説明

電子機器のケース

【課題】 一方向に延在する外部の支持レールに取り付けられた複数の電子機器の取り付けまたは取り外しの際の相互干渉を軽減し、後方側(作業者から見て正面側)に入出力用のコネクタ端子部を配した電子機器であってもさらなる薄型化を可能にする。
【解決手段】 支持レールLの延在する方向側に位置するケース側面に、隣接する入出力ユニット12の取り付け時または取り外し時において、その雄側端子部12bが入り込む侵入用凹部12eが設けられ、侵入用凹部12eの深さは、取り付け時の進行方向における後方側の深さが前方側の深さよりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば信号変換器や計測制御用遠隔入出力機などの各種計装用の電子機器を、相互に隣接させてDINレールなどの支持レールに取り付けるための、電子機器のケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電子機器を相互に隣接させて、それらをまとめて外部の電子機器と電気的にバス接続する装置としては、例えば、予め同一基板上において複数実装されたピンヘッダのピンが、カードスロットルでスライド方向が位置決めされたICカードの先端側の接続部に挿入されることにより、電気的な導通を可能とする、所謂バックプレーンと称される構成が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、例えばドイツ規格協会の規格に定められたDINレールなどの支持レールに各種計装用の電子機器を相互に隣接させて取り付けるために、隣接間の電気的な接続と機械的な接続の両方を併せて可能とした構成としては、雌雄一対のコネクタ(雄側コネクタと雌側コネクタ)を挿通接続し、かつ、ロック片の係合凹部をロック片係合部に係合させる構成も知られていた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
その従来の技術を、図8(a)、(b)に示した従来の機器群取付装置の接続前の斜視図を参照して説明する。
【0005】
図8(a)は、従来の技術を説明するための斜視図であり、図8(b)は、図8(a)の要部を説明するための部分断面図である。端子台連結装置は、ロック片27と、ロック片係合部25からなり、ロック片27は隣接する端子台51,52の一方の端子台52の側面に形成され、先端が先細状であって係合凹部27aを有するものである。また、ロック片係合部25は端子台51において隣接する端子台52の対向面側の角部に、ロック片27の係合凹部27aが係合するように形成されたものであり、具体的には端子台51,52の上端部の角部であって上端面ならびに側面を連通するようにロック片挿入口28を形成することにより得られたロック片係合部25であり、また端子台51,52の下端部の角部であって下端面ならびに側面を連通するようにロック片挿入口28を形成することにより得られたロック片係合部25である。
【0006】
このような構成のものにおいて、端子台51,52を連結するには、支持レール36に沿って端子台51,52を互いに接近させると共に、雄側コネクタ38と雌側コネクタ37を挿入接続し、これにより電子機器31,32を電気的に接続した状態で、ロック片27の係合凹部27aをロック片係合部25に係合させればよい。
【0007】
図8(b)はロック片27とロック片係合部25の関係を説明するための図であり、(1)は端子台51,52が接近し、ロック片27の係合凹部27aがロック片係合部25に係合する直前の状態であり、(2)は端子台51,52の側面が当接し、ロック片27の係合凹部27aがロック片係合部25に完全に係合した状態である。図8(b)の(2)の状態、つまり端子台51,52の連結状態を解くには、図6(b)の(3)のようにロック片27の先端を何らかの治具により押し下げ、係合凹部27aをロック片係合部25との係合を解くと共に、端子台51,52を互いに遠ざかる方向に移動させればよい。
【0008】
以上述べたように、端子台51,52の連結時にはロック片27の係合凹部27aがロック片係合部25に係合することにより、電子機器31,32同士の連結が確実に行われる。電子機器31,32の連結を解くには、ロック片27を押し下げるための治具が必要なため、簡単に端子台51,52の連結を解くことができないという利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開平6−187069号公報(第13頁、図2)
