説明

電子機器システム及びコントローラ

【課題】IEEE1394バスで接続された電子機器システムにおいて、コントローラからターゲット機器への電源状態問い合わせコマンド送信に伴うバス帯域の使用量を低減する。
【解決手段】電子機器システムは、IEEE1394バスを介してターゲット機器をAV/Cコマンドで電源制御するコントローラと、このコントローラにより電源制御されるターゲット機器とを含む。ターゲット機器は、自機の1394IF部とAVプロトコル部を可動させる補助電源部を有する。コントローラは、予めターゲット機器の主電源部をオン又はオフに移行させる電源状態移行時間を取得し、データベースに記憶する。2回目以降は、記憶した電源状態移行時間を主電源部の電源状態を問い合わせる間隔時間としてパワーステータスコマンドを送信する(S41,42)。これにより、コマンドの送信回数を削減でき、IEEE1394バスにおける帯域使用量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子機器をIEEE1394バスを用いてネットワークに繋げた電子機器システムに係わり、接続された電子機器をバスを介して他の機器から遠隔操作して電源の稼働、遮断状態を切り替える場合のバス帯域節約の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セットトップボックス(以下、STBという)や、デジタルテレビジョン、DVCR(Digital Video Cassette Recorder)、DVDレコーダ等のAV機器を含むデジタル電子機器をネットワークで相互に結ぶデジタルデータインターフェースとして、IEEE1394シリアルバス(IEEE Std 1394−1995、Standard for a High Performance Serial Bus、以下、IEEE1394という)インターフェースが普及してきている。このIEEE1394は、ネットワーク上に存在する複数のデジタル機器間でデジタルデータを交換したり、複数の電子機器が相互に制御し合うために使用できるシリアルバスである。
【0003】
このようなIEEE1394で接続された複数の電子機器において、1つの電子機器(機器Pという)により、同じIEEE1394上に存在する他機器(機器Qという)の電源操作を行うとき、例えば機器Pが機器Qの電源をONする場合には、AV/C Digital Interfase Command Set(以下、AV/Cコマンドという)のAV/Cパワーコントロールコマンドをpower_state=POWER ONとして機器Bへ送信する。そして、この送信後、通常、機器Qの電源がONになるまで、機器Pより定期的にAV/Cパワーステートコマンドを送信し続けて機器Qの電源状態を問い合わせることにより、機器Qの電源状態の移行を確認していた。しかしながら、この定期的なコマンド送信は、IEEE1394のバス帯域の使用量を増加させ、バス使用効率を低下させるという問題を生じていた。
【0004】
また、従来のIEEE1394を用いてAV機器を結ぶ電子機器システムにおいて、ソース情報を出力するソース出力機器と、ソース情報を入力する情報処理機器とをデータバスを介して接続することにより構築したシステムであって、情報処理機器がソース出力機器の電源状態がオフであることを検出すると、自機の電源もオフするように動作し、各電子機器がデータバス上で独立した存在であると認識されている場合であっても、電源を連動してコントロールすることを可能とした電子機器システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この従来技術では、ソース出力機器の電源状態がオフであるか否かを検出するために、このソース出力機器の電源状態がオフであることを検出するまで、一定時間ごとにソース出力機器と情報処理機器間でデータバスを介してコマンド授受を行うことが必要なため、頻繁にバス帯域を使用するのでバス帯域の使用量が増え、バスの使用効率が悪くなっていた。
【0005】
また、他の従来技術として、IEEE1394インターフェースポートを有する機器を接続する複数の通信ポートと、他の機器に電力供給の可能な複数の電源ポートと、シリアル信号バスラインからのAV/Cコマンドの受信と転送を行う送受信部と、バスから供給されるAV/Cコマンドにより送受信部と電源制御部を制御するコマンド制御部と、このコマンド制御部から指定された電源ポートに電源供給を行い各接続機器への電力供給のオン/オフを制御する電源制御部とを備え、一部の電子機器の電源がオフしている場合でも通信可能とする電源制御装置を導入した電子機器システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この従来技術は、電子機器システムに電源制御部、コマンド制御部、識別コード記憶部などを含む電源制御装置を必要とし、システムが複雑となり高価になっていた。
