説明

電子機器の基板

【課題】同一基板上に形成される絶縁すべき回路間の信号の伝送を光ファイバーで行なう場合に、部品配置禁止領域を、コストを上昇させることなく少なくする。
【解決手段】絶縁すべき第1回路と第2回路とが形成された電子機器の基板であって、第1回路と第2回路との間で信号を伝送する光ファイバーを備え、光ファイバーは、必要とされる沿面距離以上の長さを有し、第1回路の部品配置領域と第2回路の部品配置領域との対向する辺の距離は、必要とされる空間距離以上かつ光ファイバーについて必要とされる沿面距離未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の基板に関し、特に、形成される絶縁すべき回路間の信号の伝送を光ファイバー等の光伝送路で行なう電子機器の基板に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧入力を行なう測定装置等の電子機器では、同一基板上に形成された異なる回路間で電気的な絶縁の確保を要求される場合がある。例えば、高電圧が入力される入力部のアナログ回路と測定部のディジタル回路とが、測定装置内において同一基板上に形成されるときに、信号をやり取りするそれぞれの回路は絶縁する必要がある。
【0003】
従来、絶縁された回路同士で信号をやり取りする場合、フォトカプラや絶縁トランスが用いられていたが、近年では、高速で大量の信号を伝送可能な光ファイバー等の光伝送路を用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−12855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同一基板上の異なる回路間で電気的絶縁を達成するためには、安全上定められた空間距離および沿面距離の双方を確保する必要がある。ここで、空間距離は、2つの導電性部分間の空間を通る最短距離であり、沿面距離は、2つの導電性部分間の絶縁物の表面に沿った最短距離である。
【0006】
例えば、安全性規格IEC(International Electrotechnical Commission)6010・CATIIで強化絶縁を取る場合、1000Vの例であれば、空間距離として10.5mmを確保しなければならない。また、沿面距離は、絶縁物のCTI(Comparative Tracking Index)が、CTI≧600を満たす場合は、空間距離と同一の10.5mmを確保し、600>CTI≧100の場合には、約2倍の20mmを確保しなければならない。
【0007】
発光装置と受光装置とに接続される光ファイバーは2つの導電性部分間を連結する絶縁物であるため、沿面距離に影響を与える。一般に、基板はCTI≧600を満たしているが、光ファイバーは、600>CTI≧100であるため、光ファイバーはより長い沿面距離が要求される。
【0008】
このため、図4に示すように、VCSEL等の発光装置211を含んだ第1回路とフォトダイオード等の受光装置221を含んだ第2回路とを同一の基板200上に配置する場合、第1回路の部品配置可能領域210と第2回路の部品配置可能領域220とは、空間距離分の間隔に加え、光ファイバー200に沿った距離である沿面距離を確保しなければならないため、円弧状の領域が欠けた形状となる。
【0009】
すなわち、空間距離分の幅を持つ領域と光ファイバー200の接続端付近の沿面距離を確保するための領域とを合わせた領域が部品配置禁止領域240となり、絶縁に関する安全規格上、この領域に部品を配置することはできない。なお、部品には配線部材も含まれる。
【0010】
基板200上の部品配置禁止領域240を少なくすることができれば、基板200のサイズを小さくしたり、回路レイアウトの自由度を増やすこと等ができるため、部品配置禁止領域240は小さい方が望ましい。このために、CTIの大きな光ファイバーを用いることも考えられるが、CTIの大きな光ファイバーは高価であり、電子機器のコストが上昇する。
【0011】
そこで本発明は、同一基板上に形成される絶縁すべき回路間の信号の伝送を光伝送路で行なう場合に、部品配置禁止領域を、コストを上昇させることなく少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の絶縁すべき第1回路と第2回路とが形成された電子機器の基板は、前記第1回路と前記第2回路との間で信号を伝送する光伝送路を備え、前記光伝送路は、必要とされる沿面距離以上の長さを有し、前記第1回路の部品配置領域と前記第2回路の部品配置領域との対向する辺の距離は、必要とされる空間距離以上かつ前記光伝送路について必要とされる沿面距離未満であることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記光伝送路は、湾曲した状態で前記第1回路内の部品および前記第2回路の部品に接続されることができる。
【0014】
あるいは、前記光伝送路は、前記第1回路の部品配置領域と前記第2回路の部品配置領域との対向する辺に対して斜め方向の状態で前記第1回路内の部品および前記第2回路の部品に接続されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同一基板上に形成される絶縁すべき回路間の信号の伝送を光伝送路で行なう場合に、部品配置禁止領域を、コストを上昇させることなく少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る電子機器の基板の第1実施例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る電子機器の基板の第2実施例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る電子機器の基板の第3実施例を示す図である。
【図4】電子機器の基板配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電子機器の基板の第1実施例を示す図である。本例において、基板100上に形成される第1回路と第2回路とは絶縁され、第1回路と第2回路との信号の伝送は光ファイバー130を介して行なわれる。このため、第1回路には、VCSEL等の発光装置111が配置され、第2回路には、フォトダイオード等の受光装置121が配置される。そして、光ファイバー130の一端は発光装置111に接続され、他端は受光装置121に接続される。
【0018】
光ファイバー130の長さは、安全規格上要求される沿面距離以上とする。例えば、光ファイバー130のCTIを600>CTI≧100とすると、安全性規格IEC6010・CATIIで強化絶縁を取る場合、1000Vの例であれば、20mm以上の長さとする。