【特許文献2】 特開2000−59043号公報(第8頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したような従来のケースの構成では、例えばケースを支持レールの延在する方向において、複数台が積層するように密着して列べられているため、そのうちの任意の一台のケースを新たな一台と交換を行う場合には、支持レールに既に取り付けられている既存のケースのうち、交換を必要とするケースの右側または左側に位置する全てのケースを一旦支持レールの延在方向に移動させ、交換後にそれらを元の位置に戻すという、実質的な交換作業とは異なる余計な準備作業が必要となる。
【0011】
これは、相互に連結したケース間の連結を解除するためには、少なくともロック片や雄側コネクタの長さ分だけ相互に隣接するケースを離間させたうえで、支持レールから取り外すという作業が必要となるためである。
【0012】
また、既存のケース間にさらに新たなもう一台のケースを増設する場合などにも、予め支持レールの延在する方向において、少なくともそのケースの幅長に前述したロック片や雄側コネクタの長さを加えた間隔の空間が必要となるため、同様の作業困難性を有していた。
【0013】
結果として、その交換作業や増設作業に手間がかかった分、その電子機器の通信制御機能によりプロセス制御等を行っている各種センサーや制御装置類を長時間停止させてしまうこととなり、そのプロセス自体の生産性を著しく低下させてしまうというおそれもあった。
【0014】
さらには、前述したロック片や雄側コネクタがケースの幅長をさらに大きくする要素となり、電子機器のケースの薄型化を大きく阻害する原因にもなっていた。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、さらなる薄型化を達成できるのと併せ、支持レールの延在方向において複数のケースが相互に隣接するように配置された電子機器であっても、隣接する他の電子機器の取付位置を全く変動させることなくまたは殆ど変動させることなく、容易に交換が可能となる電子機器のケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電子機器のケースによれば、あらかじめ一方向に延在し、外方に張り出す張出片部を両側に有する外部の支持レールに、相互に隣接させて電子機器を取り付け可能とするための電子機器のケースであって、支持レールの延在する方向側に位置する一方のケース側面には外方に突出する凸部が設けられ、他方のケース側面には隣接する他の電子機器の取り付け時の移動中または取り外し時の移動中において、隣接する他の電子機器の凸部が入り込む侵入用凹部が設けられ、かつ、その侵入用凹部の深さは、取り付け時の進行方向における後方側の深さが前方側の深さよりも小さいことを特徴としている。
【0017】
この構成により、ケース内部の進行方向における後方側に外部の各種センサーや制御機器などと接続される入出力用のコネクタ端子部を実装しても、後方側の侵入用凹部の深さが前方側の深さよりも小さいためケースの薄型化が妨げられない。
【0018】
したがって、相互に隣接させて支持レールなどに取り付けることが可能であって、かつ、後方側(作業者から見て正面側)に入出力用のコネクタ端子部を配した電子機器であっても、ケースの肉厚を著しく薄くすることなく、コネクタ端子部を格納することができるため、例えばそのケース幅長を12mm以下とする薄型化を実現できる。
【0019】
また、隣接する他の電子機器と密着させたとしても、前方側の侵入用凹部の深さは、後方側の侵入用凹部の深さよりも大きいため、隣接する他の電子機器の凸部を十分に入り込ませることができる。
【0020】
したがって、隣接する他の電子機器間とのデッドスペースを生じることがなく、それら他の電子機器を含めた装置全体の幅方向のサイズをよりコンパクト化できる。
【0021】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、侵入用凹部は、取り付け時の進行方向に沿って深さが漸次大きくなる後方側侵入用凹部と、一定の深さを有する前方側侵入用凹部とを備え、後方側侵入用凹部は、前方側侵入用凹部よりも取り付け時の進行方向において後方側に位置することが好ましい。
【0022】
この構成により、新たに電子機器を支持レールに取り付ける際においては、ケースを進行させるにつれて、予め若干傾かせた状態の隣接する他の電子機器のケースとの離間距離が漸次狭まっていくが、侵入用凹部の方も深さが漸次大きくなっているため、相互に大きな干渉を生じることなく、取り付けが可能となる。
【0023】
つまり、支持レールの延在方向において複数のケースが相互に隣接するように配置された電子機器であっても、隣接する他の電子機器を若干傾けるだけでよく、支持レールに対する取付位置を全く変動させることなくまたは殆ど変動させることなく、容易に交換が可能となる。
【0024】
したがって、スムーズに交換作業や増設作業を実施することができる。