【0006】
また、さらに他の従来技術として、複数の端末装置とこれらに共通に接続されて各端末を制御する制御装置を備えたデータ処理システムにおいて、端末装置毎に問合せ信号を送信し、問合せ信号に対する複数の端末装置の何れかからの応答信号により制御装置を起動させる電源制御手段を備えた電源制御方式が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この従来技術では、上記のパワーステータスコマンドの送信によるバス使用効率低下の問題を解決することはできない。
【特許文献1】特開2001−236149号公報
【特許文献2】特開2005−100287号公報
【特許文献3】特開昭60−160419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、複数の電子機器をIEEE1394シリアルバスでネットワーク接続し、コントローラによるターゲット機器の電源制御を可能とする電子機器システムにおいて、コントローラからターゲット機器への電源状態問合せ用のパワーステータスコマンド送信に伴うバス帯域の使用量の低減を可能とする電子機器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、AV/C Digital Interfase Command Set(以下、AV/Cコマンドという)を有するIEEE1394シリアルインターフェースを備えた複数の電子機器を、IEEE1394シリアルバスを介してネットワーク接続した電子機器システムにおいて、前記複数の電子機器は、ネットワーク上の他の電子機器の電源制御を行うコントローラと、このコントローラにより電源制御されるターゲット機器とを含み、前記AV/Cコマンドは、電源を制御するパワーコントロールコマンドと、電源状態を問い合わせるためのパワーステータスコマンドとを含み、前記ターゲット機器は、自機の主電源を制御する主電源制御部と、この主電源の電源状態を検出する電源状態検出部とを有し、前記コントローラは、前記ターゲット機器に、その主電源をオン又はオフに移行させるためのパワーコントロールコマンドを送信すると共に、このコマンドに基き前記主電源制御部が前記ターゲット機器の電源状態を移行し終わるまで定期的にパワーステータスコマンドを送信し続け、前記電源状態検出部で電源状態移行が検出されたときに前記ターゲット機器から送信される移行終了のレスポンスを受信し、前記パワーコントロールコマンドの送信から前記移行終了のレスポンスの受信までの時間間隔を検出することにより、前記ターゲット機器の電源状態が移行されるまでの電源状態移行時間を得ると共に、この得られた電源状態移行時間をデータベースに記憶し、前記コントローラによる前記ターゲット機器への2回目以降の電源制御では、前記データベースの電源状態移行時間を用いて、前記パワーコントロールコマンド送信後のパワーステータスコマンドの送信を前記電源状態移行時間を経過してから行うことにより、パワーステータスコマンドの送信回数を削減し、前記バスにおける帯域使用量を低減するものである。
【0009】
請求項2の発明は、複数の電子機器をIEEE1394シリアルバスを介してネットワーク接続した電子機器システムにおいて、前記複数の電子機器は、他の電子機器の電源を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記バスを介して前記他の電子機器の電源を制御する電源制御コマンドと、その電源状態を問い合わせるパワーステータスコマンドを順次送信し、これらコマンドに対する前記他の電子機器からのレスポンスにより、それらの電源状態がオン又はオフに移行する電源状態移行時間を予め求めて、この電源状態移行時間をデータベースに記憶し、前記データベースの電源状態移行時間を用いて、前記コントローラにおける2回目以降の電源制御コマンド送出からパワーステータスコマンドの送出までの時間間隔を決定するものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、前記他の電子機器は、自機の主電源を制御する主電源制御部と、この主電源の電源状態を検出する電源状態検出部とを有し、
前記コントローラは、前記他の電子機器の主電源制御部への電源制御コマンドの送出後、前記他の電子機器のオン又はオフへの電源状態移行まで継続してパワーステータスコマンドを定期的に送出し、前記他の電子機器の電源状態検出部で電源状態移行が検出されたときに前記他の電子機器から送信される電源状態移行終了のレスポンスの受信時刻と、前記電源制御コマンド送出時刻との時間差を求めることにより電源状態移行時間を得るものである。
【0011】
請求項4の発明は、IEEE1394シリアルバスに接続されるコントローラにおいて、
