説明

電子機器ケース及び電子機器

【課題】2つのケース部材からなる電子機器ケースにおいて、ケースの見栄えを損なうことなく、電子機器の点検・修理の際にケースを簡単に開くことができるようにする。
【解決手段】ケースを2分割する第1ケース部材10と第2ケース部材20とからなる電子機器ケースにおいて、第2ケース部材20が第1ケース部材10の開口部を覆う閉塞位置にあるときに、各ケース部材10、20において互いに対向する壁面には、それぞれ、互いに係合して各ケース部材10、20同士を連結する一対の係合部16、26が突設される。また、各ケース部材10、20の壁面には、支柱18及び被固定部28がそれぞれ突設されており、ケース部材同士の固定は支柱18にネジ50を挿入して被固定部28のネジ孔と螺合することにより行うようになっている。この結果、ケースを開く作業は、ネジ50を外して、ケースをスライドさせることで、簡単に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を構成する各種電子部品を収納する電子機器ケース及びこのケースを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等、電子機器を構成する各種電子部品を収納する電子機器ケースは、通常、電子部品を収納するための開口部を有する第1ケース部材と、この第1ケース部材の開口部を覆って内部の電子部品を保護する第2ケース部材との2つのケース部材にて構成されている。そして、電子機器ケースに電子部品を収納して電子機器を構成する際、2つのケース部材は、内部の電子部品を保護し、また使用者の安全性を確保するために、互いにしっかりと固定される。
【0003】
そして、従来、このケース部材同士の固定をワンタッチで行うことができるようにするために、第1ケース部材の周壁の複数箇所に係止孔を穿設し、第2ケース部材には、第1ケース部材の開口部を覆った際にこれら各係止孔に挿入されてケース部材同士を結合する複数の係止片を突設した電子機器ケースが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2000−165056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電子機器ケースは、第1ケース部材と第2ケース部材とを結合してケース内部を密閉する際には、ねじ等の固定部材を使用せず、工具も必要としないので、電子機器の組立作業を極めて簡単に行うことができるが、電子機器の点検・修理のために、ケースを開く際には、第1ケース部材の周壁に設けられた各係止孔から係止片を抜き出す必要があり、その作業が面倒になるという問題があった。
【0005】
また、この種の電子機器ケースでは、係止孔が外から見えると、見栄えが悪いことから、見栄えをよくするために、第1ケース部材に形成された係止孔を第2ケース部材で覆うようにしたものも知られているが、このようにすると、ケースを開くのがより難しくなり、電子機器の点検・修理の際にケースに傷を付けてしまうことがあった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、2つのケース部材からなる電子機器ケースにおいて、ケースの見栄えを損なうことなく、電子機器の点検・修理の際にケースを簡単に開くことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、
電子機器を構成する各種電子部品をケース内に収納するための開口部を有する第1ケース部材と、該第1ケース部材の開口部を覆い、ケース内に収納された電子部品を保護する第2ケース部材と、を備えた電子機器ケースであって、
前記第2ケース部材が前記開口部を覆う閉塞位置にあるとき前記各ケース部材において互いに対向する壁面には、それぞれ、前記第2ケース部材が前記閉塞位置にあるときに互いに係合して前記ケース部材同士を連結する一対の係合部が突設されており、
前記各ケース部材の壁面において、前記係合部の突設位置から離れた位置には、固定部材を挿入するための挿入孔、及び、前記第2ケース部が前記閉塞位置にあるときに前記挿入孔に挿入された固定部材を接続可能な被固定部、がそれぞれ形成されており、