【0025】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、侵入用凹部は、後方側侵入用凹部と前方側侵入用凹部とを接続する接続用凹部を備え、接続用凹部の他方のケース側面に対する角度は、後方側侵入用凹部の他方のケース側面に対する角度よりも大きく、直角よりも小さいことが好ましい。
【0026】
この構成により、前方側侵入用凹部の深さと、後方側侵入用凹部の深さが大きく異なってもそれぞれを短い距離で接続することが可能となり、かつ、隣接する他の電子機器を取り外す際にその凸部と侵入用凹部が仮に接触した場合であっても摺接抵抗が小さくスムーズにケースを進行させることができる。
【0027】
また、接続用凹部の取り付け時の進行方向に対する角度は、後方側侵入用凹部の取り付け時の進行方向に対する角度よりも大きいため、押し込む際の摺接抵抗が急激に小さくなり作業者が触覚的に感知できる。
【0028】
したがって、作業者はこの部分を経過すると勢いよく押し込むことができるので、作業性が向上する。
【0029】
さらに、隣接する入出力ユニットを取り外す場合には、直角(90°)よりも小さな角度を有する接続用凹部によって、両者が滑らかに接続されているので、隣接する入出力ユニットの凸部が当接したとしてもスムーズに案内することができる。
【0030】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、侵入用凹部は、外部の支持レールへの取り付け後において、隣接する他の電子機器の凸部が対向する部分の位置よりも取り付け時の進行方向において後方側に形成されることが好ましい。
【0031】
この構成により、隣接する他の電子機器を支持レールに取り付ける際または取り外す際にその電子機器の凸部が接触することを容易に回避できるので、相互の干渉を軽減してスムーズに交換作業や増設作業を行うことができる。
【0032】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、侵入用凹部の取り付け時の進行方向の延長上には、支持レールへの取り付け後において、隣接する他の電子機器の凸部を構成する雄側端子部と当接する雌側端子部が設けられ、雌側端子部は雄側端子部と通電可能であることが好ましい。
【0033】
この構成により、隣接する他の電子機器の凸部が例えば導電性の良好な素材による雄側端子部で構成されていれば、両者間の良好な電気的な接続が可能となる。
【0034】
したがって、相互に隣接する他の電子機器との電源系の電気的接続や信号系の送受信等が可能となる。
【0035】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、侵入用凹部の最大深さは、隣接する他の電子機器の凸部の突出高さよりも大きく、雌側端子部の外方側端部の深さは、他の電子機器の凸部の突出高さよりも小さいことが好ましい。
【0036】
この構成により、凸部は侵入用凹部に干渉されずに入り込むので、取り付け時の移動中や取り外し時の移動中であっても、相互に隣接する入出力ユニットのケース同士を密着させた状態で進退方向にスライド可能となる。
【0037】
そして、支持レールへの取り付けが完了した時点では、雄側金属端子と雌側金属端子との接触性が確保され、両者間において十分な通電を行うことができる。
【0038】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、ケース背面の上部には、外部の支持レールに取り付けられる一対の可動スライダーが設けられ、一対の可動スライダーの爪部とケース背面との隙間の寸法は、外部の支持レールの張出片部の厚みの寸法より大きく設定され、かつ、外部の支持レールに取り付けられた後の状態において、ケース背面が、外部の支持レールの延在方向に対して最大傾きで2°以上、10°以下の傾きを生じるような寸法であることが好ましい。
【0039】
この構成により、支持レールに取り付けられた状態であっても、隣接する他の電子機器を交換する場合において、ケースの後方側(作業者から見て正面側)を支持レールの延在方向(左右方向または上下方向)に倒せば、最大傾きが2°〜10°の範囲でケースを傾けることが可能となるため、その隣接する他の電子機器の側面(支持レールの延在する方向側に位置するケース表面)に設けられた凸部との干渉が容易に避けられ、その分交換作業や増設作業を簡素化できる。
【0040】
同様に、新たな他の電子機器を増設する場合であっても、ケースを傾けることにより相互の干渉が容易に回避でき、増設の作業性が向上する。
【0041】
特に、最大傾きが2°より小さくなると相互に隣接する入出力ユニットのケースとの干渉性が増大するため、作業性が悪くなり、逆に最大傾きが10°より大きくなると、振動の影響や元の位置に戻す修復作業性が悪化してしまう。
【0042】
