は、LANコネクタ25に接続されたLANケーブル5を介してPC4と通信を行う。
【0075】
制御部21は、LANIF回路26にて、LANコネクタ25に接続されたLANケーブル5を介してPC4から出力された給電の停止を指示する信号が受信されると、制御信号の電圧をローレベル電圧に設定する。
【0076】
これにより、他の電子機器であるPC4からLANケーブル5を介して、遠隔操作で、IP電話機2への給電を停止することができる。また、停止する際に自動で給電の停止を指示する信号をIP電話機2に出力するようにPC4を構成することで、PC4の停止時にIP電話機2への給電を停止させ、IP電話機2も合わせて停止させることができるようになる。
【0077】
(実施例5)
図6は、図1に示した電子機器2の実施例5の構成を示す図である。なお、電源制御部20以外のIP電話機の構成要素は省略している。
【0078】
図6に示すように、本実施例のIP電話機2は、図2〜5に示した実施例1〜4のIP電話機2と比較して、電源制御部20が、第3トランジスタ241の代わりにフォトトランジスタ(PTr)246を有する点と、リセットIC245を有していない点とが異なる。
【0079】
フォトトランジスタ246は、図6に示したIP電話機2の周囲の照度が所定の照度以下の場合にOFF状態となり、グランドと第2トランジスタ242のベースとの間の接続を切断し、周囲の照度が所定の照度よりも大きな場合にON状態となり、グランドと第2トランジスタ242のベースとの間を導通させる。
【0080】
この様にフォトトランジスタ264を用いることで、図1〜5に示した制御部21からの制御信号を必要とせず、IP電話機2の周囲の照度に応じて、IP電話機2への給電を自動で停止させることができる。そのため、図5に示した制御部21や、ユーザIF22、センサ部23、タイマー部24、LANコネクタ25、LANIF回路26等の構成要素が不要となる。また、制御部21からの制御信号を必要としないため、ユーザIF制御部21から制御信号が出力されるまで入力された電源回路233の出力電圧を出力するのを遅延させるリセットIC245も不要となる。
【0081】
また、制御部21からの制御信号を必要としないため、電源制御部20を電源制御装置として電子機器の外部に設けることも可能になる。
【0082】
なお、上述した実施例1〜5に示したIP電話機2は、本発明の電子機器の一例であり、本発明はLAN給電装置1から給電を受ける全ての電子機器、例えば監視カメラや無線LANのアクセスポイント等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の電子機器の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示した電子機器の実施例1の構成を示す図である。
【図3】図1に示した電子機器の実施例2の構成を示す図である。
【図4】図1に示した電子機器の実施例3の構成を示す図である。
【図5】図1に示した電子機器の実施例4の構成を示す図である。
【図6】図1に示した電子機器の実施例5の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 LAN給電装置
2 電子機器(IP電話機)
3,5 LANケーブル
4 PC
11 PSE回路
20 電源制御部
21 制御部
22 ユーザIF
23 センサ部
24 タイマー部
25,211 LANコネクタ
26,212 LANIF回路
210 通信手段
220 接続制御手段
221 スイッチ
222 第1トランジスタ
230 電源手段
231 検出抵抗
232 PD回路
233 電源回路
240 切断制御手段
241 第3トランジスタ
242 第2トランジスタ
243 第1抵抗
244 第2抵抗
245 リセットIC
246 フォトトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出抵抗を備え、通信ケーブルを介して給電装置から給電を受ける電源制御部を有し、前記給電が、前記給電装置が前記通信ケーブルを介して前記検出抵抗を検出することで開始され、前記通信ケーブルに閾値以上の電流が流れることで停止される、電子機器において、
前記電源制御部は、
前記給電を受けて電力の供給を行う電源手段と、
前記給電を開始するための操作を受け付けると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記電源手段から供給される電力により該導通を維持する接続制御手段と、
所定の条件に基づいて、前記電源手段から供給される電力により前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す切断制御手段とを有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記接続制御手段は、
前記給電を開始するための操作を受け付けると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記給電を開始するための操作が終了すると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間の接続を切断するスイッチと、
前記スイッチと並列に接続され、前記電源手段から電力が供給されると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記電源手段からの電力の供給が停止すると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間の接続を切断する第1トランジスタとを有する、電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
給電を停止するための操作を受け付ける入力部と、
前記電源手段から電力が供給されると一定の電圧の制御信号を前記切断制御手段に出力し、前記入力部にて前記給電を停止するための操作が受け付けられると、前記制御信号の電圧を前記一定の電圧よりも低い電圧に設定する制御部とをさらに有し、
前記切断制御手段は、前記制御信号の電圧が前記一定の電圧よりも低い電圧に設定されることを前記所定の条件として、前記通信ケーブルに前記閾値以上の電流を流す、電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記電子機器の周囲の照度を測定し、測定した照度が所定の設定照度以下の場合に前記給電の停止を指示する給電停止命令を前記制御部に出力する光センサをさらに有し、
前記制御部は、前記給電停止命令を受けて、前記制御信号の電圧を前記一定の電圧よりも低い電圧に設定する、電子機器。