【0019】
本図に示した第1実施例では、発光装置111と受光装置121との距離を安全規格上要求される空間距離以上かつ安全規格上要求される沿面距離未満とし、光ファイバー130を湾曲させて配置する。
【0020】
このような配置とすることで、発光装置111を含む第1回路と受光装置121を含む第2回路との距離が規定の空間距離であっても、光ファイバー130について要求される沿面距離を満たすことができる。このため、発光装置111と受光装置121との間の空間距離幅の領域のみが部品配置禁止領域140となり、第1回路部品配置可能領域110と第2回路部品配置可能領域120とが、図4に示した配置例よりも広がることになる。
【0021】
第1実施例の基板100では、部品配置禁止領域140が小さくなることにより、基板100のサイズを小さくしたり、回路レイアウトの自由度を増やすこと等ができるようになる。このとき、従来と同等のCTIの光ファイバー130を用いることができるため、コスト上昇を招くことはない。
【0022】
図2は、本実施形態に係る電子機器の基板の第2実施例を示す図である。第2実施例においても、基板100上に形成される第1回路と第2回路とは絶縁され、第1回路と第2回路との信号の伝送は、安全規格上要求される沿面距離以上の長さの光ファイバー130を介して行なわれる。第1回路には、発光装置111が配置され、第2回路には、受光装置121が配置される。そして、光ファイバー130の一端は発光装置111に接続され、他端は受光装置121に接続される。
【0023】
本図に示した第2実施例では、基板100上に、第1回路と第2回路とを安全規格上要求される空間距離以上かつ安全規格上要求される沿面距離未満の間隔を開けて形成する。そして、発光装置111と受光装置121とを安全規格上要求される沿面距離以上離し、光ファイバー130が、第1回路の領域と第2回路の領域との対向する辺に対して斜め方向の状態となるように配置する。
【0024】
このような配置とすることで、第1回路と第2回路との距離が規定の空間距離であっても、光ファイバー130について要求される沿面距離を満たすことができる。このため、発光装置111と受光装置121との間の空間距離幅の領域のみが部品配置禁止領域140となり、第1回路部品配置可能領域110と第2回路部品配置可能領域120とが、図4に示した配置例よりも広がることになる。
【0025】
第2実施例の基板100では、部品配置禁止領域140が小さくなることにより、基板100のサイズを小さくしたり、回路レイアウトの自由度を増やすこと等ができるようになる。このとき、従来と同等のCTIの光ファイバー130を用いることができるため、コスト上昇を招くことはない。
【0026】
図3は、本実施形態に係る電子機器の基板の第3実施例を示す図である。本図は、基板100の側面図である。第3実施例においても、基板100上に形成される第1回路と第2回路とは絶縁され、第1回路と第2回路との信号の伝送は、安全規格上要求される沿面距離以上の長さの光ファイバー130を介して行なわれる。第1回路には、発光装置111が配置され、第2回路には、受光装置121が配置される。そして、光ファイバー130の一端は発光装置111に接続され、他端は受光装置121に接続される。
【0027】
第3実施例では、第1実施例と同様に、発光装置111と受光装置121との距離を安全規格上要求される空間距離以上かつ安全規格上要求される沿面距離未満とし、光ファイバー130を湾曲させて配置する。このとき、光ファイバー130を、図3に示すように基板100に対して上方向に湾曲させる。
【0028】
このような配置とすることで、発光装置111と受光装置121との距離が規定の空間距離であっても、光ファイバー130について要求される沿面距離を満たすことができる。このため、発光装置111と受光装置121との間の空間距離幅の領域のみが部品配置禁止領域140となり、第1回路部品配置可能領域110と第2回路部品配置可能領域120とが、図4に示した配置例よりも広がることになる。
【0029】
第3実施例の基板100では、部品配置禁止領域140が小さくなることにより、基板100のサイズを小さくしたり、回路レイアウトの自由度を増やすこと等ができるようになる。このとき、従来と同等のCTIの光ファイバー130を用いることができるため、コスト上昇を招くことはない。
【0030】
なお、上述の実施例において、光ファイバーに代えて、シート状または板状の光導波路を用いてもよく、本発明は、光で信号を伝送する光伝送路全般に適用することができる。また、同一基板上に形成する絶縁すべき回路は2つに限られず、3つ以上であってもよい。この場合もそれぞれの回路間の信号伝送に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
100…基板
110…第1回路部品配置可能領域
111…発光装置
120…第2回路部品配置可能領域
121…受光装置
130…光ファイバー
140…部品配置禁止領域
200…基板
200…光ファイバー
210…第1部品配置可能領域
211…発光装置
220…第2部品配置可能領域
221…受光装置
240…部品配置禁止領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁すべき第1回路と第2回路とが形成された電子機器の基板であって、
前記第1回路と前記第2回路との間で信号を伝送する光伝送路を備え、
前記光伝送路は、必要とされる沿面距離以上の長さを有し、
前記第1回路の部品配置領域と前記第2回路の部品配置領域との対向する辺の距離は、必要とされる空間距離以上かつ前記光伝送路について必要とされる沿面距離未満であることを特徴とする電子機器の基板。
【請求項2】
前記光伝送路は、湾曲した状態で前記第1回路内の部品および前記第2回路の部品に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の基板。
【請求項3】
前記光伝送路は、前記第1回路の部品配置領域と前記第2回路の部品配置領域との対向する辺に対して斜め方向の状態で前記第1回路内の部品および前記第2回路の部品に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89810(P2013−89810A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229846(P2011−229846)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【Fターム(参考)】