また、本発明の電子機器のケースによれば、前記構成に加え、隣接する他の電子機器に設けられた延出片に対して、取り付け時または取り外し時において進退方向にスライドするように、進退方向に延びるスライドレールが設けられ、そのスライドレールは、隣接する他の電子機器の凸部が侵入用凹部内であって前方側侵入用凹部を除く部分に入り込むような位置関係にある場合、延出片を規制しないような、進退方向における長さで形成されていることが好ましい。
【0043】
この構成により、支持レールへ取り付ける作業の初期または支持レールから取り外す作業の終期において、支持レールの延在する方向とは直交する方向(通常では上下方向)にケースを傾けることができるため、相互間の位置規制による作業困難性が軽減され、作業者に対して対象となる電子機器が高所または低所に位置する場合にもスムーズに交換作業や増設作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の電子機器のケースによれば、さらなる薄型化を達成できるのと併せ、支持レールの延在方向において複数のケースが相互に隣接するように配置された電子機器であっても、隣接する他の電子機器を若干傾かせるだけよく、その支持レールに対する取付位置を全く変動させることなくまたは殆ど変動させることなく、容易に交換ができる、簡素な構成の電子機器のケースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態における入出力ユニットを3個備えた計測制御用遠隔入出力装置の全体斜視図
【図2】本発明の実施の形態における入出力ユニットのケースを左側から見た斜視図
【図3】図2におけるA−A断面図
【図4】(a)取り付け作業の初期の段階を示す図、(b)取り付け作業の中間期の段階を示す図、取り付け作業の終期の段階を示す図
【図5】本発明の実施の形態における入出力ユニットの左側面図
【図6】支持レールと入出力ユニットとの傾きを説明するための部分断面図
【図7】(a)本実施の形態における侵入用凹部の第1変形例、(b)本実施の形態における侵入用凹部の第2変形例、(c)本実施の形態における侵入用凹部の第3変形例
【図8】(a)従来の技術を説明するための斜視図、(b)図8(a)の要部を説明するための部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0047】
まず、図1は、本発明の実施の形態における入出力ユニットを3個備えた計測制御用遠隔入出力装置の全体斜視図で、図2は、本発明の実施の形態における入出力ユニットを左側から見た斜視図で、図3は、図2におけるA−A断面図で、図4(a)〜(c)は、一方の入出力ユニットの雄側金属端子と隣接する他方の侵入用凹部との位置関係を取り付け段階毎に示す図で、図5は、本発明の実施の形態における入出力ユニットの左側面図で、図6は、支持レールと入出力ユニットとの傾きを説明するための部分断面図で、図7(a)〜(b)は、本実施の形態における侵入用凹部の3つの変形例を示す図である。
【0048】
以下の説明を容易にするため、図1において計測制御用遠隔入出力装置10の幅方向をX軸、奥行き方向をY軸、高さ方向をZ軸とする。
【0049】
そして、これらX軸、Y軸およびZ軸は、3次元的に相互に直交する位置関係にある。
【0050】
本図から明らかなように、破線で示したように水平方向または垂直方向の一方向に直線的に延びる支持レールLの延在方向はX方向と一致し、通常作業者はZ軸上における上方側に位置することになる。
【0051】
通常、このような支持レールLには、計測対象や制御対象が多数存在するため数台〜数十台、またはそれ以上の台数の外形が同一若しくは類似するまたは外形は類似しないが相互に連携する電子機器が相互に隣接し、かつ、それらは密接して取り付けられることが一般的である。
【0052】
計測制御用遠隔入出力装置10は、主として工業用計測の分野で使用できるもので、例えば現場に設置された検出端(測温抵抗体、差圧発信器など)と中央制御室などに設置された受発信器(指示計、記録計、調節計、PLC、DCS、コンピュータなど)との間のデータ通信をネットワークを介して行うインターフェース機器であり、アナログ信号をディジタル信号に変換する、またはその逆方向の変換をする、などの信号変換機能をもつ入出力装置である。
【0053】
そして、計測制御用遠隔入出力装置10は、電源・通信ユニット11と、一方向に延在する支持レールLに沿って積層するように隣接配置される、一乃至複数の信号変換機能を有する入出力ユニット12と、から構成され、一般に他の電子機器と離れた地点に設置が可能で、リモート入出力装置(リモートI/O)として機能する。
【0054】
そして、計測制御用遠隔入出力装置10の一部を構成する電源・通信ユニット11の背面側には、支持レールLに対して直交する方向にスライドする一対の可動スライダー11aが設けられている。
【0055】
