説明

電子機器の製造方法

【課題】機器の肥大化を招く事無く、回動検知手段を安定して固定することができる電子機器の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、本体部に対して開閉可能な開閉部を回動可能に支持するヒンジユニットを備える電子機器の製造方法であって、前記開閉部の回動位置を検知する回動検知手段を固定するための両面テープを、片面に耐油性のある剥離紙を残した状態で前記ヒンジユニットに貼付する工程と、前記両面テープを前記ヒンジユニットに添付後、前記ヒンジユニットと潤滑油が塗布された回転軸が用いられたヒンジユニットを組み立てる工程と、前記ヒンジユニットの組立後に、前記両面テープから前記剥離紙を剥離し、前記回動検知手段を貼付、固定する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体部に対して開閉可能な開閉部を設けた電子機器が知られている。
【0003】
このような電子機器では、開閉部を回動可能に支持するヒンジユニットに回動検知手段を設け、開閉の状態を検知する。そして、開閉部に設けた表示パネルにおける画像のON/OFFの切り替えや画像の表示の向きの切り替え、タッチパネル機能の可否を制御する。
【0004】
特許文献1では、回動位置検出手段を備えることで検知手段の状態に応じてタッチパネル操作の可否を制御する記録装置が開示されている。
【0005】
一方、回動部に使われる機械部品には、一般的に潤滑油が塗布されている。回動検知手段は機器の小型化を考えるとヒンジ内部に収める事が望ましいが、回動部材近傍に検出スイッチを配置する場合、この潤滑油の染み出しにより接着剤や両面テープによる固定は困難であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特登録4264574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された従来技術では、回動検知手段の固定方法に関して考慮されていない。このため、安定した固定を得るためには、保持部材や固定ビスを用いて固定を行うか、ヒンジユニットの外部に回動検知手段を設ける必要があり、機器の小型化の妨げとなる。
【0008】
回動検知手段の取り付け前に油分の拭き取り作業を行い、接着を行う方法も考えられるが、小型かつ複雑化したヒンジユニット内部から完全に油分を拭き取る作業は困難であり、安定した固定が望めない上、製造効率の観点からも好ましくない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、機器の肥大化を招く事無く、回動検知手段を安定して固定することができる電子機器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子機器の製造方法は、本体部に対して開閉可能な開閉部を回動可能に支持するヒンジユニットを備える電子機器の製造方法であって、前記開閉部の回動位置を検知する回動検知手段を固定するための両面テープを、片面に耐油性のある剥離紙を残した状態で前記ヒンジユニットに貼付する工程と、前記両面テープを前記ヒンジユニットに添付後、前記ヒンジユニットと潤滑油が塗布された回転軸が用いられたヒンジユニットを組み立てる工程と、前記ヒンジユニットの組立後に、前記両面テープから前記剥離紙を剥離し、前記回動検知手段を貼付、固定する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機器の肥大化を招く事無く、回動検知手段を安定して固定することができる電子機器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るデジタルカメラの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係るヒンジユニットの分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係るヒンジユニットの組立を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係るヒンジ外装カバーを内面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明を適用したヒンジユニットを備えた電子機器は、例えば図1に示すデジタル一眼レフカメラである。図1(a)は、本発明の実施形態に係わるデジタル一眼レフカメラ1を前方(被写体側)からみた斜視図を示す。
【0015】
図1(b)は、本発明の実施形態に係わるデジタル一眼レフカメラ1を後方(撮影者側)からみた斜視図を示す。
【0016】
デジタル一眼レフカメラ1では、ヒンジユニット3によって、デジタル一眼レフカメラ1の本体部に対して開閉可能な開閉部2が回動可能に支持されている。
【0017】
本実施例において開閉部2は、撮影画像等を確認可能な画像表示部であり、例えば3.0インチ程度のTFT液晶パネルなどから構成されている。また、撮影画像等が表示される表示面2aと背面2bを有している。
【0018】
図1(c)は本実施例のデジタル一眼レフカメラ1の開閉部2を開いた状態を後方(撮影者側)から見た斜視図である。
【0019】
第1の回転中心軸Aにより回転し、開閉部2が開いていて、且つ表示面2aが後方(撮影者側)を向いている状態である。この状態で、さらに第2の回転中心軸Bにより回転をさせることで、撮影者はより自由なアングルにて撮影を行うことが出来る。このとき、第1及び第2の回転中心軸A、Bは直交している。
【0020】
図2は、ヒンジユニット3の分解斜視図である。
【0021】
301aおよび301bはデジタル一眼レフカメラ1への取り付け部で、ここでデジタル一眼レフカメラ1に不図示のビスで取り付けられる。開閉ストッパ302aは、開閉支軸302と一体に形成され、ベース部材312に形成された突起312cに当接させることで、開閉支軸302、303による開閉部2の開きを180度に規制する。
【0022】
第1の回動検知手段305は、検知スイッチと基板から成り、検知スイッチが開閉ストッパ302aにより動作する事で、開閉方向の状態(回動位置)を検知する。
【0023】
可動カム304は、開閉支軸303の軸方向に移動自在に挿入される。コイルバネ307が、可動カム304をベース部材312aに常時付勢する。表示取り付け部308に開閉部2が取り付けられる。
【0024】
回転軸308aは、表示取り付け部308と一体に成形され、開閉部2をデジタル一眼レフカメラ1に対して、図1(c)の回転中心軸Bを回転中心として回動させる際の回転軸となる。板バネ310が、回転軸308aに所定のトルクを与える。
【0025】
回転ストッパ311を、ベース部材312に形成された突起(不図示)に当接させることで、回転軸308aを中心とする開閉部2の回転を一定範囲に規制する。
【0026】
第2の回動検知手段306は、検知スイッチと基板から成り、検知スイッチがカム部材309により動作する事で、回転方向の状態(回動位置)を検知する。
【0027】
開閉支軸302、303はそれぞれの一端でベース部材312に固定される。ベース部材312は、カム部材309を回動自在に支持する。外装カバー313、314は、ビス315によりベース部材312に固定され、ヒンジユニット3を覆う。