しかも、前記係合部の一方には、当該係合部の前記壁面からの突出方向と直交する方向に穿設された係止孔が設けられ、他方の係合部には、前記第2ケース部材が前記閉塞位置にあるときに前記係止孔に挿入されて、前記ケース部材同士を連結する係止突起が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子機器ケースにおいて、前記一対の係合部は、前記係止孔に対する前記係止突起の挿入方向が同一方向となるよう、前記各ケース部材の壁面にそれぞれ複数設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、電子機器に関するものであり、請求項1又は請求項2に記載の電子機器ケースに、電子機器を構成する各種電子部品を収納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の電子機器ケースにおいては、第2ケース部材が第1ケース部材の開口部を覆う閉塞位置にあるときに各ケース部材において互いに対向する壁面に、それぞれ、第2ケース部が閉塞位置にあるときに互いに係合してケース部材同士を連結する一対の係合部が突設されているため、第1ケース部材に電子部品を収納して、その開口部を第2ケース部材で覆えば、2つのケース部材同士を連結することができる。
【0011】
また、各ケース部材の壁面において、係合部の突設位置から離れた位置には、固定部材を挿入するための挿入孔、及び、第2ケース部が閉塞位置にあるときにこの挿入孔に挿入された固定部材を接続可能な被固定部がそれぞれ形成されているため、第1ケース部材に電子部品を収納して、その開口部を第2ケース部材で覆った際には、挿入孔から固定部材を挿入して被固定部に接続することで、2つのケース部材同士をしっかりと固定することができる。
【0012】
また、各ケース部材の壁面に突設される一対の係合部の一方には、ケース部材の壁面からの突出方向と直交する方向に穿設された係止孔が設けられており、他方の係合部には、第2ケース部材が閉塞位置にあるときにこの係止孔に挿入される係止突起が設けられている。
【0013】
このため、本発明の電子機器ケースにおいて、2つのケース部材同士を固定部材によりしっかりと固定した状態で、内部の電子部品の点検・修理等のために、ケースを開く際には、被固定部から固定部材を外し、一方の係合部に突設された係止突起が係止孔から外れるように、第1ケース部材に対して第2ケース部材を一方向にスライドさせればよい。
【0014】
従って、本発明の電子機器ケースは、2つのケース部材同士の結合には、ネジ等の固定部材を使用することになるが、その固定部材は一つでよく、しかも、ケースを開く際には、固定部材を外してケース部材同士を相対的に一方向にスライドさせればよいため、上述した従来ケースに比べて、ケースを開く際の作業が極めて簡単になる。
【0015】
また、ケース部材同士の結合は、従来ケースのようにワンタッチで行うことはできないものの、固定部材1個でケース部材同士を簡単に結合できることから、固定部材として複数個のネジを使用する場合に比べて、電子機器の組み立てに要する時間を充分短縮することができる。
【0016】
なお、上記一対の係合部は、各ケース部材において互いに対向する壁面の1箇所だけに設けてもよいが、ケース部材同士をより確実に連結するには、各ケース部材の壁面にそれぞれ複数設けることが望ましい。
【0017】
そして、この場合、ケースを開く作業を簡単に行うことができるようにするためには、請求項2に記載のように、各係合部において、係止孔に対する係止突起の挿入方向が同一方向となるようにすればよい。つまり、このようにすれば、ケースを開く際に、ケース部材同士を相対的に一方向にスライドさせればよく、その作業を簡単に行うことができる。
【0018】
次に、請求項3に記載の電子機器においては、当該電子機器を構成する電子部品を収納するケースに、本発明の電子機器ケースが使用されることから、ケースを容易に開くことができ、点検・修理の際の作業性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明が適用された実施形態の電子機器の外観図であり、図2はその電子機器の内部を表す平面図であり、図3は電子機器のケースを表す斜視図である。
【0020】
本実施形態の電子機器2は、テレビ放送の受信信号を増幅するブースタに、受信信号の伝送路(同軸ケーブル)を介して電源供給を行うための電源装置であり、外観が略対称となるように合成樹脂にて形成された一対のケース部材10、20と、この2つのケース部材10、20にて構成される電子機器ケース内に収納される回路基板30とから構成されている。
【0021】
図1、図3から明らかなように、ケース部材10、20は、丸みをおびた扁平な箱状体を、開口部が最も広くなるようにその中心部分で二つに分割した形状を有し、その開口部同士を重ねることで、箱状のケース(電子機器ケース)を形成している。