同様に、入出力ユニット12のケースの背面側には、支持レールLに対して直交する方向にスライドする一対の可動スライダー12aが設けられており、それらが支持レールLの両側外方に張り出す張出片部L1を両側から挟み込むようにして挟持している。
【0056】
これにより、それぞれのユニットは、支持レールLによって保持され、かつ、隣接する他のユニットにおける外方に突出した凸部を構成する複数の雄側端子部12bを介して電気的にも接続され、相互に隣接する他の電子機器との電源系の電圧供給や信号系の送受信等が可能となっている。
【0057】
また、隣接する他のユニットに設けられた平板状に延出するスライドレール12c(図2参照)に対して、進退方向(Z軸上の方向、以下同じ)にスライドするように、ケースのケース右側面12srの両側端部(Y方向における両側端部)において進退方向に延びる延出片12dが設けられている。
【0058】
ここで、延出片12dは、スライドレール12cが嵌挿され、進退方向にスライドするようにZ軸の方向から見てL字形状に内側に折れ曲がるように形成されている。
【0059】
次に、図2を参照して入出力ユニット12について詳細に説明する。
【0060】
ここで、ケース左側面12slにおいてZ軸と平行に延び、矩形状に窪むように形成された複数の侵入用凹部12eは、取り付け時の進行方向(Z軸上における下方、以下同じ)に沿って漸次深さが大きくなる後方側侵入用凹部12erと、一定の深さを有する前方側侵入用凹部12efとを備えている。
【0061】
そして、後方側侵入用凹部12erは、前方側侵入用凹部12efよりも取り付け時の進行方向において後方側(Z軸上の上方、作業者から見たら正面側、以下同じ)に位置している。
【0062】
また、本図からも明らかなように、侵入用凹部12eは、支持レールLへの取り付け後において、隣接する他の電源・通信ユニット11の雄側端子部(図示せず)または隣接する入出力ユニット12の雄側端子部12b(図1参照)に対向する部分、すなわち本図においては雌側端子部12fの位置よりも取り付け時の進行方向における後方側に形成されている。
【0063】
これにより、侵入用凹部12eの延長上には、支持レールLへの取り付け後において、隣接する他の入出力ユニット12の雄側端子部12bと当接する雌側端子部12fが設けられることとなり、相互に当接する雄側端子部12bと雌側端子部12fとの間で通電可能となっている。
【0064】
一方、前述した延出片12dと相互に嵌合し、進退方向においてスライドするスライドレール12cは、隣接する他の入出力ユニット12の雄側端子部12bが、その端子数に応じて形成された侵入用凹部12eの前方側侵入用凹部12efを除く部分に入り込むような位置関係にある場合、延出片12dを規制しないような、進退方向の長さで形成されている。
【0065】
すなわち、そのような位置関係にある場合、延出片12dはスライドレール12cから開放された状態にあるので、支持レールLへ取り付ける作業の初期または支持レールLから取り外す作業の終期において、支持レールLの延在する方向(X方向)とは直交する方向(Y方向)にケースを傾けることができるため、相互間の位置規制による作業困難性が軽減され、作業者に対して対象となる入出力ユニット12が高所または低所に位置する場合にもスムーズに交換作業や増設作業を行うことができる。
【0066】
すなわち、そのような位置関係にある場合、延出片12dはスライドレール12cから開放された状態にあるので、支持レールLへ取り付ける作業の初期または支持レールLから取り外す作業の終期において、支持レールLの延在する方向とは直交する方向にケースを傾けることができるため、相互間の位置規制による作業困難性が軽減され、作業者に対して対象となる入出力ユニット12のケースが高所または低所に位置する場合にもスムーズに交換作業や増設作業を行うことができる。
【0067】
次に、図3を参照して、侵入用凹部12eの深さについて詳細に説明する。
【0068】
本図は、入出力ユニット12をXZ平面で切断した断面図でもあるが、本図から明らかなように、雄側端子部12bは、ケース右側面12srから外方へ突出する凸部を構成している。
【0069】
一方、ケース左側面12slには、図示しない隣接する他の入出力ユニット12の雄側端子部12bが入り込む侵入用凹部12eが設けられ、侵入用凹部12eの深さは、取り付け時の進行方向(本図では下方)における後方側の深さは前方側の深さよりも小さくなっている。
【0070】
そして、侵入用凹部12eは、取り付け時の進行方向に沿って深さが漸次大きくなる後方側侵入用凹部12erと、一定の深さを有する前方側侵入用凹部12efとを備え、後方側侵入用凹部12erは、前方側侵入用凹部12efよりも取り付け時の進行方向において後方側に位置している。
【0071】