【0028】
ベース部材312は、312aと312bから構成され、これらはビス316により結合される。
【0029】
尚、回転軸308a、開閉支軸302は、中空軸であり、デジタル一眼レフカメラ1と開閉部2の間を電気的に接続するための配線が挿通可能である。
【0030】
第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306は、両面テープ317によってベース部材312に貼付、固定される。
【0031】
第1および第2の回動検知手段305、306の検知信号は、それぞれの基板部にはんだ付けした極細線の配線(不図示)を開閉部2からの信号の配線と共に開閉支軸302に挿通し、電気的に接続する事によって、デジタル一眼レフカメラ1へ伝達される。
【0032】
伝達された検知信号の組み合わせによって、開閉部2に設けたTFT液晶パネルに表示される画像のON/OFFの切り替えや画像の表示の向き、タッチパネル機能の可否等の制御が可能となる。
【0033】
図3(a)〜(c)は、ヒンジユニット3の組立を時系列に示した斜視図であり、以下に、これらの図を用いて回動検知手段の固定方法について説明する。
【0034】
まず、単部品状態でベース部材312bの洗浄を行う。次に図3(a)に示すように両面テープ317をベース部材312bに設けたボス(凸部)の位置を基準にして貼付する。この時、両面テープ317の片面のみベース部材312bに添付し、貼付面と逆側の剥離紙は剥離せず残しておく。
【0035】
尚、剥離紙には、PET基材等の油分が染み込み難い耐油性のある素材を用いる。剥離紙のサイズは、剥離作業の容易性のために両面テープより一回り大きく、かつ、組立作業時の不意の脱落を避けるためにベース部材312bからはみ出さないサイズとする事が望ましい。
【0036】
両面テープ317をヒンジユニット3に添付後、図2の分解斜視図で示したヒンジユニット構成部品のうち、第1の回動検知手段305、第2の回動検知手段306及び、外装カバー313、314を除く部品を組み立て、ヒンジユニットを完成させる。この過程で、開閉支軸302、303、回転軸308a等の回動部には、潤滑油が塗布される。
【0037】
次に、図3(b)に示すように、第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306をベース部材312bに設けたボスを位置決めに用いて貼付する。この時、本実施例では、基板サイズ小型化のため、基板上の位置決め穴の一方は、検知スイッチに隠れる部分に設け、かつ他方の位置決め穴は、位置決め精度を高める目的で勘合長を長く確保できる基板端に配置している。
【0038】
両面テープ317の剥離紙は貼付作業の直前まで残しておく。
【0039】
この時、両面テープのサイズは、第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306の基板サイズよりも一回り小さくオフセットしたサイズとする事で、組立後にテープ端面から油分が染み込む事によるテープの膨潤のリスクを軽減できる。
【0040】
また、本実施例では、第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306をベース部材312bから一部はみ出るサイズとする事で、組みバラシ性を向上させている。
【0041】
第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306貼付、固定後、図3(c)に示すように、外装カバー313、314でヒンジユニットを覆い、ビス315によりベース部材312に固定する。この時、外装カバーと第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306の一部を接触させて更に安定した固定を行う事も可能である。図4は、図3(c)で示したCの方向から外装カバー314の内面をみた平面図である。外装カバー314内面には、314aに示すように凸形状が形成されており、この凸形状が第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306にそれぞれ接触・固定する構成となっている。本実施例では、同様の凸形状を外装カバー313の内面にも設けている。
【0042】
以上の手順で第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306を貼付、固定する事によって、貼付のタイミングまで両面テープ剥離紙がマスキング効果を発揮し、油分による影響を回避した状態でデジタル一眼レフカメラ1を製造する事が可能である。上記手段を用いれば保持部材や固定ビスを使用せずに第1の回動検知手段305および第2の回動検知手段306の安定した固定が可能であるので、ヒンジユニット3の小型化を行う事ができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 デジタル一眼レフカメラ1
2 開閉部
3 ヒンジユニット
305 第1の回動検知手段
306 第2の回動検知手段
317 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に対して開閉可能な開閉部を回動可能に支持するヒンジユニットを備える電子機器の製造方法であって、
前記開閉部の回動位置を検知する回動検知手段を固定するための両面テープを、片面に耐油性のある剥離紙を残した状態で前記ヒンジユニットに貼付する工程と、
前記両面テープを前記ヒンジユニットに添付後、前記ヒンジユニットと潤滑油が塗布された回転軸が用いられたヒンジユニットを組み立てる工程と、
前記ヒンジユニットの組立後に、前記両面テープから前記剥離紙を剥離し、前記回動検知手段を貼付、固定する工程と、を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項2】
前記開閉部が、画像表示部である事を特徴とする請求項1に記載の電子機器の製造方法。
【請求項3】
前記回動検知手段は、第1の回動検知手段及び第2の回動検知手段を有し、
前記第1の回動検知手段は、第1の回転中心軸を中心とした前記開閉部の開閉方向の回動位置を検知する手段であり、
前記第2の回動検知手段は、前記第1の回転中心軸と直交する第2の回転中心軸を中心とした前記開閉部の回転方向の回動位置を検知する手段であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の製造方法。
【請求項4】
前記ヒンジユニットのベース部材に凸部が設けられ、
前記両面テープは、前記凸部の位置を基準として前記ベース部材に貼付されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159760(P2012−159760A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20428(P2011−20428)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】