前記バスを介して前記他の電子機器の電源を制御する電源制御コマンドと、その電源状態を問い合わせるパワーステートコマンドを順次送信し、これらコマンドに対する前記他の電子機器からのレスポンスにより、それらの電源状態がオン又はオフに移行する電源状態移行時間を算出して記憶する移行時間算出記憶手段と、前記データベースの電源状態移行時間を用いて、前記コントローラにおける2回目以降の電源制御コマンド送出からパワーステータスコマンドの送出までの時間間隔を決定する時間間隔決定手段と、を備えたこものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ターゲット機器の主電源のオン、オフの電源状態移行時間を精度良く求められると共に、2回目以降、この電源状態移行時間に合わせて、電源状態問い合わせのパワーステータスコマンドを最適時間間隔で送出できることにより、パワーステータスコマンドを無駄に送信する必要がなくなり、パワーステータスコマンドの送信回数を削減できるので、IEEE1394シリアルバス上における帯域使用量を低減することができる。これにより、電源制御時のIEEE1394シリアルバスの帯域使用効率を向上することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、予め得られたターゲット機器の主電源のオン、オフの電源状態移行時間を、2回目以降の電源制御時におけるターゲット機器毎のパワーステータスコマンドの送出時間間隔の最適間隔として用いることができるので、効率的なパワーステータスコマンドの送出が可能となり、電源制御時におけるIEEE1394シリアルバスの帯域使用効率を向上することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ターゲット機器の主電源のオン、オフの電源状態移行時間を正確に求めることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、ターゲット機器の主電源のオン、オフの電源状態移行時間をを算出して記憶することができ、2回目以降のパワーステータスコマンドの送出の時間間隔を決定することができるので、ターゲット機器の主電源の制御を最適時間間隔で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る電子機器システムについて図1乃至図5を参照して説明する。本発明は、AV/C Digital Interfase Command Set(以下、AV/Cコマンドという)を有するIEEE1394シリアルインターフェースを備えた複数のAV機器等の電子機器を、IEEE1394シリアルバスを介してネットワーク接続した電子機器システムにおいて、ネットワーク上の他の電子機器(ターゲット機器)を遠隔制御する制御用の電子機器(コントローラ)により、ターゲット機器をネットワークを介して電源制御する場合のバス帯域の節約に関するものである。
【0017】
図1は、本実施形態の電子機器システムの電気的ブロック構成を示す。この電子機器システムでは、IEEE1394シリアルインターフェースを備えた複数の電子機器(A、B、C)がIEEE1394シリアルバス9(以下、バスという)を介してネットワーク接続されており、電子機器Aを、ネットワーク上の他の電子機器の電源制御を行うコントローラ10(電子機器A)とし、電子機器B、Cを、このコントローラ10により電源制御されるターゲット機器20、30としている。なお、ターゲット機器30は、ターゲット機器20と同様の構成であるので内部構成の図示を省略する。
【0018】
図1において、コントローラ10は、機器全体を制御するCPU1、このCPU1によるシステム制御に必要な情報を記憶するメモリ2、IEEE1394シリアルインターフェース部3(以下、1394IF部という)、AVプロトコル部4、AC電源を入力とする主電源部5及び補助電源部6、主電源部5より電源を供給される主機能部7、及びCPU1のシステムクロックとなるタイマー8を備え、さらに、CPU1からの制御により主電源部5のオン/オフを制御する主電源制御部51と、CPU1に制御され主電源部5の電源状態(オン又はオフ)を検出する電源状態検出部52とを有する。
【0019】
メモリ2は、CPU1によって実行制御される各種制御プログラムとこれらの実行に用いられる各種データとを格納し、電源制御プログラムを備えてバス9を介した電源制御を管理する1394バス電源管理部22、及びIEEE1394バス上の各機器のトポロジーマップ、各機器のバスアドレス等の各情報を格納したレジスタ空間21を内包している。
【0020】