この構成により、後方側に入出力用のコネクタ端子部12hを配した入出力ユニット12であっても、ケースの肉厚を著しく薄くすることなく、コネクタ端子12hを格納することができるため、例えばそのケース幅長(本図では左右方向の幅の長さ)を12mm以下とする薄型化を実現できる。
【0072】
さらに、侵入用凹部12eは、後方側侵入用凹部12erと前方側侵入用凹部12efとを接続する接続用凹部12emを備え、接続用凹部12emのケース左側面12slに対する角度θmは、後方側侵入用凹部12erのケース左側面12slに対する角度θrよりも大きく、直角(90°)よりも小さくなるように形成されている。
【0073】
また、一対の可動スライダー12aの爪部12atとケース背面12gとの隙間の寸法Gについては、後述する。
【0074】
ここで、破線で示した雌側端子部12fの外方側端部(本図では左側端部)は、少なくとも前方側侵入用凹部12efの底部よりも外方側(左側)に位置する関係になる。
【0075】
すなわち、侵入用凹部12eの最大深さdmaxは、隣接する他の入出力ユニット12の雄側端子部12bのケース右側面12srからの突出高さhよりも大きく、雌側端子部12fの外方側端部のケース左側面12slからの深さsは、隣接する他の入出力ユニット12の雄側端子部12bのケース右側面12srからの突出高さhよりも小さくなるような設定が好ましい。
【0076】
次に、図4(a)〜(c)を参照して、隣接する入出力ユニット12を取り付ける途中の段階を順次説明し、侵入用凹部12eの効果について述べる。
【0077】
図4(a)は、取り付け作業の初期の段階を示す図で、一方の入出力ユニット12を若干傾かせた状態(支持レールLの延在方向に対してケース両側面が直角に位置する状態よりも右側に倒した状態)において、隣接する他方の入出力ユニット12が進行している。
【0078】
ここで、進行方向に沿ってケース間の離間距離が漸次狭まっていくが、後方側侵入用凹部12erの方も深さが漸次大きくなっているため、進行させている方の入出力ユニット12のケース右側面12srから突出する雄側端子部12bと、傾けた方の入出力ユニット12のケース左側面12slとの間に相互に大きな干渉を生じることなく、取り付けが可能となることを示している。
【0079】
図4(b)は、取り付け作業の中間期の段階を示す図で、雄側端子部12bが接続用凹部12emの傾斜面に沿って進行している様子を示している。
【0080】
ここで、前述したように、接続用凹部12emのケース左側面12slに対する角度θmは、後方側侵入用凹部12erのケース左側面12slに対する角度θrよりも大きいため、押し込む際の摺接抵抗が急激に小さくなり作業者は触覚的に感知できる。
【0081】
したがって、作業者はこの部分を経過すると勢いよく押し込むことができるので、作業性が向上する。
【0082】
一方、隣接する入出力ユニット12を取り外す場合には、直角(90°)よりも小さな角度θmを有する接続用凹部12emによって、前方側侵入用凹部12efから後方側侵入用凹部12erへと滑らかに接続されているので、雄側端子部12bが接続用凹部12emに当接しても、スムーズに案内することができる。
【0083】
以上のように、薄型化、取り付け時または取り外し時のスムーズ性(隣接する入出力ユニットのケースとの非干渉性)及び作業者の感知性の全てを確保するためには、角度θrを1°〜10°の範囲で選択し、角度θmを50°〜70°の範囲で選択するのが好ましい。
【0084】
図4(c)は、取り付け作業の終期の段階を示す図で、前方側侵入用凹部12efの深さは、進行させている入出力ユニット12の雄側端子部12bのケース側面からの突出寸法よりも大きいため、一方の入出力ユニット12を予め若干傾かせた状態から元の状態(支持レールLの延在方向に対して両ケース側面が直角に位置する状態)に戻すことができ、その入出力ユニット12のケース左側面12slに、他方の入出力ユニット12のケース右側面12srを密着させて進行方向にスライドさせることができる。
【0085】
次に、図5を参照して、一対の可動スライダー12aの爪部12atとケース背面12gとの隙間の寸法Gについて説明する。
【0086】
本図で示したように、入出力ユニット12は、支持レールL(図1参照)に取り付けるための一対の可動スライダー12aを、ケース背面12gの上部(本図では左側)に有し、一対の可動スライダー12aの爪部12atとケース背面12gとの隙間の寸法Gは、支持レールLの張出片部L1の厚みの寸法t(図6参照)より大きく設定されている。
【0087】
加えて、隙間の寸法Gは、支持レールLに取り付けられた後の状態において、ケース背面12gが、支持レールLの延在方向に対して最大傾きθmax(図6参照)で2°以上、10°以下の傾きを生じるような寸法に設定されている。
【0088】