【0022】
なお、ケース部材10、20をこのように形成しているのは、図1に示すように、支持台4を利用して、電子機器2を縦置きに配置した際の見栄えをよくするためである。但し、本実施形態の電子機器2は横置きにしても使用することができる。
【0023】
次に、回路基板30は、一対のケース部材10、20の一方、具体的には、図1において向かって左側の第1ケース部材10に、基板固定用の係止爪12を介して積み付けられており、他方のケース部材(第2ケース部材)20は、第1ケース部材10に回路基板や給電用の電源線32を装着した後、その開口部を覆うように第1ケース部材10に固定される。
【0024】
また、回路基板30には、電源回路の動作を表示するパイロットランプ40が実装されており、第2ケース部材20の前方側壁には、このパイロットランプ40からの光をケース外部に出射する透孔22が形成されている。
【0025】
また、回路基板30には、電源回路に加えて、アンテナ側及びテレビ側の同軸ケーブルを接続するためのF型コネクタ34、36が装着された高周波モジュール38が実装されており、この高周波モジュール38を介して、受信信号をアンテナ側からテレビ側に伝送する。このため、各ケース部材10、20の後方側壁には、電源線32やF型コネクタ34、36を挿通するための凹部14、24が形成されている。
【0026】
なお、ケース部材10、20の後方とは、ケース部材20において、パイロットランプ40からの光をケース外部に出射する透孔22が設けられた側壁とは反対側のことである。そして、以下の説明では、電子機器ケース全体でも透孔22が設けられた側を前方、これとは反対側を後方といい、この前後方向とは直交する方向のうち、図1に示すように、電子機器2を縦置きにした際に、上部に位置する側壁側を上方、下部に位置する側壁側を下方という。
【0027】
次に、第2ケース部材20が第1ケース部材10の開口部を覆う閉塞位置にあるときに、各ケース部材10、20において互いに対向する壁面には、それぞれ、第2ケース部材20が閉塞位置にあるとき(つまり電子機器ケースを組み立てた際)に互いに係合して各ケース部材10、20同士を連結する一対の係合部16、26が2組突設されている。
【0028】
この2組の係合部16、26のうち、第1ケース部材10に設けられる2組の係合部16は、第1ケース部材10の上部側壁付近に、板面が上下方向を向くように突設された板状部材からなり、その板面には、矩形の係止孔16aが穿設されている。
【0029】
また、第2ケース部材20に設けられる2組の係合部26には、電子機器ケースを組み立てた際に、第1ケース部材10に設けられた2組の係合部16の係止孔16aに対して、それぞれ同一方向から挿入できるように突設された係止突起26aが設けられている。
【0030】
なお、本実施形態では、係止突起26aは、係合部16の係止孔16aに対して、電子機器ケースの上方から下方に向けて挿入できるように突設されているが、この方向とは逆方向に突設されていてもよい。
【0031】
また次に、第2ケース部材20が第1ケース部材10の開口部を覆う閉塞位置にあるときに、各ケース部材10、20において互いに対向する壁面において、上記各係合部16、26の突設位置から離れた位置(具体的には電子機器ケースの下方側壁近傍)には、ケース部材10、20毎に、固定部材としてのネジ50(図4参照)を挿入するための挿入孔18aが穿設された支柱18、及び、この支柱18の挿入孔18aから挿入されたネジ50を螺合可能なネジ孔28aが穿設された被固定部28、がそれぞれ突設されている。
【0032】
なお、本実施形態では、支柱18は、第1ケース部材10の壁面に突設され、被固定部28は、第2ケース部材20の壁面に突設されているが、これらの配置位置は逆でもよい。
【0033】
上記のように構成された本実施形態の電子機器2(ブースタの電源装置)においては、図4(a)に示すように、第1ケース部材10の開口部を覆うように、第1ケース部材10に第2ケース部材20を被せ、第1ケース部材10側の係合部16の係止孔16aに、第2ケース部材20側の係合部26の係止突起26aを係合させれば、各ケース部材10、20同士が連結される。
【0034】
また、この状態では、第1ケース部材10側の支柱に穿設された挿入孔18aと、第2ケース部材20側の被固定部28に穿設されたネジ孔28aとの位置が一致することから、挿入孔18aにネジ50を挿入して、ネジ孔28aに螺合することで、2つのケース部材10、20同士をしっかりと固定することができる。
【0035】