1394IF部3は、IEEE1394の通信層に相当し、バス9への通信ポートとなるIEEE1394ポート11と、バス9との物理的・電気的なインターフェースとなる物理層12と、リンク層13と、トランザクション層14とからなる。物理層12は、ノード接続の自動認識やバス9上のノード間のバス使用権の調停を行い、リンク層13は、物理層12とトランザクション層14間で信号処理を行う層で、IEEE1212規格に準拠した64ビットのアドレスを表示するアドレッシング、データチェック、バケットの送受信およびアイソクロナス(同期)転送のためのサイクル制御等を行う。このアドレッシングは、IEEE1394バスを識別するバスIDと、バスIDにより示されるバス9に接続されている各機器のノードIDとを有する。このバスIDとノードIDによってバスに接続される機器がバス9上で特定される。このノードIDは、IEEE1394バスに接続された各電子機器(ノード)に固有に割り当てられた識別番号であり、この識別番号はメモリ2に含まれる機器固有の情報が記憶されるConfiguration ROMに格納される。この識別番号を設けたことにより、個々の機器を簡単に識別することができる。また、トランザクション層14は、アシンクロナス(非同期)データに関する処理を行う。このコントローラ10の通信層は、CPU1のバス管理(シリアルバスマネージメント)により制御されてバス9上の複数のターゲット機器20、30(電子機器B、C)をネットワーク接続する。
【0021】
AVプロトコル部4は、機器間に仮想的な入出力経路を確立する信号伝送手順、様々なフォーマットの信号をパケット伝送するリアルタイムデータ伝送、及びIEEE1394バスで接続される機器の動作を制御するコントロール信号等に関するIEEE1394のAVプロトコル層を成し、ミドルウェア層15、アプリケーション層16を含む。また、このAVプロトコル部4は、IEEE1394のネットワークで繋がったAV機器をリモートで制御するためのAV/Cコマンド(AV/C Digital Interface Command Set)を含んでいる。このAV/Cコマンドの仕様では、AV/Cコマンドは、後述の図2に示すAV/Cコマンドフレームを使用して送信することが決められている。なお、AV/Cコマンドフレームは非同期転送モードで転送される。
【0022】
主機能部7は、映像情報を表示する表示部71と、この表示部71を駆動する表示駆動部72、バス9を介して送られる映像情報信号の表示や記録のための信号処理を行う信号処理部73と、この映像情報信号を録画再生する記録再生部74と、この記録再生部74を駆動する録再駆動部75とを備える。これらにより、主機能部7は、テレビ信号、カメラ信号等の映像信号を表示したり、録画再生することができる。
【0023】
主電源部5は、上記主機能部7を駆動するための電源供給を行う。この主機能部7への電源供給は、ユーザがこのコントローラ10を表示、録画等に使用しないときは、通常、オフされて省電力状態となり、補助電源部6のみが起動している。この省電力状態は、CPU1により制御される主電源制御部51が主要電源部5から主機能部7への電源供給用のスイッチを遮断してオフ状態とすることにより行われる。このとき、電源状態検出部52は、このオフ(又はオン)の電源状態を検出してCPU1に通知し、これにより、CPU1は、主電源部5から主機能部7への電源供給の遮断(又は起動)を確認することができる。また、省電力状態から機器全体を動作させるには、主電源制御部51が主電源部5から主機能部7への電源供給用のスイッチをオン状態にすることにより行われる。
【0024】
補助電源部6は、IEEE1394バスの接続を維持するため、常にCPU1、メモリ2、1394IF部3、AVプロトコル部4、タイマー8、主電源制御部51、電源状態検出部52の各部分(図1で点線で囲んだ部分)にそれぞれ電源を供給している。これにより、主電源部5をオフして省電力状態にした場合にも、バス9による機器間の接続を常に通信可能状態に保つことができる。
【0025】
一方、ターゲット機器20(30)の構成は、基本的にはコントローラ10と同様の構成を成し、ここでは、メモリ2に1394バス電源管理部22は備えておらず、その主電源部5は、コントローラ10により遠隔制御される。
【0026】
上記構成により本実施形態の電子機器システムにおいて、コントローラ10は、AV/Cコマンドによりターゲット機器20を制御する。このAV/Cコマンドによる制御は、コマンドを発行するコントローラ10とコマンドを受信するターゲット機器20の1対1の通信で行われる。ターゲット機器20は、受信したコマンドを実行し、実行結果をコントローラ10に返信する。そして、コントローラ10によるターゲット機器20のAV/Cコマンドによる電源制御は、AV/Cコマンドの中における電源制御のコマンドにより行われる。AV/Cコマンドにおけるコマンドの送信は、AV/Cコマンドフレームを使用して行われる。
【0027】