次に、図6を参照して隙間の寸法Gと前述した最大傾きθmaxとの関係を説明する。
【0089】
本図は、図3における断面図の前方側の一部のみを示した部分断面図であるが、水平方向(本図では左右方向)に延在する支持レールLの張出片部L1の上下端部を破線で示して、入出力ユニット12が最大に傾いた時の相対的な位置関係を模式的に示している。
【0090】
ここで、ケース背面12gの、支持レールLの延在方向に対する最大傾きθmaxについて説明する。
【0091】
まず、一対の可動スライダー12aの爪部12atとケース背面12gとの隙間の寸法Gと、張出片部L1の厚みの寸法tとから寸法差(G−t)を求める。
【0092】
次に、ケース背面端部P1と、爪部12atの遠方側端部P2との長さaを求める。
【0093】
そして、寸法差(G−t)と長さaとの比率((G−t)/a)から求められる逆正接(角度)が2°以上、10°以下となるように、隙間の寸法Gを設定するのが好ましい。
【0094】
つまり、入出力ユニット12を取り付けようとする外部の支持レールLが、例えばDINレールの場合であって、その張出片部L1の厚みの寸法tが1.0mmとするならば、少なくとも隙間の寸法Gは、1.0mmよりも大きく設定し、かつ、寸法差(G−t)と長さaとの比率((G−t)/a)から求まる逆正接(角度)が2°以上、10°以下の範囲で所望の角度となるようにその数値を設定すればよい。
【0095】
次に、図7(a)〜(c)を参照して、本実施の形態における侵入用凹部の変形例を説明する。
【0096】
図7(a)は、第1の変形例であって、入出力ユニット21の侵入用凹部21eは、取り付け時の進行方向に沿って、ケース左側面21slからの深さが漸次大きくなっている。
【0097】
図7(b)は、第2の変形例であって、入出力ユニット22の侵入用凹部22eは、第1侵入用凹部22er、第2侵入用凹部22em及び第3侵入用凹部22efと、それらを接続する接続用凹部22esとから構成されている。
【0098】
ここで、侵入用凹部22er、侵入用凹部22em、侵入用凹部22efは、それぞれケース左側面22slから一定の深さを有するが、取り付け時の進行方向に沿って、順次深さが大きくなっている。
【0099】
図7(c)は、第3の変形例であって、入出力ユニット23の侵入用凹部23eは、後方側侵入用凹部23erと前方側侵入用凹部23efとから構成されている。
【0100】
ここで、後方側侵入用凹部23erは、取り付け時の進行方向に沿って、加速度的(放物線的)にケース左側面23slからの深さが大きくなっている。
【0101】
そして、接続部を介することなくケース左側面23slから一定の深さの前方側侵入用凹部23efに接続されている。
【0102】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変形が可能であり、かつ、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的な手段を適宜組み合わせて得られるような実施の形態の変形例についても本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0103】
例えば、前述した実施の形態で説明した入出力ユニット12のケースや一対の可動スライダー12aの素材としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)、ABS(アクリロニトリンブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネイト)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)などのプラスティック素材が好ましいが、アルミニウム、マグネシウム、SUS(ステンレス鋼)などの金属素材やそれらを複合した素材であっても構わない。
【0104】
上記のように、本発明にかかる電子機器のケースは、さらなる薄型化を達成できるのと併せ、支持レールの延在方向において複数のケースが相互に隣接するように配置された電子機器であっても、隣接する他の電子機器を若干傾かせるだけよく、その取付位置を全く変動させることなくまたは殆ど変動させることなく、容易に交換ができる、簡素な構成の電子機器のケースとして有用である。
【符号の説明】
【0105】
10 計測制御用遠隔入出力装置
11 電源・通信ユニット
11a 可動スライダー
12 入出力ユニット
12a 可動スライダー
12at 爪部
12b 雄側端子部
12c スライドレール
12d 延出片
12e 侵入用凹部
12ef 前方側侵入用凹部
12em 接続用凹部
12er 後方側侵入用凹部
12f 雌側端子部
12g ケース背面
12h コネクタ端子部
12sl ケース左側面
12sr ケース右側面