【請求項5】
請求項3に記載の電子機器において、
前記電子機器の周囲の照度を測定し、測定した照度が所定の設定照度以上の場合に前記給電の停止を指示する給電停止命令を前記制御部に出力する光センサをさらに有し、
前記制御部は、前記給電停止命令を受けて、前記制御信号の電圧を前記一定の電圧よりも低い電圧に設定する、電子機器。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電子機器において、
前記電子機器の周囲の温度を測定し、測定した温度が所定の設定温度以下の場合に前記給電停止命令を前記制御部に出力する温度センサをさらに有する、電子機器
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の電子機器において、
前記電子機器の周囲の温度を測定し、測定した温度が所定の設定温度以上の場合に前記給電停止命令を前記制御部に出力する温度センサをさらに有する、電子機器。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の電子機器において、
時間を計測し、所定の設定時間を計測した場合に前記給電停止命令を前記制御部に出力するタイマー部をさらに有する、電子機器。
【請求項9】
請求項8に記載の電子機器において、
他の電子機器と通信ケーブルを介して接続する通信手段をさらに有し、
前記制御部は、前記通信手段にて前記他の電子機器から出力された前記給電の停止を指示する信号が受け付けられると、前記制御信号の電圧を前記一定の電圧よりも低い電圧に設定する、電子機器。
【請求項10】
請求項2〜請求項9のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記切断制御手段は、
前記通信ケーブルに前記電源手段と並列に接続され、該通信ケーブルを介して前記給電を受けると前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す電流調整抵抗と、
前記通信ケーブルに前記電流調整抵抗と直列に接続され、前記電源手段から供給される電力に応じて前記通信ケーブルと前記電流調整抵抗との間の導通および接続の切断を制御する第2トランジスタと、
グランドと前記第2トランジスタのベースとの間に接続され、前記制御部から出力される前記制御信号の電圧に応じて前記第2トランジスタとグランドとの間の導通および接続の切断を制御することで、前記電源手段から前記第2トランジスタに供給される電力の大きさを制御する第3トランジスタと、
前記電源手段と前記第2トランジスタのベースの間に接続され、前記制御手段から前記制御信号が前記第3トランジスタに出力されるまで、前記電源手段から出力された電力が前記第2トランジスタに供給されるのを遅延させるリセットICとを有する、電子機器。
【請求項11】
請求項2に記載の電子機器において、
前記切断制御手段は、
前記通信ケーブルに前記電源手段と並列に接続され、該通信ケーブルを介して前記給電を受けると前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す電流調整抵抗と、
前記通信ケーブルに前記電流調整抵抗と直列に接続され、前記電源手段から供給される電力に応じて前記通信ケーブルと前記電流調整抵抗との間の導通および接続の切断を制御する第2トランジスタと、
グランドと前記第2トランジスタのベースとの間に接続され、前記電子機器の周囲の照度に応じて前記第2トランジスタとグランドとの間の導通および接続の切断を制御することで、前記電源手段から前記第2トランジスタに供給される電力の大きさを制御するフォトトランジスタとを有する、電子機器。
【請求項12】
検出抵抗を備え、通信ケーブルを介して給電装置から給電を受け、該給電が、前記給電装置が前記通信ケーブルを介して前記検出抵抗を検出することで開始され、前記通信ケーブルに閾値以上の電流が流れることで停止される、電源制御装置において、
前記給電を受けて電力の供給を行う電源手段と、
前記給電を開始するための操作を受け付けると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記電源手段から供給される電力により該導通を維持する接続制御手段と、
所定の条件に基づいて、前記電源手段から供給される電力により前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す切断制御手段とを有することを特徴とする電源制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電源制御装置において、
前記接続制御手段は、
前記給電を開始するための操作を受け付けると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記給電を開始するための操作が終了すると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間の接続を切断するスイッチと、
前記スイッチと並列に接続され、前記電源手段から電力が供給されると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間を導通させ、前記電源手段からの電力の供給が停止すると前記通信ケーブルと前記検出抵抗との間の接続を切断する第1トランジスタとを有する、電源制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電源制御装置において、
前記切断制御手段は、
前記通信ケーブルに前記電源手段と並列に接続され、該通信ケーブルを介して前記給電を受けると前記閾値以上の電流を前記通信ケーブルに流す電流調整抵抗と、
前記通信ケーブルに前記電流調整抵抗と直列に接続され、前記電源手段から供給される電力に応じて前記通信ケーブルと前記電流調整抵抗との間の導通および接続の切断を制御する第2トランジスタと、
グランドと前記第2トランジスタのベースとの間に接続され、前記電子機器の周囲の照度に応じて前記第2トランジスタとグランドとの間の導通および接続の切断を制御することで、前記電源手段から前記第2トランジスタに供給される電力の大きさを制御するフォトトランジスタとを有する、電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−130339(P2010−130339A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302735(P2008−302735)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】