ここで、AV/Cコマンドフレームについて図2を参照して説明する。このAV/Cコマンドフレームは、図2に示すように、AV/Cコマンドセットであることを示す4ビットのCTS(0000)と、コマンドの宛先を示すsubunit_typeと、レスポンスの送信元を示すsubunit_idと、命令の種類を示すopcodeと、命令の実内容を示すoperandとの各コードを有する。ここで、opcode(power)は電力制御の動作命令を示すパワーコントロールコマンドとして送信され、operand(power_state)は、電源状態を示すパワーステートコマンド(請求項におけるパワーステータスコマンド)として送信される。また、operand(power_state)のコードは、電源をオンする場合は、Ox70(power on)とし、オフの場合はOx60(power off)とする。このoperandのOx70又はOx60は、これらのコードをターゲット機器20からのレスポンスとしてコントローラ10に返信する際に、このターゲット機器20の現在の移行された電源状態に対応するコードの値に置き換えが行われる。すなわち、ターゲット機器20は、コントローラ10からのAV/Cパワーコマンドを受信すると、これに応答してレスポンスをコントローラ10に対して返信する。このとき、このレスポンスとして、power_stateの領域に対して、「0x60」又は「0x70」の値を格納する。このpower_stateの値が「0x70」であれば、ターゲット機器20の現在の電源状態がオンであることを示し、「0x60」の場合は、オフであることを示す。コントローラ10は、このレスポンスの値を参照して、ターゲット機器20を含めバス9に接続されている他の機器の電源状態を知ることができる。
【0028】
また、ターゲット機器20のCPU1は、コントローラ10からAV/Cコマンドの形式で電源状態移行の命令コマンドが送られると、送信されてきた命令コマンドが自機に対するコマンドなのか、他の機器へのコマンドなのかを判別する。その結果、自機への命令コマンドであれば、送信された命令コマンドに従って、自機の主電源制御部51に指示して主電源部5の電源状態をオン、又はオフする。一方、コントローラ10から送信されてきた命令コマンドが他機に対するものである場合は、その命令コマンドを他機に転送する。この動作手順を図3のフローチャートに示す。図3において、ターゲット機器20は、その1394IF部3で、コントローラ10から電源状態移行の命令のAV/Cコマンドを受信し(S10)、そのコマンドのノードIDが自機のノードIDと一致すると(S11でYES)、そのコマンドを自機のCPU1に転送し、このCPU1が主電源制御部51を制御して主電源部5の電源状態を移行する(S12)。もし、一致しない場合には(S11でNO)、他の機器へそのコマンドをスルーして転送する(S13)。
【0029】
次に、本実施形態の電子機器システムにおいて、コントローラ10によるターゲット機器20の電源制御を行う動作手順について、図4及び図5を参照して説明する。本実施形態における電子機器システムの動作手順では、先ず、コントローラ1のCPU1は、バス9に接続されている電源制御の対象となる全てのターゲット機器20、30(電子機器B,C)を補助電源だけをオンさせる省電力状態に設定した上で(S21)、各ターゲット機器20、30に対して電源オンのAV/Cパワーコントロールコマンドを送信し、タイマー8より出力されるシステムクロックからその送信時刻を記憶した後(S22)、各ターゲット機器20、30の電源がオンするまで定期的にAV/Cパワーステートコマンドで電源状態を問い合わせ(S23)、ターゲット機器からの電源オン移行終了のレスポンスを受信してその受信時刻を記憶する(S24)。この記憶された送信コマンドの送信時刻とターゲット機器20、30からの各レスポンスの受信時刻との時間差を求め、これらの時間差をオン電源状態移行時間としてデータベースに記憶する(S25)。そして、コントローラ10のCPU1は、ターゲット機器20、30を全て電源オン状態に設定を完了すると(S26)、各ターゲット機器20、30に対して電源オフのAV/Cパワーコントロールコマンドを送信し、タイマー8より出力されるシステムクロックからその送信時刻を記憶した後(S27)、各ターゲット機器20、30の電源がオフするまで定期的にAV/Cパワーステートコマンドで電源状態を問い合わせ(S28)、各ターゲット機器20、30からの電源オフ移行終了の各レスポンスを受信して、それらの受信時刻を記憶する(S29)。コントローラ10のCPU1は、この記憶された送信コマンドの送信時刻とターゲット機器20からのレスポンスの受信時刻との時間差を求め、この時間差をオフ電源状態移行時間としてデータベースに記憶する(S30)。これにより、ターゲット機器20、30のオン電源状態移行時間とオフ電源状態移行時間をそれぞれ初期設定データのデータベースに予め記憶することができる。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に、この手順で得られた、複数の各ターゲット機器(ここでは、電子機器B乃至F)のパワーオン及びパワーオフの電源状態移行時間の初期設定のデータ例を示す。このデータから分かるように、各ターゲット機器はそれぞれ異なる電源オン、オフの電源状態移行時間を有する。このことから、各ターゲット機器にはそれぞれ電源状態問い合わせの最適時間間隔が存在するので、この電源状態移行時間を参照することにより、最適な問い合わせ時間間隔を知ることができる。