21、22、23 入出力ユニット
21e、22e、23e 侵入用凹部
21sl、22sl、23sl ケース左側面
22er 第1侵入用凹部
22em 第2侵入用凹部
22ef 第3侵入用凹部
22es 接続用凹部
23ef 前方側侵入用凹部
23er 後方側侵入用凹部
a 長さ
h 突出高さ
s 深さ
t 張出片部の厚みの寸法
dmax 最大深さ
θr 後方側侵入用凹部のケース右側面に対する角度
θm 接続用凹部のケース右側面に対する角度
θmax 最大傾き
L 支持レール
L1 張出片部
G 隙間の寸法
P1 ケース背面端部
P2 爪部の遠方側端部
(G−t) 寸法差
((G−t)/a) 比率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ一方向に延在し、外方に張り出す張出片部を両側に有する外部の支持レールに、相互に隣接させて電子機器を取り付け可能とするための電子機器のケースであって、
前記支持レールの延在する方向側に位置する一方のケース側面には外方に突出する凸部が設けられ、他方のケース側面には隣接する他の電子機器の取り付け時の移動中または取り外し時の移動中において、隣接する前記他の電子機器の凸部が入り込む侵入用凹部が設けられ、かつ、その侵入用凹部の深さは、取り付け時の進行方向における後方側の深さが前方側の深さよりも小さいことを特徴とする、電子機器のケース。
【請求項2】
前記侵入用凹部は、前記取り付け時の進行方向に沿って深さが漸次大きくなる後方側侵入用凹部と、一定の深さを有する前方側侵入用凹部とを備え、前記後方側侵入用凹部は、前記前方側侵入用凹部よりも前記取り付け時の進行方向において後方側に位置することを特徴とする請求項1記載の、電子機器のケース。
【請求項3】
前記侵入用凹部は、前記後方側侵入用凹部と前記前方側侵入用凹部とを接続する接続用凹部を備え、その接続用凹部の前記他方のケース側面に対する角度は、前記後方側侵入用凹部の前記他方のケース側面に対する角度よりも大きく、直角よりも小さいこと特徴とする請求項2記載の、電子機器のケース。
【請求項4】
前記侵入用凹部は、前記外部の支持レールへの取り付け後において、隣接する前記他の電子機器の凸部が対向する部分の位置よりも前記取り付け時の進行方向において後方側に形成されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の、電子機器のケース。
【請求項5】
前記侵入用凹部の前記取り付け時の進行方向の延長上には、前記外部の支持レールへの取り付け後において、隣接する前記他の電子機器の凸部を構成する雄側端子部と当接する雌側端子部が設けられ、その雌側端子部は前記雄側端子部と通電可能であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の、電子機器のケース。
【請求項6】
前記侵入用凹部の最大深さは、隣接する前記他の電子機器の凸部の突出高さよりも大きく、前記雌側端子部の外方側端部の深さは、前記他の電子機器の凸部の突出高さよりも小さいことを特徴とする請求項5記載の、電子機器のケース。
【請求項7】
ケース背面の上部には、前記外部の支持レールに取り付けられる一対の可動スライダーが設けられ、前記一対の可動スライダーの爪部と前記ケース背面との隙間の寸法は、前記外部の支持レールの張出片部の厚みの寸法より大きく設定され、かつ、前記外部の支持レールに取り付けられた後の状態において、前記ケース背面が、前記外部の支持レールの延在方向に対して最大傾きで2°以上、10°以下の傾きを生じるような寸法であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載の、電子機器のケース。
【請求項8】
隣接する前記他の電子機器に設けられた延出片に対して、取り付け時または取り外し時において進退方向にスライドするように、前記進退方向に延びるスライドレールが設けられ、そのスライドレールは、隣接する前記他の電子機器の凸部が前記侵入用凹部内であって前記前方側侵入用凹部を除く部分に入り込むような位置関係にある場合、前記延出片を規制しないような、前記進退方向における長さで形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の、電子機器のケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−182412(P2012−182412A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63189(P2011−63189)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(390001166)株式会社エム・システム技研 (25)
【Fターム(参考)】