一方、本実施形態の電子機器2において、内部回路の点検・修理等のために、ケースを開く際には、図4(b)に示すように、ネジ50を外して、係合部26に突設された係止突起が係合部16に穿設された係止孔16aから外れるように、第1ケース部材10と第2ケース部材20とを一方向(図示矢印方向)にスライドさせればよい。
【0036】
従って、本実施形態の電子機器2は、ケース部材10、20同士を結合するのには1本のネジ50を使用することになるが、ケースを開く際には、このネジ50を外してケース部材10、20同士を相対的に一方向にスライドさせればよいため、ケースを開く際の作業が極めて簡単になる。
【0037】
また、ケース部材10、20同士の結合は、ワンタッチで行うことはできないものの、ネジ一本でケース部材10、20同士を簡単に結合できることから、複数のネジを使用する場合に比べて、電子機器2の組み立てに要する時間を短縮することができる。
【0038】
また更に、本実施形態の電子機器2は、外観上は、ネジ50を挿入するための一つの孔が見えることになるが、この孔は、支持台4を使って電子機器2を縦置きにすれば、支持台4に隠れ、電子機器2を横置きにするときには、孔を下向きにすることで隠すことができることから、電子機器2の見栄えが悪くなることはない。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、ネジ50を使ってケース部材10、20同士を結合するものとして説明したが、このための固定部材としては、例えば、先端が鉤状になっていて所定角度回転させることにより、被固定部材と結合可能なもの等、工具等を使って固定/解除できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態の電子機器の外観図である。
【図2】電子機器の内部を表す平面図である。
【図3】電子機器のケースを表す斜視図である。
【図4】ケースの組立/開放の手順を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0041】
2…電子機器、4…支持台、10…第1ケース部材、12…係止爪、14…凹部、16…係合部、16a…係止孔、18…支柱、18a…挿入孔、20…第2ケース部材、22…透孔、26…係合部、26a…係止突起、28…被固定部、28a…ネジ孔、30…回路基板、32…電源線、34…F型コネクタ、38…高周波モジュール、40…パイロットランプ、50…ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を構成する各種電子部品をケース内に収納するための開口部を有する第1ケース部材と、該第1ケース部材の開口部を覆い、ケース内に収納された電子部品を保護する第2ケース部材と、を備えた電子機器ケースであって、
前記第2ケース部材が前記開口部を覆う閉塞位置にあるとき前記各ケース部材において互いに対向する壁面には、それぞれ、前記第2ケース部材が前記閉塞位置にあるときに互いに係合して前記ケース部材同士を連結する一対の係合部が突設されており、
前記各ケース部材の壁面において、前記係合部の突設位置から離れた位置には、固定部材を挿入するための挿入孔、及び、前記第2ケース部が前記閉塞位置にあるときに前記挿入孔に挿入された固定部材を接続可能な被固定部、がそれぞれ形成されており、
しかも、前記係合部の一方には、当該係合部の前記壁面からの突出方向と直交する方向に穿設された係止孔が設けられ、他方の係合部には、前記第2ケース部材が前記閉塞位置にあるときに前記係止孔に挿入されて、前記ケース部材同士を連結する係止突起が設けられていることを特徴とする電子機器ケース。
【請求項2】
前記一対の係合部は、前記係止孔に対する前記係止突起の挿入方向が同一方向となるよう、前記各ケース部材の壁面にそれぞれ複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器ケース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子機器ケースに、電子機器を構成する各種電子部品を収納してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−91479(P2008−91479A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268517(P2006−268517)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】