【0032】
次に、この表1を参照して、この初期設定の後の2回目以降にコントローラ10がターゲット機器20をAV/Cコマンドで電源制御する場合の動作手順について、図5を参照して説明する。先ず、コントローラ10のCPU1は、制御対象となるターゲット機器20へ電源オン又はオフを指示するAV/Cパワーコントロールコマンドを送信すると共に、送信時刻を記憶し(S40)、表1に示すデータベースから対象となるターゲット機器20のオン又はオフの電源状態移行時間を読出す(S41)。ここでは、ターゲット機器20を電子機器Bとすると、表1よりパワーオンの場合は、1000msec、パワーオフの場合は、800msecを読み出す。そして、コントローラ10のCPU1は、AV/Cパワーコントロールコマンドの送信後、読み出した各ターゲット機器のオン又はオフの電源状態移行時間(1000msec、又は800msec)が経過後、各対象ターゲット機器に電源状態問合せのパワーステータスコマンドを送信し(S42)、各対象ターゲット機器からの電源状態移行完了のレスポンスを受信する(S43)。これにより、各ターゲット機器の電源オフからオンへの移行時間(電子機器Bでは1000msec)又は電源オンからオフへの移行時間(電子機器Bでは800msec)に合わせて電源状況の問い合わせのパワーステートコマンドを送信すればよいので、問い合わせコマンドを必要以上の回数送信しなくて済み、コマンド送信回数を低減することができる。また、電源状態移行時間のデータ取得をパワーステートコマンドを定期的に送信することにより行うので精度の高い電源状態移行時間を得ることができ、2回目以降の問い合わせ時間を最適に設定することができる。
【0033】
なお、ターゲット機器20(電子機器B)及びその他のターゲット機器(電子機器C、D、E、F等)がIEEE1394のバス9上から切断された場合、それらの切断されたターゲット機器に関する電源状態移行時間はデータベースから削除される。そして、切断されたターゲット機器が再起動されてバス9に接続されてたことがコントローラ10で認識されると、コントローラ10の1394バス電源管理部22がこの接続が認識されたターゲット機器の電源状態移行時間の初期データの再作成を行う。
【0034】
これにより、例えば、STB、DVCR、DVDレコーダ等がIEEE1394バスで接続されてネットワーク化された電子機器システムにおいて、STBを1394電源管理部を備えたコントローラとし、省電力状態にあるDVCRやDVDレコーダをターゲット機器として、IEEE1394バスを介してDVCRやDVDレコーダの主電源を遠隔操作する場合に、予めDVCRやDVDレコーダの電源状態移行時間をデータベース化することにより、パワーステートコマンドの送信回数を低減して、バス帯域の使用量を削減することができる。
【0035】
上述した実施形態に係る電子機器システムによれば、コントローラ10からターゲット機器20(他のターゲット機器も同様)に定期的に電源状態問い合わせのパワーステートコマンドを送信して予め取得した電源状態移行時間をデータベースに記憶しておくことにより、2回目以降のコントローラ10からターゲット機器20への電源制御コマンド送信後に、電源状態の問い合わせのパワーステートコマンドの送信時間間隔を電源状態移行時間に合わせて行うことができる。これにより、ターゲット機器20の主電源部5の実際のオン、オフの電源状態移行時間に合わせて、最適時間間隔でパワーステートコマンドを送出できる。従って、パワーステートコマンドを無駄に送信する必要がなくなり、パワーステートコマンドの送信回数を削減でき、IEEE1394バス上における帯域使用量を低減できることによりバス帯域を節約がすることができるので、IEEE1394バスの帯域使用効率を向上することができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、STBをコントローラとしてSTBで受信された映像信号をDVTR又はDVDレコーダ等のターゲット機器に急遽録画する場合、それらの予め記憶した電源状態移行時間の短い方の記録機器に優先的に記録するようにすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器システムの電気ブロック構成図。
【図2】上記システムにおけるAV/CコマンドのAV/Cコマンドフレームを示す図。
【図3】上記システムのターゲット機器における電源制御処理の動作手順を示すフローチャート。
【図4】上記システムにおける電源状態移行時間取得の動作手順を示すフローチャート。
【図5】上記システムにおける2回目以降の電源制御処理の動作手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0038】
1 CPU
2 メモリ
3 IEEE1394IF部(IEEE1394シリアルインターフェース)
4 AVプロトコル部
5 主電源部
6 補助電源部
9 バス(IEEE1394シリアルバス)
10 コントローラ(電子機器)
20 ターゲット機器(電子機器)
51 主電源制御部
52 電源状態検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AV/C Digital Interfase Command Set(以下、AV/Cコマンドという)を有するIEEE1394シリアルインターフェースを備えた複数の電子機器を、IEEE1394シリアルバスを介してネットワーク接続した電子機器システムにおいて、
前記複数の電子機器は、ネットワーク上の他の電子機器の電源制御を行うコントローラと、このコントローラにより電源制御されるターゲット機器とを含み、
前記AV/Cコマンドは、電源を制御するパワーコントロールコマンドと、電源状態を問い合わせるためのパワーステータスコマンドとを含み、
前記ターゲット機器は、自機の主電源を制御する主電源制御部と、この主電源の電源状態を検出する電源状態検出部とを有し、
前記コントローラは、前記ターゲット機器に、その主電源をオン又はオフに移行させるためのパワーコントロールコマンドを送信すると共に、このコマンドに基き前記主電源制御部が前記ターゲット機器の電源状態を移行し終わるまで定期的にパワーステータスコマンドを送信し続け、前記電源状態検出部で電源状態移行が検出されたときに前記ターゲット機器から送信される移行終了のレスポンスを受信し、前記パワーコントロールコマンドの送信から前記移行終了のレスポンスの受信までの時間間隔を検出することにより、前記ターゲット機器の電源状態が移行されるまでの電源状態移行時間を得ると共に、この得られた電源状態移行時間をデータベースに記憶し、
前記コントローラによる前記ターゲット機器への2回目以降の電源制御では、前記データベースの電源状態移行時間を用いて、前記パワーコントロールコマンド送信後のパワーステータスコマンドの送信を前記電源状態移行時間を経過してから行うことにより、パワーステータスコマンドの送信回数を削減し、前記バスにおける帯域使用量を低減することを特徴とする電子機器システム。
【請求項2】
複数の電子機器をIEEE1394シリアルバスを介してネットワーク接続した電子機器システムにおいて、
前記複数の電子機器は、他の電子機器の電源を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記バスを介して前記他の電子機器の電源を制御する電源制御コマンドと、その電源状態を問い合わせるパワーステータスコマンドを順次送信し、これらコマンドに対する前記他の電子機器からのレスポンスにより、それらの電源状態がオン又はオフに移行する電源状態移行時間を予め求めて、この電源状態移行時間をデータベースに記憶し、
前記データベースの電源状態移行時間を用いて、前記コントローラにおける2回目以降の電源制御コマンド送出からパワーステータスコマンドの送出までの時間間隔を決定することを特徴とする電子機器システム。
【請求項3】
前記他の電子機器は、自機の主電源を制御する主電源制御部と、この主電源の電源状態を検出する電源状態検出部とを有し、
前記コントローラは、前記他の電子機器の主電源制御部への電源制御コマンドの送出後、前記他の電子機器のオン又はオフへの電源状態移行まで継続してパワーステータスコマンドを定期的に送出し、前記他の電子機器の電源状態検出部で電源状態移行が検出されたときに前記他の電子機器から送信される電源状態移行終了のレスポンスの受信時刻と、前記電源制御コマンド送出時刻との時間差を求めることにより電源状態移行時間を得ること特徴とする請求項2に記載の電子機器システム。
【請求項4】
IEEE1394シリアルバスに接続されるコントローラにおいて、
前記バスを介して前記他の電子機器の電源を制御する電源制御コマンドと、その電源状態を問い合わせるパワーステートコマンドを順次送信し、これらコマンドに対する前記他の電子機器からのレスポンスにより、それらの電源状態がオン又はオフに移行する電源状態移行時間を算出して記憶する移行時間算出記憶手段と、
前記データベースの電源状態移行時間を用いて、前記コントローラにおける2回目以降の電源制御コマンド送出からパワーステータスコマンドの送出までの時間間隔を決定する時間間隔決定手段と、
を備えたことを特徴とするコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−323137(P2007−323137A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149657(P2006−149657)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】